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021.p _04_臨床技術_丸山先生_まとめ.smd

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緒 言

Magnetic resonance neurography(MRN)は,非侵襲 的に腕神経叢を描出可能なことから,外傷性腕神経叢 損傷や末梢神経腫瘍等の診断に広く用いられてい る1~4).頸部領域は形状が複雑であることから,静磁 場磁束密度(B0)が不均一になりやすい.よって,B0が 不均一な状況下において,水と脂肪の共鳴周波数の差 を利用した選択的脂肪抑制技術である spectral pre-saturation with inversion recovery(SPIR)法を使用し た場合,撮像視野全体にわたって均一に脂肪信号を低

下させることが困難である5~7).そのため,頸部領域

における MRN の撮像法は,非選択的脂肪抑制技術で ある,short-term inversion recovery(STIR)を併用し た two-dimensional(2D)turbo spin echo(TSE)系シー

ケンスが一般的に使用されている4, 8).更に,1.5 T

magnetic resonance imaging(MRI)において,神経走 行を三次元的かつ高分解能に描出可能な,STIR 併用 three-dimensional(3D)TSE 法による MRN の報告も ある9, 10) 3.0 T は,1.5 T と比較して水と脂肪の共鳴周波数の 差が 2 倍になるため,IR パルスを広範囲の周波数帯 域に印加する必要がある.しかし,RF 出力を最小限

3.0 T MRI における可変フリップ角を用いた

3D TSE シーケンスによる脂肪抑制法と撮像条件の最適化:

腕神経叢描出について

丸山裕稔

1

藤原康博

2

酒本 司

1 1国立病院機構熊本再春荘病院放射線科 2熊本大学大学院生命科学研究部医用画像学分野 論文受付 2018 年 5 月 22 日 論文受理 2018 年 11 月 9 日 Code No. 261

Optimization of Fat Suppression Technique and Imaging Parameters for MR

Neurography Using 3D Turbo Spin Echo with Variable Refocusing Flip Angle at 3.0 T:

Visualization of Brachial Plexus

Hirotoshi Maruyama,1*Yasuhiro Fujiwara,2and Tsukasa Sakemoto1

1Department of Radiology, National Hospital Organization Kumamoto Saisyunso Hospital 2Department of Medical Imaging, Faculty of Life Sciences, Kumamoto University

Received May 22, 2018; Revision accepted November 9, 2018

Code No. 261

Summary

Magnetic resonance neurography (MRN) has been used to evaluate abnormal conditions of entire nerves and nerve bundles. A fat-suppressed 3D turbo spin echo (TSE) sequence is one of the imaging techniques for MRN, which has been widely adopted at 1.5 T. However, MRN of the brachial plexus using a 3D TSE sequence with short-term inversion recovery (STIR) reduces the effect of fat suppression at 3.0 T. Moreover, the use of spectral pre-saturation with inversion recovery (SPIR) does not result in uniform fat suppression due to the inhomogeneity of the static magnetic field. On the other hand, it is well known that the visibility of the brachial plexus using a 3D TSE sequence greatly changes with the equivalent echo time (TEequiv). Therefore, we optimized the fat suppression technique and TEequivso that the 3D TSE sequence, using a combination of STIR with SPIR and an optimal TEequiv (from 73 to 110 ms), achieved better visualization of the brachial plexus without residual fat.

Key words: brachial plexus, fat suppression, three-dimensional turbo spin echo, spectral pre-saturation with inversion recovery, short-term inversion recovery

*Proceeding author

(2)

に,かつ B1抵抗性を高めるパルス形状を採用してい るため,RF パルスの送信周波数帯域は狭くなり11),B 0 および B1不均一の影響を受けた場合,STIR 併用 3D TSE シーケンスにおいても脂肪抑制不良が生じる7) また,SPIR 併用 3D TSE シーケンスにおいても,B0 不均一の影響により脂肪抑制不良が生じる5~7) 一方,可変フリップ角を用いた 3D TSE シーケンス では,低角の refocus flip angle(RFA)を連続して印加 した場合,pseudo-steady-state 効果により,effective echo time はコントラストを反映した値とならないた め,equivalent TE(TEequiv)がコントラストを反映した 値となる12).また,TE equivの値によって,組織の信号 強度も変化する.そのため,腕神経叢の描出能を向上 させるためには,脂肪抑制技術の選択だけでなく, TEequivの設定も重要と考えられる.以上よりわれわ れは,脂肪抑制技術として STIR と SPIR を併用する ことで脂肪抑制が改善し,更に,TEequivの最適化によ り,腕神経叢の信号強度および周囲筋肉とのコントラ ストを向上させることで,良好な腕神経叢の描出が可 能となると考えた. そこで本研究の目的は,3.0 T MRI における 3D TSE シーケンスを用いた腕神経叢撮像において,脂肪 抑制技術と TEequivの最適化を行うことである. 1.方 法 1-1 使用機器および対象 MR 装置は,Ingenia 3.0 T Rel.5.1.7.1 および 32 ch dS-Torso coil(Ingenia,Philips Healthcare,Best,The Netherlands)を使用した.また,頸部の形状および組 織を模擬した自作ファントムを用いた(Fig. 1). ファントムは,縦 9.0 cm´横 34.0 cm´高さ 12.0 cm のポリエチレン製容器の中に,空気を含んだ縦 10.0 cm´横 10.0 cm´高さ 10.0 cm のポリエチレン製容器を 入れ,頸部の形状を再現した.ファントムの構成は

Fig. 1 に示すように,A を模擬神経,B,C,D,E を模 擬脳脊髄液,模擬筋肉,模擬脂肪,空気とした.模擬 神経は Gd 造影剤を蒸留水で希釈し(Gd 濃度 0.15 mmol/L),1.0%のアガロースで固形化した.模擬筋 肉は,Gd 造影剤を蒸留水で希釈し(Gd 造影剤濃度 0.05 mmol/L),2.0%のアガロースで固形化した.な お,模擬神経と模擬筋肉の T1値,T2値は文献値13)を 参考とした.模擬脂肪と模擬脳脊髄液はそれぞれ,オ リーブオイルおよび生理食塩水を用いた.これらを直 径 2.5 cm´高さ 6.5 cm のポリエチレン製容器に封入 し,周囲をオリーブオイルで充填した.各ファントム の T1値,T2値を Table 1 に示す. 更に,健常ボランティア 14 名(年齢 25~43 歳,平均 34.5±5.3 歳)を対象とした検討を行った.なお本研究 は,当該施設の倫理審査委員会の承認を得ており,本 研究の目的および意義について,被験者および画像評 価の観察者に対して十分な説明を行い,同意を得た後 に 行 っ た.ま た,画 像 解 析 に は ImageJ (1.42q) (National Institute of MentalHealth,Bethesda, Maryland, USA)を使用した.

1-2 ファントムによる評価

1-2-1 各脂肪抑制技術による均一な脂肪抑制効果

本研究では,脂肪抑制技術として STIR,SPIR およ び STIR と SPIR を併用したもの(STIR+SPIR)の三つ を対象に評価を行った.3D TSE シーケンスをベース

a b

Fig. 1 (a) Structure of phantom, (b) MRI image (T2-weighted image) of phantom.

A, B, C, D and E correspond to the nerve, spinal fluid, muscle, fat and air, respectively.

Table 1 T1and T2value and Gd-DTPA concentration of

phantom

T1value (ms) T2value (ms)

Mimic nerve 900.3 110.4 Mimic musle 1363.9 65.7 Mimic spinal fluid 2344.1 1967.8 Mimic fat 287.6 122.4

(3)

効果を評価した.

本研究に使用した 3D TSE シーケンスにおける RFA の変調方法は,ユーザが設定した RFA を基準に スタート角度が自動的に決定された後,経時的に設定 した RFA まで指数関数的に 4 段階で低下し,その後 は RFA が一定となる low constant を使用した14, 15)

また,今回われわれは腕神経叢描出において,腕神 経叢近辺には鎖骨下動脈静脈が走行しているため,血 管信号の抑制は重要であると考えた.RFA を低角に 設定した場合,高い flow void 効果が得られる反面,周 辺組織の信号強度が低下することが知られている15) このため本研究で用いた RFA は,使用した MR 装置 において設定可能な最低 RFA=30°ではなく,周辺組 織の信号低下を考慮し,それよりも大きい 50°を使用 した.

撮像条件は,repetition time(TR)/TEequiv=2000/92 ms,slice thickness=2 mm,number of slice=40,field of view (FOV)=200 mm,rectangular FOV=150%, matrix size=148´148,RFA=50°,TSE facto r=70, band width(BW)=378.7(Hz/pixel),start up echoes= 2,slice orientation=coronal,パラレルイメージングを 併用(phase reduction factor=2.6,slice reduction fac-tor=1.2)である.また STIR における inversion time は 240 ms とし,k 空間の充填法は kx-ky 平面を line-ar order,ky-kz 平面を radial order とした.

なお,一般的に,3D TSE シーケンスは撮像時間が 長く,モーションアーチファクトが発生しやすい撮像 法である.このモーションアーチファクトを低減する ために,echo space を設定可能な最短に固定し,更に

TEequivの設定値は TSE factor を変更することによっ

て調整した.

また,shimming は局所的な領域に対してのみ行う volume shimming と,FOV 全体に対して行う auto shimming の二つの手法をそれぞれ用いて予備実験を 行った.その結果,どちらの方法を用いた場合でも均 一な脂肪抑制効果に差がみられなかったことから,本 研究ではすべての撮像を auto shimming で行った. また,中心周波数の調整は,撮像ごとに実施した.な お,ポリスチレンボール弾など,B0の不均一を軽減さ せる補助具6)は使用しなかった. 次に,撮像した画像の脂肪を模擬した領域に,縦 40 pixels´横 40 pixels の正方形の関心領域を 16 個設定 し,信号強度を測定した(Fig. 2). 更に,測定した信号強度から,16 個の関心領域にお ける変動係数(coefficient of variation: CV)を求めた. 􀁃􀁖􀀽􀁓􀁄 􀁓􀁉 (1) ここで,􀁓􀁄=信号強度の標準偏差,􀁓􀁉=信号強度の平 均値である. 変動係数は,各脂肪抑制技術における均一な脂肪抑 制効果指標として,変動係数が小さいほど均一な脂肪 抑制効果が高いと評価した. 1-2-2 信号雑音比とコントラストの評価 脂肪抑制技術として SPIR と STIR を併用し, TEequivの最適化を行った.ファントムを用いて, TEequivを変化させて撮像を行い,模擬神経の信号雑音 比(signal-to-noise ratio: SNR)16, 17)および,模擬神経と 模擬筋肉とのコントラスト18)を測定した. 撮像条件は,方法 1-2-1 の撮像条件をベースに, TSE factor を 50-150 に変化させることで,TEequivを 73-159 ms の 6 段階に設定した.また,TSE factor 数 は reduction factor との組み合わせによって,撮像時 間が実際に臨床に用いられる 3 分程度になるように考 慮し決定した(Table 2).次に,撮像した画像の神経 と筋肉を模擬した領域に,縦 7 pixels´横 7 pixels の正 方形の関心領域を設定し,信号強度を測定した.な お,SNR およびコントラストは,以下の式を用いて算 出した. 􀁓􀁎􀁒􀀽 􀁓􎩁 􀁓􀁄􎩁 (2) 􀁃􀁯􀁮􀁴􀁲􀁡􀁳􀁴􀀽 􎜀􀁓􎩁􂈒􀁓􎩂􎜐

􎝂

􎜀􀁓􎩁 􀁓􎩂􎜐 􀀲

􎝒

(3) ここで,􀁓􎩁=模擬神経の信号強度,􀁓􎩂=模擬筋肉の信

Fig. 2 Region of interest used to measure signal intensities and standard deviation in the phantom.

(4)

号強度,􀁓􀁄􎩁=模擬神経の標準偏差である. 1-3 健常ボランティアによる評価 1-3-1 各脂肪抑制技術による均一な脂肪抑制効果 健常ボランティアを対象に撮像を行い,頸部領域に おける均一な脂肪抑制効果を評価した.検討に用いた 撮像条件および脂肪抑制技術は,方法 1-2-1 と同様で ある.撮像した画像において,第 3 頸椎の高さにおけ る左右の脂肪領域と鎖骨上部における左右の脂肪領域 に,縦 7 pixels´横 7 pixels の正方形の関心領域を 4 個 設定し,信号強度を測定した(Fig. 3). 次に,各健常ボランティアにおいて,測定した信号 強度から,4 個の関心領域における変動係数を式(1)よ り求め,各脂肪抑制技術における変動係数の平均値を 算出した.各脂肪抑制技術による変動係数の統計学的 な有意差は,Kruskal-Wallis 検定および Steel-Dwass 検定を用いて行い,危険率 1%未満を有意差ありとした. 1-3-2 健常ボランティアの視覚評価 腕神経叢を明瞭に描出する際の最適な TEequivを決 定するため,健常ボランティアを対象に撮像を行い, 得られた画像を視覚的に評価した.ファントムによる 検討で,最も均一な脂肪抑制効果が高かった STIR と SPIR を併用した脂肪抑制技術を用い,3 分程度の撮像 時間で設定可能な TEequivのうち,最短の 73 ms,最長 の 159 ms,両者のほぼ中間の 110 ms の 3 種類に変化 させ,3D TSE シーケンスで撮像した.その他の撮像 条件は,方法 1-2-1 のファントムによる検討と同様で ある. 次に,腕神経叢の描出能について,視覚評価による 比較を行った.描出能は,4,excellent(腕神経叢が明 瞭に描出されている):3,good(腕神経叢が描出され ている):2,fair(腕神経叢の描出が劣る):1,poor(腕 神経叢の描出が明らかに劣る)の 4 段階で評価を行っ た.評価者は放射線科医 2 名,診療放射線技師 5 名に て行った.各観察者には事前に説明を行い,画像を同 じモニタに表示し評価を行った.なお,画像を表示す る際の window level と window width の設定は,通常 の画像観察と同様になるように観察者の自由とした. 各評価者の平均点をスコア化し,統計学的な有意差を 求めた.検定方法には,Kruskal-Wallis 検定および Steel-Dwass 検定を用いて,危険率 1%未満を有意差 ありとした. 2.結 果 2-1 ファントムによる評価 2-1-1 各脂肪抑制技術による均一な脂肪抑制効果 各脂肪抑制技術で撮像したファントム画像を Fig. 4 に示す. 各脂肪抑制技術を用いて撮像した画像の CV は, STIR,SPIR,STIR+SPIR において,それぞれ 0.65, 1.08,0.48 であった(Fig. 5).STIR+SPIR において, 最も均一な脂肪抑制効果が高かった.なお,本研究で 使用した脂肪抑制技術において,撮像範囲のすべての 領域で脂肪信号が抑制されない画像は得られなかった. 2-1-2 信号雑音比とコントラストの評価 模擬神経の SNR は,TEequiv=73 ms において最も高

値となり,TEequivが延長するに伴い低下した(Fig. 6).

模擬神経と模擬筋肉とのコントラストは,TEequiv=73

ms において最も低値となり,TEequivが延長するに伴

い上昇した(Fig. 7).

Table 2 Relationship between scan time, TSE factor and reduction factor at each TEequiv

TEequiv(ms)

73 92 110 127 144 159 TSE factor 50 70 90 110 130 150 Phase reduction factor 2.6 2.4 2.2 1.8 1.5 1.3 Slice reduction factor 1.5 1.2 1.0 1.0 1.0 1.0 Scan time (m:s) 3:34 3:28 3:32 3:30 3:34 3:34

Fig. 3 Region of interest used to measure signal intensities and standard deviation in the healthy volunteer.

(5)

2-2 健常ボランティアによる評価 2-2-1 各脂肪抑制技術による均一な脂肪抑制効果 各脂肪抑制技術で撮像した健常ボランティア画像を Fig. 8 に示す. 各脂肪抑制技術を用いて撮像した画像の CV は, STIR,SPIR,STIR+SPIR において,それぞれ 1.01, 0.86,0.53 であった.STIR と STIR+SPIR,SPIR と STIR+SPIR で統計学的有意差(p<0.01)を認め,STIR+ SPIR において,最も均一な脂肪抑制効果が高かった (Fig. 9).なお,健常ボランティアにおいても,本研 究で使用した脂肪抑制技術において,撮像範囲のすべ ての領域で脂肪信号が抑制されない画像は得られな かった. a b c

Fig. 4 Phantom images of 3D TSE sequences with three different fat suppression techniques, which are STIR, SPIR and STIR+SPIR. The fat suppression technique with STIR+SPIR obtained uniform fat suppression image compare with STIR or SPIR.

(a) STIR, (b) SPIR, (c) STIR+SPIR

Fig. 5 Comparison of the CV for 3D TSE images using different fat suppression techniques (phantom images).

The CV of the fat suppression technique with STIR+

SPIR decreased in comparison to that with STIR or SPIR. Fig. 6 Comparison of the SNR for 3D TSE images using STIR+SPIR and different TEequivsettings.

Fig. 7 Comparison of the contrast for 3D TSE images using STIR+SPIR and different TEequivsettings.

(6)

2-2-2 健常ボランティアの視覚評価 Figure 10 に各 TEequivにて撮像し,画像評価に使用 したボランティア画像を提示する. 各 TEequivにおける評価者の平均スコアは,73 ms, 110 ms,159 ms において,それぞれ 3.28,3.08,1.71 であり,統計学的有意差検定の結果,TEequivが 73 ms と 110 ms で撮像した画像の平均スコアには,有意差 が認めらなかった. 一方,TEequivが 73 ms と 159 ms および 110 ms と 159 ms で撮像した画像の平均スコアには,統計学的 有意差(いずれも p<0.01)を認めた(Fig. 11). 3.考 察 本研究では,3.0 T MRI において,3D TSE シーケン スを用いた腕神経叢の良好な描出を目的とし,脂肪抑 制技術と TEequivの最適化を行った. 自作ファントムを用いた,腕神経叢の描出に最適な 脂肪抑制技術の検討において,STIR+SPIR を使用し て撮像した画像の CV は,他の脂肪抑制技術に比べ低 下した.更に,健常ボランティアによる同様の検討に おいても,STIR+SPIR を使用して撮像したときの CV は,他の脂肪抑制技術に比べ有意に低下した.これら の結果から,最も均一な脂肪抑制効果が得られる技術 は,STIR+SPIR であることが示唆された.今回,使用 した MR 装置における STIR の周波数帯域幅は 743 Hz である.よって,中心周波数から±371.5 Hz の周波 数帯域において,脂肪信号を低下させることが可能で ある.また,SPIR の周波数帯域幅は 679 Hz であるた め,脂肪の共鳴周波数である約–447.3 Hz より,–220 Hz(デフォルト値)だけオフセットした値である–227.3 Hz から,–451.7 Hz の周波数帯域において脂肪抑制が 可能である.したがって,STIR と SPIR を併用する ことで,脂肪抑制が可能な周波数帯域は,+371.5 Hz か ら–451.7 Hz となる.このことから,脂肪抑制技術と して,STIR と SPIR を併用することで,両者を単独で 使用する場合に比べ,広範囲な周波数帯域による脂肪 抑制が可能となり,B0不均一の影響により変動した脂 肪の周波数帯域においても,均一な脂肪抑制効果が得 られたと考えられる. しかし,本撮像法は B0不均一を改善したわけでは なく,周波数帯域幅を広範囲とした方法である.した がって,B0不均一により脂肪の共鳴周波数が STIR+ SPIR の周波数帯域外となった領域においては,抑制 は不可能である.また,B0不均一により水の共鳴周波 数が変動し,水信号を抑制する可能性も考えられ,周

Fig. 8 Healthy volunteer images of 3D TSE sequences with three different fat suppression techniques, which are STIR, SPIR and STIR+SPIR. The fat suppression technique with STIR+SPIR obtained uniform fat suppression image compare with STIR or SPIR.

(a) STIR, (b) SPIR, (c) STIR+SPIR

a b c

Fig. 9 Comparison of the CV for 3D TSE images using different fat suppression techniques (healthy volunteer images) . The CV of the fat suppression technique with STIR+ SPIR decreased in comparison to that with STIR or SPIR.

(7)

波数オフセット値の最適化も検討する必要がある. また,模擬神経と模擬筋肉とのコントラストは, TEequiv が延長するに伴い上昇する傾向を示した.模 擬筋肉の T2値(65.7 ms)は,模擬神経の T2値(110.4 ms)と比較して短い.したがって,TEequiv延長に伴 い,緩和時間による信号強度の差が大きくなったた め,コントラストが上昇したと考えられる18) 視覚評価の結果,最も長い TEequivである 159 ms で,腕神経叢の描出能が低下していた.画像評価に使 用した TEequiv が,159 ms のボランティア画像(Fig. 10)では,明らかにノイズの多い画像となっており, ファントム実験において,模擬神経の SNR を評価し た結果を反映している.このことは,長い TEequivの 設定は,SNR の低下につながるために,腕神経叢の描 出能を向上させるには TEequivの最適化が重要である ことを示唆している. また,今回は撮像時間を,実際に臨床に用いられる 3 分程度になるように考慮したため,TEequivが 73 ms 未満の検討は行っていない.TEequivを短縮した場合 には,腕神経叢周囲の筋肉の信号強度が上昇するた め,腕神経叢と周囲筋肉とのコントラストが低下する 可能性がある.これらのことから,臨床応用を考慮 し,3 分 程 度 で 撮 像 す る 場 合 に お い て,TEequivを 73-110 ms に設定することで,腕神経叢が良好に描出 されると示唆された.ただし,TEequivの値は,異なる メーカや機種間によって異なる場合があることに注意 を要する. 近年,3D TSE シーケンスにおける RFA の変調方 法として,目的とする組織の T1値,T2値に応じて RFA が変化する変調方法が開発されている.この変 調方法は low constant に比べ信号強度が上昇すること が報告されており19, 20),RFA の変調方法の違いが腕神 経叢の描出に与える影響について検討する必要がある. また,3.0 T MRI で腕神経叢を描出する際の脂肪抑 制技術としては,これまでに 3D TSE シーケンスに DIXON 法を併用した撮像法が報告されている7).こ れは水と脂肪の相対的な位相差の違いを使用する手法 で,B1や B0の不均一による影響もほとんど受けない た め,均 一 な 脂 肪 抑 制 効 果 が 得 ら れ る 特 徴 が あ る5, 7, 21).しかし,現時点ではこの撮像法を 3D TSE シーケンスと組み合わせて利用可能な装置は限られて いる. 更に,STIR で用いる RF パルスとして frequency offset corrected inversion(FOCI)パルスを使用するこ とで,均一な脂肪抑制効果を向上させた撮像法も報告

されている22).FOCI パルスは,本研究で使用した

Fig. 10 The images of healthy volunteer with three different TEequiv.

(a) 73, (b) 110, (c) 159 ms

a b c

Fig. 11 The result of visual evaluation for 3D TSE images using STIR+SPIR and three different TEequivsettings.

(8)

hyperbolic secant パルスに比べ周波数帯域幅が広範囲 であるため,B1および B0の不均一性の影響を受けに くく,均一な脂肪抑制効果が向上する23).今回提案す る方法は,FOCI パルスと同様に周波数帯域幅を広範 囲にする方法であるため,これに類似した効果が期待 できる. よって,DIXON 法および FOCI パルスが使用でき ない装置において,3D TSE シーケンスに STIR と SPIR を併用することで均一な脂肪抑制効果を向上さ せた本撮像法は,腕神経叢描出において有用であると 考えられる. また,本研究では,神経と併走する血管の信号抑制 をこれまでの報告と同様に RFA を低角に設定するこ とで実現したが7, 15),最近では improved motion-sensit-ized driven equilibrium(iMSDE)をプリパルスとして

用いる方法も提案されている23).iMSDE はさまざま な撮像シーケンスと組み合わせが可能であることか ら,本研究で提案する脂肪抑制法と併用可能になれば, 血管信号のさらなる抑制が期待できる可能性がある. 4.結 語 本研究は,3.0 T MRI における 3D TSE シーケンス を用いた腕神経叢撮像において,脂肪抑制技術と TEequivを最適化した. 脂肪抑制技術として,STIR と SPIR を併用し, TEequivを 73-110 ms に設定することで,腕神経叢を良 好に描出できる. 謝 辞 本研究を進めるにあたり,ご協力いただきました国 立病院機構熊本医療センター放射線科の皆様,ならび に株式会社フィリップス・ジャパンの勝又康友氏,濱 野裕氏に深謝いたします.

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参考文献

問合先

〒861-1196 合志市須屋 2659

Fig. 1 に示すように,A を模擬神経,B,C,D,E を模 擬脳脊髄液,模擬筋肉,模擬脂肪,空気とした.模擬 神経は Gd 造影剤を蒸留水で希釈し(Gd 濃度 0.15 mmol/L),1.0%のアガロースで固形化した.模擬筋 肉は,Gd 造影剤を蒸留水で希釈し(Gd 造影剤濃度 0.05 mmol/L),2.0%のアガロースで固形化した.な お,模擬神経と模擬筋肉の T 1 値,T 2 値は文献値 13) を 参考とした.模擬脂肪と模擬脳脊髄液はそれぞれ,オ リーブオイルおよび生理食塩水を用いた.こ
Table 2 Relationship between scan time, TSE factor and reduction factor at each TE equiv
Fig. 5 Comparison of the CV for 3D TSE images using different fat suppression techniques (phantom images).
Fig. 9 Comparison of the CV for 3D TSE images using different fat suppression techniques (healthy volunteer images)
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参照

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