Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
ま とめ
:特 集
“大
学
に お け るデ
ザ イン教 育
の目指 す も
の”Summa
ofSpecial
Issue
‘‘The
Ob ’
ect of Desi n Educationin
Universities
”堀田 明裕 千葉大学
Hotta
Akihiro
Chiba University1 .
は じめ にデザイン教 育の問題は
、
学 会の シン ポ ジ ウムの 1テー
マ と して過 去に何 度か取 り上げられ た。 最 近で は、一
昨年の デザイン学 会 春 季 大 会で学 会の 社会的 機 能の重 要な テー
マ の一
つ とし て論じ ら れ、
ま た、昨 年の春 季 大 会で は デ ザ イン教 育が テー
マ として討 論 さ れ た。 この ように デザ イン教 育の 問 題が幾 度 も論 じ ら れな ければなら ない理由はどこに あ るの で あ ろ うか。 その理 由と して、
デザインの 概 念の広 が りや デザ イン に対 する社 会 的要求の 変 化などが考
えら れ る。 これ を具 体 的に把 握 する た め、
デ ザ イン学会編 集 委 員を命じられた堀田 と京都工芸 繊 維 大 学の 増 山 で こ の特 集 号 を計画 し た次第であ る。 執筆 依 頼に関 し ては、
できる だ け多
くの方々か ら幅広い ご意 見を い ただ きたい とい う主 旨で、
工学系、
家 政系、
美術 系 等で デザイン教 育を担 当 する方 達、
あるい は他分 野 であるが デザイン学 会に 所 属 し てい る方、
ま た、
年 代 的に は若 手とベ テ ラン等という
こ と を考 慮し た。 執筆
者に は少ない ペー
ジ数で多
くの 内 容を お願い し た ため大 変ご苦 労 をお か け した。
そ れにもか か わら ず、
多 くの 方々 か ら原 稿 を お寄せい た だい たことに まず 感謝申
し上 げ たい 。各
執筆 者の ご協 力に対 して 特 集 号編集 側と して何らかの対 応が必 要であると判 断 し、
い た だい た原稿を も とに筆 者の独 断と偏 見に よっ て以 下の よう
な ま と め を行っ たQ2
.
デザ イン教
育
の目標 デ ザ イ ン教 育の 目標を どのように設 定 する か に よっ て、
デザ イン の概 念や教育上の問 題、
あるい は、
教 育の 内容に違い が 見 ら れ る。 目標を大 別 すると大 きく二つ の傾向
が見ら れ る。 その一
つ は人 間 や社 会 の あ るべ き姿を判 断し 、 そ れに基づい て デザインを 進め る能力 を身につ け るこ と を目標 とするもの で、
こ こ で は これを人 間 教育と呼ぶ こ とにする。 他の一
つ は技 術 教 育の一
環 と して、
デ ザ イン作
業を進める にあ たっ て必 要な知 識を身につ け るこ と を目標とす るもの である。 提 示さ れ た 目標の 幾つ か をあ げる と次
の よう
に な る。・
地 球 環境や高 齢 化 等の社会的 問題に目を向 け、
あるべ き社 会 を創る
、
あ るい は、
その実 現の た めに既 成の社 会の枠 組み を再構成できる能 力を持っ た 人 間の教 育
・
美 的 感性 も含んだ 総合的 能力を持 っ た デザイナー
の養 成・
現状の産業や行政 要請
に対応できる デザイン専 門 家の 養 成 等である。 こ れ らは個別に独 立 して提 示さ れ てい る わ けで はなく、
ど こに 教育の重点を置 くか とい う方 向で述べ ら れてい る ものを項 目と して整 理した。 た だ、
その 重 点の 置 き方が 異 な る と教 育 方 法に も大 き く影 響する であろう
。3
.
デ ザインの 概念共通のデ ザ インの概 念と しては、 社 会や生 活に お ける要 求を、最 終 的には人 間が心地よさ や 充実感
、
あ るいは、
秩 序や やす ら ぎ等
を感じ る こ との で きる形 に よっ て解 決する行 為と集 約できる。 ただ、多
くの 方 達か ら、
現在の デザイン の方 向と してモ ノを決 定 する前のコ トの デザ イン の段階、
あ るい は、
コ ンセ プ トデザ イン、 あるい は、
情 報の デ ザ イン に重点が 移行してい る こ とが指 摘され てい る。 モ ノ の 形 態や 色 彩を個 別に決 定 するとい う従来の デ ザ イン の 概念 にか わっ て、 社 会における モ ノの位置付け、
方 向付 けか らデザ インを考え始め る こ とが重要 に なっ て き た とい う指 摘である。4 .
デ ザ イン教 育の 問題 デザ イン教 育に関 する問題と し ては、
以 下の こと が指摘さ れ た。・
コ ン ピュー
タ の導入に よ る感性の後退、 デザ イン48 sPEclAL ISSuEoF JssD vol
.
5 No.
3 1998 デザ イン学 研 究特 集 号1
旨
I L N工 工
一
Eleotronio LibraryJapanese Society for the Science of Design
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のデ ジ タル化に よ る 思考プロ セス 空洞 化等の問題
・
情 報 技術の変 化に対応 し たコ ン ピュー
タ による デザ イン教育の必要性
・
市場経 済社 会 に組み 込 ま れ たデザ イン状況が も た らす 教 育カ リキュ ラム へ の影 響・
教 育と産業との ギ ャ ップ か ら生 じ る デ ザ イン実体感の
希
薄・
現状のハー
ド 、 ソ フ ト両面 に わ た る デ ザ イン教 育 シス テム の貧弱さ 等の 問題であ る。
注目 さ れ ること は、
デザ イン教 育 へ の コ ン ピュー
タの導
入 につ い て、
評価が分か れて い ることである。5 .
教
育
の方 法 デザ イン教 育を 人間教 育、
技 術教 育ど ち らに重 点 を置 くかによっ て教 育の方 法に も違い が見られ ると 先に述べ た 。 後 者の 教 育では、 教 育 すべ き知 識の フ レー
ム がある程 度 存 在 するとい うこと を前 提に し て い る の に対し、
前 者は教 育 者の個 性や能力、
経 験に 大 きく依 存 する部 分が多 く、
その方 法は未だ試 行 錯 誤の状 態と言っ て良い であろう。 特に、
人 間教 育は コ トの デザインプロ セス で主に行われ てい るが、
現 時点では その内容や方法を一
般 化するこ とは難しい 。 と はい え、
地 域 との交 流や 生活観 察、
調 査にも とつ い たコ トの デザ イン教 育を と お して の人間教 育の提 案、
試行に関 する報 告があ り、 今後もこ の ような報 告 を積み重ね るこ と がデザ イン教育
にとっ て重 要と考
えら れ る。一
方、
後 者に関しては新たな情 報 化 時 代の デ ザ イン技術の一
環 と して、
コ ンピュー
タ の デ ザ イン教 育へ の導 入の重 要 性、
特に、
コ ンピュー
タ で創 造 的 な作 業を行 うた め にプロ グ ラミ ング教 育の 重 要性 が指摘さ れ てい る。6
.
お わり に 前 述 し たように、 デザ イン教 育の問 題はデザ イン 学会で何 度か 論 じ ら れてきた。
そ れにもか か わらず、
今、
ま たこ こ で 取 り上げなけれ ば な ら ない こ と は、
デ ザ イン教育の問題が未だ混迷のま ま継 続してい るた め と思 わ れ る。 社 会 にお け るデザ イン に対 する概 念 や要 求の 変 化 と、
教 育 側 のギャ ップ が様々 な形で現 わ れ た結 果ともい える。
お 寄 せい た だい た原 稿を拝 読し て も、
執 筆 者の専門 にもよ る が、
い くつ かの方 向に問 題が広がっ てい ること がう
か がえる。全 体 的に言 える ことは
、
社会的 な要 求を も とに最 終 的にはモ ノ の形を決 定 する という
デザ インの方 向 は ほ ぼ一
致してい るもの の、
社 会にお けるそのモ ノ の方 向付 け、
す なわち、
コ トの デ ザ イン に重点が置 か れるようになっ て きたことである。
コ トの デザ イ ンは、
デザイン教 育の 目 標の一
つ で あ る 人間教 育と 関連 する。人間の 使用する生 活 環境
の デザ イン は、
人 間やその生 活を どの ように 設定
す る か とい うこ と か ら出発 する た め、
人 間 教育は デ ザ イン にとっ て基 本 的な 問題であ る。 しか し、
コ トの デザ インを含んだ 人 間教 育の一
般 的 な方 法は用 意さ れてい ない 。 同様の ことは、
コ トをモ ノ に変換した場 合の美 的な 処 理の方 法や 評価に 関 す る 教育 方法につ い てもい え る。 デザイ ン に は社 会 的な 価値観
や美的 な感 性が 重 要となるが、
こ れ ら を 知 識 と しての教 育シス テム に 取 り入 れる こ と は難し く、
未 だ、
教育 者の個人的な 能 力に大 き く依 存し てい る部分 と言える。一
方、
情 報 化 時代に お け る デ ザ イン教 育には、
コ ン ピュー
タの使
用 を避 けて通 るこ と はで き ない。 コ ンピュー
タ利 用に よ る デザ イン プロセス の合 理 化は 誰 もが認め るとこ ろ であるが、
そ れに よっ て デザ イ ン の本 質が変 化してい くの で は ない か とい う危 惧が 指 摘され てい る。 これは コ ン ピュー
タ利用 その もの の問題で は なく、
その利用の仕 方に関 する問 題では ない だろ うか。デザイン教 育の大 きな 目標で あ る 人間 教 育
、
技 術 教 育は、
デ ザ イン教育の中で の重点の置き場 所の違 いで あって、 全 体と しては ど ち らも重 要 な課 題であ る。 今 後は今 回の ご提 案を も とに デザ イン教 育 全 体 の枠 組みの構 築が 必 要で あろう。
以上
、筆
者の 理解不 足の た め、
執筆 者のご意 見を 誤っ て まとめ た部分 もあ る と 思う
。 こ の点に関する ご批 判、
ご意 見は是非 次の機 会に ご提 言い た だけれ ば幸い である。デ ザ イ ン学 研究 特 集 号 SPECFAL IssuE oF JSSD vol