様式8の1の2 別紙2
論文審査の結果の要旨
専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 圓谷 友紀
本論文は,「並列化前処理付きクリロフ部分空間法を使用した電磁界解析の高速化に 関する研究」と題し,各種オーダリングと並列化手法の特質についてまとめたもので ある。有限要素法による電磁界解析では,通常,大規模疎行列を含む線形方程式は前 処理付きクリロフ部分空間法で解かれる。電磁界解析を実応用レベルで利用することを 鑑みた場合,さらなる高速化が必要となる。計算時間の大部分を占める反復解法の高速 化を実現するため,効率的な並列化手法が望まれる。並列性能を高める技法としてブロック マルチカラーオーダリングがある。本手法は行列のグラフ構造に基づきサブブロックを作る アルゴリズムで,ブロック分割が収束特性に大きく影響を与える問題点があった。
そこで,本研究ではReverse Cuthill-McKeeから得られるレベル構造をブロック化に使 用するマルチカラーオーダリング(以下 RBMC)を新たに提案した。RBMCは従来法 よりも色数とバンド幅が少ない。一方,ブロック内の未知変数の数が均等でないため,
前進・後退代入におけるロードバランスが悪化する。そこで,ロードバランスの改善 を目的として,さらに,節点のブロック化手順を修正したModified RBMCを開発した。
Modified RBMCではロードバランスの改善により計算効率が向上し,RBMCの場合より もキャッシュミスの少ない演算を実現することに成功した。以上より,Modified RBMC は電磁界解析に要する計算時間を従来法に比べて,五分の一程度減じることに成功し,実用 解析の効率化に貢献することができた。
本研究で得られた成果は,以下のようになる。
(1) マルチカラーオーダリング(MC)を援用して,Eisenstatの方法における前進・後 退代入を並列化する技法を開発した。本手法では,行列ベクトル積に費やす時間 が総計算時間に含まれない。それゆえ,Reverse Cuthill-McKee付きブロック化前 処理以上の高速化が実現された。
(2) レベル構造をブロック化に使用したマルチカラーオーダリング(RBMC)を新た に提案した。従来法よりも少ない通信・同期コストで,前進・後退代入を並列化 できることを明らかにした。また,従来法で必要であったパラメータの設定が不 要となり,利便性が向上した。
(3) RBMCを使用すると,前進・後退代入のロードバランスが悪化するので,その改
善策(Modified RBMC)を検討した。その結果,少ない色数のまま,均等な大き さの小行列を対角に配置することができ,ロードバランスが改善された。
(4) Modified RBMCの 性 能 をcache-cache elements法 を 導 入 し た 解 法 と 比 較 し た 。 Modified RBMCは 全 て の 非 零 要 素 を 用 い て 前 進 ・ 後 退 代 入 を 評 価 で き る た め , cache-cache elements法を使用するよりも良好な収束特性を示した。それゆえ,本 数値実験では,Modified RBMCを使用する方が高速であった。
本論文については,2016年 2月 10日に審査員全員,及び,関連分野の研究者が出席 して公聴会が開催された。研究内容に関する発表の後,質疑応答が行われ,活発な議 論がなされた。公聴会終了後,学位審査委員会を開催し,本論文の内容について詳細 に検討した。その結果,本研究により,計算電磁気学,及び,並列計算の分野におい て新しい知見が得られたことが認められ,本論文は工学的に価値が高く,学術レベル,
独創性,実用性において優れたものと判断した。
よって,本論文は博士(工学)の学位論文に値するものと認める。