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経済概念学習の可能性 : 教科書の変遷を手がかりに

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Ⅰ.はじめに

 本稿は,本誌 32 号掲載の「教科書と経済教育─ 1960 年代の高校教科書の分析から─」の続編であ る。1)  前稿では,1960 年代に発行された高等学校「政 治・経済」17 冊の教科書の約半分はいわゆる近代経済 学系の学者が執筆者になっていて,内容的にはかなり しっかりしたものが作られていたが,その大部分が採 択されず早々に消滅してしまったことを明らかにした。 その理由としては,著者の経済学者が高校生向けとい う特質を理解しておらず,高校生の理解度を超えた内 容を書いてしまったこと,教える教員側も経済学の訓 練を受けたものは少なく,自分が教えられる内容を書 いたものを選んでいったことがおおきいことが推定さ れた。本稿では,前報告が対象とした 1960 年改定の 学習指導要領時代の教科書がその後どのように変遷し ていったのかを調査することを通して,近代経済学的 な概念学習がどのように変化したのかを検討する。2) また,経済概念の学習という視点から見た現在の教科 書の状況と課題を報告したい。

Ⅱ.研究の仮説と方法

 本稿の研究仮説は以下のとおりである。  (1)学習指導要領は改定ごとに教育的配慮が大き くなり親学問の体系と離れていった。  (2)教科書もそれに応じて現場感覚のものが増え ていった。  (3)経済学習は分析道具が与えられず問題解決の 手がかりが与えられない状態になった。  (4)その反省も含めて「見方や考え方」が次第に 明確にされ,親学問への新たな回帰と概念学習の復活 がみられる。  これらの仮説を確認するために,①その後の学習指 導要領と教科書の展開を概観し,②最新の教科書を分 析して,現在までの到達点を確認する。

Ⅲ.概念学習の定義

 検証を始める前に経済概念学習の定義をしておきた い。  経済を学ぶには,経済現象,経済制度など現実の経 済の動きをトレースする方法が一つある。新聞などの 記事をやさしくかみくだいて解説するなどがそれにあ たる。もう一方経済学の概念や理論を使って,経済現 象や制度を説明する方法もある。後者をここでは概念 学習と定義しておく。したがって,経済学習は,多く の事実を紹介する帰納的なアプローチと,経済現象を 分析的にとらえてゆく概念学習の二つのミックスに よって構成される。  では,経済概念とは何か。これは経済学の学派に よって異なる。例えば,マルクス経済学では商品,資 本,労働力,価値,剰余価値などが重要な概念となろ う。それに対して,現代の主流派経済学では,希少性, 機会費用,交換,需要・供給,比較優位などが重要概 念となる。ここでは,後者の現代主流派経済学の概念 から経済現象を分析する立場で論じてゆく。なお,ア メリカの経済教育団体の JCEE(のちに NCEE,現在 は CEE)は,ベーシックコンセプトとして 24 の概念 を取り上げて,まず,この概念のマスターから経済学 習を始めるべきと,提言をしていた。3)本稿も基本的 には,このような概念は経済を学ぶべき文法に相当す ると理解しており,経済教育を推進するためにはこの ような概念学習から始めるべきと,著者が考えている ことをあらかじめ表明しておきたい。

経済概念学習の可能性

─教科書の変遷を手がかりに─

The Journal of Economic Education No.33, September, 2014 Educational Possibility of Economic Concept Learning

Arai, Akira 新井 明(都立小石川中等教育学校)

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Ⅳ.学習指導要領とその執筆者・協力者

 1960 年における学習指導要領の改定後以下のよう な改定が行われている。確認までに簡単な特徴を整理 しておきたい。 年度 カリキュラム上の特徴と 指導要領担当者 背景となる事象 1971 年 倫理・社会,政治・経済 (梶哲夫) 教育の現代化,最も内容も含めて学習量 が多かった時代 1980 年 現代社会,倫理・社会, 政治・経済 (星村平和,齋藤弘) 「 現 代 社 会 」 の 導 入,一年次必修 4 単 位 1991 年 公 民 科( 現 代 社 会, 倫 理,政治・経済) (柿沼利昭・茂木喬) 地歴,公民に分離, 現代社会 4 単位か倫 理 2 単位・政治・経 済 2 単位 2002 年 公 民 科( 現 代 社 会, 倫 理,政治・経済) (大杉昭英) ゆとり教育,学力問 題,内容 3 割削減 2011 年 公 民 科( 現 代 社 会, 倫 理,政治・経済) (大倉泰裕) 本年から順次実施, ゆとり教育の修正  この間,学習指導要領,特に経済分野を執筆した教 科調査官は,梶哲夫(71 年改定),星村平和,齋藤弘 (80 年改定),柿沼利昭(91 年),茂木喬(91 年),大 杉昭英(02 年),大倉泰裕(11 年)の諸氏へと変化し ている。4)この中で,経済学専攻は 91 年改定の柿沼氏, 11 年の大倉氏であり,梶氏は倫理学,齊藤氏は哲学, 星村氏は歴史学,茂木氏は社会学,大杉氏は社会科教 育学である。5)  次に,学習指導要領の作成協力委員を見ておこう。 この間の「政治・経済」の学習指導要領の作成協力委 員には,伊東光晴,地主重美(71 年),矢島鈞次(80 年),中村隆英(91 年),山岡道男(91,02 年,11 年) らの経済学者がメンバーとし登場してきている。前回 の報告でも言及したが,協力者会議での協力者と教科 調査官の議論が学習指導要領の骨格を作ってゆくので あり,どのような経済学者がどう発言したのかは経済 教育の動向に大きな影響を持っていると推定できる。 ただし,議論の内容は記録として残されているわけで はないので,出てきた指導要領,および同解説書に よって推定してゆく以外にない。 1971 年改定 梶哲夫+伊東光晴,地主重美,吉田一正 1980 年改定 星村平和,齋藤弘+矢島鈞次,吉田一正 1991 年改定 柿沼利昭,茂木喬+中村隆英,山岡道男 2002 年改定 大杉昭英+山岡道男,栗原久,新井明 2011 年改定 大倉泰裕+山岡道男,新井明  学習指導要領の内容を比較しながら見ると分かるの だが,71 年,80 年改定では 60 年改定の路線がほぼ踏 襲され,内容的には特に大きな変更がないことが分か る。6)特に,80 年改定では「現代社会」の導入が大き な課題となっており,「政治・経済」はその谷間で現 状維持の力学が働いたと推定される。内容構成が動き 出したのは,担当者が経済教育へ強い関心をもってい た 91 年の改定からである。この改定では,社会科が 地歴科と公民科に分かれるという大きな変化があり, その対応に追われつつ,公民科の独自性が要求された こともあったのであろう。  その路線を踏まえ,指導要領上で内容的な変化が あったのは 2002 年の改定である。この改定では「ゆ とり教育」が提唱され,内容の 3 割の削減が至上命題 となっていた。その間隙を縫うように,前半で基本概 念や理論を学び,それを踏まえて応用問題を選択的に 取り組むという構成が導入された。91 年改定で親学 問である経済学の構成に近づいた内容が,さらに教育 的に吟味され,概念学習の可能性が大きく開けたと 言ってよいだろう。2011 年の今回の改訂でも,その 方向性は継続された。  これらの改定で影響を持ったであろう協力者のなか の経済学者に関して,出てきた結果からその動向を見 てみることにする。  71 年改定で登場する伊東光晴氏は一橋出身である が,主流派経済学には批判的であり,経済概念や理論 を通して経済を学ぶというより現実から経済に関心を 持たせるという方法を取った。71 年の改定での目玉 は方法の問題ではなく,当時大きなテーマとなってい る環境問題をいかに指導内容に組み込むかということ が,指導要領からも解説本からも強く浮かび上がって くる。7)地主重美氏は,当時は厚生省社会保障研究所 第二部長と言う肩書で参加しており,同じく方法の問 題より福祉問題の専門家として参加したと考えられる。 その意味では,71 年改定は当時の経済社会の現実と 伊東氏という経済学者の視点がミックスされたものと 言えよう。  80 年改定では,矢島鈞次氏が協力者となっている。 矢島氏はやはり一橋出身であり,ハイエクやロールズ

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の翻訳者でもあるリバタリアンと言ってもよい経済学 者である。伊東氏とは思想傾向がかなり違う。矢島氏 は,当時東京工業大学の教授であるが,その前に東京 学芸大学の教授をされており,そこで経済学と教育の 関わりができて名を連ねたと思われる。しかし,残念 ながら指導要領に関しては,大きな影響を与えたと思 われる痕跡は残っていない。なお,71 年,80 年改定 に吉田一正氏が協力者として入っている。吉田氏は経 済教育研究協会次長という肩書きである。同協会はア メリカの経済教育団体 JCEE の日本のへ紹介者である が,矢島,吉田氏が協力者として名を連ねているにも かかわらずこの二回の改定では,大きな変更がなされ た形跡はない。8)なお,80 年改定の解説本では,「経 済理論の基本に気付かせる」という言葉はあるが,そ の内容に関しては言及がない。また,市場の箇所では 「自由な市場において価格の果たす資源配分機能や管 理価格の持つ意味を理解させる」という文章がでてき て,71 年改定で強調されていた管理価格論が資源配 分機能と同列に扱われている。9)  91 年改定では,協力委員に中村隆英氏と山岡道男 氏の名前がある。このうち中村氏は日本経済史の専門 家であるが,統計学にも造詣が深く幅広く発言された と推定される。一方山岡氏は,理論経済学が専門であ り,アメリカの JCEE とも関係を持っていたこともあ り,経済教育の方向転換に関して強く発言をされたは ずである。解説本では,「経済的なものの見方や考え かたを育てることが大切」ということと「そのため, それぞれの事項について基礎的な概念を精選して,そ れらの指導を徹底させることが必要」との記述が入っ ていて,概念学習の可能性がひらけたと言える。また, 経済政策の目的に「自由,公正,効率,成長,安定」 が入ってきている。さらに,市場経済の箇所では「価 格の働きによって生産が需要に適応して調整され,… 生産要素などの資源が適切に配分される」という文言 がはいってきている。しかし,概念の内容が明示はさ れないなど,まだこの時点ではその意向は十分に反映 されていない。  指導要領が大きく転換した 2002 年の改定では協力 者に山岡氏,栗原久氏,著者(新井)がはいっており, 大杉調査官の理解もあり,経済分野での内容構成は, 原理を踏まえて現実問題を分析するという方向に大き く変わった。それでも,資本主義と社会主義という箇 所では,その文言の取り扱いも含めて簡単には変更が できない様々な重圧があった。  2011 年改定では,基本的に 2002 年改定の構成を踏 襲しながら,歴史主義的な部分をカットし,経済学習 の冒頭に「経済活動の意義」という項目が入った。

Ⅴ.教科書採択の変遷

 1960 年以降発行された教科書の変遷を新規参入も 含めて整理した表である。これまでの議論を踏まえて 変遷をたどっておきたい。  ここからは,多くの出版社が教科書つくりをしてき たこと,かつ,著名な経済学者が執筆者に名を連ねて 出版社 執筆者 その後の変遷 1 東京書籍○ 東畑精一 80 年改定で,執筆者を江 見康一氏に変更。その後間 宮陽介氏などに変え,現在 まで存続。現在は,発行部 数 NO.1。 2 自由書房△ 有沢広巳 単独執筆。80 年代に中村 隆英氏に変更。その後倒産 により 91 年改定で発行停 止。桐原書店に引き継がれ る。 3 高教出版社 ○ 小松芳喬他 早稲田系,71 年改定で発行停止。 4 一橋出版○ →△ 木村健康他 木村本は 71 年改定で発行停止。その後著者を岸本重 陳氏に変え,12 まで発行 (90 年に倒産)。 5 山川出版社 △ 石井良助他 90 年代に執筆者を山﨑広明氏に変え,現在まで存続。 6 日本書院○ 波多野鼎他 71 年改定で発行停止。 7 講談社×→ ○ 大塚久雄他 71 年改定から宮沢健一氏などが執筆者となったが, 91 年改定で発行停止。 8 帝国書院△ →◇ 安藤良雄 71 年改定から宮崎義一氏などに執筆者を変えたが, 02 年改定で発行停止。 9 清水書院× →○ 美濃部亮吉他 梶哲夫,三潴信邦氏など筑波大系の著者で発行してき たが,91 年改定で執筆者 を全面入れ替え,新政治・ 経済として現在まで存続。 (山岡,新井などが参加し ている) 10 実教出版◇ 都留重人他 いわゆる都留本。伊東光晴 氏などが執筆者となり,現 在まで存続。2011 改定で は,中村達也,井上義朗氏 などが執筆者に。 11 実教出版× →◇ 末永隆甫他 80 年改定で宮本憲一氏などが執筆者となり,現在ま で存続。2011 改定では諸 冨徹氏などが参加。 12 教育図書○ 市村真一他 阪大系,71 年改定で発行 停止。

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いるが,多くが発行停止に追い込まれていることがわ かる。また,現在は少子化の影響もあり,業界全体で の寡占化が進んでいることをこの「政治・経済」でも 読み取ることができる。  それを実証するために,この間の発行部数に関して は,80 年代以降のデータが入手できるので,指導要 領改訂に即したいくつかの年をピックアップして,教 科書の動向を分析してみよう。10)  このデータからは,歴史や地理の教科書とは異なり, 「政治・経済」の教科書に関しては,圧倒的なシェア を確保する教科書がないことがうかがえる。それでも, 上位数社のものと下位との差は大きく,山川のように 下位であっても現在も存続し,一般書として販売した ような例外的ケースはあるが,多くの社は教科書つく りから撤退している。この中で,指導要領関係者が執 筆者になっているものは,実教の伊東光晴氏が関係し ている都留本は,86 年 1 位,95 年 5 位,99 年 4 位,05 年 2 位と上位を占めている。清水 86 年 6 位は,梶哲夫 氏が著者となっている。中教 86 年は地主重美氏が著 者となっているが 11 位である。経済関係ではないが 教育出版の 99 年,05 年には指導要領の協力者で「政 治・経済」のまとめ役である政治学の河合秀和氏が執 筆者となっている。しかし,販売部数は両年とも 11 位であり,指導要領の作成協力者になったことが教科 書の販売とは直接関係ないことがうかがえる。11)  また,経済学の世界で有名,有力であり,すぐれた 内容の教科書であっても採択数を伸ばすことができな いものも数多くあり,教科書の採択と内容,学習指導 要領の関係は,一般書籍とは違う力学が働いているこ とがうかがえる。  その例をいくつか上げておく。一つは,桐原書店の 教科書である。99年は6位と健闘しているが,05年に は 11 位に下げて,ついには新規発行が停止された。 この教科書の経済分野の前半部分の執筆者は猪木武徳 氏である。12)記述は教科書の中で,もっともしっかり していると考えられるが,採用されない。もうひとつ は三省堂である。同社も86年には4位であったが,そ の後採用数を落としついには発行停止になっている。 この教科書の執筆者は伊藤元重氏である。記述はしっ かりしているのだが,現場での支持を下げている。現 場の先生たちは,ひょっとすると猪木氏の本も,伊藤 氏の本も読んでいないのかもしれないということまで 考えさせる動向である。  執筆者の経済学での立場から整理すると,純粋に近 代経済学的な記述をしたものは,70 年の改定で発行 を停止している。その後は,執筆者を変えて成功した 一橋出版などの例もある。同社の場合は,岸本重陳氏 らの市民社会派のマルクス経済学者を起用し一時発行 部数を伸ばしたが,その後倒産するなどの変化がある。 清水書院のケースは逆で,著者にマルクス経済学者 (労農派教育大学系,市民社会派マルクス主義者)を 入れた教科書を発行していたのだが,近代経済学系の 学者に入れ替えを行い,これは現在まで一定の支持を 13 三省堂○→ △→○ 篠原三代平他 70 年代には林健久氏などが参加する教科書も発行。 また,90 年改定後は,伊 藤元重氏などの執筆するも のを発行してきたが,02 年改定で停止。 14 中教出版○ 山中篤太郎 他 71 年では加藤寛氏,80 年改定では,地主重美,佐藤 武男氏などが参加したが, 倒産により 91 年改定で発 行停止。 15 教学社○ 青山秀夫 京大系,71 年改定で発行 停止。 16 好学社○ 堀江保蔵他 慶應系,学校図書に発行先 が変更。91 年改定で発行 停止。 17 角川書店◇ 増田四郎他 91 年改定で発行停止。 18 ミネルヴァ △ 岸本誠二郎他 68 年参入,71 年改定で発行停止。 19 東京学習出 版○ 山岡喜久男他 71 年改定で参入,大瀧雅之氏などが著者となったが 02 改定まで発行。 20 第一学習社 ◇ 花輪俊哉他 71 年改定で参入,大塚健一郎氏など東京学芸大系の 執筆者を加え現在まで存続。 発行部数は上位。 21 清水書院× →○→○ 平田清明他 71 年改定で参入,90 年改定で吉川洋氏,2011 年改 定で飯田泰之氏が著者とな り現在まで存続。 22 数研出版△ →○ 田中浩他 71 年改定で参入,浅野栄一,古賀英二郎氏,90 年 改定で井堀利宏,岩田一政 氏など著者として,現在ま で存続。発行部数は上位。 23 日本書籍× 池上淳他 71 年改定で参入,91 年改 定で発行停止。会社倒産。 24 学習研究社 ○ 稲田献一他 02 年改定で参入,06 年に発行停止。 25 桐原書店△ →○ 猪木武徳他 02 年改定で自由書房版をもとに参入,11 年改定で 発行停止。 26 教育出版△ 河野健二他 85 年参入,11 年改定下で はまだ発行されていない。 今後発行するかは不明。 (太字は現在も発行している出版社,および教科書。○はいわ ゆる近代経済学的なもの,×はマルクス経済学的なもの,◇は どちらとも言えないもの。分類は新井が行った。)

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あつめている。一般的に,原理主義的な近代経済学者 や正統派マルクス主義者をいれた教科書(日書),先 に触れたように経済学者としては重要な発言をしたり 業績を上げたりしている著者(三省堂,桐原)の教科 書は,発行停止に追い込まれているケースが多い。た だし,実教の大阪市大系のマルクス経済学系による教 科書は例外として存続してきたが,今次改定では主流 派経済学者が入りやや混乱している。ここから伺える のは,存続しているのは比較的マイルドな主張をして いる著者のものが多いことがわかる。  なお,ここまでは経済の観点から分析をおこなった が,『政治・経済』では,政治部分の書きぶりも採択 の重要な要素であり,発行部数からの評価はそちらか らも見る必要がある。ただし,『政治・経済』の経済 部分に関しては,日本史教科書のような極端な記述の ものはあまりなく,政治的にはリベラルな書きぶりの ものが多い。

Ⅵ.仮説の検証と経済概念学習の可能性

 ここまでの作業を通してみえるものから,仮説の検 証に入りたい。仮説を再掲すれば以下のとおりである。  (1)学習指導要領は改定ごとに教育的配慮が大き くなり親学問の体系と離れていった。  (2)教科書もそれに応じて現場感覚のものが増え ていった。  (3)経済学習は分析道具が与えられず問題解決の 手がかりが与えられない状態になった。 【教科書採択部数の変化】 1986 年度使用用 1995 年度使用用 部 % 部 % 1 実教 178,400 21.3 1 第一 50,300 15.9 2 東書 125,700 15.0 2 数研 40,600 12.5 3 第一 106,100 12.7 3 東書 36,900 11.6 4 三省 97,700 11.7 4 一橋 35,300 11.1 5 一橋① 83,800 11.2 5 実教 35,200 11.1 6 清水 59,800 7.1 6 清水① 26,500 8.3 7 自由 50,200 6.0 7 自由 17,900 5.6 8 教出 44,800 5.3 8 清水② 17,600 5.6 9 一橋② 28,100 3.4 9 東学 15,600 3.4 10 東学 19,000 2.3 10 第一 8.500 2.7 11 中教 18,600 2.2 11 三省 7,600 1.6 12 数研 15,600 1.9 12 山川 2,400 0.8 13 日書 1,700 0.5 14 学研 1,400 0.4 1999 年度使用用 2005 年度使用用 部 % 部 % 1 第一 97,300 12.6 1 東書 82,625 15.7 2 東書 84,500 10.9 2 実教① 66,163 12.6 3 数研 77,000 9.8 3 第一 61,461 11.7 4 実教① 71,400 9.2 4 数研 49,834 9.5 5 実教② 68,400 8.8 5 清水② 48,753 9.3 6 桐原 62,700 8.1 6 第一 42,293 8.0 7 清水② 60,500 7.8 7 清水① 42,098 8.0 8 清水① 54,900 7.1 8 実教② 33,014 6.3 9 第一 44,900 5.8 9 一橋 27,698 5.3 10 教出 36,300 4.7 10 教出 18,254 3.5 11 一橋 27,700 3.6 11 桐原 17,220 3.3 12 東学 26,600 3.4 12 三省 10,401 2.0 13 三省 22,700 2.9 13 数研 9,792 1.9 14 山川 6,000 0.8 14 東学 9,787 1.9 15 日書 1,400 0.3 15 山川 6,585 1.3 *①,②は便宜的に振った。同一出版社で複数の場合は,大判と小判の違いである。

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 (4)その反省も含めて「見方や考え方」の内容が 次第に明確にされ,親学問への新たな回帰と概念学習 の復活がみられる。    (1)(2)に関してはまとめて論じる。  この仮説を検証する意味で,教科書の内容の変遷を ケーススタディ方式で見てみたい。  取り上げる教科書は,東京書籍のものである。同社 の教科書は,1960 年の学習指導要領改訂に対応して はじめて高校の教科書に参入し,以来着実に部数を伸 ばし,現在トップの地位を誇る教科書であるというの が取り上げた理由である。  1960 年改定の参入時…経済の冒頭に,経済活動と いう項目をかかげ,経済の意味,経済行為の主体,経 済行為の客体,経済行為における選択と抑制という小 見出しで,それぞれ経済の定義,経済活動,経済問題 を扱う。また,希少性と言う用語は使っていないが希 少性と選択の問題を正面切って取り上げている。市場 と価格に関しても,価格は経済行為における選択の指 標という記述があり,労働価値説と効用価値説の違い も注釈で触れられている。この時の執筆者は東畑精一 氏となっているが,現実に東畑氏が書いたとは思えず, 協力者として名前が挙がっている現場の教員のどなた かが書かれたものと思われる。ただし,著者として東 畑氏の名前が挙がっている以上,東畑氏は原稿チェッ クはしたであろうから,シュンペーターの紹介者であ る東畑氏の見解の路線は堅持されていることが分かる。 この時の採択数は不明であるが,ほとんど支持を受け なかったと推定される。  1971 年改定時…江見康一氏が執筆者に参加。経済 活動の記述や市場の箇所はほぼそのまま踏襲された。 だんだん発行部数が増えてきていると推定される。  1980 年改定時…著者は江見康一氏が継続。冒頭の 経済部分は消え,資本主義体制の発展と変容となり, いきなり経済体制,資本主義経済の発展と続く構成と なる。レイアウトなどの工夫がみられ,いわゆる使い やすい教科書となっている。発行部数は上位に食い込 む。  1990 年改定時…著者が間宮陽介氏に変更。冒頭部 分は,経済活動と経済体制となり,産業の説明がされ, 産業を枠づける経済の仕組みを経済体制という定義が されて,資本主義経済の成立という歴史的説明に入る 構成となった。正直,これをスタートにして経済を教 えることは難しいだろうと思われる論理展開である。 しかし,わずか 10 行程度の説明であるから,カット して教えればよいと言うことが想定された書きぶりで ある。それに対して,市場経済の仕組みの箇所は,資 源配分の場としての市場という小見出しで,計画経済 と市場経済における価格の役割から市場メカニズムを 説明すると言う経済学的にはまっとうな記述をしてい る。需給曲線のグラフも登場しているが,シフトは扱 われていない。発行部数は上位である。  2002 年改定時…冒頭部分は変化がない。市場経済 部分はいきなり市場メカニズムという小見出しに変更 された。記述内容は前回からのものが踏襲されている が,市場メカニズムと言う言葉が入り,需給曲線のグ ラフもシフトが入ったものになっている。発行部数は 上位を継続している。  東京書籍の記述の変化を取り上げたが,整理をする と,経済学的な観点が色濃くあった初期から,現場の 要求からおざなりな定義や記述になり,著者の交代で またすこし経済学の観点が入ったが,今度は受験など の考慮から用語が増えてゆくことがうかがえる。  教科書の記述の背景となった学習指導要領と関連し て,もう少し分析してみたい。  この間の変化に関して,1970 年改定時の学習指導 要領の解説では,例えば価格機構に関しては次のよう に言う。「従来ともすればみられがちであった抽象理 論からの脱皮を図ることが特に大切である」,「現実の 経済の動きを理解させるためには,現実の市場の姿と その背景にある経済社会の変化を理解させなければ, たてまえ論となってしまう」と。ここからは,60 年 改定で「政治・経済」が誕生し,多くの教科書が書か れたが,特に近代経済学系の教科書の理論先行ぶりを 引き戻す意図が明確に読み取れる。80 年改定の解説 書では,金融財政に関して,「高度な金融論や財政論 の展開はできるだけ避けるようにする」という文言で, 理論的な面に関しては深入りをさせないという姿勢を 明確にだしている。その上で,「政治や経済の見方や 考え方を深めるようにする」ということを打ち出して いる。教育的配慮がかなり強く打ち出されているわけ である。ところが「経済の見方や考え方」に関しては, どこにも明示的に示されていないのである。一つの教 育的外皮を帯びたスローガンが独り歩きをしているわ けである。  それに応じるようにして,教科書は先の東書の例に あるように,営業力が強い会社のもの,著者の個性な り経済学への知見が打ち出されているものよりも,現 場が使いやすいもの,個性のないものが採用されるよ うになる。発行部数が上位の教科書は,内容の良さよ

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りは,レイアウトの良さや無難に書いてあることと現 場では言われているが,著者もそうであろうと考えて いる。  以上をまとめると,仮説の(1)(2)は,ある程 度それが言えるのではなかろうか。  次に,仮説の(3)に移る。  これは先に触れた「見方や考え方」について内容規 定がないことでもわかるが,上位の教科書を見てゆけ ばよくわかる。先ほどから取り上げている東書の教科 書では,経済理論に関する記述は,需要供給の法則と 比較生産費説の部分だけであり,経済問題や選択の基 準,マクロの理論などは全くない。また,多くが文章 による制度の説明であり,経済問題をどの理論を使い, どう考えるべきかのヒントもない。そして章のまとめ の部分では,「グローバルスタンダードについて,多 国籍企業,経済の自由化,一人勝ちという語句から考 えてみよう。広がる格差から見たらどうだろう」とい う課題や,「市場メカニズムの限界とはどのようなこ とかまとめてみよう」という課題が出される。生徒は, 教科書の用語を適当に組み合わせて文章を書くか,市 場にはいいところもあるが失敗もあるという程度の理 解で課題をまとめようとするだろう。これはどう考え ても,物事をしっかりした分析道具によって分析し, 価値基準に基づき判断するという経済学の方法,広く 言えば社会科学の方法とは言い難いものとなっている。  仮説(4)を検討する。それでは「見方や考え方」 に関して内容規定がどの程度入っているであろうか。 指導要領本文では,特定の概念がアメリカ流に入って きているということはない。これは行政文書特有の力 学が働いているから,よほど大きな変革がない限り同 じようなスタイルが踏襲されてゆくことからやむをえ ない部分はある。では指導書はどうであろうか。内容 構成上の大きな変化があった 2002 年の改定時の指導 書では「経済問題の背後には経済的欲求に比べて利用 できる資源の存在量が限られているため,個人や社会 を問わず最適な経済活動をおこなうためには希少な資 源をいかに配分するかという選択の問題が基本的な問 題として存在していることに気付かせることが大切」 という文言が登場する。13)また,効率と公正に関して も,「経済的な選択や意思決定においては,…効率性と 公平性や公正さとの矛盾,対立を調整することが要請 されている」という文言も登場する。もちろん,解説 書も行政文書であるので,形式や内容の継続性が要請 されるのであり,経済概念がストレートに登場するこ とは難しい。しかし,見方や考え方の基本部分は押さ えられてきたと言えるだろう。ところが現実の教科書 では,数社を除いてほとんどこの指摘をうけいれたも のが発行されていなかったという現実がある。14)その 意味では,仮説(4)の後半,親学問への回帰に関し てはまだそのような明確な兆候はみられてはいないと 言うべきであろう。  最後に,新学習指導要領での変化と教科書の現状に ついて触れておこう。  新学習指導要領では,冒頭に経済活動の意義が入っ た。ここの解説書では「希少性の制約の下」という形 で希少性と言う概念が明確に書かれるようになった。 このように遅々たる歩みであるが,経済学の基本的な 発想が入りつつあることがうかがえる。  では教科書はどうであろうか。現在出版されている のは8社10冊である。そのほとんどに希少性ないし希 少という用語が入ってきた。これは指導要領とその解 説から各社が取り入れたものであろう。さらに,機会 費用概念が,東書,実教,清水の三社 4 冊の教科書に 書かれるようになった。そのうち,清水は前回の指導 要領の教科書から唯一機会費用を入れていたが,実教 の二冊は,両方とも機会費用を入れている。15)また, 小型版ではコラムで機会費用に関して丁寧に説明をし ている。東書は本文と注で説明している。その他社の ものは機会費用までは書かれてはいない。その意味で は約半数まではいったが,まだ多数派にはなっていな いと言えるだろう。しかし,機会費用をしっかり書い た実教の教科書は,市場の箇所で資源の効率的配分, 満足度(厚生水準)という言葉まで使って踏み込んで 書いているのだが,比較生産費説のところでは機会費 用の発想について全く触れておらず,これまでの記述 を踏襲するなどのちぐはぐさを残している。東書に関 しても同様であり,希少性や機会費用に触れるように はなったが,比較生産費説の箇所では,それまで唯一 交易条件まで触れていたのが消えるなど,現場の意向 を踏まえた編集方針は相変わらずである。このように 指導要領も教科書も,経済概念をもとに現実の経済を 分析するような視点を理想とする立場から言えば,ま だ課題は多いが,それでも概念学習の可能性を開いた ものになりつつある。  問題は,今後であり,せっかく端緒が開かれた経済 概念を通しての経済教育の可能性をつぶさない努力が 必要であり,そのためにも関係者のさらなる努力が必 要となっている。

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Ⅶ.まとめと残された課題

 いかなる政府文書も人間が書いている。それを担う 人間が誰なのか,影響を与える人間が誰なのかという 点を見なければ十分に分析はできないだろうというこ とではじめたリサーチである。今回は少し長いスパン をとって指導要領,作成者,教科書の関係を見てきた。 教科調査官とその思想,バックグランドなどに関して は聞き取り調査などが必要であることが浮かび上がっ た。また,事実関係のきちんとしたリサーチも必要で ある。また,概念学習の実際やその効果測定なども今 後の課題である。 註 1) 新井明「経済教育と教科書─1960 年代の教科書の分析か ら─」(『経済教育』No.32,経済教育学会,2013) 2) ここで近代経済学という現在では死後になっている言葉 を使っているのは便宜的なものである。現在の主流派経 済学が共通にもっている概念や理論を指している。 3) 24 の概念とは,希少性,機会費用とトレードオフ,生産 性,経済システム,経済制度と誘因,交換・貨幣・相互 依存 , 市場と価格,供給と需要,競争と市場構造,所得 分配,市場の失敗,政府の役割,国民総生産,総供給, 総需要,失業,インフレーションとデフレーション,金 融政策,財政政策,絶対優位と比較優位および貿易障壁, 外国為替レートと国際収支,成長と安定の国際的局面な どである。ただし,これらの概念をそのまま採用するの ではなく,精選吟味が必要であることは言うまでもない。 A Framework for Teaching Economics: Basic Concepts, JointCouncilonEconomicEducation,1977 より。 4) ただし,ここでは担当した代表的な教科調査官名をあげ ている。というのは,教科調査官は本来自分の専門別に 採用されるのだが,誰かが転出したあとに後任が来ない 場合は,専門以外の科目も担当する場合があるからであ る。倫理の専門で教科調査官だった齋藤弘氏はその著 『公民教育の歩みと課題』富士教育出版 1991,のなかで, 昭和 53 年度の改定(1980 年改定)の時は専門外だったが 「政治・経済」も担当したと書いている(同書 pp.360 〜 361)。その意味では,その当時の教科調査官に個別にあ たる必要があるが,それはできていない。 5) 梶哲夫氏は,東京教育大学倫理学教室出身。梶氏は,中 学校社会科,高等学校の政治・経済を主に担当。倫理教 室出身ではあるが,ロック研究から人権教育,法教育, 経済教育には関心が高く,法教育の重要性や経済教育の 研究の重要性を早くから唱えていた。星村平和氏は,広 島大学出身の歴史家。国際理解教育に造詣が深い。柿沼 利昭氏は,経済教育に関しては強い関心を持っていて, 民間の経済教育研究協会とかかわりを持ち,アメリカの 経済教育の方法などの導入にも積極的であった。今回の 分析対象外であるが,中学校の指導要領解説に,経済と は「制約条件のもとでの選択」であると入れたのは柿沼 氏である。また,『学校における消費者教育の新展開』消 費者教育支援センター,1996 を刊行して,アメリカの経 済教育の方法に基づく消費者教育論を展開されている。 茂木喬氏に関しては,経済教育に関する積極的な発言は されていない。大杉昭英氏は広島大学の出身。森分孝治 氏の提唱する広島流の合理的意思決定論から経済教育に は親和的であり,「政治・経済」に関しては,2002 年の改 定で大きな構成上の変更がもたらされた。 6) 学習指導要領の本文の紹介は紙数の関係で省略する。文 部科学省 HP の以下のサイトを参照していただきたい。 7) この時の改定で「経済社会の変容」という項目が入り, 経済史の記述がかなり大きく入るようになった。また, 「公害と国民生活」の項目が独立して扱われている。 8) 吉田一正氏は,雑誌『経済セミナー』に 1980 年頃アメリ カの経済教育に関するレポートを連載されていて,著者 はそのなかで子どもが 5 セントをもってお菓子を買いに 行く場面で選択することが経済教育の出発点であるとい う紹介を読み,アメリカの経済教育へ興味をもったこと を覚えている。ところが,71 年および 80 年改定に関する 解説書には,そのような個人の選択を基盤に経済が成り 立っているという趣旨の文章は見当たらない。 9) 文部省『学習指導要領解説社会科』1981,p.181,および p.182。 10) 出典,『内外教育』時事通信社,それぞれ 3698 号,4585 号,4983 号,5535 号より。なお,95 年度使用は学習指導 要領の移行期で完成年度ではないので発行部数が半減し ている。 11) 教科書の販売はその出版社の営業力とも関係しており, 東書や第一が強いのは内容よりすべての教科で教科書を 作成しており,営業担当者の数が大きく左右していると 言われている。ちなみに東書は小中高ほんどの科目で教 科書を発行している。第一は高等学校で同じフルセット の販売政策をとっている。数研は,チャート式の受験参 考書のように内容が詳細であることを売り物にして販売 数を伸ばしたとされている。 12) 桐原の教科書では,経済問題に資源の希少性を指摘して いる。また,市場と競争の意味では競争は,行き過ぎる と不正を生み出す危険ももつが,経済の効率を高める重 要な役割を持つことが指摘されている。これは類書には 無い特徴である。また,管理価格が成長産業では成立し にくいことなどもしっかり指摘されている。マクロ経済 では,総需要と総供給について触れてあり,三面等価の 意味を IS バランス論からも触れている。これだけしっか りした記述のある教科書であるが,採用数を減らしつい には市場から撤退した。『新政治経済』改訂版,桐原書店 より。 13) 文部科学省『高等学校学習指導要領解説公民編』平成 11 年 12 月,p.90。 14) 清水書院の②の「新政治・経済」と,桐原書店の『新政 治経済』の二冊のみである。 15) 実教の小型版のこの部分の著者は,諸冨徹氏である。マ ルクス派の教科書に主流派経済学者が著者として加わる のは違和感がある。それがそのまま記述のちぐはぐさに なっていると思われる。東書は間宮陽介氏であろう。な お,清水は著者が執筆している。

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