Nature inれ
物
%も "σ″捻 カ
Koichi Aizawa
序 ジェイン・オーステ ィンの小説の世界は,女
主人公をめ ぐる恋愛 と結婚がメインプロットとな り,彼
女たちの恋愛 と結婚の相手 となる男性 と両者を取 り巻 く親,兄
弟姉妹,親
戚,隣
人,友
人 などの織 りなす人間模様が物語の大半を構成する。女主人公は恋愛相手や周囲の人間 との関わ り において,例
えばぞキャサ リン・モーラン ド 銀堕),マ
リアンス・グッシュウ ッドG&S),エ
リザベス・ベネ ット(PEP),エ
マ(2)の
ように,何
らかの覚醒(awakening)を
経験 し,変
貌 。成長 を遂げることによって恋愛 と結婚 を成就 して物語は終結する。一方,エ
リナー・ダッシ ュウ ッドG&S),フ
ァニー ・プライス(7Pl,ア
ン ・エ リオ ッ ト(P)の
ように,女
主人公 自 らは不変の徳を体現 し,変
わ らぬ愛を将来の夫 となるべき相手に抱 きつづけ,相
手の変容によっ て恋愛 と結婚が成就する場合 もある。いずれの場合 も読者の関心はその経緯に集中するといって もよい。 物語の展開する場所 ― 背景 ― は,田
舎の土地所有の紳士階級 (landed gentry),そ の生活の 場である屋敷(House),コ
テ ッジ (Cottage)で の社交の場,隣
人同士が招待 しあって開催 され る舞踏会 (ball)や夕食会 (dinner party),そ の後に開かれるカー ドゲーム,ま
た馬車による小 旅行 (excursion)な どである。 この ような催 しにおける中心課題は,専
ら「 人事」 (human affairs)一 人間関係 ―に関わるも ので,物
語の展開は全知の語 り手による登場人物 とその人間関係の説明,登
場人物の会話 ・行動, それ らについての同じ語 り手のコメン トな どによってなされる。したがって,人
物たちが置かれ る場所,住
まいや建物,そ
れを取 り巻 く環境は独立 して存在 し,人
物 との関係については,余
り 言及 されないのが普通である。言及 されて も読者の関心を余 り惹かない場合が多い。 ところが 『マンスフィール ド・パーク』においては背景が重要な意味を持 っていると思われる場合が多い。 人物たちが生まれ育 った土地柄や背景が人格形成に及ぼす影響が暗示的に示 され,背
景がある価 値を具現すると思われる場合がある。 本論考は,『マンスフ ィール ド・パーク』におけるこの ような背景の取 り扱い方 に注 目し,そ
の役割について検討 しようするものである。特に余 り言及されることのない自然が特に女主人公 ファニーに対 して持つ重要な意味 と役割について詳 しく検討するものである。 I オー ステ ィンの6大
作 品の 中で『 ノーサンガー ・アベ イ』,『 マンスフ ィール ド・パー ク』は, 他の作 品 とは違 って物語 の展開す る中心的 な場所 ― 背景 ― が題 名 として採用 され,こ
れ らが重 興 澤 日 日 + →要 な役割 を果 た している。前者 は女主人公 キ ャサ リンにその熱読 す るゴシ ックロマンス的想像 を 掻 き立 て る と共 に
,彼
女 を「 迷妄」 か ら「 現実」へ と覚醒 させ る役割 を果たす。後者 は養子 とし て引 き取 られた女主人公 フ ァニーが育 ち,そ
の価値 に 目覚め,ひ
いてはその守護者 (guardian)(1)また「不可欠の柱」 (the indispensable mainstay)9)と して納 まる場所 とな る。 その価値 とは準
男爵 サー ・ トマ ス ・パ ー トラムの領地 (estate)マ ンスフ ィール ド・パー クが元来持 つあ るいは 培 って きた伝 統的価値 であ る。 フ ァニーの見 出す「 上品 さ
,礼
儀正 しさ,規
則性,調
和,そ
して 多分,い
ずれ に も増 して,平
和 と静寂」 (The elegance,proprieサ ,regulariけ,harmony―
and perhaps,above all,he peace and tranquility of Mansfield Park,3910))で あ る。これは出生地 ポー ツマス に訪れてフ ァニーが改めて 目覚め る価値 であ る。 これ らの価値 が何 に よって成 り立 ち保障 され るかが本論の最終 目的であ るが,こ
こではまずポーッマス とい う背景 が持 つ意味 について検 討 す る。ポー ツマスの 自宅は期待 に反 してフ ァニー に「 失望」(disappointment,388)し か もた らさな い。 それが「 騒音
,無
秩序 と無作法の住みか」 (the abOde of noise,disorder,and impropriety,388)だ
か らであ る。 フ ァニーはポ ーッマ スで過 ごす中で「 マンスフ ィール ドこそ故郷」(Por‐tsmouth was Portsmouth,Mansfield was home.431)で
あ るこ とを悟 る。 フ ァニーが最初 にポーツマスに到着す る時の様子 は次の ように描 かれている。The nextrnorning saw the■ l off again at an early hour;and with no events and no delays they regularly advanced,and were in the en rons of Portsmol北 h while there was yet dab/1ight for Fanny to look around her,and wonder atthe ne、 v building. ――They passed the Dra、 vbridge,and entered the town,and ule light was only begin ng to fail,as,guided byヽ Villiam's powerful voice, they、vere rattled into a narro、v street,leading from the high street,and dran‐ n tlp before the door of a sman house now inhabited by Mr.Pttce.(376-7)
フ ァニーは新 しい建物
,跳
ね橋 (he Dra、vbridge)を眺 め,本
通 りか ら狭 い道 を通 って,小
さ なプライス家 (a small house inhabited by Mr.Price)に 到着す る と述べ られてい る。ポー ッマス が にぎやかな港町であ るこ とが分 かる。 ポーッマスは15世 紀初頭 か ら中期 にかけて東洋か らの香 幸 料 の輸 入港 として栄 え,パ
ブ と売春宿 が乱立 し危 険 に溢 れ る衡(town)で
あ った とい う。 1729年 には英国海軍兵学校(Royal Naval Academy)が
設立 され,軍
港 の町 として発達 した。ネ ル ソン提督 が トラフ ァルガーの戦 いに赴 いたの もこの港 か らであ る。作品の背景 となる時代はほ ぼ この時期 と重 な っている。港 には軍艦 が頻繁 に出入 りし,軍
人 たちのたむ ろす る活気 にあふれ る衡 であ る とともに喧 騒 と雑踏 の街 で もあ った こ とが想像 で きる。プ ラ イス氏 は も と海軍大尉 (Lieutenant of Marines)で あ るが身体 に障害 を負い仕事 もで きず(disabled for active service,4) が らぶ らしている様子が うかがえる。軍人 としての名誉や栄光 か ら見放 された大酒飲 みの ぐうたらに落 ちがれている。ポーッマス とい う軍港 の街 の落 とし子 ともいえる。
Nobody、vas in their right place,nothing、 vas done as it ought to be.She could not respect her parents,as she had hoped.On her father,her confidence had not been sanguine,but he、 vas rnore negligent of his family,his habits were worse,and his manners coarser,than she had been pre― pared for. He did not、 vant abilities; but he had no curiosity, and no information beyond his profession,he read only the ne、 vspaper and the navy― Ist,he talked only ofthe dock― yard,the har―
bour,Spithead,and the A/1otherbank;he swore and he drank,he、 vas dirty and gross.(388-9)
She nlight scruple to make use of the、vords,but she must and did feel that her rnother石 汀as a
parti』,ill―judging parent,a dawdle,a slattern,who neither taught nor restrained her children,
whose house was the scene of mismanagement and discomfort from begin ng to end,… (390) ここに描 かれ るのは 自堕落 で無責任 な両親の姿 であ る。子供たちは野放 し状態で躾 も教育 もさ れない。 オー ステ ィンは環境 と教育が人格形成 に大 き く影響 す る とい う考 えを持 ってい る。例 えば
,ミ
セス ・プライスは姉の レデ ィ・バー トラム と同様,性
質 が元来「 の ん きで もの ぐさ」 (easy andindolent,390)で
あ り,後
者 の立 場 にあ れば,同
じよ うに「貫禄 のあ る立派 な女性」(a goodwoman of consequence)と
な りえた と述べ られてい る。 また,二
人 の現況 を比較 してフ ァニー に次の ように嘆 かせている。It often grieved her to the heart― ―to hink of the contrast between them― ――to think that where nature had made so little difference,circumstances shodd have made so much,and that her mother,as handsome as Lady BeAranl,and some years heriunior,ShOuld have an appearance so much more wom and faded,so comfortless,so slattemly,so shabby.(408)
環境 に よって性格 ば か りでな く容貌 す ら影響 を受 け る とい うのであ る。 もち ろん貧 しさ と大所 帯 とい う経済 的 な状況 も大 いに関与 してい る と考 え られ る。 しか し貧 しい とはい え
,レ
ベ ッカ と サ リー とい う2人
の女 中を雇 ってい る とい うか らその 日暮 らしに困 るほ どの貧乏で もなさそ うで あ る。プ ライス家の家族 の 自堕落 で怠惰 なそ して雑然 とした無秩序 な生活 はポー ツマ ス とい う街 の喧喋 と混雑 をそのまま反映 している とい うこ とにな るのではあ るまいか。 3ヶ 月を過 ご してフ ァニーがポーッマスに対 して持 つ印象は「 街の太陽の 日差 しには健康 さ も 陽気 さ もない」 (There was neiher healh nor gaiety in sun― shine in a town.439)とい う感慨 にも表現 されている。 これはプライス家 その ものの姿で もあ る。 Ⅱ マンスフィール ド・パークの伝統 と秩序を脅かす人物 として登場するのがヘン リー・クローフ ォー ドとメア リ・クローフ ガー ド兄妹である。
2人
はマンスフ ィール ド・パークに越 して きたグ ラン ト牧師夫人の種違いの弟 と妹であるが,共
通の母親の死後父方の叔父に預け られ育て られて いる。叔父クローフォー ド提督夫妻には溺愛 されて育て られた という。 クローフ ォー ド夫人が死 ぬ と「身持ちの悪い」(a man Ofcious conduct,41)提
督は愛人を家に連れ込み, 2人
は居幸 く なってグラン ト夫妻の家に舞い込んだのである。マンスフ ィール ド・パークに移 り住んだ2人
は ロン ドン (fashionable London)●)育ちの本領を発揮することになる。 ロン ドンは派手なファシ ョン と退廃を争む享楽の都市,物
欲 と利己主義 と虚栄の菫延する流動的な場所 として2人
に多大 な影響を及ぼ している。 ヘン リーはバー トラム家の2人
娘マライア とジュリィアを虜にし,メ
ア リーは息子エ ドマン ド を虜にする。マライアはマンスフィール ド・パークの隣村サザ トン・コー トに住むラッシュワー ス家の息子ジ ェイムズ と婚約 しているにも拘わ らず,ヘ
ン リーの関心を引 こうと妹ジュリア とし のぎを削る。ファニーが密かに心を寄せるエ ドマン ドはメア リーの快活で積極的な魅力に心を奪われて しま う。
ヘ ン リーは最初 マンスフ ィール ドを訪れた際
,マ
ラ イアが ラ ッシ ュワース氏 と婚約 してい るこ とを知 っているが,妹
メア リー との会話で,彼
女 が“And besides, ヽliss Bertran■ is engaged. Remember that, my dear brother. Her choice is
made."(45)
と忠告 す るのに対 して,
“Yes,and llike hefさ Ⅲe better fOr it.An engaged woman is always more agreeable than a disen― gaged.She is satistted with herself.Her cttres are over,and she feels that she may exert an her pOwers Of pleasing withol北 suspicion.Allis safe with alady engagedi no harm can be done."(45)
とい って
,ジ
ェ リア とよ りも彼女 との親交 を深め る。マ ライアは素人芝居 の練習で彼 に益 々熱を上 げ
,結
婚相手 をすんでの ところでヘン リー に鞍替 えす る様相 を呈す るが,サ
ー ・ トーマスの アンテ ィグアか らの帰省 を機 に芝居上演 がお流れにな って,ヘ
ン リーがマンスフ ィール ドを離れ てい る間にラ ッシ ュワース氏 とよ りを戻 し結婚 して しま う。ヘ ン リーは後 にフ ァニーに興味 を持ち始め
,最
初 は妹 にフ ァニーを誘惑す る (“my plan is tomake Fanny Price in 10ve with me."229)と 豪語 す るが
,彼
女 が 自分 に一 向に傾 く気配 がない と 悟 る と本 気 で結婚 を考 え始 め,今
度 は妹 に も「 フ ァニ ー ・プ ラ イス と結婚 す る決意 を固め た」(You must be aware thatl am quite determined tO marり
Fanny Price.291)と
公言 してあ らゆ る手段 で彼女 を手 に入れ よう とす る。 フ ァニーの愛 す る実兄ウ ィリアムの海軍での昇格の 口添 え を した り,サ
ー ・バ ー トラムの手 を借 りた り,ポ
ー ッマス帰省 中のフ ァニーの家族 に対 す る幻滅 と傷心 につけ こもう とした り,手
を尽 くす。 ところがポーッマスか ら自宅のあ るノーフ ォー クの エヴ リンガム に帰 る途 中,フ
レイザ ー夫 人 のパ ー テ ィー に誘 われ,そこで ラ ッシ ュワー ス夫 人(マライア
)に
会 うこ とにな る。Curiosity and vanity、 vere both engaged,and the temptation of immediate pleasure、 vas too strong fOr a lnind unused to lnake any sacriace to right,he resolved to defer his Norfolk,ourney, resolved that、vFiting shOuld ans、ver the purpose ofit,or thatits purpose was unilnportant― ―and staid.He sa■/出Crs.Rushworth,was received by her with a coldness which ought tO have been
repulsive,and have establshed apparent indifference between theni for ever:but he、 vas morti― ied,he c9uld not bear to be thro、 vn off by the woman whOse smiles had been sO whOlly at his cOrn― mand;he rnust exert hilnself to subdue so proud a display of resentment,it覇 /as anger on Fanny's account,he FnuSt get the better ofit,and Fnake rrs.RushwOrth Maria Bertrani again in her treat‐ ment of himser.(467-8)
彼 の利那的快楽主義 と虚栄心 とがマライア とよ りを戻す原因 となっているこ とを示 している。 メア リー もやは り快楽主義的傾 向があ り
,エ
ドマン ドよ リロン ドン生活の経験 のあ る放蕩者 の 兄 トムが 巨奥活 さ と女性への気配 り」 (liveliness and gallantry,47)を 持 っているといって近づ こうとす るが,
トムが競馬 に熱 を上げ彼女 に関心 を余 り示 さない こ とか ら,エ
ドマン ドに鞍替 えす る。彼女 は
,彼
との結婚 を視野 に入れなが ら,「 収入が多 い こ とが幸福 を得 るこれまで耳 に し て きた最高の秘訣」(A large income is the best recipe for happiness l ever heard of。213)と
公言し
,陸
海軍 の将校,弁
護士 や政治家 な どにな って (go intO law,93,“You ought to be in parlia―ment."214),世
俗 的 で派手 な 出世 や名誉 を求 め る (五se to distinction,214)こ とをエ ドマ ン ド に求め る。その こ とで僧職 に就 くこ とを 目指すエ ドマン ドを戸惑 わせ る。 クローフ ォー ド兄妹は,こ
の ようにロン ドンで培われた快楽主義 と世俗主義・拝金主義でマン スフィール ドパークの伝統によって築かれた安定 と秩序を脅かすことになる。あるいは見かけ上 の安定 と秩序の瓦解を扇動するといえるかもしれない。 ヘン リーはまたサザ トン・コー トの後継 ぎラッシ ュワース氏の 目指す領地 ・屋敷やエ ドマン ド の移 り住む予定のソーン トン・レ/シ
ーの改良(improvement)を
指導することによって,伝
統 的な価値の破壊者 としての役割を果たす ことは,ダ
ックワースの指摘するところである。6)彼は 「 改良」(improvement)と
い うよりも,「刷新」 (innovation)や「 改変」(atteration)がより適 切な実態を把握する言葉 と述べる。6)また彼は素人芝居 も舞台設定のために部屋の改変を伴 うことか ら伝統破壊の行為 として捉 えている。
トニー・タナーは
,ク
ローフ ォー ド兄妹は「 自由,娯
楽 とファッシ ョンの世界」(the wond Of liberty,amusement and fashion),9)「 華美,興
奮,活
動,娯
楽,世
俗的な機知 と行 きず りの関係 の魅力にあられる世界」(a wOrld of glamour,excitement,act ity,amusement and』l the attrac‐tions of worldly wit and casual relationships),(8)し かし,「絶えざる偽 りの外見」(endlessly false
appearances),「
作法 が道徳 に とって変わ る世界,冷
酷 な歎購,誤
魔化 し,搾
取 の世界」(a world in、vhich manners substitute for rnorals,a world given over to cold deception,rnanipulation and exploitation.),① )また「金に対する配慮に支配 される世界」(a wOrld governed only by con― siderations of money)(刊 )であるとい うロン ドン生活の大舞台で,あ
らゆる領域の対応を容易に駆 使する役者「大意匠家」(master stylists)と な り,誠
意の伴わない演技を身につけ,活
力 と空疎 (energy and emptiness)が 同居する現代人(a modem pair)で
あると指摘 している。ヘン リー はファニーヘの求婚 に際 して もっとも難 しい役 一 誠実の役 (he rOle Of sincerity)― を演 じ,フ
ァニーの抵抗 と堅固さに会 って,挫
けて しまうと論 じている。(10このようにマンスフィール ド・パークはロン ドンの申し子 クローフ ォー ド兄妹の侵入によって 破綻の危機を迎 えるのである。 ここでは触れていないが「 ファシ ョン と浪費の習慣」(habits of fashion and expense,121)以 外に取 り柄のない という放蕩者 トムの親友の貴族 イェイツ氏 も
,素
人芝居の発起人 としてマンスフイール ド・パークに侵入 し,後
にジュリア と駆け落ち して,や
はリパークを脅かすことになる。
2人
が出会 うの もロン ドンであ り,ロ
ン ドンの腐敗性がここで も 暗示 されているといえよう。Ⅲ
AboRtt thirty years ago,Miss Matta Ward of Huntingdon,with only seven thousand pounds,had the good luck to captivate Sir Thomas Bciranl,of Mansield Park,in the county of Northampton, and to be thereby raised to the rank of a baronet's lady,瑯 ″ih an the cOmforts and consequences of an handsome house and large income.(3)
マンスフ ィール ド・パー クは ここに紹介 され るように
,立
派 な屋敷 と高額 の収 入 とい う全 ての 安楽 と貫禄 が享受 で きる場所 であ る。準 男爵 とい う地位 は貴族階級 には属 さないが紳士 階級 では 最上位 に位置 す る。ポー ツマスや ロン ドン とは対照的 に
,先
に も述べた通 り,特
に養子 として住 み込 むフ ァニー に とって静寂 と安定 が保障 され る理想 の場所 として描 かれてい る。 しか しその内実は こと人間関係に関す る限 り必ず しもそ うとはいえないのであ る。
クロー デ ィア
L.ジ
ョン ソンは,オ
ー ステ ィンがマンスフ ィール ト・パー クを,父
親 を「 最 高権 力者」lfigurehead of the sublime)(1め とす るエ ドモン ド・バー ク的な録守的家父長的家族 として 捉 え椰楡 している としている。彼女の こ とばを借 りれば,『 マンスフ ィール ド・パ ー ク』は「保守 的神話」 (conservate myth)を
「 危 うい」(sour)も の にす る(1め,「 神話性剥奪」(demystifica―tion)(M)の物語 とな る。彼女は
,家
父長 としてのサー ・ トーマスの「 品位 の装 い」(drapett of de‐ cency)(1のを身 につけ る言行不一致 の暴君性 を指摘 し,夫
に飼 いな らされ愚 かで もの ぐさな妻 , エ ドマン ドを除 き父親の前では従順 を装いなが ら陰で 自分の したい放題 に振昇 う利己的な兄弟姉 妹,慎
ま しさゆえに奴隷 同様 の扱 いを受 けるフ ァニーの姿 をクローズア ップする。(l①また これ ら を許容 し陰で支援す るおせ っかいな ノ リス夫人の存在 に も言及 している。 ポー ツマスに里帰 りす る前のマンスフ ィール ド・パー クは,フ
ァニー に とって,特
に人間関係 においては,必
ず しも住み易い場所 ではない。彼女 に気配 りをす るのはエ ドマン ドのみであって , サー ・ トーマスを始め他の者 はすべて冷淡 であ る。彼女 は養子 としてや って来た当初 か ら,常
に 孤独 と意気消沈の状態 に陥 っている。Fanny,、 vhether near or from her cOusins,hThether in the sch001‐ roOnl,the drawing― roo■1,or the shrubbev,、 ″as equany fOrlorn,finding something tO fear in every person and placeo She、 vas disheartened by Lady Bertranl'ss』 ence,a、ved by Sir「ΓhOmas's grave looks,and quite overcome by WIrs.Norris's admonitions. Her elder cousins mortited her by renections on her size,and abashed her by noticing her shyness,Miss Lee、 vondered at her ignorance,and the rnaid― servants sneered at her c10thes,and覇「hen to these sOrro、 vs、vaS added the idea of the brothers and sisters among whOm she had always been important as play― fellow,instructress,and nurse,the despon‐ dence that sunk her httle heart was severe.(14)
フ ァニーの置 かれているこの立場 は終始変わ らない とい って よい。彼女はマンスフ ィール ド・ パ ー クにおいては常 に受 け身的で傍観者的立場 を強い られている。そ うい う彼女が危機 に立たさ れ るのはサー ・ トーマスやェ ドマン ドにヘン リー との結婚 を勧め られる時である。何事 も従順に したが って きた彼女 は ここで初めて抵抗す る。 これが きっかけになってポーッマスの 自宅に一時 帰 され る こ とにな るが
,ポ
ー ッマスの 自宅 と比較 して彼女 がマンスフ ィール ド・パークに対 して 洩 らす,「 上 品 さ,礼
儀正 しさ,規
則性,調
和,そ
して多分,い
ずれ に も増 して,平
和 と静寂」 の場所 であ る とい う前述の感想 は必ず しも真実 とはいえない。ジ ョンソンは この点を指摘 し,フ
ァニー がマンスフ ィール ド・パー クに求めているものはむ しろそれが保障する「 富 と安楽の価値」 (advantages of wealth and cOmfOrt)(W)で あ る と述べてい る。 それではフ ァニーがマンスフ ィー ル ド・パー クに対 して感 じる憧れあ るいは共感はその ような経済的な安定 という現実的な ものの みであろ うか。 この点 について考察す るに当た り,筆
者 は フ ァニーの ロマンテ ィック とい って もよい側面 に注 目したい。 フ ァニーが もっ とも愛 し尊敬 す るのは兄 ウ ィ リアムである。彼女がマンスフィール ド・パー ク に移 り住 んで きた後,バ
ー トラム家の家族の中で,彼
女 に こまや かな心配 りをす るのはエ ドマン ド1人
である。彼 は彼女 に読書の指導 を した り,乗
馬 のための馬の手配 を した り,病
弱 な彼女の 健康 について気配 りを した りす る。 その ような彼 に彼女は兄のウ ィリアムを重ねて見 る。彼の読 書指導 にたいす る彼女の反応 はつぎの ように述べ られてい る。In retuコn for such seA/iCeS she loved hiln better than any body in the、 vorld exOept Winia.1,her heart、vas divided beth7een the hvo.(22)
ここでは明 らかに
,エ
ドマン ドをウ ィリアムに重 ね合わせ2人
の間で心が引 き裂 かれ る と述べ てい る。彼女 の将来の夢 であ リウ ィリアム との約束事 に,小
さな 田舎家 で「2人
で中年 お よび老 年期 の生活 をず っ と一緒 に暮 らす」(pass all their middle and latter life together,375)と い うこ とがあ る。 この ような兄 とい とこ とへのフ ァニーの思慕 に,ジ
ョン ソンは近親相姦性 が暗示 され る こ とを指摘 してい る(硝 )。 筆者 にはむ しろ少 女趣 味 的 とい って よい ロマン テ ィ ックな夢 の よ う に思 える。 この願望は世知幸 い世間や人間関係,都
会 の腐敗や喧騒 を逃れ,田
舎 で ひ っそ り自然 とともに生 きる とい う願望 と通底 す る とい って よい。 フ ァニーはマンスフ ィール ド・パー クの住 人 の中で,利
己主義(schshness)を
免 れてい る唯― の人物 とい って よい。他 の人物 が 自己の利 害 や欲望 に突 き動 か され る余 り,周
辺 とりわけ 自然 や時 の移 ろい に無 関心 ・無頓着 であ るの に反 して,フ
ァニー は孤独 を余儀 な くされ るこ とに よって思索 的 ・内省的 にな り,こ
れ らに敏感 に反 応 す る ようにな ってい る。Her olvn thoughts and renections were habitually her best companions,and in obser ng the ap‐
pearance of the country,the bearings of the roads,the difference of soil,the state of the harvest, he cottages,the cattle,he children,she found entenainment that could only have been height― ened by having Edmund to speak to of■ vhat she felt.That、 vas the only point of resemblance be― tween her and thelady who sat by her,in every thing but a value for Edmund,WIiss Crawford鴎 抵s
vett unlike her.She had none of Fanny's dehcacy of taste,of rnind,of feehng;she sa、 v nature,in‐
animate nattxre,、 vith little observation,her attention was all for rnen and、 vomen,her talents for he hght and l
ely.(801)
Fanny agreed to it,and had the pleasure...of having his eyes soon turned like her's towards the scene wittout,where』 lttat was solemn and soothing,and lovely,appeared in he brilliancy of an unclouded night,and the contrast of the deep shade of the、 voodsi Fanny spoke her feelings. “Here's harmony!" said she. “Here's reposeI IIere's、 vhat lnay leave am painting and music be― hnd,and what poetry only can attempt to descttbe.Here's what may tranquilize every care,and li■血e hean tO raptureI When Hook out on such a night as his,I feel as if there could be neither wickedness nor sorow in the worldi and here certainly would be less of boh if tte sublimity of Nature were more attended to,and people、 vere carried more out of themselves by contemplating such a scene.''(112-3) 前者 の引用文 の 中では
,フ
ァニー とメア リーの 自然 に対 す る感受性 の特徴 が対比 されて い る。 フ ァニー には「 趣味,精
神,感
情 のデ リカシー」 があ り自然や非動物界 (inanimate nature)イ こ 対 して心 が開 かれてい るの に反 して,メ
ア リーの「 関心 はすべて人間 (男女)に ,才
能 は明 る く 快 活 な もの に」 向け られ る と述 べ られ てい る。後者 で は,「 自然 の崇 高 さに もう少 し注意 が払 わ れ,人
々が この ような情景 を眺め るこ とに よって 自己か ら解 き放 たれれば,こ
の世 の邪悪 さや悲 しみ もよ り少な くな るで し ょう」 とい うフ ァニーの感慨 が吐露 されてい る。 またその前半 では 自 然 には「調和」,「 安 らぎ」があ り,そ
れは「 すべての煩 いを鎮 め,心
を高揚 させ うっ とりさせて くれ る」 とい う彼女の洞察 と体験が述べ られている。先 に も述べた ように
,フ
ァニー はマンスフ ィール ドで人間関係 においてはェ ドマン ドとの関係 を除いて幻滅 しか味わ っていない。 そのエ ドマン ドもメア リーにうつつを抜 か して彼女を妹以上 の存在 として意識 していない。 マンスフ ィール ドにおけ る人間関係で期待で きるものは皆無 とい って もよい。バー トラム夫人 を手伝 う奉仕の喜び くらいである。彼女がポーッマス と対比 してマ ンス フ ィール ド・パー クに心惹 かれ るのはむ しろこの ような四季折 々の 自然 に抱 かれたパークの 静誰 な侍 まいではないだ ろうか。They、vere viewing the countryヽ vith the eyes of persons accustomed tO draving,and decided on its capability of being formed into picture,4/1th an the eagerness Of realtaste,Here Cathe ne was quite lost.She knew nOthing of drawing― ―nOthing of taste: 一―and she listened to them、 vith an attention which brought her little proit,for they talked in phrases which conveyed scarcely any
idea to her.The little、 v ch she could understand hO、 vever appeared to cOntradict the very few no‐
tions she had entertained on the matter before.It seemed as if a good view、vere no longer to be taken from the top of an high hi4,and that a clear blue sky was■ o10nger a proOf Of a ane day.She was hea■ 1ly ashamed Of her ignorance. ざ
A, 110)
これは『 ノーサンガー・アベ イ』で
,キ
ャサ リンがテ ィルニー兄妹 に連 れ られてビーチ ャン ク. リッフ (Beechen Cli■)を
訪 れた ときの風景を描 いた ものであ る。焦点は絵画の素材 としての風 景 にあ り,テ
ィル ニーが「 絵画的」 (picturesque)と い う概念 について講釈 を始めるきっかけを つ くる ものであ る。 この ような 自然の受け止め方は 自然 をあ りのままに受け入れその美や崇高さ に感動 す るフ ァニーの感性 とは異質の ものである。 『 自負 と偏見』 に もダーシーが住むペンバ リー(Pembeney)の
有名な情景描写 があ る。 It was a large,handsome,stOne building,standing、 〃e■On rising ground,and backed by a ridge of high w00dy hills,一 and in front,a stream of some naturahmportance was swelled intO greater, but withOut any artificial appearance. Its banks、vere neither formal, not falsely adorned。 Ehzabeth was dettghtedo She had never seen a place fOr which hature had done inore,or where natural beauty had been sO li仕 le counteracted by an awkward taste.They were all ofthem warm in their admiration and at hat mOment she felt,hattO be mistress of Pembeney might be sOme 血ing!停
ヒP,245)
これはダーシーの送 っている生活の豊かさや彼の人柄,特
に外見 とは違 いて らわぬ ―without artificial appearance― 性格 を描 く間接的 な手段 として使 われている。ペンバ リー とい う背景が ダー シーの人格 を代弁 あ るいは象徴 してい るこ とを示す ものである。エ リザベスの受ける感動は フ ァニーのそれ とは異質の ものであ る。 これはエ リザベスがダーシーを評価す るための手段 とな る もので,後
に彼女 が彼 との結婚 を考 えるきっかけ とな った とい う情景であると ここで も環境が 人間 を,人
間が環境 を左右す るこ とが暗示 されてい る。 マンスフ ィール ド・パー クの 自然は,そ ういった意味ではその住人か らは独立 した存在である。 その住人は注意 す ら払 わない。彼 らはむ しろロン ドンの影響 にさらされている。 自然に心が開か れてい るのはほ とん どフ ァニーのみである。 フ ァニーの 自然への感性 は本質的 にロマンテ ィックな ものである。マンスフ ィール ド・パー クで夜景を眺めなが らファニーが洩 らす ことばの中に,「ここに全ての絵画や音楽を背後 に押 しや り
,詩
のみが描 く試みを可能にするものがあるのです」(Here's what may lette all paintings and music behind,and what poetxy can only attempt to describe.113)と いう部分がある。ファニー は詩人の 目を通 して 自然を見ていることになる。 オースティンは『マンスフィール ド・パーク』において,フ
ァニーを とおして利己主義や唯物 主義が蔓延する世俗か ら解放 され,自
然へ回帰する人間の姿を描 こうとしているといってよい。 これはローマン派詩人たちの憧れでもある。オースティンはクーパーな どの詩人に共感を表明す ると共に作品に詩的な雰囲気を盛 り込んでいる。不評を買っている作品に漂 う陰鬱 さは詩的感性 の もた らす陰鬱 さであるといって もよい。それがまた作品に深みを与える働 きをしている。 自然への回帰あるいは帰依を果たすファニーの伴侶は神への帰依 と奉仕を 目指すエ ドマン ドで ある。 この作品の主題をオースティンは “ordination″ であると述べている。(1の Ordinationの 意 味するところはエ ドマン ドとフ ァニーが選んだこのような道を指す とは考 えられないだろうか。 注(1)Alistair M.Duckwor血
,attι ttψ約%物
勃ナ9デ励ι Esttz彪6,(The Johns Hopkins Press,1971),p.79.
(2)TOnny Tanner,ヵ
%ι4%S舵%,(Macmillan Education LTD,1986)p■
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呼 ?筋 脆 力,(The oxford Un
ersity Press,1934)の ページ数を示す。なお
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密%岱力η.(4)Yasmine Gooneratne,ヵ
%θ4%∫″%,(The cambridge University Press,1970),pp.20-1.(5)Duckworth,動
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″ ,p.55.(7)Tanner,∽
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,p。150.1)乃
乏,p.169.tD Claudia L.Johnson,″ %ι