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高校家庭科「保育」の授業における視聴覚教材活用の有効性

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高校家庭科「保育」の授業における

視聴覚教材活用の有効性

細 谷 里 香 * ・日 口 由美子 * *

Effects of Audio-Visual Materials

in Child Care Education in High School

Rika HOSOTANI and Yumiko HIGUCHI

キーワード:保育、高校、家庭科、視聴覚教材 1.問題の背景と目的 高校家庭科における「保育」の学習は、将来 親になる世代である高校生に対する「親になる ための資質」を育成する観点から重要性が認識 されている (伊藤,2005)。一方、少子化が進 む現代においては、きょうだい数が少なく、ま た高校生が生活において子どもと接する機会が 少なくなってきている。そのため、現代の高校 生は保育や乳幼児の発達について具体的なイ メージや知識を持ちにくい状況であるといえる。 そのような現状をふまえ、学習指導要領におい ては、家庭科の保育領域の学習の中で、高校生 が乳幼児と直接触れ合う体験を持つ工夫が求め られている (文部科学省,2010)。 保育所訪問などによる保育体験学習において、 高校生が実際に乳幼児と関わる体験をすること により、保育や乳幼児についての気づき、情動 的体験、自己省察を中心として多様な経験が生 じ、情意面において意義深い学びの機会になる ことが多くの研究で立証されている (大路・松 村,1998;砂 上・日 景・中 嶋・盛,2005)。し かしながら、現実的には高校生と乳幼児が触れ 合う学習を持つことは時間的・人的資源の制約 や保育所などの受け入れ体制上の課題等で実 施が難しい現状があり、普通校での実施は 数 % に留まっているという報告もある (伊藤, 2007)。また、乳幼児と触れ合う保育体験学習 は意義深い学びの機会ではあるものの、触れ合 い体験による乳幼児の発達に関する知識・理解 面の学習効果については顕著ではない (大路・ 松村,1998)。 高校生の乳幼児に関する事前知識が少ないこ とは、保育体験学習の実施が難しい理由の一つ としても挙げられている (伊藤,2007)。実際、 体験学習後に多くの高校生が乳幼児の体の小さ さといった身体的特徴など、乳幼児の特徴の最 も素朴な側面について大きな衝撃を受けたりす ることから、「現在の高校生は乳幼児について 最も素朴なことをわかっていない」とも言える (砂上ほか,2005)。また、高校生の保育学習に 対する興味は個人差が大きく、特に男子生徒は 興味が低い傾向が見られることが知られている (伊藤・木村,1999)。特に男子校生徒や進学校 の生徒などを対象とした場合には、保育領域を 学ぶ必要観が低い状況の中で授業を展開しなく てはならない難しさが指摘されている (倉持・ 伊藤・堀内,2011)。家庭科の保育領域の授業 * 滋賀大学教育学部 ** 滋賀県立玉川高等学校

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は、限られた学習時間の中で、生徒の保育や子 どもの発達への関心を高め、理解を深める授業 が求められる。 そこで、本研究では、高校家庭科保育領域の 授業において、子どもの発達について具体的な 映像によって説明している視聴覚教材を用いる ことにより、保育や子どもの発達に関する生徒 の理解や興味・関心がどのように深まるのか検 討した。 本研究では、授業の有効性を検証するための データとして、授業後の生徒による自由記述回 答データを用いた。自由記述アンケートに書か れたデータは、生徒が授業に対して感じた事柄 を表す「生の声」(山西,2011) である。これ らの記述データは「一定の尺度を用いて測定す るだけでは拾いきれない情報があふれている」 (藤井・小杉・李,2005) ため、本研究におい て生徒の知識レベルや広い範囲の興味・関心を 検討するには適当と考えられた。 2.方 法 2. 1.対象生徒 滋賀県内の公立高校 2 年生 7 クラスの生徒が 本研究の対象であった。そのうち、アンケート 記入日に欠席であった生徒 6 人を除く計 266 人 (男子 142 人、女子 124 人) を分析対象とした。 2. 2.授業の流れ 3 学期の『家庭基礎』の授業において、対象 クラスをランダムに 3 群 (DVD 群 112 人、講 義群 76 人、講義+DVD 群 78 人) に割り当て、 保育領域の授業およびアンケートを実施した。 3 群は視聴覚教材を使用する時期とアンケート を取る時期が異なっているものの、最終的には 全てのクラスが同様の授業内容を受けること ができるように配慮した (図 1)。授業者は女 性の家庭科教諭 (教員経験 26 年) であった。 授業者による講義のテーマは「乳幼児の運動 機能とことばの発達」、使用した視聴覚教材 (DVD) は『子どもの発達と支援 vol. 1 運動機 能の発達』(松村,2005a) と『子どもの発達と 支 援 vol. 4 こ と ば の 発 達』(松 村,2005b) で あった。これらの DVD は、1 巻 20 分程度で、 子どもの発達について発達段階を映像で確認し ながら理解を深めることができるよう作成され たものである。 2. 3.アンケート 各群の所定の時期に、生徒の保育に関する理 解と興味を問う自由記述アンケートを実施した。 アンケートでは、A4 用紙 1 枚に、① 保育と子 どもの発達について知っていること、② 保育 と子どもの発達について興味のあること、③ これまでの授業の感想、④ あなたの子どもに 対するイメージ、の 4 つの質問項目があり、全 て自由記述で答えるものであった。これらの項 目のうち、子どもの発達や保育に関する生徒の 知識を問う質問①と興味・関心を問う質問②、 子どものイメージを問う質問④についての回答 を本研究の分析対象とした。 2. 4.分 析 本研究では、質的な言語データである自由記 述データからテキストマイニングと呼ばれる手 法を活用しカテゴリ生成を行った。その後、各 生徒の生起カテゴリ数を算出し、それに基づい て量的な検討を行った。 テキストマイニングとは、質的な言語データ の中に埋もれている情報を掘り起こし (mine)、 活用するための方法である (山西,2011)。テ キストマイニングでは、まず得られたテキスト データを品詞や活用といった形態素レベルや主 語と述語の係り受けなどの構文レベルで解析す る (山西,2011)。テキストマイニングを行う ためのソフトウェアとして、本研究では SPSS Text Analysis for Surveys 4 を用いた。 2. 4. 1.キーワードの抽出

まず、全てのアンケートデータを Microsoft Excel に入力した後、SPSS Text Analysis for Surveys 4 に読み込んだ。その後、形態素解析 や構文解析に相当する係り受けを基にした

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「キーワードの抽出」を行った。その際、「一語 文」「二語文」などの発達に関する専門用語が、 「一語」と「文」などと分断されることなく、 一つの単語として抽出されるよう、ユーザー辞 書に登録を行った。結果として抽出されたキー ワード数は表 1 の通りである。 2. 4. 2.カテゴリの作成

SPSS Text Analysis for Surveys では、抽出 されたキーワードを元に、「言語学的手法に基 づくカテゴリの作成」または「出現頻度に基づ くカテゴリの作成」を自動的に行うことができ る。前者は共通の文字列をもつキーワード同士 を一つのカテゴリとしてまとめる方法であり、 後者は設定した出現頻度以上の頻度であらわれ たキーワードをカテゴリとする方法である。前 者の欠点は、出現頻度が多い重要語であっても カテゴリとして認識されないことがあることで あり、後者の欠点は、実質的に同じ内容を指す キーワードであっても字面が少しでも異なれば 異なるカテゴリとして認識され、さらに、カテ ゴリ数が膨大な数になってしまうことである。 したがって、自動的に得られる分析のみでは、 適切な分析結果を得られることが難しい場合が ある (山西,2011)。そのため、自動分析結果 を分析者の視点で検証し、修正することが必要 である (山西,2011)。 本研究の自由記述データの分析で目的として いることは、授業を受けた後の生徒の知識や興 味・関心、子どもに対するイメージの内容や情 報量を知ることである。したがって、分析対象 とするカテゴリは、内容的にそれぞれ重複する ことなく独立しており、かつ、一つのカテゴリ はそれだけで一つの意味を指すものであること が望ましい。本研究では、まず、カテゴリが大 量になりすぎるのを防ぐために、言語学的手法 に基づくカテゴリの作成を行った。次いで、発 達と保育に関わるキーワードを確実にカテゴリ 化できるよう、残りのキーワードの中から出現 頻度 3 回以上のものを自動的にカテゴリ化した。 次に、分析者による手作業で、表 2 のようにカ テゴリの修正を行った。最後に、表 3 に例示し たような、カテゴリとして自動生成されていた 「ある」「なる」「いく」「いる」などの出現頻度 は多いもののそれだけでは一つの意味を指し示 さない言葉は、本研究の分析対象カテゴリとし ては不適切と考えられるため、カテゴリから削 除した。山西 (2011) に基づき、これらの作業 は絶えずローデータ (回答原データ) を参照し、 文脈を確認しながら行った。例えば、回答中の 「自分」という言葉は、乳幼児の自己意識を指 すのではなく、生徒自身を指し示す言葉である ことを文脈上で確認した上で、「自分」カテゴ リとしてまとめた。最終的に生成されたカテゴ リは結果とともに示す。 3.結 果 と 考 察 3. 1.保育や子どもの発達に関する知識 アンケートの質問①「保育と子どもの発達に ついて知っていること」の回答データより、最 終的に 103 個のカテゴリが得られた。それらの カテゴリをさらに内容により分類し、上位カテ 子どもイメージ 興味・関心 知識 172 82 146 32 56 263 165 52 41 85 263 215 61 69 136 名詞 動詞 形容詞 形容動詞 その他 アンケート質問項目 表 1 抽出されたキーワードの数 2) つかまりだち→『つかまり立ち』 3) どれ、どんな、何、何か、どんなこと →『何を』 人、人間、人たち、周囲、大人、他人、 周りの人、周り →『周囲の人』 4) 首、据わる→『首が据わる』 1) 同じ内容を示すカテゴリを統合 2) カテゴリ化されなかったキーワードを、同じ内容 を示す作成済みカテゴリに包含 3) 同じプロパティを持つ複数のカテゴリをまとめる 4) 必ず共起しており、密接なつながりを持つカテゴ リをまとめる 1) 変化、変化する、変わる→『変化』 表 2 カテゴリ修正の例 つく、知る、いる、思う、なる、 もっと、ある、いく、する 興味・関心 いく、すごい、思う、ある、なる、 存在、いる、なんでも 子どもイメージ ある、なる、いく、いる、する、 できる、あげる、とても 知識 表 3 削除されたカテゴリ例

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ゴリ (『年齢』『言語』等) を作成してまとめた ものが表 4 である。 次に、授業の実施プロセスや生徒の性別によ る、具体的な回答の量および質の違いを検討す るため、各生徒の生起カテゴリ数に基づく量的 な検討を行った。まず、各生徒の生起カテゴリ 合計数を算出した。図 2 は各授業プロセス群男 女別の生起カテゴリ合計数の平均値および標準 偏差を示している。授業プロセス (DVD 群、 講義群、講義+DVD 群)×性別 (男子、女子) の 2 要因の分散分析を行ったところ、性別の主 効果が有意であり (F(1, 260)=6.747, p=.01)、 授業プロセスの主効果 (F(2, 260)=1.005, n. s.) および交互作用 (F(2, 260)=.245, n. s.) は認め られなかった。全体的に女子の方が男子よりも 保育や子どもの発達に関する具体的な知識内容 を多く記入していたことが示唆された。 次に、上位カテゴリ別に各生徒の生起カテゴ リ数を算出した。表 5 はその平均値と標準偏差 を各授業プロセス群男女別で示している。上位 カテゴリごとに、授業プロセスと性別の 2 要因 の分散分析を行ったところ、『人々』に関して 性別の主効果 (F(1, 260)=8.354, p<.01) が認 められ、女子の生起カテゴリ数が男子を有意に 上回っていた。また、実施プロセスの主効果が、 『年 齢』(F (2, 260) =4.305, p<.05) と『人々』 (F(2, 260)=4.753, p<.01) において認められ た。Bonferroni 法による多重比較により、『年 齢』に関しては DVD 群が講義群よりも有意に 1 歳未満 1 歳 2 歳 3 歳 4 歳 5 歳 6 歳 人 々 友達 親 周囲の人 私たち 情 ・ 社 会 性 声 性格 心 情緒 笑顔 自己中心 協調性 泣く 快・不快 コミュニケーション 関 わ る 話しかける 働きかけ 対応する 接し方 育て方 育てる 年 齢 表 4 保育と子どもの発達に関する知識 最終カテゴリの分類 反抗期 個人差 環境 音 真似 スピード ごっこ 遊ぶ 変化 発達 早期発見 早い 順序 興味 虐待 愛情 味 保育 物 発達課題 遅い 赤ちゃん 子供 刺激 違う 発達段階 大事だ 成長 新生児 障害 行動 口に入れる 経験 絵本 そ の 他 脳 頭 胎内 体重 体 足 身長 歯 身 体 喃語 命名期 二語文 多語文 初語 三語文 言葉 叫喚・非叫喚 一語文 マザーリーズ クーイング 言 語 認知 知能 質問 視力 思考 好奇心 感覚 ピアジェの発達段階 ハンドリガード アニミズム 認 知 能 力 歩く 反射 走る 寝返る 首が据わる 手先を使う 座る 運動機能 運動 ハイハイ つかまり立ち スキップ ジャンプ 運 動 ス キ ル 図 2 知識に関する生起カテゴリ数

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生 起 カ テ ゴ リ 数 が 多 か っ た が (p<.01)、 『人々』に関しては、講義群の方が DVD 群よ りも有意に生起カテゴリ数が多かった (p< .01)。 この結果より、全体的に女子の方が男子より も「周りの人が関わることで成長する」など、 子どもが親を含む周囲の人々との関わりの中で 発達する存在として捉えていることが示唆され る。また、DVD を活用した授業よりも、授業 者による講義の後の方が子どもの発達と周囲の 人々との関わりの関連性を見出していることが 示唆される。一方、DVD 活用の効果としては、 具体的に子どもの発達を順を追って映像で確認 できることにより、「1 歳くらいで歩けるよう になる」など、子どもの発達のマイルストーン に関する理解が深まったことが示唆される。 3. 2.保育や子どもの発達に関する興味・関心 アンケートの質問②「保育と子どもの発達に ついて知っていること」についても、質問①と 同様の分析を行った。質問②の回答データより、 最終的に 58 個のカテゴリが得られた。それら のカテゴリをさらに内容により分類し、上位カ テゴリ (『疑問詞』『人々』等) を作成してまと めたものが表 6 である。 まず、各生徒の質問②に対する生起カテゴリ 合計数を算出した。図 3 は各授業プロセス群男 女別の生起カテゴリ合計数の平均値および標準 偏差を示している。授業プロセスと性別の 2 要 因の分散分析を行ったところ、結果は授業プロ セスの主効果が有意であり (F(2, 260)=3.511, p<.05)、性別の主効果 (F(1, 260)=2.717, n. s.) および交互作用 (F(2, 260)=1.330, n. s.) は認められなかった。多重比較により、講義+ DVD 群が講義群よりも有意に生起カテゴリ数 が多かったことが明らかとなった (p<.01)。 次に、上位カテゴリ別に各生徒の生起カテゴ リ数を算出した。表 7 はその平均値と標準偏差 性別 授業プロセス a) DVD 群>講義群 (p<.01) b) 男子<女子 (p<.01)、DVD 群<講義群 (p<.01) 上位 カテゴリ 表 5 知識に関する上位カテゴリ別生起カテゴリ数 0.05 0.11 0.36 0.63 0.15 0.23 男子 女子 認知能力 1.32 1.45 1.92 2.28 1.22 1.43 1.64 2.05 1.46 1.59 1.55 1.79 男子 女子 その他 0.10 0.08 0.34 0.36 0.09 0.15 男子 女子 身体 0.47 0.49 0.21 0.25 0.37 0.56 0.15 0.27 0.34 0.43 0.09 0.17 男子 女子 関わる 0.39 0.30 0.11 0.10 0.32 0.39 0.26 0.22 1.50 1.14 0.72 0.57 男子 女子 運動 スキル 0.71 0.56 0.37 0.30 0.55 0.80 0.26 0.46 0.58 0.74 0.17 0.36 男子 女子 情緒・ 社会性 0.39 0.16 0.11 0.03 0.31 0.28 0.36 0.46 0.60 1.14 0.28 0.57 男子 女子 言語 0.50 0.59 0.26 0.42 0.53 0.75 0.33 0.65 0.49 0.51 0.17 0.30 男子 女子 人々b) 0.67 1.41 0.34 0.62 0.64 0.75 Mean SD Mean 0.90 0.50 0.32 0.18 0.45 0.36 0.10 0.08 0.97 0.67 0.45 0.36 男子 女子 年齢a) 1.03 0.96 0.50 0.50 0.87 0.80 講義+DVD群 講義群 DVD 群 SD Mean SD 何を なぜ どのように いつ 情 緒 ・ 社 会 性 声 性格 心 喧嘩する 泣く 感情 コミュニケーション 運 動 ス キ ル 反射 運動機能 認 知 能 力 話す 認識 聴覚 知的能力 数 視覚 思考 言葉 覚える 疑 問 詞 表 6 保育と子どもの発達に関する興味・関心 最終カテゴリの分類 早さ 障害 子供 過程 意味 未熟児 保育園 変化 外国語 真似 早期教育・習い事 将来 行動 虐待 影響 発達 段階 成長 興味 違い そ の 他 接し方 育て方 育 て 方 母親 夫婦 大人 他者 親 自分 人 々 脳 胎内 身体 身 体 遊び 生活 食事 衣服 おもちゃ 生 活 環 境

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を各授業プロセス群男女別で示している。上位 カテゴリごとに、授業プロセスと性別の 2 要因 の分散分析を行ったところ、『疑問詞』に関し て授業プロセスの主効果 (F(2, 260)=3.152, p <.05) と性別×授業プロセスの交互作用 (F (2, 260)=3.072, p<.05) が認められた。単純主 効果の検定の結果、男子において、授業プロセ スの効果が有意であり (F(2, 260)=6.182, p< .01)、多重比較の結果、講義+DVD 群が講義 群よりも有意に疑問詞カテゴリが多く生起して いたことが明らかとなった (p<.01)。また、 講義+DVD 群においては、男子の方が女子よ りも疑問詞カテゴリが多く生起していた (F(1, 260)=5.345, p<.05)。また、『運動スキル』に 関して授業プロセスの主効果が認められ (F(2, 260)=4.042, p<.05)、多重比較の結果、DVD 群 が講義群 (p<.05) や講義+DVD 群 (p<.05) よりも有意に生起カテゴリ数が多かった。 これらの結果より、通常講義に加えて DVD を視聴した方が、通常講義のみよりも保育や子 どもの発達に関する具体的な興味・関心が多く 生起したことが示唆される。また、運動スキル に関して授業プロセスによる生起カテゴリ数の 差が出たことから、DVD を観ただけの時は、 より DVD に関連した興味・関心を持ちやすい ことが示唆される。そして、男子のみ、講義に 加えて DVD を観た群の方が講義だけの群より も 疑 問 詞 が 多 く 生 起 し た こ と は 興 味 深 い。 DVD 教材を講義に加えることにより、男子の 保育や子どもの発達に関する素朴な疑問を喚起 したのかもしれない。男子は女子に比べ、子ど もについての具体的な興味・関心を持ちにく かった可能性が考えられるが、講義に加えて実 際の子どもの映像を見ることで、より具体的な 興味・関心が喚起された可能性が考えられる。 3. 3.子どもに対するイメージ アンケートの質問④「子どもに対するイメー ジ」に関する回答データより、最終的に 39 個 のカテゴリが得られた。それらのカテゴリをさ らに内容により分類し、上位カテゴリ (『ポジ ティブイメージ』『ネガティブイメージ』等) を作成してまとめたものが表 8 である。 まず、各生徒の質問④に対する生起カテゴリ 合計数を算出した。図 4 は各授業プロセス群男 女別の生起カテゴリ合計数の平均値および標準 偏差を示している。授業プロセスと性別の 2 要 因の分散分析を行ったところ、性別の主効果が 有意であり (F(1, 260)=8.860, p<.01)、女子 の方が男子よりも生起カテゴリ数が多かった。 授業プロセスの主効果 (F(2, 260)=2.822, n. s.) と交互作用 (F(2, 260)=.848, n. s.) は認められ なかった。 次に、上位カテゴリ別に各生徒の生起カテゴ リ数を算出した。表 9 はその平均値と標準偏差 図 3 興味・関心に関する生起カテゴリ数 性別 授業プロセス a) 男子において、講義群<講義+DVD 群 (p<.05) 講義+DVD 群において、男子>女子 (p<.05) b) DVD 群>講義群 (p<.05)、講義 +DVD 群 (p<.05) 上位 カテゴリ 表 7 興味・関心に関する上位カテゴリ別生起カテゴ リ数 0.23 0.54 0.55 0.62 0.29 0.45 男子 女子 認知能力 0.93 1.04 1.00 1.20 0.84 0.93 0.67 0.97 1.04 1.00 0.95 1.09 男子 女子 その他 0.05 0.05 0.21 0.38 0.05 0.11 男子 女子 生活環境 0.27 0.30 0.08 0.10 0.27 0.32 0.08 0.11 0.17 0.25 0.03 0.06 男子 女子 育て方 0.76 0.55 0.47 0.43 0.49 0.65 0.15 0.14 0.39 0.34 0.14 0.13 男子 女子 情緒・ 社会性 0.27 0.22 0.08 0.05 0.22 0.16 0.05 0.03 0.27 0.34 0.08 0.13 男子 女子 身体 0.27 0.27 0.08 0.08 0.22 0.23 0.05 0.08 0.37 0.25 0.08 0.06 男子 女子 人々 0.23 0.16 0.05 0.03 0.16 0.16 0.03 0.03 0.39 0.25 0.18 0.06 男子 女子 運動 スキルb) 0.31 0.34 0.11 0.12 0.43 0.35 Mean SD Mean 0.65 0.45 0.55 0.28 0.41 0.51 0.13 0.27 0.56 0.55 0.32 0.30 男子 女子 疑問詞a) 0.39 0.46 0.11 0.20 0.22 0.28 講義+DVD群 講義群 DVD 群 SD Mean SD

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を各授業プロセス群男女別で示している。上位 カテゴリごとに 2 要因の分散分析を行ったとこ ろ、性別の主効果が『ポジティブイメージ』 (F(1, 260)=8.735, p<.01) と『成長する存在』 (F(1, 260)=3.924, p<.05) に認められ、いず れも女子の方が男子よりも生起カテゴリ数が多 かった。授業プロセスの効果や交互作用はいず れにおいても認められなかった。 これらの結果より、子どものイメージについ ては授業プロセスに関わらず、授業後に概して 女子の方がより具体的で多くのイメージを持っ ていたことが伺えた。また、上位カテゴリの 『子どもの性質』は、一時期における子どもの 特徴や気質に関するイメージであるのに対し、 『ポジティブイメージ』と『成長する存在』は、 『ネガティブイメージ』および『養護性』とと もに、子どもを育てる者としての視点あるいは 長期の時間軸で発達を捉える視点が入っている と考えられる。女子は男子よりも、自分自身の ことをいつかは子どもを育てる存在として捉え ていることが考えられる。 かわいい 癒す 面白い 楽しい 幸せ 成 長 す る 存 在 成長 変化 早い 可能性 子 ど も の 性 質 元気 無邪気 小さい 純粋 わがまま 自由 素直 泣く 明るい 好奇心 興味 幼い やんちゃ 想像力 笑う 遊ぶ ポ ジ テ ィ ブ イ メ ー ジ 表 8 子どもに対するイメージ 自分 不思議 そ の 他 人 一人 (では〜できない) 親 世話 大切だ 守る 育てたい 養 護 性 大変 うるさい 難しい 面倒 苦手 ネ ガ テ ィ ブ イ メ ー ジ 図 4 子どものイメージに関する生起カテゴリ数 性別 授業プロセス a) 男子<女子 (p<.01) b) 男子<女子 (p<.05) 上位 カテゴリ 表 9 子どもイメージに関する上位カテゴリ別生起カテゴリ数 0.72 0.48 0.42 0.23 0.60 0.65 0.54 0.51 0.53 0.64 0.32 0.34 男子 女子 子どもの性質 0.05 0.22 0.33 0.35 0.12 0.09 男子 女子 養護性 0.21 0.16 0.33 0.15 0.12 0.02 男子 女子 ネガティブ イメージ 0.34 0.54 0.13 0.25 0.27 0.23 0.08 0.05 0.12 0.54 0.02 0.19 男子 女子 成長する 存在b) 0.31 0.41 0.11 0.20 0.32 0.48 Mean SD Mean 0.48 0.67 0.34 0.63 0.47 0.56 0.31 0.46 0.51 0.51 0.35 0.51 男子 女子 ポジティブ イメージa) 0.16 0.40 0.03 0.13 0.47 0.44 講義+DVD 群 講義群 DVD 群 SD Mean SD

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4.総 合 的 考 察 本研究は、高校家庭科の保育の授業において、 視聴覚教材の活用が、性別や活用プロセスに よってどのように生徒の理解や関心度に関連し ているか、テキストマイニングの手法を活用し て検討を行ったものである。本研究の結果、保 育や子どもの発達に関する知識として生徒が具 体的に想起した事柄は、女子の方が男子よりも 多く、また、女子の方が子どもの発達を周囲の 人との関わりの中で捉える傾向があることが示 唆された。また、子どもに対するイメージとし て想起する言葉についても、女子の方がより具 体的な言葉を想起し、中でも女子の方が子ども を育てる者としての視点を持っていることが示 唆された。先行研究においても、女子の方が男 子よりも子どもへの明朗なイメージが強く、子 どもの精神的な発達を高く評価するイメージ を有していることが指摘されている (伊藤, 2005)。授業プロセスに関わらず、女子の方が 男子よりも、保育の授業内容を自分の将来に関 わる事柄として知識を吸収しており、自分が子 どもを育てるイメージを持ちやすいことが考え られる。 視聴覚教材活用の効果としては、生徒の性別 に関わらず、DVD 学習により、「何歳で○○ ができるようになる」のような、発達のマイル ストーンといった、発達に関する基本的知識に ついて理解を深められたことが示唆された。身 近に乳幼児がいないために子どもの発達につい て具体的な理解を持ち合わせていなかった高校 生にとっては、子どもが月齢・年齢を重ねるに 伴い、身体能力を発達させていくと同時に移動 能力を獲得していく様相、あるいは前言語的コ ミュニケーションから次第に言葉を介してコ ミュニケーションするようになる様相を映像で 確認することができたことは、大きな学習効果 をもたらしたと考えられる。 一方で、子どもの発達を周囲の人との関わり の中で捉える視点は、授業者による講義の後の 方がより印象的であることが示唆された。本研 究の結果から、映像を見せて理解させる方が効 率的な部分と、授業者の工夫により、生徒自身 や社会との関わりの中で理解させる方が適して いる部分があることが考えられる。どの学習領 域でどのような授業が効果的であるかというこ とについては引き続き検討する必要があるだろ う。 視聴覚教材は、講義に加えて活用することに より、生徒の興味・関心を引き出す効果が期待 できるのかもしれない。本研究では、講義に加 えて DVD を活用したことにより、性別に関わ らずに保育や子どもの発達に関する興味・関心 が喚起されていた。なかでも、特に男子は「な ぜ」「何を」などの疑問詞を多く用いて、保育 や子どもの発達に関する興味・関心を示してい た。保育学習において、男子生徒に興味・関心 を持たせることは課題の一つであると考えられ ているが (伊藤・木村,1999;倉持・伊藤・堀 内,2011)、実際の乳幼児の映像を通して理解 を深めることにより、男子生徒の子どもに関す る素朴な疑問に基づく興味・関心を喚起するこ とができたのであれば、映像活用の授業効果が あったと考えられる。 保育の授業において、実際に乳幼児との触れ 合いを体験することは、映像を通した授業では 得られない、生徒自身の情動や生活体験による 実感を伴った意義深い学習効果が得られるであ ろう。しかし、前述したように、乳幼児との触 れ合う保育体験学習は現実的に実施することが 難しい場合がある (伊藤,2007)。そのような 場合にも、視聴覚教材は生徒の興味・関心を喚 起し、具体的な知識を深めるうえで有効であろ う。また、保育体験学習の際の、生徒の事前知 識の少なさも課題となっている (伊藤,2007)。 そのような保育体験学習の前に、乳幼児の映像 を用いた教材を活用し、子どもの発達について の生徒の知識を深め、特に男子生徒の保育学習 についての興味・関心を喚起することができる と、乳幼児との触れ合い学習がより有意義なも のになると考えられる。 まとめると、本研究により、高校家庭科『保 育』授業において、子どもの発達に関する視聴 覚教材を活用することにより、一部の領域にお いて保育や子どもの発達に関する生徒の理解を 深めることができ、また、生徒の興味・関心を 喚起できることが示唆された。特に、男子生徒

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では、素朴な疑問に基づく興味・関心を喚起で きることが示唆された。視聴覚教材は、保育体 験学習の事前学習においても有意義に活用でき ることが期待できる。 引 用 文 献 藤井美和・小杉考司・李 政元 (編著).(2005).福 祉・心理・看護のためのテキストマイニング 入門:中央法規. 伊藤葉子 (2005).中・高校生の「子どもイメージ」 の 発 達.千 葉 大 学 教 育 学 部 研 究 紀 要,53, 85-90. 伊藤葉子 (2007).中・高校生の家庭科の保育体験 学習の教育的課題に関する検討.日本家政学 会誌,58 (6),315-326. 伊藤葉子・木村恵子 (1999).高校保育学習におけ る「親 に な る た め の 教 育」に 関 す る 一 考 察 ―― 乳幼児の親へのアンケート調査を通して ――.千葉大学教育学部研究紀要Ⅰ 教育科 学編,47,129-136. 倉持清美・伊藤葉子・堀内かおる (2011).男子高 校生徒の家庭科保育教育の課題.東京学芸大 学紀要 総合教育科学系Ⅱ,62,219-227. 松村京子 (原案監修) (2005a).子どもの発達と支 援 vol. 1 運動機能の発達:医学映像教育セン ター. 松村京子 (原案監修) (2005b).子どもの発達と支 援 vol. 4 ことばの発達:医学映像教育セン ター. 文部科学省 (2010).高等学校学習指導要領解説 家 庭編.開隆堂 大路雅子・松村京子 (1998).雑誌掲載事例にみる 中学・高校生の乳幼児体験学習の効果と問題 点.日本家庭科教育学会誌,41 (1),55-62. 砂上史子・日景弥生・中嶋明子・盛 玲子 (2005). 高校家庭科における保育体験学習者の意識変 容 (第 2 報) ―― 生徒の感想文にみる保育体 験学習者の経験内容の分析 ――.日本家庭科 教育学会誌,48 (1),10-21. 山西博之 (2011).教育・研究のための自由記述ア ンケートデータ分析入門:SPSS Analysis for Surveys を用いて,外国語教育メディア学会 (LET) 関 西 支 部 メ ソ ド ロ ジ ー 研 究 部 会 2010 年度報告論集 (pp. 110-124)

図 1 3 つの授業プロセス群

参照

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