は じ め に
継 続 的 供 給 哭 約 の 中 途 解 約
9 9 , 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 3 9 9 9 ,
' ヽ
9 9 9 9
﹄ 判 例 批 評 ﹃ 一
9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9
‑ 9 9 9
' ,
ー 生 堂 東 京 販 売 事 件 控 訴 審 判 決
平成七年六月︑学内関係者だけでなく広く外部の実務家等に もご参加を頂き︑本学部における共同研究ないし学際研究の1
層の進展を目指して︑本学の民巾法関係の者を中心に︑民事判 例研究会が発足した︒本稿は︑その第一回研究会にて田中と士 佐が行った共同報告を基礎にしたものである︒二人の事前の打
ち合わせの結果︑報岩の素材として︑前出研究会の趣旨に鑑み︑
複数の法領域を交差する巾案であり︑かつ新聞等で社会的耳目
一 七
を集めた点にも着目し︑前記判決︵東京高裁平成六年九月一四
H
判決︑判例時報一五0
七号四三貞︶を選び︑民法と独禁法のそれぞれの観点から検討した︒この共同報告に大幅に加筆修正
を加え︑各担当者の関心にしたがってまとめたものが以下の評
釈である︒研究会において多くの胄屯なご意見やご指摘を受け︑
大いに参考にさせて頂いた︒この場を借りて感謝したい︒
今後とも︑共同研究の実を上げ︑本学部の研究教育水準の向
上に資することを期して研究会活動を続けてゆきたいと考えて
民 事 判 例 研 究 会
15‑‑4~689 (香法'96)
'""'"'""'"""""""""'"""""'"''‑‑‑‑
ての説明︵対面販売︶等を義務付ける条項が存在した︒本件特 い
る︒
また
︑ そこでの報告・討議等を通じた活動成果の一端を 示す意味で︑判例批評を引ぎ続き随時︑香川法学に掲載してゆ きたいと考えている︒本稿を︑このような当研究会の活動を出
す︑ささやかな第一歩ともお受け止め頂けるならば炉いである︒
事実の概要 資生堂化粧品を専門に取り扱う販売会社である
Y
京販売
1 1被告︑控訴人︶は︑昭和三七年に︑化粧品の小売販売 等を業とする
x
︵貨士喜本店1 1駆告︑被控訴人︶と︑①
YはX
の注文に韮づいて資生堂化粧品を継続して供給する︑③本件特 約店斐約は兜約の日から一年間有効とし︑当事者双方に異議の
約店契約は毎年自動更新され︑
︵資
生常
東
ないときはさらに一年間自動的に更新され︑以後も同様とする︑
③契約の有効期間中でも︑両背事者はそれぞれ文内による三〇
日前の
f
告をもって中途解約できる等を内容とする特約店契約 を締結した︒本件特約店斐約には︑前記の自動更新条項等のほ
か︑資生堂化粧品の専用コーナーの設置︑Yの主催する美容セ
ミナーの受講︑顧客管理のための台板の作成︑商品販売に際し
Xは二八年間にわたってY
から
資生堂化粧品の供給を受けてきた︒
Y
は︑品質本位主義と消費者
E 義という資生堂の社是を実現
た方法により販売することなどを取り決めた︒ するために対面販売が不可欠と若え︑各チェインストアにその実行を依頼していたが︑た
︒昭
和六
一
1年
未頃
︑
Xは︑昭和六
0
年二月頃から︑商品名 と価格︵定価の二割引︶と商品コードを記載しただけのカタロ グを事業所等の特定の職場に配布して電話やファクシミリでま とめて注文を受けて配達するという方法︵職域販売︶をとって おり︑顧客と対面しての説明︑相談等は全く
f
定していなかっY
がこのことに気付きカタログから資牛 堂化粧品を削除するように中し人れ︑昭和六て年八月頃発行の
カタログからは削除された︒
ところが︑平成元年二月頃︑資生 堂化粧品のみを掲載したカタログを別冊として出していること が明らかになったため︑同年四月︱二日付の内面で︑販売方法 を是正するよう勧告し︑折衝の結果︑同年九月一九日付合意内 で︑カタログに今後は掲載しないこと︑これまで発行されたカ タログに韮づく販売はしないこと︑違反したときは本件特約店 契約を解除できること︑今後︑本件特約店契約の条項に適合し
その
後︑
X
は ︑
売を続けていたが︑
カタログから資生堂化粧品を削除して職域販
カタログ販売を懸念したYの︑事務所から
店舗への配達先変更の中し出に応じないこと︑従前の販売方法
を変更する態度を全く示さなかったこと︑
カタログからの削除 を取り決めた後も出荷駐は変わらず︑宅配している事実も明ら
一 八
15 ‑4 ‑690 (香法'96)
継続的供給兜約の中途解約(民事判例研究会)
本件特約店契約は継続的供給契約であり︑翌約条項中に門市 者の一方の意思により解約できる旨の定めがあっても︑信義則
上︑やむを得ない事由がない限り︑
販売方法の約定は︑合理的な理由が認められ︑
るほど合理的なものではなく︑ の引渡請求を認容した︒
かつ︑他の取引
先小売業者に対しても同等の条件が課せられている場合には︑
当然許されることであり︑約定に反する販売方法を採る小化榮 者との間の継続的供給兜約を解消することも是認される︒しか し ︑
Yt
張の対面販売という基本理念は︑本件解除を是認し得
また︑対面販売と顧客台板作成 一方的解約は許されない︒
やむを得ない事由が必要である︒
一 九
約についても約定によって解除権を留保することができる︒し
かし︑本件特約店契約の兜約内容などからすれば︑約定解除権
の行使には︑取引関係を継続しがたいような不信行為の存在等
①本件特約店兜約は継続的供給哭約であるが︑このような招 要旨のみを紹介すれば︑次のようである︒ 原判決取消︒
X
の請
求棄
却︒
" リ
2キヽ 旨 除は信義則に反し︑あるいは権利の濫用であるとしている︒ 四七四号二五頁︶は︑おおよそ次のように述べて︑Xの化粧品約店契約は解除されたと
t
張し
︑
X
は ︑
再抗弁として︑本件解 第一審判決︵東京地裁平成五年九月二七
H
判決
︑
判例時報文した化粧品の引渡を求めている︒Y
は ︑
抗弁
とし
て︑
本件特 二年五月一五日に調在を打ち切っている︒に︑平成二年五月一六日から平成三年六月一五日までの間に注
引委
員会
は︑
独占禁止法違反の巾実は認められないとして平成
等を
理由
に︑
独占禁止法に違反するとして中告したが︑公正取
より
一割低い価格で販売していることを理由とするものである 前記喫約解除と出荷停止は︑Xが資生常化粧品を希沼小じ冗価格
なお
︑
X
は ︑
平成二年五月□口日に公正取引否員会に対し︑ 五月一五日以降︑出荷を停止した︒ かになったことなどから︑Yは︑販売方法を変更する意息がな
いものと判断し︑平成二年四月二五日付で解除通知をし︑同年 は︑結果的に小売価格の維持の効果を生じさせるものであり︑
合理的な理由なしにその販売方法を制限し︑価格維持を図るも
のとして︑独古禁止法の法意にもとる
能性も大いに存する︒
n I
した
がっ
て︑
Yのした解除の息思表ぷは効力を生じない︒地位
の確認については︑給付訴訟を認めれば十分であり︑確認の利
益のないものとして︑却ドする︒
Y
が控
訴し
た︒
Xは︑本件特約店契約に且づき︑資生常化粧
品の引渡しを受けるべき地位にあることの確認を求めるととも
15 4 ‑691 (香法'96)
するようなものでない限り出‑然許される︒
であ
り︑
そして︑合理的な理 由があるというためには︑中i該メーカーが必明と判断し︑また︑
一般的に苔えてもそれなりに合理的なものであればよい︒
ゞYカ
採用した対面販化の力法もそれなりに合理的なものである︒現
また︑劇客管理も
Y
が求めるものとは異なるものであ このような販売方法は︑対面販売を定めた本件特約庄 契約の債務不履行を構成する︒資生常化粧品のかなりの部分は︑
現実には対面販売の方法によらずに販売されているとしても︑
店頭販売の場合は︑顧客の求めに応じ︑随時説明する態勢がと
られているのに対し︑ る
から
︑
X
の職域販売は︑莉品説明を全く
f
定し ていない点で︑本件特約店兜約が
f
定している販売方法とは本
③X
が行っていた職域阪売とは︑実質は通い販化に近いもの
なければならない︒ として小売業者の販売価格を制限している等の事情が認められ 行要求を拒否し︑従前の販売方法を変える意田心を持たなかった
⑤二八年間にわたり続いた継続的供給哭約を解消するもので
あるうえ︑それがX
にりえる影闘は名大なものであるとしても︑
本件特約店兜約解梢の経緯︑ことに佑頼関係の破壊については︑
Y
の側の合意事項の不囮行も大さな厭囚となっていたことなど からすれば︑契約の解泊が→中ーであるとか︑契約関係ーの信義
⑥対面販売の遵守を要求することは︑同時に価格安定の効束
を有するものであるが︑
それだけでは独占禁止法違反等の間題
は生じない︒問題となるためには︑
そのような販売方法を手段
⑦本件では︑X
以外にも値引き販売しているチェインストア が存在していたにもかかわらず︑それらの比に対しては契約の 解除等の措附は取られていないこと︑
X
が値引き販売をしてい
約卜の債務不腹行となる︒則に反するとはいえない︒ したがって︑対面販完等の販心几
J J i L
のト固行は︑
本件特約店閉
とか︑その遵守を要求することが非合刑的であるとはいえない︒ とまでは認めがたく︑
対訓販化が仝くその必要性を失っている ず販売されているか
対面販化がまった<釘名無実化している 実には多くの資生常チェインストアで︑
対面販化の方法によら
であり︑契約を解除するにつきやむを得ない巾由がある︒ 小腹行は︑継続的供給兜約じのい頼関係を秤しく破壊するもの Xことからすれば︑
の本件特約店契約に定められた販売方払の
ても同等の条件が課されている場合には︑
それが強化法規に反
衝による約束後も︑違反を継続し︑
Y
の再
ーー
ーに
わた
る約
束の
実
合理的な理由が認められ︑
か
~)
他の取引先等小光業行に対しヽ
④本件特約店契約の解除にギる経緯をみても︑改善勧告︑折
②販売方法に関する約定は︑当該商品の適切な販売のための
質的な違いがある︒
︱ 二
0
15‑‑4 692 (香法 '96)
継続的供給契約の中途解約(民事判例研究会)
ールを供給する契約︑製造業者への原材料供給哭約︑製追業者 3 は たことを知っていたにもかかわらず︑直ちに出荷倅止等の措附
とら
ず︑
カタログによる販売方法の是JEを求め︑善処を要求
していたこと︑是
を求める内容は販売方法を守ってほしいとl E
いうものであり︑値引き販売を収り上げていないこと︑公正取
引委員会は︑調在の結果︑Y
に違反巾実なしとの結論に達して
いることなどを総合すれば︑Y
が︑対面販化等を
f
段として価
格を制限しているとまでは認めがたい︒
したがって︑本件特約店斐約の解除は有効であり︑解除の意 思表ホの到達後三
0
日を経過した平成二年五月二五日頃終了し
たというべきであり︑本訴請求は理由がない︒
評釈ー︵民法からのアプローチ︶
(l
)
一本控訴審判決では︑①において︑本件特約店兜約は継続 的供給哭約であるとされているが︑継続的供給兜約という概念
自体明確なものではない︒
標準
的な
定義
は︑
﹁じ
冗
t
が一定または不定の期間にわたって一 定の種類・品質のものを一定の代金または一定の標準で定めら
れる代金で継続的に供給することを約する兜約﹂であり︑ガス・
水道・電気の供給斐約︑新聞・牛乳・雑誌の配給を受ける契約︑
夏期の間︑毎日一定讃の︑或は買
E の濡要に応じた址の氷やビ
れること かが重要である︒
(2
)
と販売業者との契約︑一手販売斐約などが具体例とされている︒
そして︑基本哭約の
L
に繰り返し締結される個別的売買斐約は︑注文品の品名︑数騒︑価格︑納期︑納人場所などがその都度決 定されるので︑単一の契約があるとはみることができないとさ
れ︑継続的供給哭約とは区別されている︒
しかし︑依然として︑継続的供給哭約の概念は曖昧であると されている以
t
︑本件特約店哭約が継続的供給兜約であるかど うかよりも︑本控訴審判決が︑本件特約店契約を継続的供給哭
約とすることによって︑
どのような結果を導こうとしているの この点について︑本控訴審判決は︑継続的供給契約について
も﹁約定によって解除権を留保することができることはいうま
でもない﹂としながら︑﹁本件特約店斐約は︑一年という期限の
定めのある哭約であるとはいえ︑自動更新条項があり︑通常︑
相当の期間にわたって存続することが予定されているうえ︑現 実にも哭約期間がある程度長期に及ぶのが通例であると考えら 提に事業計画を
L I L
てていると考えられること︑ ︵被控訴人との兜約も二八年間という長期間に達して
いる︒︶︑各小売店の側も︑そのような長期間の継続的取引を前
また︑本件特約
店哭
約は
︑ それに付随して資生常化粗品専用の販売コーナーの 設憤や︑顧客管理のための台帳の作成︑備え付けが義務付けら
15~"" 4 ‑"69:"3 (香法'96)
される﹂としている︒ のと思われる︒
第一審判決も﹁本件特約店哭約は
いわゆる継続的供給招約
るにとどめたい︒ りにも大きすぎるので︑
ここでは︑占典的斐約法の限料との関
れるなど︑商品の供給を受ける側において︑ある程度の資本投
F
と︑取引態勢の整備が必要とされるものであり︑短期間での 取引打ち切りや︑恣意的な契約の解泊は︑小売店の側に
f
期せぬ多大な担害を及ぼすおそれがあること︑なお︑前記解約条項 前記のような約定解除権の行使がまったく自由であるとは解し
がたく︑布解除権の行使には︑取引関係を継続しがたいような 不信行為の存在等やむを得ない事由が必要であると解するのが 要するに︑本件特約店兜約が継続的供給招約として持つ特殊
性を指摘することによって︑約定解除権を行使するにはぶむ を得ない事由﹂が必要であるという結論を導こうとしているも
等やむを得ない事巾がない限り︑ であるところ︑このような契約においては︑たとえ契約条項中に当事者の一方の意思により解約ができる旨の定めがあっても︑信義則
t
︑梧しい事情の変更や相手方の甚だしい不信行為
一方的解約は許されないと解 継続的供給哭約における拠約の解除について︑﹁やむを得
ない事由﹂を必要とすることにそれなりの合理性があることは
理解できるが︑本件で行使されている解除権は﹁‑三
1 0
日前の
f
告をもって中途解約できる﹂という約定に基づくものである︒
そこ
で︑
まず
︑
このような約定が有効であるかどうかが問題に
なるが︑本控訴審判決は︑先に引用したように︑約定解除権の
有効性を認めている︒
しか
し︑
そうだとすれば︑判事者はぶ
むを得ない事由﹂が必要であるという限定を付けず︑一・パ
0
日の
告知期間を必要としているだけなのに︑
ロ
なぜ︑裁判所は︑
さら
者から見て必ずしも合理的ではないとしても︑なおャ孔弔者の閃
約自由として許されるのではないかが問題になる︒とはいえ︑
契約自由とその制限というテーマは︑本稿で取り扱うにはあま 係で本控訴審判決が提供するいくつかの問題を︑簡単に検討す
古典的契約法の限界については︑それを強調する立場か
ら次のような見解が表明されている︒﹁古典的兜約法を支える広
い意味でのリベラリズムは︑
その幅広い射程のなかで︑何を現
代において維持すべきかが︑改めて問われている︒さらに︑珪 相当である﹂としている︒に限定を付けることができるのかが間姐になる︒つまり︑第
どか
らす
れば
︑一
;
1
0
日間の解約予告期間を設けているとはいえ に基づく解除が行われるのは極めて例外的な事態であることな15‑‑ 4 694 (香法'96)
継続的供給契約の中途解約(民事判例研究会)
盤となる思想の相対化により︑古典的哭約法のパラダイム自体
も︑理念としての正当性が疑われるに至る︒こうして︑新たな
契約法のパラダイムの構想が︑考慮に値するテーマとして登場
することになる﹂とし︑このような観点から﹁現代哭約法がか
かえるジレンマは︑古典的契約法としての性格を濃厚に残す実
ることができる︒そして︑ 定契約法と契約実践に根ざす内在的契約規範との相剋ととらえ
一般条項︵特に似義則︶の活用は︑
内在的規範の実定法への吸上げと理解することができ﹂︑このよ
うにして獲得ざれた﹁新たな契約規範は﹃関係的契約規範﹂と
(8 )
して性格づけられる﹂とする︒
このような立場から︑信義則を通じて吸い上げられた関係的
契約規範が検討され︑まず︑﹁戦後の信義則論においては︑哭約
法における信義則の機能をわが国の裁判例の実態に則した形で
論ずるための理論的枠組みが欠けていた﹂﹁以卜のような戦後の
信義則論の欠陥の背景にあるのは︑伯義則の活用に積極的な位
眉づけを与えるためには︑戦前の理論がそうであったように︑
古典的剪約モデルから離れる必要があるという事実である﹂と
した
うえ
で︑
責任 の拡 大﹄
わが国の契約法の現実に則して論じるために伯義 則をめぐる裁判例の検討を行い︑︳特に一九六
0
年前後以降︑それまでにみられなかった新たな傾向の裁判例が登場する︒﹃兜約
(9
)
の潮流である﹂とする︒その類刑の第五として挙 げられているのが紛大約の史新拒絶や解約︑あるいは解除にさいして︑あくまで契約の継続を柑屯し︑正当な理由なしに哭約い
る﹂
とし
︑
関係を解消することを認めないもの﹂であり︑﹁最近の裁判例の
展開により︑商人間の取引で︑しかも吏新拒絶を許す契約条項
がある場合にも︑その権利行使を制限するというものが現れて
なかでも注
H
されるものとして︑札幌高決昭六二年九月三
0
日︑判例時報一.一五八号七六貞が挙げられ︑この決定を﹁もはや伝統的な継続的債権関係論の射程の及ぶ問題では
なく︑異質な流れが新たに現れているとみるべきである︒すな
一定の知約関係のもとで︑強力な心加続性の原理﹄が認
められているということができる﹂とする
そこに付けられた注では︑﹁原審決定は︑﹃当事者の意思﹄を
強調し︑正反対の結論を導いている﹂とし︑高裁﹁決定を伝統
的法理で理解する
' Jとは不可能であろう︒この決定を評釈した
飯島教授は︑何とか伝統的な枠組みに押し込めて理解しようと
四苦八苦したあげく︑成功せず︑﹃﹁異例﹂な決定と言わざるを
えない﹄と匙を投げている︐とする︒
本控訴審判決は︑結果的には契約の解除を認めているが︵④︶︑
明文の喫約条項にはない﹁やむを得ない事由﹂を必要とした点
から︑おそらく﹁契約の更新拒絶や解約︑あるいは解除にさい
して︑あくまで契約の継続を棺
し︑正当な理由なしに哭約関
f R
わち
︑
15‑4 ‑‑‑695 (香法'96)
することを前提に︑当事者の使用した表ホを︑当事者のいずれ
の理解に従って解釈すべきかを規範的に判断し︑ て当事者の意思を無視するものではなく︑
( 1 2 )
係を解消することを認めないもの﹂のひとつとして︑⑰当事者の
意思
﹂ ではなく︑判事者が形成した﹁関係﹂そのものを根拠に 探り出された︑古典的駆約法とは異質な内在的規範︑ここでは
﹁継続性の原理﹂が適用されたものと評価されるであろう︒
しかし︑本控訴審判決では︑﹁一
‑ ‑ 0
日前の
f
告をもって中途解 しないという
Y
の理解が使約の内容なのか︑それとも︑そのよ うな主張を争う
X
の理解が契約の内容なのかが間坦になってい
く ︑" '
るのである︒いわゆる規範的解釈の場面である︒先に引用した ように︑招約の内容
f
定あるいは前提されている喝市者の関
係やあり方︑解約条項の連用のあり方など︑諸巾伯を考肉して︑
XとY
のどちらの理解が優先するかを︑規範的に判断している
ので
ある
︒
このような契約条項の意味内容を確定する規範的解釈や︑
X ' J
らに︑当事者の意思が存在しない場合に︑任意法規や取引間行
6/
を参考にして裁判所が契約を補充する補充的解択ば︑たしかに 当事者の現実の意思を基礎にするものではない︒
しかし︑決し また︑当事者
むしろ︑突約が存在
約できる﹂という明文の兜約条項が
ー ︶
‑l
であったとは認定されていない︒ぶ>むを得ない巾由﹂を必要と
そのままふ孔旧者の慈思
L
の表ぷがない部分について補充をしているのであり︑当事者の
行為が社会的な行為である以上︑
判然の前提であり︑
また︑当事者がすべてを事前 に決定することが不
l l J 能である以上︑古典的招約法においても
それと異質なものではない︒
︑
︶ ず
︑
ヵ ォ
▼ ら 一
なお﹁やむを得ない事由しを必要とする︑
そし
て︑
その際に哭約締結後の事伯までも顧附するというのであれば︑
﹁当事者の意思﹂を重視する古典的契約法とは異質な原理が働
︑ ゞぃ ︱
いている
能性が翡くなる︒さらに進んで︑たとえば︑﹁価格破
n I
壊﹂︑流通の合坪化を促進する︑あるいは経済的弱者を保護する
という政策的判断を人れて一やむを得ない事由﹂の必要性を検 討することは︑すくなくとも占典的招約法の立場からは許され
ないことになろう︒
ところが本控訴審判決には︑﹁当事者の意思﹂に関係なく約定
解除権の行使を制限する可能性をポす部分がある︒つまり︑
X
年間にわたり続いた継続的供給斐約であること︑ が再抗弁として︑E
張した約定解除権の行使の信義則違反︑権利 の濫用について︑結論には影評しなかったものの︑⑤で︑二八
それがXに仔
える影評が多大なものであることなどが顧慮されている︒これ らは︑当事者が﹁やむを得ない事由﹂は不要であるという意思
四もちろん︑背事者の現実の意思が不要としているにもか
︱二 四
15 ‑ 4・ ・696 (香法'96)
継続的供給契約の中途解約(民事判例研究会)
しかし︑このような﹁←丑串者の意思﹂を制限する形での伯義 このことは︑本件と類似した事実関係に関する︑E
化粧品販売事件判決︵東東地判平成六年七月口八日︑判例時
報一五
00
号一え只︶ではより明確である︒ここでは︑﹁継続的供
給哭約であることを考慮しても︑右規定ロ︱
: o
日以卜の告期f
間をおいて文手げにより解約でさる︺により本件特約店知約を解
約するにはそれを正当とすべき事由ないしはやむを得ない事由
としたうえで︑田本件は特に必要ではない﹂([
解約の目的が花王化粧品の再販売価格を維持するにあったこ と︑②原告にはこれまで本件特約店楔約に違反し被告との信頼 関係を破壊するような行為はなかったこと︑③本件特約店契約
の解約が原告に及ぽす影響は大なるものがあること等から︑権
利の濫用であるとしている︒解約に﹁やむを得ない事由﹂は必 要でないとしたうえでの判断であるから︑判巾者の意思に反し
て裁判所が介人していることは明白であるし︑解約の目的が違
法であること︵①︶︑解約が及ぼす影評が大きいこと︵③︶など︑
︑1
,
‑2
︑
‑
兜約締結後の事情が顧慮されているC Jとを示唆している︒ を持っていたとしても︑それとは関係なく︑
''
刈
田中︶
いわゆる花 しかも︑口八年間
継続していることやXに多大な影秤があるという︑哭約締結後
の事情を根拠に︑約定解除権の行使を制限することがありうる 則や権利の濫用という一般条項の使用も︑典的哭約法と異質であるといえるのかは︑
︱ 二 五
それだけで直ちに古
さらに検討する必要
がある︒信義則違反や権利の濫用については︑不明確な点が多
いが︑信義誠実の観念について︑﹁法の機械的・形式的な適用を
ゆるめ︑背事者間に実質的衡址によって利益を配分し︑けっき
よく等価交換の実現を保障しようとする﹂場合と︑ぶ本来の民法
とは異質な社会政策的配慮が作用している﹂場合とが区別され
12
ている︒思うに︑法規であれ︑哭約の条項であれ︑それを形式
的に適用した場合には︑個別具体的な事情においては不当な結
果となることがある︒これを是正し︑妥当な結果へと落ち着か
せることは︑古典的哭約法と矛盾するものではないと思われる︒
先の信義誠実の観念に関する区別のうち︑前者は古典的剪約法
においても当然の前提であろう︒
本件控訴審判決では︑たとえば︑約定解除権行使が当事者に
多大な影愕を与えることが検討されている︒具体的には﹁商品
の供給を受ける側において︑ある程度の資本投下と︑取引態勢
の整備が必要とされる﹂ことを考慮したものであろう︒花王化
粧品販売事件判決では︑︳被告から花E化粧品を仕入れて︑その 売上増大に努めてきたものであって︑平成三年には原告の花
T
化粧品の売上高はその全化粧品の売上閥の旦割ないし四割を占
めるに令り︑この間の平成二年三月には本件特約店招約が継続
15‑‑4 ‑‑697 (香法'96)
すると信じて店舗を広げ︑引続き花王化粧品の売じ増大に努め たのであり︑現在︑原告が被告以外の者から花じ化粧品を仕人 れることは困難﹂なことである︒いずれも︑約定解除権の行使 が許されることを前提としたうえで︑信義則違反や権利の濫用 を検討しており︑この若察方法それ自体が︑古典的斐約法のも
ので
ある
︒ つまり︑当事者の意思を尊甫しつつ︑個別具体的事 情を顧慮して︑それを制限している︒たしかに︑個別具体的事 情の顧慮は︑結果的に経済的弱者の保詭につながるが︑ここで 直要なのは︑あくまでも個別具体的事情なのであって︑経済的 弱者の保護という裁判所の政策的判断ではない︒政策的判断は
行政や立法の任務なのであり︑
する問題は︑
それらの怠慢の結果にほかならない︒しかし︑行 政や立法が怠慢しているからといって︑民主的基盤が不卜分な 裁判所が︑本来の任務を離れて政策的判断を行い︑それを根拠 に事件を処理することには疑問がある︒本控訴審判決も︑この 以上のように︑信義則違反や権利の濫用が︑あくまでも
個別具体的事情を根拠として判断されているかぎり︑それはな お古典的契約法と異質であるとはいえないと思われるが︑本控
訴審判決には︑
五
それが不十分であるために発生 それ以外にも異質と理解される可能性のある部
ような政策的判断を行ったものであるとは山心われない︒ 者の利益を確保するとともに︑国民経済の民︑E的で健令な発達を促進する﹂という目的︵独占禁止法一条︶をもった法であり︑
このような目的から約定解除権の行使が制限されるのであれ ば︑それはもはや︑伯義則や権利の濫用のように︑形式的適用 が個別具体的事情でもたらす不当性を是正しているものとはい えない︒個別具体的事情が問題なのではなく︑独占禁止法の目
的の実現が問題なのである︒ 盛んにし︑雇傭及び国民実所得の水準を高め︑以て︑一般消費 も該当しかねないことが指摘されており︑ 分が存在する︒
本控訴審判決では、結論に影嘲~しなかったものの、信義則違
反や権利の濫用の判断に関連して︑⑥や⑦で独占繁止法違反が 検討されている︒花じ化粧品販売事件判決でも︑権利の濫用の 判断に際して﹁再販売価格を維持する日的で本件解約に及んだ ものといわざるをえず︑それは私的独占禁止及び公
取引の確I E
保に関する法律︵独占然止法︶
t
到底許されないものであって︑[6
その違法性は重大である﹂とさ庄また︑対面カウンセリング を要求する条項は︑独占禁止法にいう﹁不公正な取引方法﹂に
いずれの判決でも独 占禁止法が重要な役割を果たしている︒独占禁止法は︑﹁公正H
つ自由な競争を促進し︑事業者の創意を発揮させ︑事業活動を
︱二 六
15―‑4 ‑‑‑698 (香法'96)
継続的供給喫約の中途解約(民事判例研究会)
ず︑メーカー
の販売価格︑販売地域︑取引先等についての制限を行っている
場合には︑これは不当な取引制限といわざるを得ないから︑そ
のことを理由として継続的供給哭約を解消することは許されな
い﹂としたうえで︑本件では合理的なものでなく︑独占焚止法
の法意にもとる可能性もあるとした︒本控訴審判決は︑7合理的 な理由が認められ︑かつ︑他の取引先等小売業者に対しても同
等の条件が課されている場合には︑
うなものでない限り背然許されることであって︑
俗に反するとか︑権利の濫用であるとはいえないし︑
ちに独占禁止法
K
の問題となるものでもない︒そして︑事業者がどのような販売理念︑販売政策︑販売方法をとるかは本来事 必要としたが︑
︵販
売会
社︶
がヽ
どうかという間題である︒
制限だけでなく︑対面販売や顧客台帳作成についての喫約条項
第一審判決︑本控訴審判決いずれも︑先に紹介したように︑
明文の哭約条項にないにもかかわらずぶやむを得ない事由﹂を どうかの判断をする際に︑対面販売や顧客台板の作成を義務付
ける哭約条項について検討している︒第一審判決は︑﹁この販売
方法に関する約定についてそれほど合理的な理由は認められ
それが強行法規に反するよ
それが公庁良
それが直
業者の自由に委ねられていることからすれば︑右合理的な理由
があるというためには︑当該メーカーが必要と判断し︑
一般的に考えてもそれなりに合理的なものであればよいと解さ
れる﹂とし︑本件ではそれなりに合理的なものであるとした
︵②)︒ちなみに︑花干化粧品販売事件判決では︑哭約条項の解
釈によってカウンセリング販売の義務が否定され︑
そのような義務があったとしても︑合理的な理由が存在するか
どうか疑問であり︑伯卜販売をさせる慈図が全くないわけでも
ないと推知される等として︑独占禁止法にいう戸→公正な取引
ここでは︑二つのことが問題になる︒
定の
効力
を︑
それに合理的な理由がないからとして否定するこ
とができるのかという問題であり︑もうひとつは︑独占禁止法
に違反していることが︑販売力法に関する約定を無効にするか
前者の問題は︑再び︑先ほど約定解除権の行使の制限につい
て検討した︑当事者の意思とその制限という問題に関係するの
で︑ここでは詳しく検討しないが︑裁判所が合理的と考えるこ
とが︑当事者の意思が存在するにもかかわらず︑
ることは︑政策的判断による当事者の意思の制限が許されない
のと同じように︑古典的契約法においては許されず︑当事者の
このことを手段として小売業者方法﹂にも該当しかねないものとする︒
この﹁やむを得ない事由﹂が実際に存在するか の有効性も問題にされている︒
‑ L .
ノ
さらに︑独占禁止法との関係では︑約定解除権の行使の
︱ 二 七
また
︑
また︑仮に
ひとつは︑当事者の約
それに侵先す
15‑‑‑4 ‑‑699 (香法'96)
.,'"""'""""''"""""""""''"'"""""""'"""'"""'""'""""""'"""""''"''匹・‑・・...
本件の販売方法に関する約定が独占梵止法違反であるのかど
i8 )
うかは︑多くの評釈で検討されていることでもあり︑ここでは
言及しないが︑民法の観点から屯要なのは︑独占繁止法違反が︑
販売方法に関する約定を無効にするかどうかであろ︒この問題 条項に明示されていないにもかかわらず︑﹁やむを得ない事由﹂は明らかであるとする︵⑦︶︒ の濫用について判断している部分でも︑Yが﹁販売力法を段
F
独占禁止法違反ではないとする︵②︶︒また︑伍義則違反や権利として価格を制限しているとまでは忍めがたいのであるから﹂︑
独占禁止法に違反するとか︑
その趣旨に反するといえないこと
七本控訴審判決は︑約定解除権を有効としたうえで︑契約
して本件控高審判決では︑それなりに合理的理由があるとして ている︒花卜化粧品販化れ
1 1
判決もほば同じである︒それに対判所
は︑
独占禁止法の解釈・適用をすることになるが︑
しよ
そ
j i
持の効果を図るものとして︑独占梵化法違反の
能性を指摘しn J
的にどのような場合に忍められるのかは困難な問題である︒裁
第二沿判決は︑
合理的な理由なしに販売
J J 法を制限し︑価格紺
しか
し︑
このような制限が具体 のかどうかを間題にしなければならない︒︶ばこ︶︑てょJ ; : : : ,
[nlu
ク し
!
>
古典的兜約法によれば認められるはずのものが制限される
r l J
能
性があることも否定できない︒ らに本件の販売方法の約定が
そもそも独占禁止汰違反であろ
である︒そして︑独古岱止払が持つ政策日的を実現するために︑
それとは別個に検討される必要があるが
その前提として︑さ独内という現実を前に︑独占禁止法は今日では不ilJ欠なもの 後者の間超は︑削者の間題についての解答如何にかかわらず 二
番判
決は
︑
則違反や権利の濫用の場合に限られると思われる︒しかし︑第
( 2 7 )
中ー事者の狂田心の制限を打定するようである︒ 艮俗違反等の場合を除けは︑
個別具体的巾佑を若閲しての信義
意息が制限されるのは︑本控高審判決も占及しているが︑公序
は︑取締法規違反と契約の効力︑あるいは︑強行法規違反︑公
( 2 9 )
序良俗違反として議論されてきた間閣のひとつである︒第一審 判決と花
E化粧品販売事件判決は︑
やや曖昧ではあるが︑これ を肯定するようであり︑本控よ審判決は︑独占禁止法違反では
ないことが前提とされているために︑
した
︒
不明
であ
る︒
法の解釈・適用による政策目的の実現という矛盾した課題であ る︒この矛盾した課韻が政策的判断を任務としない裁判所に課
されているのである︒
を必要とした︒そして︑﹁やむを得ない事由﹂の存否の判断にお
いて︑対面販売や顧客台帳作成の義務の合理性や独内禁止法違 反との関係を検討して︑合理性を肯定し独占禁止法違反を否定 さらに︑約定解除権の行使が信義則違反︑権利の濫用で
︱二 八
15 ‑4 700 (香法'96)
継続的供給哭約の中途解約(民事判例研究会)
本控訴審判決にも︑結論には影糊しなかったとしても︑
このよ
古典的斐約払
とは異質の原理が働いているといわざるを得ないと思われる︒ 項を介して︑中~事者の意思を制限する場合には、 約条項を無効にしたり︑
伯義則違反や権利の濫用という二般条
しか
し︑
独占梵止法が︑
その政策
l i
的を実現するために︑兜れる︒これらの作業を古典的契約法と異質であるとするのは︑
i)
ゞ 約法と異質の原理が働いているとはいえない︒したがって︑兜 るから︑あるいは制限がされるからというだけでは︑古典的兜 ある場合の伍筏則違反や権利の濫用による制限は︑規範的であ 明である場合の裁判所の規範的判断や︑背巾者の意思が明確で との関係を意識して検討したが︑要するに︑山ー巾者の息思が不 販売事件判決などをも顧慮しながら︑特に古典的契約法の限界 定した︒本稿では︑民法の観点から︑第.審判決や花玉化粧品 あるかを検討し︑そこでも独占梵止法違反を検討してこれを否し ︑
ヵ
t̲
オオ
約の解釈において灯巾者の意思を無視することなく規範的解釈
また︑結果に影愕しなかったにしろ︑個別具体的市 情を顧慮しようとしたにとどまるかぎり︑本控訴審判決の判断 は︑なお古典的契約法の枠内において行われているものと田心わ 古典的契約法を︑契約成立段階だけで契約内容を把握し︑すべ
︵ 況︶
てを当事者の意思に還尤するものと理解する場合だけである︒
うな可能性を前提にしている部分が存在することは否定できな
ヽ~。し
︱ 二 九
(l
) 本控訴審判決の評釈ぶ研究として︑川越憑治ぶ只牛常束求販売事件控訴審判決の概要'•NBL五五四号(^几九四年)パ頁、1﹁判批﹂法学教室/七.一号︵/几九五年︶九六頁︑田村次朗
ー判
批︐
ジュ
リス
ト.
O六九号︵.九九五年︶二四↓貞︑大村
須貿男﹁判批︐五罪協臼例リマークス1995︿ドこ︵日本評論
社︑一九九五年︶:五頁︑村卜政博﹁化粧品流通をめぐる独
占禁止法違反事件の分析①﹂NBL五じ七号(‑九九五年︶六 頁︑宮川博史﹁判批﹂平成6年度
t
要民事判例解説1
1判例タイ
ムズ
八八
一一
号(
‑九
九五
年︶
七四
貞が
ある
︒
( 2
)
中田裕康函螂続的先買の解消
] (
t j
斐閣︑一九九四年︶二九頁
以ド
︒
( 3
)
来栖万郎梃約法﹄︵有斐閣︑初版第一一刷一九八六年︶ニニ
1二頁以ド︒なお︑特約店斐約について︑橋本恭宏﹁判批﹂﹃私法
判例リマークス1995︿
t
﹀﹂
︵日
本評
論社
︑一
九九
五年
︶三
五頁
以ド
参照
︒
(4
)
中田︑前掲注③四三頁︒
( 5
)
本判決の評釈・研究については︑後藤巻則﹁判批ー判例評論
四ご六り.五貞
1 1判例時報二四九四り︵一九九四年︶一八五貞︑
中田裕康﹁継続的売買契約の解消者の意図
( K )
﹂N
BL Ji
六九
号(
‑九
九五
年︶
︱.
1頁
注⑩
参照
︒
( 6
)
任意解約について︑川越憲治蝉如続的取引契約の終了﹂別冊NBL
一九
号︵
商巾
法務
研究
会︑
一九
八八
年︶
一こ
九貞
参照
︒
( 7
)
川越︑前掲注① 1
概要
︵ド
︶
L^じ貞以ド︑詞︑前掲注①凶判
批﹂
九じ
頁︒
さら
に︑
1﹁販売方払に関する約定と特約店招約
の解
約︵
中︶
﹂
NBL
五三
:・
‑号
(‑
九九
一
1
年1
︶:
.貞
以卜
︑同
︑
︵田中教雄
15 4‑‑701 (香法96)
前掲注⑥契約の終了一.一九貞以ド︑執行秀ギ﹁いわゆる事槃者間
契約では︑契約自由の原則が無制限に注ヤーするか﹂椿力大編;叩
座・現代契約と現代偵権.の展望第四径﹂︵日本評論社︑一九九四年)一•]ーパ貞以卜。
( 8
)
内田胄﹁現代兜約法の新たな展開と一般条項図﹂
NBL
五1
五号(‑九九三年︶一八貞以ド︒その批判については︑川角由
和﹁現代民法学における如肉係的兜約即論︾の存在意義9島大
法学こじ巻四号︵↓九九四年︶九五頁以ド︒
( 9
)
内田︑前掲注⑧□
般条
項③
︐︱
‑三
頁以
ド︒
( 1 0 )
内田︑前掲注⑧﹁↓般条項③ーニ六貞以ド︒
( 1 1 )
札祝裔裁決定については︑そこで問題になった期間満︐jの
. .
.
ヶ月前に刈巾者の巾し出のない限り吏に一ヶ年延長する旨の
条項が︑そのまま﹁廿事者の意思Lであるというのであれば︑
原審の札幌地裁決定の結論になる︒しかし︑﹁本件のような独占
的販売総代理店和約においてものような定めがあるからとい
って︑この一事によって右の期間満fにより甘然拠約が終︐ーす
るものと解することは相粁でなく︑灯巾者の一方的店知により
期間満
r
によって終了するかどうかは契約締結の経緯︑その性竹︑終了によって受ける中ー事者の利古得失等︑市案の特竹に則
して若察しなければならない﹂として︑明文の招約条項に捕ら
われずに︑←丑中者の現実の慈思を探究し︑その結果︑﹁本件兜約
締結当時の事情︑本件契約の特質︑その実態︑昭和五ヒ年の珪
本契約古改定の経緯︑刈事者の利宵得失等に照ら﹂せば︑当事
者の現実の意思は﹁やむを得ない事由﹂を必要としているとい
うことであれば︑明文の条項はいわゆる例文となり︑古回裁決定
の結論が導かれる︒要するに︑地裁とぃり回裁の違いは︑契約の解
釈における違いであり︑升事者の現実の意思についての理解の
一 三
〇
違いである︒ここに内典的契約法と混質なものが慟いていると
はい
えな
い︒
飯島紀昭﹁判批﹂判例評論︱二五五号四八貞
1
1判例時報一二じ
九号(‑九八八年︶ム:
10
貞が﹁異例﹂としているのは︑一什
間の期間の定めのあるものと理解しながら︑期間満﹇では招約
が終了せず︑﹁やむを得ない市由﹂を必要としている点である︒
しかし︑飯島﹁判批﹂では解釈の
能性とされているにすぎなn I
いが︑実は︑高裁決定そのものが︑一年間は改定前の昭和四六
年の基本契約と同じく﹁知約条瑣見直し期間Lであると理解し︑
契約それ自体は期間の定めのない斐約であると理解している
と思われる︒つまり︑期間の定めのない契約を終f
させ
るに
は︑
「やむを得ない屯由」は必要でないが、相↓~の期間が必要なの
であり︑田植機のように一年を単位とするような商品であれ
ば︑それは一年であり︑三ヶ月では足りない︒もし︱一ヶ月で終了させるのであれば、〖やむを得ない市由」が必要であるとした
ものと思われる︒ここでは︑当事者の現実の息思が探究された
結果︑一年間の期間の定めは﹁当事者の意思﹂ではなく︑単な
る例文とされているのである︒岩城謙二ほか﹁五価格破壊:況象
下の継続的取引
( t )
﹂NBL
五六
0号︵一九九五年︶一六頁以
下[川越発言[川角ヽ前掲注⑧﹁存在意義︵四ご九四自臼℃ト
参照
︒
( 1 2 )
内田︑前掲注⑧﹁一般条項③
L
‑
‑﹂ ハ
頁 ︒
( 1 3 )
内田︑前掲注⑧﹁一般条項③﹂ーー八頁︒岩城ほか︑前掲注仰
﹁継続的取引︵上︶﹂一三貞以F55城発言︺参照︒
( 1 4 )
川越︑前掲注田﹁概要︵下︶﹂一八貞は︑﹁諸般の事情からみ
て︑当事者の本来の真息を摘出し︑これに基づいて契約内容を
認識することが必要﹂とする︒しかし︑当事者の現実の意思で
15‑‑4 ‑‑702 (香法'96)
継続的供給喫約の中途解約(民事判例研究会)
ない合理的意思は︑裁判所の規範的判断である︒したがって︑
﹁当事者の意思﹂に基づくものではない︒この点について︑川
越︑前掲注田﹁概要︵下︶﹂一八頁は︑やや不明確である︒当事
者の現実の意思が矛盾している場合にも︑そこに裁判所の評価
︵規範的判断︶が必要になる︒
なお︑評価は︑当事者の現実の意思の存在それ自体を︑証拠
などによって認定する場合にも行われるのであり︑これらの評
価と︑裁判所の規範的判断とが︑詞じ種類のものかどうかは間
題である︒山本敬こ﹁補充的知約解釈︵四︶﹂法学論叢
1 ^ ' .
o
号二号(‑九八六年︶二頁以ド参照︒
( 1 5 )
原島棋義﹁英約の拘束カー法学セミナー一九八三年
‑0
月号
四三頁以ド︑磯村保﹁法律行為の解釈方法﹂民法の争点
I(
‑
九八
1 1 年︶三一頁以F
︑山本︑前掲注⑭証
E充
的兜
約解
釈︵
一︶
﹂
七頁
注①
゜
( 1 6 )
補充的解釈が︑なお契約の解釈といえるのか︑それとも法の
適用であるのかは問題である︒山本︑前掲注⑬﹁補充的契約解
釈︵四︶﹂六頁以下︒任意法規による補充のように両者が巾なり
合う場合もあると思われるが︑個別貝体的な巾情を基礎にして
補充がされる場合は︑それが規範的判断であるとしても︑より
一般化された法とは区別される部分があるかもしれない︒ただ
し︑程度の差でしかないのかもしれない︒また︑この点に関連
して︑一般に補充的解釈においては任意法規が適用されるとい
うが︑個別具体的な哭約を前に︑任意法規から離れた補充が
n I
能であるのかという問題もある︒磯村︑前掲注⑮一そ二貞︒なお︑大村敦志「典型楔約論」法学協会雑誌―-0巻九号(-JLIL九:〗
年︶︱二七一貞以F
参照
︒
( 1 7 )
児玉寛ぶノヴィニーにおける古典的民法理論﹂法政研究五0 巻三
1
1四号(‑九八四年︶四二九頁以ド︑山本︑前掲注⑭﹁補
充的楔約解釈︵四︶﹂一〇貞以下︒
( 1 8 )
このことは﹁対等な事業者の交渉ある契約﹂においても問題
になる︒執行︑前掲注の一五心〇貞以ド参照︒
( 1 9 )
川越︑前掲注①﹁概要
( L )
﹂七
貞゜
( 2 0 )
本判決の評釈・研究については︑中田︑前掲注印﹁解消者の
慈図
︵上
︶
L
一:
・‑
頁注
皿参
照︒
( 2 1 )
切については︑信頼関係が破壊された場合でなければ︑解約
権の行使が権利の濫用になるということであれば︑そもそも解
約権の行使に﹁やむを得ない事由﹂は不要であるとしているこ
とに矛盾しているように思われる︒
( 2 2 )
谷口知平ほか編記新版注釈民法①総則①﹄︵有斐閣︑初版第
四刷一九九三年︶七四頁以
F[
安永
l E 昭
] 0
また︑契約の解釈における伯義則と法の適用における信義則
がそもそも区別可能であるのかも問題になる︒特に︑裁判所の
規範的判断である補充的解釈との関係が問題になる︒好美清光
﹁信義則の機能について﹂一橋論叢四七巻二号(‑九六二年︶
1八七頁以ド︑山本︑前掲注闘﹁補充的解釈︵四︶﹂二三頁参照︒
( 2 3 )
谷口ほか︑前掲注⑫七九頁以F
︹安
永
] 0
( 2 4 )
中田︑前掲注⑥﹁解消者の意図︵下︶﹂一九貞︒
( 2 5 )
We rn er Fl um e, R i c h t e r u nd Re c h t , Ve rh an dl un ge n de s s e c h s u n d v i e r z i g s t e n De ut sc he n J u r i s t e n t a g e s , Bd . 2
,
T e i !
K ,
Mu nc he n,
1
96 7,
S
.
5 f f .
本控訴審判決では問題にされなかったが︑卜分な交渉がなさ
れなかった場合や︑そもそも交渉の余地がなかった場合には︑
当事者の意思が形式的には存在しているにもかかわらず︑それ
を制限あるいは無視することも︑古典的招約法と異質であると
ロ
15‑‑4 ‑‑703 (香法'96)
はいえない︒この場合の制限あるいは無視の根拠は︑実質的な
哭約自由の回復に求められるべきだからである︒これは︑意思
の存在を前提にしつつ法律行為の取泊を認める詐欺・強姐に類
似した判断構茄を持つが︑﹁実質的な契約自由ーという法の内部
にある価値から導かれる判断であり︑結果的には経済的嗚者の
保護になるとしても︑やはり法の外部にある価値から導かれる
政策的判断とは区別されるべきである︒原島屯義﹁約款と斐約
の自由﹂冨現代契約法体系第
1巻
9 ( t c
i 斐閣︑一九八︱こ年︶四
二頁︑四四貞以ド︑
I i . .
貞 以 ド
︑ 同
﹁ 約 款 と 玉
m民
法し
A n H
H ﹂法
の科
学一
. .
号(‑九八四年︶こ四頁以卜︒この種の問題は︑泊
費者喫約において特に問題になるが︑こ対等な事業者の交渉あ
る契約とはいえない籾約ーにおいても問題になる︒執行︑前掲
注切二九三貞以ド︒本件においても︑特約店招約の各条項の拘
束力︑たとえば﹁やむを得ない巾由﹂の必要性を︑実質的な招
約自由の回復という観点から検討するべきであったと思われ る ︒
( 2 6 )
違法な日的による解除権釘使が権利の檻用に該中ーするとし
ても︑価格を維持する目的での約定解除権の行使が︑そもそも
独占禁止法違反なのかは問題である︒否定するものとして︑中
津晴弘﹁独禁法と喫約の自由﹂
NBL
五五
四り
方(
‑九
九四
年︶
二.二頁︑肯定するものとして︑谷原修身両判批﹂金融・商巾判
例九五八号(‑九九五年︶四九頁以ド︑L田和博﹁判批L
ジュ
リス
ト一
0六三号︵一九九五年︶一二三頁︒(27)川越、前掲注田「概要(F)」一九頁以ド、詞、前掲注切〗解
約︵中︶﹂一四頁︑大村︑前掲注田一.一じ頁︒前注
m
︑⑳
参照
︒
川越︑前掲注⑦﹁解約︵中︶﹂一五頁がすでに指摘しているよ
うに︑第一審判決は︑約定違反を理由には解除できないという
~
結論を導くのに︑当事者の約定は︑それを必要とする基本理念
が合理的なものでなく解除が認められるほど重要なものでは
ないとしたのか︑あるいは︑独占禁止法に違反しているから効
力がないとしたのか︑はっきりしない︒前者であれば︑裁判所
が合理的ではないと考えるだけで︑すくなくともYが屯要と考
えている当事者の約定がなぜ巾要でないものになるのかが問
題になり︑後者であれば︑独占禁止法違反と刈事者の約定の効
カの問題になる︒花上化粧品販売巾件では︑当事者の約定との
関係では︑兜約条項の解釈が中心であり︑招約条瑣の合理性と
この点についての独占禁止法違反は仮定における判断である︒
しかし︑兜約条項の合理性と独占禁止法違反との関係はやはり
曖昧である︒契約条項の合理性を問題としているのであるとす
れば︑前注因で述べたように︑実質的な契約自由の回復という
観点からの検討をすべきであったと思われる︒
( 2 8 )
本控訴審判決に関係するものについては︑前注①参照︒(29)大村敦志「取引と公序しジュリスト一Oi―•1号(^九九二年)
八二頁以下︑山本敬三﹁公庁良俗論の再構成﹂嗅田昌泊先生還
暦記念﹃民事法理論の諸問題
f
巻﹂︵成文堂︑一九九五年︶一頁以下など︒特に本件に関係するものとして︑根印折﹁民法と
独占禁止法﹂法曹時報四六巻一号(‑九九四年︶口貝以ド︒
面︶法秩序︵制定法に限らない︶が︑私的自治を承認しているか
らといって︑その公法による制限が常に抑制的でなければなら
ないわけではないと思われる︒私的自治が認められた範団で
は︑私人の意思が杓重され︑もはやそれへの
r
渉は例外的なものとなりざるを得ない︒しかし︑どの範囲で私的自治を認める
のかという問題は︑これとは別の問題である︒逆に言えば︑私
法秩序が公法によって制限されることは認められるとしても︑
15‑‑4‑‑704 (香法'96)