完了報告書(1年目)
11
0
0
全文
(2) <研究の背景と目的> 新宿の暮らしの保健室や日本看護協会によるまちの保健室事業等で代表されるように、 住民の身近なところで気軽に健康・生活の相談ができる場所があることの有用性は実証 されている。全国各地にも地域密着型の相談室が拡大しつつある。 福井市の状況としても、市から委託を受けてまちづくりを展開する企業が健康面からの まちづくりに、まちの中に相談機能のある場所を設置したいと検討していることや、市 をブロックに分けて保健室のような相談・窓口を設置していくことを福井市の都市整備 室が準備に着手しているという動きもある。 その地域のニーズに基づいた相談室としていくために、そこでどんな方法を用いるのが 有用か、福井のまちの実際のニーズを調査し、福井型のモデルケースとなれるよう 3 年 かけて相談室のあり方を模索したい。そして、今後永くこのまちの人々子どもから高齢 者までが住み慣れたまちでより自分らしく暮らすことをサポートできる場所となるよう 取り組むことを目的とした。 <研究方法> 地域の人に寄り添う場所づくり、健康課題に取り組むきっかけづくり、地域住民の繋が りづくりを中心に、相談室における活動を展開した。 1) 場所づくり(店舗型相談室の開設). ■ 開設場所:福井市中心部、福井駅前に開設。商店街の空き店舗を利用。 ■ 営業時間:月∼金 10:00∼15:00 ■スタッフ:看護師を中心に、栄養士・薬剤師・介護福祉士を配置した。 ■その他:医療・介護の相談だけでなく、どこへ相談したらよいのか分からないことや、 本人だけでなく家族の相談なども受けられるようにした。また、健康相談の他、血圧な どの健康チェックや、ひとやすみなどでも利用できることを呼びかけ、気軽に入りやす い場所づくりに努めた。.
(3) 2) きっかけづくり(アウトリーチ) 地域の人々が、健康課題について考えたり取り組んだりするきっかけを作ることを目的 に、地域へ出向く活動を行った。 ■ 出張活動 出張健康相談会、健康講座、救護班、ワークショップなどの形で活動。活動の案内や報 告を、ブログやSNSで情報発信し、相談室の存在周知や相談室の活用方法の普及に努 めた。. H25.6 マルシェワンダーランド(救護班・WS) H25.9 西武福井店(健康相談) H25.11デイサービス山のいえ笑楽日(健康相談) H25.12 西武福井店(健康相談) H26.2 企業(メンタルヘルスWS) H26.5 西武福井店 (健康相談) 順化地区体育大会(救護班) 福井大学(応急手当WS) H26.6 マルシェワンダーランド(救護班・熱中症WS) 大安禅寺(健康相談). ■認知症カフェ H25.9 より毎月 1 回程度、近隣の地区で 1 日限定の認知症カフェを開設。 認知症の当事者・家族だけでなく、地域住民が身近なこととして考えていけるよう、啓 蒙活動を主な目的として、健康講座やワークショップ、認知症相談・健康相談などを毎 回提供した。 開催頻度:月 1 回程度 開催場所:イベントスペースや公民館など 内容:認知症サポーター養成講座、在宅医療講座、相談ブースなど.
(4) H25.9より毎月1回ペースで移動カフェとして開催 H25.9 AOSSA H25.10 AOSSA H25.11 AOSSA. H25.12 萬松寺 大安禅寺 H26.1 福井市順化公民館. H26.2 AOSSA H26.3 福井市東安居公民館 H26.4 紅茶の時間(石川県). ■ 「保健室があるまちづくりワークショップ」 定期的に相談室を開放しワークショップを開催した。参加者がセルフケア能力を向上さ せることを狙い、様々な健康テーマをもとに、話題提供のための講師を招くなどして展 開した。 また、参加した人同士の繋がりもできるよう交流タイムを毎回設定した。 開催頻度:月 1 回(第3金曜の夜) 【テーマ】 身近な健康探し、周りでよく聞く健康不安、子世代の悩みってなんだろう、 健康なコミュニティとは、家族の10年後を考えよう、みんなの集まる場所とは、認知 症があっても暮らしやすいまちづくり、アロマセラピー 等.
(5) 3) 繋がりづくり(地域イベント参加、ボランティア育成) 地域に根ざした場所となるために、地域住民や学生、地域の各種窓口・まちづくり団体 等と連携した。 ■まちづくりイベントへの参加 普段の営業時間は平日の日中のみだが、相談室周辺がイベント等で賑わう週末も適宜臨 時営業とした。家族連れや学生など、普段の営業時間には来室の少ない世代にも利用を 呼びかけた。 また、相談室周辺でのイベント等に参加することで、相談室近隣の商店街の人達やまち づくり関係者との交流の機会を持った。. H25.10 まちなかゼミナール(家庭での応急手当講座開催) まちなかウォークラリー(チェックポイントとして参加・健康チェック付) H25.12 エキマエハッピィクリスマス2013 (ウォークラリーのチェックポイントとして参加) H26.3 まちかどトレーナールーム(運動に向けたからだづくり) H26.6 まちフェス まちかどお仕事体験(看護師・薬剤師職業体験). ■ ボランティア拠点づくり 学生や一般、専門職等に、ボランティアとして、相談室における活動協力をお願いした。 イベント・出張活動時、当日のサポートを中心に活動してもらい、慣れてきた人には相 談室における来室者対応や、イベント・出張活動における企画・準備などの協力を得た。. <結果・考察> 1)相談室の役割 ■利用状況.
(6) 来室目的 相談. 331. 見学. 388. チェック. 255. ひとやすみ. 276. 取材/打合せ. 101. イベント. 375. その他. 104. 0. 100. 200. 300. 400 (人). H25.7 H26.7. (「イベント」はH26.3よりカウント). 図1 来室目的 開設から 1 年間での延べ来室者数は約 1820 人であった。来室目的は、健康相談の他、 健康チェックのみで訪れる人もいた。 悩みや困り事などの顕在的な健康問題があるときにだけでなく、普段の生活の中で気軽 に立ち寄れる場所であることを目指しており、ひとやすみなどで利用する人が多いこと. 年代別データ. は、ひとつの成果としてあげられる。実際、 「見学」 「ひとやすみ」で訪れた人でも、声 をかけることで「相談」に結びつくケースも多い。気軽に入りやすくすることが、地域 や家族の潜在的な健康課題への予防的アプローチに繋がると考えられる。 170. 85. 0 10代. 20代. 30代. 40代. 50代. 60代. 70代以上. 図 2 年代別データ 世代別に来室者をみると、学生からお年寄りまで、幅広い年代の人が利用している(図 2) 。中高年では健康相談・健康チェック目的の来室が多く、商店街や近隣の会社勤めの 人も、お昼休みを利用して健康チェックなどで訪れている。.
(7) 10 20 代は地域の学生が大半であり、 医学部の学生は地域医療を身近に学べる場として、 地域教育学部の学生は高齢者や子どもの新しい居場所として注目しているようである。 相談室は、様々な学部生にとって、普段学んでいることを地域で実際に触れたり学んだ りする場として拡げていくことも、社会におけるひとつの役割になると考えられた。こ れらの学生教育は、今後の相談室の担い手としても視野に入れて取り組んでいきたい。. 相談内容. ■相談内容. 不安 心配 整理できない感情. 【その他】 整形外科、ダイエット、糖尿病、 精神疾患、癌、婦人科疾患 など. Bio:生物・身体. Psycho:心理. 複合症状 高血圧 認知症 が多い。. Social:社会. 相談対象. 医療・介護サービス 情報不足 近所トラブル など. 図 3 相談内容. 【その他内訳】 ・父母 ・配偶者 ・知人/友人 ・兄弟 ・子 ・祖父母. 19%. 81%. 本人. 図 4 相談対象. その他.
(8) 相談対象は、多くは来室者本人であり、相談内容は、身体的なものから心理的・社会的 なものまで幅広い。 (図3、4) 身体的な相談では、複数の症状があることでの相談が多く、続いて高血圧・認知症の相 談が多かった。複数の症状がある場合、医療機関を受診すべきかどうかや、もし受診す るとしてもどんな医療機関を受診したらよいのかという相談が多く、受診前の情報整理 をサポートした。また、高血圧については、かかりつけ医がいても、医療者の説明や薬 の管理などが上手く理解できないという相談や、食事や運動、正しい血圧測定の方法な どの自宅でのセルフケアに関する相談も多く寄せられた。今後、看護職だけではなく、 栄養士や薬剤師などの地域の専門職と連携して相談体制を作っていくことで、より細や かな助言に繋げられると考える。 本人以外の相談についても、約2割あった。その対象内訳は、父母や配偶者、友人知人 などが多かった(図4) 。相談内容としては、離れて暮らす家族の療養・介護のことや、 認知症など家族で抱え込みがちな相談が多くみられた。 相談室開設前は、医療機関を受診する前段階での予防的な関わりがまちに必要とされて いると予想していた。しかし実際、来室者からは、 「医療用語がよく分からなくて医師の 説明が理解できなかった」 「医療スタッフに遠慮してしまい、聞きたいことがゆっくり聞 けなかった」などの声も多く、医療機関に結びついた後でも生活の中でフォローする継 続的な関わりが必要であることが見えてきた。 身体的な相談だけでなく、心理的・社会的な相談も多い。漠然とした不安・心配、整理 できない感情を抱える人も多く、 「話せる場」があることが重要だと感じている。社会的 な相談では、どこに相談したらよいのか分からないことや、各種サービスの狭間で悩む 人も多く、多種多様な課題に対応するためのネットワークの必要性が感じられた。 2)アウトリーチ 店舗型の相談室まではなかなか足を運べないが、 何かの機会に相談出来る場があれば 「つ いでに」相談したいと思っている人は多いようであり、イベントや商業施設で出張健康 相談会を行うと、気軽に立ち寄ってもらうことができた。病院に行くほどではないか実 は気になっていること、自己流で対処しているがなかなか改善されない健康問題などの 相談が寄せられることが多かった。出向く活動は、少しでも早い段階で、相談に結びつ けることができるひとつのきっかけになり得るため、ヘルスプロモーションにおいても 重要な役割を担うと考える。 出張活動として、企業や教育機関における健康講座・ワークショップも行ったが、その 際は参加者が楽しみながら学べるスタイルの活動を意識した。参加者からは「家族にも 教えたい」 「近所の人の助けになれるような学びがあった」などの声があり、自分に今必 要な知識ではなくても、身近な人に対して応用できる知識を得ることで、地域全体の健 康に繋げられる可能性を感じた。.
(9) 認知症カフェについても同様の効果が得られている。イベントスペースを中心に活動し ていくうちに、 「もっと身近な場所で、地域の住民に寄り添った形で開催してほしい」と 各地区の公民館から依頼が来るようになった。当事者だけではなく、支える側からの依 頼であり、地域全体の健康を意識する住民が増えてきていると感じられる。 認知症カフェでは、在宅医療についての講座も組み合わせ、認知症があっても住み慣れ た地域で永く暮らしていくためのヒントを参加者とともに考えられるように働きかけた。 既存のコミュニティづくりに、専門職が加わることで、地域の新たな課題にも取り組む ことができると考える。そして、その専門職がすぐ相談できる身近なところにいること が重要であり、公民館という単位は、相談室を設置する上でも、対象となる地域の範囲 を示すひとつの指標となると考える。 さらに、認知症カフェの活動は、平成 26 年 6 月より福井市の事業として移行し継続し ている。今後、相談室の運営が成り立つ仕組みを考えるにあたっても大きな成果である と考える。 3) 繋がりづくり ■ 地域住民との交流 近隣の商店街におけるイベントに参加することで、商店街の人々との関係作りに繋がっ た。 商店街の多くの店では、一人で営業している場合も多く、調子を崩していてもなかなか 医療機関受診が難しいために対処が遅れがちな人が多かった。そのため、すぐ行ける場 所に相談室ができたことで、受診すべきかどうかや応急手当としてできることは何かな ど相談し、体のメンテナンスがしやすくなったという声も聞かれた。 また、行政・まちづくり団体等と連携することで、ジョギング・ウォーキングイベント、 健康な食事メニュー提供、認知症高齢者の見守りなど、健康に関するまちづくり活動も 拡がりつつある。これらを通して、商店街関係者だけでなく、イベントに集まる多くの 地域住民に、相談室を知ってもらったり、訪れたりする機会に繋がっている。よって、 相談室がまちの暮らしの中に溶け込む方法として、住民やまちづくり団体との繋がりづ くりは有効であると考える。 ■ボランティアスタッフの育成 イベント・出張活動を中心に、ボランティアスタッフ約 30 名に協力を得られている。 学生や地域の医療・介護職の他、家族介護経験者や一般の人など、背景は様々であった。 しかし、各ボランティアスタッフにいつ協力が得られるかの情報を整理したり、イベン トの情報を流したりする作業が繁雑であった。それらの管理についてはシステムが必要 ではないかと感じている。広く活動できるボランティアスタッフを集める方法や、現在 集まってきているボランティアスタッフの管理方法などは、今後検討していきたい。.
(10) また、ボランティアスタッフではないが、来室者の方に注目してみると、リピーターと して相談室を利用する人はとても多く、 リピーターがひとやすみで相談室を利用した際、 他の来室者の相談にのっている場面も多々見られている。 誰かの相談相手になることで、 リピーター自身も「自分の健康や家族の将来について考えるきっかけになった」と話し ている。 このように、 地域住民同士のセルフケアが行えるような場の提供や人づくりは、 健康なコミュニティ創出の上で重要であり、自助的な活動が行えるように関わっていき たい。 <今後の課題と次年度に向けた計画> ■ 寄り添う場所づくり まずは開設してみて、どのような相談があるかを探る 1 年であった。次年度としては、 個々の来室者から地域全体に視野を拡げ、地域のニーズに応えていく相談室を目指し、 地域住民の特徴や相談室の役割などを分析していきたい。 また、専門的な助言が必要な相談も多いため、医師・看護師の他、栄養士や薬剤師など 地域の専門職による協力をもとに、人員配置を拡げていきたい。そのためには、曜日毎 に「ガン相談」 「認知症相談」など、相談の入り口を分かりやすくすることも検討する。 どこに相談したらよいのか分からないことや、各種サービスの狭間で悩む人も多く、多 種多様な課題に対応するためのネットワークづくりにもさらに力を入れていきたい。 ■ アウトリーチ 健康をテーマにしたワークショップやイベントを開催してきたが、テーマや広報の方法 によっては、参加者が少ないものもあった。今後は、地域のニーズに添った健康課題を 取り上げるようにし、より多くの地域住民に利用される勉強会の開催を目指す。そのた めに、まちに出向くことを増やし、住民と直接対話する機会を更に設けていきたい。出 張活動の広報にも力を入れ、活動の機会を増やす。 ■ 繋がりづくり イベントや出張活動など、相談室活動が広がりを見せる中、それらに協力が得られるボ ランティアの登録数が増えてきた。しかし、そのボランティアを動かすための仕組みが 整っていないため、連絡や統括などの管理が難しい。住民同士の自助的な活動の支え方 やボランティア育成・管理に向けたスタッフ向け勉強会を次年度には企画し、仕組み作 りを進めていきたい。 <まとめ> 一般に、まちの人々にとって医療は敷居が高いものであり、医療機関に繋がる前の段階 に潜む健康問題や医療機関との連携での課題など、まちなかには多く存在することを実.
(11) 感している。 それらの課題に対して、どのように取り組むことが有効か引き続き検討しながら活動し ていきたい。 公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団の助成による.
(12)
関連したドキュメント
【背景・目的】 プロスタノイドは、生体内の種々の臓器や組織おいて多彩な作用を示す。中でも、PGE2
(( . entrenchment のであって、それ自体は質的な手段( )ではない。 カナダ憲法では憲法上の人権を といい、
1 単元について 【単元観】 本単元では,積極的に「好きなもの」につ
いしかわ医療的 ケア 児支援 センターで たいせつにしていること.
・本計画は都市計画に関する基本的な方 針を定めるもので、各事業の具体的な
私たちは、行政や企業だけではできない新しい価値観にもとづいた行動や新しい社会的取り
3 ⻑は、内部統 制の目的を達成 するにあたり、適 切な人事管理及 び教育研修を行 っているか。. 3−1