機関事故予防のために
目次
§1 機関事故の発生状況や事故原因傾向
・・・
P. 2
§2 当組合に於ける機関事故に起因する事故傾向 ・・・
P. 31
§3 油関係
・・・
P. 72
§4 機関室マネージメント (ERM)
・・・
P. 91
§5 離路が発生した場合の対応
・・・
P. 105
1
§1 機関事故の発生状況や事故原因傾向
一般に事故原因はヒューマンエラーが主因と言われていますが、機関系も同様
なのか、統計データによりその傾向を紹介する。
機関故障について、海上保安庁発行の「海難の現況と対策について」から、2009
年から6年分のデータを参照したところ、取扱不良が年平均で7割以上であり、航
海系事故と同様にヒューマンエラーによる事故が多く発生してる模様。
取扱不良には機関の操作ミスだけでなく、点検整備の不履行(怠慢)も含まれて
おり、機関はハードのため、原因は装置の欠陥ととらわれがちですが、実際はそ
うではない傾向。
日本海事協会誌に紹介されている「損傷のまとめ」も参考に、どのような注意が
必要かについてご説明する。
2
1.1 海難統計 (海上保安庁)
3
出典:海上保安庁 「海難の現況と対策について」2009年度∼2014年度を基に弊組合が作成 事故隻数の推移 機関故障 6年間 年平均15%以上 機関故障 15%以上1.1 海難統計 (海上保安庁)
4
機関故障ヒューマンエラーの推移 6年間 年平均7割以上 出典:海上保安庁 「海難の現況と対策について」2009年度∼2014年度を基に弊組合が作成 機関取扱不良 70%以上1.2 海難審判統計 (海難審判所)
5
・定期的な点検をしていなかった *1) ・定期的な部品の交換がなされていなかった *1) ・潤滑油の適切な管理が行なわれていなかった *1) 主機の整備・点検・取扱不良 :約7割 潤滑油等の管理・点検・取扱不良:約2割 *2) 出典:*1)日本船舶機関士協会 会誌No.831 巻頭言「機関故障とヒューマンファクター」 野村優 *2)海難審判所 「レポート 海難審判」2009年度∼2014年度を基に弊組合が作成1.3
損傷統計 (日本海事協会)
①
航行に支障を及ぼした船舶
6
・ 増減あるが長期的に減少傾向 出典:「2014年度の損傷のまとめ」 日本海事協会会誌 No.312 船舶の航行に支障を及ぼした損傷が発生した船舶の隻数と損傷率の年度別推移② 航行に支障を及ぼした損傷の機器別割合
7
出典:「2014年度の損傷のまとめ 図3」 日本海事協会会誌 No.312 内燃機関トラブル: ・燃焼室周り (過給機,シリンダカバー,ライナ,ピストン等) ・クランクピン及び軸受 船舶の航行に支障を及ぼした損傷の機器別の割合 主要因: 主機関8割③機関室配置
軸 受ボイラ
主機関
排エコ
発電機 原動機過給機
8
• 運航に支障を及ぼす機器:主機関、ボイラ、発電機、軸系等
約8割
軸系 補機器 用途: 主機関:推進力発生 発電機:電力供給 ボイラ:燃料や貨物の加熱源 軸系 :推進力伝達航行に支障を及ぼした損傷のうち、ディーゼル主機関に起因した損傷の部位別の割合
④航行に支障を及ぼした損傷のうち
ディーゼル主機関に起因した損傷部位
9
出典:「2014年度の損傷のまとめ 図4」 日本海事協会会誌 No.312 近年注意:<カム軸関係増加> 日本海事協会によれば、低硫黄燃料の特 性に起因すると考えられ ている。 燃料弁 等の漏れ、又は固着の損傷がSOx規制強 化に伴い拡大傾向。 過給機:3割強 シリンダユニット 関係:2割強過給機:3割強
④航行に支障を及ぼした損傷のうち
ディーゼル主機関に起因した損傷部位
10
画像出典:「Management of Marine Fuels and Lubricating Oils」DVD JSU, IMMAJ, JMEA製作
(過給機:排ガスエネルギー を利用して、機関に燃焼用 空気を大量に供給する超高 速回転機)
シリンダユニット関係:
2割強
⑤航行に支障を及ぼした損傷−機器&部位
11
主機関関係 約8割 シリンダユニット関係+過給機⇒約6割 出典:日本海事協会会誌 No292,296,301,304,309,312 2009年度∼2014年度の 「損傷のまとめ」を基に弊組合が作成⑥ 内航貨物船の機関損傷
• 海難審判庁が2000 年から2002 年 に裁決した機関損傷事件に関し、 内航貨物船について損傷箇所を分 析したところ、過給機、シリンダユ ニット系(シリンダ・ピストン関係)が 7割を占めた。 • 日本海事協会 「損傷のまとめ」統 計に類似の傾向。12
出典:海難審判庁 「内航貨物船海難の分析 ∼vol.2 乗揚・機関損傷編∼ 2005年」 シリンダユニット関係+過給機⇒約7割⑦自航不能損傷−機器&部位
13
主機関関係 約6.5割 シリンダユニット関係+軸系⇒約5割 出典:日本海事協会会誌 No292,296,301,304,309,312 2009年度∼2014年度の「損傷のまとめ」を基に弊組合が作成⑧出力低減損傷−機器&部位
14
主機関関係 約9割 出典:日本海事協会会誌 No292,296,301,304,309,312 2009年度∼2014年度の 「損傷のまとめ」を基に弊組合が作成 過給機+シリンダユニット⇒約7割⑨統計まとめ
• 海上保安庁海難統計によれば、人為的要因が約7割を占めた。 • 人為的要因を扱う海難審判所によれば、機関事故は主機の整備・点検・取扱不良 が約7割、潤滑油等の管理・点検・取扱不良が約2割。 • 日本海事協会によれば、航行に支障を及ぼした損傷の機器は主機関であり、部位 は、過給機およびシリンダユニット系(シリンダ・ピストン関係)が約6割を占めていた。 • 約10年前の分析情報だが、海難審判庁時代の内航貨物船に関し裁決した機関損 傷事件は、過給機およびシリンダユニット系(シリンダ・ピストン関係)が7割を占めて おり、上記日本海事協会統計に類似した結果となった。15
機関事故も人為的要因(ヒューマンエラー)によるところが多く、運航の
影響の及ぶ損傷の部位では過給機およびシリンダユニット系(シリン
ダ・ピストン関係)に集中していることが認められた。
1.4 損傷部位の詳細 (日本海事協会)
1.4.1 過給機の損傷
① 損傷特徴
発生割合*1):毎年最多 多い損傷*2) : (1)爆発/オーバーラン (2)振動/異常音 (3)潤滑不足によるロータ軸/軸受けの損傷 原因*2) :低質燃料の使用、燃料弁の噴霧不良、 掃気室の汚損等、保守及び整備不良に 起因する主機関の排気系や燃焼室の 汚損、並びに、過給機入口排ガス温度 などに影響を受けたもの 対策 *4) :保守不良については、機関製造者から発行された取扱説明書 や最新のサービスニュースの収集と、それに従った適切な保守 整備の実施により防止可能16
2011年度 出力低減 T/C爆発 *5) 出典: *1)日本海事協会会誌 2014年度損傷のまとめ No312, *2)日本マリンエンジニアリング学会 「過給機の損傷事故と原因」川合正記著 第51巻 第2号(2016) P76∼P82 *3)日本海事協会会誌 2013年度損傷のまとめ No309 *4)日本海事協会会誌 2012年度損傷のまとめ No304, *5)日本海事協会会誌 2011年度損傷のまとめ No301 チャンピオン!②過給機の損傷 爆発/オーバーランの件数
17
③過給機の爆発
/
オーバーランによって損傷した部位
18
出典:日本マリンエンジニアリング学会 「過給機の損傷事故と原因」川合正記著 第51巻 第2号(2016) P76∼P82 (1) 爆風によって①タービン翼、ノズルリング、 ケーシング等が破損(あるいは,破損した タービン翼等破片の接触により他部位が 破損) し、また、②ローター軸が高速で回転 するため軸/軸受(ジャーナル軸受/スラスト 軸受)が異常摩耗を起こし焼付/掻き傷が発生 及び③軸受が損傷することによって軸の回 転にブレが発生し、コンプレッサ翼とケーシ ングが接触し、共に掻き傷が発生。 (2) 爆発の度合いが大きいと過給機の損傷のみ に留まらず, 過給機から出火、機関室火災 に発展。④爆発/オーバーランとは?
19
【特徴】 主機関から過給機へ接続されている排気管/マニホールドや過給機内に、未燃焼燃料/潤滑油 の油分が堆積し、それらの爆発的に燃焼が発生。その結果、過給機が過回転、もしくは、過給 機そのものが爆発して過給機各部位に損傷を発生。 【メカニズム】 右図に爆発/オーバーランの流れを示す。ピストン抜きを行い、 ピストンおよびピストンリングを適切に整備交換せず使用しつ づけると燃焼ガスが 掃気室に吹き抜ける①ブローバイが発生。 この時、排気ガスが掃気室内へ流入するため、掃気室内が油 堆積物等で汚損された状態であった場合(右下図)には、②こ の堆積物に引火し、掃気室火災が発生する。 この時掃気室から送られてきた空気は、上記火災のため二酸 化炭素を含んだままで燃焼室に送り込まれる。 よって、③燃焼室内では酸欠状態での燃焼(不完全燃焼)すな わち、④未燃焼燃料が多量に、排気管/マニホールド/過給機 (タービン側) へ導かれ、堆積する。 ⑤ある程度蓄積したところで発火/爆発的燃焼が起こり、⑥こ れによって過給機が過回転を起こす。 他にピストンクラウン破孔、燃料噴射弁の噴霧不良、長期的な 減速運転が原因となるケースもある。 出典:日本マリンエンジニアリング学会 「過給機の損傷事故と原因」川合正記著 第51巻 第2号(2016) P76∼P82 油分堆積の掃気室 ②掃気室火災 ③不完全燃焼 ④未燃FO堆積 ⑤ Explosion ①ピストンリンプ整備不良 ブローバイ ⑥Over-run (過回転)⑤爆発/オーバーランの事例
20
出典:日本マリンエンジニアリング学会 「過給機の損傷事故と原因」川合正記著 第51巻 第2号(2016) P76∼P82 【事例】 航行中、突然主機関排気マニホールドが爆発した。 投錨地にて過給機を切り離し、減速航行して港に到着後、以下の損傷が確認された。 ・タービン翼:破損(図1) ・ジャーナル軸受:焼損 ・ラビリンス:破損 ・ノズルリング:曲損(図2) ・スラスト軸受:ホワイトメタル摩減(図3) 掃気室内火災が発生し燃焼室内で燃料が 不完全燃焼、排気マニホールド内に未燃 焼燃料が堆積し爆発、最終的に過給機 のオーバーランに至った。 【対策】 主に日々の点検・整備・清掃が重要 ・排気管/マニホールド/過給機の適切な清掃 ・掃気室(含むドレン管)の適切な清掃 ・ピストンリングの定期的な点検 ・ピストンクラウンの定期的な点検(衰耗量計測 ) ・燃料噴射弁の定期的な点検 図1 図2 図3⑥振動/異常音
【特徴】 タービン翼に不完全燃焼物等が付着する と、 回転の際のアンバランスが生じ、軸受損傷 等に繋がる。 定期的な清掃が重要。 【事例】 航行中、過給機から異常音/振動が発生し、 主機関の性能が低下した。 本船 は曳航され、 入港後、詳細確認が行われた。その結果, 過給機タービン翼及びノズルリングに炭素が 大量に付着しているのが発見された(図4&5)。 汚損された部品の清掃、軸受/シーリング等 の新替及び主機関の整備 (空気冷却器、ピ ストンリング交換等)が実施された。機関の不 完全燃焼による汚れの堆積及び 定期的清掃 の未実施によるもの。21
出典:日本マリンエンジニアリング学会 「過給機の損傷事故と原因」川合正記著 第51巻 第2号(2016) P76∼P82 図4 図5⑦潤滑不足によるローター軸/軸受の焼損
【特徴 *1)】 ローター軸/軸受の焼損は、潤滑不足によるとものと推定 ・潤滑油自体の劣化(水分 等混入) ・軸受油穴の閉塞 ・LOポンプ不具合による潤滑油流量不足 【事例 *2)】 《2014年 油タンカー(船齢10年) 出力低減》 航行中、主機関過給機から異常音及び 振動が発生した。 軸受焼付、コンプレッサ翼とケーシングの 接触による掻き傷が確認され, 損傷箇所 は新替された。 船内業務多忙につきL.O. ポンプ定期点検を 延期しており、軸受の潤滑が適切に行われず 軸受焼付、軸アンバランスによってコン プレッサ翼とケーシングが接触したものと 推測される。22
2014年度出力低減 潤滑不足 出典: *1)日本マリンエンジニアリング学会 「過給機の損傷事故と原因」川合正記著 第51巻 第2号(2016) P76∼P82 *2)日本海事協会会誌 2014年度損傷のまとめ No312 【対策】 メーカインストラクションに基づいた保守計画およびその実行⑧写真集:過給機
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2014年度自航不能 2014年度 出力低減 2014年度 出力低減 2013年度出力低減 2014年度出力低減 オーバーラン 出典:日本海事協会会誌 2013年度、2014年度損傷のまとめ No309,312 2013年度出力低減①損傷特徴
・発生割合:2番目に多い ・損傷部位:燃焼室構成部品の損傷 および 過給機の損傷に至る危険性のある損傷 ・原因 :低質燃料油使用や保守及び整備不良 【低質燃料油の例】 《2011年 ばら積船(船齢24年) 自航不能損傷》 航行中、多くの異常が発生し、最終的にM/E が起動不能となり、本船は曳航さ れた。 M/E のF.O.ポンプ及びバルブが開放され、 必要に応じて新替された。 到着後、No.1, 2&4 ピストンクラウン及び ピストンリングに過剰な摩耗が認められた為 整備済みのものに交換。 原因は低質燃料油の使用と考えられる。24
出典:日本海事協会会誌 2011年度損傷のまとめ No.301 2011年度 自航不能 低質燃料油1.4.2 シリンダユニット関係の損傷
【保守・清掃不良の例】 《2009年 ばら積船(船齢26年) 出力低減損傷》 ●トラブル 1 航行中、M/EのLOが高温になり、M/E が自動停止。 No.6 ピストンクラウン頂部に破穴が認められ 同ピストンは予備品と取り替えられた。 ●トラブル2 その後、M/Eを常用回転数に増速した際にノツキン グ音が発生。 M/Eを停止させ点検。No.6クランクピン及び同軸受の 損傷が認められた。このため、本船は、M/EのNo.6 シリンダをカットの上、修理地まで航行。修理地にて 点検したところNo.6クランクピンの傷及びアラインメント の狂いが認められたため、適切なアライメンすべく クランクピンが約2mm削正された。No.6クランク ピン軸受についても再溶着によるサイズ調整が 行われた。 また、No.6 クロスヘッドピン及び同軸受にも著しい傷が 認められ、クロスヘッドピンは滑らかに削正され、 同軸受は新替えされた。 2009年度 自航不能 整備不良と整備ミス この修理中に、No.6クロスヘッ ドピンの給油 管内及び油溜まり内に布きれの混入が認め られた。 古いLOは、M/Eから廃油タンクに移送され、 サンプタンク、オイルパン及び全入り口側の フィルター清掃が行なわれ、新油 10,000Lが 補油 さ れた。 出典:日本海事協会会誌 2009年度損傷のまとめ No.292
②損傷例
25
③損傷例
【過給機の損傷に至る危険性のある損傷】 《2011年 ばら積船(船齢6年) 出力低減損傷》 航行中、多数のシリンダで掃気室火災警報が発生し、 排気ガス、掃気、冷却水の異常高温が認められた。 掃気トランク内に多数のピストンリングの破片が 認められた。(=ブローバイ) 本船は、圧縮低下及び高温のため回転数を増加でき なくなり、低速 (30から50rpm)で航行した。 停泊後、次の事が認められた。 ・M/Eの全 シリンダライナの内面上部に亀裂が発生 処置:No.1ライナは新替 ・No.1ピストンの上部リング溝の欠損 処置:No.1ピストンクラウンは新替 ・No.1クロスヘッ ドピンベアリングホワイトメタル剥離26
2011年度 出力低減 掃気室火災 本修理するよう船級指定事項が付帯。 後日、以下新替。 ・No.2、No.4、No.5、No.6ピストンリング ・全シリンダライナ ・No.1クロスヘッ ドベアリング 出典:日本海事協会会誌 2011年度損傷のまとめ No.301④写真集:シリンダユニット関係
27
2014年度自航不能 2014年度自航不能 2013年度自航不能 ブローバイ 2013年度自航不能 2012年度 出力低減 2012年度出力低減 低質燃料 出典:日本海事協会会誌 2012∼2014年度損傷のまとめ No.304,309,312③機関室配置
軸 受ボイラ
主機関
排エコ
発電機 原動機過給機
8に同じ
• 運航に支障を及ぼす機器:主機関、ボイラ、発電機、軸系等
軸系 用途: 主機関:推進力発生 発電機:電力供給 ボイラ:燃料や貨物の加熱源 軸系 :推進力伝達 中間軸受 中間軸受:中間軸が自重によるたわみと遠心力により縄跳びの縄のように触れ回るのを 抑制し、正確に軸回転力をプロペラに伝達するために軸心を保持し、軸自重を支える軸受。1.4.3 軸系の損傷
①中間軸損傷例
・中間軸損傷の特徴: 軸の亀裂, 軸受の摩耗/剥離/焼損等 《2011年 ばら積船(船齢11年) 出力低減損傷の事例》 航行中の定期点検時に、機関長により中間軸受 のオーバーヒー トが認められ、直ぐに、主機関の 回転数が下げられた。 状況は次の通りであった。 ・プランマーブロックの潤滑油の液位は低レベル ・L.O.の温度 は100 ℃以上 ・上部カバーの温度 は132℃ 以下応急処置が施された。 ・10リ ッ タ一分のL.O.を補給 ・軸受への冷却海水の量が増えるように 船尾管潤滑油冷却器の冷却海水入り口管のバイパスバルブが開放された 【症状】 到着後、開放点検の結果、メタルの焼損、摩耗、及び、はく離が認められた。 【対策】 損傷したメタルはリメタルされた。 【原因】 冷却海水の不足、及び、L.O.の不足及び劣化と考えられている。28
出典:日本海事協会会誌 2011年度損傷のまとめ No.301 2011年度出力低減② 写真集:軸系(中間軸)
29
2013年度自航不能 2012年度自航不能 2012年度出力低減
2011年度出力低減 2011年度出力低減 2011年度出力低減
1.5 損傷部位まとめ
• 1番多い、過給機の損傷は、①爆発/オーバーラン、②振動/異常音、③潤滑不足による ロータ軸/軸受けの損傷とそれぞれ異質のものであるが、対策に共通することは保守不 良であるため、機関メーカから発行された取扱説明書や最新のサービスニュースの収集 と、それに従った適切な保守整備の実施により防止可能と指摘された。 • 2番目に多い、シリンダユニット関係の損傷は、燃焼室構成部品の損傷および過給機の 損傷に至る危険性のある損傷が主である。これらの原因は低質燃料油使用や保守及び 整備不良であった。 • 3番目に多い、軸系の損傷は、特に軸受に関わる事故は、潤滑油管理やその冷却シス テムの保守整備不足が考えられる。 機関事故においても、根本的な設計不良というより、むしろ、現場乗組員の保守整備管理に 因る、人の介在するものが原因となっている。これは、原理原則に基づいて装置・システム が適切に作動するように、日頃から、計画的に保守・整備・点検し、状態を適切に把握でき る管理体制を整えておくことが重要である。 さらに、船舶管理会社もいくつかの事例から損傷の特徴を抑え、メーカから緊密なバックアッ プを受け、既存の取扱説明書に加え、最新情報を収集し、それらを本船機関長へ適切に実 施させることによって、トラブル抑制に発展させることが必要。30
§2. 当組合における機関事故に起因する事故傾向
2.1 当組合傾向
当組合における2008年から7年分の機関トラブルが原因により発生した
クレームを抽出したところ、全体件数は多くはないが、貨物損害、港湾設備損傷
等が見られた。
2.2 事例紹介
機器別の傾向では、貨物損害は発電機、港湾設備損害は主機に起因する
という結果となった。
それぞれのケースについて、実際の事故例をもとに対策を説明する。
【ご参考】P&I保険でてん補対象外となるケース
保険の取り扱い上、注意が必要なMARPOL違反に関する事例をご紹介する。
31
2.1 当組合傾向
①事故種類別傾向
32
注 * :その他:過怠金、油濁(作動油、潤滑油)、等
貨物損害>港湾設備損害
②直接原因傾向
33
主機+発電機:
約5割
③貨物事故 原因
34
貨物事故=
発電機・電気
④港湾設備損傷 原因
35
港湾設備損害=
主機がトップ
⑤その他 事故原因
36
注 * :その他:過怠金、油濁(作動油、潤滑油)、等
その他=
補機がメイン
2.2事例紹介
①貨物損害(カーゴショーテージ) : ボイラ故障
②港湾設備損傷(海底ケーブル損傷):主機関起動不能
③貨物損傷:発電機再起動不能 (ブラックアウト)
④環境損害 :ボイラ燃焼不良
⑤まとめ
37
①貨物損害(カーゴショーテージ):ボイラ故障
本船はベンゼンを搭載、揚げ地へ向けて航行中、ボイラから外部への漏水が認められ たため、ボイラの運転を中止、貨物のヒーティングができぬまま入港。入港時の貨物タン ク温度は平均5.25℃で融点を下回っていた。 揚荷役開始に先立って、ターミナル側から加熱用蒸気の供給を受けながら荷役を開始し たが、十分に加熱ができなかったため、全量を揚げ切れず(タンク壁等に貨物が残った) 貨物不足損害が発生した。 荷主側は、貨物不足損害に加熱蒸気の供給費用等を含めた約US$20,000をカーゴク レームとして船主へ提起し、船主は約US$10,000(請求額の50%相当)にて解決した。38
事故概要 貨物所有者への支払い費用 : 約US$ 10,000 (約 1.1百万円) サーベイ費用 : 約US$ 2,000 (約 0.2百万円) コレポン費用 : 約US$ 3,000 (約 0.3百万円) 合計 : 約US$ 15,000 (約 1.6 百万円) 保険てん補額機関室で何が起ったか?
(1)機関室でボイラのケーシング下部に漏水が認められたため、ボイラの運転を停止した。 (2)本船搭載のボイラは貫流型で、損傷個所、程度等は明らかになっていないが、水管の破 孔、ドラムの変形等が考えられる。 ・ボイラの損傷事故は、ボイラ水の接触する内部からと燃焼ガスと接触する外部からの損傷と に分けられる。したがって、損傷防止のためには、ボイラ水の適切な管理(水質チェック/化 学的処理/ボイラ水のブローオフ)、燃焼室内部からの点検等が重要となってくる。 *日本海事協会による過去の統計によれば、ボイラ損傷として、①水管や煙管の腐食および 焼損、②ボイラ本体の肌付弁の腐食および摩耗、③安全弁の腐食などと言われており、漏水 の原因としては、水側と燃焼ガス側それぞれの腐食によるものと推定されている。39
写真集
40
ボイラケーシング下部 (上方からの漏水痕) 下部ドラム/マンホール (同様、漏水痕) 上部ボイラケーシング (ペイント膨出)図面集
41
原因分析・・・チェックポイント
【推定原因】 (1)箇所A ボイラ水の管理が不十分な場合で、管内部へのスケールの堆積により局部的に熱伝導率が 低下。その影響で、過熱により材料強度が著しく低下し、破孔が発生。 (2)箇所B ボイラドラムと管との接続は管端を拡管(expanding)して行われる。(右図) 同接続部の緩みの影響によって、同部分から漏水が発生する場合があり、 燃焼室底部が浸水による影響を受ける。 未燃分中に含まれる硫黄分と同漏水の化学反応により硫酸が生成され、腐食に至る。 (3)箇所C ボイラ上部ドラムの変形、膨出はドラム水位低下時の過熱により生じると考えられる。 本来、ドラム水位の自動検知装置により、水位が低下した場合は警報発生、燃料遮断等の安 全保護装置が作動するはずであるが、水位検知装置の不具合を放置した場合に発生しうる。42
画像出典:「Marine Boiler Water/ Cooling Water Management and Distilling plants」DVD:JSU、IMMAJ、JMEA 製作 スケールが原因による破孔(1) スケールが原因による破孔(2) 拡管部構造 火 炉 側 火 炉 側 水 側
負の連鎖
再発防止策
ボイラメーカ取扱の指示(運転操作や各種の点検・整備事項)を十分理解し、忠実に実行。 (1) 管内部へのスケールの付着防止 ① ボイラ水、復水、給水の水質管理 ・スケール付着防止、腐食防止、キャリーオーバー防止のため、各種分析数値をボイラ メーカーの推奨基準値内に維持必要。 分析:最低 1回/7日(高圧ボイラは1回/2日) ② 補給水から混入する不純物の最少化 ・カスケードタンク内清浄管理 ・給水用清水の塩分および硬度成分の制限 ・造水器製造の蒸留水を給水とする場合には、貯蔵タンク容量の確保、 タンク内清浄確保、造水器の適正運転、塩素計の精度管理が必要。 ③ 海水混入の防止 ・プラント構成機器の中にはドレンクーラーがあり海水冷却であるので海水がボイラ水の 系統に混入する可能性がある ・ボイラ水のブローオフ(船外への放出)の際のバルブ操作にも注意を要する ・上記①に示した塩素イオンの継続的な監視が必要43
再発防止策
(2) 低温腐食防止 燃焼ガス中に含まれる硫黄分が管表面に付着し、低温部の腐食に至る ・定期的な炉内の清掃の実施と観察、記録 ・空気過剰率の制御(良好な燃焼が得られる範囲で空気過剰率をミニマイズ) ・蒸気スートブロワ の設備の場合、ドレンの炉内への滴下防止 滴下したドレンが燃焼ガスと反応し箇所Bと類似メカニズムにより腐食破孔が発生 (3) 空焚き防止 ・定期的な安全保護装置の作動点検 低水位(警報、非常停止)、失火検知等 ・付属のトランスミッター/コントローラーの点検と機側機器との整合44
【注意点】 バックファイヤー防止 燃焼不良、失火の繰り返し等により炉内に未燃燃料が堆積する場合があり、再点火 の際に炉内での爆発(バックファイヤー)事故に発展するケースがある。 【再発防止策】 ・失火した際は手動で炉内を強制パージした後、原因調査にあたり、自動での再点火 を繰り返さない (燃焼装置のカバーを開ける際は正面を避けるポジションで実施) ・燃料用電磁弁、バーナーの点検、整備の励行 ボイラなどの補機はJunior(若手)機関士が担当するケースが多く、本件はひとたび事 故が発生すると、輸送活動のベースとなる荷役作業に大きな影響を及ぼすことがある 事例である。 点検・整備作業の重要性を認識させることが重要。
45
再発防止策
【参考】水管理の図表
補助ボイラ水処理
Ca硬度
または軟水器の採用 * 10Ca2+ + 6PO
43- + 2OH- → [Ca5(PO4)2]3Ca(OH)2スラッジ分散率50%
Mg硬度
または軟水器の採用 * Mg2+ + 2OH- → Mg(OH)
2 , 3Mg2 + + 2PO43- → Mg3(PO4)2
SiO2
* MgCl2 + SiO2 + 2NaOH → MgSiO3(分散)+ 2NaCl + H2O
* SiO2 + 2NaOH → Na2SiO3(分散) + H2O Na6P6O18,Na5P3O10
(Na3PO4,Na2HPO4)
濃縮 NaOH, KOH アルカリ腐食 PHと鋼の 腐食量の関係 Max. 35% N2H4・H2O 溶存酸素 または脱気器の採用 * N2H4 + O2 → N2 + 2H2O 不純物の混入 腐食生成物の カスケードタンクでフィルタリング 搬入 低分子量ポリマ 油脂類の カスケードタンクで前処理 混入 凝縮 (SiO2) PO43-濃度 基準値に維持 PH基準値に維持 PH≧11.0に維持 Cl- 濃度 基準値に維持 スケール 付着 防止 PH≦11.8に維持 PH 11.0付近で 腐食量最小 残留N2H4濃度 基準値に維持 清缶剤の 投入 脱酸素剤 の投入 PH基準値に維持 分散剤の 投入 腐食 防止 Cl- 濃度 基準値に維持 PH≧11.0に維持 ブロー キャリ オーバ 防止
46
主な管理項目 主目的 PH 1 腐食の防止 (アルカリ度) 2 シリカや硬度成分によるスケール付着の防止 3 油脂類の伝熱面への付着を防止 リン酸イオン濃度 1 硬度成分によるスケール付着の防止 2 りん酸塩処理の場合は、ボイラ水のPH制御 1 ボイラ水の濃縮度の管理(全蒸発残留物の間接管理) 塩化物イオン濃度 2 キャリオーバの防止 (電気伝導率) 3 混入海水の発見 4 腐食の防止 残留ヒドラジン 腐食の防止 シリカ 1 シリカによるスケールの防止 2 主ボイラではシリカによるキャリオーバーの防止 図出典:海文堂出版「船用ボイラの基礎と実際」 伊丹良治,西川榮一,梅田雅義 共著 図7.13 補助ボイラの水管理 表 7.7 ボイラ水の主な管理項目とその目的 缶水管理記録表例 (月次)添付(1)
②港湾設備損傷(海底ケーブル損傷):主機関起動不能
本船が揚荷役を終え、出港直後に、本船主機の不具合が発生し、緊急投錨。 主機の不具合の改善後に、アンカーを揚錨したところ、海底ケーブル(電力会社の送電 線)が絡まっていた。パイロットの指示で緊急投錨したが、投錨禁止エリアであった。 本船のアンカーは切断され、その後海底ケーブルからダイバー会社により取外された。 当該海底ケーブルには損傷が発生しており、またその損傷に伴う不稼働損害(電力の一 時ストップ)が発生し、所有者は船主対し約US$140,000の請求を提起し、 船主はこれを約US$91,000にて解決。47
海底ケーブル損傷に関わる解決金 : 約US$ 91,000 (約 10.0百万円) 錨及び錨鎖の捜索及び処分費用 : 約US$ 72,000 (約 7.9百万円) 弁護士費用 : 約US$ 30,000 (約 3.3百万円) サーベイ費用 : 約US$ 10,000 (約 1.1百万円) その他費用 : 約US$ 2,000 ( 約 0.2百万円) 合計 : 約US$205,000 (約22.5百万円) 保険てん補額機関室で何が起ったか?
(1)機関部は主機関出港前点検を通常通り実施。船橋からの指令により、主機関をS/Bとした。 (2)その後、MDOを使用して、主機関に「Ahead/Astern」をかけたが、作動良好。
(3)その15分後、C/Eは3/EにFO heating controllerを90℃に設定するように、まず指示。 次に、ターミナル離桟中に、使用燃料をHFOへ切替えるように指示。
既に、出港のために主機関S/Bとなっていた。
(4)更に15分後、船橋よりDead Slow Aheadに主機関操縦ハンドルをとったが、主機関起動に 失敗。その時点で、燃料温度は100℃にまで達していた。 (5)錨泊後、次の作業を実施し、機関復旧作業を完了した。 主機関停止し、全てのポンプを停止させ、燃料系統の温度が少し低下した状態で、燃料系 統から燃料油を排出。 その後、機関用意のため関係する補機を起動し、主機関試運転を再度試み、作動良好。
48
写真集
49
錨のケーブルへの接触状態 錨鎖切断 錨の接続工事
錨鎖と錨のトライアル
主機関燃料供給概念図
50
Auto Deaerating Valve
Main Engine
to fuel injection valve
Fuel Injection Pump
Return Line
FO Strainer(Filter)
STM
Flow Meter Temp Control V
FO Service Tank Press Regulator
(with heating coil) FO Booster Pump
FO Feed Pump (FO circulating Pump)
Flow Meter DO Service Tank P HFO Heater FO D ea er ati on Ch am be r P
(1)C重油=HFO・・・なぜ加熱するの? ・低温や常温で固体の油・・・ラードやバターのイメージ®料理の時に加熱 ・HFOは原油を分留した残り物(アスファルトのようなもの)を薄めて製品化。 ・よって、120∼130℃に加熱しないと、良好な燃焼を得られる状態・粘度にできない。 (A) バター加熱 (B)ベーパーロックメカニズム (2)A重油=MDO・・・過加熱®ベーパーロック? ・MDO:十分粘度低いので常温で使用される。揮発成分や水分や空気を含む。 ・100℃近くに加熱する⇒揮発成分はガス化や水分は水蒸気化や空気は膨張。 ・パイプの中で、このガス、水蒸気、膨張空気が発生すると、MDOの流れをブロック(遮断、閉塞) (3)B重油=TFO(中間重油) ・燃料は粘度の高いものと低いものを混ぜると薄まり(粘度が下がる)、中間的な油となる ・イメージ:濃縮されているカルピスとか液体洗剤などにさらさらの水を混ぜてできた溶液
参考
水
揮発性成分
空気
水
水
加熱 過熱 閉塞解説:舶用燃料の特徴?
原因分析・・・チェックポイント
(1)設定温度90℃・・・機関入り口適正粘度を維持できるように、燃料の使用量、温度&粘度 変化等の状況に応じて適宜調整。 (2)切替タイミグ・・・当該温度設定に切り替えてから、主機関運転までの時間が長過ぎた。 よって、燃料供給管やメインエンジン内に残留していたMDOが揮発ガス化し、エンジンを起動 後連続運転させるための燃料が配管から枯渇したと推測された。 (3)上記推定の燃料配管システムレビュー 主機関燃料供給概念図ご参照。 これは、左から右へ燃料が供給され、主機関周辺で循環するシステムである。 HFO(C重油)はFO Serviceタンク(左上)から3方切替弁を経由して、 MDO(A重油)はDO Serviceタンク(左下)から3方切替弁を経由して、 燃料循環ライン(赤)へ。 燃料循環ラインでは燃料が主機関へ供給される。 同循環ラインはループなので、消費されなければ、同一燃料が循環する。 消費された分だけサービスタンクから供給される。 したがって、3方弁をHFOに切り替えても、主機関を停止したままであれば、 燃料循環ラインにはHFOの供給はなく、MDOのみが循環しつづける。 たとえ温度設定を90℃に上げたとしても、加熱しているのは、MDOである。 最終的に100℃に達し、ベーパーロックを発生させるに至った。51
負
の
連
鎖
表出典: 下表「陸舶中・大型ディーゼル機関用-燃料油-低質燃料油の使用法と大気汚染, (山海堂) 」 淡井信幸, 花島脩, 横沢才二著、表2.1
52
使用方法:例 380mm2/s(cSt)@50℃のMFOの粘度 を60mm2/sに減少させるには、希釈 剤としてのMDO10mm2/s@40℃ を 何%(質量)混合すればよいか? (1)左側のMFO380mm2/s (cSt)@50℃ の欄を探す。 (2)上記(1)の欄の右側の10mm2/s @40℃のラインを探す。 (3)最終ブラレンドの粘度60mm2/s @50℃(最上欄)のラインと交わる 数字36.1質量%(MDOと混合量)を 読む。 (4)すなわち、380mm2/s (cSt)@50℃の MFOにMDO10mm2/s@40℃を 36.1%質量%混合すると、60mm2/s@50℃のTFO (Thin Fuel
Oil:B重油相当) になる。
添付(2)
図出典:
下表「陸舶中・大型ディーゼル機関用-燃料油-低質燃料油の使用法と大気汚染,(山海堂) 」
淡井信幸, 花島脩, 横沢才二著、図3.7
添付(3)
再発防止策
(1)MDOを使用中に、HFOへ切り替える際には、連続運転状態が予想できるタイミングで、FOに 切り替えるとともに、機関入口推奨動粘度を維持できるように加熱を開始する。 (2)燃料の切替時の設定温度には、主機関メーカ取扱説明書の注意事項を参照すること。 加熱スピードは、粘度調整器を利用し、安全観点から2分毎に1℃を超えないようにする。 (3)使用燃料は、定期的に、本船上にて、動粘度および密度等を簡易分析計によって、チェック し、状態を把握すること。 (4)MDOを使用中に、HFOへ切替る際に、以下の状態監視を励行し、異常時には適切な処置を 実行すること。 燃料配管内の燃料温度、および、動粘度、燃料加熱弁の作動状態、 供給ポンプの運転状 態 、 圧力変化等。 (5)使用燃料に関し、技術資料を参照し、「混合時の動粘度変化」、「動粘度変化と加熱温度の 関係 」を予測すること。 (6)ベーパーロックのメカニズムを理解する。その原因は燃料油中の低沸点溜分によるものと、 水分によるものがある。 本システムのように、加圧循環システムシステムの燃料系統では発生しにくいので、デア レーションチャンバーのデガス弁の作動のチェックが必要。54
写真集
55
画像出典:「Management of Marine Fuels and Lubricating Oils」 JSU,IMMAJ,JMEA製作
密度計 粘度計
③貨物損傷:発電機再起動不能 (ブラックアウト)
本船は極東地域でコンテナ約2,100本(内、冷凍コンテナ23本)を積載し、パナマへ向け て航行中、ロサンゼルス西方約900マイルの地点でブラックアウト状態に陥った。 発電機の再起動を試みるもかなわず、救助業者によりロサンゼルスまで曳航されること となった。この間、悪天候が続いたこともあって、曳航作業が21日間に及び、電力供給で きなかったことから、食料品を積載していた冷凍コンテナに被害が出た。 全損となった冷凍コンテナが多く、最終的に、コンテナ16本分のクレーム合計約 US$1,600,000を荷主は船主へ提起し、US$645,000(クレーム額の約40%相当)で解決。56
貨物損害解決金 : 約US$645,000 (約65百万円) 弁護士費用 : 約US$200,000 (約22百万円) サーベイ費用 : 約US$ 35,000 (約 4百万円) 合計 : 約US$830,000 (約91百万円) 保険てん補額主機関 C重油運転 運転 待機 待機 発電機 C重油運転
57
運転(1)(前提)本船は発電機(GE)を4台装備。航海中に3号と4号発電機(#3GE)をHFO(C重 油:380cSt)にて並列運転。#1と#2GEはHFO循環状態、それぞれ第1待機(S/B)、第2S/B。 (2) #4GEが緊急停止。(トラブル発生) (8)ブラックアウト(停電)後、加熱源がなくなったため、MFOからMDO(A重油)へ切替え。 (9)燃料供給配管内の油を排出時、配管内に気化ガスを確認。 (10)#1GEの再起動作業を何回も繰り返した結果、空気タンク圧が不足し、起動できず。 (11)手動空気圧縮機で18時間要し、GE用非常用空気タンクを畜圧したが、GEを起動できず。 (3)S/B中の#1GEも#2GE発電機も自動起動するはずが、起動できなかった。 (4)#1GEを手動起動した。ACB(気中遮断器)を投入できなかった。 (5)その後、#3GEも危急停止。続いて、#1GEは1分後に停止。ブラックアウト発生。 (6)燃料供給配管の油こし器をチェックしたが「異常なし」。 (7) #4GE停止後、非常用発電機は自動起動し、最重要の一部の機器へ給電。 (12)8日後、オーシャンタグが到着し、曳航開始。 (13)さらに11日後、パワーパックを搭載したタグが到着。空気圧縮機へ給電、空気タンク 畜圧後、#1GEを起動。主配電盤に電源供給、プラントアップ完了後、航海再開。 (約21日間停電) (14)数日後、船舶管理会社は本事故の対策として安全通達を横展開した。
機関室で何が起こったか?
58
(2)再三発電機起動失敗・・・ (1)S/Bの#1GE不起動・・・ 起動空気入口弁閉鎖について、手順書不履行 ①起動失敗原因を是正せず ②加熱源喪失し燃料ライン流動性低下 ③MDOへの切替手順不良 (3)空気タンクが空に・・・
原因分析・・・チェックポイント
60
【運用面(運転操作)のチェック】 「航海中に2つの空気タンクの各出口弁を両方開のまま」 手順書不履行 【安全教育・安全通達のチェック】 (4)事故後の社内安全通達・・・ 「起動空気入り口弁は手順書不履行」の注意のみ。 根本原因の対策指示なし。 ブラックアウト(停電)復旧訓練経験なし (3)再三発電機起動失敗・・・ (1)S/Bの#1GE不起動・・・ 起動空気入口弁閉鎖について、手順書不履行 (2)空気タンクが空に・・・ 2つの空気タンクの各出口弁を両方開のまま、再起動作業を繰返し ⇒手順書不履行61
①設計上の問題点・・・ 【ハード面のチェック】 SOLAS条約第Ⅱ-1第41規則「冷態始動できる発電システム」の 要件満足 ②GE非常用空気タンクの畜圧に18時間・・・ 非常用手動圧縮機整備不十分、スペア部品無 ③パワーパックを手配・・・ 非常用発電機で空気圧縮機もGE燃料供給・循環ポンプを 運転できないため、外部電源必要原因分析・・・チェックポイント
GE整備不良のため回転不足 (ACB投入要件:エンジン運転、電圧確立、周波数確立等) ③GE非常用空気タンクの畜圧に18時間・・・ ②発電機の整備状態・・・ ・直近の記録は、3割負荷に対して燃料噴射ポンプ10割燃料位置 ・事故後、燃料噴射ポンププランジャ(圧縮用部品)の衰耗を発見 非常用手動圧縮機整備不十分、スペア部品無 (1)保守整備管理 ①ACBを投入不可・・・ (2)設計面 しかし、以下課題あり負の連鎖
62
G/E Venting Valve Press Regulator Return Line
Diesel Generator Engine
Press Regulator
FO Fuel Injection Pump Strainer
(Filter)
Press Regulator Viscosity Controller FO Changeover Valve
FO Service Flow Meter Tank
(with heating FO supply Pump FO circulating Pump coil) FO Strainer(Filter)
MDO Changeover Valve MDO Strainer(Filter)
DO Service MDO Flush Pump Tank
P
to fuel injection valve
F O H T R P P G /E V e n ti n g U n it G /E B u ff e r
破線部分はNo.1∼No.4 G/Eで個別に配管
A
【運用面での対策(運転操作)】 次の条件なら1ヶ月に燃料消費量Q=0.7Mt程度のMDOの消費増加のみ。 発電機の発停の回数が月20回、停止負荷分担前15分間、起動後並列運転後15分間 (仮に500kW)、平均的な発電機の燃料消費率220g/kwh (1)発電機の停止前にMDOへ (2)確実に燃料切替可能な手順の確立 理由:SOLAS要件の冷態始動が容易に確保 MDO使用で安全レベルが格段に改善
再発防止策
63
①停止中燃料のMDO励行 ②同MDO使用について傭船者との合意必要 (3)燃料の性状把握を適切に管理 (4)運航状況に最適な機関運転管理の徹底 (5)待機(S/B) GEの日常チェック(デイリーチェック)の励行・不具合是正 【安全教育・安全通達】 (1)手順書の無視の排除(安全教育の要素を含む) (2)ブラックアウト訓練の定期的な実施(非常用発電機の給電先を考慮) (3)再発防止のために根本原因に基づく教訓を安全通達へ 【ハード面での対策】 (1)発電機(含む非常用関連機器)の厳格な定期・保守整備④環境損害 :ボイラ燃焼不良
本船が揚げ荷ターミナルに着岸中に、ボイラ故障が原因で20∼30分の間、煙突から煤 混じりの黒煙を排出した。 その結果、煤が広く散在し、付近の海上、ターミナル、ターミナルに隣接しているいくつか の工場に堆積した。 船主は迅速に清掃活動を手配し、その作業は3日を徹した。 ターミナルは、彼らが行った清掃費用や清掃中の不稼動損失(工場生産ライン停止)等 損害として、合計約US$252,000を船主へ提起し、船主はこれを約US$170,000にて解決し た。64
ターミナル清掃費用等解決金 : 約US$170,000 (約 18.7百万円) 清掃費用 : 約US$ 30,000 (約 3.3百万円) 弁護士費用 : 約US$ 30,000 (約 3.3百万円) サーベイ費用 : 約US$ 9,600 ( 約 1.1百万円) 合計 : 約US$239,600 (約26.4百万円) 保険てん補額機関室で何が起こったか?
黒煙の原因は、空気と燃料の割合がアンバランスとなった場合にほぼ発生する。 これは空気供給の低下か、燃料噴射が不安定になった場合のどちらかのときに発生する。 そして、黒煙は空気不足のために、燃焼中に破壊できなかった大きな燃料の粒子を源とす る微粒子からなっている。 もし、黒煙の出どころがボイラからで、運転中にその原因把握が困難なら、燃料をMDOに 切り替えて、原因究明のためにボイラを停止をお勧めする。 その際のチェックポイントは以下の通り。 (1)燃焼空気は適切だったか? (2)燃料温度は適切だったか? (3)燃焼ノズルに煤が付着していなかったか? (4)燃料噴射ノズルのタイプやサイズは正しかったか? 以下を原因とするトラブルにしばしば直面しているので、注意が必要。 ・ バーナノズルの孔が標準値より大きく、燃料噴射後の霧化状態が不十分だったために 燃焼空気との混合が不十分であった ・ エア供給制御装置の位置が正確に調整されなかった。その結果、燃焼用空気の 供給不足を招いた。65
飛散地域様子(写真)
66
黒煙 掃除回収の煤(バケツ内) A A 黒煙の飛散範囲(約550m) 距離550m 工場作業通路の煤 工場屋内通路の煤原因分析・・・チェックポイント
(1)燃料の塞止弁の手間にリターン弁があり、それは空気シリンダ駆動である。それは燃 焼中に閉鎖されなければならない。 しかしながら、その空気シリンダに装着されているOリングが周囲環境のために、硬化・劣 化した。 当該弁は正常作動しなくなり、開放状態のままとなった。 リターンラインの背圧は10mあり、それが燃焼ラインに漏れ出した。 そして、バーナへの燃料供給は計画値よりも過剰となった。 その結果、黒煙が発生した。 (2)停泊中のファンネルからの煙の監視を怠った。その結果、黒煙の発見が遅れた。 (3)本件は、荷役をやっていない深夜に発生し、出港のために日の出を待っていた。黒煙 放出を長引かせることへの警戒が不十分だったため。 さらに、排気が長引くような異常事態のために、機関士はそのようなトラブルに即時対応 できなかった。67
負の連鎖
再発防止策
(1)計画メンテナンス予定と手順と予備品の購入体制を確立すること。 (2)入港の毎回前に、バーナの焚き口、燃焼関係装置を点検し、必要なら整備。その後、点火 燃焼トライアルを実施。 点火燃焼トライアル時に、運転パラメータ(温度、圧力等)は現在の状態と海上試運転の 状態を比較して、もし乖離があれば、制御システムを要調整。 (3)メーカ取説に従い、定期的に、燃焼バーナを開放、整備、計測すること。もし、使用限度を 超えていれば、新品に交換すること。 (4)バーナ整備の毎回後に、点火燃焼トライアルを実施すること。 (5)停泊中はECR(機関制御室)と船橋の当直士官は煙突の排煙の状態を注意深く定期的に 監視し、お互いに情報共有をすること。 参考:ECRからファンネルからの煙の状態を監視できるようにCCTV搭載の船もある。 (6)このような状況下でそのように即時対応すべきか(例えばDOへ切り替えるなど)の訓練の 実施が大事。 (勿論、加熱を要する貨物積載のために、長期にボイラを停止できないこともあることの配 慮も必要である)69
⑤ まとめ
①貨物損害(カーゴショーテージ): 直接的原因:ボイラ故障 根本原因:保守・整備・点検等の管理不十分 ・・・水管理、火炉清掃、安全保護装置等要注意 ②港湾設備損傷(海底ケーブル損傷) 直接的原因:主機関起動不能 根本原因:主機関燃料加熱手順が不適 ・・・システムの理解、温度設定、切替タイミング、混合燃料の粘度の推定等 ③貨物損傷 直接的原因:発電機再起動不能(ブラックアウト) 根本原因:運転操作、船上教育、保守整備が不十分 ・・・原因除去、手順書不履行、ブラックアウト復旧訓練、定期整備(含非常用装置)等 ④環境損害 直接的原因:ボイラバーナ燃焼不良 根本原因:保守整備、船上教育、当直体制が不十分 ・・・燃焼装置の管理、非常時対応、他部との連携や環境監視等70
【参考】P&I保険でてん補対象外となるケース
(1)米国法務省はホームページにてビルジ排出に関する法令違反を紹介している。 (2)2015年度のP&I NewsNo.735&No.754でも一部案内済。 主な罪状 ・海洋への大量の油水ビルジの排水違反 ・油記録簿の虚偽記載 ・機関士が共謀し、ビルジ船外排出ラインのパイプを設置し、 USCG検査前に原状復帰し、違反隠蔽による検査妨害。 (3)今年3月にも昨年3月に油水分離器をバイパスしビルジを海洋排出した船主・船員に対し、 US$150万の罰金や今後5年の米国での営業禁止等の判決が下された。 (4) 米国では意図的な油排出に対して高額な過怠金が課されることがあるため、 関連規則の遵守徹底に注意が必要 なお、当組合保険契約規定第31条2(5)の通り、本件のようなに意図的な排出(油水分離機 不使用や不正使用によるMARPOL違反)による過怠金はてん補の対象となりません。71
画像出典: 日本海運集会所「The Mariner’s Digest 2007 “Domestic Laws are Much STRICTER than MARPOL”」
§3 油関係
3.1 油濁事故傾向
3.2 補油時の油濁事故事例
3.3 カプチーノバンカー
(特殊なショートバンカーケース)
72
3.1 油濁事故傾向
①外航船傾向
単位:US$1,000 発生件数:年平均40件 (7年間累計 281件) 保険金 :年平均約US$1,700千 (7年間累計約US$ 11,833千 )73
②内航船傾向
74
発生件数:年平均13件(7年間累計 90件)
保険金 :年平均 約68,793千円(7年間累計 約481,550千円)
③油濁事故傾向まとめ
• 外航船では、2008∼2014年の7年間において、油濁事故は発生件数年平均40件、 保険金年平均US$1,700千となっている。 • 内航船では、2008∼2014年の7年間において、油濁事故の発生件数年平均13件、 保険金年平均 68,793千円となっている。内外航ともに低いレベルとは言い難い状況
そして、そのほとんどが補油時に発生している。
75
3.2 補油時の油濁事故例
本船は、補油作業中にC重油が本船右舷燃料タンク のエアパイプから甲板上に噴出し、一部(約0.6KL)が 海上に流出した。 流出油の一部は事故後本船周囲に展張されたオイ ルフェンスを越え、周辺に拡散した。 流出油の清掃作業は約1ヶ月に及んだ。76
流出油清掃費用 : ¥0.9億 港湾設備・プレジャーボート等に与えた損害 : ¥0.1億 過怠金 : ¥0.005億 弁護士・サーベイヤー費用 : ¥0.2億 0 総額 : ¥1.2億 事故概要 保険てん補額画像出典:*1)「BUNKERING」 JSU,IMMAJ,MOL Engineering 製作
*1) 本船周辺
何が起こったか?
【本船補油計画】
左右両舷の燃料タンクへ50KLづつC重
油を積込む。
77
【事故発生状況】
(1)片舷(右舷)タンクのバルブを全開で、
補油開始。機関長の指示により、補油
計画であらかじめ定めた機関員Aを補
油作業に従事させることとなった。
(2) 右舷タンクに50KL積み込み時点で、
左舷タンクバルブを開けて、右舷タンク
バルブを閉鎖しなければならなかった。
(3)上記機関員Aが誤って左舷バルブを閉
鎖すると同時に、右舷タンクバルブを全
開のままとした。
(4)その結果、右舷タンク容量を超えてエア
ベントパイプからC重油が甲板上に噴出
した。
右舷タンクバルブ 左舷タンクバルブ原因分析・・・チェックポイント
【本船補油計画】 (1) 管理者の安全・環境意識は十分であったか? (2) 補油計画および補油手順があらかじめ適切に策定されていたか? (例:補油ライン、人員配置、積切りタンクスペースを10%以上確保等) (3) 作業に関わる全ての者が補油計画を事前ミーティングによって理解していたか? (4) 両舷受け入れタンクなのに、なぜ片舷のみのバルブ開で補油作業を開始したのか? 関係バルブの開閉手順にミスを誘発する要素はないか? 基本は補油ラインのバルブを全て全閉確認後、受入れタンクのバルブを全て開放。 作業開始後は、各タンクレベルの経過とともに、弁開度とバンカーバージからの送油流量を 減量調整させ、レベルに達したタンクのバルブを閉鎖し、積み切る手順が合理的。 途中の弁の開け閉めは危険。78
プラン原因分析・・・チェックポイント
(1)&(2) 作業に関わる全ての者が補油の作業手順や補油ラインの状態を理解していたか? ・作業に関わる全ての者が片側が50KLに達した際に、そのタンクのバルブを閉鎖 することを認知していたか? ・誰が、いつ、どのバルブ切替に従事するか、予め決められていたか? ・配員された機関員Aは補油計画・手順の説明を受けたか? ・他作業と重なる場合に、適切な要員配置となっていたか? (3) ・機関員Aのバルブ切替作業を他の作業者がダブルチェックしたか? ・切替弁に名札をかけていたか? (4) ・バルブ切替後に右舷タンクのレベルチェックは 継続して行い、タンクレベル変化のモニターを 継続していたか? ・遠隔液面計だけでなく、巻尺で定期的にレベル チェックをしていたか? ・油送流量(m3/h)は適切であったか?79
画像出典:*1)「BUNKERING」 JSU,IMMAJ,MOL Engineering 製作タンクレベル実測 *1)
ミーティング 切替作業 状態監視
負
の
連
鎖
(1)平時の動機付け(環境保全の意識付け) 普段の作業手順書勉強会によって機関員教育を徹底 (2)適切な補油計画の策定 ・余裕ある受け入れタンクの計画、適切な送油流量(m3/h) ・作業配置の明確化(ライン切替&作業内容&配置)等 (3)事前ミーティング ・受け入れタンクの目標液位の確認 ・関係パイプライン・バルブ等の操作確認 ・作業分担の確認(作業者だけでなく、管理者自身の作業内容も)等 (4)定期的な巻尺によるタンクレベルチェック (5)イレギュラー時の適切な対応 作業者が急遽変更となる場合には、確実に管理者は本人のみならず、他のすべての 者へ作業内容を再度指示
油濁事故発生時は、官憲当局および当組合へ速やかに正確にご一報ください。
80
画像出典:*1)「Engine Room Resource Management(ERM)」一般財団法人 海技振興センター *2)「BUNKERING」 JSU,IMMAJ,MOL Engineering 製作
事前ミーティング*1)
タンクレベル実測 *2)
最重要:
【参考】補油計画
・役割分担表 ・船内連絡体制 ・バージとの緊急連絡体制 ・油移送管系図 ・補油受入計画 (例:右書式) ・作業手順 (どのタンクからどの弁操作で作業するか) ・補油前後のチェックリスト ・受入中タンク実量計測簿 ・非常時(漏油時・火災時等)の対応手順 ・消火器 ・流出油防除資材 ・トランシーバー(通信器具) ・工具、温度&圧力計、リデューサ、 バンカーサンプラー等 ・参考情報 ・完成図書 ・シンガポール補油業務標準規定SS 600・25.4 The Bunkering Safety Check-List (ISGOTT)
81
3.3 カプチーノバンカー
(特殊なショートバンカーケース)
「カプチーノ」バンカーは海事関係の報道機関でも多く報道されているものの、バージの 乗組員も本船側がこれを見破るのは難しいことを知っており、この様な不正行為が時折 実際に行われている。 本船乗組員が本問題発生のリスクを認識し、問題発生時対処の参考となるよう、各段 階における注意事項を紹介する。 【関連情報】 P&I ロス・プリベンションプリガイド 第30号 「燃料油 ‐ 品質と補油数量について」82
補油数量不足(ショーテージ)問題のひとつに、「カプチーノ」バンカーと呼ばれる悪質な 手口があり、依然としてお問合わせが多いので、対処策について説明する。① カプチーノバンカーとは
・補油時に、バージ側(燃料送液側)が本船へ、送液過程で、なんらかの化学的・物理的手法 によって、燃料へ泡or 空気を混入させて、見かけの容積を増すバンカー手法である。 ・数日後には泡が消失し、本来の油面が現れ、泡の分だけ目減り発覚。営業上の損失。 ・航海安全の観点から、最悪、燃料欠乏による運航阻害への発展が懸念される。83
画像出典:「BUNKERING」 JSU,IMMAJ,MOL Engineering 製作
補油後半からわずかに泡混入 積切り時点では、上部は ほとんど泡状態 数日後泡が消失し、実質 目減り(ショートバンカー) 発覚。 補油中 数日後 目減り分
補油2時間後:激しい泡々状態 補油6時間後:泡が消失傾向
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写真出典:Courtesy of Capt. S. Q Naqvi - Petro Inspect (Bunker Detective)
②写真集
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テープ上比較
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【カプチーノ状態】テープに激しい泡付着(つや無し) 【正常状態】テープに(きれいな光沢反射)
写真出典:Courtesy of Capt. S. Q Naqvi - Petro Inspect (Bunker Detective)
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【カプチーノ状態】テープ先おもり(Dip weight)に激しい泡 付着(つや無し) 【正常な状態】テープ先おもり(Dip weight)に 泡付着無し(きれいな光沢反射)②写真集テープ先(おもり比較
)
(4)空気の混入が考えられる場合、機関長は補油を許可せず、直ちに本社へ連絡すべし。 以下もあわせて行なう。 ・ 用船者が燃料を提供の場合は、用船者へも問題通知必要。 (船主及び/または用船者は、Bunker Surveyor 手配し、調査開始すべき) ・ バージ船長へプロテストレター(添付資料(5)ご参照)を出状し、コピーを本船代理店 へ要送付。 ・ バージ船長がバージごと逃走した場合、代理店は直ちに港湾当局へ連絡をとり、 移動先を確認。 ・ 関連する時刻や事実を全て航海日誌に要記録。 (1)補油開始前のバージ数量チェックを行なう。 (3) 空気の混入が疑われる場合は、ボトルをタンク内に降ろし、サンプルを採取。 サンプルは清潔なガラス瓶に移し替え、泡立ちや気泡の状態を注意深く観察。 (2) アレージハッチ(測深用ハッチ)やタンクハッチを空け、燃料の表面の泡立ちを確認。 また、測深テープでも泡立ちの確認が可能。 泡立ちが無ければ、テープに泡が付くことなく、タンクレベルが明確に示される。
③防止策
バンカーバージ接舷時(バージ数量チェック)
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(5) 機関長は、バージ側送油元タンクの数量が、予定数量、燃料油供給証明書(BDN) 等の記載数量との合致を確認。 (6)-2 SS600に沿って作業するようバージの了承を得る(SS600 2014 5.2.2.8/9/10/11 参照)。 バージタンクのストリッピングでも空気混入の恐れがあるため、これは補油終了前の短 い期間に限定して行う。 バージタンクのストリッピング(底浚え)の開始前後に機関長に通知するよう、バージの船 長の同意を得ること。 (7) 機関長は、補油作業開始前に本船側の全燃料タンクの計測、記録を行う。 (サーベイヤ起用の場合は、記録を検証するよう、サーベイヤへ依頼する。)③防止策
補油作業開始前
(6)-1バージでの初回確認の結果、空気混入が認められなかった場合でも、ポンプに よる補油中にバージタンク内や送油管内に空気が混入される恐れあり。“The Singapore Bunkering Procedure SS600”では、ポンプによる補油作業中或いはスト リッピング中、ラインクリーニング中に、空気ボトルや空気圧縮器による圧縮空気を使 用することは禁止されている。 ”No air compressors or air bottles shall be used by the bunker tanker for the line cleaning process.“(SS600 2014 : Paragraph 5.2.2.9)]