6 平成28年度火力原子力発電大会論文集
ガイド波試験による配管エルボ探傷での
欠陥位置と欠陥検出感度の関係
(Correlation between Defect Location and Defect Sensitivity in Inspection of Pipe Elbows by Guided Wave Testing)
山本 敏弘
*・古川 敬
*・西野 秀郎
** (T. Yamamoto) (T. Furukawa) (H. Nishino) 著者らは,過去の研究において,配管のエルボでの欠陥検出を目的としたガイド波試験を行 い,エルボでは場所によって欠陥検出感度が大きく変わり,また,ガイド波の周波数によって 欠陥検出感度が高くなる場所が変化することを示した。さらに,実験に対応させた数値シミュ レーションの結果より,エルボでのガイド波同士の干渉による強めあいや弱めあいが欠陥検出 感度を不均一にすると推定した。本稿では,エルボを含む配管に対するガイド波試験の数値シ ミュレーションを行うことにより配管寸法とガイド波周波数がエルボでの欠陥検出感度に与え る影響を調査した結果を紹介する。 In our past study, guided wave testing is applied for defect detection at an elbow of piping to show that defect sensitivity changes significantly at different locations of the elbow and high sensitivity locations at the elbow vary according to the guided wave frequency. Also, the corresponding numerical simulations imply that constructive and destructive interference of guided waves causes unevenness of defect sensitivity at an elbow. This paper introduces the results of numerical simulations for guided wave testing on piping that includes an elbow to investigate influence of the size of the piping and the guided wave frequency on the defect sensitivity of guided wave testing at the elbow.2. エルボでの欠陥検出感度の特性
著者らは,これまでにエルボを含む配管に対するガイ ド波試験の実験と数値シミュレーションを行い,エルボ では位置によって欠陥検出感度に大きな差ができ,欠陥 検出感度が高い位置とガイド波が伝搬するときに配管外 面の変位が大きくなる位置に対応が見られることを確認 した(4)。これらの結果を踏まえて,著者らは,エルボの入 口まで軸対称に伝搬していたガイド波がエルボを通るこ とでその対称性が崩れ,ガイド波同士が干渉して場所に よって強めあいや弱めあいを起こしてガイド波による変 位に差が生じ,変位が大きくなる位置ほど欠陥検出感度 が高くなると考えた。ガイド波の干渉はエルボの寸法と ガイド波の波長に依存するはずであり,以下では,エル ボを含む配管を伝搬するガイド波の数値シミュレーショ ンの結果より,配管外径とガイド波の波長の組合せでエ ルボでのガイド波の干渉の仕方が変化し,ガイド波によ る表面変位が大きくなる場所が変化することを確認する。1. はじめに
ガイド波試験は,配管やレールなどの長い構造物を一 度に検査する能力を持ち,また,対象箇所より離れた場 所から検査することが可能であるため,埋設配管やラッ ク上の配管,保温材の巻かれた配管などの検査に活用 することが試みられている(1–3)。しかしながら,エルボ・ 分岐管・テーパー部などの形状変化部ではガイド波の反 射や挙動変化が生じ,欠陥からの反射波による欠陥評価 が難しくなる。その一方で,液滴衝撃(LDI)エロージョ ンや流れ加速腐食(FAC)などの配管減肉はエルボ周 辺に発生しやすいため,エルボを含む配管の検査にもガ イド波試験が適用できることが望まれる。本研究の目的 はガイド波試験によりエルボの欠陥を高感度で検出する ことであり,本稿ではエルボのどの位置で欠陥検出感度 が高くなるかは配管外径とガイド波の波長の比に依存し て変化することを示す。 ● ● *(一財)発電設備技術検査協会 (Japan Power Engineering and Inspection Corporation) **徳島大学 (The University of Tokushima) 原稿受付:平成28年11月8日7 平成28年度火力原子力発電大会論文集
3. 数値シミュレーションによる分析
ガイド波の数値シミュレーションには伊藤忠テクノソ リューションズの超音波解析ソフトウェアComWAVE を使用した。計算対象はエルボのあるアルミニウム合金 製の配管とし,配管の材料の縦波音速を6,400 m/s,横 波音速を3,120 m/s,密度を2,700 kg/m3と設定した。ガ イド波の送信部は,配管の外周に沿って等間隔に並んだ 8個の振動ブロックで構成し,エルボの入口から200 mm の位置に配置した。ちなみに,このシミュレーションで は超音波の減衰を考慮していないため,送信部からエル ボの入口までの距離はエルボでのガイド波による変位の 大きさに影響を与えない。送信部からT(0,1)モードのガ イド波を発生させるために8個の振動ブロックは同一位 相で配管周方向に振動させた。振動の変位は入力信号と して与え,設定した中心周波数をもつ6波のパルスとし た。ここでは,ガイド波による表面変位の最大値の分布 を確認することを目的としているので受信部については 考慮していない。形状モデルは,基本図形を組み合わせ て作成し,エルボを含む配管を円柱と4分の1のトーラス を組み合わせて構成した。エルボの両端にある溶接部の 裏波および余盛はガイド波の反射を引き起こすが,表面 変位の最大値分布には大きな影響を与えないため,形状 モデルではこれらを省いた。 計算を行った配管の寸法を表1に示す。形状モデルを 構成するボクセル要素の大きさを一辺0.5 mmとしたた め寸法値はこれにあわせて丸めている。エルボは,それ ぞれの配管寸法に対応するJIS B 2313に準拠したロング エルボの寸法に合わせてモデル化した。 図1は,50A Sch 40の配管でガイド波の周波数を50 kHzとして計算した結果であり,各点の配管外面の変位 の大きさを色で示し,0から範囲の最大値までを青から 赤への色変化で表した。ここで,図1(a)は,異なる3つ の時刻における変位分布を重ねて並べており,手前から 奥に向かって時間が進んでいる。送信部からは両側に 向かってガイド波が伝搬し,直管を軸対称に伝搬してい たガイド波がエルボを通ることで乱れる様子が確認でき る。図1(b)は,全時刻を通しての各点での変位の大きさ の最大値の分布を表したものであり,どの位置で変位が 大きくなるかを一枚の画像で確認できる。 表1 計算を行った配管の寸法 3 運転および保守 表1 計算を行った配管の寸法 呼び径 外径(mm) 肉厚(mm) Sch 10S Sch 20S Sch 40 15A 22.0 2.0 2.5 3.0 20A 27.0 2.0 2.5 3.0 50A 61.0 3.0 3.5 4.0 100A 114.0 3.0 4.0 6.0 (b) 各点での変位の最大値の分布 3 運転および保守 (a) 変位分布の時間変化 (b) 各点での変位の最大値の分布 図1 配管外面の変位の分布図 (a) 変位分布の時間変化 図1 配管外面の変位の分布図8 平成28年度火力原子力発電大会論文集 図2は,3種類の肉厚の50Aの配管でガイド波の周波数 を20 kHzから60 kHzまで変化させたときの変位の最大 値分布である。肉厚に関係なく,周波数が30 kHz以下 ではエルボの腹側で表面変位が大きくなり,40 kHz以 上ではエルボの背側で表面変位が大きくなっている。こ れは,ガイド波同士が干渉して強めあいや弱めあいを起 こす場所がガイド波の波長によって変化するためだと考 えられる。他の口径の配管についても,肉厚が小さいほ ど全体的に表面変位が大きくなる傾向は見られたが,ガ イド波の周波数に対して表面変位が大きくなる位置は肉 厚によらず,おおむね変化しないことが確認された。 文献(4)では,ここでのシミュレーション条件に対応す る50A Sch 40配管試験体を使ったガイド波試験の実験 を行っており,ガイド波の周波数が30 kHzの場合はエ ルボの腹側での欠陥検出感度が高くなり,ガイド波の周 波数が40 kHzおよび50 kHzの場合はエルボの背側での 欠陥検出感度が高くなる傾向が得られている。著者らは, 表面変位が大きくなる場所と欠陥検出感度が高くなる場 所に対応が見られることから,ガイド波が伝搬するとき に変位が大きくなる場所では,そこに欠陥があった場合, 欠陥による反射波の振幅が大きくなり,欠陥検出感度が 高くなると考えた。 図2のようにガイド波の周波数によって表面変位が大 きくなる位置が変化することの原因がガイド波同士の干 渉によるものだとすれば,配管の外径が2倍のときに同 じ干渉効果を得るためには配管外径とガイド波の波長の 比を同じにすればよいため,ガイド波の周波数を半分 にすればよい。図3は,異なる周波数のガイド波を使用 図2 50A配管の変位の最大値分布 3 運転および保守 1.5 1.0 0.5 0.0
20 kHz
30 kHz
40 kHz
50 kHz
60 kHz
50A Sch10S
20 kHz
30 kHz
40 kHz
50 kHz
60 kHz
50A Sch40
50A Sch20S
1.5 1.0 0.5 0.020 kHz
30 kHz
40 kHz
50 kHz
60 kHz
1.5 1.0 0.5 0.0 図2 50A 配管の変位の最大値分布 図3 100A Sch 10Sの変位の最vvv大値分布 3 運転および保守 1.5 1.0 0.5 0.010 kHz
15 kHz
20 kHz
25 kHz
30 kHz
100A Sch10S
図3 100A Sch 10S の変位の最大値分布9 平成28年度火力原子力発電大会論文集 の周波数を“遷移周波数”と定義して異なる配管外径 での遷移周波数を調べた。ガイド波の周波数は5 kHz刻 みで変化させた。図4は,配管外径ごと(肉厚はすべて Sch 10S)の遷移周波数前後での変位の最大値分布であ る。配管外径が大きくなるほど遷移周波数が低くなる, つまり,同様の変位の最大値分布が得られるガイド波の 波長が大きくなることが確認できる。 図5は,配管外径と遷移周波数の関係をグラフにした ものである。横軸は,波長に比例するパラメータとして したときの100A Sch 10Sの配管のエルボでの変位の最 大値分布を比較したものである。予想したとおり,50A Sch 10Sの変位の最大値分布に対してそれぞれ半分の周 波数を使用したときに変位が大きくなる位置に同様の傾 向が得られている。 一般に配管外径とガイド波の波長の比が同じであれば 表面変位の最大値分布が同様になることを示すために, エルボの背側外面の中央と腹側外面の中央での変位振幅 の最大値を比較し,背側の最大値の方が大きくなる最小 図4 遷移周波数前後の変位の最大値分布 3 運転および保守
100A
20A
50A
配
管
外
径
15A
遷移周波数
10 kHz
15 kHz
20 kHz
25 kHz
20 kHz
25 kHz
30 kHz
35 kHz
40 kHz
60 kHz
65 kHz
70 kHz
75 kHz
80 kHz
70 kHz
80 kHz
85 kHz
90 kHz
100 kHz
1.5 1.0 0.5 0.0 1.5 1.0 0.5 0.0 1.5 1.0 0.5 0.0 1.5 1.0 0.5 0.0 図4 遷移周波数前後の変位の最大値分布 図5 配管外径と遷移周波数の相関関係 3 運転および保守0
20
40
60
80
100
120
140
0
0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07
配
管
外
径
(mm)
1/遷移周波数 (1/kHz)
15 kHz
20 kHz
30 kHz
45 kHz
70 kHz
85 kHz
図5 配管外径と遷移周波数の相関関係10 平成28年度火力原子力発電大会論文集 遷移周波数の逆数とした。また,相関をより明確にする ため,グラフには32A Sch 10S(外径43.0,肉厚3.0)と 80A Sch 10S(外径89.0,肉厚3.0)で得られた結果を追 加した。ほぼ線形な関係が得られており,これにより, 配管外径とガイド波の波長の比で表面変位の干渉の仕方 が決まるという仮説の裏付けとなった。
4. まとめ
本稿では,エルボを含む配管を伝搬するガイド波の数 値シミュレーションの結果から,エルボにおいてガイド 波による表面変位が大きくなる位置が配管外径とガイド 波の波長の比で決まることを示した。過去の研究におい て表面変位が大きくなる位置では欠陥検出感度が高く なる傾向が示されているため,この特性を利用すれば任 意の寸法の配管に対してエルボの腹側や背側などで欠陥 検出感度が高くなるガイド波の周波数を求めることがで き,エルボを含む配管に対するガイド波試験の欠陥検出 性を向上できると考える。 参 考 文 献 (1) 西野秀郎,非破壊計測のためのガイド波の基礎と展 開,非破壊検査, 52 (12), 654–661 (2003) (2) 永井辰之,兵藤雅己,高村健一,ガイド波探傷の実 用技術,非破壊検査, 52 (12), 667–671 (2003) (3) 池田隆,金原了二,宮澤正純,松岡勲,藤原光明, プラント配管の検査実務におけるガイド波技術の展 開,非破壊検査, 54 (11), 595–600 (2005)(4) T. Yamamoto, T. Furukawa and H. Nishino, “Frequency Dependence of the Defect Sensitivity of Guided Wave Testing for Efficient Defect Detection at Pipe Elbows,” Materials Transactions, 57 (3), 397–403 (2016)