はじめに 人手不足が深刻化するなか、2017 年 12 月の有効求人倍率は 1.59 倍と、1974 年 1 月以来 43 年 11 カ月ぶりの高水準となった。また、新規学卒者の就職内定率は 2017 年 12 月時点で 86.0%(大 卒)と 7 年連続で上昇し、1996 年に調査を開始して以来最高となっている。さらに、政府では「働 き方改革」を政策の重要な柱とするなか、国会での議論が活発化している。 そこで、帝国データバンク札幌支店は、2018 年度の雇用動向に関する道内企業の意識について 調査を実施した。本調査は、TDB 景気動向調査 2018 年 2 月調査とともに行った。 ※調査期間は 2018 年 2 月 15 日~28 日、調査対象は道内 1131 社で、有効回答企業数は 518 社(回 答率 45.8%)。
特別企画:2018 年度の雇用動向に関する道内企業の意識調査
正社員採用予定の企業、4 年連続で 6 割超える
~調査開始以降最も高い水準に~
調査結果(要旨)
1. 2018 年度に正社員の採用予定があると回答した企業の割合は 65.4%と前回調査を 4.1 ポ イント上回り、4 年連続して 6 割を超え、調査開始以降最も高くなった。「大企業」(85.3%) は前年を 2.3 ポイント上回り、6 年連続して 8 割を超えた。中小企業(62.1%)は 2010 年以降、9 年連続して前年を上回る結果となった 2. 非正社員の採用予定があると回答した企業の割合は 53.1%と 3 年ぶりに増加、非正社員 に対する採用意欲は強まってきた 3. 2018 年度の正社員比率は企業の 19.5%が 2017 年度より上昇すると見込む。その要因で は、「業容拡大への対応」(42.6%)をあげる割合が高く、「退職による欠員の補充」「技術 承継などを目的とした正社員雇用の増加」「非正社員から正社員への雇用形態の転換」が 続く 4. 従業員の働き方に対する取り組みでは、「賃金の引き上げ」が 51.5%でトップ。次いで、 「有給休暇の取得促進」「長時間労働の是正」がいずれも 4 割台で続いた1.2018 年度の正社員採用、
「採用予定あり」が 4 年連続で 6 割超える
2018 年度(2018 年 4 月~2019 年 3 月入社)の正社員(新卒・中途入社)の採用状況について尋 ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と回答した企業 は 65.4%と調査開始以降最も高く、前回調査(2017 年 2 月実施)を 4.1 ポイント上回り、採用予 定のある企業は 4 年連続で 6 割を超えた。他方、「採用予定はない」は 23.7%となり、前回調査を 4.6 ポイント下回った。 規模別にみると、「大企業」では、2018 年度に正社員の「採用予定がある」と回答した企業は 85.3%で前回より 2.3 ポイント上回り、6 年連続して 8 割を超えた。68.3%の大企業が人手不足を 感じているなか(※1)、引き続き採用に積極姿勢であることが浮き彫りとなった。また、中小企業 は、62.1%で前回調査を 5.1 ポイント上回り、2010 年以降 9 年連続して前年を上回る結果となっ た。 採用予定のある企業からは、「技術職において定年退職者及び離職者の補充、高齢化に伴う業務 継承などの考えで、若い人材の新卒採用、中途採用を推進している」(メンテナンス・警備・検査) など、正社員を採用することで技術の継承を図る声があった。また、「募集しているが、応募が非 常に少ない」(鉄鋼・非鉄・鉱業)や「積極的に募集するも採用に繋がらない」(建設)といった採 用現場の厳しさを反映する声も挙げられた。 ※1 帝国データバンク札幌支店「人手不足に対する道内企業の動向調査(2018 年 1 月)」(2018 年 3 月 27 日発表)正社員採用について
56.4% 50.8% 36.4% 35.8% 40.2% 46.5% 52.8% 58.3% 61.0% 61.8% 61.3% 65.4% 39.0% 44.6% 57.8% 56.4% 50.7% 46.3% 38.6% 33.0% 30.3% 28.3% 28.3% 23.7% 4.6% 4.6% 5.8% 7.9% 9.2% 7.2% 8.6% 8.7% 8.6% 9.9% 10.4% 10.8% 2011年度 2012年度 採用予定がある 採用予定はない 分からない 2013年度 2014年度 2015年度 注:「採用予定がある」は、「増加する(見込み含む)」「変わらない(見込み含む)」「減少する(見込み含む)」の合計 2010年度 2009年度 2008年度 2016年度 2017年度 2007年度 2018年度他方、採用予定の な い 企 業 か ら は 、 「 増 員 す る 企 業 体 力がない」(機械・器 具卸売)のほか、「仕 事 量 が 減 り そ う な ため」(広告関連)と い っ た 声 が 聞 か れ た。
2.非正社員の採用予定企業は 3 年ぶりに増加
2018 年度(2018 年 4 月~2019 年 3 月入社)の非正社員(新卒・中途入社)の採用状況について 尋ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」)と回答した企業は 53.1% となった。非正社員の採用予定は 2016 年度以降 2 年連続で減少していたが、ここにきて非正社員 に対する採用意欲は強まってきた。 企業からは、「現在、仕事はあるがいつまで続くかわからない。先行きが不安な状況のため、長 期に雇用することはリスクが高く、仕事のある期間だけ契約社員を雇うしか方法がない」(その他 サービス)や「事務系の臨時職 員を採用する方向」(建設)など 仕事量の状況に応じて臨機応変 に対応するために非正社員の採 用をあげる声も聞かれた。また、 「高齢化による退職者の交代要 員が求人単価の低さで集まらな い」(運輸・倉庫)や「社員同様、 応募そのものが大きく減少して おり、非常に採用しにくい。賃 金も含め再度募集方法を検討す る」(飲食料品・飼料製造)など 現場での求人・採用の厳しさを 指摘する意見も聞かれた。非正社員採用について
50.5% 45.2% 31.6% 31.8% 34.2% 36.3% 43.3% 48.9% 51.3% 48.8% 43.2% 53.1% 41.4% 45.0% 59.9% 55.4% 53.1% 53.3% 45.2% 38.4% 38.4% 40.3% 41.9% 35.3% 8.1% 9.8% 8.6% 12.7% 12.7% 10.4% 11.5% 12.7% 10.2% 11.0% 14.9% 11.6% 2011年度 2012年度 採用予定がある 採用予定はない 分からない 2013年度 2014年度 2015年度 注:「採用予定がある」は、「増加する(見込み含む)」「変わらない(見込み含む)」「減少する(見込み含む)」の合計 2010年度 2009年度 2008年度 2007年度 2016年度 2017年度 2018年度正社員の「採用予定がある」割合の推移
~規模別~ 76.5 76.1 55.1 54.6 61.3 73.9 82.1 84.3 81.7 86.0 83.0 85.3 51.6 45.3 30.6 31.0 34.8 39.9 45.3 51.5 56.3 56.7 57.0 62.1 0 20 40 60 80 100 2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 大企業 中小企業 (年度) (%)他方、「採用予定はない」(35.3%)と回答した企業は、前回調査(41.9%)より 6.6 ポイント減 少した。企業からは、「非正社員の社員化を進めており非正社員の採用は控えている」(金融)とい った声が聞かれた。
3.正社員比率、
「上昇する」企業は 19.5%、要因は「業容拡大への対応」が 42.6%
2018 年度の正社員比率について尋ねたところ、2017 年度と比較して「上昇する(見込み含む)」 と回答した企業は 19.5%で、「低下する(見込み含む)」(4.8%)を 14.7 ポイント上回った。正社 員比率が「上昇する」割合は、2010 年と比較して 10.5 ポイント上昇しており、2018 年度は雇用 形態において正社員化が一段と高まっていくとみられる。 2018 年度の正社員比率が「上昇する(見込み含む)」と回答した企業に対して、その要因を尋ね たところ、「業容拡大への対応」が 42.6%と最も高かった。次いで、「退職による欠員の補充」と 「技術承継などを目的とした正社員雇用の増加」が 38.6%で並び、「非正社員から正社員への雇用 形態の転換」(36.6%)も 3 割を超える企業が要因にあげていた。また、労働契約法や労働者派遣 法など「法改正への対応」は 8.9%となった。2018年度の正社員比率
上昇する (見込み含む) 19.5% 変わらない (見込み含む) 68.1% 低下する (見込み含む) 4.8% 分からない 7.5% 注:母数は有効回答企業518社 正社員比率「上昇する」割合 9.0 19.5 0 5 10 15 20 25 2010 2018 (%) (年度) 正社員比率の上昇要因 (複数回答) (%) 1 業容拡大への対応 42.6 2 退職による欠員の補充 38.6 3 技術承継などを目的とした正社員雇用の増加 38.6 4 非正社員から正社員への雇用形態の転換 36.6 5 人手不足による非正社員の減少で相対的に上昇 21.8 6 新規事業への参入 8.9 7 法改正への対応(労働契約法、労働者派遣法など) 8.9 8 内製化の推進 7.9 9 効率化(機械化、システム化)による非正社員の削 減で相対的に上昇 2.0 10 業績低迷による非正社員の削減で相対的に上昇 0.0 その他 3.0 注: 母数は、正社員比率が「上昇する」と回答した企業101社4. 従業員の働き方に対する取り組み、
「賃金の引き上げ」がトップ
現在、政府は「働き方改革」を政 策の重要な柱としており、さまざ まな議論が進められている。こう したなかで、企業が従業員の働き 方に対して、どのような取り組み を行っているか尋ねたところ、賃 金規定の整備・改定などを含む「賃 金の引き上げ」が 51.5%で最も高 かった。次いで、「有給休暇の取得 促進」や時間外労働の上限規制な ど「長時間労働の是正」が 4 割台 で続いたほか、研修や OJT など「人 材育成の強化」や「各種手当の導 入・活用促進」が上位にあげられて いる。 企業からは、「働き手の希望に応じた採用、勤務時間設定を検討したい。一企業に縛られない働 き方も検討すべき」(サービス)や「正規・非正規にかかわらず雇用環境の改善を図るため、社員 とその家族のための保険を会社として充実させる」(専門商品小売)といった意見が聞かれる一方、 「働き方改革で、労働時間の短縮・給与の値上げをして、中小企業が今後生き残れるのか」(その 他の卸売)という意見も聞かれた。従業員の働き方に対する取り組み状況
(複数回答、上位10項目) (%) 1 賃金の引き上げ(賃金規定の整備・改定など) 51.5 2 有給休暇の取得促進 45.0 3 長時間労働の是正(時間外労働の上限規制など) 41.7 4 人材育成の強化(研修、OJTなど) 31.1 5 各種手当の導入・活用促進 20.8 6 労働時間の柔軟化(時短勤務など) 18.9 7 高齢者の就労支援 18.3 8 メンタルヘルス対策の拡充 16.6 9 非正規雇用者の待遇改善 13.3 10 パワハラ・セクハラ対策の拡充 12.0 注: 母数は有効回答企業518社まとめ
2018 年度の雇用動向について、正社員の「採用予定がある」企業の割合は、65.4%で調査開始 以降最も高くなった。「大企業」では、85.3%で前回を 2.3 ポイント上回ったほか、「中小企業」 においても前回調査を 5.1 ポイント上回るなど、採用状況は企業規模にかかわらず上向いている。 また、非正社員の「採用予定がある」企業は 3 年ぶりに増加、非正社員に対する採用意欲も高 まってきた。 正社員比率の上昇を見込む企業は 2 割弱となり、その要因として 4 割以上の企業が「業容拡大 への対応」をあげるなど、2018 年度は雇用形態において正社員化が一段と高まっていくとみられ る。総じて、2018 年度の企業の採用意欲は高水準での推移が続くと見込まれる。 (%) 増加する (見込み含む) 変わらない (見込み含む) 減少する (見込み含む) 2005年度 65.3 23.4 34.5 7.4 29.3 5.5 475 2005年2月調査 2006年度 53.8 19.4 29.2 5.2 38.2 8.0 500 2006年2月調査 2007年度 56.4 20.0 28.1 8.3 39.0 4.6 505 2007年2月調査 2008年度 50.8 17.6 25.9 7.3 44.6 4.6 522 2008年3月調査 2009年度 36.4 10.6 18.0 7.7 57.8 5.8 583 2009年2月調査 2010年度 35.8 12.9 15.4 7.5 56.4 7.9 534 2010年2月調査 2011年度 40.2 16.4 19.2 4.6 50.7 9.2 590 2011年2月調査 2012年度 46.5 21.2 19.5 5.8 46.3 7.2 570 2012年3月調査 2013年度 52.8 26.3 21.0 5.5 38.6 8.6 547 2013年2月調査 2014年度 58.3 25.0 28.8 4.5 33.0 8.7 552 2014年2月調査 2015年度 61.0 24.1 31.4 5.6 30.3 8.6 557 2015年2月調査 2016年度 61.8 23.7 30.2 8.0 28.3 9.9 566 2016年2月調査 2017年度 61.3 24.4 27.7 9.1 28.3 10.4 537 2017年2月調査 2018年度 65.4 25.1 32.0 8.3 23.7 10.8 518 2018年2月調査 ※母数は有効回答企業 正社員採用 有効回答数 (N) 調査年月 採用予定が ある 採用予定は ない 分からない (%) 増加する (見込み含む) 変わらない (見込み含む) 減少する (見込み含む) 2005年度 60.8 14.1 39.4 7.4 27.8 11.4 475 2005年2月調査 2006年度 50.4 11.0 33.4 6.0 36.2 13.4 500 2006年2月調査 2007年度 50.5 9.9 33.7 6.9 41.4 8.1 505 2007年2月調査 2008年度 45.2 7.1 29.9 8.2 45.0 9.8 522 2008年3月調査 2009年度 31.6 3.9 18.7 8.9 59.9 8.6 583 2009年2月調査 2010年度 31.8 5.1 19.3 7.5 55.4 12.7 534 2010年2月調査 2011年度 34.2 8.5 19.5 6.3 53.1 12.7 590 2011年2月調査 2012年度 36.3 8.4 21.8 6.1 53.3 10.4 570 2012年3月調査 2013年度 43.3 9.9 26.3 7.1 45.2 11.5 547 2013年2月調査 2014年度 48.9 13.8 29.9 5.3 38.4 12.7 552 2014年2月調査 2015年度 51.3 11.1 34.1 6.1 38.4 10.2 557 2015年2月調査 2016年度 48.8 9.7 31.8 7.2 40.3 11.0 566 2016年2月調査 2017年度 43.2 10.2 27.9 5.0 41.9 14.9 537 2017年2月調査 2018年度 53.1 11.0 34.6 7.5 35.3 11.6 518 2018年2月調査 ※母数は有効回答企業 非正社員採用 有効回答数 (N) 調査年月 採用予定が ある 採用予定は ない 分からない■企業規模区分 中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。 当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。 当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法 の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。 【内容に関する問い合わせ先】 株式会社帝国データバンク 札幌支店 担当:香川、篠塚、柳澤 TEL 011-272-3933 FAX 011-272-3934 業界 大企業 中小企業(小規模企業を含む) 小規模企業 製造業その他の業界 「資本金3億円を超える」 かつ 「従業員数300人を超える」 「資本金3億円以下」 または 「従業員300人以下」 「従業員20人以下」 卸売業 「資本金1億円を超える」 かつ 「従業員数100人を超える」 「資本金1億円以下」 または 「従業員数100人以下」 「従業員5人以下」 小売業 「資本金5千万円を超える」 かつ 「従業員50人を超える」 「資本金5千万円以下」 または 「従業員50人以下」 「従業員5人以下」 サービス業 「資本金5千万円を超える」 かつ 「従業員100人を超える」 「資本金5千万円以下」 または 「従業員100人以下」 「従業員5人以下」 注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分 注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分 注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング