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∼中野区シンクタンクのあるべき姿を探る∼

2006 年 10 月

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目 次

第 1 章 本調査研究の背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第 2 章 自治体シンクタンクの現状と課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1 シンクタンクの定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 2 民間シンクタンク活用の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 3 自治体シンクタンクの現状等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 (1) 設立自治体数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 (2) 設立理由・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 (3) 組織類型と財政・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 (4) 機能・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 (5) 研究内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 (6) 研究成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 (7) 評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 (8) 研究体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 (9) その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 第 3 章 中野区における自治体シンクタンクの姿・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 1 中野区自治体シンクタンクの方向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 (1) 態様等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 (2) 機能・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 (3) 研究体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 (4) その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

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第1章

本調査研究の背景と目的

地方分権一括法の施行や三位一体改革など地方分権改革の推進は、地方自治体が独自の選 択と責任により自治体を経営していかなければならない「都市間競争」の時代を到来させて いる。中野区がこの競争を勝ち抜き、区民にとっての価値と満足度を高める区政経営を実現 するためには、政策形成能力を一層向上させることが不可欠である。 このことから、2006 年 1 月に策定した基本計画である「新しい中野をつくる 10 か年計画」 の中で、おもな取り組みの一つとして「政策の科学的研究の強化」を掲げ、外部の専門家の 力を取り入れた政策の研究・開発のしくみを庁内に設置することが明記された。 また、同年3 月に策定した「中野区行政革新 5 か年プラン」においては、政策の研究・開 発を促進するため、2007 年度に「(仮称)中野区政策研究機構」を設立することが記されて いる。 こういった背景を踏まえ、本報告書では、他自治体に設置されているシンクタンクの現況 を調査・分析し、中野区が有用性の高いシンクタンクを設立するために必要な事項等を明ら かにした。 なお、本調査研究を行うにあたっては、自治体シンクタンク研究者である財団法人地域開 発研究所の牧瀬稔氏からアドバイスや資料の提供を受けている。 また、財団法人日本都市センターにもアドバイスをいただいている。 「新しい中野をつくる 10 か年計画」 「行政革新 5 か年プラン」 【目標とする姿】 「公正・公平で創造的な政策に基づく行政運営が行われ、全国の自治体をリードする 存在となっています」 【おもな取り組み】 「政策の科学的研究の強化」 計画的な人材育成によって職員の政策形成能力を高めるとともに、外部の専門家の 力を取り入れて、政策の研究・開発を行うしくみを庁内に設置し、常に区民ニーズに 的確に対応した施策を展開していきます。 【おもな取り組み】 「政策の研究・開発の促進」 2007 年度~(仮称)「政策研究機構」の設立・運営 【指標】 2007∼2009 年度:研究報告 各 3 件

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第2章

自治体シンクタンクの現状と課題

1 シンクタンクの定義 シンクタンク(Think Tank)は、「頭脳集団」とも呼ばれ、その目的は社会が抱える様々な問 題を研究し、具体的な解決策を提案することとされている。企業戦略や公共政策の策定に資す ることを目的とした研究を行う組織といえる。 これを踏まえ、本報告書における自治体シンクタンクとは、「自治体の政策創出において、 調査・研究を行い、当該問題を解決するための提言を行うために組織された機関(団体)」 1とする。 2 民間シンクタンク活用の現状 2005 年 12 月現在、シンクタンク数は 296。その内 158 は、都内に集中して設立されて いる(大学付属政策機関及び地方公共団体内政策研究機関を除く)。総数はピーク時の2001 年と比較すると41 の減(2001∼2004 年度は減少、2005 年度は横ばい)となっている。2 区内では、東中野に三井情報開発株式会社総合研究所(設立1967 年 10 月、資本系列: 三井物産(株)、総務省や経済産業省等の国や都からの受託実績多数有)がある。 シンクタンク数の推移 270 280 290 300 310 320 330 340 350 2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 出所:NIRA(総合研究開発機構)ホームページより調査研究担当が作成 情報量やノウハウ、資金が豊富で、自治体からの調査や研究を受託している実績も枚挙 に暇がない3。優秀なシンクタンクも数多いが、自治体が活用するにあたっては、次の点が 1 牧瀬稔(2006)『自治体シンクタンクに関する調査研究』特定非営利法人まち研究工房 p.10 の定義に よる。 2 NIRA(総合研究開発機構)『シンクタンク年報 2006』及び同ホームページによる。 3 中村円(2005)「シンクタンクと政策研究」北川正恭+縣公一郎+総合研究開発所編『政策研究のメソ

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問題になる。 【問題点】 ❶ 自治体の財政状況が厳しくなり、委託料が抑えられていることにより、結果的に質 の低い提言となっている現状がある。4 ❷ 依頼者である自治体側に一定レベルの調査・研究能力や判断力が備わっていないと、 いわゆる「まる投げ」になってしまう。その結果、総花的で無難な提言がなされると いった面も見受けられる。 ❸ 個別の調査・研究成果が有益なものであっても、委託では継続性がないため、区と しての調査・研究能力の向上に繋がりにくい。 ❹ 民間シンクタンクでは、自治体内の慣習や組織間の関係などを把握することが困難 であり、これらにとらわれない発想が出てくるというメリットもある一方で、政策の 実現性を伴わないアウトプットに終始してしまうことがある。5 ドロジー』法律文化社によると、研究総数の3/4 以上が受託契約研究で、そのうち 68%が国や地方自治 体などの公的機関から受託している(2003 年度)。 4 牧瀬稔(2006)『ちば政策法務研究会定例会報告概要』で、自治体シンクタンクに係るアンケート調査 結果に基づき、この点が指摘されている。 5 牧瀬稔(2006)『自治体シンクタンクに関する調査研究』特定非営利法人まち研究工房 p.24 による。 自治体内にある「微妙な感覚」を把握できる点が、自治体シンクタンクの持つ特徴であるとも分析して いる。

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3 自治体シンクタンクの現状等 (1) 設立自治体数 市町村が設立主体である自治体シンクタンク6は、2006 年 10 月現在、確認できている ものは40 である【表 1】。シンクタンクの総数は、減少・横ばい傾向にある一方で、自 治体シンクタンクの数は年々増加しており、また、設立を検討している自治体も多い【表 2】。近隣の世田谷区では、2007 年度の設立をめざして、大手民間シンクタンクへ調査を 委託している。 (2) 設立理由 2000 年以降では、地方分権一括法や三位一体改革を契機として、自治体独自の政策形 成の必要性が高まったことが一番の理由である。前例踏襲で解決できる政策課題は今や ほとんどないと言ってよい。首長の意向により設立されたもの(トップダウン)が多い が、横須賀市や三浦市のように、組織内部から機運が高まり設立されたいわゆるミドル アップ(ボトムアップ)のものもある。議会で議員からの質問(要請)を受けて、設立 されたという自治体も見受けられる。 設立理由をまとめると、 ❶ 財政状況が厳しく、民間シンクタンクへの委託経費を確保し難い。 ❷ いわゆる企画部門においては、庁内調整に追われ、調査・研究を十分に行えな いため、企画部門から一定独立した調査・研究組織が必要である。7 ❸ 多くは地方であるが、市町村合併により、一時的に財政と人員に余裕ができ、 優秀な人材を政策研究に特化させた。 【表1】 自治体シンクタンク設立一覧(2006 年 10 月現在) No. シンクタンク名 設立自治体 創設年 類型 1 市立名寄短期大学道北地域研究所 名寄市 1982 年 大学附置 2 青森市雪国学研究センター 青森市 2001 年 内部組織 3 青森公立大学地域研究センター 青森地域広域事務組合 1998 年 大学附置 4 仙台都市総合研究機構 仙台市 1995 年 任意団体 5 いわき未来づくりセンター いわき市 1995 年 任意団体 6 うつのみや市政研究センター 宇都宮市 2004 年 内部組織 6 杉尾正則(2004)『市町村シンクタンクを核とした政策創造』財団法人福岡県市町村研究所によると、 人口10 万人以上の関東の市が多い。中国・四国にはほとんどない。 7 南学(2005)「講演 都市自治体とシンクタンク 大学との連携の可能性」財団法人日本都市センター『第 7 回都市シンクタンク等交流会議実施報告書』財団法人日本都市センター p.4 でも同様の指摘がされて いる。なお、この点については、ユニバーサルデザインや安心・安全のまちづくりなど組織の横断的な 課題が増えていることが背景にある、と牧瀬稔は分析している。

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No. シンクタンク名 設立自治体 創設年 類型 7 三鷹ネットワーク大学推進機構 三鷹市 1998 年 内部組織 8 八王子市都市政策研究会議 八王子市 2003 年 内部組織 (会議形態) 9 (財)東京市町村自治調査会 都の多摩・島しょ地 域27 市5 町8 村 1986 年 財団法人 10 横須賀市都市政策研究所 横須賀市 2002 年 内部組織 11 藤沢市政策研究室 藤沢市 2005 年 内部組織 12 小田原市政策総合研究所 小田原市 2000 年 内部組織 13 さがみはら都市みらい研究所 相模原市 2003 年 内部組織 14 みうら政策研究所 三浦市 2003 年 内部組織 (会議形態) 15 上越市創造行政研究所 上越市 2000 年 内部組織 16 金沢市政策研究所 金沢市 1995 年 内部組織 17 金沢まちづくり市民研究機構 金沢市 2003 年 市民研究型 18 コミュニティシンクタンクふじ 富士市 2003 年 NPO 法人 19 (財)名古屋都市センター 名古屋市 1991 年 財団法人 20 (財)豊田都市交通研究所 豊田市 1991 年 財団法人 21 四日市大学地域政策研究所 四日市市 1989 年 大学附置 22 (財)京都市景観・まちづくりセ ンター 京都市 1997 年 財団法人 23 京都・まいづる立命館地域創造機 舞鶴市 2004 年 任意団体 24 向日市コラボレーション研究所 向日市 2004 年 内部組織 (会議形態) 25 (財)大阪市都市工学情報センタ ー 大阪市 1991 年 財団法人 26 大阪市政研究所 大阪市 1951 年 内部組織 27 (財)堺都市政策研究所 堺市 1992 年 財団法人 28 きしわだ都市政策研究所 岸和田市 1997 年 任意団体 29 豊中市政研究所 豊中市 1997 年 任意団体 30 (財)大阪府市町村振興協会 (おおさか市町村職員研修研究センター) 大阪府市町村振興協会 1995 年 財団法人 31 (財)神戸都市問題研究所 神戸市 1975 年 財団法人 32 (財)尼崎地域・産業活性化機構 尼崎市 1987 年 財団法人 33 (財)下関 21 世紀協会 下関市 1988 年 財団法人 34 北九州市立大学都市政策研究所 北九州市 1977 年 財団法人 35 (財)福岡アジア都市研究所 福岡市 1988 年 財団法人 36 宗像市人づくり・まちづくり研究 所 宗像市 2005 年 内部組織 (会議形態) 37 (財)福岡県市町村振興協会 福岡県市町 2000 年 財団法人 38 竹田研究所 竹田市 2003 年 任意団体 39 くりはら研究所 栗原市 2006 年 内部組織

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No. シンクタンク名 設立自治体 創設年 類型 40 なは未来室 那覇市 2003 年 内部組織 出所:財団法人日本都市センター 中西規之 作成資料、財団法人地域開発研究所 牧瀬稔 作成 資料より調査研究担当が作成 【表2】シンクタンクの設立を検討している自治体(2006 年 10 月現在) 出所:財団法人地域開発研究所 牧瀬稔 作成資料より調査研究分野が作成 (3) 組織類型と財政 ① 組織類型 おおまかに分類すると、財団法人型、任意団体型、内部組織型に分けることがで きる【表1】。 財団法人型は、自治体の財政難によって、整理・縮小される傾向にある。 任意団体型では、仙台都市総合研究機構のように、産・学・官の連携によるもの が目立つ。 内部組織型は、財政的負担が少なく、また、住民の市政参画のしくみとなる市民 研究員を導入しやすいという点から増加傾向が著しい。会議形態(PT)のところも ある。 ② 財政 ア 財団法人型 設立等にあたっての経費が高額で、かつシンクタンクによってその額の規模が 違う【表3】。設立時には多額の出損金が必要であり、その基本財産や利子等だけ では運営できないことも多く、事業収入も基本的にはないため、毎年一定額以上 の自治体予算を注入せざるを得ない(数千万円から数億円程度)。予算としては、 自治体からの補助金になる。 イ 任意団体型 態様により幅があるが、総じて財団法人型と比べると予算規模は小さい【表 3】。 財団法人型と同様に、自治体からの経費支出は補助金になる。 ウ 内部組織型 任意団体型と同様に、財団法人型と比べると予算規模は小さい【表3】。 中野区、世田谷区、あきる野市、稲城市、昭島市、横浜市、流山市、松戸市、香取市、 戸田市、上尾市、岡崎市、茨木市、釧路市、八戸市、小諸市、長野市、津市、岐阜市、 京都市、三田市、田辺市、笠岡市、庄原市、霧島市

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みうら政策研究所のような会議形態(PT)については、アドバイザー(専門委 員)の人件費のみが経費となるため、特に財政的負担は少ないといえる。 【表3】自治体シンクタンクの財政状況(抜粋) 自治体名 財政(単位:千円) 類型 (財)名古屋都市センター 1,000,000 (基本財産) 財団法人 (財)豊田都市交通研究所 3,000,000 (基金) 財団法人 (財)堺都市政策研究所 520,000 (基金) 財団法人 (財)神戸都市問題研究所 450,000 (基本財産) 財団法人 (財)尼崎地域・産業活性化機構 300,250 (基金) 財団法人 (財)下関21 世紀協会 73,900 (基金) 財団法人 (財)福岡アジア都市研究所 30,000 (基本財産) 財団法人 いわき未来づくりセンター 17,818 (2004 年度研究予算) 任意団体 仙台都市総合研究機構 75,629 (2004 年度研究予算) 任意団体 上越市創造行政研究所 9,477 (2004 年度研究予算) 内部組織 さがみはら都市みらい研究所 7,348 (2004 年度研究予算) 内部組織 横須賀市都市政策研究所 19,776 (2004 年度研究予算) 内部組織 みうら政策研究所 4,200 (2004 年度研究予算) 内部組織 (会議形態) 大阪市政研究所 11,019 (2004 年度研究予算) 内部組織 豊中市政研究所 8,206 (2004 年度研究予算) 任意団体 なお、豊中市政研究所は、2007 年度に任意団体から内部組織に改める予定である。 出所:NIRA「シンクタンク年報 2006」、財団法人日本都市センター 中西規之 作成資料よ り調査研究担当が作成 ③ 法令等 ア 財団法人型 自治体組織から独立性8が高く、庁内事情や調整に左右されずに調査研究を行え るという利点がある。一方で、自治体職員を研究員として従事させるためには、 職員派遣のための条例等を制定する必要がある。 イ 任意団体型 財団法人型と同様の指摘ができる。 財団法人もしくは、任意団体として設立する場合の問題点を整理すると、次の とおりである。 8 自治体シンクタンクにおける「独立性」には、①自治体組織からの独立性 ②首長からの独立性 の二つ があると考えられる。牧瀬稔は、①は必要であるが、②は必ずしも必要ではないと指摘している。なお、 宗像市人づくり・まちづくり研究所の所長は、宗像市長である。

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【問題点】 ❶ 前述したが、職員を任意団体等へ派遣するためには、公益法人等への一般 職の地方公務員の派遣に関する法律に基づき、条例もしくは規則の制定が必 要である(例:中野区職員互助会に関する条例)。研修派遣と位置づけた場合 も同様である。 ❷ 運営経費を自治体予算から支出するためには、任意団体等への補助金を支 出することになる。そのための規則もしくは要綱が必要である(例:中野区 国際交流協会に対する補助金の交付に関する規則)。 ❸ 法令に基づき設置される諮問機関等とはせずに、任意団体とする根拠が不 明確である。 ウ 内部組織型 組織規則や要綱で設立しているところが多いが、自治体組織からの独立性の確 保が問題(庁内調整に労力が費やされ、調査研究に集中できない)となる。ただ し、独立した執務空間とすることにより、自治体内設置型であっても、独立性が 一定確保されている。 また、内部組織型の中でも会議形態では、研究員となる職員は、本来業務との 兼務となり、負担は小さくないといえる。テーマごとに構成員が変わるため、事 務局機能を担う部署が必要になる(三浦市は政策企画課が担っている)点もある。 【表4】自治体シンクタンクの類型別比較 項目 財団法人型 任意団体型 内部組織型 財政 大 中 小 運営経費 自治体からの補助 金(規則等により支出) 自治体からの補助 金(規則等により支出) 自治体予算 自治体組織からの 独立性 強 強 弱 設立根拠法令 民法等 − 規則もしくは要綱 自治体職員研究員 条例等により派遣 条例等により派遣 本務または兼務と して従事 出所:調査研究担当作成 (4) 機能 ここで、自治体シンクタンクの機能を整理する。調査研究機能を柱として、事業課 のコンサルティング機能、外部とのネットワーク機能、人材育成機能を備えている自 治体シンクタンクが多い。

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① 調査研究機能 調査研究の内容は(5)に記述する。 質の高い調査研究を行うためには、外部の専門家や研究員を導入することが必要 である。一方で、自治体としての政策形成能力を高めていくためには、専門家の指 導やノウハウの提供を受けて、職員研究員の調査研究能力を向上させることも欠か せない。外部の専門家と職員研究員のバランスがポイントであるといえるだろう。 ② 事業課のコンサルティング機能 事業課の調査研究を請け負っているところもあるが、事業課に対して有用なデー タを提供する、専門家を紹介するなどが一般的であるようだ。これは自治体シンク タンクの存在価値を庁内的にも理解してもらうことにも一役買っている。 また、あるテーマの調査研究に携わった職員研究員が、その後、関係事業課へ異 動するケースも見られる。研究成果の実現という点ではよいと思われる。 ③ 外部ネットワークの形成機能 外部の専門家や研究員を導入することや、自治体シンクタンクとして各種学会へ 加入することで、研究ネットワークを構築している。それらを通じて、有用な情報 交換や意見交換が行われるなど、さまざまな分野の研究機関や人材との交流が広が っている。 また、職員研究員を調査研究能力向上のために、他のシンクタンクや大学院(科 目履修制度によるものを含む)へ派遣している9ところがあり、これらを通じても研 究ネットワークが構築されている。 なお、こういった背景をもとに、他の研究機関との共同研究が行われているとこ ろがある。 ④ 職員の人材育成機能 前述のとおり、職員研究員が調査研究を実践することで、当該職員の育成に繋が るといえる。 また、③と重複するが、職員研究員を他のシンクタンクや大学院等へ派遣するこ とによっても、その機能が果たされている。 横須賀市都市政策研究所では、昼間開講制の大学院修士課程へ職員を派遣してい る。業務を行いながら週3 日程度、大学院に通学している(2 年間)。夜間・土曜開 講大学院へ派遣しないのは、職員研究員には負担が大きすぎるとの理由による。大 9 横須賀市都市政策研究所は、三浦市の職員を受け入れている。

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学院修士課程での学習を通じて、自己の政策形成能力を高め、それを自治体シンク タンクにおける調査研究に生かし、研究成果の質の向上に繋げている。 なお、同研究所では、大学・大学院科目履修制度も活用しており、2005 年 11 月 現在、28 人の派遣実績を挙げている。 さらに、広く横須賀市職員を対象とした論文作成講座を実施して、職員の論理力 と表現力の向上を図っている。 都道府県が設立主体であるシンクタンクでは、研修所型のシンクタンクもある。 ただし、結果として、研修所に特化されてしまい、調査・研究機能が低下してしま ったものも多いようだ。 (5) 研究内容 研究内容は、産業やまちづくりに関するものが多い。地域事情は異なるが、まちの 活性化は自治体共通の課題となっていることが窺える。また、地域コミュニティに関 する内容も少なくない。 基礎研究となる自治体の現状と課題の分析(人口推計や労働統計等)に力を入れて いるシンクタンクがあり、こうしたところは内外の評価が高い。 一方で、多くは財団法人であるが、自主研究だけでなく、他の団体や機関からの受 託による調査研究もある。 また、大学等の教育機関との共同研究を行っているところもある。その中で、京都・ まいづる立命館地域創造機構は、舞鶴市が設立母体であり、大学のない舞鶴市が京都 市にある立命館大学との連携によって共同研究を実施している。これは、中野区にお いても、近隣区に多数ある大学等の研究機関との連携、共同研究の可能性を示唆する ものである。 【表5】2005 年度自治体シンクタンク調査研究内容一覧(抜粋) =他の団体・機関からの受託による調査研究 =他の団体・機関と共同で行う調査研究 シンクタンク名称 調査研究名 市民・企業アンケート調査 青森市雪国学研究セ ンター 除排雪技能標準化のための研究 青森市ものづくりモデル事業サポート IT 産業育成 地域資源活用産業の市場性研究 青森公立大学地域研 究センター 市民共同研究「地域産業育成」 新しいコミュニティづくり 仙台都市総合研究機構 道州制下の州都論に関する調査研究

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シンクタンク名称 調査研究名 仙台市における生活交通のあり方と行政の関わりに関 する基礎調査 仙台都市総合研究機構 2005 年度市民意識調査 地区まちづくり支援機能調査事業 いわき未来づくりセ ンター 市内景気動向調査 新しい宇都宮の都市構造に関する研究 青少年のまちづくり参加に関する研究 うつのみや市政研究 センター 都市ブランド・シティセールスに関する研究 島しょ地域におけるワーキングホリデー導入に関する 調査研究 (財)東京市町村自治 調査会 多摩地域における新たな働く機会と場の創造に関する 調査研究∼団塊の世代を対象に∼ 産業政策研究 人口政策研究 課題検討(横須賀市の現状と課題) まちづくり基本条例研究 横須賀市都市政策研 究所 西地区交通システム研究支援 小田原市政策総合研 究所 地域コミュニティでの問題解決の仕組みづくりに関す る実践的研究−まちづくりプログラム実証実験− さがみはら夢プロジェクト2054−市制 100 周年に向け たまちづくりプロジェクト− 地域経済の現状分析 健康とスポーツに関する研究 都市内分権推進モデル事業の検証研究 さがみはら都市みら い研究所 GIS(地理情報化システム)を活用した地域分析 みうら政策研究所 小中学校のあり方に関する研究∼教育・学区・施設の視 点から∼ 上越市の「地域力」とポテンシャルに関する調査研究 コンパクトなまちづくりの推進方策に関する調査研究 環境共生のまちづくりの推進に関する調査研究 上越市創造行政研究 所 大学連携によるまちづくりの推進に関する調査研究 今に遺る藩政期金沢の土木構造物の調査研究 金沢21 世紀美術館の経済効果に関する基礎的データの 研究 教科学習を軽度発達障害児とともに進めるポイント 金沢市政策研究所 金沢市における女性起業家創出への課題について 金沢らしさの具体化に関する研究 市民・住民の参加・主体による個性的で豊かなまちづく り 金沢まちづくり市民 研究機構 金沢型創造産業による都市再生∼新幹線開業をみすえ たまちづくり∼

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シンクタンク名称 調査研究名 金沢世界都市におけるIT 革新した産業未来像の探求 金沢まちづくり市民 研究機構 無煙環境都市金沢をめざして 私たちの住む街なかの『魅力資産』の再発見とユニーク 活用アイディア 快適な都市空間づくりに関する研究―名古屋市にみる 有効なヒ−トアイランド対策・都市環境軸に係る研究― 市民と行政とが『協働』するためのしくみづくりに関す る研究 リモートセンシングとGIS を利用した都市緑化の適地 選定 上下水道施設のオープンスペースの活用における市民 等との協働手法に関する研究(仮題) (財)名古屋都市セン ター 環境負荷の少ない都市空間形成調査研究 地域活性化における公共交通のあり方研究 中心市街地におけるバス輸送施策の歴史的経緯に関す る研究 ロータリー式交差点(ラウンドアバウト)の評価に関す る研究 住宅地における安全性を確保したまちづくり計画の検 討 自動車メーカーの進出における立地選定と都市交通政 策評価 (財)豊田都市交通研 究所 都市交通力から見た地方自治体におけるバス交通施策 の評価 地域再生−海外に開かれたコミュニティの実現 京町家再生プランの見直し 平成の町家型地域共生住宅のあり方及びその実現化方 策に関する調査 (財)京都市景観・ま ちづくりセンター 木屋町・都心繁華街の安心・安全コミュニティ形成と地 域景観の形成 京都・まいづる立命館 地域創造機構 舞鶴・京都府北部地域と大連地域間での水環境ビジネス 事業化推進 向日市コラボレーシ ョン研究所 (仮称)市民協働促進条例の制定のあり方について 総合計画策定調査 「(仮称)未来わがまちビジョン」の策定支援 交通バリアフリー法の施行に伴う基本計画策定調査 (財)大阪市都市工学 情報センター 土地利用構想の実現に向けた土地利用規制誘導のあり 方検討調査 大阪市政研究所 都市と環境共生に関する調査研究

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シンクタンク名称 調査研究名 都市活性化戦略策定に関する調査研究 (財)堺都市政策研究 所 廃棄物処理施設とのコラボレーションによる産業クラ スター創出基礎調査 きしわだ都市政策研 究所 協力社会と持続可能(サスティナブル)なまちづくり 地方自治体における協働型政策評価の可能性と課題3 分権時代における基礎的自治体のあり方∼新しい公共 のかたちづくりを目指した都市経営戦略 豊中市政研究所 都市構造の及ぼす財政的側面への影響 リスクコミュニケーションに関する研究 (財)神戸都市問題研 究所 自治体におけるリスクマネジメントに関する研究 尼崎市の土地利用と製造業立地特性に関する研究 事業所景況調査 (財)尼崎地域・産業 活性化機構 尼崎市の製造業におけるものづくり技能伝承と人材育 成に関する調査 (財)下関21 世紀協 会 若者広域交流促進事業 (財)北九州市立大学 都市政策研究所 次世代に向けた都市づくり 公共交通事業者間の連携による公共交通活性化に関す る研究 福岡市における欧米企業のビジネス・生活環境に関する 調査・研究 東アジアにおける地方自治体の国際化施策の研究 福岡市の将来の都市構造に関する研究 (財)福岡アジア都市 研究所 地震に負けないコミュニティとまちづくりに関する研 究 いやしのまち特区の調査・検討 広域行政の調査・研究 宗像市人づくり・まち づくり研究所 市民と大学、地域資源をつなぐ「宗像学」創造プロジェク ト 政策法務研究「条例制定権の範囲と限界、自治立法の可 能性」 (財)福岡県市町村振 興協会 地域経営研究「地域づくりと観光・交流」 出所:財団法人日本都市センター資料より調査研究担当が作成 (6) 研究成果 調査研究に基づき提言された政策が成果となるが、それが実現化したかどうかが常 に問われるところである。研究内容の実現という点から先行自治体シンクタンクの研 究成果を見てみたい【表6】。

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調査研究の目的が、政策の基本方針等、考え方や方向づけのためであることも多く、 その場合、事業化などの目に見えた成果になりにくいという側面がある。 また、調査研究の結果、施策・事業化しないという判断につながったものもある。 さらに、調査研究した担当者が異動(当該自治体シンクタンクから退職)すると、 施策化・事業化が実現しないということも少なくない。 一方で、2003 年以降に設立された自治体シンクタンクも少なくなく、時期的にまだ 施策・事業化に至っていないという状況も指摘できる。 【表 6】自治体シンクタンクの研究成果(抜粋) 横須賀市都市政策研究所 1 国際教育特区 「横須賀市教育特区構想に関する基礎調査」と「「よこすか 未来人創成特区」に関する報告書」を受けて、横須賀市国際 教育特区として結実している。また国際教育担当課が設置さ れた。 2 新世紀ビジョン 横須賀市都市政策研究所では、新世紀ビジョン策定の事務局 を担当している。新世紀ビジョンは、平成19 年 3 月に策定 の予定。 3 事業部へのコンサルティング 青少年課、国際交流課にコンサルティングをしている。青少 年課については、青少年育成推進指針への提言と基礎調査を 行い、青少年プランの策定に至っている(2005 年度)。 また、人口推計や将来人口推計、産業関連などの基礎的な調 査を行い、各課へ基礎資料として(例えば、毎年度改訂され る「横須賀市の現状と課題」など)情報提供している。 実現しなかった例 ●ユニバーサルデザイン:「『横須賀』快適社会へ∼共に実 現する豊かなまち∼」の報告書を受けて、ユニバーサルデザ イン担当が設置された。しかし、その後、ユニバーサルデザ インは進めないという判断がなされている。 ●国際化交流プラン:「横須賀市における国際化を考える: 『よこすか国際都市マスタープラン』を目指して」という報 告書をまとめ、国際交流プラン策定に向けての予算が措置さ れた。しかし国際化交流プランの実現には至っていない。 ●自治基本条例:調査研究は3 年続けられたが、自治基本 条例は制定しないという判断がなされた。 みうら政策研究所 1 三浦市地域再生計画 「6 次経済構築に向けた調査研究」の報告書を受けて、地域 再生計画の「6 次経済の構築による三浦スタイル展開プロジ ェクト」が認定されることとなった。また、営業開発課が設 置された。

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みうら政策研究所 2 人事考課 研究所の報告書「戦略的人財活用に向けた調査研究」を受けて、(先行的に)管理職を対象に人事考課が実施されている。 実現しなかった例 ●生活安全条例:「安全な日常生活」についての調査研究結 果で、三浦市は犯罪件数が極めて低いことなどが浮き彫りと なり、当分の間「生活安全条例は制定しない」ことになった。 上越市創造行政研究所 1 市町村合併 市町村合併に関する調査研究を行い、その結果を踏まえて2005 年 1 月に市町村合併した。 2 歴史的な建造物 の保存と活用 城下町であった高田を中心とした調査研究を大学と連携し て行い、その研究による提言を実現するためのセクションが 設置され、さまざまな保存・活用事業が行われている。現在 は市の主要事業の一つとなっている。 3 地域交通施策の あり方 地域交通施策のあり方について調査研究を行い、その研究結 果を踏まえて、公共交通政策課を設置し、路線バス対策を実 施するとともに、総合交通計画を策定した。 さがみはら都市みらい研究所 1 総合計画策定 相模原市の人口推計や産業などのデータを整理・分析し、デ ータベースを作成した。総合計画策定にあたっての基礎デー タとして活用された。 2 樹林保全計画策 樹林保全計画を策定するとともに、計画に基づいた個別事業を所管課で行っている。 豊中市政研究所 1 公共建築の維持管理 ライフサイクルコストを中心とした公共建築の維持管理に 関する調査・研究を行い、その研究成果を踏まえて、公共建 築保全システムを構築している。 2 市民公益活動の推進 市民公益活動の推進についての調査・研究を行い、その成果 を踏まえて、市民活動のひろばや情報サロンの開設、公募制 補助金、提案公募型委託事業を実施している。 出所:財団法人地域開発研究所 牧瀬稔 調査結果、調査研究担当調査結果をもとに調査研究 担当が作成 (7) 評価 小田原市政策総合研究所は、第三者評価を導入している。上越市創造行政研究所は 自己評価を行っている。内部組織の自治体シンクタンクの場合、行政評価の外部評価 を実施している自治体は、それで評価するのが通常であろう。専門家による評価が必 要か、市民による評価であれば十分なのかは、今後の検討課題である。

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(8) 研究体制 所長もしくは理事長、研究アドバイザー、研究員という構成が標準である。 ① 所長・理事長 自治体シンクタンクの所長や理事長(財団法人の場合)には、大学教授が多い。 これは、次の理由によるものである。なお、勤務は月数日というところが多い。 ・研究蓄積を踏まえたアドバイスをしてもらえる ・首長や自治体への提言に「審議会答申」のような”重み”が出る ・大学や学会などの教育関連機関とのネットワークが構築できる ・著書等を通じて、シンクタンクを広く周知してもらうことができる ② 研究アドバイザー 所長や理事長のほかに、実質的な指導をする外部の専門家として、アドバイザー や専門委員などを設置しているところが多い。大学教授、助教授、講師、シンクタ ンク研究者などが担っている。自治体の政策形成能力を向上させる核となる部分で ある。 ③ 研究員 職員研究員の研究力を補充するために、外部から調査・研究技能を持った研究員 を任用しているところが多い。修士課程及び博士課程修了者で実力がありながら就 職できなかった(しなかった)研究者が多い実態から、この人材を活用すべきであ るという指摘がある。10 【表7】2005 年修士・博士課程修了者の進路 卒業者 就職 進学 その他 死亡・不詳 修士課程修了者 71,440 49,202 9,834 9,673 2,731 博士課程修了者 15,286 9,476 381 3,950 1,479 専門職学位課程修了者 649 493 28 62 66 出所:文部科学統計要覧より調査研究担当が作成 職員研究員は、専任である場合と兼任(通常の業務をこなしながら、研究に参画 している)の両方がある。専任の場合は、シンクタンクへ配属される前、もしくは 配属と同時に他シンクタンクや大学院等へ派遣・出向して政策研究を経験している 者が多い。これは調査研究能力の向上はもちろんのこと、研究ネットワークの構築 10 牧瀬稔(2006)『自治体政策ゼミ意見交換資料』でこの点を強調している。大学院博士課程中の学生 にとっては、経済面の魅力もあり、十分な供給が見込めると分析している。

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という点でも大きな意義がある。 なお、財団法人型や任意団体型の場合は、職員研究員の数が少ないことが挙げら れる。 市民研究員11を採用しているところもある【表8】。これは市民の中にいる専門家 を活用するということと、自治体の政策形成過程に市民が参画するという二つの意 義がある。市民感覚によるアイディアが期待できるとともに、市民研究員の持つネ ットワークを通じて、公共的な問題を意識する人々が増えることも考えられる。 一方で、市民研究員には、調査研究能力の問題や個人の価値観の違い等から、調 整役となる事務局機能の比重が大きくなるという現実的な問題もあるようだ。特定 個人の意見が自治体政策に大きく入り込むという可能性があり、公平性の観点から この点には注意しなければならないとの指摘もある。12 【表8】市民研究員を採用している自治体シンクタンク(抜粋) シンクタンク名 人員 任期 謝礼 対象者(応募条件) 上越市創造行政 研究所 ※ 5 各年度6∼8 月 から3 月まで 月額5,000 円以内 (交通費を含む) 市内に在住、在勤ま たは在学の満18 歳 以上の者 金沢まちづくり 市民研究機構 10 2003 年 9 月か ら2004 年 8 月 まで 無報酬 登録料として年 1,000 円が必要 市内在住、在勤、在 学の18歳以上の者。 ただし、金沢市に隣 接する市町に存す る大学等の高等教 育機関の学生・生徒 は、在住要件を問わ ない。 さがみはら都市 みらい研究所 【共同研究員】 4 2005 年 7 月か ら2 年程度 交通費相当分と して月額1,000 円 の図書券 18 歳以上の者(市内 在住は問わない) さがみはら都市 みらい研究所 【自主研究員】 5 2005 年 7 月か ら1 年程度 交通費相当分と して月額1,000 円 の図書券 18 歳以上の者(市内 在住は問わない) 小田原市政策総 合研究所 ※ 5 各年度6 月頃か ら3 月まで 月額2,500 円以内 市内に在住、在勤、 在学または在活動 で満18 歳以上の者 ※2006 年度は市民研究員を採用していない。 11 上越市創造行政研究所のホームページによると、「市民研究員とは、市民の皆さんの多様な発想をまち づくりや政策立案に活かしていくために、市民の皆さんから研究員として当研究所のスタッフと共同で 調査研究活動に取組んでいただく制度」と記されている。 12 牧瀬稔(2006)『ちば政策法務研究会定例会報告概要』で、協働の推進(ガバナンス)という点で大 きなメリットがあると分析している一方、この点にも触れている。

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この他にも、仙台都市総合研究機構、きしわだ都市政策研究所、八王子都市政策研 究会議などで市民研究員を採用している。 出所:財団法人地域開発研究所 牧瀬稔 作成資料、各シンクタンクのホームページより調査 研究担当が作成 (9) その他 自治体シンクタンクの成功の鍵の一つとして、設立・運営にあたってのキーパーソ ンの存在が挙げられる。上越市創造行政研究所では、職員研究員の異動を頻繁に行わ ないように配慮している。 なお、研究活動に集中するため、雑務を処理する事務アルバイトを雇用していると ころが少なくない。13 13 牧瀬稔(2006)「自治体シンクタンクの可能性③」公職研『月間地方自治 職員研修』9 月号 公職研で、 成功要因の些細な事項として、この点を挙げている。

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第3章

中野区における自治体シンクタンクの姿

1 中野区自治体シンクタンクの方向 これまで、先行自治体シンクタンクの現状を俯瞰し、メリットやデメリットを整理してき た。それを参考にして、中野区に設立する自治体シンクタンクの方向性を明らかにしたい。 (1) 態様等 ① 態様 財政面、職員の派遣等に関する法令面から、規則等により組織内に設立することが 望ましい。その場合、区組織からの独立性の確保が問題となるが、自治体シンクタン クとしての名称(例:中野区政策研究機構)をつけることや物理的に一定隔離された 場所に設立する(例えばパーテーションを設置する)ことで補いたい。横須賀市都市 政策研究所(初期)や上越市創造行政研究所の例から、こういった工夫によって、一 定の独立性を確保することが可能であると考える。 なお、附属機関として条例で設置することも考えられるが、その場合、構成員が非 常勤職員となり、職員研究員の位置づけが難しくなるため、採用しない。 ② 形態 形態は会議体でなく、常設機関とする。これは、次の理由による。 ・数年間に及ぶ研究を行う ・事業部の支援機能として、有用なデータの提供や研究人材を紹介する また、事業部の抱える個別課題の研究を会議体(PT)で行うことも想定している。 その場合は、会議体(PT)のメリットを活かし、自治体シンクタンクの研究員と関連 事業部から派遣された兼務職員が一緒になって調査研究を行えるようにする。関連事 業部の兼務職員は、研究終了後、研究成果を持って事業部へ戻り、施策・事業化の推 進役となる。14 (2) 機能 ① 調査研究機能 外部の専門家を活用して、科学的な立証に基づいた調査研究を行う。実証的な研究 成果を得るため、必要に応じて区民や事業者等を対象とした意識や実態、動向を測る 調査を実施する。 ア 基礎的研究 現在、事業部から施策や事業を構築していくための基礎となるデータがないとい う声を聞く。「成功」と評価される自治体シンクタンクで共通して行っている基礎的 な研究「自治体の現状と課題の分析(人口推計や労働統計等)」に力を入れていくこ 14 豊中市政研究所にもこのしくみがあり、機能している。

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とが重要である。その結果は、政策立案の礎とするとともに、事業部が区政目標で 設定している指標の見直しにも活用していくことができる。 また、事業部が保有する統計データも整理し、IPK(庁内情報ネットワーク)を 活用した全庁的な情報の共有化を図りたい。 さらに、ホームページで(一部)データを区民等へ情報提供することも行ってい く。 なお、これらについては、18 年度中に調査研究分野において、その下地作りを進 めている。 イ 政策研究 (ア) 研究内容 これからの時代の動向を先取りし、めざすべき2050 年の豊かな区民生活につ いて、少子高齢化の及ぼす影響、土地利用の姿、地域経済の発展可能性、区民の 暮らしや自治の意識など、さまざまな角度から政策研究を行いたい。 具体的なテーマは今後設定していくが、産業振興やまちづくりに関する内容に 重点を置く一方で、多様な需要に応えるために幅広い分野について調査研究を行 っていく。15研究期間は、テーマに応じて数か月から数年と幅を持たせるものと する。 将来的には、大学等の研究機関との連携や共同研究も行いたい。警察大学校跡 地に誘致する大学はもちろんのこと、研究アドバイザーや大学院派遣、また、学 会等を通じて協力関係を築くことができた大学やその学生とのコラボレーショ ンの実現も視野に入れる。 (イ) 研究成果 研究の成果は、報告書としてまとめ、区長や関連事業部長へ提言するとともに、 公表する。内容によっては、学会で発表して評価を求め、調査研究の質向上に繋 げていく。中野区シンクタンクの PR やネットワークの構築という点からも意義 があることは前述したとおりである。 なお、中野区に設立するシンクタンクは内部組織を想定しているため、行政評 価による外部評価を受ける。それだけで十分なのか、あるいは、専門的な評価が 必要なのか、また、双方の評価が必要なのか、判断が難しい。仮に双方の評価を 行う場合、その整合性や優位性をどう考えるかを含めて、引き続き検討していき たい。 15 自治体シンクタンク設立時には、①マスコミ受けの良い研究 ②政策実現の可能性が高い研究 ③2~3 年の期間で行う研究の三点が必要であると、牧瀬稔は指摘している。

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調査研究成果の反映までの流れは、次のように考える。 ② 事業部のサポート機能 (2)①アの基礎的研究に関わるデータ提供のほかに、レファレンスや専門家の紹介等 を行い、事業部をサポートする。事業部が自治体シンクタンクを通じて、鮮度・精度 の高い情報を入手できるようにする。事業部に対して、調査研究に関わるサポートに 集中し、施策や事業の庁内調整は行わない。 ③ 職員の人材育成機能 職員の人材育成は、政策研究を行う中でも果たしていくべきであると考える。しか し、人材育成機能に力点を置いたため、本来の調査研究機能が低下し、研修所機能に 肥大してしまった例があることは、第2章3(4)④(10 頁)で述べたとおりである。 調査研究を専らとし、調査研究やそのための職員研究員の大学院派遣等を通じて、人 材育成を行っていくこととする。

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大学院派遣については、大学関係者とのネットワーク形成においても功を奏してお り、制度として設けたい。横須賀市都市政策研究所では、既に3 人の職員が大学院修 士課程へ派遣されている。研究成果や活動の概要をまとめた「政策研究よこすか」(毎 年発行)を見ても、その力量の高さが窺える。本人の負担も考慮して、昼間開講制大 学院への派遣を実施する(人材育成担当が実施している「行政大学院研究科研修とは 別の制度とする)。また、科目履修制度も積極的に活用していく。 (3) 研究体制 ① 外部専門家の導入 研究の質を高め、職員の政策形成能力を向上させるために、外部の専門家及び研究員 の採用は必須である。 所長は、外部から大学教授やシンクタンクの理事等を招聘する。 アドバイザーや研究員も外部の専門家を任用する。アドバイザーは、大学関係者だけ ではなく、シンクタンク関係者を採用する。16アドバイザーも研究員も複数の任用とし、 広く研究分野をカバーできるようにするとともに、複数にすることで競争意識を刺激し、 質の高い調査研究を担保する。 なお、研究員については、フレックスタイムでの勤務を希望する声が多いが、非常勤 職員となるため、地方公務員法上、定められた時間の勤務が前提となる。17 ② 職員研究員の配置 外部から専門的能力を有した研究員を採用する一方で、区としての政策形成能力を向 上するために、職員研究員を複数配置する。職員研究員の調査研究能力を大学院派遣等 によって高めていくことは、前述したとおりである。 また、テーマによっては、事業部の職員が兼務で研究員となって、専門家や専任の研 究員とともに調査研究する(短期研究員)ことも行う。 ③ 区民研究員の導入 区民研究員については、当面採用しないこととする。研究の質を向上させることを第 一とし、参加・参画の視点からの区民専門家の活用については、さらに検討していくこ ととする。 16 例えば、小田原市政策総合研究所の研究員には、都市計画の専門家が入っている。 17 2003 年に高松市が「地方公務員のフレックスタイム制導入」のための特区を申請し、「対応不可」と なっている。

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(4) その他 ① 独立空間の確保 中野区においては、区長室が企画機能を担っているが、庁内調整に追われ、企画立 案にあたり、十分な調査研究が行えない現状がある。現場との距離は「付かず離れず」 がベターである。企画部門から一定独立させるために、物理的にもパーテーションを 設置するなど、調査研究機関としての独立空間を確保する。 ② 広報 設立時をはじめとして、研究成果や活動内容について、パブリシティなどにより情 報発信し、中野区シンクタンクのブランド化を図っていく。 ③ その他 研究員ができるだけ調査研究に集中できるよう、コピーやデータ入力等のための事 務アルバイトを適時採用したい。

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主要参考文献・資料

○総合研究開発機構(NIRA)(2005)『シンクタンク年報 2006』総合研究開発機構(NIRA) ○総合研究開発機構(NIRA)(2003)『NIRA 政策研究 2003 Vol.16 No.9 公共政策形成と

シンクタンク』総合研究開発機構(NIRA) ○北川正恭・縣公一郎・総合研究開発機構編(2005)『政策研究のメソドロジー 戦略と実践』 法律文化社 ○財団法人日本都市センター(2005)『都市自治体の政策研究』財団法人日本都市センター ○財団法人日本都市センター(2005)『第 7 回都市シンクタンク等交流会議実施報告書』財 団法人日本都市センター ○平成18 年度全国都市シンクタンク等交流会議資料(各自治体シンクタンクパンフレット) ○財団法人日本都市センター(2006)『平成 18 年度都市シンクタンクの調査研究に関する アンケート調査結果概要』財団法人日本都市センター ○金安岩男・横須賀市都市政策研究所編(2003)『自治体の政策形成とその実践 横須賀市の 挑戦』ぎょうせい ○横須賀市都市政策研究所(2005)『政策研究よこすか第 8 号』横須賀市都市政策研究所 ○杉尾正則(2004)『市町村内シンクタンクを核とした政策創造』財団法人福岡県市町村研 究所 ○牧瀬稔(2006)『自治体シンクタンクに関する調査研究 自治体シンクタンクを成功させる ためのノウハウの提供』特定非営利法人まち研究工房 ○牧瀬稔(2006)『ちば政策法務研究会定例会報告概要』 ○牧瀬稔(2006)「若手研究員からみる自治体シンクタンクの現状と課題」『第 7 回政策メッ セ:ワークショップ議事概要』 ○牧瀬稔(2006)「自治体シンクタンクの可能性」『月刊地方自治 職員研修』7・8・9 月号 公職研 ○牧瀬稔(2006)『中野区区長室意見交換資料』 ○牧瀬稔(2006)『自治体政策ゼミ意見交換資料』 ○山口道昭(2006)『協働と市民活動の実務』ぎょうせい 聞き取り等を行った自治体(シンクタンク) ○横須賀市都市政策研究所 ○さがみはら都市みらい研究所 ○みうら政策研究所 ○うつのみや市政研究センター ○小田原市政策総合研究所 ○藤沢市政策研究室 ○上越市創造行政研究所 ○金沢まちづくり市民研究機構 ○豊中市政研究所 ○京都・まいづる立命館地域創造機構 ○三鷹市企画経営室 ○浜松市企画課 ほか

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18 中区調第 157 号 自治体シンクタンクに関する調査研究報告書 2006 年 10 月 中野区区長室調査研究担当 03-3228-5572(Tel) 03-3228-5643(Fax) chosakenkyu@city.tokyo-nakano.lg.jp

参照

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・平成 21 年 7