The /aPanese
fozarnal
of Psychonomic Science 】985,
VoL 4,
No,
2,
75−
87言 語 音
・非 言 語 音
の
知 覚
過 程
文
脈 効 果
を中
心
と し て重
野
純
1 ) 北 里 大 学Perceptual
processes
for
speech and nonspeechstiMuli :
An
overviewof
studies
on
COntext
effeCtS
Sumi
SHIGENO
Kitasato
University
The
purpose of this articleis
to review a variety of recent experimental findings onspeech perception
,
and to account for the differencesbetween
speech and nonspeech percep−
tions.
It was found that different results were obtained depending on whether the stirnuli
were perceived as speech or as nonspeech
,
anddepending
on whether the speech stimuli were perceived as within−
category stimuli or asbetween−
category stimuli.
An interpretation ofthese results was presented on the basis of the assumption that the influence of auditory
memory and phonetic me 皿 ory upon the shift
in
categoryboundary
were different fromeach other according to the perceptual mode of the sti皿 uli
− −i.
e.
,
speech or nonspeech.
Amodel which describes perceptual processes for
both
speech and nonspeech stimuli was sug−
gested.
Key
words 二context effects,
anchoring effects,
contrast,
assimilation,
auditory memory ,phonetic memory
,
categorical perception.
言語音につ い ての知覚 実験が本 格 的に行われる ように なっ たの は
,
音 声 合 成 器が製 作され,
人工的に音 声を作 成し 制御する事がで ぎる よ うになっ て か らの事である.
1950
年 代 後 半か ら1960年 代 前 半に かけて, ア メ リカ の ハ ス キ ン ズ研 究 所 (HaskinsLaboratories
)で は 言語 音 知 覚に関 する多 数の実験が行われ, 言語音の知 覚機構に 関する仮 説 や 検 証 を 中 心 とする種々の研 究 が 積み重ね ら れた.
これ らの 初 期の研 究は, その後の音 声 合 成 手 法の 発 展 と共に再 検 討さ れ た り批判を受けたりし た が, こ の 分 野に おける先 駆 的 研 究 として,
その歴 史 的 意 義は非常 に大きい.
言語音知 覚の問 題は, 工学, 医 学, 言 語 学, 心理 学 等 種々 の 分 野にわ たっ て専 門の立 場か ら取り 上げら れて き たが, 近年, 音声の生 成, 生 成 文 法, 言 語 音 知 覚,
音 声 の発 達, 動物の音 声 な ど極めて広い範 囲にわた る領 城を1
) 本論 文の作 成にあた り懇 切に御 指 導 を戴 きま し た東 京 大学教養学 部 鹿取 廣 人 教 授に深 く感 謝 申し 上 げ ま す.
包 括 的に取 り扱お う とする心理 言 語 学 (psycholinguis−
tics)が発 展し,
注 目を あびて い る.一
方,
言語音知覚 の 中心 的 課 題 も時 代と共に少しずつ 変化し てきた.
初期 には言語音知覚に特有と思わ れ る現象を発 見し, そ れを 支え る生得的な知覚機構の存在を証 明する研 究が主であ っ たが, その後言語音と非言語音の比較を行っ たり, 言 語音に類 似し てい る非 言語音を刺激と して用い たり,
言 語音に対し て音声 判 断と非音声 判 断を求めた りする よう な実験的研究が行われる よ う に なっ た.
本稿の 目的は,
実験心 理学の立場か ら言語音知覚の研 究を概観する と ともに, 現在行われてい る諸 研 究の 問 題 点を明 らかにするこ と, さ らに筆 者 らの研 究 を も とに言 語音 知 覚と非 言 語 音 知覚の両過 程を記 述し う る 1つ の モ デル を 提 案して,
言 語 音 知 覚の研 究が今 後 どの ような方 向に進ん で い くべ きかにつ い て, 示 唆 することにある.
1.
言 語 音 知 覚 は 特 殊であるか? 言 語 音は, 非 言 語 音と物 理 的に全 く同じ方 法でその基本 的特徴 (大きさ, 高さ
,
音 色)を 記 述 することが でき るに もか かわ らず, は るかに 異な っ た様式 で 知 覚さ れ る.
こ の矛 盾 する現象を説 明する ため に,
従 来 主につ ぎ の 2つ の対立する説 が 考 え られて きた.
1
つ は,
人間は 音 声に対して特殊な知 覚機構を生得的に有してい るため に, 音 声の音響 的特微 (いわゆる acoustic cue2 ) )を 不 連 続な言 語学的 単 位 (音素)の つ な が り とし て知 覚 する こ とが できる, とする考 え方である,
他の 1つ は, 音 声 の音 響 的特微を知 覚する過程は, 非 言 語 音 を 知 覚 す る過 程の組み合わ さっ たものであり, 音 素の カ テ ゴ リー
は 本 質 的に は音声に特有な もの で はな く, 特 定の聴覚的パ ター
ンに一
定の カ テ ゴ リー
を 割 り当てたものである, とす る考え方で ある,
つ ま り, 前 者の立場で は言語音 知覚は 特 殊である が,
後 者の立 場で は それは特 殊で はない.
こ の 対 立 する2つ の考え方は そ れぞ れ,
その 後の研 究の 中 に引 き継がれて い く.
Wood
(1975)は, 言 語 音 知覚に特有な処 理 過 程が存 在 する こと を 示 す現 象と してつ ぎの 6つ の現象 を挙 げて い る.
(1
)カ テゴ リー
知覚 , (2選 択 的順 応, (3
}両耳 分 離 聴に おける右耳の優位 性,
〔4后 語 音刺激の呈示 順 序の判 断に お ける右 耳の優 位性, (5后 語音 刺 激に対 する両 半 球に お け る誘 発 電 位の差 異, (6后 語音と非 言 語 音 との間の高速 分類 作業における妨害パ ター
ン の差異 言 語音 知 覚が何 らか の点で非言 語音知覚と異な り特 殊で あ ること を示 す 実験 結 果は, 多数 発見されて い る.
し か しその一
方で, その よう な結 果を否定し た り反 証 する報 告 も提出さ れ て い る.
特に,
〔1
),
12
}の現象につい て は,
必 ずし も言語 音 知覚に特 有で はな く, 非 言語音知覚に おい て も生 じる こ とが 後に実 験 的に示さ れ,
言語音知 覚 を 特 殊でない とす る人々 の根 拠の1
つ ともなっ た,
ま た,
田,〔2
}の現 象は, 最近の言語音 知 覚の研 究に も深く関わ っ ているの で,
つ ぎに少し詳し く述べ るこ と とする.
1−
1 カテゴリー
知 覚 (categorical perception) ハ ス キ ソズ研 究所の グルー
プ は, 自然 音 声の ス ペ ク ト ロ グラムをもと に し て合 成 音声を作成し, 試 聴 実 験を行 っ た.
その結 果,
特 定の音 素に 同定する に は,一
定の音 響 的 特 徴の存 在が必要である ことを見 出し た.
た とえ ぽ, 調 音 (articulation )位 置の変 化し た音声を識別 する2
)ハ ス キン ズ研 究所の 研究グルー
プは, 音声 ス ペ ク ト ロ グ ラムが表 す 言 語 音を 音波にか えるパ ター
ソ・
プ レ イ バ ッ クを 製 作 し,
これを用いて音響的 特 徴 を 種々に 変 化さ せ た合 成 音 声の試 聴実験を行い,その結 果,
特 定 の言 語 音を認識 するの に最 も役立つ音 響 的 特 徴を明確にし た
.
これ をacoustic cue と名付 けた (Liberman,
1957
)、
た めの要 因 とし て,
第2
フ ォル マ ン 】・
s 〕(F2
),
第3 フ ォ ル マ ン ト (F,)の 変移部4 )(transition )の 起点周波 数と 方 向 が ある.
とこ ろ がこ の音 響 的 特 徴とそれに よっ て生 じ る言語音の知 覚 との対 応は,
必 ず し も連 続 的で は ない.
上記の例でい え ば,F2,
F3 の変移 部の起 点 周 波 数と方向 が 連 続的に変 化し ても,
そ れIC対 応 する言 語 音 知 覚は カ テ ゴ リー
的と な り,
変 移 部の変 化が一
定の範鬪内にある 刺 激 を 特 定の音 素と し てぎ く.
た とえばハ
スキン ズ研 究 所のLiberman,
Harris,
Hoffman , and Gri伍th (1957
)は, 上述の よ うな音響 的 特 徴の異 なる 3種類の破裂 子 音 /b/, /d/, /9 /を用い て, 同定判断とABX 法に よ る弁 別 判 断 (
A ,B ,
X を継 時 的に呈 示 し,ABA
, ABB の よ うに X をA
また は B と同じに し た場 合,
X がA
に等 しい かB に等しい か を 判 断 させ る方 法)を求め た.
その 結 果,
音 素の境 界で は弁 別が100
% 近く行わ れ るの に,
境 界 以 外で は弁 別がほ と ん ど出来ず50%のチ ャ ン ス・
レ ベ ル と な るこ とを 見 出した (図1a
).
二 の 結果か ら,
弁瀏
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一
F畷
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の
一
〇
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1357911 】3 STIMULUS NUMB匚R VOWELS 図1
カ テ ゴ リー
知 覚 と連 続 的 知覚 (a>は破裂 子音を用いた実 験 結 果 (Liberman et a1”1957
よ り改 変 ),
(b
)は母 音 を用いた実 験 結 果 (Fry et al.
,
1962 よ り改変).
いず れ も,
上 段は弁 別 実 験,
下 段は同定実験の結 果を表す.
横 軸上の刺 激 番 号は,
(a)の場 合1こは,
パ ター
ン・
プレイパ ッ ク で F1 の 変移 部の形 を一
定と して,F
,の変移 部の始 点 とし て 1320Hz か ら2880
Hz ま で 120 Hz 間隔に選ん だ14
個の値を表す.
なお,
後 続 母 音は /e/(F1
=360
Hz
,F2=
2160Hz
)であっ た,
ま た,
(b)の場 合には, log Fi・
F2 平 面 上で /1/一
/ε/−
/ee/を結ぶ線 分 上の 13 個の刺 激を表 す.
上図は, 刺 激 番 号 が1
つ お きに な っ た音 (2
ス テ ッ プ) ど うしの弁 別能で, 音 素境 界 において弁別能が上昇する事 を 示し て い る.
3)Fは フォ ル マ ン ト周波数 (for
皿ant frequency )の略で
,
声道の共鳴周波 数を表 す.
声 道の形が変わ る と,
そ れぞ れ 特有なフ ォ ル マ ン ト周 波 数の組 合せ が で き る,
周波 数の低い方か ら順に,F1
,F2
,F3,
……
とよぶ.
4)フ ォ ル マ ン ト周波数の変化 する部 分 を 言 う.
変 移 部 の上向 き下 向 きなどは,
特 定の音 素 を 同 定 する た めの 手がか り と なる,
重 野 言語 音
・
非言 語 音の知覚過程 77 別は各音に対し て カ テ ゴ リー
判 断した音 素に のみ基づい て行わ れる こと, し た がっ て 同…
自紫 ど うし の刺 激 音で は弁 別は でき ない と考え た.
こ の よ うIC,
弁 別 すべ き2 音が刺激連続体上で弁別される前に,
各 音へ の カ テ ゴ リー
判断が 先行す る知 覚 様式 を , カ テゴ リー
知 覚 (cate−
90rical perception)とし・
う,
一
方,Fry,
Abramson ,
Eimas,
and Liberman (1962)は
,
3種 類の 母 音 ノ1
ん /e/, /a}/を用い て 同様の 実 験 を行っ た,
そ の結果, 弁別実験の結 果がすべ ての刺激対 に つ い てほぼ100
%と な り, 破裂子音の 場 合に認め ら れ た 不連 続は現れず, F,,
F,の高さで表さ れる母 音の音 響 的 特 徴 と言 語 音 知 覚 との間に は連 続 的 な 対 応が認 め ら れ,
音 素 境 界とは無 関 係に一
様に弁 別で きる事を見 出し た (図1b
).
こ の ように, 弁別 すべ き2
音が1
つの刺 激 速 続 体 上で比 較される知 覚 様 式 を,
連 続 的 知 覚 (continu・
ous PercePtion )とい う.
破裂 子音で は カ テゴ リー
知 覚が行 わ れるの に対し て,
母 音で は連 続 的 知 覚 が行われ る事に対し て, ハ スキン ズ研究所の グルー
プ.
は破裂子音 と母音の 調 音 上の違い に よ ると考え た.
そして, 言 語 音 知 覚は音響的特徴に よっ て 生 じ るの で は な く, き き手自 身 がその言 語音を話すときの調 音に ま で遡 っ て これ を参 照 する (refer )ことに よワ て生じ る と し,
調 音と言 詰 音 知 覚との間に比 較 的 単純 な1対 1の対 応があ る と 考 えた
,
これ が調音 参 照 説 (articu 弖atory reference theory)である (Liberman
,
Delattre & Cooper1952
).
さ ら にこれ を 発 展させ て
,
言 語 音を話 すときの調 音 運 動は運動指 令が与え ら れ て 起 こ り, き き 手 は自分 自身の調音 運動
を引き起こす 運 動 指 令を間 接 的に照 合 することに よっ て
音 素を知覚する と し
,
こ の運 動 指 令が言 語 音 知 覚と最も直 接 的に対 応 する と考 えた の が
,
運 動 指 令 説 (motor theory )である (Liberman,
Cooper
, Harris &Mac −
Neilage,
1963)、
た だ し,
運 動 指 令 説を 実 証 する実 験 的 C丸TeCORICALJJDG 叶巳国「 事 実は ない.
し た がっ て, その根 拠と して は上 述したよ うに有声破裂子 音は調 音 点が不 連 続である(/b/は両 唇,
/d/は歯 茎,
/g/は軟口蓋の調 音 位 置でそれぞれ破 裂 音 を作る)ため に知 覚がカ テ ゴ リー
的と な り, 母音は調音 が連 続 的である ため に知 覚 が 連 続的に な る, と い う点 が 挙 げ られて い る.
しか し,
こ の根 拠 もその後の い くつ か の実験 的反証に よっ て 批 判 を 受 けた.
藤崎・
川島 (1971
)は, 上述の Fry らの実 験 結 果で は,
弁別 実験の結 果 が すべ て の刺激 対に対し て 100 %に近い1
直を 示 し てい る点に注 目し, こ の結 果は刺 激 連続体上の刺 激間隔が疎であ り, し た がっ て弁 別 が 容 易であるため に得られた もの と考えた.
そし て, 母 音に関して も刺 激パ ラメー
タ の精度を高め, 刺激 連 続 体 上の間 隔を密に し た 揚合に は,
音 素境界で の弁 別 は出 来るが,
そ れ以 外では弁別で きず, し た がっ て カ テ ゴ リー
知 覚の生じ る事を 示 し た,
こ の事実から, 運 動 指 令を言 語 音のカ テ ゴ リー
知 覚の絶対的な前 提とする必 要 は ない と考え た.
さ らに藤崎らは,
言 語 音の弁 別に は連 続 的 とカ テ ゴ リー
的との2
様式が対立 的に存 在 するので はな く,
感 覚 連続体上で の カ テ ゴ リー
判 断 と比 較 判 断と が併用 さ れると 考 え♪ 連 続量である音色を保持する短 期記憶 (short
−
ter皿 memoryfor
timbre )と,
離 散 量で あ る音 素を保 持 する 短期 記 憶 (short・
ter皿 memory for phonemeg.
)との 2 種類の 短期 記憶の存在を 仮 定し,
こ れ ら2
種 類の 短 期 記憶の保持特性の差が,
比 較 判断の精 度 を 左 石する とし たので あ る (図2
参照).
調音参 照 説や運 動 指令説の ように,
言 語 音 知 覚がカ テ ゴ リー
知覚さ れ る事を根拠と し て,
音 声の生 成 面か らの 制 約に よっ て 言語音 知 覚が特 殊で ある とする考 え方は, 非言語音知 覚に おい て もカ テ ゴ リー
知 覚が生じ る とい う 実 験 結 果 を示 すこ と に よっ て批判さ れ た.
Miller,
Wier.
Pastore,
Kelley,
andDooling
(1976
)は, ノィ ズー
バ ズTI卜IULJS P匡K⊂EドTION OF T旧BR ε PIIO聡卜1匕 1凵E鬨↑IFI
・
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2
藤崎らの言 語音に対 する弁別 過 程の モデル (藤崎・
川島,1971
より) 刺 激 音は で刺激 連 続 体か ら感覚連 続 体へ 変 換さ れ,
の短 期 記 憶でその知覚された音質を保持する.
同時に, で は の長期 記憶 に保 持されて い る音 素 擡 界との比較に基づい て音素の同 定が行わ れ る.
その結 果は の短 期 記 憶で保 持 される.
の弁 別 判 断で は,
A,
B
が 異な る音 素と判 断された場 合に は の短 期 記 憶が用い られ,
同一
の音素 と 判断さ れ た 場 合 に は の 短 期 記 憶が用い ら れ る.
音 連 続 体の判 断に お い て
,
カ テ ゴ リー
知 覚の行われ るこ と を認め た,
同様に,
Pisoni(1977
)は 音の 開 始 時 間(tone onset time )の判 断に お い て
,
Burns andWard
(
1978
),
Siegel andSiegeI
(1977
)は音楽的 音程の判 断に お い て,
CuttingandRosner (1974)は振 幅の立ち 上がり 時間の判断に お い て,
それぞ れカ テゴ リー
知覚が行われ ることを 見 出し た.
これ らの反 証につ い て は刺 激の選び 方 等に関 する批 判 (た と えば,
Rosen & Howell,
1981) もあっ た が, カ テゴ リー
知覚が言 語 音に特有ではない事 を 示すもの と して,
言語 音 知 覚が特 殊で ある ことを 否 定 する根 拠の 1つ と なっ て い る.
以 上 みて き たよ うに,
カ テ ゴ リー
知 覚は必 ずしも 言 語 音 知 覚に特有な 現 象で はない.
なお,
カ テ ゴ リー
知 覚の 存在を も とに し て, 音素の境 界が 生得的な もの であるの か調 音に よっ て学習し たものであるのか, 言 語 音 知 覚に の み適し た特殊な知覚機構が存在する か どうか,
とい っ た問 題が論 じら れて いる が,
これ らの研 究か らは直 接 回 答 を 得る ことは でき ない と考 え られる.
1−
2 選 択 的 順 応 (selective adaptation ) EimasandCorbit (1973)は,
破裂子音の発声 開始時閲 (VOT )5)の 持 続 時 間が有 声一
無 声の区 別 をつ ける点に注 目し, 特 定の音 刺 激を反 復呈示 するこ とに よっ て順 応を 引 き起こ さ せ る選 択 的 順 応 (se 】ective adaptation )の手 法 を 用い て実 験 を 行い,
有 声一
無 声 を 決 定 する要 因につ い て調べた.
刺 激 音 とし て は,
合 成 音 声 /b/−
fp
/,
/Cl/−
/t/の 2つ の系列 を選ん だ.
/b
/一
/p/系列では,VOT
が一
10msec か ら 十60
msec ま で5msec
(両端で は10
皿 sec )間 隔を
,
/d 〃t/ 系列で は,voT
が o皿 sec から 十
80msec
まで 5msec (両 端で は 10皿 sec )間 隔の音 を 作成した
.
こ の場 合 順 応 刺 激を 呈示しない 「普 通の」 同 定 実 験の結 果で は,
/b
〃P/系 列で vOT が約30msec,
/d/一
/t/系 列で約 37msec を境に し て,
そ れ よ り もVOT が 大 きい と無 声に,
小さい と有 声に きこえ た,
これ らの 刺 激 音につ い ての 同定判断を求め る前に,
/b/,
/pノ,
/d/,
/t/の いず れかを 順 応 刺 激 (adaptor )として 2 分間 (150
回)呈 示し,
さらに 各刺激 音を 呈 示す る直 前に1
分間5)VOT は voice onset time の略
.
破 裂 子 音の発 音動作は声 帯が振 動 する直 前に声 道 を通る空 気の流 れを 完全に止め る
.
こ の止め られた空 気が流 出し て か ら声 帯が振 動し始め る まで (声が出る まで)の時間をVOT
と言 う.
有声 音の場 合には,
空 気の流 出とほ とん ど1
司 時に声 帯が振 動し始め る が,
無 声 音で は一
定の時 間が かか る.
声 帯 振 動が空 気の流 出よ りも早い場 合はVOT は一
の値と な り,
遅れ る場 合はVOT
は+の値と な る・
ま た, 同時の場 合に は 0である.
VOT
は有 声 音と無 声 音 とを 区 別 する の に必 要 な, 重 要 な 音 響 的 情 報を含 ん で い る.
(75
圓)にわ た っ て順 応 刺 激を 呈示し たところ,
/b/−
/p/,
/d〃 t/系 列 そ れ ぞ れの同 定 曲 線に変 化が生じ た (図3 ).
/b〃 p/,
/d/・
/t/系 列 と も,
順 応 刺 激の方に音 素 境 界が 移動し て,
順 応刺激の有 声・
無 声の特 徴に 対 して 順 応 の生 じて い る こと が認め られた,
Eimas らは,
特 定の 音 索の 特 徴に対 し て の み 選 択 的に反 応 する特 徴 検 出 器 (feature detector>が人 間に生 得 的に備わっ て い ると考 え,
順 応 刺 激を多 数回反 復 するとこ の特 徴 検 出 器が疲 労 して,
順 応 刺 激に対 する選 択 的 順 応 が 生じ ると考 えた.
これを,
特 徴 検 出モ デル (feature
detector
皿odel)と い う.
ま た,
Eimas,
Siqueland,
Jusczyk
,
andVigorito
(1971)は
,
生後 1ケ月 と4 ケ月の 乳 児の VOT の知 覚につい て 「高 振 幅 吸てっ 法」6)(high anlplitude suck
.
【b,
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tiine (
”
sec )図 3 選 択 的 順 応の実 験 結果 (Eimas & Corbit
,
1973 よ り) 図中の実 線は,
/b
/一
/P/,
/d
/一
/t/系 列につ い ての /b/ま た は /d/の同定曲線を表 す.
点線はそ れ ぞ れ,
/b
/, /p/, /df,
/t/を順 応 刺 激と し た場 合の 同定 曲線を表す.
上 段 は系列刺 激の両端の刺 激を順 応 刺 激に し た場 合で あり,
下 段は系 列 刺 激とは異な る調 音 位 置の刺 激を 順 応刺激にし た 場 合 である,
図中の 点線は いずれ も, 順 応 刺 激の 呈示に よっ て同定 曲 線 が 移 動し, 有声・
無 声に関し て順 応 刺 激とは反 対の カ テ ゴ リー
が増大する こ とを表し て い る.
6)乳 児に記 録 装 置につ なが っ た 「お し ゃぶ り」 をくわ えさぜ,
刺 激 音に対 する吸てつ率の変 化を調べ る、一
定の振幅 以 上の吸てつ が行わ れ た 時 特 定の音刺激 を 与 え る と, 最 初 乳 児の吸てつ 率は増 加し,
つい でそ れは 徐々に基 準 値まで戻っ て い く.
これは,
おそ ら く慣 れ に よ る た めと 考 え ら れている.
こ の時, 新しい刺 激 音 を 呈 示する (例えば有声 子 音か ら無声 子 音に刺 激 音を か え る〉と,
乳 児の吸てつ率は再び増 加 する.
この方 法に よっ て,
乳 児が VOT の違いをカ テ ゴ リー
とし て 知 覚して いるこ と を示し た.
重野 :言 語 音
・
非 言 語 音の 知 覚 過 程79
ing procedure)の方 法を用い て選択的順応の実験を行 い,
乳 児 も成 人 と同 様にVOT
の変 化をカ テ ゴ リー
的に 知 覚し てい るこ と を 示 し た.
これ らの実験 結 果か ら,Eimas
(1974)は, 特徴検出 器は人 間に生得的に備わっ てい る 言語音に特有な知覚機 構 で あると考え た。
言語 音知 覚に選 択 的順 応の生 じる事 は,
調 音 場 所の異な る子 膏 間の知 覚に つ い て (Eimas,
1974
;CoQper,
1974), ま たス ベ イソ語環 境下の乳児に つい て も (
Lasky,
Syrdal−
Lasky & Klein,
1975)報告さ れ てい る.
特徴検出モ デル は,
乳 児の 言 語 音 知覚のデー
タを腹 雑 な運動 指令説に よらずに説 明 する事がで き, ま た年 少の 乳児が自動的で無 意識に言語音を処理する過 程を説 明し うる とい う長所を もつ.
し か し, 特徴検 出 器の存在 を 否 定 する実 験 的 反 証 も多 く報 告されてい る.
Remez (1979) は,
母 音からバ ズ音 まで,
す なわ ち言語音から非言語 音 まで連 続 的に変 化 する刺 激 連 続 休を用いた場 合に も,
母 音 (言語音)ないしバ ズ音 (非 言 語 音 )の順 応 刺 激に対 し て選択的順応 が生 じて同定曲線が変 化 す る事 を 示 し た.
そし て,
言 語 音 ない し非 言 語 自の 順応刺激に よっ て 言 語 音一
非 言 語 音 刺 激 連 続 体が影 響を受 け る とい う事 は,
特 徴 検 出 器が言 語 学 的 なレ ベ ル で存 在 する音韻特徴検 出器(phonetic feature detector)で もなけ れば
,
聴 覚的レ ベ ル で存 在 する聴 覚 特 徴 検 出 器 (auditory
feature
detector)で も ない と し て, 言 語音知覚に生 じ る選 択 的 順 応を特 徴検出モ デル に よっ て説 明する事は適 切で は な く,
再検討するべ きだ と述べ てい る.
ま た,
Sawusch andJusczyk
(1981)は, 言語音 知覚におけ る選択的 順 応は情 報 処 理の聴 覚 的レ ベ ル で生じ る と考え てい る、
さ ら に,
Simon andStuddert−Kennedy
(1978
)は, 選 択 的 順 応と係留効果η(anchoring effects )とは基 本 的に は同
一
で あ り,
異なる の は反 復呈 示 す る刺激 (順 応 刺 激や係 留 刺 激 ) 7)人 間の知覚が相対的で あ る ため,
判 断は刺 激 系 列 全 体の特性に 規定さ れ, さ らに は実 験 状 況 以外の種々 の 要因に よっ て規 定される.
その よ うな関係 を 成 立 させ る枠 組み を基 準 枠 (frame of reference )とい い,
そ の成立要 因と し て係留効果 が研 究さ れ て きた.
そ れ は.
外か ら与え ら れ る特 定の刺 激が判 断に及ぼす 効 果,
特 殊 な 教 示 や 態 度 と関 係 する効 果 等を指し て い る.
’
係 留 効 果の実 験と して よ く用い られ る方 法 と して は, 刺激連続体上の一
定範囲 内の刺 激 を 対 象 刺 激 とし て,
い くつ か の カ テ ゴ リー
で絶対判断させ,
対 象 刺 激 に先行し て (あるいは同 時に) 範 囲 内 (外)の一
定の 刺 激 を 係 留 刺 激 として与え,
係 留刺激を与え ない場合 の判断 と比 較して, 係 留 効 果 を 調べ る方 法である.
係 留刺激の与え方と し て は,
系 列 刺 激の一
員 と して呈 示 する場 合や,
系 列 刺 激と組に し て呈 示する場 合 (し か しこ の場 合 も比 較 判 断で はな く対象刺激を絶対判 断さ せ る)等が ある.
の反 復 四数の稈 度であると考 え,
両 者 が 類 似し た実 験 結 果 を 示すこ と を示 し た.
そし て係 留 効 果の場 合に は,
刺 激 間 隔がふつ う4秒 偉 あり,
反 復回数も少ないか ら, 係 留 効 果を特徴検 出 器の疲 労に よっ て説 明する事は不 可能 で あ り,
した が っ て係 留 効 果よ り反 復 回 数の程 度が大 き い だけの選 択 的 順 応につ い て も,
特 徴 検 出モ デル で説 明 する事は適 切で は ない と考 えた.
特 微 検 出モ デル に対 す る最 近の批 判は,
Diehl(1981)の中に まとめ られて い る.
選 択 的順応は, 特 微 検 出 器 とい う言 語 音 知 覚に特 有の 知 覚 機 構を仮 定させ た が,
その生 理 学 的 根 拠はな く,
ま た 上述し た ような実 験 的 反 証 も挙 げら れて お り,
言 語 音 知覚が特殊であることを確 定 するものでは なかっ た.
言 語 音が人 間の運 動に よっ て生 成 されるこ と も,
その知 覚 に種々 の特 殊 性があること も事実であるが, 同時に 言語 音の知 覚が非 言 語 音 とは異 なり生 後の長い期 間にわ たっ て学習されたもの である事 を 考 えれば,
言 語 音 知 覚に認 め られる特殊性を性急に その生得的 機構の仮定に よっ て 説明する事は適 切で は な い と言え よう,
し か し, 次節で 述べ る最近の研 究の中で も,
何か特殊な生得的知覚機構 が 言語音の一
定の 特微に対して のみ選 択 的に 働くとする 考え方は, 多 くの実 験 音 声 学の研 究 者 達に支 持されてい る よ うで ある.
2。
最 近の研 究 傾 向 現 在で は,
言 語 音 知 覚が非 言 語 音 知 覚 と どの よ うに異 なる の か,
ま たその差 異は数 段 階から成る情 報 処理過 程 の どの レ ベ ル で生じて いるの か,
な どの観 点か ら研 究が 進められて いる.
その場 合 言 語 音知 覚に特 有 な 知 覚 機 構 を 発 見 するこ とを 直 接の研 究 目的 とは し て いない.
言 語 音の知覚過程に おい て は, 音響的特 徴の情報を保 持 する 短 期 記 憶 (auditory memory )と音素の カ テ ゴ リー
の情 報を保 持 する短 期 記 憶 (phonetic memory )の存在が一
般に考えられてい る,
文脈効 果や選 択 的順応を引き起こ す 音 素境 界の移動が, これ ら2
種 類の短期記 憶か らの影 響をどの ように受 けて決定さ れる のかに つ い て は , 研究 者の立 場はい くつ か に分かれるが,
つ ぎに こ の点に注 目 しつ つ,
現 在の言語音知 覚に関 する研 究 動 向につ い て,
と くに筆者らの研 究をもとに ま と め な が ら考 察 し て み る.
2−
1 知 覚 的 統 合の効 果 (PercePtualintegration
ef・
fects) 聴 取 する刺 激 音は一
定の ま ま に し て, そ れ を 言語音と し てき く場 合と非 言 語 音とし て きく場 合と を 比較し て, その知 覚 過 程 を 調べ ようとする方法がある.Rand
(1974
)↑
〉
》
Z
国
⊃O
国
催」
TIME−
P [de]で。 [9∂]NORMAし (BINAVRAし) PRESENTATION
nt
3nt
2nt
1
base isolated trar1Sltio口S
Cto。ne ea
「
) (to other ear) LUPLεX−
PROVU匸LNG (OICIIOTしO) PRESENI’
ATION図
4
重 複 知 覚の呈 示 方 法 下段の左図は基 部 (base),
右 図は変 移部のみ(chirp にきこえ る) を表してい る,
こ れら を左 右の 耳 に dichoticに呈示 する (上 段の図).
本図 は,Rand
の実験 方 法を筆 者が作 図し た もの で, Mann & Lib
−
erman (1983
)の 図を改変して作成し た.
は,一
方の耳に はCV
音節 (子 音÷母音か ら 成る音節) の F2 変 移 部とF
, 変 移 部だ け を 呈 示 し,
他 方の耳に は 同 じ CV の Fi 全部と F2お よ びF3
の基部 (変移 部を 取 り除いた定常部分)を 呈示し た (図4 ).
F2,
Fa の変 移 部が呈 示さ れ た耳か ら 入っ た情 報に 注 目すると, そ れ ら は “chirp”
(鳥の鳴 き声の ような 音 ) す なわち非 言 語 音に きこえた が,
基 部 が呈 示 さ れ た方の耳か ら 入っ た情 報に注目し た場合には両 耳からの情報が統 合 されて ba,da,
ga の よ うなCV
音節すな わ ち言 語 音に きこえ た,
こ の 現 象は,
同一
の情 報が聴 覚 様 式 (auditory 皿 ode )に 知覚さ れると 同 時に,
音 声 様 式 (phonetic mode )に も 知覚さ れ るこ と を 示 し ている.
Liberlnan (1979
)は こ の 現 象 を 重複 知 覚 (duplex perceptio11 )と名づけた.
こ の よ う に,一
方の耳に呈 示 さ れ た非 言 語 音は他の耳に呈 示 された特定の情報と統合さ れ て,
言 語 音 知 覚の決 定に寄 与すること が分かっ た,
重 複 知 覚は,
知 覚に お ける聴 覚 様式と音声様式との間の差 異 も明 らか に し てい る.
す な わ ち,
音 声様式では左右 の耳か らの情報は統 合さ れ て知 覚さ れるとい う特 微がある,
こ の ことは,
片 耳に呈示 し た単 独母音の声の高さ が, 他方の耳に 呈 示 し た破裂子 音 の有 声一
無声の区別に 影響する とい う実験結果 (RePP ,
1976)か ら も 確 かめ ら れる.
ま た, Mann (1980),
Mannand Liberman (
1983
)は,破裂子音/da
〃 gaノ連 続体上の刺激音の基 部を 呈 示 さ れ た方の耳で は
,
(両 耳の 情報を 統合 し て 言 語 音 に き く か ら)そ れ に 先行し て 呈 示 さ れ る 流 音 /al/や /ar/に よっ て文脈効 果を受け,
た と えば /al/が先行 する場合には /ga /の判 断 が増加する事を認 めた.
し か し,
/da/・
/ga/の変 移 部だけか ら な る chirp を呈 示された も う一
方の 耳で は,
(非 言語 音と して きい て い る か ら)そ れ ら と 同 じ変移部を持っ ていて も変 移 部 だけ を 分 離せずに1
つ のCV
音節にきい て い る /al/ や /ar/の文 脈 効 果は受け’
ない事を見出した.
し たがっ て文 脈 効 果に おい て も,
聴 覚様式と 音 声様式 との間に区 朋の あることが 認め ら れ た,
一
方,
知 覚的統合が崩壊する 場 合が ある.
Dor皿 an,
Raphael
,
and Liberman (1979)は, /∫pε/,
/∫ke/,
の/∫/の摩 擦 雑 音の後に空 自都 分 (silence )を 入 れ た場 合に は
,
空 白 時 間が20
皿 sec よ り も短い ときは,
/P/や ノk/の 破裂子 音は きこえな くなっ て し まい,
∬ε/の よ う にき き やすい こと を見出し た.
さらに,
/babda/に おける/bab
/ と /da/との間の 空 白部 分を取り除い て し ま う と, /d / の直 前の /b/は きこえな くなっ て /bada/ vこきこえる こ とを示し た.
し か し,
/bab
/を男声に,
/da/を 女声 にする と, 同じ条件で も /babda/ と きこえ た.
これは, 男 声か ら女 声へ と話し手が変わ ると , き き手は /b/か ら’
/d
/へ の変化とし てき くの で はな く,
(な ぜ な ら同一
話 者 であ れば /b/ と /d/の間には,
調 音の変 化に よ る空 白 部分が入 る はずであるか ら),
/b
/を 男 声の語 尾 子 音と し て きい て し ま うた め,
こ の よ う な空 自部分の存在の必要 性がな くな り,
男 声の /bab
/と女声の /da
/をあわ せ た /babda
/に きこえるのである.
した が っ て声の高さ の変 化は男 声・
女 声の区別 だけで はな く,
調 音 面の判 断 の制 約に関する情報 も与えて い るの で ある.
こ の こ と は,
耳に呈 示 される情 報の聴 覚 的 要因の みでは言 語 音 知 覚を 説 明する こ とが 不 可能である事を表し て お り, 言 語 音の知 覚 が 生 成 面か らの制約を受 ける と,
呈 示 さ れ た情 報 を 統合し ない場 合 も ある ことを示し て い る。2−2
文 脈 効 果 (context effects ) 判断 対象 とす る刺 激 (対 象 刺 激 )は,
常に前 後の刺 激 文脈の影 響を受 ける.
これ を 文 脈 効 果 (context effects ) とい うが, 非常に包括的な概 念と し て用い られるため,
それに は系 列 効 果 (serial effects)
,
係留 効 果 (anchor−
ing
effects ),
時間 誤 差 (time error )な どの知覚 判断に 生 じる心 理学的 効果が含まれて い る と考え られる.
言語音知 覚に お い ては
,
文 脈 効 果は近 接 する音 素に よ る文 脈 効 果 (im
皿ediate phonetic context effects)と,
先 行・
後続刺激に よ る文 脈 効 果 (sequential remOte context effects)とに大 別される (RepP
,
1982
).
前 者は,CV
,CVC
の よ う に 時間 的 に 非 常に近 接 し た 場合の 文 脈 効 果であ り, 主に実験 音声学的観点か ら研 究が行われて き
重 野 :霄語音
・
非 言語 音の知 覚 過 程 81 時 間 間 隔 (ISI)な どに よる文 脈 効 果であ り,
実 験心 理学 や 実 験 音 声 学 等の観 点か ら研 究が進め ら れて きた.
両 効 果とも,
醤 語 爵知 覚を考え る 上で, 重 要な問 題を含ん で い る.
2−2−
1 近 接 する音素に よ る文 脈 効 果 (immediate pho−
netic context effects )
典 型 的 な 例と し て
,Liber
皿 all,
et a1・
,
(1952
)の研 究 が ある.
Liberman らは,
破裂 子 音の知 覚が後続 母 音の 種 類に よっ て左 右さ れ ること を示し た.
た と えば,16
σHz
を 中 心 とする雑音に /i
/あるいは /u/を続 ける と, その雑 盲部分は /p/に 知 覚さ れ た が,
同一
雑 音に /a/ を続け る と /k/ に知 覚さ れ た.
これは,
後 続毎音が雑 音の知 覚に文 脈 効 果を及ぼ し た ため と考 え られる.
同 様 の現象は, 摩擦 音の場 合につ い て も見 出さ れ て い る(Kunisaki & Fujisaki, 1977;Mann & Repp
,
1980;Wha !en
,1981
).
近 接 する音 素に よ る文脈効果がなぜ 生 じ るの かについ て は, 聴覚 的レ ベ ル の要 因につ い て は ま だ統一
的な説 明が行わ れ ていない が,
言 語 音生 成の観 点 か ら は直 接 的な説 明が与 え ら れ て お り,
調 音 結 合S) (CoartiCulatjOn )に よ る ため と考え られてい る.
す なわ ち,
言語音の場 合にはきき 手 が 調 音 結 合の 生 じ る事を 「予 期」 す る ため に,
前後の音 素の影 響に よ る文脈 効果 が生じると考 えられる.
一
方,Mann
andRepP
(1980)は,摩 擦雑 音 /∫/ と/s/を /∫/
・
/s/連 続 体上で段階 的に変 化させ , それらの 摩 擦 雑 音の後に 自然 音声 /∫a/, /∫u/, /sa/,
fsu
/か ら摩擦 雑音 だ けを取り除いた残りの部 分 (フ ォル マ ン ト変 移 部 と母 音か らなる)を続けた音を作 成し, 被 験 者に /∫ん /s/の 同定 判 断を求め た.
その結 果, /∬ と /s〆の中 間 のあい まいな雑 音に対して は,
母 音/U/が 続 く場 合に は /s/に ききやす く,
母音 /a/が続 く場合に はIJ
/に き きやすい ことが 認められた.
これ は, Liberman らの場 合と 同様,
近 接 する音素に よる文 脈 効 果である.
さ らに Mann らは, あい ま いな 摩擦 雑 音か ら母音へ 続くフ t ル マ ンb
変移 部が,
自然 音声で のIS
/の形に似てい る場合 には その摩 擦 雑 音 を /s/とききやす く, /∫/の形に似て い る場合には 摩 擦雑 音が 同 じであっ て も /s/で は なく /∫f
にき きやすい ことを見出し た.
こ の結 果は, フ ォ ル8
)調音運 動とそれに よっ て生じ た音声波の 特 徴は 平滑 化さ れ
,
また前後の音素の特 徴が互い に重な り合って
,
連続音声 が 形 成 さ れる.
こ の時 調 音 結 合 が生 じる
.
前後の 文脈に よ る影 響は 調 音の段階ですで に生じて お り, し か も 調音器官の各 部 分で個別 に 生 じて い
る
.
そし てこれ ら は音 声 波の特 徴の上 に複雑に反 映 さ れる,
マ ン ト変 移 部は摩擦 子 音の調 音 場 所の手がか りと なるこ と を表してお り,
摩擦雑音とい う手がか りと統合さ れて 1つ の音 声 学上の 知覚を行う事を 可 能にする こ と を 示 し てい る.
この よ う に,
き き 手はある音 響 的 特 徴を他の音 響 的 特 徴と 別々 に知覚するのでは なく,
(上 例に した が え ば, 雑 音十 フ ォル マ ン ト変 移 部に き くの で はな く), そ れ らは統 合し て知覚さ れ る.
そ し て,
ある音 素の有す る音 響 的 特 性がその音 響 的特 徴の1
つ の 変 化に よっ て も と と は異 なっ た場 合,
も との音 韻 知 覚を維 持す る よ う に,
他の 音 響 的 特 微が変 化して知 覚の変化を償う.
Repp
(1982)は, こ の 関 係を音韻相 補 関 係 (Phonetic trading relation )と よ んで,
文 脈 効 果 と区 別し た.
音韻相 補 関 係は
,
種々の音 素の つ ながりに お い て見 出 さ れ てい る.
たとえぽ,
有 声一
無 声の区別 に関し て は,
語 頭の破裂 子 剖 こおける VOT とF1 変移 部との 間に おい て
(Lisker
,
Liberman,
Erickson,
Dechovitz&
Mandler
,
1977
;Stevens
&Klatt,1974
;Lisker,1975
; Summerfield & Haggard,1977
)な どに認め ら れる ことが 報 告されてい る
.
2
−
2−
2 先行・
後続刺 激に よ る文脈効 果 (sequential re−
mote context effects)
これは
,
Helson (1964
)のll
頂応 水 準 理 論 (adaptation !evei theory )に代 表さ れ るよ うな,
知 覚 判 断の問 題と も関連する.
非 常に包 括 的 な 概念である ため,
種々 の心 理 学 的 効 果を含ん でい る.
当 然 な が ら,
こ の タイ プの文 脈 効 果は,
言語音知覚に特有なもの で は ない.
し か し,
言語音 知 覚 と非 言語音知覚で は文 脈 効 果の現れ方は異 な るこ とが報 告されている.
以 下, 書 語 音 知 覚に生じる文 脈 効 果と非 言語音知覚に生じ る文 脈 効 果と を 比較し なが ら, その生 起 過 程 を 探っ てみる.
一
般に母音の知 覚は,
文 脈 効 果を受け や す く融通 性 (fiexibMty
)が ある(Ilealy
&RepP ,
1982 )ので, 言語音 知 覚の中で も特 殊な位 置に ある と考え ら れ て い る
.
Repp,
Healy,
andCrowder
(1979)は,
/i/,
/IL /ε/の単独母音の知覚に おい て文 脈 効 果の大 きい こと を見 出し,
新 井
・
下 村・
金 森・
粕谷・
城 戸・
堀 江ら,
(1970)は,
母音の知 覚に生 じる対比効果が文脈刺 激 と対 象 刺 激との間
の 時 間 間 隔に よっ て その大 ぎさが 異 なる事 を 示し た
.
ま た,LadefDged
and Broadbent (1957)は,
文 章 (Wh
旦tthisword is
−
?)の後に,
あい まいな母音を含む単 語 (
bit,
bet
の ようなCVC
)を 置い て,
先 行 する文章中の母 音t(例文の 下線部分 全 部)の F1 の高さに よっ て
,
あい まい な単語が 文 脈 効 果を受 ける こ と を見 出し た
.
こ場 合と同 様に
,
文 脈刺激に よっ て対象刺 激の知 覚に対 比 (contrast )が生じ る とい う点にある.
こ の こ とは,
非 言語 音の特 徴に お い ては対比 だ けで はな く同化 (assimi・
latiOn)が生じ るこ とが 認め られるの に対して,
大 き な 違い である.
(た だ し,
言語 音 知 覚に お い て も,
文 脈 刺 激 と対 象 刺 激の値 が 刺激 連続 体上で近 接し て いる場 合は, 同 化の生じ るこ と を報告し てい る例 もある た とえ ば 新 井ら (1970
>な ど).
母 音 知覚に対比が生じ る要因につ いて は, い くつ か の 説が あ る
.
た と え ば,
特 徴 検 出器の疲労に よ る とする も の,
反 応バ イ ア ス に よ るとするもの,
聴 覚的 場(auditory ground )の変 化に よる とす る もの,
な ど がある (Sawu・
sch,
Nusbaum & Schwab,
198 ),
特 徴 検 出 器の疲 労 に よ る とする説は,
選 択 的 順 応の ところ ですで に述べた よ うに, 多 頻 度 呈 示される文 脈 刺 激に対す る特 徴 検 出 器 の疲労に よる とする考え方である.
反 応バ イア ス に よる とする説は,
被 験 者 が判断に用い るカ テ ゴ リー
を なるべ く等頻度である ように 用 い る傾向 が あ る (Parducci,
1975)ことが根 拠に なっ てい る.
し か し,
Sawusch andNusbau
皿 (1979)は,
係 留 効果の実験で係留刺激が多 数 回反復して呈 示 されるこ と を 知 ら さ れ た 被験者 と知ら さ れ ない被験 者が と もに対 比を 生じ る事を 示 して, 変 域一
頻 度 説9〕(range
・
frequency
theory)の 考 え 方で 対 比 が生じ る と説明する事は で き ない とし た
.
聴 覚 的 場の変 化に よ る とする説 (
Sawusch
et aL,
19 80;Simon
& Studdert−
Kennedy,
1978)は,
対 象 刺 激に先 行し て呈示さ れ る刺激につ い て の聴 覚 的 記 憶の情 報 や
,
長 期 記憶に保持さ れ てい る種々の音につ い て の聴覚 的 特 徴やパ ター
ン につ い て の情 報に よっ て,
聴 覚 的 場 が 形 成 される と考 える,
そ れは,
特に多 数回反 復呈 示 さ れ る係 留 刺 激の影響を最も強く受 け, その結 果,
あい まい な刺激は係 留刺激の属さない カ テ ゴ リー
へ 同定さ れ る , と考 える.
これは He】son の順 応水準理 論 と類似してい る.
He 工son (1964
)は , 順応 水 準を決 定 する 3つ の要 因 と して,
(a)当該刺激 (b)前 後の文 脈 (c)背景刺激 を挙 げた が,
聴 覚 的 場の形 成におい て は (b
)にっ い て は先 行 呈 示 され た 刺 激の 聴覚 的記憶が,
(C)につ い ては 長 期 記 憶に保 持さ れ てい る 当素 の原 型 (prototype )が相当する と考え ら れ る.
こ の ような 聴 覚 的 場の変 化に よ るとする 説で は,
音韻知 覚における対 比は聴 覚 的な情報処理段 階 9)被 験 者は刺 激の変 域 をさ らに い くつかに分 割して, そ れ らを 与 えられたカテ ゴ リー
に対応さ せ よう と す る (変 域 原理)と同時に 被験 者は与えられ たカ テゴ リー
を一
定頻度で 用い ようとする (頻 度 原理),
こ の2
つ の原 理が働い て判断が行われる とする考え方.
で生じ る と考え,
聴 覚 的 対 比 (auditory contrast )と よ ぶ.
こ の考 え方に し たが え ば,一
般に子音は 母音よ りも 持続 時 間が短 く,
そのため聴 覚 的 記憶の情報は少ない と 考k
られるの で,
子 音の方 が 聴覚的対比は小さい と考え られる,
Si皿 on andStuddert・
Kennedy (1978)は,
破 裂子 音と 母音から なる CV 音 節 を 用いて 係 留効果につ い て調べ
,
子 音は母 音よ り も 係 留 効 果 が生じに く く対 比が小 さい
,
とい う結果を得た.
聴 覚 的 場の変 化に よっ て聴覚 的 対 比 が生じ る と す る 説明は
,
Brady and Darwin(1978)な どの 言語 音を 用いた実 験 結 果に も適用 し うる
.
し か し, 聴 覚 的 情 報の利 用 が 大 きいはずの非 言 語音の知 覚で は対比 だけで は な く同 化 も 文 脈効果 と して生じて い る.
し た がっ て こ の よ うな言語音知 覚と非 言 語 音 知 覚に おける差 異について は, 上述の考え方で は十 分 説 明する 事は でき ない,
2−
2−
3言語音
・
非 言 語 音の知 覚 過 程 (perceptual pro−
cesses for speech and nonspeech stimuli )言語 音 以外の知 覚に生 じ る文 脈 効 果につ いて
,
従来の 心 理学での研 究で は実 験 方 法や刺 激の種類に よっ て一
貫性 が 欠如し て お り
,
必ずし も斉一
的 な 説 明がな さ れて は こなか っ た.
た とえ ば,Stevens
and Galanter (1957
)は, 生 理 的 水 準での興 奮の増減 が弁別の基 礎にな る連続 体を プ巨 セ テ ィ ヅ ク連続 体 (
prothetic
continuum ),
生理的 水 準での過 程の取 り替 えが弁 別の 基礎になる連続体をメ タセテ ィッ ク連続 体 (metathetic continuum )と し て 分 類し た が, 時間 誤 差や係 留 効 果におい て,
標準刺激あ るい は文 脈 刺 激と対 象刺激と の刺 激 連続体上の距 離が増 大 して い くとき,
音の強 さな どの プ ロ セ テ ィ ッ ク連 続 体 の刺 激では,
同 化か ら対 比へ と文脈効 果の現 れ 方が変 化 する (Postman &Miller,
1945>の に対し て,
音の高さ などの メ タセ テ ィ ッ ク連 続体では, 同化・
対 比 と も生じ ない (Postman,1946
)と し た り,
同 化または 対 比 が 生 じ る (和田,
1932 )とする もの な ど,
斉一
的な結 果が得ら れて い なか っ た.
音の高さの変 化は音 色の違い も同時に 生じ さ せ る し, ま た フ ォル マ ン b周 波 数の高 さの変 化は 母 音の音韻を区別 させ る.
した がっ て,
複 雑な文脈効 果 をプ P セテ ィヅ クー
メタセ テ ィ ッ クとい う よ う な単一
の 要素だけで説 明 する事は不 十 分であると 言わざる を え な い.
同 化・
対 比の問 題は,
刺 激の属 性等の刺激要 因, 呈 示 間 隔 等の時 間 要 因,
その他 種々の要囚の 関 与を受 け る.
し たがっ て,
文脈効 果の問題を解き 明かすに は,
こ れらの諸要 因をすべ て考 慮に入 れることが必要である.
そこ で,
Shigeno andFujisaki
(1979)は,
刺 激の物 理 的 属 性がPtk
屯なもの か ら複雑な もの まで 3種 類の刺 激 を重 野 言 語 音
・
非 言語 音の知 覚過程83
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O sec 図5
純 音, 単 共 振 特 性の複 合 音, 合成 母音の カ テ ゴ リー
判 断に お け る係 留 効 果の比 較 (Shigeno & Fujisaki、
1979 よ り) 横 軸は,
A1 ,
A2
,A3
の3
つ の係 留 刺 激 を表して お り,
そ れ ぞれ対 象 刺 激の刺激連続 体 上の距 離 間 隔 を1
ス テ ッ プ と し た 場 合,
係留刺 激に隣接 する対 象 刺 激か らの 距離が1
ス テ ッ プ(
A1
),7
ス テッ プ (A2
), 13ステ ヅ プ (A3 )離れた刺激であ る.
縦 軸は, 係 留 刺 激 を 呈 示し たこ と に よ るカ テ ゴ リー
境 界の移 動 量を標 準 偏 差で割っ て係 留 効果の大 きさの指標と し たもの であ
b
, 十の値は対 比が生じ たこと を,一
の値は同 化が生じた こ と を表して い る.
ま た, ISI は係 留刺 激と対象刺 激 との間の時 間 間 隔であり
,
時 間誤 差 を 考慮して O.
5秒 と3.
0秒の 2条 件 を 設 けた.
選び,
同一
条件の も とで それらの刺激を用い た場 合の文 脈効 果につい て調べた.
具体 的に は, 最 も 単純な刺激と し てス ペ ク トル成 分が1
つ の純 音 を,
や や複雑な刺激と してスペ ク トル 成 分が単共振 特性 を有する複 合 音1°〉を,
そ し て複 雑な刺 激 とし て合成母 音を用いた,
実 験 方 法と し て は,
刺 激の種 類 別に,
(a)同定判断,
お よ び (b
)刺 激 連 続 体上の隣 合う刺激 間の 間 隔を 1ス テ ヅ プ と し た場 合 の,
刺 激 連 続 体上の 端点の 刺激か ら 1,
7,
13 ス テ ッ プ 離 れた刺 激を係留刺 激と し て対 象 刺 激の直 前に付 加し た 場 合の同 定判断 を求め,
(a) と (b )の結果を比較し てカ テ ゴ リー
境 界の移 動 量につ い て調べ た.
その結果, 刺激 が純 音,
単 共 振 特 性の複 合 音,
合 成 母音の いずれである 場 合 も,
係 留 刺 激と対 象 刺 激との間の刺激 連 続 体 上の距 離が増大 する に しtch
:っ て , 係 留 効 果 が 同 化か ら対 比へ 変化 する傾向が認め ら れた.
この場 合,
刺 激の物理的属 性が複雑で カ テゴ リー
判 断の習 熟 度が高い合 成 母 音の場 合に, 最 も対 比 効 果の大 きい こと が認め ら れ た (図5).
これ らの実験 結 果を斉
一
的に説 明する ため に, 筆 者ら は図6に示 すよ うな 文 脈 効 果の生 起過程のモデル を考え た.
こ の モデルに従うと,
で は呈 示 さ れる刺 激を感覚 連 続 体へ 写像し,
その位置 が の聴覚 的 短 期 記 憶 (STM
ユ〉 におい て保持され る.
感 覚 連 続 体 とは刺 激 連 続 体と同様 な 系 列をなして対 応し て い る心 理 学 的 連 続体であり,
こ の連 続 体 上に おける弁 別 過程の ち ら ば り は 正 規分 布を す る と仮 定されて いる (Guilforcl
,1954
).
で は カテ ゴ リ10
)フ ォル マ ソ ト特 性 を 1つ だけ 有 する音.
STIM 凵 」口SUD 翻丁ORYthAPMNG cALJVDGMENTHESPONsEATtGO 隈1
●
25 ・ ・ ,