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肢体不自由児が在籍している特別支援学校における理学療法士の役割とその課題

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 787肢体不自由児の特別支援学校における理学療法士の役割とその課題 ~ 788 頁(2015 年). 787. 分科学会シンポジウム 5(日本小児理学療法学会). 肢体不自由児が在籍している特別支援学校における * 理学療法士の役割とその課題 工 藤 俊 輔 1). はじめに 本シンポジウムにおけるこの演題は,筆者の自立活動教諭と しての経験と秋田県における教育支援計画の効果的な運用の実 践を通して,関係機関との連携による特別支援学校の支援の在 り方等について言及したものである。 先行研究については,関係機関との連携に関する国の動向や 自立活動での取り組みについてまとめた。また実践研究につい ては,事例紹介ならびに秋田県における特別支援学校の父母・ 教員に実施したアンケート調査結果から関係機関との連携によ る支援の在り方について言及した。 図1. 特別支援教育における自立活動について 養護・訓練が「障がい」児教育の指導領域として創設された のは,昭和 46 年(1971 年)にさかのぼり,平成 12 年(2000 年). 立活動教諭の免許は,一種免許状(肢体不自由教育)で,文部. の学習指導要領改訂 1) において「養護・訓練」の名称が「自. 科学省が実施する特別支援学校教員資格認定試験(社会人を対. 立活動」に変更された(図 1)。. 象とした資格試験)に合格すれば取得できる。その内容は,第. 自立活動の指導の目標は,「個々の幼児・児童・生徒が自立. 1 次試験はマークシート方式(90 分)第 2 次試験は筆記試験. をめざし,「障がい」に基づく種々の困難を主体的に改善・克. (100 分)と実技試験および面接試験からなっている。待遇は. 服するために必要な知識,技能,態度および習慣を養い,もっ. 高等学校教諭の給与表が用いられ,0.7%の特別手当が付加さ. て心身の調和的発達の基盤を培う」こととされ,「障がい」の. れる。詳細は「教員資格認定試験」で検索されたい。また,本. ある児童・生徒の教育課程において各教科,道徳,特別活動と. 試験にかかわる過去問は文部科学省のサイトからダウンロード. は別に設けられる領域とされている。自立活動の指導内容は,. ができる。. 人間の基本的な行動を遂行するために必要な要素と,「障がい」 に基づく種々の困難を改善・克服するために必要な要素を,5 つの区分に分類・整理している(文部省,2000 年. 1). )。. 実践的研究(事例紹介は割愛する) 特別支援教育における教育と医療の連携のあり方は,これま. なお,平成 21 年(2009 年)の改定で,「人間関係の形成」. で様々な議論が積み重ねられ,秋田県においては,特別支援学. が新たに加えられ,「健康の保持,心理的な安定,人間関係の. 校への看護師の派遣等もなされてきている。しかし,医療と教. 形成,環境の把握,身体の動き,コミュニケーション」の 6 区. 育の連携の重要性は叫ばれ続けてはいるものの,これまで両者. 分に改変されている。. の連携に関する実態調査は行われておらず,その実情は 2006. この自立活動に教師としてかかわっていると思われる理学療. 年と 2007 年に著者等が文献 2)3)で紹介した以外は明らかに. 法士は,日本理学療法協会名簿(2015 年版)によると全国 334. されていない。. 校の特別支援学校中 41 校,51 名となっている。なお,この自. 2006 年度より秋田県では,肢体不自由養護学校在籍児童の 「障がい」の重度化に伴う新たな処置として非常勤理学療法士. *. The Problem and Roles of Physical Therapists in Schools for Special Needs Education for Children with Movement Disorder 1) 秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻理学療法学講座 (〒 010–8543 秋田県秋田市本道 1–1–1) Shunsuke Kudo, PT: Course of Physical Therapy, Akita University, Graduate School of Health Sciences キーワード:特別支援学校,自立活動教諭,連携. (以下,PT),非常勤作業療法士(以下,OT)の導入が決定さ れ,著者等は 2006 年 4 月より週 1 回県内の県立 A 特別支援学 校を訪問し,自立活動にかかわる教育的取り組みを中心に指 導・助言を行うこととなった。そして,2006 年 4 ~ 7 月まで の 3 ヵ月間の PT・OT の取り組みについて,アンケートによ.

(2) 788. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 図3. の活動を通して,3)医療・福祉との連携に関する教員の理解 図2. が深まっていることが示唆された。 なお,2008 年度より,秋田県教育委員会で実施されてきた 本事業が文部科学省の「外部専門家の活用による指導方法等改. る教師の意識調査. 1). を行ったところ,PT・OT が 4 月より導. 善事業」として発展的に改変され,医療と教育の連携に関する. 入され,役立ったかどうかという設問に対しては 43 人(88%). 好事例として評価され,非常勤ではあるが理学療法士・作業療. が役立ったという評価をしていることが明らかになった。さら. 法士・言語療法士が配置されることとなった(図 3)。. に,同年 4 ~ 12 月までの約 8 ヵ月間の PT・OT 導入後の取り 組みについて,同校保護者を対象にアンケートによる意識調. ま と め. 査 3)を行ったところ同様に 22 人(63%)が役立ったという評. 1.特別支援学校における自立活動領域の歴史と紹介を行った。. 価をしていた。. 2.自立活動教諭としての理学療法士の役割と課題について. そこで,それら第 1 報,第 2 報の結果を踏まえ 2006 年 4 月. 言及した。. ~ 2007 年 3 月までの約 12 ヵ月間の取り組みについて同じ教員. 3.特別支援学校における自立活動教諭としての理学療法士. 集団の意識調査により,第 1 報との比較検討を行った。回答者. は医療と教育をつなぐ鎹(かすがい)役として,今後,ますま. は男性 17 人(35%),女性 35 人(65%),計 52 人で回収率は. すその役割が期待されており,積極的な参加を促すことが大き. 98%であった。これは第 1 報の回答者数 49 人(回収率 92.5%). な課題である 4)。. を上回った。特別支援教育に対する PT・OT 導入で期待する 内容について第 1 報と比較すると 20 項目中 16 項目で期待する 項目が増加しており,特に摂食指導,「運動・体育・感覚」の 学習や教育支援計画への助言等のチェック項目数の増加が著し かった。非常勤の PT・OT は役立ったかという問いに関して は,図 2 で示すとおり第 1 報と比較すると「とても役立った」 の回答数が 50%近く増加していた。 以上のことから本研究では,肢体不自由養護学校への PT・ OT 導入後,1)教員の PT・OT に対する役割期待が高まり,2) 教員の PT・OT に対する期待する項目が明らかとなり,それ に応える形で PT・OT が役だっていること,そして,それら. 文 献 1) 文部省:盲学校,聾学校及び養護学校学習指導要領(平成 11 年 3 月)解説─自立活動編─.海文堂出版,東京,2000. 2) 工藤俊輔,高橋恵一,他:肢体不自由養護学校における理学療法 士・作業療法士の役割─教師の意識調査を通して─(第 1 報).秋 田大学保健学科紀要.2006; 14: 65–72. 3) 工藤俊輔,高橋恵一,他:肢体不自由養護学校における理学療法 士・作業療法士の役割─父母の意識調査を通して─(第 2 報).秋 田大学保健学科紀要.2007; 15: 36–43. 4) 小玉美津子,鶴見隆正:特別支援学校での障がい児・家族と学 校教員に対する理学療法士の活動.PT ジャーナル.2014; 48(3): 221–228..

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