1
ChMd18 月には球殻があるのだろうか
ChMd18 Does The Moon Have The Sphere Shell? 黒月樹人(Kinohito KULOTSUKI) 月には球殻があるのだろうか 月に大気があるかどうかを調べるため、多くの画像をチェックしてゆくうちに、月の周 囲に、大気層とは考えられない大きさで、まるで地球のバン・アレン帯のような対応の、 球殻のようなものがあるのではないかと考えるようになった。時として肉眼でも観察され、 「月の暈」と表現されるものがある。これは、地球大気の状態によって、そのように見え るものだとされている。はたして、それと同じものなのだろうか。私がチェックして気に なったものは、月が放つ光の向きや量には関係なく、月という球体の表面から等しい距離 で広がった位置にあって、見えるか見えないかの、わずかな光の境界面を作っているよう なのだ。それはやはり、地球大気に写されたものというものではなく、月の周囲の宇宙空 間に存在するもののように思える。 今回、このようなサンプル画像を 2 例確認した。以前、自分で撮影した月の画像でも、 同じような光の構造を示すものが得られたことがある。このようなものが見いだせない画 像も多い。なにしろ、微妙な光の差異を記録しており、それが明らかになるような技法を 用いる必要がある。これまで見過ごされてきてもおかしくない。 解析原画像 解析のための原画像はネットで探した。Luna Image というキーワードで検索して見出 したものである。私個人の整理上の番号を01 と 04 としてある。図 1 は「月の暈」の画像 である[1] 。図 2 は月食時に、地球の大気をとおってきた太陽光によって赤く染められた月 の画像である[2] 。光が遮られたはずの月を撮影しているので、満月を撮影するときより、 露光時間は多いはずである。このことにより、月の周辺領域のかすかな光を記録している と期待できる。
図 1 Luna Image 01 図 2 Luna Image 04
コンター解析
2 ジタル画像は、赤緑青の3 原色で構成されており、その強さが、それぞれ、0~255 の 256 段階に分類されている。ある画素の赤、緑、青の色値をr, g, b とするとき、次の式で濃淡 値gray を決めることができる。 gray = 0.299 r + 0.587 g + 0.144 b この濃淡値に関して、コンター解析の「適用範囲」と「飛値」を指定し、決めた離散値 のところだけ、原画像の自然な配色とは異なった、人工の色で置き換える。このようにす ると、地図の等高線のように、同じ濃淡値のところが、つながって見えたり、特定のパタ ーンを描いて見えるようになる。これがコンター解析の仕組みである。 「月の暈」画像のコンター解析 図1 の原画像を bmp 画像に変換し、ゴブリンクォーク 2 で解析する。トップで画像を読 み込み、途中で何も処理せずに、コンターのページへと移ったのが図 3 である。向かって 左にスイッチがある。設定として、「範囲指定」を(濃淡値の)0~16 とした。「飛値」は 4 である。「配色」として、min(水色)から Max(黄色)へと変化するものを選んだ。まだ 「操作」のところで実行はしていない。「制限全範囲」をクリックしてコンター解析を行っ たものが図4 である。 図 3 「月の暈」画像のコンター解析の設定
3 図 4 「月の暈」画像のコンター解析(A) 図4 の「範囲指定」では暗い領域に偏りすぎていたようだ。「月の暈」部分は、まったく コンター解析が行われていない。しかし、「月の暈」と「球殻」の関係がよく見えている。 青い「暈」の広がりが、月面に照らされた太陽光の強さとは無関係に、照らされていない 月を含む、月そのものを丸く包むようになっている。これは不思議なことである。 図 5 「月の暈」画像のコンター解析(B)
4 図5 では、「範囲指定」と「飛値」と「配色」を変更して、全ての領域でコンター解析を 行った。「球殻」と見なしている部分の、外と内とではコンターパターンが、まるで違って いる。外側では一様なパターンだが、内側では、同心円(球)状で、さらに強さが変化し ている。 「月食」画像のコンター解析 図 6 「月食」画像のコンター解析の設定 図2 の原画像を bmp 画像に変換し、ゴブリンクォーク 2 で解析する。トップで画像を読 み込み、途中で何も処理せずに、コンターのページへと移ったのが図6 である。 「範囲指定」を(濃淡値の)0~16、「飛値」を 2 とした。 「配色」としては、min(水色)から Max(黄色)へと変化するものを選んだ。 まだ「操作」のところで実行はしていない。「制限全範囲」をクリックしてコンター解析 を行ったものが図7 である。 図 1 のような「月の暈」なぞ、まったく現れていないのだが、同じような「球殻」の構 造が存在することが明らかに示されている。この画像では、暗い領域の解像度が良いよう なので、この「球殻」内部の詳しい情報が得られそうである。 図8 以降では、SCAN 機能を使って、特定の濃淡値のコンターのみを描くことにした。 ここで驚いたのは、濃淡値0 が示す線が、「球殻」の縁あたりにあるということである。そ れでは、外部領域の濃淡値は何かと調べたところ、濃淡値 1 であることが分かった。周囲 の外部空間より、わずか 1 だけであるが暗いところを、この「球殻」が持っているという
5 のは、いったい何故なのだろうか。
図 7 「月食」画像のコンター解析(C)制限全範囲
6
図 9 「月食」画像のコンター解析(E)濃淡値 1
7
図 11 「月食」画像のコンター解析(G)濃淡値 4
8
図 13 「月食」画像のコンター解析(I)濃淡値 8
9
図 15 「月食」画像のコンター解析(K)濃淡値 12
10
図 17 「月食」画像のコンター解析(M)濃淡値 16
図 18 「月食」画像のコンター解析(N)配色(黒→白), 制限全範囲
11 「球殻」のような構造は、月の光の量にかかわらず、一定の幅をもっている「外殻部分」 のようなものが認められる。このことは、図8~図 10 の、濃淡値 0, 1, 2 のコンターパター ンによって確認できる。 この「球殻」構造の内部領域のコンターパターンは、月の光の量に従って変化している。 このことは、図11~図 17 の、濃淡値 4~16 のコンターパターンによる。濃淡値 4, 6, 8 の コンターパターンで、月の暗い部分の方に、このような値の画素が多く見られるのは、月 の明るい部分の方では、より明るい画素が支配的になるためと考えられる。 図18 では、濃淡値 2 の薄い灰色の帯が、一定の幅で、正確な円を描いている。これが「球 殻」と名づけたくなる理由の一つであるが、いかにも不思議である。 この解析の翌日、それではと、「月食 画像」で検索し、他の月食画像をチェックして調 べてみたところ、このような現象を再現するものが見つからない。このような「球殻」現 象が、単に光量の少なさによって見のがされているのであれば、他の月食画像でも見出さ れるはずである。 ふと思い立った考えがある。望遠鏡もしくは撮影したデジタルカメラの光学系に由来す るというもの。まさか、色値0~8 のところを分解して調べることはなかろうと、肉眼で見 逃がされてしまうような「ひずみ」のようなものが、残されてしまっているというもの。 アイディアとしての可能性はあるかもしれない。しかし、そのメカニズムについては、よ く分からない。「月食」の画像では暗い部分にあるが、「月の暈」の画像では、もっと明る いものとして現れているし、明らかな色値差が生じている。「誤差」や「ひずみ」のような ものに由来するとは考えにくい。もっと一般的な「月の暈」なら、肉眼ででも観察される ことがある。それらの画像では、どのようになっているのだろうか。
(Witten by Kinohito KULOTSUKI, Aug 5, 2011)
参照資料 [1] 月の暈 http://www.martinbook.it/wp-content/uploads/2010/12/luna11.jpg [2] 月食(正式な画像名 Luna llena, 13/04/2006) http://www.astrosurf.com/astronosur/galeria/Luna_20060413.htm 撮影データ
Objeto Luna llena
Fecha / Hora 13/04/2006 03:30 UT Camara SONY DSC-W5
Telescopio Reflector Newtoniano 114 mm F/8 Metodo Proyeccion afocal, ocular Plossl 32 mm Exposicion 2 x 1/400 segundos @ ISO-100