株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除
著者 松尾 健一
雑誌名 同志社法學
巻 58
号 3
ページ 63‑94
発行年 2006‑06‑30
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000010953
同志社法学 五八巻三号 六三株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除
株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除
松 尾 健 一
目 次Ⅰ はじめにⅡ 商法下での議論および関連する会社法の規定Ⅲ アメリカ法Ⅳ 取得条項付株式による買取請求権排除の可否Ⅴ 結語
論 説
︵一〇八一︶
同志社法学 五八巻三号 六四株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除
Ⅰ はじめに
会社法の下では︑
従来に比べ︑
定款自治の認められる範囲が大幅に拡大されている︒
合併等に関する種類株主総会決議に関しても定款自治の範囲が拡げられた︒
すなわち︑
定款の定めにより種類株主総会決議を不要とすることが認められた
︒
もっとも︑
その場合には合併等に際して当該種類株主に対し︑
損害の有無にかかわらず株式買取請求権が付与される︒
種類株主総会に関して定款自治の認められる範囲を拡大しつつ︑
これに代わる株主の利益保障手段として買取請求権が付与されているのである
︒
買取請求権を付与された株主は︑
裁判所に対して︑
保有する株式の公正な価格の評価を求め︑
そこで決定された額の金銭の支払いを受けることができる︒
しかし︑
株式に市場価格がない場合には︑
公正な価格の算定は困難な作業となることが予想される ︵
︒
じにどのように反映させるかという問題が生︑
の価格の算定はいっそう困難なものになりうる算定価格を内容︒
がとりわけ︑
数種の株式されている発行場合には︑
それぞれの権利 1︶価格の算定が困難なものとなれば
︑
買取請求権行使時において当事者︵株主および会社︶が︑
買取価格を予測することも困難となる
︒
買取請求権が行使された株式が相当数に達すると︑
裁判所が決定した買取価格と予測していた価格とに差が生じた場合に︑
会社が受ける影響も大きくなる︒
また︑
株主にとっても必ずしも満足のいく買取価格が算定されるとはかぎらない
︒
このような結果は︑
株式買取請求権が︑
当事者間の︵定款︶自治への裁判所の介入を前提とするものである以上︑
当然のことであるともいえる︒
しかし︑
買取請求権が生じうる局面において株主が受領すべき対価を︑
あらかじめ確定しておくことを望む当事者もあるであろう ︵
︒
2︶この問題
︑
すなわち︑
定款の定めによって株式買取請求権を排除し︑
または買取価格について合意しておくことの可 否について︑
直接的に定めた規定はみあたらない︒
しかし︑
取得条項付株式を利用すれば ︵︑
事実上︑
一定の範囲におい 3︶ ︵一〇八二︶同志社法学 五八巻三号 六五株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除 てそのような結果を実現することができる
︒
たとえば︑
①発行会社の合併の承認にかかる株主総会決議において反対票が投じられたことを取得事由︵会社一〇七条二項三号イ︑一〇八条二項六号イ︶とし︑
決議に反対した株主からのみ株式を取得する旨︵会社一〇七条二項三号ハ︑一〇八条二項六号イ︶
︑
および一定の算式にもとづいて算出される金銭を取得の対価︵会社一〇七条二項三号ニ〜ト︑一〇八条二項六号︶とする旨を定めることが考えられる
︒
あるいは②発行会社を消滅会社とする合併の効力発生を取得事由としてその種類の株式の全部を取得することとし
︑
取得の対価として金銭︑
または他の種類の株主︵たとえば普通株主︶が受け取る存続会社株式の数に一定の数を乗じて得た数の存続会社株式 ︵とすることも考 4︶
えられる
︒
条文の文言上︑
取得事由にはとくに制限が付されていないから︑
このような取得事由を定めることも可能であるように読める ︵を裁判所機会める求を算定の価格な公正による
︑
し付与を株式買取請求権して際に合併等︑
しかし︒
5︶保障した規定が強行規定であるとすれば
︑
上記のような取得事由の定めは無効とされる可能性がある︒
本稿は
︑
株式買取請求権を実質的に排除することとなるような取得条項付株式の創設が認められるかを検討するものである
︒
もっとも︑
会社法において株主に株式買取請求権が付与される局面は多岐にわたり︑
そのすべてについて検討を加えることはできない︒
そこで︑
本稿では︑
合併等の組織再編の際に付与される買取請求権︵会社七八五条︑七八六条等︶と
︑
譲渡制限会社の株主に付与される買取請求権︵会社一三八条一号ハ︑一四四条 ︵請る取買は者前
︒
す︶察考てし定限に 6︶求権が付与される典型的な局面であり
︑
後者については︑
従来︑
契約による株式譲渡制限の可否との関係で︑
本稿の問題関心に合致する議論が展開されているからである︒
検討の順序は︑
まず︑
商法 ︵のもとでの関連する議論を整理したう 7︶
えで
︑
関連する会社法の規定を検討する︵Ⅱ︶︒
つづいてアメリカにおける同種の問題に関する法規制および判例の状況を概観し︵Ⅲ︶︑
そこで得られた示唆をもとに︑
会社法における取得条項付株式と株式買取請求権の関係について解釈論の提示を試みる︵Ⅳ︶
︒
︵一〇八三︶
同志社法学 五八巻三号 六六株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除
Ⅱ 商法下での議論および関連する会社法の規定
会社法における取得条項付株式に相当するものは︑
商法では︵強制︶償還株式︵商二二二条一項三号・四号︶︑
および強制転換条項付株式︵二二二条ノ八 ︵償的制償還は
︑
客観事の由にもとづいて強部︶てとして規定されい一た︒
償還株式の 8︶還の対象となる株式が確定できる場合か
︑
抽選・
按分比例等の合理的方法によって償還対象を決定する場合にかぎり可能と解されていた ︵
ないとされていた ︵ き会決議があったとと
﹂
締定めることはでき役取︒
付また︑
強制転換条項株︑﹁
式の転換条項として 9︶えられていたようまたは考はないと制限とくに
︑
ついてに転換事由償還事由︑
ばけ除を点これらの︒
10︶である
︒﹁
合併決議に反対すること﹂
は客観的事由にあたるであろうから︑ Ⅰ
であげた①のような定款の定めをおくことも可能であったと解される︒
また②のような定めも︑
とくに制限にふれるところはないから可能であったと解される︒
しかし
︑
このような償還株式または強制転換条項付株式の創設の可否︑
および株式買取請求権との関係について述べたものはみあたらない︒
もっとも︑
株式買取請求権を事実上排除することとなる当事者︵会社・株主︶間の合意の有効性については
︑
一定の議論がみられる︒
種類株主の権利調整に関する定款の定め︑
および会社・
株主間の株式譲渡制限契約をめぐる議論がそれである︒
以下では︑
これら二つの議論の概略を述べたうえで︑
それに関連する会社法の規定を検討する
︒
㈠ 種類株主の権利調整に関する定款の定め
⑴ 商法下の解釈論
商法三四六条は︑
合併等の組織再編行為によってある種類の株主に損害を及ぼす場合には︑
当該種類株主による種類株主総会決議を必要とすると定めていた
︒
もっとも︑
合併等に際して種類株主がどのように扱わ ︵一〇八四︶同志社法学 五八巻三号 六七株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除 れるのかをあらかじめ定款に定めておき
︑
その定めに従った措置がとられるかぎり︑
種類株主総会決議は不要であると解されていた ︵ごとによる種類株主てについて当り割の株式合併等
︑
にもとづき同法二二二条一一項︑
は商法三四六条︒
11︶に異なる扱いをする場合に
︑
それによって損害を被る種類株主による決議を要求するものである︒
二二二条一一項は﹁
定款ニ定ナキトキト雖モ﹂
株式の割当等について種類株主間で異なる扱いができると定めていることから︑
株式の割当等について予め定款に定めることは可能であり
︑
その定めに従った扱いがされるかぎり三四六条にもとづく種類株主総会決議も不要とされていたのである︒
株式買取請求権について
︑
合併等に関する種類株主総会決議において反対した株主は︑
買取請求権を行使できると解されていた ︵︒
商法のもとでは︑
総会決議に反対しないかぎり株式買取請求権を行使できないとされていたから 12︶︵︑
種類株 13︶主総会決議が不要とされる場合には
︑
通常の株主総会で議決権を有しない種類株主は︑
買取請求権を行使できなかった︒
したがって︑
商法においては︑
合併等の承認にかかる通常の株主総会において議決権を有しない種類株主にかぎってではあるが
︑
定款の定めにより間接的に合併等における株式買取請求権の排除を認めていたことになる︒
⑵ 会社法の規定
会社法においても合併等によってある種類の株主に損害を及ぼすおそれがある場合には︑
当該種類株主による種類株主総会決議が要求されている︵会社三二二条一項七号〜一三号︶
︒
他方︑
種類株主間の権利調整に関する定款の定めについて定めた規定はみあたらない ︵
類しきる︵同条二項・三項︶
︒
しか︑
が定種ていおをめのそ款定なうよのでとて総よっこ種類株主︑
会議を不要とする決 述︑
本稿の冒頭でも定べたように︑
定款にめをおくことに︒
もっとも 14︶株主総会決議を不要とした場合には
︑
通常の株主総会において議決権を有しない種類株主は︑
その損害の有無にかかわらず株式買取請求権を行使できるとされている︵会社七八五条一項・二項一号ロ等︶ことも前述のとおりである︒
このように会社法では
︑
合併における株式の割当て等について種類株主間の権利調整の定めを設けることができるか︵一〇八五︶
同志社法学 五八巻三号 六八株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除
否かは不明である
︒
また︑
かりにそのような定めをおくことが可能であり︑
それに従った権利調整が行なわれるとしても
︑
なおその場合に株式買取請求権を行使することが可能であると解される ︵解合併等することはできないものと排除を買取請求権めをおくことによって定の権利調整する関に
︑
られていたように め認で商法下︑
では会社法︑
したがって︒
15︶される
︒
㈡ 譲渡制限株式に関する買取請求権
⑴ 商法の規定と契約による譲渡制限の有効性
商法は︑
定款においてその株式の譲渡について取締役の承認を要する旨定めることを認めていた︵商二〇四条一項但書︶
︒
このような定款規定のある会社の株式を他に譲渡することを望む株主には︑
以下の手続が保障されていた︒
すなわち︑
取締役会に対して当該株式の譲渡の承認を求め︑
取締役会が承認を拒否する場合には
︑
会社が自ら当該株式を買い取るか︑
あるいは他の買受人を指定するよう請求することができた︵商二〇四条ノ二︶
︒
この場合の買受人︵会社を含む︶が支払うべき買取価格は︑
当事者間の協議によって決定するものとされていたが
︑
協議が調わない場合には︑
裁判所に対して買取価格の決定を請求することができるとされていた︵商二〇四条ノ四 ︵
式にには
︑
法律上︑
裁判所対株して自己の保有する株主の制そ定款による株式譲渡限︶が付されている場合︑ ︒
16︶の価格の評価を求め
︑
その評価にもとづく対価を受け取る機会が保障されていたのである︒
このような法制のもとで
︑
主として︑
定款に株式譲渡制限の定めのある会社において従業員持株制度が採用されてい る場合に結ばれる次のような契約の有効性が問題となった ︵譲を際には
︑
その者が有する株式会社退職もしくは会社が指定する者におなじく額面価額でするが︑
し譲渡を式従業員 従業員間︑
会社と従業員とのにで︑ ︒
額面価額で株すなわち 17︶渡するというものである
︒
株式に市場性がない会社では︑
従業員株主の退職時に︑
その有する株式について会社に買取 ︵一〇八六︶同志社法学 五八巻三号 六九株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除 義務を課すことが投下資本の回収のために必要であり
︑
額面価額で買い戻し︑
その株式を別の従業員に額面価額で譲渡することが制度の円滑な運用に必要であると考えられ︑
このような契約が結ばれた︒
この契約の有効性が認められれば︑
定款による譲渡制限を行なっている会社において法律上保障されている裁判所による株式価値の評価を求める機会が契約によって排除されることになる
︒
これに対して︑
このような契約は︑
株式譲渡自由の原則に反し︑
また︑
株式を公正な価額ではなく取得価額と同額で売り渡す義務を負わせる点で公序良俗︵民九〇条︶に違反し
︑
無効であるとして︑
多くの訴訟が提起された︒
⑵ 判 例
このような訴訟において︑
たとえば名古屋高判平成三年五月三〇日︵判タ七七〇号二四二頁︶は︑
定款に株式譲渡制限の定めのある会社の従業員持株制度において会社Yと従業員Xらとの間で締結された︑
従業員は当該会社の株式を額面金額︵一株五〇円︶で取得し
︑
退職に際しては︑
その株式を額面金額で取締役会が指定した者に譲渡する旨の契約は有効であると判示した︒
その理由として︑﹁
本件従業員持株制度は︑
会社にとって︑
持株従業員に対して会社の発展に対する寄与を期待できるという利益があるとともに
︑
持株従業員にとっても︑
Yの株式をその時価にかかわりなく一律に額面額で簡便に取得することができるほか︑
相当程度の利益配当を受けることができるものであって︑
それなりに持株従業員の財産形成に寄与するものであることは疑いがない
﹂︒ ﹁
本件合意内容によると︑
持株従業員は︑⁝
株式の自由な譲渡及びそれによる譲渡益の取得を否定されることになるが
︑ ⁝
従業員持株制度の目的を達成するために︑
自由な意思によって右制度の趣旨を了解して株主となった ︵すによって限定のように右を譲渡先
︑
合意の間との会社と者 18︶ることは
︑
法令上禁止されているところではない﹂︒ ﹁
また︑
譲渡価格が時価によらず額面額に固定されている点も︑
その取得価格自体が右と同額と定められ︑
取得時における時価とはなっていないこと及び本件株式のような非上場株式について持株従業員の退職の都度個別的に譲渡価格を定めることが実際上困難であることなどを考慮すると
︑
株式の譲渡︵一〇八七︶
同志社法学 五八巻三号 七〇株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除
価格を額面額に固定する本件合意をもって
︑
直ちに持株従業員の投下資本の回収を著しく制限する不合理なものとまでは断ずることができない
﹂︒ ﹁
本件株式取得に至る経緯等に徴すると︑
譲渡価格についてのみ︑
Xらのような退職持株従業員に対して時価による譲渡益を保障しなければならない合理的理由は見出しがたい﹂
と述べている︒
さらに﹁
本件の従業員持株制度のもとにおける従業員の株式の所有は
︑
前記のような制度の目的及び株式取得の手続︑
経緯等に鑑みると︑
すべての点において一般の株式投資と同列に論じることはできず︑
その投下資本の回収についてある程度の制約を受けることも性質上やむを得ないものというべきである
﹂
と付け加えている︒
事件は上告されたが
︑
最高裁判所は﹁
本件合意は︑
商法二〇四条一項に違反するものではなく︑
公序良俗にも反しな いから有効であり︑⁝
Xらの請求を棄却すべきものとした原審の判断は︑
正当として是認できる﹂
と判示した ︵のない行市場性および
︑
されていること達成が目的の従業員持株会われることによってが利益配当の相当程度︑
も判例 裁の他︒
19︶株式の時価算定が困難であること等を理由として
︑
同種の契約の有効性を肯定している ︵案限五一号一五七頁︶は
︑
譲渡制会一社の従業員持株会に関する事四時東判裁判例もある︒
判地京平一︵日成七月四年四︒
とした無効を契約︑
もっとも 20︶であるが
︑
その規約によれば従業員は持株会への加入を強制され︑
退職時に︑
持株会が所有する株式に対する従業員の共有持分は持株会に移転するとされていた︒
その際の買受価格は︑
配当還元方式で算定した価額︵ただし︑額面金額に満たない場合は額面金額︶とされていたが
︑
事実上︑
額面金額であった︒
そして︑
持株会は︑
その持分を︑
退職した従業員から買い受けた価格で他の従業員に譲渡するものとされていた︒
裁判所は︑﹁
被告会社は︑
多額の配当可能利益がありながら
︑
そのうちのごく一部のみを配当しているにすぎず︑
その結果として︑
莫大な社内留保金を抱え︑
取得後相当の年月が経過している原告の所有株式の時価が額面金額をはるかに上回っていることは容易に推認できる﹂
ところ︑﹁
本件契約において定められている共有持分の強制譲渡の対価の算定方式は
︑
被告会社のように配当性向が低く︑
株式の価 ︵一〇八八︶同志社法学 五八巻三号 七一株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除 値のうちキャピタルゲインが極めて大きい場合には
︑
キャピタルゲインの取得について何らの考慮も払っていない点において︑
株主の投下資本の回収を著しく制限する不合理なものといわざるをえず︑
公序良俗に反し無効というべきであ る﹂
と判示した ︵︒
有効性契約のてを認めている ︶四六五号一四六頁決は︑
原判時を取り消し一判東・件は控訴され︑
控訴審︵京︒
高判平成五年六月二九日本 21︶
⑶ 学説
契約による株式の譲渡制限について︑
学説は︑
伝統的に︑
会社が契約の当事者になっているか否かによって有効性を判断する基準を区別していた︒
これによると会社・
株主間の契約は︑
原則として商法二〇四条一項の脱法行 為として無効とされる︒
ただし︑
契約の内容が株主の投下資本回収を不当に妨げない合理的なものであるときは︑
例外的に有効であるとされていた ︵か妨の回収を不当にげ資ない
﹂
といえるの本下う投かし︑
どのよな︒
場合であれば︑﹁
し 22︶については
︑
明確な基準が示されていなかった︒
これに対し
︑
契約自由の原則に配慮して︑
契約による株式譲渡制限の有効性について︑
より慎重かつ詳細に検討する見解が示されている
︒
この見解は︑
商法二〇四条一項但書の定款による株式譲渡制限制度は︑
会社が有する株式譲渡制限の需要と︑
株主の投下資本回収の要請とのバランスが結実したものであり︑
このバランスをまったく無視して会社・
株主間の契約により株式の譲渡を制限することは許されないとする ︵
︒
あるいは︑
商法は︑
株式の譲渡制限によって株主 23︶の投下資本の回収の機会を不当に奪ってはならないという理想を明らかにしており
︑
この理想と矛盾する場合には︑
株式譲渡制限契約は無効となるとする ︵︑
なして考慮たしていることを果を役割実務上重要が譲渡制限による契約︑
そして︒
24︶商法が定める譲渡制限の形態以外の制限の態様も
︑
合理的な範囲で許されるとする ︵売渡に
︑
株主の投下資本回収確保の要請反際しないか否かが重視され︑
しするにかを否であるか有効が譲渡制限る判断 によ︒
契約︑
ばによれ見解これらの 25︶しを強制する契約においては
︑
売渡価格︵の算定方法︶が合理的なものであるか否かが決定的となる︒
その結果︑
株主︵一〇八九︶
同志社法学 五八巻三号 七二株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除
が取得した価格を譲渡価格とするような約定は
︑
キャピタルゲインの獲得を完全に否定するものであって︑
投下資本の回収の要請に反するとして
︑
その有効性が疑問視されている ︵有定譲渡価格の算定方法を契約でめておくことはする
︑
実際上有益であり︑
有効であるとされているを ︵ 関連性な合理的と価値の真の株式における譲渡時︑
一方︒
26︶︒
27︶このほか
︑
従業員持株制度における取得価額を譲渡価額とする売渡強制契約に限った議論ではあるが︑
そのような契約は公序良俗に反し無効であるとする見解がある︒
株主がキャピタルゲインを得ることを否定する契約は︑
株式投資の 本質に反する不合理なものであり公序良俗に反するとするのである︒
この見解も︑
株式の売渡しを強制する契約は︑
株式の真の価値と合理的な関連性のある価格算定方法が定められている場合にのみ有効であるとする ︵︒
28︶以上の見解が
︑
譲渡価格を取得価格と同額とするような売渡強制契約の有効性に懐疑的であるのに対し︑
相当の利益配当がされていることを条件として柔軟にそのような契約の効力を認めてきた判例の立場にも︑
相当の理由があるとす る見解がある ︵で契約契約自由の原則が妥当することを前提として
︑
のなされるかぎり相手方が少数であり︑
契約内容を十分に理解︑
でによる契約見解は︑
会社・
株主間の契約株式譲渡制限︒
についても︑
それが特定の株主との相対のこの 29︶き
︑
会社に対して交渉力を有するものであるときは︑
当事者の意思が最大限尊重されるべきであるとする︒
他方︑
株式譲渡の自由を制約される当事者が多数であるときは︑
譲渡制限の内容が︑
契約目的との関連において会社法上の公序に反しないかについて検討することが必要となるとする ︵
︒
30︶
⑷ 会社法の規定
定款による株式の譲渡制限については︑
商法とほぼ同様の規定が会社法にもおかれている︒
すなわち
︑
定款によって譲渡を制限されている株式を譲渡しようとする者は︑
会社に対してその譲渡を承認するよう請求すると同時に︑
譲渡を承認しない場合は︑
会社がみずからその株式を買い取り︑
または他の買受人を指定するよう請求することができる︵会社一三六条︑一三八条一号ハ ︵
たま取い買を式株が人受買定指はと社こ会
︑
け受を求請なうよのこ︒
︶る 31︶ ︵一〇九〇︶同志社法学 五八巻三号 七三株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除 となった場合
︑
その買取価格は︑
当事者間の協議によって定められるが︑
協議が調わないときは︑
いずれの当事者も裁判所に対して買取価格の決定を申し立てることができる︒
裁判所は買取価格を決定する際︑
譲渡承認請求時の会社の資 産状態その他一切の事情を考慮しなければならないとされている︵会社一四四条 ︵︶
︒
32︶Ⅲ アメリカ法
以下では
︑
本稿で扱う問題に関連するアメリカの法規制の状況を概観する︒
まず︑
償還株式︵redeemable share︶に関する法規制について述べ︑
つづいて合併等の組織再編時における株式買取請求権を定款の定めによって排除することの可否についてみる
︒
最後に︑
株式の売渡しを強制する定款の規定または契約における売買価格条項の有効性をめぐる議論について検討する︒
㈠ 償還株式に関する法規制
アメリカ模範事業会社法は
︑
一定の事由が生じた場合に償還される株式の発行を認めている ︵︒
償還事由として定める 33︶ことのできる内容について
︑
とくに制限は課されていない︒
償還の対価として︑
金銭︑
債権︑
株式等の証券︑
その他の財産が規定されている ︵るこ一定め定を旨される算出によって算式の
︑
めることも定を確定額︑
については価額の対価︒
34︶ともできる ︵
︒
公定歩合や消費者物価指数などの会社外の指標に償還価額を連動させることもできる 35︶︵償還株式ほぼをおいているが規定の社法も
︑
同様につき︑
︵ デラウェア一般会︒
36︶模範償還
︑
で点めている認をのみの一部の株式の種類ある︑
37︶事業会社法と異なるとされている ︵
︒
38︶︵一〇九一︶
同志社法学 五八巻三号 七四株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除
かつての模範事業会社法は議決権ある株式または普通株式に償還条項を付すことが禁じていたが
︑
現在ではそのよう な規制は撤廃されている︒
その理由として︑
普通株式に譲渡制限を付した場合には︑
事実上︑
償還条項を付したのと同様の効果が生じうるため ︵由とが見出しがたいい理うことがあげられるないす
︑
償還条項を付こ的とを禁止する合理て 39︶︵︒
40︶このほか
︑
とくに償還を制限することとなる規制は課されていないが︑
唯一︑
制限のない完全な議決権がある社外株式︑
または残余財産分配請求権がある社外株式のいずれかが償還によってなくなってしまう場合には︑
償還はできないとされている ︵
している ︵ 完全禁止がなくなることのみを社外株式がある議決権なのない制限によって償還
︑
は一般会社法デラウェア︒
41︶︒
42︶㈡ 株式買取請求権の排除の可否
⑴ 制定法
模範事業会社法は︑
優先株式にかぎり︑
定款の定めによって株式買取請求権を付与しないものとすることを認めている ︵︒
のとの理由として︑
次よるうに説明されているこいきて取請求権を排除でる︒
のは優先株に限られ買 43︶すなわち
︑
優先株の引受人となる者は︑
買取請求権を付与するか否かについて会社と交渉する能力をもっており︑
条件が折り合わなければ引き受けないという選択をすることもできる︒
これに対して︑
普通株式の権利内容について交渉が行われることは稀であり
︑
それゆえ︑
買取請求権を排除することはできないというものである ︵の株式買取請求権めている認しないとすることを付与会社法典は
︑
定款を定めにより︑
︵ メリーランド︑
このほか︒
44︶︒
また︑
カリフォルニア会社法 45︶典は
︑
合併等の際に支払われるべき対価の額が︑
その権利内容として明確に定款に定められている種類株式については︑
株式買取請求権に関する規定を適用しないとしており ︵︒
めによるめている認を排除の買取請求権定の定款︑
に結果的︑
46︶
⑵ 判例
定款による株式買取請求権の排除の可否が問題となった事件として︑
フォード・
ホールディングス社事件 ︵47︶ ︵一〇九二︶
同志社法学 五八巻三号 七五株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除 がある
︒
これは︑
合併の対価として会社が決定した金銭の額が︑
市場価格より低かったことに不満をもった優先株主が︑
株式買取請求権を行使したのに対し︑
会社が︑
優先株主が合併において受け取るべき対価の額は定款に定められており︑
その額以上の対価を受け取る権利は優先株主にはないとして争った事案である
︒
︻
事実︼
Ford Holdings, Inc.
︵FH社︶は︑
消費者・
事業者向け貸付︑
保険の引受け︑
設備のリースを業とする会社であり︑
同 社の普通株はすべてFord Motor Company
が直接または間接に保有している︒
FH社は二種類の優先株を発行しており︑
これらにはいずれも転換条項・
償還条項は付されておらず︑
累積的配当優先権︑
額面金額および未払いの累積配当額について残余財産分配にかかる優先権が付されている
︒
一方の優先株︵優先株①︶の配当金額の決定方法等については
︑
以下のような複雑な定めがおかれている︒
すなわち︑
発行後一定の期間︵四九日︶は当初定められた率の配当金が支払われる
︒
当該期間経過後︑
指定代理人によって新たな投資期間が設定されると同時に︑
合併プレミアムの有無が決定される︒
合併プレミアムとは︑
合併時に優先株①の株主が受け取る金額のうち残余財産分配にかかる優先額を超える部分をいうとされている
︒
指定代理人によって新たな投資期間が定められると
︑
投資家によるオークションが行なわれる︒
そのオークションにおいて投資家は︑
投資を継続し︑
または新たに投資するにあたって要求する配当利回り︑
および当該配当利回りでの投資を希望する金額を表明する︒
オークションによって決定された配当利回りより高い利回りで入札した株主は
︑
保有する優先株①をより低い利回りで入札した投資家に売却しなければならず︑
その売却価額は額面金額と未払い累積配当額の合計額とされている︒
すべての売却希望に応じられるだけの買い入札がなかった場合には
︑
優先株①の配当利率等は定款に定められた算式による最も︵一〇九三︶
同志社法学 五八巻三号 七六株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除
高い利率に定められ
︑
一定期間経過後に再び同様のオークションが行なわれる︒
他方の優先株︵優先株②︶については四半期ごとに配当が支払われる
︒
U.S. Bancorp
︵B社︶は︑
一九九五年二月一四日にFH社の優先株①一〇〇株を流通市場において購入した︒
購入当時︑
優先株①については五年の投資期間が定められ︑
合併プレミアムは生じていなかった︒
同年一〇月一六日︑
FH社の取締役会は︑
同社の完全子会社であるFord Holdings Capital Corporation
︵FC社︶との合併を承認した︒
この合併の効力発生日は同年一二月二〇日とされ
︑
FH社の優先株主は合併対価として金銭を受け取るものとされた︒
B社は合併対価に不満をもち︵原告らが保有する優先株の市場価格は合併対価として支払われる額を大幅に上回っているという
証拠があると主張している︶
︑
合併承認決議に反対したうえで︑
株式買取請求権を行使し︑
優先株①の公正な価値の算定を求めた︒
FH社は︑
優先株①の株主が合併に際して受け取るべき金額は定款に明確に定められており︑
それ以外の金額が対価として支払われる余地はないと主張した
︒
これに対し︑
B社は︑
①合併に反対する株主に買取請求権を付与する規定は強行法規であり︑
定款の定めをもってしても排除できない︑
②かりに︑
定款の定めによって買取請求権を排除できるとしても
︑
優先株①に関する定款の定めはそのことを明確には規定していないと主張した ︵︒
48︶︻
判旨︼
アレン裁判官は
︑
まず︑
次のように述べて︑
検討する問題の範囲を限定している︒
すなわち︑
本件で問題とされているのは
︑
合併時に受領すべき金銭の額またはそれを確定するための算式が明確に定められている優先株を購入した者が︑
裁判において保有する株式の公正な価値を確定する権利を︑
契約によって放棄することができるか否かである︒
この問題は
︑
会社法はどの範囲で強行法規とされるべきであるかという問題が具体化した例の一つである ︵︒
会社法の強行 49︶ ︵一〇九四︶同志社法学 五八巻三号 七七株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除 法規性は一般の関心を集めているが
︑
本件は優先株の買取請求権に関するものであり︑
優先株は債権と株式の双方の性質を備えた非常に特殊なものである︒
優先株に付された特別な権利および制約に関するかぎり︑
発行会社と株主の関係 は契約関係である ︵らかにしている明ることを ︵
︑
す検討を可否の排除そのして限定に株式買取請求権にかかる優先株あくまで︑
べて述このように︒
50︶︒
51︶この発行会社と株主の関係は契約関係であるという理解を前提として
︑
次のような一般論が述べられている︒
優先株の権利内容は当事者の交渉によって定められるべきものである︒
当事者が情報を得たうえで有利であると判断して権利内容を定めることは
︑
それが法令に違反するものでないかぎり︑
禁止する理由はない︒
優先株がもつ契約的な性質に鑑みれば︑
交付金合併において優先株主に支払われるべき金銭の額を定める定款規定が︑
二六二条に定められた公序︵public policy︶に反するとは考えられない
︒
つづいて︑
次なる問題は︑
本件の優先株の権利内容を定める条項が︑
交付金合併における買取請求権を制限するものと解釈されるかどうかであると述べて
︑
優先株の権利内容を定める具体的な定款規定の解釈に移る︒
定款規定の解釈を行なうにあたり︑
まず︑
次の二つの原則があることを確認している︒
すなわち︑
デラウェア一般会社法二六二条は︑
制定法によって付与される権利について定めるものであり ︵
放棄のに明白じて通を解釈条項する関連
︑
は権利そのような︑
52︶されているといえる場合にかぎり放棄できる
︒
また︑
関連する条項の解釈が分かれうる場合には︑
発行会社に不利に解釈すべきであるというものである ︵︒
53︶このような定款規定の解釈に関する原則をふまえて
︑
まず優先株②について検討し︑
次のように判示している︒
優先株②にかかる定款四条⒝項は︑
FH社が交付金合併を行なう際に株主に支払われるべき対価について︑
次のように明確に定めている
︒
すなわち︑﹁
FH社が他社と合併し︑
優先株②の株主に対し︑
合併対価として金銭のみが交付される場︵一〇九五︶
同志社法学 五八巻三号 七八株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除
合には
︑
各株主に対し︑
残余財産分配にかかる優先配当額︵四条⒜項により一〇万ドルとされている︶および未払いの累積配当額の合計額のみが支払われるものとする
﹂
と︒
残余財産分配にかかる優先配当額︑
未払いの累積配当額のいずれも一義的に決定されうるものであり︑
その解釈において疑義は生じない︒
したがって︑
優先株②の株主は︑
交付金合併において定款に定められた額の対価を受け取るものとされた場合には
︑
買取請求権を行使してそれ以上の合併対価の支払いを求めることはできない ︵︒
54︶これに対し
︑
優先株①の株主については︑
次のように述べて︑
株式買取請求権を行使して︑
公正な価額の算定を求める権利を有すると判示した︒
すなわち︑
優先株②と異なり︑
優先株①については︑
交付金合併に際して支払われるべき対価について直接定めた規定はない
︒
FH社は︑
優先株①の配当に関して合併プレミアムを定めた規定︵三条⒝項︶︑
および優先株①の株主は︑
合併対価として残余財産分配にかかる優先配当額︑
合併プレミアム︑
未払いの累積配当額の合計額を受領するのでないかぎり
︑
当該合併について種類決議を行なう権利を有すると定める規定︵五条⒟項︶を根拠に︑
交付金合併において優先株①の株主に交付されるべき対価は定められていると主張する︒
しかし︑
五条⒟項は︑
結局のところ合併に関する種類決議について定めているにすぎず
︑
合併に際して株主が受け取るべき対価については何も規定しない︒
合併の対価について直接定めた規定がないかぎり︑
制定法によって付与された権利を奪うことはできない ︵
︒
55︶このように本判決は
︑
合併にかかる株式買取請求権の排除の可否について︑
直接定めた規定を欠いているデラウェア一般会社法の解釈として︑
優先株式にかぎってではあるが︑
排除は可能と判断した︒
その際に︑
優先株の株主と会社との関係が契約的なものであり
︑
優先株の権利内容も契約的に定められるということが強調されている点が注目される︒
︵一〇九六︶同志社法学 五八巻三号 七九株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除 また
︑
優先株①と優先株②とで結論が分かれたことからも明らかなように︑
かなり明確に規定されていないかぎり︑
買取請求権の排除は認められないという姿勢が貫かれている点も重要である︒
㈢ 株式売渡強制条項の有効性
アメリカにおいても
︑
株主の死亡や退職などの一定の事由が生じた場合に︑
当該株主に対し︑
保有する株式を会社または他の株主に売り渡すこと義務を課していることが多い ︵︒
このような株式の売渡強制は︑
相対の契約によるほか︑
定 56︶款や附属定款に定めることもできるとされている ︵
するこ善意に明瞭に記載されていないかぎり
︑
のが所持人に対してその制限を主張株券旨課が譲渡制限の等されている 株式契約︑
定款によるとにによるとにかかわらず︑ ︒
売渡強制ただし 57︶とはできないとされている ︵
るいてし ︵ 目的ならないとばするものでなけれ資にな合理的
︑
は譲渡制限の株式︑
は模範事業会社法︒
58︶益項いが
︑
同法二〇二条⒞はし︑
譲渡制限が会社の利な在デ存れに相当する規定はラ︒
ウェア一般会社法にはこ 59︶と合理的な関連を有するものであることを要求する判例法 ︵
を条文化したものにほかならないと判示したものがある 60︶︵
︒
61︶定款または契約によって株式売渡強制が行なわれる場合
︑
その売渡価額は︑
あらかじめ確定額または価額を算出する ための算式のかたちで定められることが多い ︵︒
売渡価額の定め方としては︑
額面金額とするもの︑
簿価純資産額を基準 62︶に算定するものなどがあり
︑
かならずしも時価を反映するものであるとはかぎらない︒
そのため︑
売渡時において︑
あらかじめ定められた売渡価格が時価を大きく下回ることもある︒
このためそのような売渡価格を定める条項の効力をめぐって多くの訴訟が提起された ︵
︒
63︶裁判所は
︑
売渡価額が時価を下回るということのみをもって︑
売渡強制条項を無効と判断することはない︒
たとえば︑
株主が死亡した場合に
︑
当該株主が保有していた株式を取得価額と同額で会社に売り渡すことを義務づけた附属定款の︵一〇九七︶
同志社法学 五八巻三号 八〇株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除
規定を有効であるとした判決 ︵
公正株式の譲渡価格
︑
は有効性の譲渡制限の︒
べている述のように次として理由その︑
は 64︶性といった抽象的な概念とは無関係に判断されるべきものである
︒
無効とするためには︑
あらかじめ定められた譲渡価格と現在の株式の価値に差があるというだけでは十分ではない︒
当事者は自身に適した譲渡価格について有効に合意しているからである ︵
け売簿価を基準に渡の価格を算定するおも株
︒
このほか︑
主にが死亡した時点る 65︶︵もの ︵
︑
額面金額とする 66︶についても有効であるとされている
︒
67︶Ⅳ 取得条項付株式による買取請求権排除の可否
以下では
︑
商法下における議論およびアメリカの法規制の検討から得られた示唆をもとに︑
会社法における取得条項付株式と株式買取請求権の関係について考察する
︒
まず︑
譲渡制限株式にかかる買取請求権をとりあげ︑
つづいて合併等組織再編にかかる買取請求権について述べる︒
さらに︑
取得条項の内容が不合理とされる場合の効果についても考える
︒
㈠ 譲渡制限株式にかかる買取請求権の排除
Ⅱ
でみたように︑
商法のもとでも︑
譲渡制限会社の従業員株主に対し︑
退職時にその株式を︑
あらかじめ定められた価額で会社に売り渡す義務を負わせる契約の有効性が問題とされていた
︒
このような契約によってもたらされると同様の効果は︑
株式に譲渡制限を課し︵会社一〇七条二項一号︑一〇八条二項四号︶︑
それに加えて次のような取得条項を付すことによっても得られる
︒
すなわち︑
当該譲渡制限株式を保有する従業員が退職したことを取得事由とし︑
退職した従業 ︵一〇九八︶同志社法学 五八巻三号 八一株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除 員が保有する株式のみを取得対象とし
︑
取得の対価として一定額の金銭と定めるのである ︵︒
68︶このような取得条項の有効性を考えるにあたって
︑
まず問題となるのは︑
それが定款に定められなければならないということである︵会社一〇七条二項柱書︑一〇八条二項柱書︶
︒
従来︑
契約による譲渡制限については︑
合理的な範囲であれば商法が定める内容と異なることも許されると解されていたが︑
定款による譲渡制限については商法が定める内容と異なるものを定めることはできないと考えられていた
︒
上記の取得条項は︑
会社による譲渡制限株式の取得価額を固定し︑
裁判所による価値の評価を受ける機会︵会社一四四条二項︶を奪うことになり︑
会社法が定める定款による譲渡制限の内容と異なる定款の定めをおくことになる
︒
商法のもとでの議論が︑
会社法においても妥当するのであれば︑
上記の取得条項は無効となる可能性がある︒
定款による譲渡制限と契約による譲渡制限とを区別する根拠として
︑
①契約による譲渡制限は契約当事者間で債権的効力を生じるにすぎないこと︑
②定款による譲渡制限が全株主に画一的に強要されるのに対し︑
契約による場合は︑
附 合的なものを許さず現実の合意を要するという絞りがかかること︑
③契約による譲渡制限が実務上重要な役割を果たしていることがあげられていた ︵めることがで同定で定款を制限の内容じと譲渡制限による契約
︑
については③︑
しかし︒
69︶きるとなれば
︑
定款によるものが主流になる可能性もある︒
①についても︑
債権的効力しか認められずとも強制履行ができるから売渡強制に関するかぎりでは
︑
定款と契約とを区別する理由にならないように思われる︒
残るは②であるが︑
たしかに定款による譲渡制限の効果は︑
将来の株主を含む全株主に及び︑
株主数が多くなれば︑
株主となる者が譲渡制限の内容を十分に理解したうえで合意しているか疑わしい局面が多くなるであろう
︒
それゆえ︑
定款による譲渡制限の内容については強行法規的に定めておくことにも合理性があると考えられる ︵︒
70︶しかし
︑
たとえば譲渡制限会社における従業員持株制度のように︑
ある程度特定された者により株式が保有されるこ︵一〇九九︶
同志社法学 五八巻三号 八二株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除
とが予定されており
︑
その範囲内で運用されている場合にまで︑
会社法が定める内容と異なることのみをもって︑
定款による譲渡制限を無効とする必要はないと解される
︒
企業間の提携などの場面で︑
提携先が保有する種類株式について︑
譲渡制限を課すこと︑
および提携解消時に一定の金額でその株式を相手方の会社が買い取ることを定款で定めるといったニーズも考えられる
︒
会社法では︑
種類株式ごとに譲渡制限を課すことが明文で許容されたことから︑
このようなニーズに対応しやすくなったとも考えられる︒
さらに多様なニーズに対応するため︑
定款による譲渡制限についてもより柔軟な設計が認められるべきである ︵
によるとにかかわらず契約によると定款
︑
されているかぎり運用で範囲内の利用目的の ︵︑
かつそがあり関連性な合理的と利用目的その︑
が内容の譲渡制限︑
したがって︒
71︶有効性を認め
︑
譲渡制限の効果 72︶が及ぶ当事者が多数の上る場合にはより厳格に合理性を審査すればよいのではないだろうか ︵
︒
73︶取得価額の定め方についても同様のことがいえる
︒
たしかに︑
投下資本の回収の機会を保障することは重要である︒
しかし︑
株式の保有目的によっては︑
それが重視されない場合もありうる ︵取得価なめた定えて考であると合理的が当事者
︑
とはいえないとして回収の投下資本実質的︑
以上される否定が取得の キャピタルゲイン︑
にまで場合そのような︒
74︶額を無効とする必要はないであろう
︒
譲渡制限株式の買取価格は︑
まずは当事者の協議によって決せられるとされているのであるから︵会社一四四条一項︶︑
取得価額についてあらかじめなされた合意もできるかぎり尊重すべきである︒
したがって
︑
取得価額の定め方が︑
取得条項付株式の利用目的と合理的な関連性 ︵︒
ある を有するものであれば︑
有効とすべきで 75︶㈡ 組織再編にかかる買取請求権の排除
Ⅱ
において述べたように︑
商法のもとでは︑
合併等における各種類株主への株式の割当についてあらかじめ定款に定 ︵一一〇〇︶同志社法学 五八巻三号 八三株式の強制取得条項による株式買取請求権の排除 め︵権利調整の定め︶をおくことにより
︑
種類株主総会決議を不要とすることが認められ︑
その結果︑
当該種類株主の株式買取請求権を排除すること認めていたと考えられる︒
権利調整の定めをおくことにより︑
種類決議を不要とすることが認められる根拠として
︑
既存の株主は定款にそのような定めをおく段階で株主総会決議というかたちで同意しており︑
あらたに当該種類株式を取得する者は︑
そのような権利調整がなされることを承知して優先株を取得するのであるから
︑
それによって不利益が生じても問題ないことがあげられている ︵えるものでな株主の定め方が
︑
にかつ対して損害についての予測可能性を与定款︑
合理的が内容の権利調整方法であり として︒
当該︑
前提する解このように︑
もっとも 76︶ければならないとされていた ︵
︒
77︶他方
︑
会社法では前述のように︑
定款の定めによって種類株主総会を不要とした場合には︑
当該種類株主に対し︑
損害の有無にかかわらず株式買取請求権が付与される
︒
たしかに︑
合併の承認について通常の株主総会においても︑
また種類株主総会を通じても議決権を行使する機会がなく︑
かつ︑
受け取るべき合併対価について事前の合意もない場合には
︑
株式買取請求権を与えなければ︑
種類株主には︑
自己の利益が実効的に保障される手段がなくなってしまう ︵されるのであ間交付が対価った従に合意その
︑
がなされており合意でとの会社と種類株主︑
について合併対価︑
し対に これ︒
78︶れば
︑
これに加えて買取請求権という利益保障手段を与える必要性は乏しいと考えられる︒
このような考え方は︑
新株予約権について
︑
会社法でも採用されている︒
すなわち︑
新株予約権の内容として︑
合併時の承継方法について発行時に定めることができるとされているところ︵会社二三六条一項八号イ︶︑
そのような定めがおかれたときは︑
発行時に定められた承継の条件と異なる扱いがされる場合にかぎり
︑
新株予約権者に買取請求が付与される︵会社七八七条一項一号︑八〇八条一項一号︶
︒
したがって
︑
発行会社を消滅会社とする合併の効力発生を取得事由としてその種類の株式の全部を取得することと︵一一〇一︶