鳥取市スケートリンク
検討委員会報告書
平成26年3月
目 次
1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 検討する項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 3 検討スケジュール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 4 検討結果 (1)スケートリンクの必要性について・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ① スケートリンクの現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ② 鳥取県の小中学生の体力・運動能力の現状・・・・・・・・・・・・・ 5 ③ 運動に親しむ場としての公共施設の意義・・・・・・・・・・・・・・ 6 ④ アイススケート、アイスホッケー競技者の現状・・・・・・・・・・・ 6 ⑤ 鳥取市のスケート界とトップスケーターの関係・・・・・・・・・・・ 8 (2)スケートリンクの整備に期待される効果・・・・・・・・・・・・・・ 9 (3)施設整備の基本的な考え方について・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 ① 運営方式について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 ② リンク規模・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 ③ 設備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 ④ 建設コスト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 ⑤ 整備方式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 ⑥ 財源・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 ⑦ 立地条件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 (4)持続可能な管理・運営方法について・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 ① 管理運営方式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 ② 利用者数見込・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 ③ 利用料金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 ④ 収入見込・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 ⑤ 支出見込・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 (5)その他配慮すべき事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 5 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 6 資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 231 はじめに ソチ冬季オリンピックの開催を契機に国内各地で新たなスケートリンク整備の 動きが見受けられる一方、全国のスケートリンクは、施設の老朽化や冬季のスポー ツニーズの多様化などを背景に減少の一途を辿っています。本市においても、平成 18年1月に日本海リッチランドスケートリンクが閉鎖してから、県内にスケート リンクがないまま8年が経過しているところです。 こうした不利な競技環境の影響を受け、国民体育大会の正式種目であり、有力な 得点源でもあるスケート種目は、その競技力が以前の勢いを失いつつあります。 また、平成24年度鳥取県体力・運動能力調査(新体力テスト)の結果では、小 学校女子全学年の合計点が前年度の結果を下回るなど、県内小中学生の体力・運動 能力は、昭和60年頃をピークに低下傾向が続いています。 冬季に積雪等で屋外運動の機会が限られる本市では、こうした時期に屋内で多様 な運動をできることがより一層大きな意義を持ちます。何より、他の地域では手軽 に楽しめるスケート競技に本市の子どもたちが親しむ機会がほとんどない状況で あることから、本市でのスケートリンクの必要性について幅広い議論、検討が求め られました。 そのため、平成24年7月に鳥取市スケートリンク検討委員会を設置し、様々な 観点から本市におけるアイススケートリンクの設置及び持続可能な運営の可能性 を検討してまいりました。 表1【本市におけるスケートリンク設置検討の経緯】 年 月 内 容 平成 15 年 4 月 鳥取県スケート連盟請願 平成 18 年 1 月 日本海リッチランドアイススケートリンク閉鎖 平成 18 年 3 月 鳥取県スケート連盟スケートリンク建設署名運動 平成 18 年 8 月 鳥取県スケート連盟陳情 鳥取市で荒川静香トークショー開催 平成 20 年 5 月 NPO法人アイススポーツ鳥取設立 平成 23 年 7 月 鳥取県スケート連盟、アイススポーツ鳥取要望書 平成 24年 7 月 鳥取市スケートリンク検討委員会設置
2 検討する項目 (1)スケートリンクの必要性に関すること。 (2)施設規模、候補地など施設整備の基本的な考え方に関すること。 (3)持続可能な運営方法に関すること。 (4)その他、目的達成に関すること。 3 検討スケジュール 委員会 開催日 主な内容 第1回 平成 24 年 7 月 6 日 ○スケートリンクをめぐる情勢について ○スケート競技の現状・推移について ○スケートリンクの必要性について ○検討委員会での調査審議内容について ○今後のスケジュールについて 第2回 平成 24 年 12 月 13 日 ○他自治体のスケートリンク状況調査の結 果について ○他自治体のスケートリンク建設状況につ いて 第3回 平成 25 年 4 月 25 日 ○スケートリンク建設方式及び建設コスト について ○利用者数見込について 第4回 平成 25 年 7 月 1 日 ○太陽光発電システムについて ○ランニングコストについて ○スケートリンクに関する調査について 第5回 平成 25 年 9 月 24 日 ○太陽光発電システムについて ○スケートリンクに関する調査について - 平成 25 年 11 月 29 日 ○先進地視察(西宮市) 第6回 平成 26 年 2 月 12 日 ○収支見込について ○立地条件について ○報告書案について 第7回 平成 26 年 3 月 25 日 ○報告書案について
4 検討結果 (1)スケートリンクの必要性について ① スケートリンクの現状 文部科学省の調査によると、全国の屋内スケートリンク設置数は、昭和60年の 252施設をピークに大幅に減少し、平成20年には93施設となっています。特 に昭和60年には210施設に及んだ民間施設が、約6分の1となる36施設に激 減し、多くの民間スケートリンクが閉鎖されています。 一方、公共施設は、昭和60年の42施設から平成20年は57施設と僅かでは あるものの増加しており、近年のスケート需要に行政が応えている傾向が見られま す。 鳥取県では、昭和42年に初めて鳥取市と米子市にスケートリンクが開場しまし た。いずれもその後に閉鎖され、県内で唯一開業されていた日本海リッチランドス ケートリンクも、平成18年1月、施設の老朽化などを背景に約30年間の歴史に 幕を下ろしました。 以後、中国地方でスケートリンクを有していない県は、鳥取県だけとなっていま す。 図1【全国のスケートリンクの現状(箇所数)】 文部科学省「体育・スポーツ施設現況調査」 図2【全国のスケートリンクの現状(屋内)】 文部科学省「体育・スポーツ施設現況調査」 486 252 103 93 210 42 57 36
表2【鳥取県内のスケートリンクの推移】 年 月 内 容 昭和 42 年 11 月 米子市にYSPスポーツセンター開業 昭和 42 年 12 月 鳥取市に鳥取スポーツセンター開業 昭和 45 年頃 鳥取スポーツセンター閉鎖 昭和 51 年 10 月 鳥取市にリッチランドアイススケートリンク開業 平成 11 年 3 月 YSPスケートリンク閉鎖 平成 18 年 1 月 リッチランドアイススケートリンク閉鎖 表3【中国地方のスケートリンク】 県 名 称 設置者 鳥 取 - - 島 根 サンビレッジ浜田 公 共 湖遊館 公 共 岡 山 岡山国際スケートリンク 民 間 ヘルスピア倉敷 大 学 広 島 広島ビッグウェーブ 公 共 山 口 くだまつ健康パーク 民 間
② 鳥取県の小中学生の体力・運動能力の現状 平成24年度鳥取県体力・運動能力調査(新体力テスト)(※1)の結果では、小学 校女子全学年の合計点が前年度の結果を下回るなど、県内小中学生の体力・運動能 力は、低下傾向が続いています。 また、運動習慣との関連では、運動頻度や運動時間が多い子どもは小・中・高男 女とも体力が高い傾向が見受けられます。 体格は向上しているものの、今後も運動不足による柔軟性や瞬発力、持久性とい った側面での子どもの体力低下や、運動をする子どもとしない子どもの二極化がさ らに進むことが懸念されます。 0歳から12歳の子どもの保護者を対象にした「子どもに挑戦させてみたいスポ ーツ」というアンケート調査(※2)の回答(男女各 1,000 人)では、水泳(22.6%)、 サッカー(15.6%)、野球(15.3%)などとともに、フィギュアを含むスケート(3.3%) も上位10競技に入っています。特に女子は、スケートが 5.9%で6番目に位置づ けるなど、子どもだけでなく保護者の関心の高さを示しています。 これらを踏まえ、子どもがやってみたい、また、保護者が子どもにさせたいと思 うスポーツ種目の選択肢を増やすことにより、子どもが運動に親しむ機会を拡充し、 体力向上につながる施策を重点的に展開することが求められます。 ※1 テスト項目 (1)握力 (2)上体起こし (3)長座体前屈 (4)反復横跳び (5)20mシャトルラン (6)50m走 (7)立ち幅跳び (8)ソフトボール投げ(小)、ハンドボール投げ(中・高) ※2 株式会社バンダイ「バンダイこどもアンケート」(平成20 年 7 月) 表4【平成24年度新体力テストの合計点(国、鳥取県、鳥取市比較)】 1年 2年 3年 4年 5年 6年 1年 2年 3年 全国 30.51 37.71 44.11 49.86 55.89 61.88 34.98 43.86 50.56 県 30.54 38.37 44.60 50.62 54.70 61.14 34.10 43.40 50.31 市 31.14 40.58 44.92 50.96 55.21 62.13 34.22 45.68 51.94 全国 30.45 38.42 44.20 50.20 55.48 62.00 43.88 50.58 52.72 県 30.91 37.78 44.91 50.53 55.90 61.86 45.61 50.05 53.04 市 31.13 38.27 45.17 50.77 55.52 62.46 48.38 51.95 53.93 区分 小学校 中学校 男子 女子 平成24年度鳥取県体力・運動能力調査(鳥取市独自集計) 表5【鳥取県の平成23年度と平成24年度の合計点の比較】 1年 2年 3年 4年 5年 6年 1年 2年 3年 H23 31.54 39.13 44.49 49.85 56.11 61.00 35.31 43.03 50.50 H24 30.54 38.37 44.60 50.62 54.70 61.14 34.10 43.40 50.31 比較 ▼ ▼ ▼ ▼ H23 31.27 38.76 45.44 50.63 57.04 62.00 46.31 49.49 52.26 H24 30.91 37.78 44.91 50.53 55.90 61.86 45.61 50.05 53.04 比較 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ 中学校 男子 女子 区分 小学校 鳥取県スポーツ健康教育課
③ 運動に親しむ場としての公共施設の意義 冬季の積雪が多い鳥取市には、ウィンタースポーツの場として近郊にスキー場が あるものの、氷上スポーツの場がないため、市民がスケートに親しみづらい環境に 置かれています。そして、他の地域では手軽に楽しめるスケート競技が、本市の子 どもたちにとっては、親しむ機会がほとんどない未知のスポーツとなりつつありま す。 さらに、フィギュアのみならず、近年では冬季五輪での活躍などからカーリング にも関心が高まっています。こうした流れは、これまで社会体育施設が大きく担っ ていた青少年の健全育成という役割のみならず、子どもから高年齢層まで老若男女 を問わず、誰もが気軽に楽しめる日常的な生涯スポーツの場という新たな役割をス ケートリンクが担い、公共性がますます高まっていることを顕著に示しています。 ④ アイススケート、アイスホッケー競技者の現状 公益財団法人日本スケート連盟の競技登録者数は年々増加傾向にあり、特にフィ ギュアスケートにおける競技者数は、荒川静香選手のトリノオリンピックでの金メ ダル獲得や近年の男女各選手の活躍も影響し、増加傾向が顕著に見られます。 一方、鳥取県のフィギュアスケート及びアイスホッケー競技者数は、県内にスケ ートリンクが無い不利な条件のもと、新規の競技者の育成が難しいこともあり減少 しています。 かつて県内にあったスケートリンクは、スケート選手の競技力向上に大きく貢献 していました。特にフィギュアでは国際大会や全日本大会などで優勝する選手を輩 出し、冬季国体では平成7年から4年連続で団体入賞しています。平成15年の冬 季群馬国体では、成年男子で個人優勝するなど、鳥取県は団体全国4位と過去最高 の成績を残しましたが、近年では恵まれない競技環境のもと、好成績を残せていま せん。 これは、初心者や一般向けの充実した指導体制が構築可能であるにも関わらず、 スケートリンクが無いことにより、優秀な人材を活用できないことにも繋がってい ます。 表6【スケート競技人口】 区 分 平成17年度 平成21年度 (公財)日本スケート連盟登録者数 5,470人 6,506人 フィギュアスケート 競技者数 全 国 2,990人 4,347人 鳥取県 43人 38人 表7【アイスホッケー競技人口】 区 分 昭和57年度 平成23年度 アイスホッケー 競技者数 鳥取県 65人 25人
表8【フィギュアスケート競技成績(個人)】 平成元年 中井 淳江 第 38 回全国高校スケート 選手権大会 フィギュア (Bクラス) 優 勝 平成2年 今井 恵子 第 10 回全国中学校スケート 競技大会 フィギュア (Cクラス) 優 勝 平成 11 年 岩本 英嗣 第 48 回全国高校スケート 選手権大会 フィギュア (Aクラス) 優 勝 国際大会スロベニア フィギュア 優 勝 第 68 回全日本JR選手権大会 フィギュア 優 勝 平成 14 年 浜 尚子 国際大会ノルウェー フィギュア ノービスB 優 勝 平成 15 年 岩本 英嗣 2003 日本学生氷上選手権大会 個人 優 勝 第 58 回冬季群馬国体 個人 優 勝 平成 17 年 鷹取 吾一 第 54 回全国高校スケート 選手権大会 フィギュア (Bクラス) 2位 表9【フィギュアスケート競技成績(団体)】 昭和 58 年 少年男子 第 38 回冬季群馬国体 6位 昭和 59 年 少年男子 第 39 回冬季釧路国体 6位 昭和 60 年 成年男子 第 40 回冬季青森国体 6位 平成 7 年 少年女子 第 50 回冬季福島国体 6位 平成 8 年 成年女子 第 51 回冬季日光国体 5位 平成 9 年 成年女子 第 52 回冬季釧路国体 7 位 平成 10 年 成年女子 第 53 回冬季岩手国体 7 位 平成 15 年 成年男子 第 58 回冬季群馬国体 4 位 表 10【アイスホッケー競技成績】 ○わかとり国体(昭和60年)7位入賞 ○昭和53年以降、国体本大会31回連続出場 ○平成17年 国体1回戦突破(沖縄県)
⑤ 鳥取市のスケート界とトップスケーターの関係 ソチ冬季五輪では、羽生結弦選手がフィギュア日本男子念願の初・金メダルを獲 得し、町田樹選手が5位、高橋大輔選手も6位に入賞と大健闘しました。 母親が倉吉市出身の町田樹選手は、五輪前から鳥取県内でも期待が高まっていた だけに、今回の入賞は本当に嬉しい結果となりました。「鳥取は、世界中で唯一気 持ちを解放できる場所」と語り、今でも祖父の住む倉吉市によく里帰りしている町 田樹選手も、以前は日本海リッチランド・スケートリンクでも練習していただけに、 現在の活躍を非常に嬉しく思う当時の関係者も多くいます。 また、長い間日本男子フィギュアを牽引してきた高橋大輔選手も、小学校高学年 の頃、日本海リッチランドで盛んに行われていたフィギュア合宿に岡山から参加し ており、当時指導に当たった鳥取市のスケート関係者とは、現在も厚い親交が続い ています。 さらに、トリノ冬季五輪の金メダリスト荒川静香選手は、トリノ五輪後まもなく の平成18年8月21日には「鳥取の子どもたちに夢を」をテーマに全国で初めて の講演を鳥取市で行うなど、鳥取市のスケート界とは現在でも深い絆が保たれてい ます。 このように日本のトップスケーターと強い絆があることから、スケートリンクが 整備された場合には、県内競技者がより高いレベルの指導を受けることが期待でき、 競技力の向上にも繋がります。
(2)スケートリンクの整備に期待される効果 ① 健康増進・体力づくり 冬季の積雪時期にも屋内で多様なスポーツ活動の場を確保し、市民の健康増進が 図れます。 また、鳥取の子どもたちも手軽に氷上スポーツに親しむ機会が増え、小中学校で の教育活動との協力を通して子どもたちの体力づくりが図れます。 ② 競技力向上 現状では岡山市や出雲市などの遠距離施設を練習拠点とせざるを得ない競技者 の負担が軽減されることで、競技力の向上と競技人口の増加が図れます。 ③ レジャー 家族、職場、地域などのレクリエーション活動の場として、市民がレジャー感覚 でアイススケートをより身近なものとして楽しめます。 ④ 経済波及 新たな山陰の拠点施設の誕生に加え、通年開場などの運営により大会・競技会の 開催や合宿の誘致促進が見込め、市外からの交流人口の拡大とこれらに伴う経済波 及効果が図れます。 表 11【主な中四国での大会】 回数 会場 日数 選手数 役員数 観客数 年1回 中四国地区持回 3日 130人 70人 500人 国体中国ブロック予選大会 年1回 広島市 2日 130人 30人 100人 中四国大会(クラブチーム) 年1回 広島市 2日 140人 30人 100人 オールドタイマー中四国リーグ戦 年1回 倉敷市 2日 40人 10人 50人 オールドタイマー西日本大会 年1回 倉敷市 2日 180人 30人 150人 中四国選手権大会(大学生) 年1回 広島市・出雲市 3日 160人 30人 100人 中四国リーグ戦(大学生) 年1回 広島市・出雲市 4日 40人 10人 50人 年1回 山口県以外持回 1日 60人 20人 100人 年1回 浜田又は岡山 2日 50人 20人 100人 年1回 浜田又は岡山 2日 80人 20人 100人 西日本カーリングオープン大会 大会名 中四国フィギュアスケート選手権大会 ア イ ス ホッ ケー 中四国ショートトラック選手権 西日本カーリング選手権
(3)施設整備の基本的な考え方について ① 運営方式について (ア)切替型と通年型 切替型は、夏季はプールや各種アリーナとし、冬季はスケートリンクに切り 替える営業形態です。切替型は、季節に応じて多様な市民ニーズに対応するこ とが可能となります。反面、プールやアリーナとしての施設整備も行うため建 設コストが割高になるうえ、年間1千万円程度の切替コストが必要となります。 通年型は、年間を通してスケートリンクとする営業形態です。通年型は、春 夏の一般利用者数が秋冬に比べて大きく減りますが、夏季にスケートリンクを 開設していない近県の競技団体による練習ニーズが高まり、合宿や遠征等によ る県外者の利用増加とこれらに伴う経済波及効果が期待できます。また、競技 団体にとっては、継続的な練習による競技力向上などが期待できます。反面、 夏季はリンクの製氷に要する電気代等のコストが割高となります。 (イ)単独型と複合型 スケートリンクを単独で整備する場合とスポーツ施設以外の機能も併せて整 備する場合が考えられます。 ② リンク規模 メインリンクの公式規格は、60m×30m であり、公式競技を開催するためには、 公式規格での整備が必要となります。公式規格のメインリンクのみの場合、延べ 床面積は、3,600 ㎡程度となります。 サブリンクは、各種競技大会開催時のウォーミングアップ、カーリングなど多 目的に利用します。サブリンクでカーリングを行う場合は、45.72m×5m(1レ ーン)×2レーン以上必要となり、延べ床面積は、4,200 ㎡程度となります。 常設タイプの観客席を設置する場合、延べ床面積は5,500 ㎡程度となります。
③ 設備 スケートリンクに必要な設備は、通常の建築設備(電気、機械)に加え、製氷 設備、音響設備が不可欠となります。 さらに、太陽光発電システムを整備すれば、経済産業省の再生可能エネルギー 固定価格買取制度を有利に活用することができます。 写真1【冷却設備イメージ】 写真2【音響設備イメージ】 写真3【太陽光発電システムイメージ】
④ 建設コスト 建設コストは、建設方式・リンク規模・設備の組み合わせにより、約9億円か ら約23億円程度見込まれます。(他のスケートリンクの実績を基に算定) 表 12【建設コスト概算】 規模 建設コスト 延べ床 面積 太陽光発電システム 無 有 小規模 メインリンク(27m×41m) 【参考】日本海リッチランド 9 億円 10 億円 2,700 ㎡ 中規模 メインリンク (30m×60m) 11 億円 12 億円 3,600 ㎡ メインリンク(公式規格) サブリンク 12 億円 13 億円 4,200 ㎡ 大規模 メインリンク(公式規格) サブリンク 観 客 席 【参考】新潟アイスリンク 22 億円 23 億円 5,500 ㎡ ⑤ 整備方式 (ア)直営 設計、建設、管理、運営を全て公共が実施する方式です。 (イ)DBO(Design Build Operate)
民間事業者が設計、建設、管理、運営を一括で実施する方式です。施設の所 有、資金調達は公共が行います。
(ウ)PFI(Private Finance Initiative)
設計、建設、維持管理、運営を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用 して行う手法です。PFIの導入に当たっては、アドバイザー費用、弁護士費 用などPFI固有のコストが発生するため、建設費や維持管理運営費において、 ある程度の事業規模があることが必要です。施設の所有は、民間及び公共のど ちらの場合もあります。 (エ)その他 平成25年8月開業のひょうご西宮アイスアリーナは、スケート連盟等で立 ち上げた一般社団法人が民間企業から資金提供、兵庫県から土地提供を受けて スケートリンクを建設したものです。資金提供した民間企業がテナント契約で リンクを管理、運営し、その利益で提供資金を回収する方式です。 この方式が採用できるのは、年間一定以上の利用が確実にあり、資金回収の
見込みがある場合に限られます。また、市としての関与は建設費及び運営費の 助成、用地提供などに限られます。 ⑥ 財源 PFIの場合は、民間による資金調達となります。 直営及びDBOの場合は、補助金、地方債、一般財源などが主たる財源となり ます。 このうち国の補助金については、国土交通省の所管する社会資本整備総合交付 金がスケート場及びこれに附属する観覧席などを補助対象施設としています。国 が2分の1を上限に補助しますが、国体会場など規模の大きな都市公園の整備で、 公園施設として必要と認められる場合に交付対象となることから、現時点で本市 での活用は困難と思われます。 一方で、地方債のうち合併特例債は、市町村合併後の「新しいまちづくり」の ため特に必要と認められる事業などについて、その事業費の概ね95%の借入れ が認められ、元利償還金の70%が後年度の普通交付税により措置されるもので す。当初10年間であった合併特例債の発行期限を5年間延長する法改正が行わ れたことを受け、鳥取市では平成31年度まで活用できることとなりました。こ の期限内での事業実施であれば、現時点において最も有利な財源と考えられます。 ⑦ 立地条件 (ア)用地 施設規模に応じて、敷地面積は、6,000 ㎡~10,000 ㎡程度が必要となります。 現に公有地である、あるいは、用地取得又は賃借が安価かつ容易であることな どが望まれます。 (イ)用途地域 スケートリンクに客席を併設する場合、建築物の用途としては「観覧場」と みなされ、立地可能な用途地域が限定されます。 観客席が無い場合、建築物用途は「スケート場」となり、立地可能な用途地 域が増えます。
表 13【立地上の制限】 用途地域 スケート場、ボーリン グ場、ゴルフ練習場等 観覧場 (体育館等で客席を 有する場合を含む。) 第一種低層住居専用地域 × × 第二種低層住居専用地域 × × 第一種中高層住居専用地域 × × 第二種中高層住居専用地域 × × 第一種住居地域 △1 × 第二種住居地域 ○ × 準住居地域 ○ △2 近隣商業地域 ○ △2 商業地域 ○ ○ 準工業地域 ○ ○ 工業地域 ○ × 工業専用地域 × × △1:対象用途に供する部分の床面積合計が 3,000 ㎡以下のものは建築できる。 △2:客席の床面積合計が 200 ㎡未満のものは建築できる。 (ウ)交通アクセス 公共交通機関による来場が可能であること、中心市街地又は商業地域の近隣 であること、合宿での利用を考慮し、近隣にトレーニング施設又は体育館等の 体育施設及び安価で利用可能な宿泊施設があることが望まれます。 (エ)その他 近隣に民家が無く、製氷設備の室外機による騒音問題が無いこと、太陽光発 電システムを採用する場合は、発電効率の良い方角に建設可能であることが望 まれます。
(4)持続可能な管理・運営方法について ① 管理運営方式 管理運営方式は、直営管理と指定管理者制度がありますが、サービス水準及びコ スト比較により、スケートリンクに適した管理運営方式を採用する必要があります。 (ア)直接管理 市が直接使用許可を行い、職員配置、経費支出及び使用料徴収を行う方式で す。一部の業務は、業務委託や労働者派遣法に基づく人材派遣の活用により外 部委託等を実施することが可能です。 (イ)指定管理者制度 多様化する市民ニーズに、より効果的、効率的に対応するため、民間の能力 を活用しながら、市民サービスの向上と管理経費の削減等を図ることを目的と した制度です。指定管理者は、条例の定めるところにより施設の利用許可権限 をもち、利用料金を自ら定めることができるなど、幅広い権限を持ちます。 ② 利用者数見込 レジャー白書(公益財団法人日本生産性本部余暇総研発行)によるアイススケー ト参加率及び年間平均活動回数を基に通年型で試算した場合、年間約 18,000 人~ 35,000 人程度の利用者数が見込まれます。 (商圏人口:約59万人、参加率:1%~2%、活動回数:3回で試算) 表 14【商圏人口】 区域 自治体 H22国調人口(人) 鳥取県東部 鳥取市 197,449 岩美町、若桜町、智頭町、八頭町 42,380 小計 239,829 鳥取県中部 倉吉市、三朝町、湯梨浜町、琴浦町、北栄町 108,737 兵庫県但馬 新温泉町、香美町、豊岡市、養父市 147,801 計 ① 496,367 他のスケートリンクの商圏と重複する地域(鳥取県西部) 区域 自治体 H22国調人口(人) 湖遊館(冬季)と重複 米子市、境港市、日吉津村、大山町、南部町、 伯耆町、日南町、日野町、江府町 240,101 競合率を25%と仮定します。 ② 60,025
他のスケートリンクの商圏と重複する地域(岡山県北部) 区域 自治体 H22国調人口(人) 岡山国際(通年)、アイスランド津山(冬季)と重複 津山市、美作市 137,286 競合率を25%と仮定します。 ③ 34,322 ①+②+③=590,714人 表 15【レジャー白書によるアイススケートの参加率(過去 10 年)】 年 参加率 (%) 年間平均 活動回数(回) 冬季オリンピック 2002 2.7 4.7 ソルトレイクシティ 2003 2.6 2.7 2004 2.4 4.5 2005 2.0 2.2 2006 2.5 1.7 トリノ 2007 2.2 4.8 2008 1.8 1.7 2009 2.7 2.8 2010 2.1 4.9 バンクーバー 2011 1.7 9.4 平 均 2.3 3.3 表 16【アンケート結果(抜粋)】 問:鳥取市にスケートリンクが整備された場合に、遠征や合宿などで 利用してもいいと思いますか。 地域別 利用しても いいと回答 割合 アンケート 送付数 送付数に 対する割合 関西地方 8 28% 68 12% 中国地方 11 38% 28 39% 四国地方 6 21% 13 46% 九州・沖縄地方 4 14% 26 15% 計 29 100% 135 21% 表 17【利用者数見込】 参加率 算出式 利用者見込数 1.0% 590,714 人×1.0%×3 回 17,721 人 1.5% 590,714 人×1.5%×3 回 26,583 人 2.0% 590,714 人×2.0%×3 回 35,442 人
図3【鳥取県年代別人口推移】
表 18【他市スケートリンク利用者数(平成 23 年実績)】 区分 湖遊館 (出雲市) ヘルスピア倉敷 (倉敷市) ビッグウェーブ (広島市) 守口スポーツ プラザ (守口市) 日光霧降 アイスアリーナ (日光市) 運営方式 切替 切替 切替 通年 通年 設置主体 出雲市 (学)加計学園 広島市 UR 都市 再生機構 栃木県 運営主体 NPO法人 ひらたスポーツ・ 文化振興機構 (株)SID 創研 (公財)広島市 スポーツ協会 (株)パティネ レジャー (一財)日光市公共 施設振興公社 施設規模 メイン 60m×30m サブ 10m×20m メイン 60m×30m サブ — メイン 60m×30m サブ 18m×30m メイン 56m×26m サブ — メイン 60m×30m サブ — 人口 143,796 人 475,513 人 1,173,843 人 146,697 人 90,066 人 利用者数 35,800 人 25,500 人 48,600 人 82,000 人 37,900 人 個人利用 大人料金 1,100 円 1,000 円 1,520 円 1,400 円 1,280 円 貸切 一般料金 平日 11,550 円 休日 16,800 円 20,000 円 22,430 円 20,000 円 16,100 円 貸靴 400 円 500 円 300 円 500 円 500 円 ③ 利用料金 日本海リッチランドスケートリンク、近隣スケートリンクの利用料金、アンケー ト結果及び鳥取市の社会体育施設の利用料金体系を参考にした結果、以下の利用料 金が想定されます。 利用料金(想定) 参考(リッチランド) 区分 区分 大人 1,200 円/回 大人 1,000 円/回 小中高齢 600 円/回 中高 800 円/回 学校 0 円/回 小学 600 円/回 貸靴 400 円/回 貸靴 400 円/回 貸手袋 100 円/回 貸手袋 100 円/回 観覧料 200 円/回 観覧料 200 円/回 教室 5,000 円/月 貸切 10,000 円/時 貸切 20,000 円/時 単価 単価
表 19【アンケート結果(抜粋)】 問:団体の貸し切り利用料金(入場料を徴収してリンクを使用する場合を除く)は 1 時間あたりいくらが適当だと思われますか。 区 分 回答数 割合 1 万円未満 6 21% 1 万円以上 1 万 5 千円未満 9 31% 1 万 5 千円以上 2 万円未満 14 48% 2 万円以上 0 0% 計 29 100% ④ 収入見込 上記の利用者数見込、利用料金に基づき収入見込みを算定すると、利用料金等に よる収入は、年間約 3,000 万円~5,400 万円程度が見込まれます。 また、太陽光発電システムを設置する場合、20年間の売電収入見込みは、約 1 億 8 千万円であり、この年平均額を加えると、収入総額は、約 3,900 万円~6,300 万円程度が見込まれます。 ⑤ 支出見込 通常の管理運営経費は、年間約 6,000 万円程度が見込まれます。 (利用者の増減による支出への影響は、ほぼ無いものと想定しています。) また、5年毎の大規模改修に要する経費は、20年間で約1億円程度が見込まれ ます。 表20【管理運営費内訳】 区分 内 訳 人件費 正職員(3人) 13,000千円 臨時職員 平日(5人) 12,500千円 〃 休日(8人) 4,500千円 計 30,000千円 光熱水費 電気代 21,100千円 水道代 1,400千円 下水道代 1,500千円 計 24,000千円 その他 宣伝広告費 1,500千円 図書印刷費 1,000千円 イベント代 1,500千円 消耗品費 1,000千円 メンテナンス代 1,000千円 計 6,000千円
(6)その他配慮すべき事項 ① 鳥取県との連携 本市にスケートリンクが整備された場合、市民のみならず県内唯一のスケートリ ンクとして広く県民に親しまれる施設となります。また、スケート競技は、国民体 育大会冬季大会の正式種目であり、県内競技者の競技力の向上が期待できること、 鳥取県が平成26年度から展開する観光部門と連携したオリンピック・パラリンピ ックなどのキャンプ地誘致活動の一環として平昌オリンピックのキャンプ地誘致 も可能となることから、スケートリンクの整備及び管理運営にあたり、鳥取県の支 援、協力を求めていく必要があります。
5 まとめ (1)スケートリンクの整備に期待される効果 以上を踏まえ、本委員会は、鳥取市にスケートリンクが必要であるという結論に 至った。建設にあたっては次のことを配慮していただきたい。 (2)建設方式について (3)持続可能な管理・運営方法について (4)鳥取県との連携 ① スケートリンクの営業形態は、通年型とする。 ② メインリンクの規模は、公式規格(60m×30m)とする。 ③ サブリンクの併設が望ましい。規模はカーリング2レーン以上確保できれば、初心者 用リンクとして兼用可能となる。 ④ 太陽光発電システムの導入が望ましい。国の電力買い取り制度と費用対効果を再度精 査すること。 ⑤ 整備にあたっては、有利財源の活用及び運営方式と併せ最も適した方式を選定する。 ⑥ 整備場所は、用地取得の有無、用途地域、アクセス性等を総合的に検討し、最も適し た場所を選定する。また、地上設置を基本とするが、立地によっては半地下設置も検討 する。 ① 管理運営方式は、整備方式、サービス水準及びコスト比較により、スケートリンクに適 した方式を選定する。現時点では、指定管理者制度の活用が望ましい。 ② 利用料金は、日本海リッチランドスケートリンク、近隣スケートリンクの利用料金及 び鳥取市の社会体育施設の利用料金体系を参考に最も適した料金体系とする。 ③ 指導体制の充実や子どもから高齢者まで楽しめるよう工夫するなどの特徴を有するこ とで他のスケートリンクとの差別化を図る。 ① 健康増進・体力づくり 多様なスポーツ活動の機会を確保し、市民の健康増進、年々低下している子どもの体 力向上が図れる。 ② 競技力向上 競技者の競技力の向上と競技人口の増加が図れる。 ③ レジャー 市民のレクリエーション活動の場として、レジャー感覚でアイススケートに親しむこ とができる。 ④ 経済波及 大会・競技会の開催や合宿・オリンピックキャンプ地としての誘致が見込め、市外か らの交流人口の拡大とこれらに伴う経済波及効果が図れる。 本市にスケートリンクが整備された場合、県内唯一のスケートリンクとして広く県民に 親しまれる施設となること、スケート競技は、国民体育大会冬季大会の正式種目であり、 県内競技者の競技力の向上が期待できること、鳥取県が平成26年度から展開する観光部 門と連携したオリンピック・パラリンピックなどのキャンプ地誘致活動の一環として平昌
6 資料 ①検討委員会メンバー 部 門 所 属 職・氏名 備 考 学識経験者 鳥取大学 学長顧問 本名 俊正 委員長 有識者 鳥取県体育協会 専務理事 川口 一彦 副委員長 有識者 NPO 法人 アイススポーツ鳥取 副理事長 林田 房雄 政策研究機関等 鳥取環境大学 地域イノベーション 研究センター 講師 高井 亨 経済界代表 鳥取商工会議所 専務理事 大谷 芳徳 スケート関係者 鳥取県スケート連盟 会長 岩本 章嗣 ホッケー関係者 鳥取県アイスホッケー連盟 副理事長 藤野 純一 教育行政関係者 鳥取市中学校体育連盟 会長 小山 将範 市民代表 鳥取市中学校PTA連合会 元保体部長 木嶋 徹 ②会議で使用した主な資料 (既存のスケートリンク一覧、団体アンケート結果、建設コスト計算詳細など)