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簡単な二大政党景気循環モデル
河 相 俊 之
1 はじめに 経済現象は循環的性質をみせるものであるが,その原因の一つとして政治的 要因を考えるのが政治的景気循環の議論である。その最も早く代表的なモデル はNordhaus(1975)のものである。そこでは市民(個人,有権者)の示すイン フレーションと失業に関する選好を表した総得票関数と,インフレ期待を伴う フィリップス・カーブを制約として,得票率の異時点間最大化を目指す政策当 局という形のモデルが構成されている。しかし,適応的期待を仮定していたこ ともあり,その後の合理的期待論の進展から経済学者にこのモデルは忘れられ ることとなり,大きな展開はなされなかった。しかし,1980年代後半になって 再び新しい立場から政治的景気循環論が議論されはじめ,その代表的なものと してAlesina(1987)のモデルがある。このモデルはインフレと失業という点 ではNordhausモデルと視点は同一であるが, Hibbs(1977)が主張したよう な政党間での政策目標の相違を取り入れ,政策に関する不確実性要因を生じさ せるものとして選挙を捉え,その下で政党と民間部門とのゲーム的状況をモデ ル化している。 これら二つのモデルには,次のような共通の問題点が存在すると思われる。 すなわち,政党がある政策を採用することによって生じる市民から政党へのフ ィードバック,そしてその逆の市民が政党への支持を示すことによって生じる 政党へのフィードバックが希薄な点である。Nordhausモデルは政党間競争も 存在せず,市民は受動的で,政策当局の一方的な最:大化問題という形を採って いる。Alesinaモデルにおいては各政党に関する選挙での勝利確率が外生的に278 彦根論叢 第283・284号 1) 与えられるのみで,市民は明示的に現れない。 本稿においては,Nordhaus, Alesinaのモデルとは少し違った観点からモデ ルを構成し,政治的な景気循環の存在を導く。第一にインフレと失業という観 点ではなく,成長と平等という観点にたっている。第二に政党と市民との間に 明確なフィードバックの関係を考える。 モデルの概略は次の通りである。社会には所得格差があるものとし,低所得 者層を支持基盤とする政党と高所得者層を支持基盤とする政党を考える。前者 は平等的政策を行い,後者は逆に高所得者層を優遇する。そのことにより投資 額が影響を受け,経済成長にも影響する。成長率,平等の度合いによって市民 は政党の支持に関する態度を変え,支持率によって政党は政策を変化させる。 このモデルによって,政権の交代を引き起こしつつ,経済が循環しながら成長 していく可能性が示される。また政党行動の変化が景気循環にどのような影響 を与えるかが考察される。 II モデル II−1 経済的枠組 所得格差を考慮した単純な経済成長モデルを考える。 〈生産関数〉 Y= mK. (1) Yは生産量,Kは資本量であり, mは生産係数で一定であるとする。 1)政府と市民(個人,有権者)が固定的か能動的かという点から,そして実証的な観点から, 1980年前半までの種々の政治的景気循環論を論じたものとして,Alt&Chrysta1(1983) 第5章がある。また,景気循環ではなくミクロ経済学的分野では,各主体の相互依存関係 が明確な興味深いモデルが存在する。例えば,関税が政治的に決定されるモデルである Young and Magee(1986)においては,市民,利益団体,政党がそれ.それ各二組存在し, 政党の政策が利益団体,市民の利益に影響を与え,そのことが利益団体の政党への献金額 に,市民の政党支持に影響を与えるという相互依存関係,ゲーム的状況が分析されている。 フィードバックという言葉は,厳密には時間的に遅れて生じるというニュアンスがある と思われるので,この言葉によって種々の議論をまとめて論じるのは適切でないかもしれ ない。
簡単な二大政党景気循環モデル 279 〈所得〉 経済を構成する各個人(市民)は[0,1]上の実tw 1でそれぞれ表されるもの とする。y(1)を個人1の所得を表すものとし,次のような線形の関係を想定す る。
y(1)=al+b a)O, b>O.
考える社会には所得格差が存在するのである。全ての生産物が各個人に分配さ れると仮定すると,y= f, iy(1) dl == 一g一+b (2)
が成立することになる。 〈貯蓄〉 個人(市民)1の貯蓄をs(1)で表すものとし,貯蓄関数を次のように仮定す る。 s(1)=ψ(夕(1)/}つ夕(1) ψ’>0, 1>ψ≧0. ここで現れるYは生産量ではなく,(人口1で割った)平均所得として考えてい る。このような形の関数を考えることは,相対的に所得の大きい個人ほど貯蓄 率が高いということを想定している。簡単化のため ψ(・(1)/Y)一αツI1) であるとする。全ての個人が貯蓄,消費を行うために,αは適当に小さいもの とする。 総:貯蓄は, s == f, is(1) dl = f, iS{al+b}2dl一一劉誓+ab+砂
(2)式を使ってbを消去すれば,280 彦根論叢 第283・284号
s一発催+Y2} (・)
である。 〈資本蓄積〉 貯蓄は全て投資されるものとする。すなわち, K=S (4) 2) である。 II−2 政治的枠組 民主主義,二大政党制を基本的枠組とする。 〈政党行動〉 低所得者層を基盤とするA政党と高所得者層を基盤とするB政党が存在し, それぞれ自己の支持者層の利益を増大させることと政権を維持することを目的 3) としているものと仮定する。且政党の支持率をσとすれば,β政党の支持率は 1−qである。政党は受動的,固定的であると考え,支持率によってその行動が 定まっているものとして,具体的には次の微分方程式を想定する。号一φ(・)+μ μ〉砿 (・)
φという関数については,連続な減少関数,limφ(q)=。・,1imφ(q)=一〇〇, ロ ユ ダ φ(・/・)一・を仮定す・.・〉去の・き・ま緻党が政権を担当し,〆÷の ときはB政党が政権を担当すると考え,各党は政権担当中,自己の支持者層の 利益を高めるために所得の分配に関連したαを(何らかの政策によって)操作す る。A政党であれば低所得者層の分配を大きくするためにaを低めるような政 策を行い,B政党では逆が行われる。ただし,支持率が低くなれば政権維持の 観点からより緩やかな政策を行うものとして,φを減少関数であるとの仮定を 2)資本減耗を考えて,K= S一 6Kとしても結果に影響しない。 3)Hibbsの考え方に従って,政党がイデオロギー志向をもつ主体であると考えている。こ の考え方はDowns(1957)から始まる,政権獲得が政党の目的である,という仮説から離 脱している。簡単な二大政党景気循環モデル 281 おき・・一二のときは・に対する㈱・行われないもの・すb,・・は政策とは 独立してaに影響を与える社会的,経済的なパラメータである。 〈不平等度〉 市民(個人)の行動の基礎となる不平等度iを次のように定義する。すなわち, 平均所得の(1−n)×100%以下の市民(個人)の割合によって不平等の尺度とす る。それは(1−n)Y=ai+bの関係から,
・一朝一穿 (・)
である。iが大きいほど平均所得の(1−n)×100%以下の市民の割合が大きい ことになる。 〈市民行動〉 各個人(市民)は不平等度(のと経済成長率(Y/Y)によって政党に対する支 持を決定すると仮定する。そして社会全体としての市民行動を次の微分方程式 によって与える。4 = G(Y/Y, i). (7)
ただし,∂G(Y/Y,i)/∂(Y/Y),∂G(Y/Y, i)/∂iは共に正であると仮定す る(以下では特に必要のない限り,それぞれGg, G、と書く)。 第1図を使ってこの式の想定を説明する。まず第一に,市民(個人)にとって は成長率が高く,不平等のないほうが効用は高いであろう。第二に,A政党は 低所得者層を,B政党は高所得者層を基盤にしていることは既知であり, A政 党の支持率を上げることは経済成長よりも平等化を優先することになるという こと,B政党の支持率を上げることは平等化より経済成長を優先することにな るということは,市民にも容易に理解できることである。さて,第1図におい てD線上で考えると,d。点では経済成長率,不平等度共に低く,市民の大多数は 経済成長を優先に考えるであろうから,B政党支持の傾向が強く,その支持率 4)このμという正のパラメrタが存在しなければ,このモデルでは経済成長によって自立 的に平等化が進む構造になっており,それは現実的でないと考えられる。282 彦根論叢 ng 283 ・ 284号 . D Y/Y d,
E
第1図 は上昇するであろう。しかし,経済成長率が高くなるにつれて公平の観点から 社会を見るようになって経済成長優先の傾向が減少する。そして経済成長率が 十分高V・ dr点であれば,不平等を減らすことを優先するようになり, A政党支 持の傾向の方が強くなると考えられる。E線上でも同様に考えられるが,そこ では不平等度が高い分,経済成長率がd,点よりも低いところであっても,不平 等を減らそうという傾向がでてくるであろう。すなわち,A政党支持への転換 点がより低いところがら始まると考えられ,政党支持の転換点,φニ0線は第. 5)
1図,i−Y/Y’平面上で右下がりとなることが判る。 第1図において,南西方向になればなるほどB政党支持が強く,北東方向に なればなるほどA政党支持が強い,そして政党支持の転換点を示す線分は右下 がりである,ということを表すものとして(7)式を仮定する。III景気循環
前節で提示したモデルは,(1)及び(3)∼(7)の6本の式で完結している。そし てその中に3本の微分方程式を含むが,f ==α/Yとおき,集約することによっ て,このモデルは2本の微分方程式体系として表すことができる。すなわち, 5)i方向の変化を中心に考えても同様の推論が成り立つ。簡単な二大政党景気循環モデル 283 チーφ(・)+・一 {釜+1} 4−G(・勉任}+・后一チ). (8) (9) この2本の微分方程式体系の挙動を分析することによって,このモデルで表 された経済の動きを理解できる。さて,位相図による分析を行うため,(8),(9)
式においてf=0,4=0の場合のfとqとの関係が必要である。前者は
劣一響く・
によって減少関数であることがわかる。後者はfのみの式であり,適当な値の 正の実数解をもつものとする。位相図は第2図のようになる。(8),(9)式の微 6) 分方程式体系が循環することがわかる。 次に均衡の近傍での振るまいについて考えるために,(8),(9)式を均衡の近 傍で線形近似すると,f
L
r
」
sxe
ノ=o 9’4==oe
1
q 第2図 6)厳密には第2図のような位相図において,循環しない可能性は残されている。また均衡 の存在は,limφ(q)=∞, limφ(q)=一。○より保証される。 q−1 a−o284 彦根論叢 第283・284号
一
=一
︸ノ4
一
am (f*) 2 6 gtgM奄撃kLf*GE+th.), Gf, ∵)(f−f’ *q−q)(・・) となる。ここで*は均衡での値であることを示す。この係数行列をHとして, trH=一Ng1zMz!一tL:一tL:一if*)2〈o detH = 一f*di’(q*){?Mf* Gg+“.), Gr } 〉 0 7) であるから,近傍で安定である。 以上によって,循環の存在が示され,近傍で安定であることもわかった。そ してfとqの循環は次のことを意味する。Y/Y==αm{f2/12+1}であるから fの循環は経済成長率の循環であり,すなわち経済は循環しながら成長してい く・とになる.qは政党へ破牌であり, X・・xeラ・一タの値による・浩を 横切るという場合も当然考えられる。その場合,政権交代である。政権が順々 に交代していきながらの景気循環の可能性が存在するわけである。 IV 政党行動の変化による影響 政党行動の変化は,展開してきたモデルにおいてはφという関数が変化する ことである。それは現実的には例えば政治制度の変化,メディアの発展等によ 7)近傍で循環するか否かは(trH>2−4detHの値,すなわち, 〆響り謁・φ・(q・){響α・升α} の正負によって決まる。循環するには負であることが必要であるが,関数が一般的な場合 にはこれを決定できない。パラメータ等の現実的な値を考えてやると,α,mは10−1のオー ダー,f*は0.5−2の間なので, Idi’1,α,儲が10−1のオーダーでも十分負になる。そし てより具体的にφを三次式,Gを線形,そして差分体系として考えてみると,1φ’1は10一’ のオーダー,儲,Ciは1のオーダーとの無理のない試算ができる。ただし,多くの簡一単化 を行っているモデルであり,試算においても全く問題がないわけではない。何にせよ,モ デルの大域的な挙動は上記式だけでは判らず,結局は位相図より循環「的」性質をもつと 考えてよかろう。近傍での循環は以後生じているものとする。簡単な二大政党景気循環モデル 285 ってもたらされるものと考えたりすることができよう。φの変化は多様なもの を考えることができるが,ここでは次のような変化についてのみ考察する。す なわち,φ1(q)からφ2(q)に変化するとして
di,’(q) > di,’(q) for all q (11)
の場合である。φ、に比べφ2は,支持率が大きくなるにしたがって,政党が自己 の支持層をより有利にする政策をより早いスピードで採用していくことを示し てい・.グラフでは,厳密ではない・惚一吉,φ一・を中心・して時計回り に回転するような感じである。 このような変化を引き起こすものとして,ここでは具体的に,比例代表制か ら小選挙区制へという選挙制度の変化というものを考えることができるかもし れない。小選挙区制は支持率に比して議会の議席数が過剰に高く,もしくは過 剰に低くなることに本質的部分があり,よって支持率一定の下では小選挙区制 の方が政権を担っている政党の議席数が多いであろう。そして政権を担ってい る政党は,議席数が多いという点で,より激しい政策を行う可能性が考えられ 8) るであろう。 さて,(9)式にqは含まれず,そしてφという関数は(8)式にのみ含まれ, φ、(1/2)=φ2(1/2)=0だから,上記のようなφの変化は明らかに均衡のグを 告へ近づけることになる・f・には影響を与えないことも明らかである・ 8)しかし,次のようなことも考えられる。すなわち,支持率に比して議会の議席数が過剰 に高く,もしくは過剰に低くなるということは,支持率の変化に対してより敏感に議席数 が反応するということでもあるので,ミクロ的な,そしてゲーム論的な観点から政党行動 を捉らえると,政党の公約する政策は小選挙区制の方がより似通ったものになるという可 能性である。もしそうならば,小選挙区制の方がより緩やかな政策を行うということにも なる。より厳密な議論はミクロ的なモデル,そして実証的な研究によってなされなければ ならないが,現実的な問題として政治制度の変化というものを念頭に置くことはできる。 その他には,有権者も選挙制度によって行動を変える可能性の問題,小選挙区制は二大 政党に,比例代表制は小党分立という現実的な問題もある。後者の問題に対しては,この モデルの構成上,比例代表制においても二大勢力的な構図を採っているなどの解釈をしな ければならない。 なお,(11)式はφ’についての不等式であるので,かなり大きな変化を考えていることに なる。286 彦根論叢第283・284号 均衡の近傍でのモデルの振るまいは,(10)の連立線形微分方程式によるが, その循環を生じる解は, e (tr”i2”[xcos (1/2) {4detH 一 (trH) 2} ”2 t 十ysin(1/2){4detH一(trH)2}1/2t] で与えられる。φの変化のよる影響は,trHにはφもq*も含まれておらず, detHにはφノ(q*)が含まれているということから,次のようになる。trHの値 は不変であるから,上式のe(t「H/2)tに影響を与えないという点で,均衡への収束 速度は変わらない。そしてdetHが大きくなれば,{4detH一(trH)2}が大きく なるという点で,1周期は短くなり,逆は逆である。しかし,q“の変化を考え ると,(11)で示されるようなφ1か日φ2の変化によってdetHが大きくなるか 9) 小さくなるかは不定である。 以上のことから次のような含意が引き出せるであろう。支持率が大きくなる にしたがって政党が自己の支持層をより有利にする政策をより早いスピードで 採用していくという政党行動の変化は,第一に政権交代の可能性を増すもので ある。しかし第二に,均衡に近いある範囲内において景気循環を激しくするか 等は不定であり,どちらの可能性も存在する。それは政党行動が変化しても最 終的には経済の挙動を決めているのは市民行動であって,政権交代の可能性を 増す方向へのシフトによって,結果としての政策が激しいものになるとは限ら ないためである。ただし,二番目の含意に対しては,連立線形微分方程式によ る分析から,むしろ大域的には景気循環を激しくする可能性を見ることができ るかもしれない。しかし,最終的な結論は,より一般的なモデル,より深い分 析で決着されなければならない。 9)例えば(7)式を々/q(Fq)=G(・)という形にすると,φ、からφ2の変化によってdetH が大きくなる可能性が増すだろう。この(7)式の変更は,qが0と1との間から飛び出さな いための工夫である。しかし実はより根本的には,Gの関数の中にqが含まれるのではな いかという大きな問題がここに存在する。Gの関数の一般化はノ’*にも影響を与えるという 結果を生じさせるであろう。
簡単な二大政党景気循環モデル 287
V おわりに一モデルの問題点一
本稿では,成長と平等という観点による政治的行動を含む成長モデルを構成 し,政権交代を伴う景気循環の存在を示し,そして政党行動の変化が景気循環 に与える影響についても若干の考察を行った。以下ではモデルの問題点を述べ ていく。 第一に,成長と平等という観点がどこまで有効かという点がある。政党及び 市民が成長と平等を第一義的に考えているか否かという現実的な問題と,失業 とインフレーションという問題との関連である。後者については,成長と平等 という観点が,インフレと失業という観点と完全に対立するものではないとい うことはできる。失業は働けるものと働けないものとの不平等という観点から みれるだろうし,インフレも高所得者と年金生活者等における不平等,という 側面があろう。また,成長率が高いときほど失業率が低い等の関係が考えられ る。 第二に,政党間競争のミクロ的基礎が明示的でない点がある。政党行動は(5) 式で与えられるが,その行動は必ずしも能動的ではない。また,選挙時期とそ うでない時期では特に政党行動は相違してくるはずであり,Nordhaus, Alesinaのモデルにおいては,この選挙時期というものが大きな役割を果たし ている。本稿のモデルは新聞の世論調査等も視野にいれているともいえるが, 主要な点で時期による政党などの行動の変動を考慮してないといえる。政党行 動に関して,たとえばゲーム論的な観点からの精密な議論が必要といえるであ ろう。ただし,政党も内部組織をもつ有機体である点,政党の行動基準が何で あるか等を考えると,この問題は簡単ではない。 第三として,市民行動のミクロ的基礎も必ずしも十分ではない。特に市民(個 人)は,現実には過去の実績そして公約等を考慮し,また予測,期待もする が,その点は十分にモデル化されていない。特に政党行動に関する予測,そし て戦略的行動を市民は全く行っていない,ということは大きな批判点であろう。 しかし,例えば所得についての異時点間最大化からの接近ということを考えた288 彦根論叢 第283・284号 場合,市民(個人)が不平等度を考慮するということの意味の中に,効用が他人 の状況に影響を受けるという側面を含んでいると考えるならば,それはモデル の構成上難しい問題であろう。Gの関数についての一般化も,ミクロ的基礎に 関連してこれからの課題となろう 第四として,経済的側面についての極端な簡単化の問題がある。失業が明示 的には扱われていないということをあげることができ,また不平等度が生産関 数に影響を与えること,例えば不平等が極端に進むと生産性の下がる可能性は 十分に考えられる。後者についてはmをiの関数にすることなどによって表す ことができるだろう。関数を線形にしていることは解析的分析を可能にするた めの役割を果たしてはいるが,現実的でない点,また変数のとる範囲を制約し たりもするので,改善されなければならない点である。 最後に,長期的,大域的なモデルの挙動の問題がある。もし一方の政党が長 期に渡って政権を取れなくなれば,その政党は政策を変更するであろうから, 嗣はq・一壱にな・,・がそのよう・・変化す・・いう点がある・・れはモデル がどの程度の期間を視野に入れているかという問題とも関係し,現段階で必ず しもそうである必要はないと思われるが,しかしμの可変性については一考を 要する。モデルの大域的な挙動のより深い分析も行われなければならない課題 である。 (付記)本稿のモデルは,経済経営研究所の研究会で発表する機会を与えられ,その際 に出席された先生方から多くのコメントをいただきました。結果として,より広い分 析に踏み込むことにもなりました。ここに記して感謝致します。もちろん,有り得べ き誤謬は筆者の責任です。 参 考 文 献 Alesina, A., ”Macroeconomic Policy in a Two−Party System as a Repeated Game”, Qua7tery/ioumal 〔∼f Economics,102,1987. Alt, J. E. and K. A. Chrystal, Political Economics, University of California Press, 1983. (「政治経済学入門」,深谷庄一訳,多賀出版,1990.)
簡単な二大政党景気循環モデル 289 Downs, A., An Economic Theo?3,0f Democraay, Harper&Row,1957.(「民主主義の経済 理論」,古田精司監訳,成文堂,1980.) Hibbs, D., ”Political Parties and Macroeconomic Policy”, American Political Science Review, 71, 1977. Nordhaus, W., ”The Political Business Cycie”, Review of Economic Studies, 42, 1975. 三上和彦,河相俊之,河野洋,「政治過程と経済問題:展望」,神戸学院大学〃b娩勿g助6γ Sen’es (B) No.4, 1992. Young, L. and S. P. Magee, ”Endogenous Protection, Factor Returns and Resource Aliocation”, Review of Economic Studies, 53, 1986. 噂