JAMAGAZINE(日本自動車工業会)2010 March Vol.44 掲載
ブラジルのモータリゼーションと自動車産業の現状
西島章次(神戸大学経済経営研究所教授) 1.様変わりしたブラジル経済 ブラジルは、1980 年代に深刻な経済危機を経験したが、90 年からの本格的な経済自由化 によって、それまでの停滞した経済から大きく変貌し、今や BRICs の一員として世界の注 目を浴びている。とりわけ 2000 年代に入ってからは、一次産品輸出の急増と中間層の拡大 がもたらした堅調な消費需要に基づき、経済はダイナミックに成長している。また、08 年 後半からの世界的な金融危機の影響も限定的であったとされ、09 年の第 2 四半期には経済 成長率は対前期比でプラス 1.9%に転じた1。自動車産業の回復も目覚しく、ANFAVEA(全 国自動車工業連盟)の統計によると、危機の影響を最も強く受けた 08 年 11 月の新車登録は 17 万 8 千台であったが、09 年 9 月には 30 万 9 千台にまで回復し、09 年全体の登録数は前 年の 280 万台を上回り、過去最高の 314 万台となった。以下では、急速に進展するブラジ ルのモータリゼーションと自動車産業の現状をレポートする。 2.モータリゼーションの動向 ブラジルの自動車産業には、GM、フォード、フォルクスワーゲンが早い時期から参入し ていたが、1956 年のメタス計画で基幹産業として位置づけられ、手厚い保護政策と積極的 な外資優遇政策によって本格的な国産化が開始された。例えば、フォルクスワーゲンはビ ートル(ブラジルではフスカの愛称で親しまれた)やコンビなどを生産し、ブラジルの初 期のモータリゼーションを支えた。日系メーカーとしてはトヨタが 59 年に参入している。 しかし、図1に見るように、70 年代末まで順調な拡大を見せていたが、80 年代にはインフ レと対外債務による経済危機によって停滞の時期を迎える。しかもこの時期の自動車産業 は、過度の国内市場保護と寡占的な市場構造のため、非競争的な環境にあった。だが、90 年代に入ると貿易自由化の進展と 94 年のレアル計画によるインフレの終息によって、再び 自動車産業は拡大の時期を迎え、新たに本田、三菱、ルノー、プジョー、日産などが参入 した。99 年には通貨危機による影響があったものの、以後は加速的に生産が拡大し、本格 的なモータリゼーションを迎えることになった。08 年以降は、バス・トラックを含む自動 車生産台数は 300 万台となり、世界で第 6 位の生産国となっている。また、08 年の自動車 保有台数は 2560 万台で、1000 人当たりでは 2000 年の 113 台から 08 年の 145 台へと急増し ている。日本の 592 台には及ばないものの、中国の 34 台、インドの 14 台を大きく上回っ 1 ただし、2009 年全体としてはマイナス 1.0%程度と予測されている。ている(国際道路連盟のデータ、いずれも 07 年)。この意味で、人口当たりでは中国、イ ンドより一足早い本格的なモータリゼーションを迎えたといえる。免許保有者数も急増し ており、03 年の 3154 万人から 08 年には 4536 万人(人口比率でそれぞれ 17.7%から 23.9%) となった。
図1●自動車生産の推移 (1000台)
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 57 59 61 63 65 67 69 71 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 出所:ANFAVEA(全国自動車工業協会):Anuário da Indústria Automobilística Brasileira 2009、ならびに Carta da Anfavea Janeiro 2010 注:軽商用車にはユーティリティーカーなどが含まれる。 乗用車 軽商用車 トラ ック バス ところで、ブラジルは日本の 22.5 倍の広大な国土を有しているが、歴史的に鉄道が沿岸 部を中心に発達したため、必然的に道路輸送に大きく依存しており、貨物輸送の 6 割程度 を担っている。しかし、ブラジルの道路網は近年においても拡大を続けているが、国土の 大きさ故に依然として不十分な状況である。また、総延長距離は 2007 年には 164 万 km に 達するが、舗装率は低く全体で 12.9%に過ぎない(表1)。因みに、日本、インド、中国の それは、同時期にそれぞれ約 80%、66%、47%である(世界銀行のデータ)。また、道路密 度(km/km2)は 0.19 であり、中国の 0.20 と同程度であるが、インドの 1.03、日本の 3.16 とは隔たりが大きい。ブラジルでの高速道路はホドビーア(rodovia)と呼ばれ、基本的に 国道に対応しているが、07 年には 74940km が整備され、そのうち 8 割が舗装されている。
表1●ブラジルの道路整備状況
総延長 国道 州道 市道 2000 1,579,129 70,621 208,030 1,300,478 10.4 0.186 2007 1,640,435 74,940 249,784 1,315,711 12.9 0.193 出所:ブラジル交通省, Anuários Estatísticos 2008. 道路延長(km) 道路密度 (㎞/㎞ 2) 舗装率 (%) こうした道路整備状況で急激に進展するモータリゼーションは、様々な問題をもたらしている。サンパウロ、リオデジャネイロなどの大都市では交通渋滞が深刻である。約 2000 万人が居住する大サンパウロ圏では車の数が 2003 年以来毎年 7.5%の率で増加し、日々1000 台の割合で増えているとされる。TIME 誌の 08 年 4 月 21 日の記事では「世界最悪の交通渋 滞」と紹介されたが、人々は車やバスの通勤に長時間を費やしている。09 年 7 月 10 日には 記録的な渋滞となり、市交通局でモニターしている 835km の道路のうち 293km で渋滞が生 じた。サンパウロ市では 97 年からナンバー・プレートによる市中への乗り入れ制限2 を実施 しており、08 年には乗り入れ制限がトラックや商用車にも拡大されたが、改善にはほど遠 い状況である。現在のサンパウロ市内の地下鉄網が 61km に過ぎないことや、バス輸送の効 率化が進展していないことも交通渋滞の要因である。 さらに、急激なモータリゼーションを反映し、交通事故の問題も深刻である。図 2 が示 すように、2000 年以降は事故件数、死亡者数とも拡大傾向にあり、08 年の 10 万人当たり の死亡者数は 17.0 人であり、わが国の 4.0 人をはるかに上回っている。また、道路交通の 安性をより的確に反映すると考えられる保有台数当たりの件数でみると、1000 台当たりの 死亡者数は、日本の 0.07 人に対し、ブラジルでは 1.3 人であった。このため、08 年 7 月に レイ・セッカ(Lei seca)と呼ばれる飲酒運転の罰則強化が措置されたが、交通道徳の向上、 信号などの交通システムの整備、道路の保全なども不可欠である。今後、保有台数のいっ そうの拡大が続くと予想され、抜本的な対策が急務となっている。 3 自動車産業の現状 ブラジルは既に生産台数が 300 万台を超える自動車大国であるが、国内市場は依然とし て関税で保護されている。ブラジル、アルゼンチンはメルコスールに加盟しているため、 域外諸国からの輸入に対しては対外共通関税を課しており、自動車、トラック、シャーシ 2 ホディージオ(rodigio)と呼ばれる市中の一部地域における乗り入れ制限。ナンバー・プ レートの末尾番号で平日のラッシュ時に乗り入れが制限される。例えば 1、2 であれば月曜 日に乗り入れできない。違反すれば罰金と反則点数が加算される。 図2●交通事故の推移 0 50 100 150 200 250 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出所:ブラジル都市省、Anuário Estatístico de Acidentes de Trânsito, 2008.
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 10万人当たりの事故件数(左軸) 10万人当たりの死亡者数(右軸)
ー、車体の輸入に関しては 35%、自動車部品には 14~18%の関税が賦課される。こうした 高関税は、諸外国の自動車メーカーがブラジルに進出する一つの要因となっている。他方、 域内貿易に関しては基本的に無税3であるため、ブラジルとアルゼンチン両国に進出してい る企業では車種別の分業体制を敷いているケースが多い4。ただし、ブラジルからの輸出に 関しては、現時点では均衡化係数(1.95)なるものが設定されている。すなわち、ブラジル からアルゼンチンへの自動車・同部品の輸出に関しては、アルゼンチンからの同輸入額の 1.95 倍までは無税とするものである。それを超える輸出に対しては完成車の場合 24.5%の関 税が賦課される。ただし、2014 年 7 月以降は完全に自由化される予定である。 表 2 は、ブラジルで生産する代表的なメーカーのリストであるが、この表からブラジル の自動車産業のいくつかの特徴を読み取ることができる。第 1 は、ブラジル資本 100%の企 業は唯一アグラーレのみであり、その他は外資系企業である。これら外資系企業のなかで も、進出時期が早い GM、フォード、フォルクスワーゲン、フィアットの 4 社で 2009 年の 販売シェアは 75.9%を占めている。本田、三菱、日産、トヨタの日系 4 社を合わせたシェア は拡大傾向にあるものの 8.9%に過ぎない(乗用車・軽商用車のみでは 9.3%)。第 2 に、フ ィアット、GM、日系 4 社、プジョー、ルノーなどは乗用車・軽商用車のみを生産・販売し、 4 強のなかのフォード、フォルクスワーゲン5はトラックなども生産しているが、スカーニ ア、ボルボ、メルセデスはトラック・バスを主力部門としており、メーカーの特徴に応じ 3 域内産であると認定されるための域内調達率は 60%以上である。 4 例えばトヨタは、ブラジルからピックアップの部品を供給し、それをアルゼンチンで組み 立て、完成車を輸入してブラジルで販売している。 5 フォルクスワーゲンのトラック・バス部門は 2009 年にドイツのマンに買収されている。 表2●主要自動車メーカー 乗用車 軽商用車 (d) トラック バス 国内販売 合計 販売シェ ア(%) 乗用車・ 軽商用車 の販売 シェア (%) 国内生 産 輸入 国内販 売 輸出 アグラーレ 1982 民族 4 87 111 555 3926 4592 0.14 0.00 8933 0 6646 2119 フィアット 1976 外資 3 479 631468 118169 749637 23.37 24.42 722450 15430 657763 78221 フォード 1953 外資 4 447 247846 68637 21497 337980 10.54 10.31 326090 43664 282043 85202 GM 1930 外資 4 375 512157 98679 610836 19.04 19.90 603819 67149 548869 108485 本田 1997 外資 1 107 116296 11783 128079 3.99 4.17 131139 9391 117599 21135 ヒュンダイ 2007 外資 1 136 24410 53436 77846 2.43 2.54 11268 33958 43826 0 イベコ 2000 外資 2 57 2449 7810 640 10899 0.34 0.08 15584 798 12053 3176 メルセデス・ベンツ(a) 1978 外資 2 192 6449 4470 32332 11537 54788 1.71 0.36 93081 10782 58327 44976 三菱 1998 外資 1 136 26 36576 36602 1.14 1.19 37203 7556 41183 0 日産(b) 2002 外資 1 65 16301 7307 23608 0.74 0.77 5316 15118 17471 3029 プジョー・シトロエン 2001 外資 2 238 147690 3814 151504 4.72 4.94 130975 41551 150965 12746 ルノー 1999 外資 3 142 111656 5614 117270 3.66 3.82 122160 17828 115153 22278 スカーニア 1957 外資 1 85 8327 770 9097 0.28 0.00 19228 2 8831 9852 トヨタ 1959 外資 2 123 56289 39492 95781 2.99 3.12 66983 32525 80892 19560 フォルクス・ワーゲン 1953 外資 5 526 633442 61953 34341 6727 736463 22.96 22.65 904887 40189 631585 317499 ボルボ 1979 外資 2 72 8730 277 9007 0.28 0.00 15829 0 10493 5304 その他 23867 29181 694 53742 1.68 1.73 1031 35363 39941 1001 計 38 3267 2527897 541671 114286 23877 3207731 100.00 100.00 ####### 371304 ####### 734583 注:(a)創業時はダイムラー・クライスラー、(b)ルノーと共有する工場で生産、(c)2008年12月時点。(d)ユーティリティーカーを含む。 出所:ANFAVEA Anuário da Indústria Automobilística Brasileira edição 2009 ならびに Carta da Anfavea Janeiro 2010。
生産・輸入・販売・輸出台数 2008年 国内販売台数(現地生産+輸入) 2009年 生産開 始年 工場 数 販売店 数(c) 資本 関係
た棲み分けがなされている。第 3 は、08 年の輸出が国内生産の 22.8%に達し、輸出産業と しても成長しつつあることである(輸入は国内販売の 13.1%)。ただし、表 3 が示すように、 アルゼンチンへの輸出が 51.2%、輸入が 58.8%と大半を占めており、メルコスールの枠組み でアルゼンチンとの間で企業内の分業体制を敷いていることが大きな理由となっている。 アルゼンチンに次いで大きな比率を占めるのがメキシコであるが、これもブラジルとメキ シコの間で締結されている自動車貿易協定の効果であるといえる。輸入に関して韓国の比 率が相対的に高いのは、まだブラジルでの本格的な生産体制を整えていない韓国メーカー の販売戦略を反映している。 ところで、ブラジルの国内市場の特徴の一つに、1000cc の小型車が圧倒的なシェアを持 っていることがある(図 3)。1990 年には 4%程度であったが、01 年には 71.1%に達し、急 激な自動車生産の拡大をコンパクトカーが牽引した。4 強のメーカーは、いずれもこのクラ スの車種を充実させており、激しい競争を繰り広げている。これに対し、日系各社は 1000cc 以上の上級クラスの車種が主流である。しかし、02 年に中型車クラスの工業製品税(IPI) が引き下げられたため、その後は小型車のシェアは傾向低下にあり、09 年には 1000cc 車の シェアは 52.7%、1000cc~2000cc が 46.1%となった。09 年は後述する減税政策によって 1000cc 車のシェアが再び高まっている。 表3●貿易相手先国 2008年 台数 % 台数 % アルゼンチン 376065 51.2 アルゼンチン 218379 58.8 メキシコ 96847 13.2 メキシコ 55643 15.0 南アフリカ 68607 9.3 韓国 55109 14.8 中国 29989 4.1 日本 14891 4.0 ドイツ 26190 3.6 ドイツ 10022 2.7 チリ 22139 3.0 フランス 5749 1.5 ベネズエラ 14110 1.9 英国 4527 1.2 ウルグアイ 12836 1.7 米国 3098 0.8 英国 11512 1.6 中国 1047 0.3 その他 76288 10.4 その他 2839 0.8 合計 734583 100.0 371304 100
出所:ANFAVEA Anuário da Indústria Automobilística Brasileira edição 2009.
輸入 輸出 図3●1000cc車のシェア (%) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 92 94 96 98 2000 02 04 06 08 出所:ANFAVEA, Estatística. 注:2009年は1月~11月。
表 4 は、自動車ファン向け雑誌のクワトロホーダス(Quatrorodas)の調べによる 2009 年 の販売ランキングであるが、この年に最も販売されたモデルはフォルクスワーゲンのゴル であり、次いでフィアットのパリオ、ウノ、GM のセルタなどの順位となっている。これら を含め 20 位中 15 のモデルが 1000cc エンジン搭載車を含むモデルであり、しかも上位を占 めていることから、モデル内のラインアップで 1000cc 車の充実が販売戦略上きわめて重要 な役割を果たすことを示している。 ブラジルにおいても小型車はエントリー・カーとして購入される傾向にあるが、こうし た自動車需要の拡大には、自動車ローンが果たした役割が大きい。ANEF(全国自動車金融 会社協会)の調べによると、自動車ローンは 2004 年の 331 億レアルから 07 年の 668 億レ アルへと倍増している。ブラジルでは法人の自動車購入はリースの形態をとるが、個人ユ ーザーは自動車ローンを利用するか、伝統的に存在するコンソルシオ6によるか、一括払い で車を購入するのが一般的である。近年、中所得者層の自動車購入が急増しているが、こ うした所得層に対して自動車ローンが果たした役割は大きい。08 年のリーマンショックの 影響で自動車ローンは低迷したが(08 年には 508 億レアル)、個人向け融資全体が 09 年に は拡大に転じたことから、自動車ローンも回復した模様である。他方、金融危機後の自動 車需要の回復に対しては、政府が自動車購入時の工業製品税(IPI)、ローン返済にかかる金 6 共同で資金を積み立て、抽選によって車を購入する仕組み。 表4●2009年の販売ラインキング 順位 モデル名 販売台数 1リッター車の有無 1 VW Gol 303066 〇 2 Fiat Palio 203679 〇 3 Fiat Uno 168501 〇 4 GM Celta 139421 〇 5 GM Corsa Sedan 138015 〇 6 VW Fox/CrossFox 126501 〇 7 Fiat Siena 116064 〇 8 Fiat Strada 89973 〇 9 VW Voyage 85683 〇 10 Ford Ka 83958 〇
11 Ford Fiesta Hatch 73019 〇
12 GM Prisma 62462 〇 13 Toyota Corolla 54601 14 Honda Civic 50207 15 Renault Sandero 49382 〇 16 Honda Fit 48665 17 Ford Ecosport 43578 〇
18 Fiat Palio Weekend 43250
19 Ford Fiesta Sedan 41962 〇
20 GM S-10 39350
出所:Quatrorodas
融取引税(IOF)の減税を実施したことも功を奏したといえる7。いずれにせよ、ブラジルで は今後も自動車需要は堅調に高まると考えられるが、とくに 2014 年のワールド・カップ、 2016 年のオリンピックを控え、いっそうの加速が予想される。既に、4 強メーカーはいず れも生産拡張のための投資計画(フォルクスワーゲン 16 億ドル、フィアット 25 億ドル、 GM10 億ドル、フォード 11 億ドル)を表明しており、シェア争いはますます熾烈さを増し そうだ。 現在、ブラジルに進出している日系 4 社はトヨタを除き後発組みであり、小型車の販売 では立ち遅れている。しかし、近年、日系メーカーのシェアは急激に高まってきた。乗用 車・軽商用車の国内販売における日系メーカーのシェアは、1990 年代前半の 1%前後から、 90 年代後半の 4%前後、09 年には 9.3%と拡大している。今後、市場の成熟度が増し、より 大型・高級車へのシフトが生じると考えれば、日系メーカーのシェアの拡大が期待される。 しかし、ブラジル市場での小型車の人気が根強いことから、日系各社が積極的なシェア拡 大を狙うには 1000cc クラスのセダンの投入が必要である。なお、付表に日系メーカーが販 売するモデルの一覧を掲載している。 4.フレックス自動車 図4●燃料タイプ別新車登録(ディーゼルは除く) 1000台 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 57 59 61 63 65 67 69 71 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 出所:ANFAVEA, Estatistica. フレックス アルコール ガソリン ブラジルの自動車市場の重要な特徴の一つとして、フレックス燃料車(FFV:Flex Fuel Vehicle)に言及する必要がある。ブラジルでは、1975 年のプロアルコール計画(Pró-Álcool) 7 減税前の工業製品税は、ガソリン、フレックス燃料車(後述)のいずれも 1000cc の車に 対しては 7%を課税していたが、減税後はゼロとなり、1000~2000cc の車に対してはガソリ ン車の場合 13%から 6.5%まで、フレックス燃料車の場合は 11%から 5.5%に引き下げられ た。なお、工業製品税の減税は 2009 年末で停止したが、フレックス燃料車に関しては、今 年 3 月まで延長され、1000cc の場合 3.0%、1000~2000cc の場合 7.5%となる。
によって、サトウキビから作られるエタノール生産を奨励し、代替燃料としてガソリンへ の混合を続けている。78 年以降今日に至るまで、概ね 20~25%の混入率が維持されてきた。 79 年にはエタノール 100%のアルコール自動車が導入され、図 4 が示すように、80 年代に は新車販売の大半を占めていた。しかし、90 年代に保護政策が廃止されエタノールの供給 不足が生じたことや、ガソリン価格の低下により再びガソリン車が主流となった。その後、 03 年にエタノールとガソリンをどのような比率で混合しても走行可能な FFV が投入され、 急激に市場に浸透している。09 年には新車登録の 92%に達し、既に昨年末までに 960 万台 が販売され、日系メーカーを含む 10 社で約 90 モデルの FFV を生産している。多くのメー カーでは、一つのモデルで FFV とガソリン車が生産されている。ただし、ガソリン車を FFV に改造するキットが市販されており、実際の FFV の数は把握できない。 ユーザーはエタノールとガソリンの価格の差を見て混合率を決める。エタノールは熱量 が約 3 割程度ガソリンより少なく燃費が劣るからである。エタノール価格は地域差がある が、一般的にガソリンに比べ 7 割以下の価格であれば、エタノールが有利であるとされる。 しかし、昨年 10 月からエタノール価格が上昇し、いくつかの州でエタノールが有利ではな くなったと伝えられている。地元有力紙のオンライン版(Folha Online)の 2010 年 2 月 2 日 の記事によれば、サンパウロ市内のエタノールとガソリンの価格比は、07 年 1 月の 56.8% から今年 2 月には 72.85%へと上昇した。原因は、昨年来の多雨と、砂糖の国際価格の上昇 によって生産者が砂糖生産を増加させていることにあるとされる。こうしたエタノールの 供給不足は、これまでにも何度か生じており、旱魃で供給不足となった 06 年には、政府は ガソリンへの混入率を 25%から 20%へ引き下げるとともに、エタノールへの関税を暫定的 に無税とする措置をとっている。 しかし、こうしたエタノール価格の上昇は一時的な現象であり、今年に関しても 3 月~4 月にサトウキビの収穫時期が始まれば問題は解消されると考えられている。だが、長期的 にはエタノールの安定供給には危惧もある。これまで原料となるサトウキビ生産の拡大は、 サンパウロ州地域を中心として牧場や既存耕地の転作によってまかなわれてきたが、その 余地も急速に枯渇してきており土地価格が高騰している。今後はセラード8などの内陸部に 拡大せざるを得ないが、内陸部に生産地が拡大するにつれてタンクローリー車に依存する 輸送費が高まる問題や、環境面からの制約が強まるという問題があるからである。また、 依然としてエタノールの在庫システムが確立されていないことからも、ブラジルといえど もエタノール供給が必ずしも安定的ではないことに注意が必要である。 8 マットグロッソドスル州、ゴイアス州、ミナスジェライス州などに広がる、半乾燥の潅木 地帯。
付表:日系メーカーの販売モデル メーカー 車種タイプ モデル 生産/輸入 燃料タイ プ 2009年販売台数 本田 乗用車 CITY 現地生産 F 17,574 CIVIC 現地生産 G、F 48,601 FIT 現地生産 F 49,336 ACCORD 輸入 G 785 軽商用車 CR-V 輸入 G 11,783 三菱 乗用車 ECLIPSE 輸入 G 26 軽商用車 PAJERO 現地生産 G、D、F 11,216 OUTLANDER 輸入 G 2,229 PAJERO 輸入 G、D 3,137 L200 現地生産 G、D、F 19,994 日産 乗車 LIVINA 現地生産 F 6,895 X-GEAR 現地生産 F 412 350Z 輸入 G 6 SENTRA 輸入 G、F 5,219 TIIDA 輸入 G、F 3,769 軽商用車 XTERRA 現地生産 G 10 MURANO 輸入 G 4 PATHFINDER 輸入 D 213 X-TRAIL 輸入 G 202 FRONTIER 現地生産 D 6,878 トヨタ 乗用車 NEW COROLLA 現地生産 G、F 55,800 CAMRY 輸入 G 479 PREVIA 輸入 G 2 軽商用車 HILUX SW4 輸入 G、D 5,911 LAND CRUISER 輸入 D 460 RAV4 輸入 G 903 HILUX PICK-UP 輸入 G、D 32,218 乗用車 LEXUS 輸入 G 8 出所:ANFAVEA、Estatística 2009. 注: F:フレックス、G:ガソリン、D:ディーゼル