脊柱後彎変形患者における脊柱伸展可動性と
バランス,
歩行能力との関係
Relationship of Spinal Mobility in Extension with Balance and Walking Ability
in Patients with Kyphosis
森藤 武
1,2)嶋田 智明
2)阪本 良太
3)小倉亜弥子
4)上野 隆司
1)金澤 淳則
4)TAKESHI MORIFUJI, RPT, MS1,2), TOMOAKI SHIMADA, RPT, PhD2), RYOUTA SAKAMOTO, RPT, MS3),
AYAKO OGURA, RPT4), TAKASHI UENO, RPT, MS1), ATSUNORI KANAZAWA, MD4)
1) Department of Physical Therapy, Kansai Medical College: 3–27, Suehiro-cho, Kita-ku, Osaka 530-0053, Japan.
TEL +81 6-6366-1030 FAX +81 6-6366-1008
2) Department of Rehabilitation Sciences, Kobe University Graduate School of Health Sciences 3) Department of Physical Therapy, Faculty of Rehabilitation, Kobe International University 4) Midori Kanazawa Orthopedics Surgery Clinic
Rigakuryoho Kagaku 25(5): 735–739, 2010. Submitted Apr. 9, 2010. Accepted Jun. 1, 2010.
ABSTRACT: [Purpose] The purpose of this study was to investigate the factors related to balance and walking ability in patients with kyphosis. [Subjects] The subjects were 20 patients with kyphosis (6 men and 14 women, average age 77.8 4.7 years). [Methods] We measured passive extension mobility of the spinal column, active extension mobility of the spinal column, the angle of anterior inclination of the trunk, age, one legged standing (OLS), timed up-and-go test (TUG), maximum walking speed (MWS), and the physiological cost index (PCI). [Results] There was a significant correlation between the passive extension mobility of the spinal column and OLS, and MWS (p<0.01). There was no significant correlation between passive extension mobility of the spinal column and PCI, between active extension mobility of the spinal column and age, the angle of anterior inclination of trunk, OLS, TUG, MWS, and PCI. [Conclusion] These results suggest that passive extension mobility of the spinal column is related to the balance and walking ability of patients with kyphosis.
Key words: kyphosis, spinal mobility, balance
要旨:〔目的〕本研究は脊柱後彎患者(円背患者)のバランス,歩行能力と関係する因子を明らかにすることを目 的とした。〔対象〕対象は円背患者20 名(男性6 名,女性14 名,平均年齢77.8 ±4.7 歳)とした。〔方法〕脊柱の他動 伸展可動性(伏臥位での脊柱伸展他動運動における胸骨柄上縁から床面までの垂直距離を指極で除した値),自動 伸展可動性(伏臥上体そらしでの胸骨柄上縁から床面までの垂直距離を指極で除した値),体幹前傾角,年齢と開 眼片脚立位(OLS),Timed Up and Go test(TUG),最大歩行速度(MWS),エネルギー消費の指標である生理的コ スト指数(PCI)を測定した。〔結果〕脊柱の他動伸展可動性と OLS,MWS との間には有意な正の相関,TUG との 間には負の相関が認められた。脊柱の他動伸展可動性とPCI との間,脊柱の自動伸展可動性,体幹前傾角,年齢と OLS,TUG,MWS,PCI との間には相関が認められなかった。〔結語〕円背患者において,脊柱の他動伸展可動性は バランス,歩行能力と関連していることが示唆された。 キーワード:脊柱後彎変形,脊柱可動性,バランス 1) 関西医科専門学校 理学療法学科:大阪市北区末広町3-27(〒530-0053)TEL 06-6366-1030 FAX 06-6366-1008 2) 神戸大学大学院 保健学研究科 3) 神戸国際大学 リハビリテーション学部理学療法学科 4) 緑かなざわ整形外科 受付日 2010年4月9日 受理日 2010年6月1日
I. はじめに 高齢者において脊柱が屈曲している人を見かけるこ とが多く,この変形は円背と称される。また,円背は 発生頻度の高い加齢による骨関節変形とされている1,2)。 近年,円背はQuality of life(以下QOL)の低下に関与し, 特に,姿勢・体形に対する不満や転倒に対する不安な ど心理的要素に影響を及ぼすことが報告されている3-5)。 高齢者が転倒を引き起こす主要因にバランス,歩行 能力の低下が報告されている6)。また,そのバランス, 歩行能力の低下を引き起こす要因に,加齢による姿勢 変化があると多くの研究者によって報告されている。 例えば,加齢による姿勢変化が動的立位のバランス能 力を低下させること7),骨粗鬆症を有する円背患者は 重心動揺が大きく,歩行が不安定であること8),円背患 者における体幹前傾の増加がバランス,歩行能力を低 下させること9)などである。以上のように,円背によ る姿勢変化はバランス,歩行能力を低下させることが 明らかになってきている。しかし,円背患者において, 見かけ上の問題である姿勢変化以外,つまり,脊柱の 可動性,筋力などのImpairment レベルの因子とバラン ス,歩行能力とに関する報告は少ない。 骨粗鬆症は円背を引き起こす要因となるが,閉経後 の骨粗鬆症患者において,背筋力,腰椎の可動性の低 下と,QOL 低下の関連性が報告されている10)。また, 閉経後の骨粗鬆症患者において,年齢,圧迫骨折数,腰 椎前彎角,脊柱の可動性はQOL と相関し,その中で脊 柱の可動性が最も高くQOLと相関すると報告されてい る11)。よって,脊柱の可動性は円背患者のバランス,歩 行能力に影響を与える因子になりうるのではないかと 考えた。そのため,本研究の目的は,円背患者におけ る脊柱の可動性とバランス,歩行能力の関係を明らか にすることとした。 円背患者はその姿勢変化より,常日頃,脊柱屈曲位を とっており,脊柱伸展位をとる機会は少ない。円背患者 の脊柱の可動性は,屈曲制限が出現せず,伸展制限のみ 出現すると報告されており4),本研究において,脊柱の 可動性は伸展のみを評価することとした。さらに,バラ ンス,歩行能力に影響を与える因子であるとされている 体幹前傾角9),年齢12,13)を評価項目に加えた。よって, 本研究では,円背患者において,脊柱の他動,自動伸展 可動性,年齢,体幹前傾角と,開眼片脚立位時間(One Leg Standing:OLS)14),Timed Up and Go test(TUG)15),
最大歩行速度(Maximum Walking Speed:MWS)16),生
理的コスト指数(Physiological Cost Index:PCI)17)の関
係について検討した。 II. 対象と方法 1. 対象 対象は整形外科クリニックに通院する円背患者20名 (男性6 名,女性 14 名,平均年齢 77.8 ± 4.7 歳)とした。 整形外科医師の判断により,胸椎後弯の増強,腰椎前 彎の減少の一方もしくは両方が出現している患者を円 背とした。除外基準は過去6ヶ月以内に脊椎圧迫骨折の 診断があるもの,立位,歩行困難なもの,動作を制限 する疼痛があるもの,腹臥位をとることができないも のとした。なお,本研究は,被検者に対し書面にて脊 柱機能とバランス,歩行に関する研究を行うことを説 明し,参加の同意を得て行った。 2. 方法 脊柱伸展の運動性の評価方法は,普段の理学療法場 面で簡易に使用することができ,定量的な評価が可能 な伏臥上体反らしを応用して行うこととした。純粋な 脊柱伸展の可動性を表す指標としてpassive での伏臥上 体反らし(以下passive 反らし)を計測した。さらに,背 筋力の要素が加わるactive での伏臥上体反らし18)(以下 active 反らし)も合わせて計測した。passive 反らしは, 被検者に伏臥位をとらせ,骨盤を固定し,自己の上肢 で他動的に脊柱伸展運動を実施させた。active 反らしは 被検者の大腿部を固定し,脊柱自動伸展運動を実施さ せた。それぞれ,最大伸展時の胸骨柄上縁から床面ま での垂直距離をアナログ上体反らし計にて計測し,そ れを指極で除した値を求め,passive 反らし値,active 反 らし値とした。円背による被検者の身長低下の影響を 除去するため,従来の身長に正比例するとされている 指極を正規化に採用した。指極とは両上肢を90°側方 挙上させたときの両手の中指先端間の距離である。 体幹前傾角は,恒川らの方法にしたがって測定した18)。 被検者にはいつも通りの立位を保持するように指示し, 側面像を,2 m 50 cm の距離,1 m の高さに設定したデジ タルカメラにて撮影した。被検者の体表の隆椎棘突起 (C7)と腸骨線上(L4)にマーカーを設置し,二つのマー カーを結ぶ線とL4 マーカーを通る床からの垂線のなす 角度を体幹傾斜角として採用した。 バランス能力は静的姿勢保持力,外乱負荷応答,随 意運動中のバランス保持に分類されるが19),この中で, 静的姿勢保持能力,随意運動中のバランス保持能力の 評価は汎用性が高く,簡易に実施することができるた
め,本研究に採用した。静的姿勢保持力,つまり静的 バランスを評価する指標として開眼でのOLSを測定し, 随意運動中のバランス保持,つまり動的バランスを評 価する指標としてTUG を測定した。 OLS は被検者の脚が地面から離れてからバランスを 崩し,挙げた脚が地面に接地するか,支持脚が移動し た時点までの時間をストップウォッチにて測定した。 左右それぞれ3 回測定し,左右それぞれの最も良い値 の平均値を採用した。測定時間は2 分間を上限とした。 TUG は肘付き椅子を接地し,3 m 前方にポールを立 て,被検者が椅子から立ち,歩行し,ポールを回って 椅子に座るまでの時間をストップウォッチにて測定し た。この際,被検者には快適速度(普通に安全に歩け る速度)で歩行してもらった。 歩 行 能 力 に つ い て は,速 度 を 評 価 す る 指 標 と し て MWS,持久性を評価する指標として PCI を測定した。 MWS は5 m の歩行時間を測定した。障害物のない屋内 の床面に直線距離5 m を設定し,その前後1 m に予備路 を加え,それぞれに目印としてビニールテープを貼っ た。被検者には7 m を最大努力で歩行するように指示 し,前後1 m を除いた時間をストップウォッチにて測 定した。この際,転倒事故を予防するため,検者は被 検者のやや後を歩行した。3回測定し,最速値を採用した。 PCIは障害物のない屋内の床面に8 m間隔にポールを 置いて測定した。被検者は至適に感じるスピードでこ の周りを3 分間歩行した。この際,転倒事故を予防する ため,検者は被検者のやや後を歩行した。検者は被検 者の開始前後の脈拍数及び,歩行距離を測定した。開 始後脈拍数から開始前脈拍数を引いた値を歩行速度で 除し,この値をPCI 値として採用した。PCI は本来,心 拍数より算出するが,今回は脈拍数を採用し測定した。 統計処理は,年齢,passive 反らし値,active 反らし値, 体幹前傾角と,OLS,TUG,MWS,PCI の関係を,Pearson の相関係数を使用し検討した。有意水準1%未満を有意 差ありとした。 III. 結 果 年齢,指極,passive 反らし,active 反らしのそれぞれ の実測値,指極で除した値であるpassive反らし値,active 反らし値,体幹前傾角,OLS,TUG,MWS,PCI の測定 結果を表1 に示した。 年齢,passive 反らし値,active 反らし値,体幹傾斜角 とOLS,TUG,MWS,PCI との間の相関係数を表2 に示 した。passive反らし値とOLS(r=0.66 p<0.01),MWS(r=0.67 p<0.01)との間にはそれぞれ有意な正の相関,TUG(r= –0.68 p<0.01)との間には有意な負の相関が認められた。 passive 反らし値と PCI との間,active 反らし値,体幹前
傾角,年齢とOLS,TUG,MWS,PCI との間にはそれぞ れ相関関係は認められなかった。 IV. 考 察 円背患者において,脊柱の他動伸展可動性を表す指 標であるpassive 反らし値が大きいほど,静的バランス を表す指標であるOLS の時間は長くなり,動的バラン スを 表す 指 標で あるTUG の時間は短くなり,歩行ス ピードを表す指標であるMWSは速くなることが示され た。つまり,脊柱の他動伸展可動性が大きいほど,静 的・動的バランス能力は高くなり,歩行速度が速くな ることが明らかになった。 始めに,円背患者において,passive 反らし値とOLS, TUG,MWS との間に有意な相関が認められた理由を考 察する。脊柱屈曲,伸展の可動性は下位胸椎から腰椎 の可動性に大きく依存している20)。また,閉経後の骨 粗鬆患者において,腰椎前彎角と脊柱の可動性には相 表1 各項目の測定結果 年齢(歳) 77.8 ± 4.5 指極(cm) 157.3 ± 7.6 passive 反らし実測値(cm) 20.1 ± 4.1 passive 反らし値 0.13 ± 0.02 active 反らし実測値(cm) 10 ± 6.6 active 反らし値 0.06 ± 0.04 体幹傾斜角(°) 8.6 ± 8.3 OLS(sec) 29.4 ± 31.2 TUG(sec) 11.0 ± 1.8 MWS(m/min) 81.6 ± 13.9 PCI(beats/min) 0.48 ± 0.54 n=20,mean ± SD 表2 各項目間の相関分析
OLS TUG MWS PCI 年齢 –0.45 –0.01 –0.25 0.36 passive 反らし値 0.66** –0.68** 0.67** –0.33 active 反らし値 0.16 –0.06 0.23 –0.36 体幹傾斜角 –0.22 0.24 –0.25 0.12 値はPearson 相関係数を示す. **p<0.01
関関係があると報告されており21),本研究において, passive 反らし値の高い円背患者は腰椎前彎が保たれて いたか,減少が小さかったと推測する。仲田は,高齢 者の姿勢を,体幹を伸展させ後方へ反り返る伸展型,胸 椎の後彎,腰椎の前彎が増強したS 字型,背部が全体に 円背となり頭部が前方に突出した屈曲型,手を膝の上 において立位を保持する手膝上型の4 型に分類してい る。それによると,円背は伸展型,屈曲型,手膝上型と 進行するが,腰椎前彎が増強するS 字型はこの進行パ ターンに属さないとし22),同様に,佐藤らは,円背は, 凹背を除いて,その進行とともに腰椎前彎が減少する と報告している23)。つまり,円背の進行ともに腰椎前 彎は減少するが,S 字型や,凹背などに分類される腰椎 前彎の増強する型はこの進行パターンに属さないとさ れている。円背患者における腰椎前彎とバランス,歩 行に関しては,仲田はS 字型はその他の分類と比較し, 歩行やバランス能力が高いと報告し22),森らは,骨粗 鬆症女性患者の歩行能力において,胸椎後彎に加え腰 椎前彎の低下が,歩行能力を低下させると報告し24), Maejima らは,屈曲型,手膝上型は動的バランス能力が 低下するとしている7)。以上より,円背患者において, 腰椎前彎がバランス・歩行能力を保つ重要な要因であ ることが分かる。円背患者において,脊柱伸展可動性 の低下に伴い腰椎前彎が減少することで,バランス,歩 行能力は低下し,passive 反らし値と OLS,TUG,MWS との間に有意な相関が認められたと推察する。 次に,円背患者におけるバランス,歩行能力低下の メカニズムについて推測する。Maejima ら7)や斉藤ら25) は円背が進行するにつれて,Center of Pressure(以下COP) の後方への移動が小さくなり,後方へのバランスが低 下することを報告している。姿勢保持におけるバラン スの良し悪しを決定する一つの因子に,支持基底面の 中で随意的に重心を移動できる範囲である安定性限界 があると報告されている26)。つまり,COP の移動範囲 が大きいほど安定性限界が大きくなり,バランス能力 は高くなるということであるが,円背患者は胸椎後彎 の増強,腰椎前彎の減少により体幹前傾が進行するこ とで,後方へのCOP 移動が小さくなり,安定性限界が 低下し,静的,動的バランス能力が低下していくと推 察する。 続いて,歩行能力について考察する。一般的に,円 背患者は胸椎後彎に加え腰椎前彎の減少によって骨盤 が後傾し,それを股関節伸展と膝関節屈曲により代償 する。しかし,体幹の前傾が強いほど股関節伸展によ る代償は不足し,膝関節屈曲による代償が大きくなる ことが報告されている22)。つまり,円背が進行し,腰 椎の前彎が減少するにつれて,体幹前傾は進行し,下 肢の代償は大きくなる。股関節と膝関節が屈曲したア ライメントでは,下肢での前方への推進力は得にくく なり,歩行スピードが低下すると推察する。 passive 反らし値と PCI 値の間に相関を認めなかった 理由を考察する。円背姿勢は,安静時の酸素需要を増 大させ,運動時に必要となる生体の呼吸循環応答を不 利に作用するとされており27),円背はPCI に影響を及 ぼす因子であると考えられる。しかし,別の報告では, 脊柱後彎位は,上位胸郭の吸気に伴う前上方への運動 を制限するとされている28)。つまり,呼吸循環機能の 低下は腰椎前彎より胸椎後彎と関係するため,腰椎前 彎と関係するpassive 反らし値とPCI の関係において,相 関関係が認められなかったと考える。また,PCI は運動 負荷の影響を受けることが報告されており17),本研究 では,被検者に対して運動負荷を等しく軽度に維持す るため,至適と感じるスピードで歩行してもらった。 しかし,実際,至適と感じる以上の歩行,つまり,努 力性の歩行をしていた被検者が存在した可能性があり, 全ての被検者の運動負荷を等しくすることができなかっ たことも相関を得られなかった理由と推察する。 active 反らし値は,体力測定などで,一般的に使用さ れる伏臥上体反らしの値であるが,OLS,TUG,MWS, PCI との間には相関が認められなかった。先行研究にて 伏臥上体そらしは背筋力,脊柱伸展の可動性を評価す る方法として使用されており18),本研究に採用したが, 脊柱伸展可動性に背筋力を加味して評価した場合,そ の値はバランス,歩行能力と相関関係を認めないこと が分かった。 年齢とOLS,TUG,MWS,PCI との間には相関が認 められなかった。本研究に参加した被検者は,平均年 齢77.8 ± 4.7 歳であり,年齢のばらつきが小さかった。 そのため,年齢とOLS,TUG,MWS,PCI との間に相関 が認められなかったと推察する。 最後に,体幹前傾角とOLS,TUG,MWS,PCI との間 に相関が認められなかった理由を考察する。先行研究 において,円背患者は体幹前傾角の増大にしたがって, バランス,歩行能力が低下すると報告されていた9)。し かし,本研究では相関を認めることができなかった。 本研究においてC7 と L4 を結んだ線と床からの垂線が なす角を矢状面における体幹前傾角とした。しかし, この体幹前傾角は骨盤,下肢の代償の影響を受けた。 例えば,骨盤後傾,股関節伸展,膝関節屈曲により,体 幹が前屈しているにも関わらず,C7 がL4 の後方に位置
し,体幹前傾角はマイナスの数値を示した被検者がい た。この様に,体幹の前屈を下肢で代償したため,円 背があるにもかかわらず,体幹前傾角が軽度となった り,マイナスの数値が出現したりした。もし,正確に 円背の程度を反映する体幹前傾角を測定するならば, 骨盤を正中位に保つ必要があると考える。よって,本 研究で測定した体幹前傾角とOLS,TUG,MWS,PCI と の間に相関が認められなかったと推察する。 本研究では円背患者において,脊柱の他動,自動伸 展可動性,年齢,体幹前傾角とバランス,歩行能力と の関係を検討した。その結果,脊柱の他動伸展可動性 を表すpassive 上体反らし値のみ,OLS,TUG,MWS と の間に相関が認められた。つまり,脊柱の他動伸展可 動性は静的,動的バランス能力,歩行スピードと相関 することが明らかになった。今後,円背患者において, 脊柱の他動伸展可動性の改善がバランス,歩行能力の 向上につながるか,さらなる研究によってその可能性 を検討する必要がある。 引用文献 1) 有田親史,小林郁雄:老人の脊柱変形の分析.臨整外,1980, 15: 115-122. 2) 安藤正明:農村部における高齢者の腰痛と姿勢.別冊整形外 科,1987, 12: 14-17. 3) 村井 肇:骨粗鬆患者の脊柱変形と QOL 評価.日本臨床, 2004, 62(2): 621-624. 4) 高畑雅彦,武田直樹,三浪明男:骨粗鬆症性脊椎骨折後にお こる姿勢異常と体幹筋筋力低下が日常生活動作と生活の質 に及ぼす影響.第21回健康医科学研究助成論文集,2006: 65-73. 5) 徳永邦彦,遠藤直人,湊 泉:QOL(Quality of Life)からみ た重症骨粗鬆症への対応─円背がQOLに及ぼす影響につい て─.Clinical Calcium,2001, 11(12): 1549-1554.
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