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近江の説話の舞台の分布に関する検討

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近江の説話の舞台の分布に関する検討

安 藤 哲 郎

A consideration on the distribution of staging area in

Omi province

Tetsuro ANDO

キーワード:舞台、説話、近江 1.はじめに 本稿では、説話集に収載された説話の舞台か ら、近江国に分布するものを取り上げ、その舞 台の分布について大まかな傾向を検討すること を目的とする。 筆者は旧稿1) で説話の舞台と内容の関連性に ついての分析を行い、平安京とその周辺の説話 の分布について、物語の内容によって分類し、 その際、登場人物にとって「期待すべき内容」 (霊験・現世利益などが得られるもの)と「好ま しくない内容」(火事・動物が化けるなど)とい う尺度を用いた。結果としては、「期待すべき内 容」は京外に多く、「好ましくない内容」は京内 に多いという形で、舞台と内容の関連性がある ことを示した。 ただし、旧稿は平安京とその周辺に分析が限 られている。当時の説話の舞台となった場所が どのような認識を持たれていたか、という点に ついては、全国的に分析を行う必要がある。そ こで本稿では、平安京とその周辺を除いたその 中でも非常に舞台の数の多い近江国に地域とし ての対象を設定し、詳細を検討していきたい。 対象とする説話集は表 1 に示した通りであ る。旧稿との比較も行うために、基本的には旧 稿で扱ったものと同じものを活用している。旧 稿でも述べたが、筆者は「説話集の黄金時代」2) と呼ばれる院政期の前後に編纂された説話集を 取り上げることにより、中世初期の貴族社会の 空間認識を多面的に理解しようと考えており、 * 滋賀大学 貴族の日記や別の旧稿3) で取り上げた今様など も用いながら、一連の研究を行っているが、先 述したように、本稿は全国的な理解への一歩と することを大きな目的として、検討を行う。 2.説話集別にみた近江の舞台の概要―京都の 舞台との比較― まず、旧稿で調査した平安京とその周辺舞台 と近江の舞台について、説話集別に比較を行い たい。尚、「平安京とその周辺」については、京 都盆地と付近の山中、山科盆地の辺りを対象に したが、京に近接している近江国は対象として いなかった。例えば、比叡山も対象としていな い。したがって旧稿と本稿との舞台の重複はな い。 対象となる説話集を示した先述の表 1 には、 近江国ならびに平安京とその周辺における舞台 の数も掲載した。舞台数はのべ数であり、各話 の中に登場する舞台を 1 つずつ数えていったも のを反映している。 表 1 によると、全体的には近江国の舞台数に 比べて平安京とその周辺の舞台数が多くなって いるが、その状況は説話集によって差異がみら れる。これを類型化してみると、まず、①平安 京とその周辺の舞台数の方がかなり多いものと して、『江談抄』『古事談』『続古事談』『宇治拾 遺物語』が挙げられる。次に、②平安京とその 周辺の舞台数の方が多いが、大きくは傾向が変 わらないものとして『今昔物語集』が挙げられ る。さらに、③近江国の舞台数の方が多いもの として『発心集』が挙げられる。

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ただし、『打聞集』『閑居友』については舞台 数がともに多くないこともあり、上記の類型に 加えることは難しい。また、『古本説話集』につ いては②に近いが、差が小さいと明確に捉える ことも難しいので別に扱う。 以上の状況について、説話集の性格が影響し ている可能性があると推論できる。①のうち『古 事談』『続古事談』は、起こった出来事を淡々 と述べる形式であり、『宇治拾遺物語』も感想 などの記述は少ない。小島が「寡黙な説話集と 饒舌な説話集」とに分かれると指摘している4) が、これらは「寡黙な説話集」すなわち「説話 そのものにはあまり手を加えず」「各説話に付加 する編者の感想や批評、訓戒の詞などはごく控 えめに添えられるか、あるいは全く添えられな い」5) タイプの説話集に該当する。貴族社会の 中で展開され編纂されたことを考えれば、これ らが平安京とその周辺の舞台を多くしているこ とも説明がつくと考えられる。 他方、大江匡房が談じたものを藤原実兼が筆 録した『江談抄』は、個人の語りという点でも 上記の説話集とは系統が異なるが、貴族社会の 故実に詳しい匡房の語りという点を考えれば、 平安京とその周辺の出来事が多くなることも頷 ける。 ②の『今昔物語集』では、平安京とその周辺 の舞台数が 293 に対し、近江国の舞台数も 237 と、かなり多いと言ってよい。『今昔物語集』は 本朝仏法部が 401 話、本朝世俗部が 297 話と、 仏法に関する内容が多くを占めている。また、 世俗部において地方での出来事を多く取り入れ ている点も、舞台が平安京とその周辺には限ら ㄝヰ㞟ྡ ⦅⧩ᖺ ⦅⪅ ศ㔞 ᭩⡠ ⯙ྎᩘ㸦ࡢ࡭㸧 ㏆Ụ ி㺃࿘㎶ Ụㄯᢒ 1111 ᖺ௨๓ ኱Ụ໷ᡣ㺃ㄯ ⸨ཎᐇව㺃➹㘓 6 ᕳ 445 ᮲ ኱⣔ 6 42 ௒᫇≀ㄒ㞟 㸦ᮏᮅ㒊㸧 1120 ᖺ௦ࡀ ୖ㝈 ୙᫂ 㸦※㝯ᅜㄝࡶ㸧 ➨ 11-31 ᕳࠊ698 ヰ 㸦➨ 18㸪21 ᕳḞ㸧 ඲㞟 237 293 ᡴ⪺㞟 1134 ᖺ㡭 ᮍヲ 27 ヰ ͤ 5 8 ྂᮏㄝヰ㞟 1195 ᖺ௨㝆࠿ ୙᫂ 70 ヰ㸦ୖ 46 ヰࠊ ୗ 24 ヰ㸧 ኱⣔ 16 28 ྂ஦ㄯ 1212㹼15 ᖺ㡭 ※㢧ව 6 ᕳ 460 ヰ ኱⣔ 54 100 Ⓨᚰ㞟 1216 ᖺ௨๓࠿ 㬞㛗᫂ ඲ 8 ᕳࠊ102 ヰ 㞟ᡂ 36 16 ⥆ྂ஦ㄯ 1219 ᖺ ⸨ཎᐃ⤒࠿ 㸦⸨ཎ㛗වㄝࡶ㸧 6 ᕳࠊ187 ヰ 㸦➨ 3 ᕳḞ㸧 ኱⣔ 15 68 㛩ᒃ཭ 1222 ᖺ ៞ᨻ 32 ヰ㸦ୖᕳ 21 ヰࠊ ୗᕳ 11 ヰ㸧 ኱⣔ 6 12 Ᏹ἞ᣠ㑇≀ㄒ 1213㹼21 ᖺ࠿ ᮍヲ㸦ᦤ㛵ᐙ࿘㎶ ࡢே≀࠿㸧 15 ᕳ 197 ヰ ኱⣔ 33 77 表 1 対象とする説話集と舞台数 注 1)「分量」のうち、話数の集計には様々な説があるが、取り上げた書籍のものに従った。 注 2) 「書籍」の、 「大系」は新日本古典文学大系(岩波書店)、「全集」は新編日本古典文学全集(小学館)、「集成」は新潮日本古 典集成(新潮社)。※の『打聞集』は、中島悦次『宇治拾遺物語・打聞集全 解』有精堂出版、1970 と『打聞集 本文と漢 字索引』大空社、1998 を参照。 注 3)「舞台数(のべ)」は、1 話の中に登場するものを 1 つずつ数えている。「京・周辺」は平安京とその周辺。

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ない状況を生み出していると考えられる。 尚、②の類型には入れなかった『古本説話集』 も仏教に関連する説話が多く収載されている点 は共通する。ただ、『今昔物語集』の類話が収 載される一方、三木が「上巻における民間また 地 方への関心の稀薄さ、下巻における天台系宗 門への軽視(南都仏教への傾斜)」6) が『今昔物 語集』や『宇治拾遺物語』と比較して大きく異 なると述べている7) ように、両者と異なる立場 であったことを考慮すれば、②の類型、あるい は倍近いということを鑑みて①の類型とするこ とも難しいという判断は、当然のことと思われ る。 ③については、近江国の舞台の方が多いこと に特徴がある。これは、編者が鴨長明であるこ とが関係していると考えられる。出家して隠伿 生活する中でまとめられた『発心集』において、 平安京やその周辺の舞台が少なくなることには 矛盾はないと思われる。 以上のように、説話集のもつ性格が舞台数 に影響している側面があると考えることができ る。 ところで、表 1 における説話集別の差異とい う点では、全体の話数と掲載舞台数の関係性も 異なっている。例えば、平安京とその周辺、近 江国の舞台が多く(半数以上の話で)登場す る説話集としては、『今昔物語集』(698 話中に 530)・『古本説話集』(70 話中に 44)・『発心集』 (102 話中に 52)・『閑居友』(32 話中に 18)・『宇 治拾遺物語』(197 話中に 110)が挙げられる。一 方、半数を下回るものとしては『江談抄』(445 条中に 48)・『古事談』(460 話中に 154)・『続古 事談』(187 話中に 83)が挙げられる。前者は各 話が比較的長いものが多い説話集であり、後者 は事実関係を短く表現していることも多い説話 集である。 比較的身近な地域であるために、記憶しやす く口承されやすかったのではないか、と推測で きるが、この点についての詳細を分析すること は別稿に委ねることとし、この状況に関しての み記しておくこととする。 3.近江の舞台の分布 (1)舞台の概要 続いて、近江国の舞台について、その分布を整 理したい。近江国の説話の舞台として出てくる 地名の分布(図 1、回数は考慮していない)と、 主な舞台についての登場回数(表 2)を示した。 これらによると、圧倒的に多い比叡山のほか に、三井寺、 坂の関、石山寺、日吉社、勢多 (瀬田)といった京に近い場所が舞台となって いる回数が多く、舞台の分布全体を見ても、京 都に近い方に寄っている。 このうち最も多い比叡山は、平安京とその周 辺で最も多い「清水寺」の登場回数が 32 回であ ることを鑑みれば、その 7 倍を占める圧倒的な 登場回数を誇っている。また三井寺も清水寺に 比べて数が多いが、これらは僧を多く輩出し、 貴族社会との結びつきが強かったことが影響し てかなりの数となっている。 図 1 には古代の交通路も載せたが、舞台の多 図 1 近江の説話の舞台 基図の地形は SRTM のデータによる。 また交通路は藤岡謙二郎編『古代日本の交通路(Ⅰ∼Ⅳ)』 別葉図による。

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⯙ྎ Ⓩሙᅇᩘ ẚཿᒣ㸦ᮾሪ㺃すሪ㺃ᶓᕝྵࡴ㸧 ࠺ࡕࠗ௒᫇≀ㄒ㞟࠘ ࠗྂ஦ㄯ࠘ ࠗⓎᚰ㞟࠘ ࠗᏱ἞ᣠ㑇≀ㄒ࠘ ࠗྂᮏㄝヰ㞟࠘ ࠗ⥆ྂ஦ㄯ࠘ ࠗᡴ⪺㞟࠘ ࠗỤㄯᢒ࠘ ࠗ㛩ᒃ཭࠘ 224 143 29 19 16 6 5 3 2 1 ୕஭ᑎ 41 ㏆Ụ㸦㏆Ụᅜ࡞࡝㸧 22 㐂ᆏ㛵࣭㐂ᆏᒣ࣭㛵ᑎ 16 ⍇⍈†࡜†ᓊ 14 ▼ᒣ 12 ᪥ྜྷ♫ 11 ໃከ㸦℩⏣㸧࣭ໃከᕝ 7 ẚⰋᒣ 6 ⢖ὠ 5 ⁠㈡ᑎ 4 ኱ὠ 3 ၈ᓮ 2 表 2 近江の主な舞台の出現数 登場回数はのべ数。 くが交通路、特に官道に沿って分布していると 言える。官道から距離のある場所の場合、浅井 郡などのように郡名が記されるもの、あるいは 比叡山や比良山、金勝山(金勝寺)、石塔寺、伊 吹山といった、ランドマークになり得る山や信 仰などとも関わる場所が舞台となっている。 これらのことから、貴族社会の中でよく知ら れた、あるいは知ることのできる場所が舞台と なっていると考えることができ、説話が貴族社 会で口承されてきたことを考えれば、知識とし て記憶にとどめられる場所が舞台になっていた とみることができる。 (2)比叡山を舞台とする説話 本項では、最も登場回数の多い比叡山につい て、物語の内容を大別したものを表 3 に示した。 種別としては、まず、ⅰ)話の内容が展開し たり、立派な人物がいると認識されていたりす るものとして、例えば「伝教大師亘宋伝天台宗帰 来語」(『今昔物語集』11-10)のように、最澄が 法師となって今の比叡山の場所に入って草庵を 営んでいると、香炉の灰から仏舎利が出た、と いうように、この舞台が重要な意味を持って展 開するものが挙げられる。次に、ⅱ)法会が行 われたり、仏像が安置されていたりするものと して、「伝教大師始建比叡山語」(『今昔物語集』 11-26)のように、話がある程度展開するが、法 会が行われたり仏像が安置されているといった 事実関係に重きが置かれている話題のものがあ る。ⅰ)とⅱ)はこの舞台で物語が展開する要 素がある内容である。 一方、ⅲ)出家・修行・読誦などを行ってい る(中心的な話は展開しない)ものとして、「法 性寺尊勝院僧道乗語」(『今昔物語集』13-8)のよ うに比叡山で修行を行ったことが記されるが、 内容は法性寺のような別の場所で展開する話、 あるいはⅳ)「∼の僧」といった在籍が述べられ るのみ(話の内容は展開しない)のものとして 「於法成寺絵像大日供養語」(『今昔物語集』12-22)のように登場人物の中に比叡山の僧が肩書き 付きで表現されるのみの話など、比叡山は出て くるがほとんど話が展開しないものが分類でき る。これらのそれぞれについて登場回数を数え た結果を示したのが、表 3 である。8) これによると、主舞台として話の内容が展開 するものももちろん多いが 4 割弱といったとこ ろであり、修行をしていることは示されている が中心的な話題は展開しないもの、あるいは単 に在籍していることだけが示される話などもか なり多い。中心的な話が展開しない(つまりそ の説話の主舞台ではない)話が約半数を占めて いる。 ただしそれでも、比叡山を主舞台とするもの は多いと言える。平安京の鬼門にあり、都を守 護する寺院として、貴族社会と密接に結びつい ていた結果として捉えてよいのではないかと考 える。

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4.『今昔物語集』の内容と近江の舞台 さらに、物語の内容との関連性について考察 する一例として、『今昔物語集』における近江国 の舞台について検討する。 表 4 は、『今昔物語集』(本朝部)の各巻の主 題と、総話数、近江国・平安京とその周辺を舞 台とする物語がそれぞれ何話あるかを整理した ものである。舞台の登場回数ではなく、近江国・ 平安京とその周辺の舞台が 1 回でも登場した物 語の話数を整理し、物語の展開と舞台との関連 性を検討した。尚、巻 11 ∼ 20 が「本朝仏法部」、 巻 22(21)∼ 30 が「本朝世俗部」、巻 31 も本 朝世俗部であるが「拾遺」に近いものである。 表 4 によると、巻 11 ∼ 15、17、30 について は近江国の舞台が多いか、同数である。一方、 巻 16 と巻 19 ∼ 29、31 については平安京とその 周辺の舞台の方が多い。 つまり、近江国が舞台となっているものは、 世俗的な内容に比べて、仏教関連説話が多いと 考えられる。 ただし、「法華経」に関係するものや僧尼に関 わる内容に比較的多い一方で、観音霊験譚は少 ない。観音霊験譚の 2 例はともに石山寺に関す るものである。 その観音霊験譚であるが、例えば、清水寺が 「観音霊験譚」が集められた巻 16 の平安京とそ の周辺を舞台とする 10 の説話のうち、実に 6 つ に登場する。清水寺という、京にきわめて近い 寺院が崇敬を集めていることを考えれば、近江 国の寺院が多く取り上げられないことも理解で きる。 以上のように、平安京とその周辺で展開さ れている話題とは、やや質が異なる可能性があ る。 貴族社会で口承されてきたもののため、平 安京とその周辺には世俗的な話題が多く展開さ れる一方、幾分かの距離のある近江国では仏教 関連説話の方が、平安京とその周辺よりも多く なるという点は、比較的理解しやすいものと考 える。  さらに、世俗的な内容よりも仏教関連説話が 多い点については、『江談抄』などのどちらかと いえば貴族社会における故実を中心とした説話 集よりも、『発心集』のような仏教色の強いも のの方が近江国の舞台数が多かった点と矛盾し ないと思われる。参考として、前掲の表 2 に比 叡山についてのみ説話集ごとの登場回数を示し たが、『今昔物語集』が最も多いことを除くと、 460 話と分量の多い『古事談』が数的に多くは なるものの、『発心集』の方が割合的には多く 載っており、2 章で検討した点とも合致してい ると考えられる。 5.今様の舞台との比較 説話は貴族社会で「口承されてきた」もので あり、同時代的なものよりも過去の物語の方が 多いため、同時代のものとの比較が必要と考え られる。 そこで、同時代的なものとして、院政期の流 行の歌謡であった「今様」の舞台と日記に記述 された場所について、旧稿で取り上げたことが あるので、これと比較しておきたい。図 2 は、 その際に作成した舞台の分布図について、近江 国の部分だけを抜粋したものである。 図 1 と図 2 を比較すると、日記で書かれてい る場所、今様の舞台になっている場所など、貴 族社会で同時代的な話が展開される場所とは、 ≀ㄒࡢෆᐜ Ⓩሙᅇᩘ ϸ㸧ヰࡢෆᐜࡀᒎ㛤ࡋࡓࡾࠊ❧ὴ࡞ே≀ࡀ࠸ࡿ࡜ㄆ㆑ࡉࢀ࡚࠸ࡓࡾࡍࡿ 85 Ϲ㸧ἲ఍ࡀ⾜ࢃࢀࡓࡾࠊ௖ീࡀᏳ⨨ࡉࢀ࡚࠸ࡓࡾࡍࡿ 16 Ϻ㸧ฟᐙ࣭ಟ⾜࣭ㄞㄙ࡞࡝ࢆ⾜ࡗ࡚࠸ࡿ㸦୰ᚰⓗ࡞ヰࡣᒎ㛤ࡋ࡞࠸㸧 68 ϻ㸧ࠕ㹼ࡢൔࠖ࡜࠸ࡗࡓᅾ⡠ࡀ㏙࡭ࡽࢀࡿࡢࡳ㸦ヰࡢෆᐜࡣᒎ㛤ࡋ࡞࠸㸧 43 表 3 「比叡山」における説話の物語の内容 分類しにくい内容については数に入れていない。

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比較的重なりがある。 ただし、図 1 で見られる舞台からみると、湖 南や湖北を中心に同時代的には扱われていない 場所が見られる。 今様については馬場が「京都という都市を温 床として成り立った日本で初めての本格的流行 歌」9) としており、近江国の今様の舞台が京都 に近いことが理解できるが、口承で伝えられた 説話の舞台が、京に近接している地域を中心に ᕳ ᕳࡢ୺㢟 ⥲ヰᩘ ㏆Ụ ி㺃࿘㎶ 11 ௖ᩍఏ᮶⪅ࡢ஦㋱㸦⪷ᚨኴᏊ࠿ࡽᖹᏳ᫬௦࡟⮳ࡿ㸧 38 9 4 12 ᆅ᪉ࡢ㐀ሪࠊㅖ኱ᑎἲ఍⦕㉳ࠊ௖ീ௖ἲወ⍞ࠊἲ⳹⤒ 㟋㦂ࠊྡൔࡢ⾜㊧ࠊᣢ⤒⪅ࡢヰ➼ 40 9 8 13 ᣢ⤒௝ࠊἲ⳹⤒㟋㦂㆓ 44 16 16 14 ἲ⳹⤒᭩෗㺃ᣢ⤒㺃ㄞㄙࡢຌᚨࠊࡼࡳࡀ࠼ࡾࠊ⤒ࡢጾຊࠊ ┿ゝ⛎ᐦࡢ㦂ຊ 45 12 8 15 ൔᑽࢆ୰ᚰ࡜ࡋࡓᴟᴦ ⏕㆓ 54 19 9 16 ほ㡢㟋㦂㆓ 40 2 10 17 ᆅⶶ⳶⸃㟋㦂㆓ࢆ୰ᚰ࡜ࡋࡓほ㡢ࢆ㝖ࡃㅖ⳶⸃࣭ㅖኳ 㟋㦂㆓ 50 12 12 18 㸦Ḟᕳ㸧 ̿ ̿ 㸫 19 ฟᐙ㆓ࠊ㏻಑ⓗ࡞௖ᩍㄝヰ 44 10 15 20 ᅉᯝᛂሗࢆ୺㢟࡜ࡍࡿ௖ᩍ㛵㐃ㄝヰ 46 9 10 21 㸦Ḟᕳ㸧 ̿ ̿ 22 ⸨ཎẶṔ௦㸦໭ᐙ୰ᚰࡢ❧ሙࠊ᫬ᖹࡢ௦ࡲ࡛㸧 8 0 3 23 㐠ື⬟ຊ࡟㛵ࢃࡿᢏ⬟㆓ 14 2 6 24 ᢏ⬟࣭⬟ⱁ⛠㈶㸦⋤ᮅᩥ໬ࡢ࢚ࢵࢭࣥࢫࢆ᦬ฟ㸧 57 4 24 25 ※ᖹ஧Ặࢆ୰ᚰ࡜ࡍࡿṊ⪅ࡢྜᡓ㆓ࠊṊຬ࣭ຌྡ㆓ 14 1 4 26 ㅖᅜࡢወ㆓␗⪺㸦๓ୡ࠿ࡽࡢᐟሗ࡟ࡼࡿࡶࡢ㸧 24 1 3 27 㟋᛹㆓࣭ே㛫࡜㉸⮬↛ⓗ㟋ᛶࡢ࠿࠿ࢃࡾྜ࠸ 45 4 30 28 ➗ヰ࣭࣮ࣘࣔࣛࢫ࡞ヰ 44 5 21 29 ┐㈫㆓୺యࡢከᵝ࡞ᕰㄯⓗᝏ⾜㆓㸦ື≀⏺ྵࡴ㸧 40 4 14 30 ࿴ḷ≀ㄒ୺యࡢ⏨ዪࡢ஺᝟࣭㞳ྜࡀ⧊ࡾ࡞ࡍே㛫ᶍᵝ 14 2 1 31 ࠕᣠ㑇ࠖ㸦ᐤࡏ㞟ࡵࡢほ࠶ࡾ㸧 37 8 13 表 4 『今昔物語集』の各巻の主題と説話の話数 注 1) 「巻の主題」は、馬淵和夫ほか校注・訳『今昔物語集(①∼④)』小学館(新編日本古典文学全集)、1999 ∼ 2015(初 刷は 1999 ∼ 2002)を参照した。尚、巻 11 ∼ 20 が本朝仏法部、巻 21 ∼ 31 が本朝世俗部である。 注 2) 「近江」は近江を舞台とする説話の話数。舞台が 1 ヶ所でも複数でも、近江を舞台としている部分があれば、1 話と している。同様に「京・周辺」は平安京とその周辺を舞台とする説話の話数を示す。 広がっている点とも共通すると言え、3 章 1 項 での分析とも矛盾しないと考えられる。 6.まとめと今後の課題 以上、近江国の説話の舞台について、平安京 とその周辺との比較も含めて検討してきたが、 以下の点が理解できた。 ① 近江国の舞台は、圧倒的な登場回数を誇る

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図 2 今様の舞台と日記に記述された場所(近江国) 安藤(2016)所収の図 5 の一部を抜粋 比叡山を中心に京に近接したところに多く分布 しており、貴族社会の中でよく知られた、あるい は知ることのできる場所が舞台となっている。 ② 近江国の舞台は、平安京とその周辺の舞台 に比べて、世俗的な内容よりも仏教関連説話の 方が出現数が多い傾向にある。この点は、説話 集による舞台の登場回数の差異などからも理解 できる。 課題として、本稿では、物語の内容と各話を 結び付けた分析がごく一部にとどまった。本稿 の目的としては大まかな傾向を整理することで あったわけだが、全体的な検討としてはまだ十 分ではないと考える。 また、本来なら、平安京とその周辺の説話で 行ったように、物語の分類に応じた分布を考え る必要があると思われるが、「(登場人物にとっ て)期待すべき内容」「好ましくない内容」とい う分類を行うことがやや難しい。それは、例え ば、比叡山で展開される内容が法会に関するも のや出家に関するものなども多く、分類しにく いことなどが影響している。 また、比叡山から他へ移動して話が展開す るものもあり、修行のために他の場所へ行った り、別の寺の住職などになっていったりする話 もみられる。これらの扱い方についても検討す る必要がある。 尚、この「移動」という側面については、文 学研究の立場からも、例えば、聖地と巡礼につ いて特集したもの10) や、古代や中世文学におけ る旅を特集したもの11) が提示されている。例 えば長崎は鴨長明の伊勢への旅をめぐって「京 の都での一種の不遇感が、旅によって得られる 京との空間・時間(文化的なもの、と言っても いい)の距離感を感得させ、そのことが『彼を 支えるもの』となっていた」とし、「長明の旅 とは、京の都との距離感を計量することにあっ て、そのことが自己確認の営為であった、とい うことになろうか」12) としている。 そういった移動の観点から理解できること も多くあるため、これも今後の課題としたい。 <注> 1 ) 安藤哲郎「説話文学における舞台と内容の関連 性 −平安時代の都とその周辺を対象に−」人文 地理 60-1、41 ∼ 54 頁、2008。 2 ) 池上洵一「中世の説話と説話集」(本田義憲ほか 編『説話の講座 第 5 巻 説話集の世界Ⅱ―中 世―』勉誠社、1993)、11 頁。 3 ) 安藤哲郎「『梁塵秘抄』所収の今様における舞台 の分布の検討 ―日記との比較を通じて―」滋賀 大学教育学部紀要 65、2016、247 ∼ 258 頁。 4 ) 小島孝之「閑居友 解説」(小泉弘ほか校注『宝 物集 閑居友 比良山古人霊託(新 日本古典文 学大系 40)』岩波書店、1993)、542 頁。 5 ) 前掲 2)542 頁。 6 ) 三木紀人「宇治拾遺物語の内と外―古本説話集 にも及ぶ―」(三木紀人ほか校注『宇治拾遺物語  古本説話集(新 日本古典文学大系 42)』岩波書 店、2012(第 10 刷、初刷は 1990))、559 ∼ 560 頁。 7 ) 前掲 4)559 ∼ 560 頁。 8 ) 本稿では大まかに取り上げたが、渡邊守順「『今 昔物語集』の天台」(『説話文学の比叡』和泉書 院、1996、159 ∼ 172 頁)では、比叡山の説話を 巻ごとに詳細に分析している。また、渡邊守順 「今昔物語における叡山仏教」印度學佛教學研究 15-1、1966、262 ∼ 265 頁では、比叡山説話の登 場人物を分類したほか、説話の舞台が全国に及 んでいる点が指摘されている。 9 ) 馬場光子「『梁塵秘抄』に見る巡礼」(『国文学解 釈と鑑賞』70-5)、22 頁。 三井寺 三井寺 日吉 日吉 比叡山比叡山 岩間寺 岩間寺 石山寺 石山寺 三井寺 日吉 比叡山 岩間寺 石山寺

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10) 「特集 聖地と巡礼」(『国文学解釈と鑑賞』70-5)、至文堂、2005、5 ∼ 195 頁。 11) 「特集 人はなぜ旅に出るのか 古代・中世文学 に見る」(『国文学解釈と鑑賞』71-3)、至文堂、 2006、5 ∼ 173 頁。 12) 長崎健「鴨長明の伊勢紀行―『伊勢記』をめぐっ て」(『国文学解釈と鑑賞』71-3)、2006、102 ∼ 109 頁。 <参考文献> 安藤哲郎「説話文学における舞台と内容の関連性 ―平 安時代の都とその周辺を対象に―」人文地理 60-1、 2008、41 ∼ 54 頁 安藤哲郎「『梁塵秘抄』所収の今様における舞台の分 布の検討―日記との比較を通じて―」滋賀大学 教育学部紀要 65、2016、247 ∼ 258 頁 池上洵一「中世の説話と説話集」(本田義憲ほか編『説 話の講座 第 5 巻 説話集の世界Ⅱ―中世―』勉 誠社、1993) 木村晟編輯『打聞集 本文と漢字索引』大空社、1998 小泉弘ほか校注『宝物集 閑居友 比良山古人霊託』 岩波書店(新 日本古典文学大系)、1993 川端善明・荒木浩校注『古事談・続古事談』岩波書店 (新日本古典文学大系)、2005 中島悦次『宇治拾遺物語・打聞集全 解』有精堂出 版、1970 馬淵和夫・国東文麿・稲垣泰一校注 · 訳『今昔物語 集(①∼④)』小学館(新編日本古典文学全集)、 1999 ∼ 2015(初刷は 1999 ∼ 2002) 三木紀人校注『方丈記 発心集』新潮社(新潮日本古 典集成)、1976 三木紀人・浅見和彦・中村義雄・小内一明校注『宇治 拾遺物語・古本説話集』岩波書店(新日本古典 文学大系)、1990 「特集 聖地と巡礼」(『国文学解釈と鑑賞』70-5)、至 文堂、2005 「特集 人はなぜ旅に出るのか 古代・中世文学に見 る」(『国文学解釈と鑑賞』71-3)、至文堂、2006 渡邊守順「今昔物語における叡山仏教」印度學佛教學 研究 15-1、1966、262 ∼ 265 頁 渡邊守順『説話文学の叡山仏教』和泉書院、1996

図 2 今様の舞台と日記に記述された場所(近江国) 安藤(2016)所収の図 5 の一部を抜粋 比叡山を中心に京に近接したところに多く分布 しており、貴族社会の中でよく知られた、あるい は知ることのできる場所が舞台となっている。 ② 近江国の舞台は、平安京とその周辺の舞台 に比べて、世俗的な内容よりも仏教関連説話の 方が出現数が多い傾向にある。この点は、説話 集による舞台の登場回数の差異などからも理解 できる。 課題として、本稿では、物語の内容と各話を 結び付けた分析がごく一部にとどまった。本稿 の目的とし

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