損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を 現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合 平成18 年 6 月 8 日
損 害 賠 償 額 の 算 定 に 当 た り 被 害 者 の 将 来 の 逸 失 利 益 を
現 在 価 額 に 換 算 す る た め に 控 除 す べ き 中 間 利 息 の 割 合
平成17 年 6 月 14 日 第三小法廷判決 二、逸失利益と中間利息の控除割合 1、損害の意義 不法行為を理由に、損害賠償請求をするためには、「損害が発生したこと」について、 主張・立証しなければならない。判例・通説は、損害の意味を捉える際に、差額説を採 用している。差額説とは、「不法行為がなければ被害者が置かれているであろう財産状況 と、不法行為があったために被害者が置かれている財産状況との差額である」とする学 説である。 これに対して、差額説が債務不履行における損害の算定と同視して、「事実の確定・評 価」に関する問題と「金銭評価」に関する問題とを峻別せずに議論している点を批判し て、損害事実説が有力に展開されている。損害事実説とは、「損害とは、不法行為によっ て被害者に生じた不利益な事実である」とする見解である。 以下では、差額説を基礎とした損害の算定方法について紹介する。 差額説に基づく差額計算にあたり、治療費、交通費、修理費用といった様々な個別項 目を立て、項目ごとの金額を積算することによって差額を算定する(個別損害項目積上げ 方式)。その際、ここの損害項目は、その内容に即して、財産的損害と非財産的損害とに 分類される。財産的損害とは、①積極的損害(治療費、修理代金など)と②消極的損害(逸 失利益)とから成るものと捉えられている。非財産的侵害とは、精神的苦痛を内容とする 慰謝料である。 個別損害項目を積算しながら差額計算をしていく際に、「損害項目として何を算定する か」という点と、「その損害項目にどのような金額を当てるか」という点について、①権 利侵害を受けた当該具体的な被害者を基準に決定していくか、それとも②社会生活にお いてその被害者が属するグループの平均的な人を基準に決定していくかという問題があ る。①の考え方に基づく決定方式を具体的損害計算と言い、②の考え方に基づく決定方 式を抽象的損害計算という。判例・通説は、「損害賠償の目的は被害者個人に生じた実損 害の填補にあるのだから、被害者の個人的事情を斟酌しなければならない」という考え を基礎として差額説を採るので、①具体的損害計算を原則とする。 しかし、このような①具体的損害計算の考え方を基礎としたときには、被害者が幼児・ 年少者など、実際に収入を得ていない場合には、具体的に損害額を算定するのは不可能 である。これでは、成人が被害者となった場合と比べて不公平な結果となる。現在のよ うな損害賠償制度が確立する以前は、被害者が幼児・年少者の場合には、消極的損害は 認められていなかったようである。しかし、交通事故が多発し、幼児・年少者など実際 に収入を得ていない者が被害者となることが急増すると、これでは不公平であるから、2、逸失利益と中間利息 逸失利益とは、「被害者が交通事故に遭わなければ得ることができたはずの利益」であ って、①被害者が事故に遭わなければいつからいつまで働くことができたか、②その間 にどれだけの所得を得ることができたか、③その所得を将来の各時点ではなく現時点で まとめて受け取るとすればどれだけの金額になるのか、④そこから生きていたならば必 要とされたであろう生活費を控除するといくらの利益が残るかを計算し算出される。 現行法制化であっても、損害賠償を定期金によって支払うことは可能であるが、この 場合、被害者が加害者の将来の無資力のリスクを負う可能性があり、あまり採用されて いない。そこで、将来の逸失利益を事故発生当時に一挙に支払う、一時金方式を用いる こととなる。将来の逸失利益を現在価額に換算するとき、将来の所得は毎年異なった値 になるのが普通であるが、この換算を何年にもわたって行うことは面倒である。この計 算を簡素化するため、「被害者が得ることのできる将来の年間所得は、その全就労期間に わたって同一額である」という想定をおくと、被害者の失った生涯所得を現在値に換算 した値(逸失利益)は、この「一定の年間所得」に、被害者の就業年数に応じて別に計 算された換算係数(ライプニッツ係数・ホフマン係数)をかけることで、簡単に求めら れるようになる。ただし、利子の計算には単利と複利の二つの方法があり、単利で計算 するのがホフマン式、複利で計算するのがライプニッツ式である。本件の争点になって いるのは、この利子率を何%にするかということである。 そこで問題となるのは、「全就労期間にわたって一定とされる所得」をどのように決め るかである。この値がいくらになるかで、賠償額の算定を大きく左右することとなる。 現在、年少者など現に所得を得ていない人の場合には、『賃金センサス』をもとにして被 害者の学歴・性別に応じた初任給を用いるか、全就労期間にわたる賃金の年間平均値で ある全年齢平均賃金を用いるか、のどちらかの方法がとられている。そして、前述のよ うに二つの割引係数のどちらを使うかで、次の四つの方法が考えられる。 少 A:初任給×ライプニッツ係数 B:初任給×ホフマン係数(大阪方式) C:全年齢平均賃金×ライプニッツ係数(東京方式) 多 D:全年齢平均賃金×ホフマン係数 これらの方法のうち、金額だけについていえば、A方式が最も少なく、D方式が最も 多くなる。実務ではA,D方式を用いることはほとんどない。しかし、どの方式をとっ ても、金額に大差がないというわけではなく、用いる方式によって不平等が生じるが、 最高裁はどちらの方式を用いても不合理とはいえないとして認容している。 そして最後に、このようにして計算された逸失所得から、生活費等を控除することに
損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を 現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合 よって、最終的な逸失利益が算出されるのである。これを式に表すと、 [一定の年間所得]×[被害者の年齢に応じた換算係数]×[1−生活費の割合] となる。 五、考察 1、民事法定利率の性質 (1)両説の問題点 肯定説は、民法が金銭はその作用において万能の力を有していると想定しているので、 遅延損害金の利率と中間利息の控除割合においても、金銭の一般運用利益を考慮する限 りでは、両者が同一の利率で一般運用益を生み出すと解しても、差し支えはないと考え ている。 しかし、このような利息の考え方は、短絡的過ぎるとの批判は免れないであろう。な ぜなら、文言上、同じ利息という言葉が使われているからといって、同様に解すること が出来るとするのは、法律の解釈の問題としては可能であるかもしれないが、経済につ いての一般常識からすれば、貸付の場合と預貯金の場合とで利率が異なるのが当然なの である。そこで、利息の具体的な性質をなんら判断することをせずに、遅延損害金の利 率と中間利息の控除割合は同質なものを前提として、論理を推し進める肯定説は、中間 利息の控除割合について、民事法定利率を用いることの理由を、うまく説明できていな い。 否定説は、このような肯定説の主張に対し、以下のような批判をする。 ① 立法者は、民事法定利率の一般運用利益について、貸付を想定している。 ② 遅延損害金の利率は、債務不履行という違法行為に対するものであり、制裁的な 意味合いを含んでいる。 ③ そもそも民法は、統一的処理を予定しているのか。 これらの批判に対し、肯定説が利息について、上記のような見解を取る限り、両説の 議論は平行線をたどり、根本的な問題の解決には至らない。そこで、否定説の批判に対 し検討を加え、中間利息の控除割合に民事法定利率を用いるべきか否か考察する。 (2)中間利息の控除割合は事実認定か ①については、確かに立法者は、民事法定利率を定めるに当たって、「法定利率はその 国の普通の融通の利率と同率であるべきところ、我が国では公債を年 5 分で整理できる ことなどからすると、普通の融通の利率は年 5 分と言うのが適当と考えられる」として おり、貸付を念頭に置いた規定であった。この民事法定利率が、最近まで問題として表 面化しなかったのは、民事法定利率と実質金利とで不公平であると考えられなかっただ けで、潜在的に問題を含んでいた。しかも、立法者もこのことを十分認識しており、民
そして、②の批判に対しては、民事法定利率について規定している 404 条と、金銭債 務に関する遅延損害金について規定する 419 条の条文の位置や、419 条の文理、そして 404 条の立法過程では、民事法定利率が債務不履行と言う違法行為に対する制裁として考 えていなかったのみならず、約定利率が定められていなかった場合の補充規定でしかな いと考えられていた。 確かに、利息の意義については議論があるところであり、法律論としては一定の意味 を定めれば十分であり、我妻教授が説明されるように、金銭はその作用において万能の 力を有しており、元本債権如何によらず、一定の利率を生み出すものとするのが通説的 見解となっている。しかし、いくら通説が利息の意義について以上のように解するから と言って、それに従わなければならない訳ではなく、否定説のように利息の意義を詳細 に検討することで、有力な反論を提起することは十分可能である。しかし、最初に述べ たように、これではずっと平行線をたどることとなる。 結局、①②の批判から分かることは、中間利息の控除割合は事実認定によって決まる か否かについての争いに収斂される。 本判決で、最高裁は法的安定および統一的処理の必要性という実質的理由を重視した。 中間利息の控除割合の問題が、純粋に事実認定の問題であるとすると、近年の超低金利 状況では、否定説の主張するように実質金利を用いたほうが説得的である。なぜなら、 この場合でも、数十年先の金利状況や経済動向を正確に予測することは凡そ不可能であ るが、少なくとも通常の運用方法では5%の金利で運用することは、蓋然性の問題として は無理であろう。そこへ、いくら法的安定性や統一的処理の必要性ということを強調し ても、何の補強にもならないのである。つまり、中間利息の控除割合が事実認定の問題 であるならば、むしろ法的安定性を考慮する余地がなくなり、当事者限りの利率が採用 されることのほうが、裁判として妥当であるということになる。 (3)私見 しかし、否定説は、損害賠償請求権の性質が相続的構成によって、遺族に相続される ことと、実際に受け取った損害賠償金を遺族が運用することとを拘泥している。という のは、逸失利益の本来の性質が、被害者の将来所得であって、被害者が生きていたなら ばどれだけの所得を得られたかなのである。その将来所得を算定するときに、法的安定 性や統一的処理の見地から、統計資料を用いて画一的な金額を算定しているが、本来は 被害者間で逸失利益の差が生じることは当然であり、その差を民事法定利率でバランス をとろうとしているのである。 これに対して、否定説からは③そもそも民法が統一的処理を予定しているとは言い切
損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を 現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合 れないとの反論も当然ありうる。それでは、中間利息の控除割合は事実認定の問題であ るとして、実質金利を用いるとすれば、後年、経済学的に客観的な妥当な控除割合が算 出されると、裁判所が証拠資料を用いて蓋然性によって認定した実質金利と、真の実質 金利との間に、必然的に齟齬が生じることとなる。そのとき、その生じた齟齬を誰が責 任を負うのであろうか。交通事故等の損害賠償を一時金払いとしているのは、紛争の一 回的処理により、賠償について当事者間の感情の沈静化のための手法である。そこへ、 民事訴訟法上の問題はともかく、生じた齟齬について再び蒸し返すことともなりかねな くなってしまう。確かに裁判所は、損害額の認定について、裁量権を有しているけれど も、そこには弁論主義のもと、当事者の主張・立証によって、賠償額に多少の齟齬が生 じ、また裁判はそれを予定している。しかし、将来の逸失利益と言う究極的に曖昧なも のを算定するにあたって、後年、弁論主義の余地がない事実としての数字が確定する場 合には、後の紛争を回避するためにも裁判官が裁量によって認定すべきもので、当事者 の主張・立証によって認定することまで法は予定していないと考える。 よって、中間利息の控除割合は事実認定の問題ではないとするのが相当である。つま り、約定のない当事者間や、意思表示のない擬制的な契約当事者間の金銭債権債務にも 利息が生じることを前提とし、その利息の意義については、前述のように解釈によって 異なるが、ここに最高裁の最も重視する実質的理由の『法的安定性及び統一的処理の必 要性』を加味することによって、中間利息の控除割合は裁判所の裁量行為であって、こ のとき中間利息の控除割合は、利息としての性質を有していることから民事法定利率を 用いることを宣明したのである。これによって否定説の批判に正面から答えることがで き、将来の金銭の算定に当たって中間利息の控除するときには、民事法定利率を用いる とする最高裁の判決を支持する。 2、民事法定利率を用いた場合の逸失利益の算定 (1)逸失利益の算定と中間利息 逸失利益を現在価額に算定するために控除する中間利息の割合を、私たちは最高裁と 同様、民事法定利率を用いることを肯定するが、中間利息の控除割合を5%とするか 3% とするかで、約2000 万円の開きが出る。一見すると、中間利息の控除割合を何%するか は被害者にとって重大な問題であると思えるが、実は逸失利益の金額を左右するのは逸 失所得なのである。 本判決で、中間利息の控除割合が民事法定利率である5%とされた以上、立法等の措置 を除いては、中間利息の控除割合によって賠償額の調整を図ることは出来なくなった。 そこで、被害者からすれば低すぎるとも思われる損害賠償額を、どのようにすれば国民 感情に近づけることが出来るか検討する。
現在、多くの裁判所で用いられている逸失利益の算定方式が妥当なものであるか検討 するため、ひとつの架空事例を挙げる。 Ex)1965 年、23 歳の男性(M)が就職直前に交通事故で死亡。 ◎就業年数:44 年 ◎『賃金センサス』(大卒・男子) ホフマン係数;22.923 初任給;36.81 万円 ライプニッツ係数;17.663 全年齢平均賃金;71.75 万円 前述のA∼Dの各方式(割引率5%)により逸失所得を算出すると、 A;650.18 万円 C;1267.32 万円 B;843.80 万円 D;1644.73 万円 それでは仮にM が 67 歳まで生きていたとすれば、実際どれくらいの所得を手にしてい たか、その推計値はどれほど正確に対応しているのか。これを調べるためには、M が 67 歳までに受け取ったはずの所得の、1965 年時点での現在価格を求めればよい。この値は、 1965 年以降の各年の『賃金センサス』から M の年齢に応じた所得を取り出し、それらの 値を年数に応じて割引いて合計することで求められる。このとき、割引率5%の複利方式 を用いると、7893.6 万円になる。この値は、最も高額となりあまり採用されないD方式 でさえも、この金額のわずか20%にも満たないこととなる。 逸失利益とは本来、事故の時点で一括して支払われた金額を一定の利率で利殖しなが ら、被害者が生きておれば得たであろう各年の所得をそこから差し引くと、67 歳の時点 でゼロにならなければならないのである。しかし、実際裁判で用いられている手法によ っては、B方式では11 年目(33 歳)でゼロ、C方式では 13 年目(35 歳)でゼロとなっ てしまう。 (3)成長率と利子率 このように、割引率が何%であるかはさほど問題ではなく、それに掛け合わせる「一 定の年間所得」に問題があるのだ。なぜなら、逸失所得は1965 年の事故発生時の賃金体 系をベースに計算されているのに対し、差し引かれる実際の所得は、ベースアップや昇 給などにより、年々成長してきているからだ。これでは被害者は、1965 年時点の賃金水 準に固定される限りにおいて、全く経済成長の恩恵を受けていないこととなる。これで は、割引率を実際よりも高い利率で計算する意味が全く無くなってしまうのである。よ って、適正な逸失利益は、事故当時の水準に固定しておく方法を捨てることで、初めて 算出可能となる。 しかし、将来の経済変数を正確に予測することは、およそ不可能だといってよい。た
損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を 現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合 だし、一般にその経済変数が、どのような要因によって決定されるかを考えることは可 能である。『賃金センサス』を用いて、平均的な人間の将来所得を考えると、その値は本 人の年齢と、日本の賃金体系という二つの要因によって決まる。日本の賃金体系は年齢 急的な性格を持っており、年齢によって賃金の多寡は影響を受けることとなる。この値 を求めるのは、『賃金センサス』によって明らかである。しかし、実際は経済成長によっ て、賃金体系が変化するので、25 歳の人が 10 年後に得る賃金は、現在の 35 歳の人より いくらか高くなる。以下では、前者を年齢要因、後者を成長要因とする。 このように考えると、将来所得の推計は、年齢要因・成長要因を考慮するかしないか により、形式的に4つのタイプに分類される。 ① 年齢要因・成長要因いずれも考慮しない ② 年齢要因のみを考慮 ③ 成長要因のみを考慮 ④ 年齢要因・成長要因両者を考慮 それでは、通常用いられる算定方式はどれに相当するのであろうか。まず、「一定の年間 所得」として「初任給」を用いるのは①のタイプに属する。この方法は、67 歳までの賃金 を初任給に固定するのであるから、最も単純で使いやすいが、非現実的すぎる。にもかか わらず、いままで採用されてきたのはなぜだろうか。被害者が死亡すれば、労働者として の成長もありえないこととなるのかもしれないが、一方で生活費を控除しながら、他方で 被害者の成長を考慮しないのは矛盾している。さらに、将来所得を5%の控除割合で割引な がら、他方で所得を就業時の初任給に固定しておくというのも論理的ではない。一般に経 済成長率と、利子率との間には正の相関関係が存在するから、5%という高利子で将来所得 を割引くのであれば、所得それ自体もそれ相応に成長すると考えなければ、論理一貫しな い。 他方、全年齢平均賃金というのは、23 歳から 67 歳までの労働者の現在の賃金を平均した ものであるから②のタイプであるといえる。この点、初任給を用いるより優れているとい える。しかし、逸失利益というものは将来の所得のことであるから、その本来の値は将来 にかけての成長率を考慮して推計されなければならない。確かに、賃金体系が将来どのよ うに変化するのかを各時点で推計しなければならないから、きわめて困難である。困難で はあるが、将来の所得が年齢要因よりも成長要因に大きく左右されるのであるから、成長 要因を抜きにしては正確な逸失利益を算定することはできない。 これまでも、逸失利益の算定について成長要因も考慮すべきとする主張がなかったわけ ではない。しかし、最高裁は平均賃金が将来にわたって上昇する蓋然性が高いことを認め るに足りる証拠はないとして退けている(最判S61.11.4)。これ以後、成長要因を考慮しな い手法が確立してしまったのである。 本判決によって、最高裁は中間利息の控除割合は民事法定利率である5%を採用すること を明言したが、控除割合を5%とするならば、この割引率に量的に対応するような所得成長
債権者に支払われる言わばコストであるが、このようなコストの支払いが可能であるため には、金銭の貸借が行われることによって、それが行われなかった場合よりも、全体とし て多くの財が付加的に生産されなければならない。債務者からすれば、利子というコスト を支払ってもなお財が残っていなければならないし、債権者からすれば資金を自分で利用 した場合よりも多くのものを利子として受け取ることができなければならないからである。 そして、この付加部分が大きければ大きいほど、言い換えれば金銭の貸借によってもたら される経済の成長部分が大きければ大きいほど、支払われる利子もまた大きくなるだろう。 実際、定期預金(一年物)の金利と GNP 成長率は、1979 年以降について正の相関関係に ある。 (4)私見 以上のように考察してくると、裁判所は前の誤りを修正するために、小手先の手法を用 いることで帳尻を合わせてきたが、近年のように法定利率と実質金利にあまりにも大きい 乖離が生じてしまうと、もはや小手先だけの修正に限界が生じてきてしまっているのであ る。確かに、逸失利益の問題はそもそも、当事者の主張立証に馴染まないのだろうけれど も、先述のように最高裁は蓋然性に基づき、当事者間に不公平のないように逸失利益を算 定するとしているのだから、民事法定利率を用いるとした以上、当事者の主張立証に用い、 成長要因を加味して算定すべきである。 ○参考文献 ・ 『交通死』(岩波新書) 二木雄策 ・ ジュリスト(No.1308)128 項 二木雄策 ・ 判例タイムズ(No.1063)64 項 二木雄策 ・ 判例タイムズ(No.1104)44 項 二木雄策 ・ 法学教室(No.304)166 項 青野博之 ・ 判例タイムズ(No.1196)43 項 前田陽一 ・ 判例セレクト2005(民法 5) 橋本佳幸 ・ 金融法務事情(No.1751)4 項 三上徹 ・ 法学セミナー(No.609)128 項 丸山絵美子 ・ 判例評論(No.566)189 項 齋藤修 ・ ジュリスト(No.1305)130 項 中村也寸志 ・ 法律のひろば(2006.3)55 項 山口聡也
損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を 現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合 ・ 金融・商事判例(No.1232)2 項 川井健 ・ NBL(No.814)44 項 川井健 ・ ジュリスト(No.1171)124 項 井上繁規/中路義彦/北澤章功 ・ 判例タイムズ(No.1088)60 項 大島眞一 ・ 法学セミナー(No.615)22 項 中村誠也/青野渉 ・ 『債権各論Ⅱ 不法行為』 平井宜雄 ・ 『注釈民法(10)Ⅰ』 ・ 『債権各論Ⅱ 不法行為法』 潮見佳男