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第7章上黒岩遺跡出土の赤色物

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Academic year: 2021

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第7章 上黒岩遺跡出土の赤色物

愛媛県上浮穴郡美川村上黒岩遺跡出土の石偶(第3部第3章,図206―8)に付着する赤色物が何 であるかを知るために,顕微鏡観察と蛍光X線分析をおこなった。経緯は,綿貫氏による目視での 観察で,本資料の背面下半部に付着する赤色物が赤色顔料ではないかとの指摘を受け,筆者等にそ の評価を依頼されたことによる。

出土赤色顔料は,現在までの調査によって,水銀を主成分とする朱(HgS)と赤色の酸化鉄(FeO) に発色の要因があるベンガラが知られている。

目視(左右1.5)による観察では,綿貫氏の指摘のとおり赤色物が付着しているが,極めて微量 である。実体顕微鏡(1〜40倍)による観察では,裏面下半部に幅約1mm,長さ約8mmで直線 状に薄く見え(図288―拡大写真),上半部へさらに薄く続いているように見える。

赤色物の粒子の形態や状態等を把握するために,針先に付く程度の極微量の試料を実体顕微鏡下 でサンプリングをおこなった。生物顕微鏡用試料としてプレパラート1枚と,電子顕微鏡用試料と してカーボンテープに貼り付けた試料1点を作成した。通常であればプレパラートは複数枚作成す るが,今回は付着が微量であることから資料の保全を考慮し,1枚とした。

生物顕微鏡(50〜400倍)を用いた落射光および透過光でのプレパラートの観察から,我々が日 常見る不定形なベンガラ粒子を確認した。ベンガラにはパイプ状の粒子を含んでいることがあるが,

本試料には認められなかった。電子顕微鏡(20〜50,000倍)での観察でも,パイプ状の粒子を含ん でおらず,層状(鱗片状)の構造をもつベンガラ粒子が確認された(図288―ベンガラ粒子)。

蛍光X線分析は,電子顕微鏡に付帯するEDAX社製DX―4(電圧:25Kv,時間:100秒,真空)を 用いておこなった。鉄,珪素等が検出されたが,水銀は検出されなかった。赤色の由来となる主成 分元素は鉄と考えられる。

以上のことから,本資料に付着する赤色物は,我々が日常みるベンガラといえる。

ただし,今回報告したベンガラと同様な赤色物は,赤鉄鉱として自然界にも存在し,微量であれ ば赤色の酸化鉄粒として土壌や土器の胎土中にも含まれる場合がある。極微量の赤色物が直線状に 付着するという実体顕微鏡での観察所見から,二次的に赤色物が付着した可能性も考えなければな らない。

この赤色物を赤色顔料として評価するためには他の石偶の観察も含めて考古学的に結論をだす必 要があろう。

(志賀智史・本田光子)

国立歴史民俗博物館研究報告 154 20099

502

(2)

分析資料写真(枠内を拡大) 拡大部分トレース

拡大写真 1

拡大写真 2 ベンガラ粒子(電子顕微鏡)

図289 石偶 8 付着の赤色物

4部 分析・考察 7章 上黒岩遺跡出土の赤色物

503

参照

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