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無石性胆嚢炎

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Academic year: 2021

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(1)

無石性胆嚢炎

Clinical Question 2017年9月11日 手稲渓仁会病院 総合内科 作成者:清水 拓 監修:永井 友基 分野:消化器 テーマ:診断と治療

(2)

【症例】

64歳男性、4mからの転落事故

[現病歴]

・4mの高さから転落し、近医で血気胸の診断となり当院へ転院搬送と なった。

[既往歴]

特記事項なし

[来院時現症]

・GCS:E3V4M6, BT37.2 ℃, HR 147 /min, BP 67/47 mmHg RR 34 /min, SpO2 80 %(O2 10 L/min リザーバーマスク)

・胸部:右肺野に呼吸音減弱あり、左肺音清明 ・腹部:疼痛なし

[検査所見]

・造影CT:右外傷性血気胸、肺挫傷あり

(3)

【症例】

64歳男性、4mからの転落事故

[来院後経過]

・ERにて補液、輸血で維持し、胸腔ドレナージ施行したところ、 約300mlの血性排液を認めた。 ・造影CT施行して前述の所見認め、ICUへ入室しその後挿管管理となった。 入室後発熱あり、一度おさまるもその後再燃して持続していた。 ・抗菌薬変更、継続したが発熱改善なく、各種培養は全て陰性であった。 入院12日目に造影CT施行したところ、胆嚢腫大・壁肥厚を認めた。 無石性胆嚢炎の診断で胆嚢ドレナージを施行したところ、翌日には 解熱を得た。

(4)

Clinical Question

Q. 無石性胆嚢炎とは

(5)

疾患概念①

• 約150年前に初めて報告された

• 急性胆嚢炎全体の約10%を占める

• 重症患者の0.2~0.4%で発症する(発症リスクについては後述)

North J Med 1844;2:151-153

CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY 2010;8:15-22

UpToDate® “Acalculous cholecystitis”

CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY 2010;8:15-22

胆嚢の炎症性疾患で、胆石を認めないもの

無石性

(6)

疾患概念②

• これまで大規模解析がなく、診断基準も存在しない • 治療方針もスタンダード化されていないのが実情

『よくわかってない疾患』

J Ultrasound, 2015;18:317-320 • 胆汁のうっ滞胆嚢虚血による炎症±感染、と言われている • 重症患者で発症するのは、臓器還流低下による症候の1つであろう

CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY 2010;8:15-22 Korean J Hepatobiliary Pancreat Surg 2013;17:83-85 Int J Surg Case Rep. 2016; 25: 207-211

(7)

発症機序

空腹時 食後 肝臓から 600ml/day の胆汁産生 50%は胆嚢へ 50%は十二指腸へ CCK※の作用で 胆嚢収縮 Oddi括約筋は 弛緩(CCK作用 による) ※CCK:コレシストキニン 絶食、TPN、敗血症などで ①胆汁が排出されず、濃縮される ②濃縮した胆汁+虚血で胆嚢壁障害

発症

CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY 2010;8:15-22 などを基にした仮説 中外製薬HP 「からだのしくみ」より引用

(8)

Clinical Question

Q. 無石性胆嚢炎とは

如何なる疾患か?

A. 胆汁うっ滞と虚血による

(9)

発症リスク

・糖尿病 ・高血圧 ・ESRD※ ・AIDS 基礎疾患的リスク

※ESRD:End Stage Renal Disease

・重症疾患(ICU入室レベル) ・外傷 ・熱傷 ・ショック・敗血症 ・塞栓症 ・血栓 ・コレステロール ・血管炎 ・分娩 ・手術 ・骨髄移植 ・TPN ・医療麻薬 ・絶食 直接triggerリスク 医療介入リスク

UpToDate® “Acalculous cholecystitis”

CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY 2010;8:15-22 Journal of the Pancreas 2016 Nov8;17(6):580-586

(10)

Clinical Question

Q. 無石性胆嚢炎は

(11)

症状

発熱、右季肋部痛 黄疸…

非特異的

①右上腹部の腫瘤は20%で出現 (結石性では出ないとされている) ②術後の黄疸は疑うポイント ③その他、術後の発熱と炎症反応 肝酵素上昇でも疑うべき

UpToDate® “Acalculous cholecystitis”

Korean J Hepatobiliary Pancreat Surg 2013;17:83-85

脳血管疾患後の発症報告では発熱が70%、 CRP上昇が60%、肝逸脱酵素上昇が30%、 腹痛が20%

(12)

エコー

• ・胆嚢腫大 ・壁肥厚 ・胆泥(*) ・胆嚢腫大 ・胆嚢水腫

DeitchとEngelによる3徴

① 壁肥厚 ② 胆泥(sludge) ③ 水腫

CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY 2010;8:15-22 J Ultrasound, 2015;18:317-320 〇UpToDate®では『壁肥厚が最も信頼できる指標である』 - ≧3.5mmで感度80%、特異度99% - ≧3.0mmで感度100%、特異度90% 〇エコー全体の感度は29~92%、特異度は89~100% ※感度、特異度はいずれも主として病理診断に基づいた数値 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン 2013 CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY 2010;8:15-22 急性胆管炎・胆嚢炎診療 ガイドライン 2013

(13)

CT

・胆嚢腫大 ・壁肥厚( ) ・胆嚢周囲の 液体貯留(*) ・胆嚢周囲の肝実質濃染※ ※ダイナミックCT・動脈相 ・壁肥厚(3.0~4.0mm) ・胆嚢周囲の液体貯留 ・胆嚢内濃度上昇(胆泥) ・壁内ガス(気腫性胆嚢炎)

CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY 2010;8:15-22

〇CTでの急性胆嚢炎(有石性、無石性含む)の 診断精度は、感度94%、特異度は59% ※感度、特異度はいずれも主として病理診断に基づいた数値 〇重症度評価に使用する(後述) 〇ほかの鑑別の評価にも使用する(後述) Radiology 2012;264:708-20 CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY 2010;8:15-22 急性胆管炎・胆嚢炎診療 ガイドライン 2013

(14)

鑑別診断

• 採血 • 尿検査 • 心電図 • (造影)CT • 上部消化管内視鏡検査 (出血を疑う場合に施行)

※Peptic ulcer disease

<D/dx>

・PUD※ ・右肺炎 ・膵炎 ・肝膿瘍 ・横隔膜下膿瘍 ・腎盂腎炎 ・心疾患

UpToDate® “Acalculous cholecystitis”

〇胆嚢炎と心疾患が鑑別困難な ことがあるので注意する 〇胸痛、心電図変化、CPK上昇、 トロポニン上昇は胆嚢炎でも起こる J Ultrasound, 2015;18:317-320 無石性胆嚢炎は除外診断なので 他鑑別の否定が必要!

(15)

Clinical Question

Q. 無石性胆嚢炎は

どのように診断するか?

A. 症状、採血は非特異的。

エコーやCTが頼りになる。

除外診断の為、他鑑別を否定。

(16)

重症度評価

WBC>18,000/µL、右季肋部の有痛性腫瘤、症状が72時間以上持続、 顕著な局所炎症所見(胆汁性腹膜炎、胆嚢周囲膿瘍、肝膿瘍、 気腫性胆嚢炎、壊疽性胆嚢炎) 中等症でも重症でもないもの

循環障害:ドパミン5γ以上、あるいはノルアドレナリンの使用、 呼吸障害:P/F<300、凝固障害:PT-INR>1.5、Plt<10万 /µL 腎障害:乏尿またはCre>2.0mg/dL、意識障害

<以下のいずれかがあるもの> <以下のいずれかがあるもの> 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン 2013 より

(17)

壊死性/壊疽性胆嚢炎

壊疽性胆嚢炎の診断は困難、造影CTが必要である 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン 2013 特異度が高いのは ① 胆嚢(壁)内気腫 ② 胆嚢壁造影不良 ③ 胆嚢周囲膿瘍

(18)

・壁の断裂( ) ・壁在膿瘍( ) ・横隔膜下膿瘍(*) 造影CTでも胆嚢壁に 造影効果なし( )

壊死性胆嚢炎

急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン 2013 胆嚢内腔に気腫 あり( )

気腫性胆嚢炎

UpToDate® 胆嚢周囲の液体貯留、 壁の断裂あり( )

穿孔

急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン 2013

(19)

Clinical Question

Q. 無石性胆嚢炎は

(20)

速やかに胆摘を行う。炎症が 強い場合にはまずドレナージ を行い、後日胆摘を行う。 早期の胆摘を考慮する。

原則としてドレナージを 行う。適応があれば後日、 胆摘を行う。

有石性の場合

急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン 2013 より 重症度(Ⅰ~Ⅲ)に応じた推奨治療(第Ⅹ章)

無石性の場合

• 基本的な考え方は有石性と同様 (重症度によって対応する) • 胆摘の時期と必要性に関しては 意見が分かれている • 全身状態が不良ならドレナージ、 改善後に胆摘、が多数派 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン 2013 より “その他の胆道炎”(第Ⅺ章)

(21)

PTGBD(経皮経肝胆嚢ドレナージ)

• 適応:

①軽症、保存加療で経過が悪いとき (12~24時間の経過観察の後) ②中等症以上のとき ※1 壊疽性胆嚢炎、気腫性胆嚢炎、胆嚢穿孔時は手術をする ※2 胆のうに高度の局所炎症所見がある時は手術は不可 疑ったらドレナージ、改善なければ診断の見直しを行い、 診断に間違いがなければ胆摘とする

CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY 2010;8:15-22

UpToDate® “Acalculous cholecystitis”

(22)

PTGBD (経皮経肝胆嚢ドレナージ)

• 成功率は56~100% • 胆嚢炎が消失するまで留置する • 改善がないときは ①壊疽性胆嚢炎 ②カテーテル位置異常 ③胆汁漏出からの腹膜炎 ④診断が違う • 24時間以内に改善なければ手術を行う • 合併症:血腫、敗血症、胆汁性腹膜炎、気胸、腸穿孔

UpToDate® “Acalculous cholecystitis”

UpToDate® “Acalculous cholecystitis”

CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY 2010;8:15-22

(23)

手術(胆嚢摘出)

• 適応:

①胆汁性腹膜炎、胆嚢周囲膿瘍、肝膿瘍、胆嚢捻転、気腫性胆嚢炎、 壊疽性胆嚢炎、化膿性胆嚢炎があるとき ②PTGBD後、24時間で改善ないとき(診断が間違いなければ) • 可能ならば腹腔鏡がよい 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン 2013

UpToDate® “Acalculous cholecystitis”

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抗菌薬に関して

• 無石性胆嚢炎に対する抗菌薬選択に関しては、記載されている文献 は少なく、日本のガイドラインでも記載がない • GNRと嫌気性菌をカバーすべきとのレビューはある Cf.) 一般的な(有石性)胆嚢炎の場合、嫌気性菌と腸球菌については 胆管腸管交通や肝移植後等の特殊な場合以外は外してよいとされる

Johns Hopkins ABX Guide “Cholecystitis”

Clinical Infectious Diseases 2010;50:133-64 Journal of the Pancreas 2016 Nov8;17(6):580-586

(25)

Clinical Question

Q. 無石性胆嚢炎は

どのように治療するか?

A. 胆嚢ドレナージか手術(胆摘)。

重症度によって決める。

(26)

合併症

• 気腫性胆嚢炎、壊死、壊疽、穿孔などがある →文献により差があり合併症全体は6~82%で認める • 壊疽性胆嚢炎は50~63%に起こる • 穿孔は10~15%で認める →まれに穿孔から胆嚢-皮膚瘻/胆嚢-十二指腸瘻の合併来す • 膿瘍形成は4%で認める

Clin Gastroenterol Hepatol 2010;8(1):15-22

UpToDate® “Acalculous cholecystitis”

Am Surg 1998;64:471-475

Am Coll Surg 1997;184:245 Am Surg 1998;64:471-475 Am Surg 1996;62:263-269 Am Surg 1998;64:471-475

(27)

予後

• 治療が遅れると死亡率75% • 治療しても30%の死亡率 • 背景疾患が重症であることを反映しての数字と思われる • 自己免疫疾患の増悪に関連する無石性胆嚢炎は免疫抑制療法による 原疾患治療のみで改善することも多い Ann Surg 1989;210:52

UpToDate® “Acalculous cholecystitis”

HPB, 2007;9:131-134

(28)

Take Home Message

・入院(特に重症)患者の原因不明の発熱や

炎症反応には無石性胆嚢炎を考える

・診断後は速やかに胆嚢ドレナージを

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