• 検索結果がありません。

多様性に想う

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "多様性に想う"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! この地球上には数千万種とも数億種ともいわれる多様な生物が生きているというが,今や生物多様性とい う語を耳目にしない日は無いほどのご時勢となった.少なくとも現時点で知られている限りの生物は,共通 の祖先に由来する,すなわち単系統であると考えられる.いいかえれば,生物の多様性は,「生命の歌」と いう共通の音楽を,それぞれの分類群がたどってきた歴史を反映して変奏した曲の多様性ということができ る.したがって,特定のモデル生物を研究することによって,生物一般に共通な仕組み等が理解しうると期 待するのは当然過ぎるほど当然である.実際,いわゆる先進的な生物科学は,ごく少数の「モデル生物」か ら得られた膨大な知識を主な足場として構築されている.もとよりモデル生物を利用することの利点は計り 知れない.特定の生物に関する研究が多いということは,その生物に関する情報の種類も量も多いというこ とでもあり,この面でもモデル生物を用いる利点は大きい.しかし,モデル生物としての利点ゆえに生ずる 偏りから,モデル生物を用いて得られた結果は,必ずしも自然界で起こっていることとは一致しない可能性 があり,モデル生物で得られた情報がどれだけ一般化できるかについては十分に配慮する必要がある.この 問題は,Volvox carteri を用いた性誘導因子や生殖細胞の分化などの研究で名高い Kirk 夫妻をして,“Volvox

carteri is an excellent model for other Volvox carteris.”と述懐させたことに端的に示されている.

一方,すべての変奏曲に共通でありながら,特定の変奏において初めてよく見えてくる重要なテーマも少

なくない.「奇妙な」生物たちを研究する意味はここにある.実際,医学上重要な現象や生体物質には,哺

乳類以外の生物で発見されたものも少なくない.比較的最近のものでは,サイクリンの発見が典型的な例と いえよう.

もうひとつ例を挙げよう.分子生物学で最も美しい実験といわれる“Meselson-Stahl の実験”を院生の時

代に成し遂げ,その後も一貫してDNA を研究してきた高名な分子生物学者 Matt Meselson と,その弟子で

あるMark Welch の研究室**では,ウッズホールの臨海実験所(サイクリンや GFP 発見の場でもある)を足 場に,10年以上にわたってヒルガタワムシ類(Bdelloid rotifers)という,動物学会会員ですら知らない人が 多かった奇妙な微小動物を使って研究している.この動物は乾燥にきわめてよく耐えることができることで も有名であるが,8千万年程度前に両性生殖をやめ,単為生殖だけを行い続けていながら400種近くに分岐 しているものである.有性生殖を全く行わない多細胞動物は例外中の例外ではあるが,「性」という生物学 の大難問をDNA の観点から理解するうえで貴重な情報が得られるのではないかという期待に基づいて,こ の奇妙な動物の研究を始めたと聞く.彼らの研究によって,この動物では哺乳類などでも知られだした DNA の水平移動を,あろうことかバクテリア,菌類さらには植物からでさえ盛大に行っていること,DNA 修復機能が極めて高いことなどが明らかになった.また,このような特性が,乾燥に良く耐えるという特徴 にもつながりはじめており,この奇妙な動物を通じて,新しい大きな世界が見え出している. Meselson らの研究などが示すように,「奇妙な」生物を研究することによってもたらされる豊かな水脈は, 生物科学の新しい扉を開き,次なる発展を保証するものとなるであろう.若き研究者達が,“Study Nature, Not Books”という金言の重みを噛み締めて,勇気をもって広大な生物の世界を飛翔することと,そのよう な研究を財政面でも支援できる体制がわが国においても構築されることとを,年頭に当たっての願いとした い.

多様性に想う

* 〔生化学 第81巻 第1号,p.1,2009〕

アトモスフィア

放送大学教授 **http://www.mcb.harvard.edu/Meselson/

参照

関連したドキュメント

1、研究の目的 本研究の目的は、開発教育の主体形成の理論的構造を明らかにし、今日の日本における

・1の居室の定員は1人である。 ・利用者1人当たりの床面積は内法で 10.8 ㎡~12.2

事務局 そのとおりである。. 委員

1.はじめに 道路橋 RC

市場を拡大していくことを求めているはずであ るので、1だけではなく、2、3、4の戦略も

喫煙者のなかには,喫煙の有害性を熟知してい

これは基礎論的研究に端を発しつつ、計算機科学寄りの論理学の中で発展してきたもので ある。広義の構成主義者は、哲学思想や基礎論的な立場に縛られず、それどころかいわゆ

線遷移をおこすだけでなく、中性子を一つ放出する場合がある。この中性子が遅発中性子で ある。励起状態の Kr-87