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臨床心理士養成大学院に在籍する大学院生の認知行動療法のコンピテンスの実態調査

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-59 414

-臨床心理士養成大学院に在籍する大学院生の認知行動療法のコンピテンスの実態調査

○小川 祐子1)、柳井 優子2)、木下 奈緒子3)、小関 俊祐4)、伊藤 大輔5)、小野 はるか6)、鈴木 伸一1) 1 )早稲田大学人間科学学術院、 2 )国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科、 3 )イーストアングリア大学医学・健康 科学部、 4 )桜美林大学心理・教育学系、 5 )兵庫教育大学大学院学校教育研究科、 6 )早稲田大学大学院人間科学研究科 【問題と目的】

認知行動療法は(Cognitive Behavioral Therapy: 以下CBT)は,エビデンスに基づく治療として多領域 で用いられている心理療法である。しかしながら, CBTを希望する患者は多い一方で,本邦ではCBTを提供 できるシステムや人材が不足していることや(大野, 2012),CBTを提供する専門家の質の保証が不十分であ ることが指摘されている(清水,2011)。 このような背景から,柳井ら(2018)は,英国にお けるメンタルヘルスサービスの充実に関する国家政策 プロジェクトにより明らかにされたコンピテンスリス ト(Roth & Pilling,2008)の項目を用いて,CBTを 行う際に必要となるコンピテンスを整理した。このコ ンピテンスリストは,CBTの実践家が習得すべきこと の基準として活用できるとともに,実践家が自身のセ ラピーを定期的に振り返ることを可能にする。そのた め,このリストを活用することで,セラピーの質の継 続的な向上・維持が期待できるとされている。 しかし,心理士としてのトレーニングを受けている 者がどの程度のCBTのコンピテンスを有するかについ ての日本の現状は明らかになっていない。そこで本研 究では,本邦の臨床心理士養成大学院に在籍する学生 を対象にCBTのコンピテンスの現状を把握すること, および,大学院での実習経験とCBTのコンピテンスと の関連を検討することを目的とした。 【方法】 調査対象者 本邦の臨床心理士養成大学院に在籍す る修士課程 2 年生以上の学生であった。 調査内容 1 .CBTのコンピテンス 柳井ら(2018)によって作 成されたCBTのコンピテンスに関する項目リストを 用いた。リストは「包括的なセラピーのコンピテン ス」( 9 項目),「基本的なCBTコンピテンス」(14項 目),「基本的な行動療法,認知療法の技法」(14項 目),「メタコンピテンス」( 8 項目)の 4 つのカテ ゴリー,全45項目により構成される。本研究では, これらの項目についてどの程度実施することができ ると思うかを,まったくできない( 0 ),少しでき る( 1 ),おおよそできる( 2 ),十分にできる( 3 ) の 4 件法にて回答を得た。 2 .大学院での実習経験 1 )領域別実習日数: 大学院での実習において, 調査時点までに経験した実習日数について,実習 領域(医療,福祉,教育,司法,産業,その他) ごとに回答を得た。 2 )実習形態別ケース数: 大学院での実習におい て,調査時点までに経験したケースの数につい て,実習形態(予診,カウンセリング,心理検査, コンサルテーション,陪席,集団介入)ごとに回 答を得た。 3 .フェイスデータ 調査対象者の在籍学年,年齢, 性別について回答を得た。 調査手続き 臨床心理士養成大学院でCBTに関連す る講義・実習等を担当する大学専任教員を通して,各 教員の研究室に在籍する学生,または,臨床指導を 行っている学生に対して調査協力を依頼した。まず, 各大学院のホームページやシラバス等を参照し,99名 の大学専任教員に対して調査協力を依頼し,80名から 内諾を得た。内諾を得た大学専任教員に対してアン ケートを送付し,大学専任教員から調査対象者に対し て調査説明およびアンケートの配布が行われた。その 結果,205名の学生から回答済みアンケートが返送さ れた。アンケートの返送をもって同意を得たものとし た。調査期間は2017年10月〜2018年 3 月であった。 倫理的配慮 本研究は,早稲田大学の人を対象とす る研究に関する倫理審査委員会の承認を得て実施され た(承認番号: 2017-219)。 【結果と考察】 調査対象者の背景 調査対象者のうち,修士課程 2 年に在籍する学生は 162名(79%)であり,博士後期課程 1 年と 2 年は12名 ずつ(5.9%),3 年は14名(6.8%),4 年は 0 名(0.0%), 5 年と 6 年は 1 名ずつ(0.5%)であった。調査対象者 の平均年齢は26.89±6.32歳で,88名(42.9%)が男性 であった。 大学院での実習経験とCBTのコンピテンスの現状 調査対象者が経験した大学院の実習における,領域 別実習日数,実習形態別ケース数,CBTのコンピテン スをTable1に示した。平均日数が最も多い領域は医療 (29.65±45.43日 ) で あ り, 次 い で 教 育(18.26± 31.35日)であった。実習形態別ケース数は,陪席の 平均ケース数が最も多く(10.44±26.93件),次いで

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-59 415 -予診(8.06±21.76件)であった。これらの実習形態 状況は,今回の調査対象者が在籍する大学院の実習状 況を表しているといえる。 CBTのコンピテンスについては,各カテゴリーを構 成する項目の合計得点を項目数で除した得点を下位尺 度得点としてTable1に示した。CBTのコンピテンスの 各カテゴリーのうち,平均値が最も高いコンピテンス は「包括的なセラピーのコンピテンス」(1.44±0.51 点)であった。「包括的なセラピーのコンピテンス」 は,すべての心理的介入に共通して必要な技能であ り,今回の調査対象者となった大学院生はセラピーを 実施するにあたっての基本的なスキルを,少し〜おお よその範囲で習得していることが示された。一方で, 平均値が最も低いコンピテンスは「基本的な行動療 法,認知療法の技法」(0.86±0.57点)であった。「基 本的な行動療法,認知療法の技法」は,CBTの中心的・ 専門的な技法に関するコンピテンスを含むことから, 今回の調査対象者はCBTの専門的な技法を比較的習得 していない傾向が示された。 大学院での実習経験とCBTのコンピテンスとの関連 大学院での実習経験とCBTのコンピテンスとの関連 を検討するために,Spearmanの順位相関係数を算出し た。結果をTable2に示す。まず,領域別実習日数につ いて,医療領域の実習日数とCBTのコンピテンスの各 カテゴリーおよび合計得点に有意な弱い正の相関関係 が認められた。その他の領域の実習日数には,有意な 相関関係が認められなかった。このことから,医療領 域の実習日数の多さとCBTコンピテンスの高さには関 連がある可能性が示された。一方で,その他の領域, 特に福祉,司法,産業,については,実習の平均日数 が0.36〜6.47日と少なく,CBTのコンピテンスには実 習日数の多さが関係している可能性も考えられる。 実習形態別ケース数については,すべてにおいて CBTのコンピテンスとの有意な相関関係が認められ た。特に,予診のケース数とCBTのコンピテンスの各 カテゴリーおよび合計得点との相関係数が最も高く, 弱い〜中程度の正の相関関係が認められた。このこと から,予診のケース数を多く経験することと,CBTの コンピテンスの高さが関連している可能性が示され た。 本研究の結果から,本邦の臨床心理士養成大学院に 在籍する学生のCBTのコンピテンスはカテゴリーに よって異なり,特に,認知療法や行動療法の具体的な 技法といったCBTにより特化したコンピテンスに関し ては,課程修了後も専門的なトレーニングが必要であ ることが示唆された。CBTのコンピテンスを高めるた めの有用なトレーニング方法を検討するにあたり,実 習経験別のコンピテンスについて今後も継続的に検討 する必要があるだろう。

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