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コミュニカティブな文法課題 : 基礎文法科目での実践とe-Learningとの関連

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Academic year: 2021

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基 礎 文 法 科 目で の 実 践 とe-Learningと の 関 連

松原

知子

1.は じ め に 本 稿 で は 、 文法 学 習 の た め の課 題 に つ い て 、大 学 の基 礎 英 文 法 科 目で デ ジ タ ル教 材 の補 足 と して使 用 した 印刷 教 材 を例 に 、考 察 す る。 2004年 度 か ら現 在 に 至 る まで 、 筆 者 は、e-Learningを 利 用 した 英 文 法 の 選択 科 目を担 当 して い る 。 こ の科 目は 、英 語 の基 礎 的 な文 法 を確 実 に 身 につ け させ る こ と を主 な 目標 と して お り、 初 期 は大 学 のWBTシ ス テ ム を利 用 し て 、 近年 は 企業 が 提 供 す る ク ラ ウ ド型 シ ス テ ム を利 用 して 、 問題 と解 説 を提 供 して きた 。各 品詞 、 時制 、法 、態 な どの文 法 項 目ご とに分 類 され た大 学 入 試 レベ ル の 多量 の 問題 に取 り組 む こ とに よっ て 、各 学 生 が 自分 に不 足 して い る知 識 を補 い 、 よ り文 法 に即 して英 文 の意 味 を解 釈 した り書 い た りで きる よ う に な る こ とが 期 待 で きた 。 しか し なが ら一 方 で 、e-Learningの 欠 点 も見 え て きた 。 そ の 欠 点 を補 うた め 、A4判1枚 両 面 に 印刷 した課 題 を宿 題 と し て提 出 させ る こ とに した 。現 在 で は 、半 期 に9種 類 の課 題 を提 出 させ て い る。 以 下 で は 、 この よ うな課 題 を導 入す る に至 っ た経 緯 か ら話 を進 め る。 2.英 文 法 学 習 の 必要 性 2.1中 学 ・高 校 で の 英 文 法 大 学 生 の 英 語 力 に は 、 入 学 試 験 に よ る ス ク リ ー ニ ン グ を 経 て い る に も か か わ ら ず 、 大 き な 差 が 見 ら れ る 。 文 法 に 関 す る 知 識 や 運 用 能 力 も例 外 で は な い 。 こ れ は 、 中 学 ・高 校 で の 英 語 教 育 の あ り方 の 影 響 が 大 き い と思 わ れ る 。 中 学 校 で 新 し い 文 法 項 目 を 指 導 す る 場 合 に 、 よ く 用 い ら れ る 手 法 と して 、 PPPあ る い はPCPPと 呼 ば れ る も の が あ る 。 始 め に教 師 が い くつ か の 使 用 例 を提 示(Presentation)し 、生 徒 に 文 法 規 則 を 理 解(Comprehension)さ せ 、 そ れ を 型 ど お り に 適 用 す る 練 習(Practice)を し 、 そ の 後 、 話 し た り書 い た り(Production)す る 。 こ れ は 、 学 習 者 に 不 安 感 を 抱 か せ ず に 産 出 活 動 に

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まで進 め られ る方 法 と して 、 日本 の学 校 に適 した指 導 法 だ と考 え られ て い る。 日本 で は英 語 に接 す る機 会が 限 られ て い る た め 、文 法 は こ の よ うに演 繹 的 に、 規 則 の理 解 、規 則 の適 用 と応 用 の練 習 、 とい う順 番 で学 ぶ のが 一 般 的 で あ る。 た だ し、一 度 の指 導 で そ の文 法 規 則 を適 切 に使 え る よ うに な る とは考 え に くい 。運 用力 を つ け る た め に は 、多 くの使 用 例 に 出会 い 、 自 ら も使 うこ とで 慣 れ る 必要 が あ るが 、 日常 的 に英 語 を使 わ な い環 境 で生 活 して い る こ とに加 え て 、 文法 項 目の 中 に は 、規 則 に細 目や例 外 が 多 い もの や、 あ ま り頻 繁 に は 使 わ れ な い もの もあ る 。 ま た 、英 語 学 習 の初 期 に学 ん だ文 法 項 目は、 体 系 的 に整 理 されず 、混 乱 した り忘 れ られ た りす る可 能 性 が あ る。 そ の た め、 単 純 な場 面 で は使 え て も、他 の文 法 要 素 が 加 わ る な ど、複 雑 に な る と使 え な い と い っ た 問題 が 起 こ りやす い 。文 法 の知 識 が 必 要 な時 に確 実 に適 用 で きる よ う に す る た め に は 、 文法 を 意識 させ 、文 法 を体 系 的 に と らえ な おす こ と も効 果 が あ る と思 わ れ る 。 現 在 、 中学 ・高校 の英 語 科 の授 業 に は 「英 文 法 」 とい う科 目が な い。 い っ ぽ うで塾 な どの学 校 外 機 関 や 自習 教 材 で は 、文 法 に焦 点 が あ て られ る こ とが 多 い 。 こ の よ うな状 況 下 で は 、文 法 の知 識 や運 用 力 に大 きな個 人差 が 生 ま れ て も不 思 議 で は な い 。大 学 に は こ の よ うな英 語 教 育 を受 け て きた者 が 入 学 し て くる とい うこ とを承 知 して お きた い 。 2.2大 学 での 文 法 指 導 学 習指 導 要 領 に従 え ば 、主 な文 法 項 目の指 導 は高 校 初 級 レベ ル で終 わ る と 考 え られ る 。 したが っ て大 学 の英 語 の授 業 は 、学 生 が 既 に主 要 な文 法 規 則 を 身 に つ け て い る とい う前 提 で 、 実践 的 な運 用 を 中心 にす る こ と もで きる。 し か し実 際 に は 、文 法 的 に ほ ぼ 問題 の な い英 文 を書 い た り話 した りで きる学 生 が い る一 方 で 、 主語 や動 詞 の無 い文 を書 い た リ、文 構 造 を把 握 で きず に文 を 正 し く解 釈 で きな か った りす る学 生 も少 な くな い 。 この よ う な学 生 た ち に、 よ り確 実 な 文法 の知 識 や運 用 力 を 身 に つ け させ る た め に は、 そ れ ぞ れ の学 生 に不 足 して い る知 識 を 、 そ れ ぞ れ の学 生 に合 っ たペ ー ス で効 率 よ く補 足 で き る シ ス テ ム が 必 要 で あ る。 個 別 に 多 量 の 問題 に取 り組 ませ る こ との で き る e-Learningは 、 こ の よ うな学 生 集 団 の学 習 形 態 と して適 して い る と言 え る。

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3.デ ジ タ ル 教 材 の 実 際 3.1概 要 英 文法 の教 材 は 、 多 くの場 合 、文 法 項 目に よっ て分 け られ て い る。 文 法 を 網 羅 的 か つ体 系 的 に学 ぶ た め に は 、効 率 の 良 い進 め方 で あ る。 筆 者 が 最 初 に担 当 した科 目で は、 市 販 の 「ロイヤル英 文 法 問題 集 」 を大 学 内 のWBTシ ステムに移 植 して利 用 した。 「ロイヤル英 文 法 問題 集」は 文法 書 『ロ イヤ ル英 文 法 』 に準 拠 して お り、 文 法 項 目に従 っ た章 立 て にな っ て い る。 大 学 の シ ス テ ム 変 更 に伴 っ て 、 現 在 は、 チエ ル株 式 会 社 の クラウ ド型 教 材 『英 文 法徹 底 トレーニ ング」 を採 用 して い る 。 こ れ も文 法項 目に よる 章 立 て だ が 、 項 目数 が 少 な く、 全 問 題 数 は 「ロ イヤ ル英 文 法 問 題 集 」 の 約3割(550問) で あ り、 半 期 科 目に 適 して い る。 大 学 の システムが 学 内 専 用 で あ った こ とを 除 い て 、 受 講 方 法 は ほ ぼ 同 じあ る。 学 習 者 は個 々 に オンライ ンで 問 題 を選 び 、 解 答 し、解 答 は 自動 採 点 され る 。採 点結 果 は 、教 員 も画 面 上 で見 た り、 一 覧 を ダウンロー ドした りで きる 。学 生 は採 点 後 の 画 面 で 問 題 文 の 日本 語 訳 や 解 説 が見 られ るが 、 そ れ に加 え て教 員 は 、 よ り基 礎 的 な要 点 や 間違 い やす い点 に つ い て解 説 を書 き、 メールや 大 学 の 掲 示 シ ステムを利 用 して提 供 して い る。 3.2オ ン ラ イ ン受 講 の 促 進 e-Learningは 、 各 学 生 の 好 きな 時 間 に 、 多 量 の 問 題 に 、好 き な だ け 時 間 を か け て 、教 室 外 で も取 り組 め る こ とが 特 長 で あ る。 しか し一 般 に、 学 習 者 の 意欲 を保 つ こ とが 困難 で 、 ドロ ップ ア ウ トが 多 い こ とが 問題 と され る。 期 末 に 成績 評 定 をす る とい う現 実 的 な制 約 が あ る場 合 、学 生 が 確 実 に学 習 を進 め られ る よ うに 、学 習 を促 す 仕 組 みが 必 要 で あ る 。 大 学 のWBTシ ス テ ム は、 教 員 が 教 材 の 編 集 や 設 定 を 自 由 に行 う こ とが で きた た め 、受 講 可 能期 間 を制 限 した 。期 間が 制 限 され て い れ ば 、学 生 は期 間 内 に 受講 す る だ ろ う と考 え たが 、期 限 ま で に受 講 を終 え られ な い学 生 が 、 毎 年 か な りの割 合 に上 っ た 。 そ の た め再 受 講 期 間 を設 け た り、年 度 ご とに期 間 の 制 限 を緩 く した り して い っ た 。 い っ ぽ う現 在 の教 材 は企 業 の管 理 下 に あ る た め 、教 員 が 受 講 期 間 を制 限す る こ とは で きな い 。 いず れ の場 合 も、 オ ン ラ イ ン受講 を促 す た め に は 、受 講 期 間 の制 限以 外 の手 段 を取 り入 れ る必 要 が あ っ た 。

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4.紙 ベ ー ス 補 足 教 材 の 必 要 性 授 業 でe-Learningを 利 用 す る場 合 、 オ ン ラ イ ン で の 個 別学 習 とは 異 な る 学 習 形態 、 と くに教 室 で の講 義 や協 同学 習 を組 み合 わせ る ブ レン ド型 学 習 が 行 わ れ る こ とが あ る 。定 期 的 に教 室 に集 ま る こ とで意 識 を高 め、 学 習 ペ ー ス の 維 持 が 容 易 に な る。 た だ しそ れ はe-Learningの 特 長 を相 殺 す る こ と に も な り うる 。 当該 科 目を 開講 した年 に行 わ れ た学 生 ア ンケ ー ト調 査 で は、 成 績 上 位 群 の 学 生 に は 「毎 週 や る課 題 が 決 ま っ て い る」 「課 題 を好 きな 時 にで き る」 「文 法 を 集 中 的 に学 べ る」 こ とを好 み 、対 面 授 業 の必 要 性 を感 じて い な い傾 向が 見 られ た(田 辺他(2004)197、 田辺 他(2006)167)。 つ ま りe-Learning科 目 は、 一 人 で じっ く り課 題 に取 り組 み た い とい う学 生 の性 向 に合 っ て い る こ とが わ か っ た 。 こ の よ うな学 生 に とっ て 、対 面 授 業 で の一 斉 指 導 や協 同学 習 は、 こ の科 目に対 す る 意欲 を減 退 させ る こ とに もな りか ね な い。 しか しなが ら、 オ ンラ イ ン受 講 の み の授 業 に も問題 が あ る。 文 法 規 則 や文 法 用語 の知 識 が 非 常 に少 な い学 生 は 、 問題 の正 解 や解 説 を読 ん で も理 解 で き ず 、応 用が 利 か な い 。 多量 の 問題 を こ なす のが 困難 な だ け で な く、 そ れ に よ っ て得 られ る知 識 や 能力 が 少 な い と思 わ れ る。 上 記 の ア ン ケ ー トで は 「自習 で は わ か らな い こ とが あ っ た」 とい う回答 が 多 か っ た に もか か わ らず 、 実 際 に学 生 が 教 員 に対 して オ フ ィス ア ワ ー や メ ー ル を利 用 して 質 問す る こ とは ほ とん どな か っ た 。学 生 の疑 問 に十 分 に答 え られ て い な い こ とは 明 らか で あ っ た 。 い っ ぽ う、英 文 法 に つ い て あ る程 度 の知 識 と運 用 力 が あ る学 生 に とっ て、 多量 の 問題 に答 え る こ とは大 きな負 担 で は な いが 、 さ らに実 践 的 な知 識 や能 力 を養 うこ とが で きな い 。 こ れ らの事 態 は 、学 習 効 果 は もち ろ ん、 学 習 意 欲 の低 下 に もつ なが り、受 講 の進 捗 に も影 響 す る と思 わ れ る。 一 人 で 好 き な時 に じっ く り取 り組 め る とい うe-Learningの 利 点 を 活 か し な が ら、教 員 との直 接 の や り取 りに よっ て疑 問 を解 消 した い。 オ ン ラ イ ン で の 受 講 を促 す一 方 で 、 デ ジ タル教 材 に は な い 、 よ り実 践 的 で発 展 的 な課 題 も 学 生 に与 え た い 。 こ れ らの要 求 に応 え る指 導 形 態 を模 索 した結 果 、 紙 ベ ー ス の 宿題 が最 も簡 易 で効 果 的 で あ ろ う とい う結 論 に達 した。 宿 題 用 紙 の配 付 や 提 出 を教 室 で行 え ば 、定 期 的 に教 員 と接 す る機 会 が で きる。 他 の学 生 との接 触 も増 え る の で 、 オ ンラ イ ン受 講 へ の意 識 も高 ま る だ ろ う。 提 出 さ れ た用 紙

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は 、採 点 や評 価 をす る だ け で な く、 コ メ ン トを書 き加 え て返 却 す る こ と もで きる 。特 別 の注 意が 必 要 な学 生 を発 見 し、 個 別 に指 導 す る こ と も可 能 に な る だ ろ う。 5.印 刷 教 材 の 開 発 5.1理 想 の 教 材 学 生 に取 り組 ませ る に あ た り、好 ま しい課 題 の条 件 を挙 げ て み る。 ・文法 用語 に 関す る基 礎 知 識 を確 認 す る ・基 礎 的 な 文法 規 則 を確 認 させ る(明 示 的 な知 識 を含 む) ・文法 規 則 の重 要 性 を認 識 させ る(意 味 の違 い に焦 点 を 当 て る) ・場 面 や前 後 関係 が あ る 、現 実的、コ ミュニカテ ィブである ・単 一 の 文法 規 則 だ け で な く、複合 的な知識 の運用 を要求す る ・選択 式 で は な く、考 えだす こ とを要求す る ・創 造 力 を 活 かせ る ・達 成 感 を 感 じ させ る ・デ ジ タ ル教 材 と関連 が あ る 。文法項 目に分類 で きる ・オ ンラ イ ン受 講 を妨 げ な い 。比較 的短 時間(!時 間以 内)で で きる ・扱 い やす い 。用紙1枚 に収 まる 教 員 が 解 答 を確 認 、評 価 しやす い これ らの 条件 は互 い に矛 盾 す る場 合 が あ り、す べ て を満 たす 問題 を作 る の は不 可 能 で あ る 。 自由 な解 答 を容 認 す る 問題 は教 員 が 評 価 しに くい し、 正 解 が一 つ に決 ま らな い と達 成 感 を 感 じに く くな る可 能性 が あ る。 で きる だ け多 様 な 内容 の 問題 を載 せ る こ とを 目指 す のが 現 実 的 で あ ろ う。 な お 「コ ミュ ニ カ テ ィ ブ」 につ い て は、 「コ ミュ ニ カ テ ィブ な テ ス ト」 の3つ の 要 件(文 脈 の 明示 、タ ス ク の オ ー セ ン テ ィ シ テ ィ ー、テ キ ス トの オー セ ンテ ィシ テ ィー) (根岸 他7)に 、 で きる だ け合 わせ る こ とを 目指 した 。 5.2問 題 作 成 1回 の 課 題 は 、 「1時 間 以 内 で で き る 」、 「用 紙1枚 に 収 ま る 」 と い う 条 件 か ら 、A4判1枚 の プ リ ン トに ま と め る の が 適 切 と思 わ れ た 。 問 題 数 が 少 な い と は い え 、 素 材 を ゼ ロ か ら作 り 出 す の は 負 担 が 大 き い 。 そ こ で 、 既 成 の 教

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材 や 問 題 集 な ど か ら ヒ ン トを 得 る こ と に し た 。 海 外 の 出 版 社 のESL学 習 者 向 け 文 法 テ キ ス トに は 、 コ ミ ュ ニ カ テ ィ ブ な 課 題 が 多 く、 非 常 に 参 考 に な っ た 。 5.3教 材 例 以下 に 問題 例 を示 す 。授 業 で は使 用 しな か っ た もの も含 ま れ る。 な お指 示 文 や 問題 数 は 実 際 の 出版 物 や授 業 で使 用 した 印刷 教 材 よ り も簡 潔 に して あ る。 また 、 多 くの 出題 で解 答 例 を示 したが 、 こ こ で は省 略 した。 5.3.1文 法 用 語 文 法 用 語 の 知 識 は 、 「コ ミュ ニ カ テ ィ ブ」 の対 極 にあ るが 、 デ ジ タ ル教 材 の 日本 語 解 説 を理 解 す る う え で 必 要 で あ る。 また 、 用 語 を意 識 す る こ と は、 文法 規 則 に つ い て の意 識 を 高 め る こ とに もつ なが る。 日本 語 の文 法 用 語 に 関 す る 問題 は 、既 成 の教 材 な どに は見 当 た らな か っ た の で、 文 法 書 の説 明 を利 用 して独 自に作 成 した 。 文法 上 の概 念 を言 葉 で説 明す る こ とは難 しい。 概 念 を理 解 して い る学 生 も、 そ の 定 義 を厳 密 に は表 現 で きな い こ とが 予 想 され る の で、 選 択 式 が 適 切 だ と 思 わ れ た 。 《例1》 例 に な ら って 次 の 各 説 明 に あて は まる 文 法用 語 を選 び な さい 。 [短縮 形 、 原 形 、 現 在 形 、 目的 語 、 補 語 、 使 役 動 詞 、 知 覚 動 詞 、 自動 詞 、 他 動 詞] 1.文 の 構 成 要 素 の 一 つ で,動 詞 の 動 作 ・作 用 の 対 象 を 表 す 2.Iarnに 対 し て1'm、arenotに 対 し てaren't

3.他 の 動 詞 と 共 に 用 い て,「(∼ に)… させ る 」 と い う 意 味 を 持 た せ る 4.過 去 か ら 未 来 に か け て の 状 態 や,習 慣 的 に 繰 り返 す 行 為 を 表 す 動 詞 の 形 5.目 的 語 を 伴 っ て 使 う動 詞 説 明 の 文 は 、 抽 象 的 に な りす ぎな い よ うに言 葉 を選 ん だが 、 上 記5.の よ う に 、 あ る 文法 用 語 の説 明 に他 の文 法 用 語 を使 わ な け れ ば な らな い こ とが あ る な ど、 問 題 と して の 適 切 性 に疑 問 が あ っ た。 で きれ ば2.の よ う に、 具 体 的 な 例 を挙 げ て答 え させ た い 。 明示 的 な説 明 を避 け て例 文 で 出題 す る な らば、 た とえ ば 、現 在 形 の 例 文 を示 して 選 択 肢 の 中か ら 「現在 形 」を選 ば せ た り(例2)、

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例 文 の 中 か ら現 在 形 の動 詞 を含 む文 を選 ばせ た り(例3)す る こ とが で きる。 《 例2》 次 の 文 の 動 詞 の 形 と して 当 て は ま る も の を 選 び な さ い 。 SatomilovesYomiuriGiants.(1)原 形(2)現 在 形(3)過 去 形 《 例3》 次 の 文 章 の 中 か ら 動 詞 の 現 在 形 を 含 む 文 を 選 び な さ い 。 (1)Satomi'sfatherwasagreatfanofHanshinTigers.(2)Heoftentookher toHanshinKoshienStadiumwithhim.(3)Gradual!y,Satomihasbecome fondofbaseball.(4)ShesometimesgoestoTokyoDometowatchagame. (5)Ontheotherhand,herfatherstartedtobecomemoreinterestedin soccer. しか し、例2で(2)、 例3で(4)と い う正 解 を答 え た学 生 が 、現 在 形 を例1の 4.の 説 明 の よ う に 「過 去 か ら未 来 に か け て の状 態 」 や 「習慣 的 に繰 り返 す 行 為 」 を 表す と理 解 して い る とは言 い きれ な い 。用 語 知 識 の 問題 と して は、 説 明 と用語 の結 び つ きを考 え させ る こ とで学 生 の知 識 と意 識 が 高 ま る こ とを期 待 す る ほ うが 現 実 的 だ と思 わ れ る 。 5.3.2文 構 造 《 例4》 下 線 の 語 か ら述 語 動 詞(述 部 の 動 詞)を 選 び な さ い 。 WilburandOrvilleWrightwerebrothersAtonetimetheyrepaired bicycles.Buttheywantedto且y.Firsttheybuiltgliders. (Muschla12) 述 部 の動 詞 を特 定 す る 問題 に正 解 で きな い学 生 は 、文 章 の読 解 に大 きな 困 難 が あ る だ ろ う と推 測 で きる 。文 の根 幹 で あ る動 詞 に 関す る意 識 を高 め る た め に、 是 非 含 め た い 種 類 の 問 題 で あ る。 選 択 肢 の 設 け方(ど の 語 に 下 線 を 引 くか)に よ っ て、 レベ ル の調 整 が で き る。 例4で は 、flyに下 線 を引 け ば 、 述 語 動 詞 とそ の他 の動 詞 との 区 別 も問 え る 。

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《 例5》 哺 乳 類 に つ い て の 説 明 で す 。 主 語 と 述 語 動 詞 を 備 え た 文 と し て 成 り 立 っ て い る も の を 選 び な さ い 。 1.Mammalsarefoundallovertheworld. 2。Liveonlandandinrivers,lakes,andoceans. 3.Marnmalsarewarrn-bloodedandhavehairorfur. 4.Mice,forexample,tinymammals.(Muschla19) これ も文 構 造 の認 識 力 を確 か め る 問 題 で あ る。 「完 全 な文 」 で あ る か否 か を判 別 させ て い る だ け だが 、文 の主 語 と述 語 動 詞 を指 摘 させ た り、 主 語 や動 詞 を補 っ て書 き換 え させ た りす れ ば 、 さ らに詳 細 に学 生 の理 解 度 を確 か め ら れ る し、学 生 自身 も文 の構造 を意 識 す る こ とに な る だ ろ う。 な お こ の 問題 は、 個 々 の 文 に 関 して答 え を 求 め て い るが 、全 体 で 「哺乳 類 」 とい う共 通 の テ ー マ が あ る た め 、若 林 ほ か(65)が 問題 視 す る煩 珀 さが な い点 で、 好 ま しい。 5.3.3動 詞 の 用 法 《 例6》 与 え ら れ た 語 を使 っ て 対 話 を 完 成 しな さ い 。 動 詞 は 単 純 現 在 形 ま た は 現 在 進 行 形 に し な さ い 。 LA:Doesheneedhelp? B:Yes,hedoes.(French/he/understand/not) 2.A:Whatareyoudoing? B:(1)(1/the/soup/taste). A:Howisit? B:(2)(lt/delicious/taste).(Schoenberg270) こ れ は 状 態 動 詞 の 使 い 方 に 関 す る 問 題 で あ る 。 単 語 は 与 え ら れ て い る が 、 単 な る 整 序 問 題 で も 空 所 補 充 問 題 で も な く 、 語 を 補 っ て 解 答 す る 必 要 が あ る 。 1.はdoesを 追 加 して 否 定 文 に す る こ と を 、2.は 、 同 じ 動 詞 を 主 語 と 意 味 に よ っ て 使 い 分 け る こ と を 要 求 し て い る 。 こ の 問 題 に は 、 上 記 の 「煩 預 」 さ が 感 じ ら れ る 。 と く に1.は 、 状 況 が 分 か り に く い 。 話 者Aの 質 問 の 前 に"Ihear yourfatherisgoingtoworkinParis."な ど の 文 言 で 情 報 を 加 え 、helpを aninterpreterに 変 え れ ば 、 も っ と コ ミ ュ ニ カ テ ィ ブ に 、 答 え や す く な る 。

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5.3.4法 助 動 詞 使 い 分 け の 難 し い 助 動 詞 に つ い て は 、 以 下 の よ う な 練 習 問 題 が 考 え ら れ る 。 《 例7》 日 本 語 に 合 う よ う に 適 切 な 語 ・句 を 選 び な さ い 。 [Can't/iSn't/maynOt/mUStnOt] 1.It()betrue.「 そ れ は 本 当 で は な い か も しれ な い 」 2.It()betrue.「 そ れ は 本 当 で は な い に 違 い な い 」 3.It()betrue.「 そ れ が 本 当 な は ず が な い 」 4.It()true,「 そ れ は 本 当 で は な い 」 《 例8》 各 英 文 の 意 味 と し て 最 も 適 切 な も の を 選 び な さ い 。 LItmaynotbetrue,a。 「そ れ は 本 当 で は な い か も しれ な い 」 2.Itmustnotbetrue.b.「 そ れ は 本 当 で は な い に 違 い な い 」 c.「 そ れ が 本 当 な は ず が な い 」 い ず れ も確 か め た い部 分 を直 接 問 う問題 で あ るが 、 日本 語 の表 現 の違 いが 微 妙 で わ か りに くい 。 また場 面 、状 況 が な い た め 、現 実感 が な く、答 え に く い 。例9と 比 較 して み よ う。 《 イ列9》Answerthequestionsbasedonthespeakers'opinionsofthegivensituation, SITUATION:TimistalkingaboutEdandsays,"SomeonetoldmethatEd quithisjob,soldhishouse,andmovedtoanislandinthe Paci且cOcean." OPINIONS:Lucysays,"ltmaynotbetrue." Lindasays,"ltmustnotbetrue." Hamidsays,"ltcan'tbetrue." Robsays,"ltisn'ttrue." 1.Whoisabsolutelycertain? 2.Whoisalmostcertain? 3.Whohasanopenmindandhasn'tdecided?(AzarandHagen183)

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この 問題 に は状 況 の説 明が あ り、発 言 者 が 明 らか に な っ て い る た め、 現 実 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンに近 い感 覚 が 持 て る。 た だ し英 語 の説 明が 長 く複 雑 だ とい う難 点が あ る 。 そ こ で 、絵 を併 用 して み た。 《 例10》 場 面 の 説 明 を 読 み 、 質 問 に 答 え な さ い 。 Lucy,Linda,HarryandRobhearsomeonesayonTV,"lchirohasquithis job,soldhishouse,andmovedtoanislandinOkinawa." Lucysays,"Thatmaynotbetrue." fchi7"olzαsq2LZtlz2sゴoわ,Li ndasays,"Thatmustnotbetrue." sol(1ん 乞51zozesθ,αnd Harrysays,"Thatcan'tbetrue." mOVθdtoα η 乞5乙αηd乞 η Robsays,"Thatisn'ttrue・"Okinαzva ._ Thatmustnot betrue。 latmaynot }true. 絵 で状 況 を描 き、吹 き出 しに発 言 内容 を書 き込 ん だ こ とで、 文 章 に よ る説 明 の分 か りに く さが か な り解 消 され た と思 わ れ る。 発 言 内 のltをThatに 変 え て 、 そ の場 の発 言 を指 して い る 感覚 を持 たせ た。 固有 名 詞 も、 学 生 が 過 去 に 聞 い た こ との あ る もの を用 い る ほ うが 、文 法 項 目に注 意 を集 中 させ る こ とが で きる で あ ろ う。 5.3.5形 容 詞 と副 詞 形 容 詞 と副 詞 に つ い て は 、似 た意 味 や綴 りの単 語 の使 い分 け や、 比 較 表 現 を苦 手 とす る学 生 が 多 い 。語 彙 は文 法 の運 用 力 と深 くか か わ る の で、 語 彙 の 問題 も含 め た い と考 え た 。

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《 例11》 意 味 が 通 る ほ う の 語 を 選 び な さ い 。 1.IlikeJapanesepopmusicbetterthan(classical/classic)music. 2.Iprefersmallcarsbecausetheyaremore(economic/economical). 3.Thetrainwaslate,soitstoppedonly(briefly/quickly)atthestation. 形 容 詞 、 また は動 詞 の分 詞 に 関す る 問題 に よっ て 、現 在 分 詞 と過 去 分 詞 を も とに す る形 容 詞 の使 い分 け を意 識 させ る こ と も重 要 だ ろ う。 メ ー ル や手 紙 、 日記 な どを完 成 させ る 問題 は 、現 実 的 な場 面 設 定 が しやす い。 《例12》 与 え られ た語 を適 切 な形 に して手 紙 を完 成 しな さ い。 ToWhomItMayConcern, Iamwritingthislettertothankyouforthe(1.amaze)servicemysister andIreceivedatyourcaf61astweek.Thatdaywewerequite(2.depress) aboutschool,sowechosetocometoyour(3.excite)caf6.Thewaiterwas a(4.fascinate)man..._.Iamatruly(5.satisfy)customer. Thankyou, PattySmith(ByrneandCharlton87) 複 数 の形 容 詞 を 限定 用法 で使 う場 合 の順 番 に つ い て は 、文 法 書 に は表 で整 理 され て い る こ とが 多 いが 、 意識 した こ とが な い学 生 が 多 い よ うだ。 順 番 を 示 す 表 と共 に 、以 下 の よ うな形 式 の 出題 を した 。 や や不 自然 に な る こ と もあ る が 、順 番 に決 ま りが あ る 、 とい うこ とを意 識 させ る こ とは で きる だ ろ う。 《 例13》 各 語 群 の 順 序 を 入 れ 替 え て 意 味 の あ る 文 を 完 成 し な さ い 。 1.Lastsummer,westayedata(lodge/seaside/new/nice). 2.Thedoghad(cute/four/little/new/puppies). 比 較 に つ い て は 、 さま ざ ま な 出題 形 式 が 可 能 で あ るが 、基 本 的 に は次 の よ うな ものが 典 型 的 で あ る 。

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《 例14》Answerthequestionsinfullsentences. 1,Whichisheavier:akiloortwopounds? 2.Whocanexpecttohavealongerlife:amanorawoman? (Ur41) よ り自由 度 を高 め て 、 以 下 の よ うな 形 式 にす る と、 楽 しめ る課 題 に な る。 疑 問詞 も与 え れ ば 、難 度 は低 くな る 。任 意 で独 自 の 問答 を考 え させ れ ば、 書 くの を 楽 しむ学 生 もい る だ ろ う。 《 イ列15》Makequestionsandanswersofcomparisonusingthegivenwords. Answerthequestionsbasedonfacts. 1.heavy,onekilo,twopounds 2.canexpecttohavealonglife,aman,awoman 3,large,alltheplanetsinthesolarsystem 5.3.6法 自 由 度 が 高 く 楽 し め る 問 題 は 、 仮 定 法 の 課 題 で も可 能 だ 。 《 例16》 次 の 文 の 後 半 を 自 分 の 考 え で 補 い な さ い 。 事 実 に 反 す る 条 件 な の か 、 可 能 性 の あ る 条 件 な の か を 区 別 し て 、 助 動 詞 に 気 を つ け て 書 き な さ い 。 1.1'llbeverydisappointedif 2。JapanesecollegestudentswouldlearnEnglishmuchbetterif 3.IfIhadn'tpassedtheentranceexamforthisuniversity 下 の 問題 は課 題 を 個 人 で行 う場 合 、必 ず し も絵 が 必 要 で は な いが 、 創 造 力 を 使 う課 題 で は 、絵 は大 きな助 け に な る と思 わ れ る。 《例17》 あ な た は海 外 旅 行 中 に 飛 行 機 事 故 に あ い 、 救 命 ボ ー トで 無 人 島 に漂 着 しま した。 島 は 暖 か く、 水 や 食 べ 物 は あ る よ う で す。 海 岸 に は以 下 の物 が 流 れ 着 い て い ます。 こ れ らの 物 の 使 い道 を考 え て くだ さい 。(※ 「しよ う と思 え ば …」 と い う意 味 を表 す条 件 節 が省 略 さ れ て い る仮 定 法 を使 い ま す。)

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aplasticbagatrumpet awoodenspoonanemptytincan (Ur130) 解 答 例:Wecouldusetheemptytincanasacup,

 ∼

例16と17で は 、 指 示 文 に 文 法 上 の注 意 を入 れ た。 自由 度 の 高 い 問題 で は、 各 問 題 が どの よ うな 知 識 や 能 力 を 試 して い る か 、 わ か りに くい こ とが あ る。 学 生 が 、 意識 す べ き とこ ろ に注 意 を払 っ て 問題 に取 り組 む よ うにす る た め の 配慮 で あ る 。対 面 授 業 で は 口頭 の注 意 で済 むが 、 印刷 物 で は 明記 す る ほ うが 良 い と考 え た 。 5.3.7音 声 問 題 紙 ベ ー ス で あ っ て も リ ス ニ ン グ の 問 題 を 課 す こ と は 可 能 で あ る 。 例18は 文 字 に よ る 出 題 だ が 、TOEICな ど の よ う に 、 音 声 の み で 出 題 す る こ と も で き る し 、 リ ス ニ ン グ が 苦 手 な 学 生 の た め に 、 音 声 と文 字 を 組 み 合 わ せ る こ と も で き る 。 仮 定 法 に 焦 点 を あ て る な ら 、 仮 定 法 の 部 分 を 聞 き と らせ る の が 適 切 で あ ろ う 。 《 例18》 最 も 適 切 な 返 答 を 選 び な さ い 。 1.Whydidn'tyoucometotheparty? a.Iwouldhaveeatenthefood,butIwasfull. b.IcouldhavecomeifIhadn'tfallenasleep. c,IwouldhelpyouifIdidn'thaveacold.(Robinsorl,etal,44) 文 法 の 問 題 に リ ス ニ ン グ の 能 力 が 関 わ る の は 不 適 切 と考 え る 人 も い る か も し れ な い 。 し か し テ ス トで は な く 、 学 習 の 一 環 と し て は 問 題 な い だ ろ う。 実 際 の と こ ろ 、 聴 き取 りが で き な け れ ば 、 そ の 文 法 知 識 を 音 声 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン で 利 用 で き な い の で あ る 。 例18の 場 合 、wouldhave、couldhaveと い う句 が 実 際 に ど の よ う に 発 音 さ れ る の か を 確 か め る こ と は 重 要 で あ る 。 さ ら に 、 聴 く こ と に よ っ て 文 が 記 憶 に 残 り や す い と い う 点 も無 視 で き な い 。 音 声

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フ ァイ ル は大 学 の サ イ トを利 用 して提 供 す る こ とが で きる。 既 成 の デ ジ タ ル 教 材 の 文法 問題 に も、ぜ ひ音 声 を つ け て ほ しい。 5.3.8関 係 詞 文法 用語 に つ い て は学 生 に説 明 を要 求 す る の は難 しい と考 え たが 、 具 体 的 な例 文 の 意味 の違 い に つ い て は 、和 訳 させ た り同義 文 を選 ばせ た りす る よ り、 説 明 させ る ほ うが 的確 に 問題 点 を 問 え る場 合 もあ る。 《 例19》2文 の 意 味 す る 状 況 の 違 い を 説 明 し な さ い 。 a.MyunclewholivesinOsakawillvisitustomorrow. b.Myuncle,wholivesinOsaka,willvisitustomorrow. 関係 代 名詞 の制 限用 法 と非 制 限用 法 の意 味 の違 い を意 識 させ る 問題 で あ る。 最 近 で は コ ンマ を付 けず に書 くこ と も多 いが 、 こ の例 の よ うに コ ン マ の有 無 で 含 意が 変 わ る こ と もあ る 。違 い を理 解 して い れ ば簡 潔 に状 況 の違 い を説 明 で きる は ず だ 。答 え られ な い者 は 、 コ ンマー つ で意 味 に違 いが 生 ま れ る とい う こ とを 、 こ の 出題 に よっ て 強 く認 識 す る こ とだ ろ う。 6.フ ィ ー ドバ ッ ク と学 生 へ の 対 応 6.1学 生 数 が多 い場 合 デ ジ タ ル教 材 は 自動 採 点 され るが 、 印刷 教 材 の採 点 や評 価 は教 師が 行 うこ と にな る。 デ ジ タ ル教 材 の 欠 点 を補 うた め 、 記 述 式 の 出 題 が 多 くな る の で 、 学 生 数が 多 い と教 員 の負 担 は重 くな る 。 た だ 、文 法 に 関す る意 識 を高 め る こ とを 第一 に考 え る な らば 、厳 密 な採 点 は必 要 な い。 学 習 意 欲 の維 持 の た め に は 、 全 体 を3∼4段 階 で 評 価 した り、ExcellentやGoodな どの 単 語 で 表 現 した り して 、達 成 感 を持 たせ る よ うに配 慮 す る ほ うが 良 い だ ろ う。 い っ ぼ う 解 答 の正 誤 は は っ き り させ 、適 切 な答 と、 どの よ うな点 に注 意 す べ きか を し っ か り伝 え、 教 訓 帰 納(「 問題 に 取 り組 ん だ こ とで わ か っ た こ と を教 訓 と し て 引 き出 す 学修 方 略 」)(小 湊2)が 効 果 を上 げ る よ う に した い。 筆 者 が 担 当 した科 目は 、例 年40名 か ら80名 の履 修 者 が い た た め 、個 々 の学 生 へ 向 け て詳

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細 な コメ ン トを書 くこ とが 難 しか っ た 。 そ こ で 、全 問題 の正 解 と解 説 を大 学 の サ イ トに掲 示 した り、 印刷 して用 紙 返 却 時 に 渡す こ とに した。 こ うす れ ば、 多 くの 学 生 に共 通 す る問 題 点 に つ い て は、 個 々 に指 摘 す る必 要 が 無 くな る。 この解 説 用紙 に載 せ な か っ た 問題 点 に つ い て は 、該 当す る学 生 の用 紙 に記 入 した り、教 室 で声 を か け た りす る こ とで 、対 応 した。 6.2レ ベ ル 格 差 近年 、与 え られ た デ ジ タ ル教 材 の 問題 に答 え る こ とが 難 しい とい う レベ ル の学 生 が ク ラ ス の3%程 度 の 人 数 お り、 そ の よ うな学 生 に対 して は、 な か な か 適切 な対 応 が で きて い な い 。他 の授 業 科 目 も含 め て 、基 礎 的 な文 法 運 用 力 に 問題 が あ る と思 わ れ た学 生 に は 、 中学 校1年 生 向 け の 問題 集 な どを 見 て基 礎 を確 認 す る よ うに伝 え るが 、 そ れ を 実行 す る学 生 は ま れ な よ うだ。 他 大 学 の英 語 教 員 か らは 、対 面 の授 業 で 中学1年 レベ ル か らや り直 す こ とで、1年 後 に は市 販 の大 学 向 け テ キ ス トを使 用 した授 業 が 可 能 に な る とい う話 も聞 い た 。紙 ベ ー ス の提 出課 題 に は 、 デ ジ タ ル教 材 よ り も基 礎 的 な 問題 も含 め て い た つ も りだが 、 入 門期 ま で範 囲 を広 げ る必 要 が あ る よ うだ。 オ ンラ イ ン受 講 を始 め る前 の準 備 と して の教 材 提 供 や対 面 指 導 も考 え るべ きか も しれ な い。 6.3定 着 しな い文 法 項 目へ の 対 応 好 ま しい課 題 の 条件 と して 「単 一 の文 法 規 則 だ け で な く、複 合 的 な知 識 の 運 用 を要 求す る」 こ とを挙 げ た 。 こ れ は 、特 定 の文 法 項 目に焦 点 を 当 て た 問 題 だ とわ か れ ば注 意 して答 え られ るが 、 そ れ以 外 の項 目の 問題 に答 え る場 合 は注 意 を怠 る こ とが あ る か らで あ る 。教 材 分 類 上 の文 法 項 目 とは異 な る文 法 上 の 問題 点が 発 見 され れ ば 、 や は りそ れ な りの対 処 をす るべ きで あ る。 た とえ ば例17で は 、 問題 文 に含 ま れ て い る名 詞 はす べ て不 定 冠 詞 を伴 っ て い る が 、解 答 で は定 冠 詞 を使 うべ きで あ る 。冠 詞 は英 語 入 門時 か ら使 っ て お り、 デ ジ タ ル教 材 で も 「名 詞 」 の部 分 で必 ず 問題 に され るが 、上 級 者 で もな か な か 自信 を持 っ て使 え な い項 目で もあ る 。厳 密 な採 点 を しな い課 題 だ か ら こそ 、冠 詞 に も注 意す る よ うに指 示 が しやす い 。 Soの 使 い方 に つ い て は 、「前 の 発 言 に同 意 して 「本 当 にそ の とお りで す ね 」 と言 う と き はSo+主 語+動 詞(助 動 詞)で 、 「∼ も また … だ 」 と言 う と きは So+動 詞(助 動 詞)+主 語 で 表 す 」 な ど の説 明 や 例 を載 せ た うえ で 、 以 下

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の よ うな 問題 に答 え させ た 。 《 例20》 レ ス トラ ン で の 対 話 で す 。 各 空 所 に 適 切 な 一 語 を 入 れ な さ い 。 Anne:1'dlovesomedessert. Betty:()()1.(私 も)Thechocolatecakelooksgood. Anne:So()()!(本 当 に)OK,1'lltakeit. (FuchsandBonner120を 改 編) この 問 題 で は、 直 前 の 相 手 の 発 言 の 主 語 と述 語 動 詞 ま た は 助 動 詞 を特 定 して 利 用 す る こ と に な る が 、 そ れ らの 単 語 以 外 を 解 答 す る 学 生 が い る。 そ の よ う な学 生 は、 文 構 造 を確 認 す る 問 題 を や り直 す べ き だが 、e-Learning 教 材 に は 、 こ こ で確 認 させ た い文 構 造 や文 構 成 要 素 に 関す る 問題 が な い。 提 出 課 題 は 、 オ ン ラ イ ン受 講 を促 す た め に配 付 や 提 出 の 日程 が 決 め られ て お り、 前 の 課 題 を繰 り返 す 学 生 に は 個 別 に対 応 しな け れ ば な らず 、 履 修 者 が 多 い 場 合 は 非 常 に 煩 雑 に な っ て し ま う。 学 習 内容 の 復 習 や 追 加 は、 む しろ e-Learningが 得 意 とす る作 業 で あ る。 デ ジ タ ル教 材 の 内容 の充 実 が 必 要 だ。 7.よ り効 果 的 な 授 業 の た め に 上 記6,1か ら6.3で、e-Learningと 紙 ベ ー ス の提 出課 題 の 長 所 、 短 所 が あ ら た め て 明 らか に な っ た 。個 々 の学 生 が 必 要 とす る知 識 と技 能 を得 る た め に そ れ ぞ れ 異 な る項 目 を学 習 す る場 合 はe-Learningが 便 利 だ が 、 現 在 の デ ジ タ ル教 材 は 内容 や 出題 形 式が 限 られ て い る。 そ れ を補 うた め に は 印刷 さ れ た提 出 課題 が 一 定 の役 割 を 果 たす こ とが で きるが 、学 生 数 が 多 い場 合 や学 生 の レ ベ ル 差 が大 きい場 合 に は対 応 し きれ な くな る。 この 問題 の 解決 に は2つ の方 向性 が あ る。 一 つ は デ ジ タ ル教 材 の充 実 、 も う一 つ は提 出 課題 の 内容 を改 善 して教 員 の作 業 を効 率 化 す る こ とで あ る。 文 法書 や 問題 集 で は 個 人 の既 知 情 報 と未 知 情 報 が 同様 に扱 わ れ て い る た め、 未 知 の 事 柄 を見 落 とす 可 能 性 が あ る。 しか しe-Learningに よ っ て 、 通 過 し た項 目 を 目で確 認 で きれ ば 、見 落 と し も少 な くな る。 こ の機 能 が 効 果 を上 げ る た め に は 、 知 っ て お くべ き情 報 が デ ジ タ ル教 材 にす べ て組 み込 ま れ て い る

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こ とが 必 要 だ。 現 在 のe-Learning用 の教 材 は、 「大 学 入 試 対 策 」 「検 定 試 験 対 策 」 な どが 多 い 。 しか し、 入 門 か ら上 級 まで を網 羅 す る教 材 か ら、IRT方 式 で個 人 の知 識 や 能力 に合 っ た 出題 が な され れ ば 、学 生 の 能力 差 が 大 き くて も対 応 で きる 。 こ の よ うな シ ス テ ム に よっ て学 生 の格 差 を埋 め た り、 よ り厳 密 に レベ ルが 判 定 で きれ ば 、対 面 も含 め 、 よ り効 率 の 良 い指 導 が で きる だ ろ う。 今 後 の技 術 的進 歩 に よ って 出題 形 式 な どが 多 様 に な れ ば 、e-Learning で扱 え る範 囲が 広 が り、現 在 は紙 ベ ー ス で しか提 供 で きな い コ ミュ ニ カ テ ィ ブ な課 題 を扱 うこ と もで きる よ うに な る か も しれ な い。 印刷 した提 出課 題 を 用 い る場 合 は 、教 員 の負 担 を減 らす た め に 、学 生 に不 足 して い る知 識 や 技 能 に 集 中 して 課 題 を 設 け る 必 要 が あ る 。e-Learningで 扱 う文法 項 目を細 分 化 した り、過 去 の学 生 の成 績 や正 答 率 を分 析 す れ ば、 少 な い 問題 数 で 、 よ りコ ミュ ニ カ テ ィブ で 的確 な 出題 が で きる はず だ。 学 生 の 質 は年 度 に よっ て 多少 は異 な るが 、積 み重 ね に よっ て あ る程 度 の 的確 さ は確 保 で きる だ ろ う。 実 際 、 こ れ ま で の数 年 間 に 「学 生 が 間違 い やす い 問題 」 が 特 定 され て きて お り、 問題 数 と評 価 の負 担 は減 っ て きて い る とい う実 感 が あ る 。 さ らに今 後 は 、 オ ンラ イ ン受 講 の 開始 前 に 、 オ ンラ イ ンの教 材 よ り も下 の レベ ル の知 識 や運 用 力 を テ ス トして 、 問題 が あ る場 合 は 、早 い時 期 に、 対 面 を 含 む指 導 をす る ほ うが 良 い だ ろ う。少 数 の学 生 の た め の負 担 と して は決 して軽 くな いが 、早 め に対 処 す れ ば 、後 の煩 雑 さを 防 げ る。 こ れ は他 の対 面 授 業 科 目に も言 え る こ とだ ろ う。 筆 者 が 担 当 して きた科 目は基 礎 的 な文 法 を 身 に つ け る こ とを主 な 目標 と し て い るが 、 実 際 に は 、 か な り実力 の あ る学 生 も履 修 して い る と思 わ れ る。 履 修 者 の レベ ル に よる ク ラ ス分 けが で きれ ば 、課 題 レベ ル の 問題 は比 較 的簡 単 に 解 消 され る可 能 性 が あ る。 ま た 、e-Learningの 位 置 づ け も考 え直 す 余 地 が あ る。 これ ま で は 、 印 刷 教 材 は あ くまで もe-Learningを 促 した り補 足 し た りす る役 割 を 担 っ て い た 。 しか し、e-Learning教 材 の レベ ル に至 っ て い な い 学 生 を対 象 とす る場 合 は、 対 面 や 印 刷 教 材 を 主 と し、e-Learningは そ の補 助 や復 習 と考 え るべ きか も しれ な い 。紙 ベ ー ス を含 む教 材 や対 面 指 導 に よ っ て、 よ り コ ミュ ニ カ テ ィ ブ な 課 題 に取 り組 み 、 そ の 後 にe-Learningで 復 習 す る 、 とい う方 式 を とれ ば 、 オ ンラ イ ン受 講 の進 捗 は大 きな 問題 に は な らな い 。現 在 の学 生 の 能力 や性 質 に合 わせ て 、 こ れ ま で の授 業 方 針 を抜 本 か ら変 え る 必要 が あ る の か も しれ な い 。

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引用 文 献 Azar,BettySchrampfer,andStacyA.Hagen.Understαndingα ・泥dUsing EnglishG7・ α77zmα7nC4thed.).PearsonEducation,2009. Byrne,Garrett,andDavidCharlton.AotiveEnglishGrαwzmα7" 3.CompassPublishing,2007. Fuchs,Marjorie,andMargaretBonner,FooπsonG7・ α77zmαr4」An integ7"αtedSkillsAm)γoαoん(37・de(1.),PearsonEducation,2006. 小 湊 彩 子 「「教 訓 帰 納 」 を 活 用 し た リ メ デ ィ ア ル 英 語 教 育 間 違 い の 見 直 し を 促 す 実 践 の 効 果 」 「リ メ デ ィ ア ル 教 育 研 究 」(早 期 公 開)https://doi. org/10.189.50/jade.2017.10.31.Ol、2018.5.5閲 覧

Muschla,GaryRobert.P7・ αct'iceMαkes-Pe?'feot:E「 塑lo7・ 加gG?・ α・m'mα7'. McGrawHill,2010.

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綿 貫 陽(監 修)、 池 上 博 「ロ イ ヤ ル 英 文 法 問 題 集 改 訂 新 版 」(旺 文 社 2000)

参照

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