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日本年金学会誌第 36 号 (2017 年 4 月 ) ある そして 多くの場合 雇用企業と企業年 3. 年金数理人が 年金を巡る情報発信金契約を結んでいる顧客向けに 仕組みの説に関して これまで果たしてきた役明 を中心とした情報発信を行ってきた 割は十分であ たとえば 定期的に企業年金の財政状況を

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に考慮すると、やはり現行の制度のままで支給 し続けるのは時代にそぐわないことになる。 従って、中高齢寡婦加算から支給調整の仕組 み自体は整える必要があると考える。

5 . 終わりに

夫=会社員、妻=専業主婦をモデルとしていた 日本の公的年金制度であるが、共働き世帯の増 加など家庭や就労が変わりつつある中、中高齢寡 婦加算を中心として遺族給付のあり方を検討した。 本研究で述べた中高齢寡婦加算の段階的な支 給調整の仕組みを制度として実施した場合、受 給者である妻が、支給停止がかからないよう就 労調整を行う可能性もあり、制度を効果的に実 施するためには受給者の就労への支援と企業側 の受給者の採用への支援なども必要になる。 また、マイナンバー制度により行政側から 個々人の収入・所得、資産の把握が容易にはな るが、死亡した夫や受給する妻の収入や資産を 要件とする停止制度を検討するのであれば、そ の事務処理上のコストも考慮に入れなければな らない。 さらに、そもそも遺族基礎年金失権時に40 歳以上かどうかによって受給可能かどうかが決 まるという、年齢による線引きのあり方につい ての議論も出てくるであろうし、父子家庭にも 支給される遺族基礎年金と異なり、寡婦には支 給されて、寡夫には支給されないなど、中高齢 寡婦加算の支給を巡る問題は他にもある。遺族 給付を議論するのであれば、年金財政により大 きな影響を与える、中高齢寡婦加算を除いた原 則額の遺族厚生年金の支給についても考察する 必要もあるだろう。 新法の年金制度となって30年以上が経過し た今、遺族給付を巡る制度上の問題点は次々と 出てくるが、これらを含め今後の議論のための 研究課題とする。 <参考文献> [1] 健康と年金出版社(2016)『2016年版 公的年 金給付の総解説』 [2] 厚生労働省(2011)「生計維持関係等の認定基準 及び認定の取扱いについて(平成23年3月23 日年発0323第1号)(日本年金機構理事長あて 厚生労働省年金局長通知)」 [3] 厚生労働省(2014)『平成26年版 厚生労働白書』 http://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/ [4] 厚生労働省(2015)『平成26年度 厚生年金保険・ 国民年金事業の概況』 http://www.mhlw.go.jp/file/06 -Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/H26.pdf [5] 厚 生 労 働 省( 総 務 省 統 計 局 )(2016)『 平 成 26年度 厚生年金保険・国民年金事業年報』 https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103. do?_toGL08020103_&listID=000001148498&reque stSender=estat

[6] 厚生労働省(総務省統計局)(2014)『年金制度 基礎調査(障害年金受給者実態調査)平成26年』 https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103. do?_toGL08020103_&listID=000001142349&disp =Other&requestSender=estat

[7] 厚生労働省(総務省統計局)(2015)『年金制度 基礎調査(遺族年金受給者実態調査)平成26年』 https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103. do?_toGL08020103_&listID=000001157844&disp= Other&requestSender=estat [8] 下野恵子・竹内滋子(2011)「遺族厚生年金の課 税化による税・社会保険料収入増の試算―非課 税所得と租税・社会保険料負担の公正性」『日本 経済研究』№65,2011.7 [9] 内 閣 府 男 女 共 同 参 画 局(2015)『 男 女 共 同 参 画 白 書  平 成27 年 版 』 http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/ h27/zentai/index.html [10] 文部科学省(総務省統計局)(2016)『学校基本調査』 h t t p : / / w w w. e - s t a t . g o . j p / S G1/ e s t a t / L i s t . do?bid=000001015843

自 由 論 題

1 . はじめに

今年度(2016年度)の日本年金学会の研究 発表会の共通論題テーマは「年金を巡る情報発 信のあり方」である。これは、年金制度に関す る「正確な事実」や「真に議論すべき課題」は 世間一般には必ずしも正確に伝えられておらず、 誤った認識が建設的な議論の足枷にすらなって いるという現状から、従来の「広報」や「仕組 みの説明」の視点だけでなく、「制度の意義・ 役割」や「誤解・曲解の解消」、さらには「年 金に関する教育」などを含めた様々な角度から、 「年金をどう伝えるか」を議論すべきとの問題 意識に立つものである。 本稿は、年金数理人という年金に関する専門 職の立場から議論に参加するものである。そこ では、まず、「年金数理人は、年金を巡る情報 発信に関して、これまでどのような役割を果た してきたか?」を振り返る。次に、「年金数理 人が、年金を巡る情報発信に関して、これまで 果たしてきた役割は十分であったか?」につい て論じる。そして、最後に、これまで果たして きた役割が、もし不十分であったと考える場合、 「年金数理人が、年金を巡る情報発信に関して、 役割を拡大するための課題は何か?」について 考察を行う。

2 . 年金数理人は、年金を巡る情報発信

に関して、これまでどのような役割

を果たしてきたか?

年金を巡る情報発信に関する年金数理人の役 割を論ずる前に、年金数理人の職務を整理して おく。(参考1参照)

年金を巡る情報発信と年金数理人

片寄 郁夫* *りそな銀行 年金信託部 E-mail: ikuo.katayose@resonabank.co.jp なお、本稿の内容は著者個人の見解であり、著者の所属団体 の見解を示すものではない。 (参考1)年金数理人の職務 ■ ■ 法律上の職務 • 確定給付企業年金等が提出する年金数理 に関する書類が、適正な年金数理に基づ いて作成されていることを確認すること。 • 厚生年金基金の指定年金数理人は、それ に加え、継続的に基金の財政状況の診断 や財政運営へのアドバイスを実施してい る。 ■ ■ 社会・経済環境の変化に伴い職務は多 様化 • 退職給付債務(PBO)等の評価・確認に 関する業務 • 退職金、企業年金、人事制度の設計を 中心としたコンサルティング業務 • 年金制度の債務及び資産運用のリスク を総合的に管理する業務(年金ALM、 LDI)等 出所:JSCPA(日本年金数理人会)の Web サイトより 抜粋 年金数理人の職務には、法律に規定された職 務と、法律には規定されていないが、その専門 性を基に行っている職務があるが、これが「本 業」と言える。 そして、「本業」以外にも、その専門性を背 景に、主に「広報」、「教育」、「公益」の観点か ら年金を巡る情報発信を行ってきた。 (1) 「本業」で果たしてきた役割 大部分の年金数理人は民間企業の被雇用者で

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ある。そして、多くの場合、雇用企業と企業年 金契約を結んでいる顧客向けに、「仕組みの説 明」を中心とした情報発信を行ってきた。 たとえば、定期的に企業年金の財政状況を チェックし、財政運営基準上の掛金の見直し基 準に該当するか否か、あるいは財政運営基準弾 力化の内容とそれを適用すべきか否か、に関す る助言などを、顧客に対面あるいはセミナー開 催などを通じて情報発信を行ってきた。 このように、「本業」における情報発信の主 要な相手が、顧客である企業向けであることが 年金数理人の特徴と言える。 (2) 「広報」で果たしてきた役割 顧客以外の企業等や個人をも対象とした「広 報」による情報発信にも関与してきた。 たとえば、企業年金に関する法改正の動向や 会計基準の変更が企業経営に与える影響等を、 雇用企業あるいは専門職組織(日本年金数理人 会(以下JSCPAと略)、日本アクチュアリー会 (以下IAJと略))の広報誌やウェブサイトなど を通じて情報発信を行ってきた。 (3) 「教育」で果たしてきた役割 年金数理人は、個人で、あるいは専門職組織 (JSCPA, IAJ)を通して、大学院等の年金数理 教育に関与してきた。 た と え ば、IAJ は京 都 大 学 他4大 学 に、 JSCPAは大阪大学他6大学に講師を派遣して いる。 (4) 「公益」で果たしてきた役割 年金数理人は、個人で、あるいは専門職組織 (JSCPA, IAJ)を通して、企業年金関連事項に 関する提言や、関係機関が公表する公開草案に 対するコメント提出等を通じた情報発信を行っ てきた。 たとえば、JSCPAは、2015年7月に「確定 給付企業年金における掛金拠出の弾力化につい て(提言)」を公表、10月には国際会計基準審 議会の公開草案に対するコメントを提出してい る。

3 . 年金数理人が、年金を巡る情報発信

に関して、これまで果たしてきた役

割は十分であったか?

前述のように、年金数理人が、年金を巡る情 報発信に関し、専門職として一定の役割を果た してきたのは事実であろう。 しかし、毎日のように年金破綻論のような報 道が繰り返される中、一定水準以上の専門知識 を有する専門職として、さらなる役割を担う必 要があるのではないか? そこで、年金数理人が、年金を巡る情報発信 に関して、これまで果たしてきた役割の十分性 を、再び「本業」「広報」「教育」「公益」の観 点から検証する。 (1) 「本業」で果たしてきた役割は十分であ ったか? やや顧客向けの「仕組みの説明」に偏り、「制 度の意義・役割」に関する情報発信が必ずしも 十分ではなかったのではないか? たとえば、「給付水準の低下が見込まれる公 的年金を補完するものとして、企業年金が重 要!」といった説明をしてきたかもしれないが、 長生きや物価の変動等への対応可能性をも考慮 した、公的年金と私的年金(企業年金を含む) との特性の相違点等について十分な説明ができ ていたであろうか? (2) 「広報」で果たしてきた役割は十分であ ったか? 企業年金以外の、公的年金や税制をも含む、 もっと幅広い視点からの情報発信ができたので はないか? (3) 「教育」で果たしてきた役割は十分であ ったか? 大学院等への年金数理教育に加え、中学・高 校への年金教育や地域での啓発活動等に関する 支援もできたのではないか? (4) 「公益」で果たしてきた役割は十分であ ったか? 学会や国際会議等での論文・発表を活発に行

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ある。そして、多くの場合、雇用企業と企業年 金契約を結んでいる顧客向けに、「仕組みの説 明」を中心とした情報発信を行ってきた。 たとえば、定期的に企業年金の財政状況を チェックし、財政運営基準上の掛金の見直し基 準に該当するか否か、あるいは財政運営基準弾 力化の内容とそれを適用すべきか否か、に関す る助言などを、顧客に対面あるいはセミナー開 催などを通じて情報発信を行ってきた。 このように、「本業」における情報発信の主 要な相手が、顧客である企業向けであることが 年金数理人の特徴と言える。 (2) 「広報」で果たしてきた役割 顧客以外の企業等や個人をも対象とした「広 報」による情報発信にも関与してきた。 たとえば、企業年金に関する法改正の動向や 会計基準の変更が企業経営に与える影響等を、 雇用企業あるいは専門職組織(日本年金数理人 会(以下JSCPAと略)、日本アクチュアリー会 (以下IAJと略))の広報誌やウェブサイトなど を通じて情報発信を行ってきた。 (3) 「教育」で果たしてきた役割 年金数理人は、個人で、あるいは専門職組織 (JSCPA, IAJ)を通して、大学院等の年金数理 教育に関与してきた。 た と え ば、IAJ は京 都 大 学 他4 大 学 に、 JSCPAは大阪大学他6大学に講師を派遣して いる。 (4) 「公益」で果たしてきた役割 年金数理人は、個人で、あるいは専門職組織 (JSCPA, IAJ)を通して、企業年金関連事項に 関する提言や、関係機関が公表する公開草案に 対するコメント提出等を通じた情報発信を行っ てきた。 たとえば、JSCPAは、2015年7月に「確定 給付企業年金における掛金拠出の弾力化につい て(提言)」を公表、10月には国際会計基準審 議会の公開草案に対するコメントを提出してい る。

3 . 年金数理人が、年金を巡る情報発信

に関して、これまで果たしてきた役

割は十分であったか?

前述のように、年金数理人が、年金を巡る情 報発信に関し、専門職として一定の役割を果た してきたのは事実であろう。 しかし、毎日のように年金破綻論のような報 道が繰り返される中、一定水準以上の専門知識 を有する専門職として、さらなる役割を担う必 要があるのではないか? そこで、年金数理人が、年金を巡る情報発信 に関して、これまで果たしてきた役割の十分性 を、再び「本業」「広報」「教育」「公益」の観 点から検証する。 (1) 「本業」で果たしてきた役割は十分であ ったか? やや顧客向けの「仕組みの説明」に偏り、「制 度の意義・役割」に関する情報発信が必ずしも 十分ではなかったのではないか? たとえば、「給付水準の低下が見込まれる公 的年金を補完するものとして、企業年金が重 要!」といった説明をしてきたかもしれないが、 長生きや物価の変動等への対応可能性をも考慮 した、公的年金と私的年金(企業年金を含む) との特性の相違点等について十分な説明ができ ていたであろうか? (2) 「広報」で果たしてきた役割は十分であ ったか? 企業年金以外の、公的年金や税制をも含む、 もっと幅広い視点からの情報発信ができたので はないか? (3) 「教育」で果たしてきた役割は十分であ ったか? 大学院等への年金数理教育に加え、中学・高 校への年金教育や地域での啓発活動等に関する 支援もできたのではないか? (4) 「公益」で果たしてきた役割は十分であ ったか? 学会や国際会議等での論文・発表を活発に行 うことにより、自分たちの研鑽に加え、もっと 広く世の中に貢献できたのではないか? また、政治家、メディア、有名な年金専門家! の誤解・曲解に基づく発言に対し、何らかの形 でコメントを出すことがあってもよかったので はないか?

4 . 年金数理人が、年金を巡る情報発信

に関して、役割を拡大するための課

題は何か?

このように、年金数理人が、年金を巡る情報 発信に関して、これまで果たしてきた役割は、 必ずしも十分なものとは言えない。 そこで、最後に、役割を拡大するための課題 を「継続的な能力開発が必要である!」、「年金 の専門職として情報発信することの難しさ!」、 「雇用法人とのコンフリクト!」の観点から考 察する。 (1) 継続的な能力開発が必要である! 大部分の年金数理人は、これまで企業年金に 関する業務が中心であった。このため、たとえ ば、公的年金や社会保障に関する制度の意義・ 役割に関しては、公に情報発信する自信がなく、 その話題を避けてきたように思われる。このた め、企業年金周辺の知識の補強が必要である。 また、ほとんどの企業年金の顧客は、たとえ 年金数理人の言うことが理解できなくても、基 準であればと従ってくれた。しかし、年金を巡 り広く情報発信を行う場合は、そんなことは通 用しない。このため、コミュニケーション能力 の訓練が必要である。 このような能力向上のためには、もちろん個 人の努力が必要である。しかし、専門職組織で あるJSCPA, IAJが一定の役割を果たすことが、 各会員の能力向上への近道であると考えられる。 たとえば、IAJは、資格試験の内容を今年度 から改正し、正会員になるために必要な知識の 修正を図っている。具体的には、アクチュアリー としての実務を行う上で必要な専門的知識およ び問題解決能力を有するかどうかを判定するこ とを目的とする第2次試験の年金コースで、公 的年金を含む、企業年金周辺の知識を拡充して いる。(参考2参照) (参考 2)IAJ の資格試験制度の改正 ■ 第2次試験「年金コース」を今年度か ら改正 ■ 平成25年6月の「健全化法」の成立等、 環境変化に伴うもの。 ■ 厚生年金基金制度は試験範囲に含める が必須としない。 ■ 公的年金制度の充実。 ■ 外部積立型退職一時金制度(中退共等) の追加。 ■ 個人型制度(個人型DC等)の追加。 ■ 会計分野の充実(国際会計基準を含む)。 出所:IAJ の Web サイト「平成 28 年度以降の資格試験(年 金コース)の改正について」より筆者作成 ま た、IAJ、JSCPA は、 継 続 教 育 制 度 (Continuing Professional Development )の改正・

創設により、正会員になった後の資質・能力の 維持向上を図っている。具体的には、会員とし ての資質・能力の維持向上に資する活動(集合 研修、自己学習、執筆等)を指定し、一定期間 における単位数を履修目標として設定すること により、会員が専門職能者としての資質・能力 の維持向上を自ら図ることを支援している。(参 考3参照) (参考 3)IAJ,JSCPA の継続教育制度 ■ 継続教育制度(Continuing Professional Developmentを略してCPD) ■ IAJは平成27年度に改正、JSCPAは平 成28年度に創設 ■ 会員が専門職能者としての資質・能力 の維持向上を自ら図り、もって公益に 資することが目的 ■ 会員としての資質・能力の維持向上に 資する活動(集合研修、自己学習、執 筆等)を指定し、一定期間における単 位数を履修目標として設定している。

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(2) 年金の専門職として情報発信すること の難しさ! 世の年金専門家と言われる人の中には、年金 に関する話題に関して、かなり広範囲に、自由 に、時には無責任と思われるような情報発信を する人がいる。これに対し、年金数理人は、「本 業」を中心に、専門職としての社会的な信頼を 保つために、責任をもった情報発信に努めてき た。 年金数理人が「本業」すなわち、専門職とし ての業務を行う場合には、JSCPA行動規範を 遵守することが求められている。JSCPA行動 規範では、専門職としての対象業務は「厚生年 金基金・確定給付企業年金・国民年金基金の数 理計算業務と法令に定める確認業務、退職給付 会計の数理計算業務」に限定されている。そし て、専門職としての業務を行う場合は、標準的 な取扱いを含む実務基準等が準備されており、 当該実務基準等に即した行為は妥当な行為とさ れている。(参考4参照) (参考 4)JSCPA の行動規範から ■ 2条 行動規範の対象となる業務は以下の通 りである。 (1)厚生年金基金の数理計算業務及び法令 に定める確認業務 (2)確定給付企業年金の数理計算業務及び 法令に定める確認業務 (3)国民年金基金の数理計算業務及び法令 に定める確認業務 (4)退職給付会計に関する数理計算業務 ■ 6条 会員は、関係法令及び本会定款並びに 本会が定める規則の他、適切な実務基準 に従って業務を遂行しなければならない。 出所:JSCPA の Web サイトより抜粋 一方、年金数理人の多くはIAJ会員でもあり、 IAJ行動規範を遵守することが求められている。 IAJ行動規範では、専門職としての対象業務が 「会員としての専門能力が必要とされる業務又 は会員の資格に基づく活動(専門職能に基づく 助言、勧告及び意見のほか、アクチュアリーと して業務提供するその他のサービスを含む)」 とされ、業務範囲を幅広くとらえることが可能 である。(参考5参照) しかし、そのための実務基準等が必ずしも準 備されているわけではない。 (参考 5)IAJ の行動規範から ■ 2条 会員は、会員としての専門能力が必要 とされる業務又は会員の資格に基づく活 動(専門業務という)を行う場合には、 この行動規範に従うものとする。 (注:「専門業務」には、専門職能に基 づく助言、勧告及び意見のほか、アク チュアリーとして業務提供をするその他 のサービスを含む。) ■ 4条 会員は、本会における会員資格の種類 と専門能力に応じて専門業務を行うもの とする。 (注:専門業務を行うための資格基準 等に通じ、これを遵守することは、アク チュアリーの専門職能者としての責任で ある。) 出所:IAJ の Web サイトより抜粋 このように見ると、年金数理人が、「本業」 の顧客向けで、「仕組みの説明」に偏りがちだっ たのは、JSCPA行動規範に忠実で、実務基準 等により業務を安心して遂行できたため、と言 う解釈が可能であろう。 年金数理人がより幅広い視点からの情報発信 を行うためには、専門職としての対象業務に関 し議論を重ねることが必要ではないだろうか? その上で、対象業務を拡大する場合は、必要に 応じ、実務基準等の整備も検討することになる。 また、専門職としての対象業務ではなくても、 年金数理人が発信したほうが公益に資する分野 もあるものと考えられる。その分野については、 年金数理人としてどのように情報発信を行うか

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(2) 年金の専門職として情報発信すること の難しさ! 世の年金専門家と言われる人の中には、年金 に関する話題に関して、かなり広範囲に、自由 に、時には無責任と思われるような情報発信を する人がいる。これに対し、年金数理人は、「本 業」を中心に、専門職としての社会的な信頼を 保つために、責任をもった情報発信に努めてき た。 年金数理人が「本業」すなわち、専門職とし ての業務を行う場合には、JSCPA行動規範を 遵守することが求められている。JSCPA行動 規範では、専門職としての対象業務は「厚生年 金基金・確定給付企業年金・国民年金基金の数 理計算業務と法令に定める確認業務、退職給付 会計の数理計算業務」に限定されている。そし て、専門職としての業務を行う場合は、標準的 な取扱いを含む実務基準等が準備されており、 当該実務基準等に即した行為は妥当な行為とさ れている。(参考4参照) (参考 4)JSCPA の行動規範から ■ 2条 行動規範の対象となる業務は以下の通 りである。 (1)厚生年金基金の数理計算業務及び法令 に定める確認業務 (2)確定給付企業年金の数理計算業務及び 法令に定める確認業務 (3)国民年金基金の数理計算業務及び法令 に定める確認業務 (4)退職給付会計に関する数理計算業務 ■ 6条 会員は、関係法令及び本会定款並びに 本会が定める規則の他、適切な実務基準 に従って業務を遂行しなければならない。 出所:JSCPA の Web サイトより抜粋 一方、年金数理人の多くはIAJ会員でもあり、 IAJ行動規範を遵守することが求められている。 IAJ行動規範では、専門職としての対象業務が 「会員としての専門能力が必要とされる業務又 は会員の資格に基づく活動(専門職能に基づく 助言、勧告及び意見のほか、アクチュアリーと して業務提供するその他のサービスを含む)」 とされ、業務範囲を幅広くとらえることが可能 である。(参考5参照) しかし、そのための実務基準等が必ずしも準 備されているわけではない。 (参考 5)IAJ の行動規範から ■ 2条 会員は、会員としての専門能力が必要 とされる業務又は会員の資格に基づく活 動(専門業務という)を行う場合には、 この行動規範に従うものとする。 (注:「専門業務」には、専門職能に基 づく助言、勧告及び意見のほか、アク チュアリーとして業務提供をするその他 のサービスを含む。) ■ 4条 会員は、本会における会員資格の種類 と専門能力に応じて専門業務を行うもの とする。 (注:専門業務を行うための資格基準 等に通じ、これを遵守することは、アク チュアリーの専門職能者としての責任で ある。) 出所:IAJ の Web サイトより抜粋 このように見ると、年金数理人が、「本業」 の顧客向けで、「仕組みの説明」に偏りがちだっ たのは、JSCPA行動規範に忠実で、実務基準 等により業務を安心して遂行できたため、と言 う解釈が可能であろう。 年金数理人がより幅広い視点からの情報発信 を行うためには、専門職としての対象業務に関 し議論を重ねることが必要ではないだろうか? その上で、対象業務を拡大する場合は、必要に 応じ、実務基準等の整備も検討することになる。 また、専門職としての対象業務ではなくても、 年金数理人が発信したほうが公益に資する分野 もあるものと考えられる。その分野については、 年金数理人としてどのように情報発信を行うか についても議論を重ねることが必要ではないだ ろうか? そして、その議論の場は専門職組織である JSCPA, IAJであることが望ましい。なぜなら、 それが専門職組織の重要な役割であるからであ る。(参考6参照) (参考 6)アクチュアリー組織の役割 ■ 会員の品質保証 アクチュアリーの正会員資格は、国家 資格でも公的資格でもなく、専門職組織 には、会員が社会から信頼を得るために、 会員の品質をユーザーに保証する役割が ある。 ■ このような役割を果たすため、 • 会員への資格取得前の教育・資格試験 の提供 • 会員への資格取得後の行動規範・実務 基準の提供、プロフェッショナリズム の勧奨、継続的な能力開発 • 研究調査 • 関係団体との連携 出所:国際アクチュアリー会の Web サイト文書「The Role of the Actuary」を参考に筆者作成

5 . 雇用企業とのコンフリクト!

年金数理人は、「専門的職能人としての技術 及び注意をもって、公正かつ誠実に業務を遂行 すること」が求められている。 一方、前述したように、大部分の年金数理人 は民間企業の被雇用者で、多くの場合、雇用企 業と企業年金契約を結んでいる顧客向けの助言 が中心である。 このような場合、年金数理人の顧客への助言 方針と、雇用企業の経営方針との間でコンフリ クトが生じることが考えられる。 たとえば、顧客である厚生年金基金は、基金 事務局、設立事業所、加入者・受給者から構成 されるが、平成25年6月の「健全化法」の成 立により、全ての厚生年金基金は今後の選択肢 を選ぶことを迫られている。その選択肢には、 基金解散も含まれている。基金解散は、収益が 減少する雇用企業にとって不都合な選択肢であ る。また、職を失う基金事務局、受給権が棄損 される加入者・受給者にとっても不都合な選択 肢である。一方、基金を解散しないことは、設 立事業所に、給付に比し過大な掛金リスクを負 わせる可能性があり、将来的に設立事業所の破 綻を招く恐れがある。このような場合、年金数 理人がどのような助言をすべきか、は単純な問 題ではない。 コンフリクトの対象は、場合によっては、規 制・監督機関等をも含めた、さらに広い範囲を 考慮しなければならないケースも考えられる。 このようなコンフリクトにどのように対処す べきかについての議論の場を、専門職組織であ るJSCPA, IAJが提供することが望まれる。

6 . おわりに

年金数理人は、個人と組織が一緒に考え、行 動することによって、専門職としての品質の維 持と情報発信等による公益への貢献に努めなけ ればならない。 <参考文献> [1] JSCPA 行動規範,http://www.jscpa.or.jp/about/pdf/ kodokihan.pdf [2] IAJ 行 動 規 範,http://www.actuaries.jp/intro/kihan. pdf

参照

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