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質問紙と実験課題で測定された衝動性の関連―行動的衝動性に対する潜在変数アプローチを適用して―

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-36 192

-質問紙と実験課題で測定された衝動性の関連

―行動的衝動性に対する潜在変数アプローチを適用して―

○長谷川 晃1)、杣取 恵太2)、西村 春輝3)、服部 陽介4)、国里 愛彦5) 1 )東海学院大学人間関係学部、 2 )専修大学大学院文学研究科、 3 )量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所脳 機能イメージング研究部、 4 )京都学園大学人文学部、 5 )専修大学人間科学部 【目的】 衝動性は神経発達症群,統合失調症,双極性障害, うつ病,強迫症,摂食障害群,物質関連障害および嗜 癖性障害群,パーソナリティ障害群といった様々な精 神疾患と関連する変数である(レビューとしてWright et al., 2014; Berg et al., 2015)。しかし,衝動性 の定義や測定方法は多様であり,それらの整理が必要 とされる。

衝動性を測定する主な指標として質問紙と実験課題 が挙げられる。衝動性を測定する代表的な質問紙は UPPS-P Impulsive Behavior Scale(Lynam et al., 2006) で あ り, ネ ガ テ ィ ブ な 緊 急 性(Negative urgency),計画性の欠如(Lack of premeditation), 忍 耐 の 欠 如(Lack of perseverance), 刺 激 希 求 (Sensation seeking),ポジティブな緊急性(Positive

urgency)という 5 因子から構成される。また,実験 課 題 で 測 定 さ れ る 衝 動 性 は「 行 動 的 衝 動 性 (Behavioral impulsivity)」と呼ばれ,課題の代表例 としてGo/No-go課題(Van der Meere et al., 1995) や遅延価値割引課題(Rachlin & Green, 1972)が挙 げられる。 先行研究では質問紙と実験課題で測定された衝動性 の関連について検討が行われているが,その関連は非 常 に 弱 い こ と が 示 唆 さ れ て い る。C y d e r s & Coskunpinar(2011)はこの関連についてメタ分析を行 い,r = .10という結果を見出した。つまり,同じ構 成概念を測定の対象としているのにも関わらず,測定 結果に大きな乖離があると言える。 しかし,これらの研究では一課題で行動的衝動性を 測定している点に問題がある。実行機能を対象とした 研究では,各実験課題の成績に影響を及ぼす誤差を考 慮し,同じ機能を測定する複数の課題を用い,各課題 の成績から潜在変数を構成する「潜在変数アプローチ (Latent-variable approach)」を採用することが推奨 されている(Miyake & Friedman, 2012)。近年,行動 的衝動性を対象とした研究でもこのアプローチが試み られており(MacKillop et al., 2016),このアプロー チを採用することで誤差の影響が少ない,より純粋な 行動的衝動性を測定できると考えられる。 以 上 を 踏 ま え, 本 研 究 で は ま ずMacKillop et al.(2016)が抽出した衝動性の一次元であり,優勢 な 反 応 を 抑 制 す る 困 難 さ を 指 す「 反 応 の 抑 制 困 難 (Impaired response inhibition)」を測定する 3 課題 を用い,これらの課題の成績で 1 つの潜在変数を構成 できるのかを検討する。その上で,各課題の成績や潜 在変数によって測定された行動的衝動性と質問紙で測 定された衝動性の関連を検討することを目的とした。 【方法】 4 大学の大学学部生・大学院生176名(男性89名, 女性87名,平均年齢20.38歳,SD = 1.88)を対象に個 別で実験を行った。各大学で参加者の募集を行い,参 加を希望した者に実験室への来室を求めた。実験では インフォームドコンセントの取得後に,参加者に年 齢,性別,国籍について回答を求めた。続いて,各参 加者にパソコンでGo/No-go課題(以下,GNG),Stop Signal課 題( 以 下,SST),Conners Continuous Performance Test 3rd Edition(以下,CPT)を実施し た。GNGは,画面に緑色の丸か赤色の丸のいずれかが 提示され,参加者は緑色の丸が提示された時のみキー を押す課題である。全120試行から構成され,緑色の 丸と赤色の丸が提示される割合は 7 : 3 であった。SST は,画面に左向きの矢印と右向きの矢印のいずれかが 提示され,参加者はどちらの向きの矢印が提示された のかをキーを押して回答するが,矢印の提示後に音が 鳴った際にはキー押しを抑制する課題である。矢印が 提示されてから音が鳴るまでの時間は,参加者がキー 押しの抑制に成功した場合には50msec遅延され,失敗 した場合には50msec短縮される。 1 ブロックは64試行 から構成され,それを 3 ブロック実施した。音が鳴ら ない試行と音が鳴る試行の比率は 3 : 1 であった。CPT は,画面にアルファベットが 1 つずつ提示され, X 以 外のアルファベットが提示された際にはキーを押す課 題である。全360試行から構成され, X 以外のアル ファベットが提示される試行と X が提示される試行の 割合は 4 : 1 であった。GNGとCPTでは,キーを押すべ きではない刺激が提示された際にキーを押した回数 (Commission error)を衝動性の指標とした。SSTで は,音が鳴らない試行におけるキー押しの所要時間か ら,矢印が提示されてから音が鳴るまでの時間の平均 を引いた値(Stop signal reaction time)を衝動性 の指標とした。 3 課題の実施後にUPPS-P Impulsive B e h a v i o r S c a l e の 日 本 語 版( 以 下,U P P S - P ;

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-36 193 -Hasegawa et al., 2018)を含めた複数の質問紙に回 答を求めた。最後にデブリーフィングを行い,謝礼と して1500円分のQUOカードを進呈し,実験を終了した。 なお,本研究は東海学院大学「人を対象とする研究」 に関する倫理審査委員会の承認を得て,とり行われ た。 【結果】 GNG,SST,CPTの各成績を観測変数とし,その 3 変 数によって構成される潜在変数を仮定した,完全情報 最尤推定法による確認的因子分析を行った。その結 果,因子負荷量は.35以上であり(Figure 1),本研究 で使用した 3 課題の成績で「反応の抑制困難」という 潜在変数を構成できることが示唆された。なお,この モデルは飽和モデルであるため,適合度は算出されな かった。続いて,各課題の成績や反応の抑制困難と, UPPS- P の各因子との相関係数を算出した(Table 1)。 刺激希求とCPTおよび反応の抑制困難の間に有意な正 の相関が認められたが,その値は弱かった。 【考察】 確認的因子分析の結果,GNG,SST,CPTの各成績に よって 1 つの潜在変数を構成できることが示唆され た。この結果はMacKillop et al.(2016)と一致し, 国内においても行動的衝動性に対して潜在変数アプ ローチを適用できることが示唆された。反応の抑制困 難は幅広い問題と関連することが示唆されているため (Wright et al., 2014),今後は潜在変数アプローチ を適用した上で,反応の抑制困難と心理・行動的な問 題との関連に関する精緻な検討を行っていくことが有 益であるだろう。 一方,質問紙と実験課題で測定された衝動性の間に はほとんど関連が認められず,この結果は潜在変数ア プローチを適用した場合においても同様であった。そ のため,質問紙で測定された衝動性と行動的衝動性は 独立した次元を構成していると考えた方が適当であ り,各手法を用いて見出された知見を比較する際には 注意を要すると言える。また,各指標の測定結果が何 を反映しているのかについて,今後詳細な検討を行っ ていく必要があるだろう。

参照

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