職業教育訓練立法の形成と変容 1
職業教育訓練立法の形成と変容
大 和 田
敢
太
(1)はじめに (2)理念の変遷 (3)当事者の責務:公制度から私法的関係へ (4)教育と訓練の関係:職業教育訓練と教育権 (1)はじめに 現行の職業能力開発促進法は,1985年に,職業訓練法を改名する形式と手続 によって成立しているが,その改名された職業訓練法は,1958年に,(旧)職 業訓練法として制定された後,1969年に,新規に,職業訓練法として登場した ものであった。したがって,個別の立法としての職業教育訓練法制度は,1958 年の(旧)職業訓練法から発するのであるが,他方,労働基準法は,制定時(1947 年)には,「技能者の養成」(第7章)という規定を含んでいたが,(旧)職業 訓練法制定によって,第74条(技能者養成審議会)は廃止されることになった ものの,第70条―第72条の内容が改正されただけで,「技能者の養成」の章は, (旧)職業訓練法制定後も存続している。しかし,職業教育訓練法制度は,実 質的には,労働基準法の体系から離脱することとなった。それとともに,職業 教育訓練立法は,時々の雇用政策の理念とその遂行とに拘束されることにより, 制度の改廃が頻繁に行われるものの,労働者の職業教育訓練を受ける権利と いった視点からの理念の見直しや法制度の構築が試みられることはなかった。 その結果,労働基準法第7章(技能者の養成)から派生する形で制定され, 再編されてきた(旧)職業訓練法・職業訓練法・職業能力開発促進法を通じて, 職業教育訓練法制度は,その公的性格の後退とそれに歩調を揃えて労働者の権 利性の希薄化といった事態が進行している。しかも,労働者の職業能力の養成2 彦根論叢 第363号 平成18(2006)年11月 といった課題は,多岐にわたって重要な問題が山積しているにもかかわらず, 現行の職業能力開発促進法の対象とする範囲とはされていない事例が多いので あるが,その原因は,職業教育訓練の理念とその概念の曖昧さと根本的な誤謬 にあることが改めて指摘されなければならない。 「技能労働者の養成」という用語が雇用対策法に登場しているが,「技能者 の養成」を掲げる労働基準法体系との関連における意義と位置づけは不明確で あり,労基法における「職業訓練に関する特例」による「職業訓練を受ける労 働者」の労働基準の設定が,職業能力開発促進法の理念や政策目的とどのよう な関連性と整合性がはかられているのかも曖昧なまま放置されており,職業教 育訓練立法と労働基準法との関係は切断されたままである。さらに,近時の「職 業能力」養成制度の多様化と高度化は,例えば,研修資格の外国人労働者問題, 医師臨床研修制度問題や従業員海外留学企業内制度(費用返還)問題1),ある いは専門職大学院問題のように,本来的には職業教育訓練制度に包含されるべ き対象として射程の範囲内に含まれるべき課題でありながら,理論的位置づけ が曖昧にされたまま放置されていることも,問題視されるべきであろう。 本稿では,職業教育訓練法制度の立法過程を検証することによって,それが, 労働基準法からの離脱ということにより,その上位にある憲法の労働権や生存 権および教育権理念の希薄化を通じた,職業教育訓練法制度の変容を促すもの であったことを明らかにすることを目的としている2)。対象とする立法過程は, 表1のとおりであるが,立法規定の変遷とともに,その法制定・改正のための 1)人事院が一般職国家公務員の留学費用の償還に関する法律の制定を求める意見を提出し た(2005年10月18日)ことを受けた閣議決定(「行政改革の重要方針」2005年12月24日) に基づき,国家公務員が留学中又は留学終了後早期に離職した場合に,留学費用を償還さ せる制度を創設するため,「国家公務員の留学費用の償還に関する法律」が制定された(2006 年6月14日公布)。このような経緯においては,財政的視点からの議論が優越し,職業教 育訓練のあり方についての制度論的視点も権利論的視点も欠いていた。 2)「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」報告書では,労働契約法は,罰則は設 けず,監督指導を行わない「労働基準法とは別の民事上のルール」とされている。このこ とについては,憲法第25条や第27条の理念を具現するものとしての労働基準法の体系から 離脱するということは,罰則や監督指導といった実効性を欠いたものになるだけでなく, 結局は,理念なき労働契約法制へと変質するとの批判が強いのである。それは,労働基準!
職業教育訓練立法の形成と変容 3 国会議事録に掲載されている審議過程を分析の対象とする3)。 (2)理念の変遷 職業教育訓練法制度の理念や目的が,条文そのもののうえで,大きく書き換 えられてきたが,そのことの意義と役割が,従来,明確にされてきたとはいえ ない。その原因は,数次にわたる立法改正は,法制度の理念と内容において実 質的には抜本的転換であるにもかかわらず,69年法以外は既成の立法の修正法 案であったため,個別的な各論の議論が優勢となったことに主因があろう4)。 法という根本的な法制度の理念と労働者保護の役割を換骨奪胎させることになってしまう という職業教育訓練法制度の変質と同じ過ちを繰り返すものである。 3)職業教育訓練立法の歴史的展開については,隅谷三喜男・古賀比呂志『日本職業訓練発 展史《戦後編》』(日本労働協会,1978)参照。能開法以降の生涯学習と職業教育訓練制度 との関係については,大和田敢太「技能者の養成」基本法コンメンタール労働基準法第5 版(2006)293頁以下参照。 4)与野党一致(全会一致あるいは起立総員)で成立したものも多く,起立多数の場合も, 国会会議録に反映している限りでは,一部で公共性の後退に対する批判が散見される他に は根本的批判意見は見あたらない。 立 法 名 略 称 職業訓練法(1958・5・2) 58年法・旧職訓法 職業訓練法(1969・7・18) 69年法・職訓法 職業訓練法の一部改正(1974・12・28) 74年改正 職業訓練法の一部改正(1978・5・8) 78年改正 職業訓練法の一部改正(職業能力開発促進法)(1985・6・8) 85年法・能開法 職業能力開発促進法の一部改正(1987・6・1) 87年改正 職業能力開発促進法の一部改正(1992・6・3) 92年改正 職業能力開発促進法の一部改正(1997・5・9) 97年改正 職業能力開発促進法の一部改正(1999・7・16) 99年改正 職業能力開発促進法の一部改正(2001・4・25) 01年改正 職業能力開発促進法の一部改正(2006・6・21) 06年改正 表1 職業教育訓練法制 !
4 彦根論叢 第363号 平成18(2006)年11月 特に,85年法が,法律名称の改正であったが,内容的には,小規模な改正にと どまった反面,その後の法改正において実質的な修正を実現するという経過を 辿ったため,職業教育訓練法制度の公共的性格から個人責任への転化という変 質が見逃されてしまっているのである。立法規定上は,第1条の「目的」条項 と第3条および第3条の2の「原則」・「基本理念」条項の変遷は,表2・表3 のとおりである5)。これらの修正・変更の意義と役割については,紙幅の関係 もあり詳述は省くが,職業教育訓練法制度の公共性の後退・公的責任の放擲か ら,個人主体の能力開発という美名のもとでの個人責任への転嫁・その権利性 5)条文の引用において,参照法律番号名は省略し,見出しは必要に応じ適宜引用した。修 正されていない条文については,その旨明記し,省略する。立法形式とその手続にしたがっ て,条文中の字句修正の場合にだけアンダーラインを付し,全文修正あるいは新設の場合 は付していない。なお,本文・註での条番号表記は,ローマ数字に統一した。 58 年 法 この法律は,労働者に対して,必要な技能を習得させ,及び向上させるために,職業訓練及 び技能検定を行うことにより,工業その他の産業に必要な技能労働者を養成し,もつて,職業 の安定と労働者の地位の向上を図るとともに,経済の発展に寄与することを目的とする。 69 年 法 この法律は,雇用対策法と相まつて,技能労働者の職業に必要な能力を開発し,及び向上さ せるために職業訓練及び技能検定を行なうことにより,職業人として有為な労働者を養成し, もつて,職業の安定と労働者の地位の向上を図るとともに,経済及び社会の発展に寄与するこ とを目的とする。 78 年 改 正 この法律は,雇用対策法と相まつて,労働者の職業に必要な能力を開発し,及び向上させる ため,その内容の充実強化及びその実施の円滑化のための施策を講ずることにより,職業訓練 及び技能検定を普及し,及び振興し,もつて,職業の安定と労働者の地位の向上を図るととも に,経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。 85 年 法 この法律は,雇用対策法と相まつて,職業訓練及び技能検定の内容の充実強化及びその実施 の円滑化のための施策等を総合的かつ計画的に講ずることにより,職業に必要な労働者の能力 を開発し,及び向上させることを促進し,もつて,職業の安定と労働者の地位の向上を図ると ともに,経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。 92 年 改 正 この法律は,雇用対策法と相まつて,職業訓練及び職業能力検定の内容の充実強化及びその 実施の円滑化のための施策等を総合的かつ計画的に講ずることにより,職業に必要な労働者の 能力を開発し,及び向上させることを促進し,もつて,職業の安定と労働者の地位の向上を図 るとともに,経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。 97 年 改 正 この法律は,雇用対策法と相まつて,職業訓練及び職業能力検定の内容の充実強化及びその 実施の円滑化のための施策並びに労働者が自ら職業に関する教育訓練又は職業能力検定を受け る機会を確保するための施策等を総合的かつ計画的に講ずることにより,職業に必要な労働者 の能力を開発し,及び向上させることを促進し,もつて,職業の安定と労働者の地位の向上を 図るとともに,経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。 表2 「目的」条項(第一条)
職業教育訓練立法の形成と変容 5 58 年 法 (第三条「職業訓練の原則」)公共職業訓練と事業内職業訓練とは,相互に密接な関連のもと に行われなければならない。 (第2項)公共職業訓練及び事業内職業訓練は,学校教育法による学校教育との重複を避け, かつ,これとの密接な関連のもとに行われなければならない。 (第3項)公共職業訓練と青年学級振興法による教育とは,重複しないように行われなければ ならない。 69 年 法 (第三条「職業訓練及び技能検定の原則」)職業訓練は,労働者の職業生活の全期間を通じて 段階的かつ体系的に行なわれなければならない。 (第2項)職業訓練は,学校教育法による学校教育との重複を避け,かつ,これとの密接な関 連のもとに行なわれなければならない。 (第3項)職業訓練と青年学級振興法による教育とは,重複しないように行なわれなければな らない。 (第4項)青少年に対する職業訓練は,特に,その個性に応じ,かつ,その適性を生かすよう に配慮して行なわれなければならない。 (第5項)身体に障害がある者等に対する職業訓練は,特にこれらの者の身体的事情等に配慮 して行なわれなければならない。 (第6項)職業訓練及び技能検定は,相互に密接な関連のもとに行なわれなければならない。 78 年 改 正 (第三条「職業訓練及び技能検定の基本理念」)職業に必要な労働者の能力を開発し,及び向 上させることが,職業の安定及び労働者の地位の向上のために不可欠であるとともに,経済及 び社会の発展の基礎をなすものであることにかんがみ,職業訓練は,労働者各人の希望,適性, 職業経験等の条件に応じつつ雇用及び産業の動向,技術の進歩,産業構造の変動等に即応でき るものであつて,その職業生活の全期間を通じて段階的かつ体系的に行われることを,また, 技能検定は,職業に必要な労働者の能力についてその到達した段階ごとの評価が適正に行われ ることを基本理念とする。 (第2項)職業訓練及び技能検定は,前項の基本理念に従つて,相互に密接な関連の下に行わ れなければならない。 (第3項から第6項は,69年法第2項から第5項条文,69年法第6項削除) 85 年 法 「職業能力開発促進の基本理念」(第三条)職業に必要な労働者の能力(以下「職業能力」と いう。)を開発し,及び向上させることが,職業の安定及び労働者の地位の向上のために不可 欠であるとともに,経済及び社会の発展の基礎をなすものであることにかんがみ,この法律の 規定による職業能力の開発及び向上の促進は,労働者各人の希望,適性,職業経験等の条件に 応じつつ雇用及び産業の動向,技術の進歩,産業構造の変動,経済活動の国際化等に即応でき るものであつて,その職業生活の全期間を通じて段階的かつ体系的に行われることを基本理念 とする。 (第三条の二)職業訓練及び技能検定は,前条の基本理念に従い,かつ,職業訓練にあつては 訓練を受ける労働者の自発的な職業能力の開発及び向上のための努力を助長するように配慮し て行われ,技能検定にあつては職業能力についてその到達した段階ごとの評価が適正になされ るように行われ,あわせて,職業訓練と技能検定とが相互に密接な関連の下に行われなければ ならない。 (第2項)職業訓練は,学校教育法による学校教育との重複を避け,かつ,これとの密接な関 連の下に行われなければならない。 (第3項)職業訓練と青年学級振興法による教育とは,重複しないように行われなければなら ない。 (第4項)青少年に対する職業訓練は,特に,その個性に応じ,かつ,その適性を生かすよう に配慮して行われなければならない。 (第5項)身体に障害がある者等に対する職業訓練は,特にこれらの者の身体的事情等に配慮 して行われなければならない。 表3 「原則」・「基本理念」 条項 (第三条,第三条の二)
6 彦根論叢 第363号 平成18(2006)年11月 87 年 改 正 (第三条の二第5項)身体又は精神に障害がある者等に対する職業訓練は,特にこれらの者の 身体的又は精神的な事情等に配慮して行われなければならない。 (第三条,第三条の二第1項から第4項は,85年法条文) 92 年 改 正 (第三条の二)職業訓練及び職業能力検定(職業に必要な労働者の技能及びこれに関する知識 についての検定(労働省の所掌に属しないものを除く。)をいう。以下同じ。)は,前条の基本 理念に従い,かつ,職業訓練にあつては訓練を受ける労働者の自発的な職業能力の開発及び向 上のための努力を助長するように配慮して行われ,職業能力検定にあつては職業能力について その到達した段階ごとの評価が適正になされるように行われ,あわせて,職業訓練と職業能力 検定とが相互に密接な関連の下に行われなければならない。 (第三条,第三条の二第2項から第5項は,85年法条文) 97 年 改 正 (第三条)職業に必要な労働者の能力(以下「職業能力」という。)を開発し,及び向上させ ることが,職業の安定及び労働者の地位の向上のために不可欠であるとともに,経済及び社会 の発展の基礎をなすものであることにかんがみ,この法律の規定による職業能力の開発及び向 上の促進は,労働者各人の希望,適性,職業経験等の条件に応じ,かつ,労働者の自発的な職 業能力の開発及び向上のための努力を助長するように配慮しつつ,雇用及び産業の動向,技術 の進歩,産業構造の変動,経済活動の国際化等に即応できるものであつて,その職業生活の全 期間を通じて段階的かつ体系的に行われることを基本理念とする。 (第三条の二)職業訓練及び職業能力検定(職業に必要な労働者の技能及びこれに関する知識 についての検定(労働省の所掌に属しないものを除く。)をいう。以下同じ。)は,前条の基本 理念に従い,かつ,職業能力検定にあつては職業能力についてその到達した段階ごとの評価が 適正になされるように行われ,あわせて,職業訓練と職業能力検定とが相互に密接な関連の下 に行われなければならない。 (第三条の二第2項から第5項は,85年法条文) 99 年 改 正 第三条の二第3項を削除し,第4項を第3項とし,第5項を第4項とする。 (削除されていない第三条の二の条文は,85年法条文) (第三条は,97年改正条文) 01 年 改 正 (第三条)労働者がその職業生活の全期間を通じてその有する能力を有効に発揮できるように することが,職業の安定及び労働者の地位の向上のために不可欠であるとともに,経済及び社 会の発展の基礎をなすものであることにかんがみ,この法律の規定による職業能力の開発及び 向上の促進は,産業構造の変化,技術の進歩その他の経済的環境の変化による業務の内容の変 化に対する労働者の適応性を増大させ,及び転職に当たつての円滑な再就職に資するよう,労 働者の職業生活設計に配慮しつつ,その職業生活の全期間を通じて段階的かつ体系的に行われ ることを基本理念とする。 (第三条の二)労働者の自発的な職業能力の開発及び向上の促進は,前条の基本理念に従い, 職業生活設計に即して,必要な職業訓練及び職業に関する教育訓練を受ける機会が確保され, 並びに必要な実務の経験がなされ,並びにこれらにより習得された職業に必要な技能及びこれ に関する知識の適正な評価を行うことによつて図られなければならない。 (第5項)職業能力検定は,職業能力の評価に係る客観的かつ公正な基準の整備及び試験その 他の評価方法の充実が図られ,並びに職業訓練,職業に関する教育訓練及び実務の経験を通じ て習得された職業に必要な技能及びこれに関する知識についての評価が適正になされるように 行われなければならない。 (第三条の二第2項:01年改正条文,第3項・第4項:85年法第4項・第5項条文) 06 年 改 正 (第三条の二第3項)青少年に対する職業訓練は,特に,その個性に応じ,かつ,その適性を 生かすように配慮するとともに,有為な職業人として自立しようとする意欲を高めることがで きるように行われなければならない。 (第三条,第三条の二第1項・第5項:01年改正条文) (第三条の二第2項:85年法条文,第4項:85年法第5項条文)
職業教育訓練立法の形成と変容 7 の否認という傾向は,明確であろう。畢竟,直近の06年改正では,いわゆる「ニー ト」問題に関連して,職業教育訓練の課題を「自立しようとする意欲」(第3 条の2第3項)に変質させてしまっているのである。 他方,職業訓練の定義規定が,58年法では,「労働者に対して職業に必要な 技能を習得させ,又は向上させるために行う訓練」(第2条第2項)とされて いたのが,69年法以降は,この定義規定自体が削除されている。「目的」条項, 「原則」・「基本理念」条項や「当事者の責務」条項において,対象となる制度 や権利義務関係にかかわる核たる概念が登場するが,その定義の画定はなされ ておらず,結局,定義規定が復活するのは,01年法改正において,「この法律 において「職業能力」とは,職業に必要な労働者の能力をいう。」(第2条第2 項)と「この法律において「職業生活設計」とは,労働者が,自らその長期に わたる職業生活における職業に関する目的を定めるとともに,その目的の実現 を図るため,その適性,職業経験その他の実情に応じ,職業の選択,職業能力 の開発及び向上のための取組その他の事項について自ら計画することをいう。」 (同第4項)の条文の登場まで放置されている。 また,職業訓練という用語は,現行法(97年改正)では,「職業に関する教 育訓練」という表現に変わってきている。このような事情は,後に問題とする 職業教育と職業訓練の曖昧な関係の解決,その関係の抜本的な整合性の確立が 等閑にされてきたことの結果でもある。 こうした立法過程について,まず,58年法における労働基準法からの分離の もたらす影響を挙げる必要がある。 労基法は,制定時,「技能者の養成」として,事業主が行う職業訓練につい ての監督的規定を設けたが,同時期に制定された職業安定法は,失業対策とし て,公共職業補導所を中心とした「職業補導事業」制度を設けた。こうして, 「職業安定法に基く職業補導は,主として失業対策のための職業訓練であつて 技能向上を目的とせず,労働基準法に基く技能者養成は,労働保護上の監督を 受けるだけで,その助長奨励は制度上十分に行われ得なかった。またこの両制 度を運営する機関は,一は職業安定機関であり,他は,労働基準監督機関であ
8 彦根論叢 第363号 平成18(2006)年11月 つて,必ずしも両者の連絡は十分でなかつた」6)ために,産業界を中心に,固 有の職業訓練制度確立の必要性が唱えられ,旧職訓法の制定を促すことになっ たとされているが,憲法による労働権保障が,労働者の職業教育訓練に対する 権利性の明確化を促したという背景を見逃されてはならない7)。 労働基準法における「技能者の養成」規定との関連について,旧職訓法の制 定に先立つ臨時職業訓練制度審議会の「職業訓練制度の確立に関する答申」 (1957年12月6日)では,「この際労働基準法に基く従来の技能者養成制度を 脱皮」することを強調し,「職業安定法及び労働基準法中の関係条項を含め職 業訓練を振興するための法律(職業訓練法)を速やかに制定する」とした。他 方,企業の行う職業訓練に対する認定制度を設け,かかる認定を受けたものに ついては,労働基準法に定める労働条件の特例の適用を認めるとした。結局, 旧職訓法による職業教育訓練制度の発足に伴って,監督行政としての「技能者 の養成」制度存続の必要性はなくなったものの,労基法の立法趣旨とは異なる 理念のもとに,「職業訓練に関する,労働条件の特例」を存続させたのであっ たが,職業教育訓練法制度の労働基準法体系からの離脱の意義については,改 めて解明されなければならないであろう。 この点,国会会議録に記録されている審議状況からは,以下のような意見が 確認できるが,公共職業訓練を建前としつつも,企業内教育(事業場内訓練) の育成への指向が窺われる。 「企業内の職業訓練はあくまでも積極的にこれを助長していくべき行政と監督行政とはそ の性格を異にするのであるから,この際その助長面は労働基準法から切り離して,この職業 訓練法案の体系の中に吸収すべきである(。)」(衆社労58―3―3,15―2,澁谷直藏官房長) 6)労働省職業安定局編著『職業安定法・職業訓練法・緊急失業対策法』(労務行政研究所, 1960)282−283頁。 7)国際的な次元での到達点が,世界労連の「職業訓練にかんする世界労働組合会議」(1968 年2月,トリノ)が採択した「職業訓練憲章」(トリノ憲章)であり,そこでは「職業訓 マ マ 練は,もつぱら国家の義務であり,国は勤労人民大衆のために職業訓練を保証しなければ ならず,したがってまた,十分な数の職業訓練施設を設置しなければならない。」という 公共性原則が高唱された(トリノ憲章全文については,『日本労働年鑑39集(1969年版)』 414頁参照)。
職業教育訓練立法の形成と変容 9 「労働保護の面と切り離してやるこの技術的な技能養成の助長面,奨励面は訓練法の方で やる(。)」(衆社労58―3―18,23―7,澁谷直藏官房長) しかし,旧労基法の規定において廃止の対象となったのは,技能者養成審議 会(第74条)であるが,監督行政的側面は,存続しているのである。しかも, 「74条の削除(によって職業訓練審議会の構成と技能者養成審議会の構成を修 正した)ということは実質的に基準法の労働者保護の建前を後退せしめるもの」 かどうかという質疑が交わされていたように8),労働行政内部の管轄問題にと どまらず,職業教育訓練法制度の理念や制度に波及する問題であるにもかかわ らず,管轄問題にすり替ったといわなければならない。そのようなレトリック によって,職業教育訓練法制度が労働基準法制から離脱することとなり,労働 権や教育権という価値との結びつきも希薄化されるにいたったのである。 (3)当事者の責務:公制度から私法的関係へ 上叙の理念や原則の評価は,実際には,その具体的な制度設計の内容に依存 するのであるが,立法規定においては,「当事者の責務」として,職業教育訓 練体系の公的制度の確立(公法的関係)と労使当事者の責務の明確化(私法的 関係)の二面的関係が扱われており,その変遷を一覧にしたのが,表4である。 ところで,「職業上の能力の養成」を目的として掲げている労働立法は,多 くの分野において存在している。そこでは,特定の事業の遂行のための専門的 職業能力の養成を「教育訓練」として使用者に義務づけていることが共通した 特徴となっている9)。他方,特定の社会的階層の職業能力の開発を目的とする 8)衆議院社会労働委員会(1958年3月18日)会議録第23号5頁以下。以後,会議録は,「衆 社労58―3―18,23―5,発言者(職名のうち労働省の名は省略)」のように略記する。 9)高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律・林 業労働力の確保の促進に関する法律・介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律・中小 企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に 関する法律・港湾労働法など。 10)ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法・高齢社会対策基本法・短時間労働者の 雇用管理の改善等に関する法律・育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の 福祉に関する法律・高年齢者等の雇用の安定等に関する法律・母子及び寡婦福祉法・障害 者の雇用の促進等に関する法律など。
10 彦根論叢 第363号 平成18(2006)年11月 58 年 法 労働大臣は,この法律の規定による職業訓練の実施に関し,基本的な計画を定めるものとす る。 都道府県知事は,第一項の計画に基き,この法律の規定による職業訓練で当該都道府県の区 域内において行われるものの実施に関し,基本的な計画を定めるものとする。(第3項) 69 年 法 事業主は,その雇用する労働者に対し,必要な職業訓練を行なうように努めなければならな い。 国,都道府県及び雇用促進事業団は,事業主その他の関係者に対して必要な援助を行なう等 職業訓練の振興を図るように努めなければならない。(第2項) 74 年 改 正 事業主は,その雇用する労働者に対し,必要な職業訓練を行うとともに,その労働者が職業 訓練を受けることを容易にするために必要な配慮をするように努めなければならない。 (第2項は,69年法と同一条文) 78 年 改 正 事業主は,その雇用する労働者に対し,必要な職業訓練を行うとともに,その労働者が職業 訓練又は技能検定を受けることを容易にするために必要な援助を行うように努めなければなら ない。 国及び都道府県は,事業主その他の関係者に対して必要な援助等を行うことにより事業主そ の他の関係者の行う職業訓練の振興及び内容の充実を図るように努めるとともに,職業を転換 しようとする労働者その他職業に必要な能力の開発及び向上について特に援助を必要とする者 に対する職業訓練並びに事業主,事業主の団体等により行われる職業訓練の状況等にかんがみ 必要とされる職業訓練の実施並びに技能検定の円滑な実施に努めなければならない。(第2項) 85 年 法 事業主は,その雇用する労働者に対し,必要な職業訓練を行うとともに,その労働者が職業 訓練,技能検定等を受けることを容易にするために必要な援助を行うこと等によりその労働者 に係る職業能力の開発及び向上の促進に努めなければならない。 国及び都道府県は,事業主その他の関係者の自主的な努力を尊重しつつ,その実情に応じて 必要な援助等を行うことにより事業主その他の関係者の行う職業訓練の振興及びその内容の充 実並びに労働者が職業訓練,技能検定等を受けることを容易にするために事業主の講ずる措置 等の奨励に努めるとともに,職業を転換しようとする労働者その他職業能力の開発及び向上に ついて特に援助を必要とする者に対する職業訓練の実施,事業主,事業主の団体等により行わ れる職業訓練の状況等にかんがみ必要とされる職業訓練の実施,技能検定の円滑な実施等に努 めなければならない。(第2項) 97 年 改 正 事業主は,その雇用する労働者に対し,必要な職業訓練を行うとともに,その労働者が自ら 職業に関する教育訓練又は職業能力検定を受ける機会を確保するために必要な援助その他その 労働者が職業訓練,職業能力検定等を受けることを容易にするために必要な援助を行うこと等 によりその労働者に係る職業能力の開発及び向上の促進に努めなければならない。 国及び都道府県は,事業主その他の関係者の自主的な努力を尊重しつつ,その実情に応じて 必要な援助等を行うことにより事業主その他の関係者の行う職業訓練の振興及びその内容の充 実並びに労働者が自ら職業に関する教育訓練又は職業能力検定を受ける機会を確保するために 事業主の行う援助その他労働者が職業訓練,職業能力検定等を受けることを容易にするために 事業主の講ずる措置等の奨励に努めるとともに,職業を転換しようとする労働者その他職業能 力の開発及び向上について特に援助を必要とする者に対する職業訓練の実施,事業主,事業主 の団体等により行われる職業訓練の状況等にかんがみ必要とされる職業訓練の実施,労働者が 自ら職業に関する教育訓練又は職業能力検定を受ける機会を確保するための援助,技能検定の 円滑な実施等に努めなければならない。(第2項) 01 年 改 正 事業主は,その雇用する労働者に対し,必要な職業訓練を行うとともに,その労働者が自ら 職業に関する教育訓練又は職業能力検定を受ける機会を確保するために必要な援助その他その 労働者が職業生活設計に即して自発的な職業能力の開発及び向上を図ることを容易にするため 表4 「当事者の責務」(第四条)
職業教育訓練立法の形成と変容 11 立法もある10)。そこでは,「教育訓練」と「職業能力の開発・向上」の関係は, 事業主の責務を「教育訓練」と位置づけ,国や地方公共団体の責務や労働者の 自己啓発を「職業能力の開発・向上」と定義することもできるが,「事業主は, 短時間労働者の職業能力の開発及び向上等を図るための教育訓練については, その就業の実態に応じて実施するように努めるものとする。」11)という表現も 見られる。最近では,「高度な専門的な職業能力」や「高度な専門的な知識」 の表現も登場してきているが,これらは,企業側から必要とされる業務遂行上 の能力や水準のための職業能力の養成と,労働者の側からの教育権としての職 業能力の発展の関係を整序できていないことからくる,混迷と矛盾といえよう。 このような状況において,真の問題は,各種の職業教育訓練法制度における 労働者の地位であるが,78年改正においては,「労働者は,次に掲げる職業訓 練その他多様な職業訓練を受けることができるように,職業訓練を受ける機会 の確保について,事業主並びに国及び都道府県が行う職業訓練に関する措置を 通じて配慮されるものとする。」(第8条)という,労働者が主体として規定さ れている条項があったが,この規定は,その後は,主体の変換という事態が現 11)事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針,2003年 11月28日厚生労働省告示第370号。 12)現行規定では,「事業主は,その雇用する労働者が多様な職業訓練を受けること等によ り職業能力の開発及び向上を図ることができるように,その機会の確保について,次条か ら第十条の三までに定める措置を通じて,配慮するものとする。」(第8条)となり,旧規 定において明確であった労働者の主体的地位への言及は跡形もない。 に必要な援助を行うこと等によりその労働者に係る職業能力の開発及び向上の促進に努めなけ ればならない。 国及び都道府県は,事業主その他の関係者の自主的な努力を尊重しつつ,その実情に応じて 必要な援助等を行うことにより事業主その他の関係者の行う職業訓練及び職業能力検定の振興 並びにこれらの内容の充実並びに労働者が自ら職業に関する教育訓練又は職業能力検定を受け る機会を確保するために事業主の行う援助その他労働者が職業生活設計に即して自発的な職業 能力の開発及び向上を図ることを容易にするために事業主の講ずる措置等の奨励に努めるとと もに,職業を転換しようとする労働者その他職業能力の開発及び向上について特に援助を必要 とする者に対する職業訓練の実施,事業主,事業主の団体等により行われる職業訓練の状況等 にかんがみ必要とされる職業訓練の実施,労働者が職業生活設計に即して自発的な職業能力の 開発及び向上を図ることを容易にするための援助,技能検定の円滑な実施等に努めなければな らない。(第2項)
12 彦根論叢 第363号 平成18(2006)年11月 出している12)。 近時,「キャリア権」といった理念と政策が提唱されている。その背景には, 職業能力開発に関わる立法と政策の再評価の動きもある13)。 この「キャリア権」構想は,表面的には,労働者の職業的能力を「キャリア」 として認知し,その形成を図ろうとするものであるが,その政策的目的と効果 は,企業の枠を超えた労働者の移動を促進し,容易にするところにあり,労働 力流動化政策や労働市場優先的労働法理論と密接に結びついているものであっ て,反面,労働者に対する雇用保障を最小限にとどめようとするものである。 その限りにおいて,企業の枠を超えて移動しやすい労働者にとっての「キャリ ア」形成が高唱されるにすぎないのであって,「キャリア」形成を労働者の固 有の権利とみるわけではない。その性格が最も典型的に現れているのは,若年 者のためのキャリア形成支援という政策展開である。多様な働き方として推奨 されてきたフリーターのような不安定就業形態に対して,ニート問題として把 握し,若年者の雇用を促進するために,そのキャリア形成を支援するという構 想には,権利としての雇用保障や労働権保障といった発想は皆無であり,実質 的には,労働者が職業的能力や職業的資格を獲得することを労働者の権利とし て想定するものではない。他方,キャリア権は,成績主義的人事制度と密接に 結びつくものであって,労働者の職業教育訓練の権利を,キャリア権の名の下 に,人事管理政策という狭隘な範囲に押し込めようとするものにすぎないとい う矛盾と限界を有していることを指摘しなければならない。 条文の変遷の全体的傾向から,当事者の位置づけは,職業教育訓練の公共性 あるいはその公的責任の後退,事業内訓練(社内教育の重視),個人責任(労 働者個人の職業能力開発責務)の強調といった傾向が明確になってくるが,そ のような傾向を裏付けている特徴的な行政当局の発言は,以下のように85年法 から92年改正において明確になってくる。 13)01改正により基本理念(第3条)に「産業構造の変化,技術の進歩その他の経済的環境 の変化による業務の内容の変化に対する労働者の適応性を増大させ,及び転職に当たつて の円滑な再就職に資する」という文言が追加されたことがその典型例である。
職業教育訓練立法の形成と変容 13 「(公共職業訓練の位置づけに関して)車の両輪の片方が大黒柱で,片方が何柱と言うの かちょっとわかりませんが,そういう関係」(衆社労85―4―2,12―29,宮川知雄職業能力開発 局長) 「民間と公共の役割について申しますれば,中心になりますのはやはり民間の自主的な訓 練であると思いますが,中小企業等を中心にしてなかなかそれが行いがたいという点もござ いますので,公共がそれをいわば補完するというかサポートする,そういった役割分担」(参 労92―4―23,6―1,松本邦宏職業能力開発局長) 「公共的な職業訓練に全部任せていただくのではなしに,企業内においてそれぞれのニー ズに即応するような職業訓練をおやりになる,それに対して国及び県がお手伝いをさせてい ただく(。)……今度の改正によりまして,公的職業訓練の役割が相対的に減少するというこ とじゃなしに,むしろ公的職業訓練の役割をもっと多様化しネットワーク化して……激動す る社会の職業訓練ニーズに適切に対応できるような……ネットワーク化したオープンシステ ムをつくっていきたい(。)」(参労92―4―23,6―2・22,近藤鉄雄労働大臣) 職業教育訓練における公共性(公的責任)の後退という現象は,公共職業訓 練と事業場内訓練との間の制度間的な整合性の問題から生じてくるだけでな く,訓練と教育の分離論,すなわち,職業教育訓練法制度における教育権的側 面の軽視からも派生してくる問題である。それが,如実に現れてくるのは,公 共職業訓練機関における教科書問題である。教育権から切り離された公共職業 訓練においては,その教科書は,公教育の教科書としての位置づけは与えられ ないのであり,教育条件整備に対する公的責任は否定されることになるのであ る14)。また,78年改正で,モジュール訓練方式(単位訓練制度)を導入した 経緯も,専修学校等の教育機関への委託訓練を認めるためであったことも,職 業教育訓練の公共性の後退とその教育権的側面の軽視とが結びついた事例であ る。 14)69年法の要項原案においては,「労働大臣は,この法律による職業訓練に必要な教科書 その他の教材を整備するための措置を講じなければならないものとすること。」(第三「職 業訓練の体系」(一))と明記されていたが,国会に提出された段階で,削除された。また, 「国,都道府県,事業主その他の関係者の責務」を具体的に定めた規定も,「関係者の責 務」(第4条)として,「国,都道府県及び雇用促進事業団は,事業主その他の関係者に対 して必要な援助を行なう等職業訓練の振興を図るように努めなければならない。」という 抽象的な内容の努力義務に後退したのである。
14 彦根論叢 第363号 平成18(2006)年11月 (4)教育と訓練の関係:職業教育訓練と教育権 ここまで取りあげてきた職業教育訓練の「目的」,「原則」,「基本理念」,「当 事者の責務」に関わる立法規定の変遷は目まぐるしいものがあったが,そこに 共通する問題の一つは,職業訓練と職業教育の関係(「連携」),職業訓練の教 育権的価値の確認,より一般的には,教育と訓練の原理的関係をどのように把 握するかにあった。ところが,この問題に関する立法規定は,58年法が「公共 職業訓練及び事業内職業訓練は,学校教育法による学校教育との重複を避け, かつ,これとの密接な関連のもとに行われなければならない。」と定め,69年 法が,その主語を「職業訓練」に置き換えただけで,その後,一切の修正を加 えることもなく,存続している。このような事情は,職業訓練と職業教育の「連 携」問題についての議論が深められたり,解決の方向に進んでいたことを決し て意味するのではなく,それが放置されてきただけにすぎない。そのことを, 後で,議事録を通じて確認するが,その前に,問題状況を確認しておく。 まず,教育基本法の理念規定15)と職業訓練の原理的関係が問題である。教 育基本法の制定過程での第7条の原案(1947年1月15日案)は,「工場,事業 場その他国民の勤労の場においてなされる教育の施設は,国又は公共団体に よって奨励されなければならない。」と表現されており,職業訓練は,「労働者 の社会教育」の位置づけを与えられていた。教育刷新委員会も,「労働者に対 する社会教育について」に関する建議において確認したところである16)。し たがって,労働者教育は,社会教育の一環をなすものであって,社会教育の原 理の適用を受けなければならない。その「労働者教育」は,企業内教育につい 15)「教育の目的は,あらゆる機会に,あらゆる場所において実現されなければならない。」 (第2条)および「家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は,国及び 地方公共団体によつて奨励されなければならない。」(第7条) 16)教育刷新委員会第13回建議(1948年2月28日)は,「①労働者に対する社会教育として は,労働問題並びに労働関係諸法規に関する理解の促進と職業的知識及び技術的熟練の修 得と,更に社会的,文化的教養を高め人格の陶冶を期する教育とを有機的総合的に実施す ること。③労働者のための技能者養成所,見習工教習所,組合学校等の教育施設に対して も,前記の趣旨の普及及び徹底を図ること。」と具体的な内容に踏み込んで明記していた。
職業教育訓練立法の形成と変容 15 ては論争があるものの17),公共職業訓練を含むことは明確である18)。公共職 業訓練をはじめとする労働者教育に対して,教育権の諸原理が適用されるが, ここにおいては,訓練と教育は,一体のものとしてみなされているのである。 教育基本法制定時においては明確であったこのような理念のもとに,一時期, 文部省が労働者教育を社会教育の一環として実施した経緯もあったが,労働省 労政局長・文部省社会教育局長の連名による通達「労働者教育に関する労働省 (労政局),文部省(社会教育局)了解事項について」(1948年7月28日)によっ て,わが国の社会教育行政から労働者教育を除外するという行政管轄の画定が なされたのを契機に19),その関係が曖昧にされたままに推移したのであり, 今日に至っては,「生涯学習」論のなかでの職業訓練(生涯職業能力開発)の 地位の不明確さに結びついている。 そのため,生涯学習振興法では,「国及び地方公共団体は,この法律に規定 する生涯学習の振興のための施策を実施するに当たっては,学習に関する国民 の自発的意思を尊重するよう配慮するとともに,職業能力の開発及び向上,社 会福祉等に関し生涯学習に資するための別に講じられる施策と相まって,効果 的にこれを行うよう努めるものとする。」(第2条)という規定が掲げられたも のの,「効果的な連携」は実現していない。つまり,労働法の分野からの「職 業能力開発・促進」といった狭い立場に拘泥し,生涯学習といった視点を欠く ことは,この問題が,労働権と教育権との複合的課題であることを無視し,労 働者を教育訓練の単なる対象としたり,流動的な労働力市場での評価の融通性 を優先させるような,企業の人事管理の一環としての狭い政策体系の枠内での 17)企業内教育の公教育としての性格を否認して,企業内教育への憲法・教育基本法の適用 を否定する立場(松林和夫「職業訓練と労働権・教育権」『現代の労働組合運動六』(大月 書店,1976)118頁)と人間発達保障における企業内教育の役割を認め,企業内教育も「教 育を受ける権利」の一環として,憲法・教育基本法の適用を受けるとする立場(佐々木享 「労働組合と企業内教育・職業訓練」(月刊労働問題1972年11月号)6頁)がある。 18)小川利夫「社会教育」基本法コンメンタール教育法新版(1977)75頁。 19)竹内真一「労働者教育とはなにか」は「戦後日本における民主革命の流産を反映する社 会教育と労働者教育の不幸な分離」と評価する(『労働者教育論集』(学習の友社,1982) 44頁)。
16 彦根論叢 第363号 平成18(2006)年11月 構想に終始することになってしまうのである。その意味で,職業教育訓練法制 度の全体像を明らかにしながら,その問題点を探る必要がある。 他方,能開法では,「職業訓練は,学校教育法による学校教育との重複を避 け,かつこれとの密接な関連の下に行われなければならない。」(第3条の2第 2項)と謳われているが,ここでいう「密接な関連」の規範的内容が問題であ る。 この「密接な関連」に関して,現行の能開法自体において規定されているも のは, 第10条および第25条20)にすぎない。 ちなみに,(旧)労働省の解釈では, 能開法第3条の2第2項が対象とする「教育」には,専修学校および各種学校 は含まれないが,同10条における「他の者の設置する施設により行われる職業 に関する教育訓練」は,「専修学校又は各種学校により行われる職業に関する 教育,大学における教育」を対象としているように,職業教育の定義や範囲は 曖昧であって,結局,能開法において想定される職業訓練と学校教育との「密 接な関連」とは,学校教育法における技能連携制度だけにとどまるのであ る21)。この技能連携制度を除いては,教育と訓練は,別個のものであるとい う建前で一貫している22)。 それは,職業能力開発促進法の実際の運用に際しては,学校教育の利用を, 企業内教育主導による「学校教育施設・教育訓練(専修学校)施設の活用」と いう形で,進めようとしている労働事務次官通達23)が明確に示しているとこ 20)「事業主は,前条の措置によるほか,必要に応じ,次に掲げる措置を講ずること等によ り,その雇用する労働者に係る職業能力の開発及び向上を促進するものとする。1 他の 者の設置する施設により行われる職業に関する教育訓練を受けさせること。2 自ら若し くは共同して行う職業能力検定又は職業能力の開発及び向上について適切と認められる他 の者の行う職業能力検定を受けさせること。」(第10条)および「認定職業訓練を行う事業 主等は,厚生労働省令で定めるところにより,職業訓練施設として職業能力開発校,職業 能力開発短期大学校,職業能力開発大学校又は職業能力開発促進センターを設置すること ができる。」(第25条) 21)労働省職業能力開発局編著『職業能力開発促進法』(労務行政研究所,1986)120頁。 22)技能連携制度とは,「高等学校の定時制の課程又は通信制の課程に在学する生徒が,技 能教育のための施設で当該施設の所在地の都道府県の教育委員会の指定するものにおいて 教育を受けているときは,校長は,文部科学大臣の定めるところにより,当該施設におけ る学習を当該高等学校における教科の一部の履修とみなすことができる。」(学校教育法第!
職業教育訓練立法の形成と変容 17 ろでもある。「施設の活用」である限り,「密接な関連」に該当するものではな いという解釈により,学校教育法・教育基本法の適用問題とは無関係に,企業 内教育主導による学校教育の活用を推進しようとするのである。 職業教育と職業訓練との人為的な区分を原因とする職業教育訓練法制度の曖 昧な性格は,関連する立法規定における不統一な概念規定にも現れている。パー ト労働法を例にとると,事業主等の責務として,「教育訓練の実施」(第3条), 国及び地方公共団体の責務として,「職業能力の開発及び向上等を図る」(第4 条)と定義しながら,前述のように,「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用 管理の改善等のための措置に関する指針」では,「事業主が講ずべき短時間労 働者の雇用管理の改善等のための措置」として,「事業主は,短時間労働者の 職業能力の開発及び向上等を図るための教育訓練については,その就業の実態 に応じて実施するように努めるものとする。」と定めるという「教育訓練」と 「職業能力の開発・向上」との間の整合性を欠き,統一性を欠いた,矛盾した 規定を導入しているのである。そして,より重要なことは,このような概念規 定によって,そこで対象とされている職業教育・職業訓練における労働者の権 利性の視点を欠落させてしまっていることである。同様に,若年者の雇用政策 と関連して提唱されている「(日本版)デュアル・システム」は,学校教育と 職業訓練との二つの制度の「有機的な結合」を図ろうとするものであるが,根 本には,職業教育と職業訓練との人為的な区分を前提とする限り,理念として も,実際の効果的な運用のあり方にしても,さらに,当事者である労働者や学 生の法的な地位の明確化(権利性の確認)といった点にとっても,矛盾と問題 45条の2)制度である。1961年に発足後,1967年に条件緩和したことについて,「学校と 申しますものは,教育基本法に掲げてございます教育の目的と申しますものを系統的,段 階的に達成していくための基本的な制度である(。)(高等学校では)職業訓練所で訓練し ていただくということの成果も十分評価すべきではなかろうかというふうな考え方で,現 在の技能提携という考え方がとられておる(。)」(衆社労69―5―6,14―15,大崎仁文部省職 業教育課長)と,その連携は,「対等」な立場のものではないことが強調されていた。 23)「職業訓練法の一部を改正する法律の施行について」(1987年10月1日)では,事業主の 実施する職業能力開発の具体的方法として,「大学,専修学校,各種学校等の施設により 行われる職業に関する教育訓練を受けさせること」が例示されている。 !
18 彦根論叢 第363号 平成18(2006)年11月 点を拡大再生産するのみで,真の職業教育訓練法制度とその理念の発展に寄与 できない。 前述のように教育と訓練の連携条項は,軽微な表記の修正を除き,69年法の 条文が維持されてきている。しかし,このことは,この規定をめぐって問題状 況が出来していなかったことを意味するものではなく,立法過程においても, 逆に深刻な矛盾が表面化していた。 就中,職業教育と分離された職業訓練を対象とする立法制定過程においては, 労働省(職業訓練)と文部省(職業教育)の管轄を明確にする意味も含めて, その両者の「連携」を推進するというよりも,その両者の区別と質的違いを強 調することによって,職業教育と職業訓練の関係を明確にする努力が払われざ るを得なくなってきている。それは,行政当局の発言によって例証することが できる。 まず,文部省側が,職業訓練という制度と概念に,教育の要素が介在するこ とを極力排除しようとする姿勢は,以下の発言にみられるように,58年法の審 議過程から一貫している。 「事業内の職業訓練はいわば私企業の設立する私的な性格を多分に持っているものであり まして,これは公的な性格を持つ学校教育とは直ちになり得ない。」(衆社労・文教連合審査 会58―3―25,1―13,杉江清文部省中等教育課長) 58年法案が衆議院本会議で可決された(3月31日)後の気軽さからか,内藤 文部省初等中等教育局長は,文教委員会でより率直な発言を行っている。 「その名前が実は職業訓練法という名前なんで,私も実はそういう案が労働省から発表に なったときに驚いたわけです。……私どもも労働省の委員会に出ましていろいろ主張した結 果,労働省はそういう全般的な職業訓練をやるのではないのだ,……企業内訓練……職業補 導所,この二つだけしか考えていないのだ,それ以上のことは考えていないということなん です。……広範な職業訓練ということなら,これは文部省が当然やらなければならぬ仕事だ と考えております。」(衆文教58―4―16,18―13,内藤譽三郎文部省初等中等教育局長) 他方,労働省側は,学校教育における職業教育への不信感を隠さない。 「職業訓練との重複の点で問題になりますのは,定時制の高等学校でございます。……企 業内でいわゆる技能者養成を受けておりながら,同時に高等学校を修了したという資格をも
職業教育訓練立法の形成と変容 19 らうために,夜間の定時制高校に通っている。……この二重負担を何とか避け(るために) ……学校教育の体系との関連で,なかなか文部省が踏み切れなかった……学校教育法の一部 を改正する法律案を,この国会に提出する(。)……(学校教育終了という要件の必要性は) やはり職業訓練の目的からいきますと,一つの回り道でございまして,大企業においても何 とかこの点を解決してもらいたい。」(衆社労58―3―18,23―2,澁谷直藏官房長) 「職業訓練教育は,労働省所管でやるべきであって,そうして労働省,文部省(の)なわ 張りをなるべく少なくする。……文部省のほうは粗製乱造型でございますから……われわれ のほうは実質的にそういう職業訓練をじみちに,ほんとうに能率をあげてやる。」(衆社労69― 5―6,14―24,原健三郎労働大臣) 専修学校,各種学校と職業訓練校との相違点について,文部省サイドからは, 両者の相違が強調されているのに対して,労働省側からは,公共職業訓練校を 上位とする序列化が主張されるのである。 (文部省)「両者はその目的,実態等を異にするものでございまして,両者がその特色 をそれぞれ生かしながらその役割を果たし,発展していくことが今後とも期待される(。)」(衆 社労85―3―27,10―18,奥田與志清文部省私学行政課長) 「専修学校は実践的な職業教育を行う教育機関でありますことから,職業に必要な能力を 開発,向上させるという点におきましては労働省の行っております職業能力開発と同様の目 的を持つものでございます。しかしながら,労働省の行う職業能力開発は労働者を対象に限 定しているといった相違点があることから,両者は重複を避けながら密接な連携のもとに対 応することが重要と考えておるわけでございます。」(参労97―4―24,12―12,梶野愼一文部省 専門教育課長) (労働省)「専修学校等は職業教育といいましても一般教養の方から人格の陶冶という ような面でアプローチしているのに対して,私ども訓練校の方は実際的な仕事の方からアプ ローチする。……公共職業訓練校といたしましては,専修学校と各種学校の一部優秀なもの につきましては,文部省とも御相談しておりますが,これとの連携を十分とるようにいろい ろ工夫している(。)」(衆社労85―3―27,10―18,宮川知雄職業能力開発局長) 「(学校教育との連携について)専修学校は学校教育法上の中に位置づけられております が,労働者の職業能力の開発,向上の機会としてもこの専修学校は非常に有効でございます ので,例えば中高年齢労働者等受講奨励金……についても,私どもで指定した専修学校の講 座を受講した場合,こういう助成金が受けられるというような形をとっております。そうい う意味で,文部省と緊密な連携をとって能力開発行政を進めてまいりたいというふうに考え ております。」(参労97―4―24,12―12,山中秀樹職業能力開発局長)
20 彦根論叢 第363号 平成18(2006)年11月 こうした,不毛な行政管轄をめぐる対立は,結局の所,職業訓練からの教育 権理念の排除となってしまうのである。 「国民の教育を受ける権利……につきましては,どちらかといいますと学校教育……を受 ける権利があるというふうに私どもは理解しておりますが……従業員の教育訓練というもの が企業経営にとっても不可欠のものであることはもう当然のことであ(る。)」(衆社労85―3― 27,10―2,宮川知雄職業能力開発局長) そして,結局,学校教育における職業教育体系からの職業訓練の排除を是認 する政策の方向性を受け入れるのである。 「学校教育,学校の中における職業教育と,それから職業訓練との関係あるいは社会教育 としての職業教育と職業訓練との関係……職業人一人一人の生涯訓練という体系の中で,ど のように関連づけ,有機的な連関を持って進めていくかということは,非常に広くかつ深い 問題(だ。)……特に中高年者の離転職者につきまして再就職のための訓練をするという場 合には,単なる公共訓練施設の技能労働者向けの訓練のみならず,広く各種学校,専修学校 その他,民間のそういった第三次産業的な教育訓練をやっております機関に委託をして,再 就職のための職業能力を身につけさせる(。)……全体としての職業教育と職業訓練との関連 づけというものは今後ともに検討課題(である。)」(衆社労78―4―11,11―5,岩崎隆造職業訓 練局長) 行政当局のこうした態度は,職業訓練制度への教育法規の適用といった問題 についても窺われるところである。その具体例を挙げてみると,文部統計にお いて公共職業訓練学校が対象とされていない事例24),85年法制定時に変更さ れた職業訓練補助金の交付金化をめぐる事例25),97年改正によって,従来は 学位授与機構から学位授与される対象だった職業能力開発大学校修了者が,学 位資格を失った事例26),同じく97年改正において,生涯学習や社会教育に公 24)「(文部省の調査においては)訓練校の一年課程なり,あるいは二年課程をとった者を一 つのグループとして,どういう処遇がされているかという統計のとり方が第一ない(。)」(衆 社労78―4―11,11―15,岩崎隆造職業訓練局長),これは,生涯学習体系における「学歴」 や「資格」において職業訓練受講歴がカウントされないという矛盾の表面化であった。 25)「この法律の非常に大事な柱として,都道府県に対する補助金の交付金化がある(。)…… 今の補助金方式,負担金と法律上は書いてございまして,国と都道府県の両方の負担とい うことでございますが,積み上げでございますから,積み上げた段階で業務がどうしても 固定化しやすいという面がございます。これに対しまして,事業交付金ということになり ますと,職業訓練の経営という大きな枠はございますが,その枠内ではかなり自由にお金 を使ってもらえる(。)」(衆社労85―3―27,10―8,宮川知雄職業能力開発局長)
職業教育訓練立法の形成と変容 21 共職業訓練機関を位置づけるという目論見が文部省からは否定的に受け止めら れた事例27),有給教育訓練休暇の位置づけに関して,ILO「有給教育休暇に関 する条約」が想定する権利形態であることを否定する解釈の事例28),06年改 正で浮き彫りになった「デュアル・システム」の意義と役割をめぐる齟齬の事 例29)など,枚挙に遑がないのである。 そもそも,職業教育制度における「職業能力」の概念は,かつては,「社会 に必要な職業についての基礎的な知識と技能,勤労を重んずる態度及び個性に 応じて将来の進路を選択する能力を養うこと」・「専門的な技能に習熟させるこ と」(学校教育法)や「職業又は実際生活に必要な能力」(短期大学設置基準), 「高度の専門性が求められる職業を担うための卓越した能力」・「高度に専門的 な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識」(大 26)労働省サイドは,「今回の改正により設けます職業能力開発総合大学校は,現行の短期 大学校の行う訓練に加えて,二年のより高度な訓練を実施するということからして,その 修了生については,大学並みの能力評価あるいは資格付与がなされるよう配慮する必要が あるというふうに考えております。……学位の授与につきましても,今後,学位授与機構 を所管する文部省にも前広に相談して検討してまいりたいというふうに思っております。」 (衆労97―4―18,8―12,参労97―4―24,12―5,山中秀樹職業能力開発局長)と希望したが, 文部省側からは「労働省からの御説明を踏まえますと,改正後の職業能力開発大学校を修 了した者につきましては,学位授与機構から学位を授与されることはないものと考えてお るところでございます。」(衆労97―4―18,8―4,参労97―4―24,12―5,早田憲治文部省大学 課長)と教育機関であることを否定された。 27)「社会教育は大変幅広い分野の学習内容があるわけでございます。社会の著しい変化や 技術の進展等に対応する観点から,実務的な能力や職業に関する知識,技術,あるいは職 業意識,こうしたものを高めるための学習機会を充実していく(。)……公民館などの社会 教育施設におきましても,大学と連携して社会人のための高度な学習プログラムを提供す るといった取り組み,……大学や専門学校の公開講座などにおきましても職業等に関する 学習機会が提供されている(。)」(参労97―4―24,12―13,長谷川裕恭文部省社会教育課長)。 現行の自己完結的な教育制度への職業訓練制度の参入を拒もうとする発想である。 28)「(ILO)第百四十号条約は一般教育,市民教育,社会教育,労働組合教育,こうしたと ころまで事業主にいわば義務づける形でいろいろな対応が求められておりますが,……わ ずか4.3%という普及率の中では,事業主主体の社会のコンセンサスといいましょうか, 事業主サイドのものでございますが,なかなか得にくい状態がございます。」(衆社労85―4― 2,12―11,宮川知雄職業能力開発局長) 29)文部科学省サイドは,専門高校生に対する「学校での教育,企業での実習」を日本版デュ アルシステムと定義するのに対し,厚生労働省側は,専門学校で実施するものやフリーター や若年失業者への就職支援策という位置づけである(衆厚労06―6―9,29―17・18)。