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Microsoft Word - 第一東京弁護士会 総合法律研究所 知的所有権法部会 判例研究会資料 平成25年6月13日

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第一東京弁護士会 総合法律研究所 知的所有権法部会 判例研究会資料 平成 25 年 6 月 13 日 担当:弁護士 中川隆太郎 第 1 事案の概要 1. 当事者 原告: 米国カリフォルニア州において、教育分野のドキュメンタリー映画製作等を行って いる(平成 3 年 3 月に早稲田大学人間科学部人間健康科学科を卒業)。 被告: 早稲田大学名誉教授(平成 3 年当時、早稲田大学人間科学部教授を務めていた)。 2. 原告作品(本件映画) Ø 平成 13 年頃製作された、約 24 分間の映像及び音声からなる映像作品。 Ø 本件映画のうち、原告が、被告による翻案権及び同一性保持権侵害を主張する部分は、 20 分から 21 分 5 秒までの部分(「本件インタビュー部分」)であり、その内容は、次の とおりである。 ・ 画面には、C博士の姿が映されている。 ・ 原告の声で日本語のナレーションが入り(「原告ナレーション部分」)、その後、C博 士がこれに対し回答し(「博士回答部分」)、上記回答に合わせて、画面下部に字幕が 流れる(「本件字幕部分」)。 ・ ヒトゲノム計画(ヒトの全染色体の DNA を構成する塩基配列を解析するプロジェク ト)に関し、インタビュイーの C 博士が、原爆によりもたらされたデータを同計画 に利用したことを認め、肯定的に評価する場面。 原 告 ナ レ ー シ ョン部分 「アメリカが日本に原爆を投下した後、犠牲者たちがヒトゲノム計画に利用された事実に関して C博士のお考えをお聞きしました。」 博士回答部分 レジュメ 7 頁、判決文 PDF26 頁参照。 本件字幕部分 「そうですね、もちろん、原爆は多くの人命を奪った大変な悲劇でした。戦争であり、衝突があ ったのですから悲劇は避けられないものでしょう。悲劇であったことが今では多くの人々を救 い、薬を改善し、人と命を向上させ、世界中をより健康にする可能性を持ったゲノムプロジェク トの礎の一つになりえたことは素晴らしいことです。戦争という人類の悲劇の時代に剣から鋤 (新たな素晴らしいもの)を作りだすというのは歴史的にも見られるよい例だと思います。ネガ ティブなことが非常にポジティブなものになりつつあります。良いことだと思います。」 映画の著作物(原告作品)に関する翻案権侵害及び同一性保持権侵害がいずれも否定さ れ、被告書籍の出版差止請求、損害賠償請求及び謝罪広告請求がいずれも棄却された事 例―「いのちを語る」事件 東京地裁平成 25 年 3 月 25 日判決(平成 24 年(ワ)4766 号)

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第一東京弁護士会 総合法律研究所 知的所有権法部会 判例研究会資料 平成 25 年 6 月 13 日 3. 被告作品(本件書籍:「いのちを語る」) Ø 平成 21 年 5 月 31 日に発行された書籍で、被告と他 2 名との対談又は鼎談を収録した 部分と論述部分からなる。 Ø 問題となった記述は被告が執筆した部分(「ゲノム研究も戦争から」)の一部であり、 具体的な内容は以下の通り。 第 2 争点 1. 原告が本件映画の著作者、著作権者か。 →いずれも○ 2. 翻案権侵害の成否 →× 3. 同一性保持権侵害の成否 →× 4. 差止請求の可否 →判断せず 5. 損害賠償請求の可否・損害額 →判断せず 6. 謝罪広告の要否 →判断せず →争点 2 及び 3 のみ取り上げる。 そのなかで、彼女はC博士という、ノーベル賞クラスといわれている遺伝学の専門家にインタ ビューしています。 『広島と長崎の被爆者の、とくに血液データによる遺伝情報を、ヒトゲノムにつなげたというの は、どういうわけですか?』 C博士は、その理由を述べ、あとでこう言っています。 『おっしゃるように、アメリカの専門家による被爆者の遺伝子の調査はありました。日本人の被 爆者のデータをもとに、ヒトゲノム解析プログラムができたのも、そのとおりの事実です。私自 身は戦争には反対です。でも、戦争は起こってしまった。その悲劇はそれなりに受け止めるとと もに、戦争によってであっても、人間の未来のために使えるデータを得たとしたら、それはどん どん使って、未来を明るくして生きていけばいいんです。』 原告 ナレーション 部分 博士回答部分 本件字幕部分

+

本件インタビュー部分

t

20 分 00 秒 21 分 05 秒

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第一東京弁護士会 総合法律研究所 知的所有権法部会 判例研究会資料 平成 25 年 6 月 13 日 第 3 当事者の主張 1. 争点 2(翻案権侵害の成否)に関する主張 Ø 原告の主張 →判決文 5 頁以下参照。 Ø 被告の主張 →判決文 7 頁以下参照。 2. 争点 3(同一性保持権侵害の成否)に関する主張 Ø 原告の主張 →判決文 9 頁以下参照。 Ø 被告の主張 →判決文 10 頁以下参照。 第 4 裁判所の判断 1. 争点 2(翻案権侵害の成否) 著作権法は、著作権の対象である著作物の意義について、「思想又は感情を創作的に表 現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法 2 条 1 項 1 号)と規定しているから、同法による保護の対象となるためには、当該作品に 思想又は感情が創作的に表現されていること、すなわち当該作品が著作物に該当するこ とが必要であり、思想、感情若しくはアイデアなど表現それ自体ではないもの又は表現 上の創作性がないものについては、著作物に該当せず、同法による保護の対象とはなら ない。また、著作権侵害を主張するためには、当該作品全体に表現上の創作性があるの みでは足りず、侵害を主張する部分に思想又は感情の創作的表現があり、当該部分が著 作物性を有することが必要となる。 そこで、被告記述部分の作成が原告の翻案権侵害を構成するか否かを検討する前提と して、本件映画のうち、原告が翻案権侵害を主張する部分である、本件インタビュー部 分に著作物性が認められるか否かを検討する。 → 裁判所は、上記のように、最判平成 13 年 6 月 28 日(江差追分事件)以後主流となって いる濾過テスト(原告作品と被告作品の同一性を有する部分を抽出し、それが思想又は 感情の創作的な表現に当たるか否かを判断する手法)ではなく、二段階テスト(原告作 品の著作物性を認定してから、被告作品に原告作品の創作的表現が複製又は翻案されて いるかを判断する手法)に近い手法を規範として掲げ、これ以降、本件インタビュー部 分について、①原告ナレーション部分、②博士回答部分、③本件字幕部分の順に、二段 階テストにより翻案権侵害の成否を検討している。

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第一東京弁護士会 総合法律研究所 知的所有権法部会 判例研究会資料 平成 25 年 6 月 13 日 (1) 原告ナレーション部分 (a) 原告の主張①(原告ナレーション部分に関し、ヒトゲノム計画に利用された対象(利 用されたデータの種類)を特定していない点に特徴がある)について 確かに、本件において、原告が、被告記述部分において「血液データによる遺伝子情 報」との文言を付加したことが著作権等の侵害に当たる旨主張していることなどからは、 原告ナレーション部分において、ヒトゲノム計画に利用された対象を特定していないこ とに、原告の何らかの思想又は感情が込められていることがうかがわれる。 しかし、原告は、原告ナレーション部分において原告のどのような思想又は感情が表 現されているのか、すなわち、上記表現を選択したことが原告のどのような思想に基づ くものであり、原告ナレーション部分から、上記思想を感得することができるのかどう かなどの点に関し具体的に主張しておらず、同部分に表現されているという思想又は感 情の具体的内容は明らかではない。また、著作物性の検討における「思想又は感情」と は、創作的に表現されたものでなければならないとされるところ、「ヒトゲノム計画」が、 人のDNAの塩基配列(遺伝情報)をすべて明らかにする試みであり(甲 16)、その試料 等として、血液、組織、細胞、体液、排泄物及びこれらから抽出した人の体の一部並び に提供者の診療情報、その他研究に用いられる情報が挙げられている(乙 2)ことからす れば、ヒトゲノム計画に利用される対象試料が何であるかを特定し、又はこれを特定し ないことにより、学術的に何らかの違いが生じるものとは解されず、原告ナレーション 部分から、何らかの思想又は感情の表現を感得することは困難である。 → ここでは、原告ナレーション部分における原告の表現上の選択につき、「何らかの思想又 は感情が込められていることはうかがわれるが、その具体的内容が不明」とされている。 その上で、(その表現上の選択に学術的な意味合いがないことも認定した上で)原告ナレ ーション部分から「何らかの思想又は感情の表現を感得することは困難」と判断されて いる。 (b) 原告の主張②(C博士が米国政府機関所管の組織である国立衛生研究所(NIH)に 所属する、ノーベル賞クラスともいわれる遺伝子学の研究者であることから、同博士に、 ヒトゲノム計画に利用された原爆被害者のデータの種類を特定した質問をするかどうかに は特別な意味がある)について アメリカが日本に原爆を投下した後、犠牲者たちがヒトゲノム計画に利用された事実 に関してC博士のお考えをお聞きしました。

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第一東京弁護士会 総合法律研究所 知的所有権法部会 判例研究会資料 平成 25 年 6 月 13 日 原告ナレーション部分が、前記のとおりの短く簡潔な表現であることからすれば、原告 の主張するような、背景事情を前提とした原告ナレーション部分の意味を、原告ナレー ション部分から表現として感得することはできないというべきである。加えて、原告ナ レーション部分に原告の思想又は感情が表現されているとみるとしても、これが創作的 に表現されているとみることは困難である。 → 短く簡潔な表現ゆえ、背景事情をふまえた意味を表現として感得できないとし、原告の 思想又は感情が表現されているとしても創作性なし、と判断した。 (2) 博士回答部分 同部分におけるC博士の発言は、原告の脚本等に基づくものではなく、同博士の考えに 基づくものであると認められる。なお、C博士の発言は、原告の質問に対する回答とし てされたものではあるが、原告の質問内容は、「アメリカが日本に原爆を投下した後、犠 牲者たちがヒトゲノム計画に利用された事実についてC博士のお考えをお聞きした」と いう抽象的かつ概略的なものであって、その回答内容を限定するようなものではない。 そうすると、博士回答部分の内容に、思想又は感情を創作的に表現した部分が存在する としても、上記創作性は、C博士に帰属するものであり、原告に帰属するものではない というべきである。そして、博士回答部分は、同博士の一連の発言を録画したものであ り、C博士が同部分記載の発言をしたという事実をそのまま伝達するものであるから、 伝達の仕方等において原告の思想又は感情が表現されているとみることもできず、原告 の思想又は感情を創作的に表現したものに当たらない。 → C 博士の発言部分につき、①博士の発言内容の創作性は原告に帰属しない、②録画して そのまま伝達する点には思想又は感情が表現されていない、として著作物性否定。 (a)原告の主張(C博士との質疑応答から、本件映画のテーマにふさわしい部分のみを抜き 出し、本件映画の一部とした点に原告の思想又は感情の表現がある)について 前記 2(1)のとおり、著作権侵害を主張するためには、侵害を主張する部分に思想又は感 情の創作的表現があることが必要となると解されるのであって、本件インタビュー部分 の制作過程において、C博士との質疑応答という素材からどの部分を切り出すかという 点に、原告の思想又は感情が表出されているとしても、本件インタビュー部分のみから、 上記思想又は感情を感得することはできないものというべきである。 なお、原告の主張は、本件映画の構成として、20:00(20 分)から 21:05(21 分 5 秒) までの部分に本件インタビュー部分を組み込んだことを著作物性の根拠として主張する

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第一東京弁護士会 総合法律研究所 知的所有権法部会 判例研究会資料 平成 25 年 6 月 13 日 ものであるとも解される。しかし、前記 3(1)のとおり、著作権侵害を主張するためには、 当該作品全体に著作物性があるのみでは足りず、侵害を主張する部分が著作物に該当す ることが必要となるところ、本件映画の構成に原告の思想又は感情の創作的表現があり、 著作物性があるとしても、これを、本件インタビュー部分の著作物性の根拠とすること はできない。 → 映像素材から一部を抜き出した点に思想又は感情が表出されているとしても、抜き出さ れた部分だけを見た場合に、その思想又は感情を感得することはできないと判断。 (3) 本件字幕部分 (a) 規範定立部分 本件字幕部分は、博士回答部分を原文として、これを日本語に翻訳したものと認めら れるから、その内容に係る表現は、博士回答部分に由来するものであり、本件字幕部分 の創作的表現であるとは認められない。そうすると、本件字幕部分については、博士回 答部分の翻訳に当たり、訳語及び訳文の選択において個性の表出の余地があるにとどま り、このような個性の表出が認められる限りにおいて、創作的表現があるものとして著 作物性が認められるにすぎないというべきである。したがって、訳語及び訳文の選択の 範囲が限定され、個性の表出の余地がないような場合には、そもそも当該表現は原告の 創作的表現であるとは認められない。また、被告記述部分に、本件字幕部分と表現にお いて共通する部分があるとしても、同共通部分が、博士回答部分の内容に由来するもの であるなど、原告が創作的に表現したものでない部分に係る場合には、被告記述部分は、 本件字幕部分の創作的表現を利用したことにならず、本件字幕部分の翻案権を侵害した と評価することはできないということになる。 → 翻訳による創作的表現について「訳語及び訳文の選択」に限定し、両作品の共通部分が、 博士回答部分の内容に由来するなど、翻訳した原告の創作的表現でない部分である場合 は翻案権侵害とならないと判示(なお、最判平成 13 年 6 月 28 日(江差追分事件)の引 用を含め、翻案権侵害に関する一般論の判示はない)。 (b) あてはめ Ø 著作物性(思想又は感情の創作的表現) 本件字幕部分及び博士回答部分の内容は別紙 1 のとおりであり、例えば、「戦争という

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第一東京弁護士会 総合法律研究所 知的所有権法部会 判例研究会資料 平成 25 年 6 月 13 日

人類の悲劇の時代に」から「よい例だと思います。」までの部分についてみると、「it’s a sort of (a) classical example」を「歴史的にもみられるよい例だと思います。」と 訳すなど、直訳的表現ではなく独自の工夫といえる点が存在し、また、「using it developing something new, and something wonderful」の部分を「making plows out of sword」の訳部分に組み込み、「剣から鋤(新たな素晴らしいもの)を作り出す」と訳し ている点についても、表現上の工夫を見出すことができる。また、その他の部分につい ても、必ずしも博士回答部分の表現をそのまま訳したものではなく、日本語としての分 かりやすさ等を考慮して語順を入れ換えた部分などがみられるのであって、本件字幕部 分については、訳語及び訳文の選択につき、原告の創作的表現であるということのでき る点が存在するものと認められる。 → 訳語、訳文の選択に表現上の工夫があり、創作的表現と評価できる点があると判断。 Ø (参考)博士回答部分、本件字幕部分、及び被告論述部分 博士回答部分(英文)

Well, of course, the atomic bomb was a great tragedy, and killed a lot of people. I think ever there was a war, that’s sorts of conflicts that tragedy was inevitable. And so it actually was quite wonderful that what started out something irregular tragedy is now based in part for the genome project which really has the capacity to help tremendous number of people, to improve medicine, to improve life and people, to make health better all around the world. I think it’s a sort of classical example making plows out of sword what left residual terrible period and history using it developing something new, and something wonderful. It was very negative, but becoming very positive. I think that’s a good thing.

本件字幕部分 被告論述部分(対応する部分) そうですね,もちろん,原爆は多くの人命を奪っ た大変な悲劇でした。戦争であり,衝突があった のですから悲劇は避けられないものでしょう。悲 劇であったことが今では多くの人々を救い,薬を 改善し,人と命を向上させ,世界中をより健康に する可能性を持ったゲノムプロジェクトの礎の 一つになりえたことは素晴らしいことです。戦争 という人類の悲劇の時代に剣から鋤(新たな素晴 らしいもの)を作りだすというのは歴史的にも見 られるよい例だと思います。ネガティブなことが 非常にポジティブなものになりつつあります。良 いことだと思います。 おっしゃるように、アメリカの専門家による被爆者 の遺伝子の調査はありました。日本人の被爆者のデ ータをもとに、ヒトゲノム解析プログラムができた のも、そのとおりの事実です。私自身は戦争には反 対です。でも、戦争は起こってしまった。その悲劇 はそれなりに受け止めるとともに、戦争によってで あっても、人間の未来のために使えるデータを得た としたら、それはどんどん使って、未来を明るくし て生きていけばいいんです。

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第一東京弁護士会 総合法律研究所 知的所有権法部会 判例研究会資料 平成 25 年 6 月 13 日 Ø 本件字幕部分に関する翻案権侵害の成否の判断 本件字幕部分と被告記述部分を対比すると、両者は、その、訳文としての具体的表現 において、大きく異なるものであるということができる。したがって、上記(2)エでみた、 訳語及び訳文の選択における原告の表現上の工夫を、被告記述部分から感得することは できず、両部分は、その本質的特徴を異にするものであるというべきである。 この点に関し、原告は、上記部分の表現上の本質的特徴は、C博士が原爆の被害者か ら得られた何らかのデータがヒトゲノム計画の基礎データとされたことを認めたこと及 び同博士がヒトゲノム計画の研究について肯定的態度であることにあり、被告記述部分 中の上記部分からも、上記本質的特徴を感得することができると主張する。しかし、上 記特徴は、博士回答部分の内容に由来するものであるところ、上記(2)ウのとおり、博士 回答部分の内容における創作性は、C博士に帰属するものであって原告に帰属するもの ではないから、被告記述部分が上記の点において本件字幕部分と共通しているとしても、 本件字幕部分の、原告に係る創作的表現を利用したことにはならない。 したがって、被告記述部分の作成は、本件字幕部分に係る原告の翻案権を侵害するも のに当たらない。 → 原告作品の創作的表現(訳語及び訳文の選択における表現上の工夫)を被告作品から感 得することができず、本質的特徴を異にする(原告主張の共通点は博士の回答内容に由 来するもの)として翻案権侵害を否定。 3. 争点 3(同一性保持権侵害) (1) 規範定立部分 著作権法 20 条に規定する著作者がその著作物の同一性を保持する権利を侵害する行為 とは、他人の著作物における表現上の本質的な特徴を維持しつつその表現に改変を加え る行為をいい、他人の著作物を素材として利用しても、その表現上の本質的な特徴を感 得させないような態様においてこれを利用する行為は、原著作者の同一性保持権を侵害 しないと解すべきである。 → 引用されていないが、最判昭和 55 年 3 月 28 日(パロディ・モンタージュ事件)、最判平 成 10 年 7 月 17 日(雑誌諸君!事件)にて示された規範(「表現形式上の本質的な特徴を 感得させないような態様においてこれを利用する行為は、原著作物の同一性保持権を侵 害しない」)とよく似た表現が用いられている(上記最判では「表現形式上の本質的特徴」 であったのに対し、本判決は「表現上の本質的特徴」としている)。

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第一東京弁護士会 総合法律研究所 知的所有権法部会 判例研究会資料 平成 25 年 6 月 13 日 (2) あてはめ 争点(2)に関する当裁判所の判断のとおり、本件インタビュー部分のうち、本件字幕部 分以外の部分については、著作物性が認められないから、この部分につき、同一性保持 権侵害は問題となり得ない。また、本件字幕部分についても、被告記述部分が本件字幕 部分と訳文としての表現において大きく異なるものである以上、被告記述部分が本件字 幕部分の表現上の本質的特徴を維持しているものということができないことは、争点(2) に関する当裁判所の判断でみたとおりである。 したがって、被告記述部分の作成は、原告の同一性保持権を侵害する行為に当たらな い。 → 翻案権侵害に関する判断と合致。 第 5 若干の検討 Ø 濾過テストと二段階テスト ・ 請求認容の場合と請求棄却の場合 Ø 「思想又は感情」の具体的内容 Ø 翻訳の創作性(翻訳家の権利範囲) ・ 最判平成 9 年 7 月 17 日(ポパイ・ネクタイ事件) Ø 同一性保持権侵害を否定する場合の判断基準 ・ 最判昭和 55 年 3 月 28 日(パロディ・モンタージュ事件) ・ 最判平成 10 年 7 月 17 日(雑誌諸君!事件) ・ 最判平成 13 年 6 月 28 日(江差追分事件) 以 上

参照

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〔追記〕  校正の段階で、山﨑俊恵「刑事訴訟法判例研究」

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次に、 (4)の既設の施設に対する考え方でございますが、大きく2つに分かれておりま

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