砕石骨材を用いて振動締固めた硬化コンクリート中
の気泡相の特性に関する研究
著者名(日)
坂本 信義
雑誌名
工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告
号
31
ページ
45-50
発行年
2009
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00002036/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止砕石骨材を用いて振動締固めた硬化コンクリート中の気泡相の特性に関する研究
一Study on Characteristic of Air Bubble Phase in Hardened Concrete Vibration Consolidated with Crushed Coarse Aggregate一 坂本信義* 1.はじめに 一般的な十木構造物のフレッシュコンクリートの施工 に関しては,振動機による締固めが不可欠であることは よく理解されている.更に,内部振動機の特性とフレッ シュコンクリートの性質に関する性状の影響についても ほぼ解明されている. しかし,フレソシュコンクリートを締固める場合に使 用する骨材などの種類が変わった場合や振動締固めによ って生じるフレッシュコンクリートの液状化作用と硬化 コンクリートの品質や気泡相の特性値などとの関係につ いては余り報告さていないのが今日的であると考える. フレッシュコンクリートを内部振動機で締固めると液 状化と共にコンクリート中の空気泡の分布組織に変化が 生じることも知られている.しかし,硬化コンクリート 中の気泡相を平面体の同一直径を有する球として解析し ているのが現状である. これらの事実的な状況を踏まえて,新たな視野から解 析提案1)した粉状物質と結合から成る複合物質について の確率論に基づく解析算出方法を用いて,硬化コンクリ ート面の切断面を処理し,その面上を光学的あるいは画 像処理を行って,処理した面上の気泡相数を算出(コスモ ス32)して,その結果のデータを研究室で開発したプロ グラムシステム気泡V(気泡相の諸特性1直に関する解析) によって,コンピュータを用いて解析を行った. 解析内容として,硬化コンクリートの床版から採取し たコア強度と気泡度数,修正気泡間隔係数/気泡間隔係 数との関係について報告するものである.(今回は,気泡 間セメントペースト平均厚さおよび気泡相の粒径組織分 布については省略した), 2.気泡相解析の概念と振動締固めた液状化の考え 2.1 気泡相諸特性測定方法の基礎概念 従来,硬化コンクリート中の空気量の測定を対象とし た技術がある.その中で一般的な方法として基準化され ているASTM C 457(American Society forTesting Materials)の リニヤトラバース法/修正ポイントカ ウント法「顕微鏡による硬化コンクリートの気泡システ ムと空気量・比表面および間隔係数の測定方法」がある が,この方法は,コンクリートの切断面上に走査線を引 いて,これが気泡断面と交差する部分,弦の長さの総延 長と気泡の総数を測定して,硬化コンクリート中に含ま れている気泡が全て同一の直径をもつ球であると仮定し て空気量,気泡間隔係数,比表面その他について求める ものである. しかしながら,この様にして得られた(ASTM C 457) 円形断面の直径分布が実際の気泡分布を表していないこ とは,コンクリート中に含まれている気泡が全て同一の 直径をもつ球であったとしても,切断面に出現する円断 面の直径は,決して一様にならないことは明らかである. 前記した状況を考慮して,岩崎1)氏は,多数の球を平 面で切断した時に生じる円の半径の分布が,もとの球の 半径の分布と確率論的に関係づけられていることに着眼 して,確立変数を離散変数に変換することによって,コ ンクリートの切断面に現れた気泡円の半径の度数分布か ら,気泡半径の度数分布と単位体積当たりの気泡度数を 求める具体的な解析方法を提案した.前述した通り,こ れらの新しい解析手法を用いて,気泡度数,気泡間隔係 数,修止気泡間隔係数および強度「砕石骨材を用いて振 動締固めた硬化コンクリート中の気泡相の特性に関する 研究」に関して,実験を行いその結果について検討した ものである. 2.2 振動締固めによる液状化と振動伝播の関係 内部振動機で締固めた場合は,振動台や振動ローラの 時と異なり,振動力とコンクリートの沈下方向とが一致 しないため,振動の主作用はコンクリートを液状化する ことにあって,振動締固めには液状化したコンクリート の白重による流動と沈下の結果としてとらえる必要があ ると指摘している.2) また,振動によるコンクリートの締固まりは振動によ って液状化したセメントベーストの液状化と白重による 作用であると説明している. 振動締固めの理論的基礎である,①振動機の性能に関 する理論,②振動機からコンクリート中への振動伝播に 関する理論,③振動を受けるフレッシュコンクリートの 挙動に関する理論に大別される.3} ②に関する研究の中で,フレッシュコンクリート中に 伝播する波動の周波数は,振動機の振動数に等しいこと が確認されている.また,振動締固めを行う事によって, 硬化コンクリートの均等質な品質や耐久性の向上に寄与 叶1学部環境建設学科砕石骨材を用いて振動締固めた硬化コンクリート中の気泡相の特性に関する研究 する事が重要であることは周知の通りである.既に,フ レッシュコンクリートの液状化作用に振動機の特性値と ともにコンクリートの性質が関係することは報告されて いるが,振動締固めに重要な影響をおよぼす波速は,コ ンクリート中の空気量に関係があって,空気量が1.2% ∼L5%の通常コンクリートでは,波速は平均値として 49.7m/sであった.一方,空気量4%∼6%のAEコン クリートの波速は平均値として26.3m/sが得られたが, これは,通常コンクリートと比較してかなり小さい結果 である.3) これ迄の実験結果から内部振動機の振動数が,200Hz
で,スランプ8土1cm,空気量4∼6%のAEコンクリ
ートを20秒間締固めた時のフレッシュコンクリート表 面の液状化作用は,空気量1.2%∼1.5%の通常コンクリ ートの液状化領域の1.4倍以上に拡大することが実証さ れている.これらの結果から,振動伝播による波動の波 速がフレッシュコンクリートの空気量によって小さくな り,液状化作用がAEコンクリートの場合に大きくなっ て締固めた領域の範囲が広くなることが解る. 3.実験概要 実験に使用したレディミクストコンクリート(フレソ シュコンクリート)は,実験室で試験練りによって決定 したコンクリートを使用した.通常,コンクリートの性 質を決める場合には,コンシステンシーによるスランプ 値によって判断されるが,コンクリートの性質が変わっ た場合でも通常コンクリートおよびAEコンクリートの スランプ値8土1cmとセメント量を一定として実験を 行った. 実験結果の報告は,①気泡間隔係数(mm)の解析 には,ASTM C 457(リニアトラバース法)によって 求めた式(1)を用いた.引1概+1−1](mm)
(1) T:気泡間隔係数(mm) α 気泡の体積比表面積(mm2/mm3) P:コンクリート中に占めるセメントペーストの体積 比(空気量は含まない)(mm3/mm3) A:コンクリート中に占める空気泡の体積比 (mm3/mm3) ②修止気泡間隔係数(mm)の解析には,新提案v式(2) によって結果を算出した.2
一;(mm)
(2) Ll止修気泡間隔係数(mm) Po:コンクリート単位体積中のセメントペーストの体 積(mm3/mm3) N。:コンクリート単位体積中の気泡度数 (個/mm3) V,:平均半径をもつ気泡体積(Mm3) r:気泡の平均半径(mm) 表一1 実験に使用したコンクリートの配合 水セメ 塔g比 v’C《%) 細骨゙皐
’●《%》 単位水量 v 《k●, セメント@量
b⊂ko’〔ヨ 細骨材8lk■’m論, 相骨材潤sk●’mり 58 44PL
173 797 哨050 51 43AE4
i%) 162 298 780 1070 48 42 A巨6 i%) 143 750 jo72 粗骨材の最大寸法:20(mm),セメントの密度:3.16 (g/cm 3),細骨材の密度:2.54(g/cm 3),粗骨材 の密度:2.63(g/cm 3)を使用した. 気泡相の解析に使用した測定範囲0.00mm∼3.00mm を範囲とし,各粒径の範囲0.00mm∼O.03mm,0.04mm ∼O.18mm,0.19mm∼0.57mm,0.58mm∼1.17mm, 1.18mm∼3.00mmごとの気泡度数および分布組織を求 めた.(本論では,前記の通り気泡相の分布組織に関する 解析については省略した) 硬化コンクリートのコア供試体の採取位置は,振動機の中心から,20cm間隔で,20,40,60,80,
100および120cmとして行った.
図一1 振動機の位置とコア供試体の採取位置 フレッシュコンクリートの打設は,写真一1に示した 東洋大学工業技術研究所報告様に,組み立てられた鋼製型枠(図.1)に1mnのフ レッシュコンクリートを打ち込み,φ50mmの内部振
動機を用いて,振動数:200Hzで20秒間振動締固
めた.2B後,図 1に示した通り,硬化コンクリート床版ヒの位置から,φ10×25cmおよびφ15×2
5cmのコア供験体を採取した. 採取した供験体を圧縮強度用φ10×20cm,気泡相 解析用として,φ15×20cmにLJJ」断研磨した. 更に,気泡相解析用供験体はφ15×5cm間隔に切断し, 表面研磨およびベルトグラインダーによって表[酬i:上げ を行った.(写真一1) 写真一1 コンクリートの打設と試験片の作製工程 写真一2 気泡相の測定試験片σ)州像処理と解析過程 気泡相の解析手法については,φ15×5cmの試験試験体の表面処理を行って,10×10cmの表面積を
デジタルカメラで撮影し,コンピュタに取り込み,写真 一2に示した様にコスモス32(写真 3)を用いて画像 処理を行った、 写真一3 コスモス32による両像処理の例 写真一4 気泡相諸特性ll白:の解析に使用した フログラムシステムの例:「気泡V一 4.気泡相の気泡度数と修正気泡間隔係数の性状 硬化コンクリート中の気泡相(空気量)の諸特性/直の 解析におよぼす影響は,硬化コンクリート表面の気泡相 の数を如何に[E確に測定抽出するかによって,その解析 の精度の結果が相違すると言っても過言ではないと考え られる.原田,地頭薗らは,粗骨材の最大寸法が20mmの場合,気泡相の測定領域を40×80mm:3200
mm L’ 烽ノおける50視野以上の分散測定であれば,1・ 分に平均的な値が得られるとしている.4) 実験においては,写真一2に表示したように気泡相の測定領域は,100×100mm:10000mm2の
範囲内での実験から得られた結果について説明する.ま た,図t−2は,表一1の配合表に示したフレッシュコン クリートの性質を用いて,振動締固めた各種コンクリー トおよび振動時間0秒,10秒および20秒,振動数100Hz,200Hzの条件で振動機の中心からの距離に
っいて振動締固めたコンクリートの評価を行った中から, 本論に使用した内容は,締固め時間10秒と振動数10 0Hzを除いた結果の気泡相の気泡度数と修正気泡間隔 係数との関係を示したのが図.2である, 200Hz・20sl ‘ PL 15% ‘ 雄度数 犠働機の中鋤 、4立6、 AE 4% 搬助条件 ■気「包度数50c叩 …200Hz 20 s AE 6% ︹ε⊇︶頗匪巨硬桜目浪 ⑭ 蜘 ⋮ ■気泡度数20crr 口気包度敷40CT ■気泡度蜘Ocm {[コ気泡度蝕100cm ロ気包度蝕120cm t 修正気泡間阿係数20cm 昔修正気泡間隔係敬40cm ヒ塑塑懸魎竺二塑泡間鰍・0・・融棚係me1・Oc・臓泡間蹴・20・m 図一2 気泡度数と修正気泡間係数との性状変化 空気泡の気泡度数は,コンクリートの性質と振動条件 に関係があって,振動締固めを実施しなかった無振動の 通常コンクリート(Plain Concrete)と振動締固めた通 常コンクリートの気泡度数はほぼ一定であった,この関砕石骨材を用いて振動締固めた硬化コンクリート中の気泡相の特性に関する研究 係を無振動のAEコンクリートと比べるとAEコンクリ ートの気泡度数は,空気量6%のAEコンクリートにば らつきはあるものの4%のAEコンクリートには変化が 少なかった. この様な場合でも気泡度数は,空気量4%のAEコン クリートでは,通常コンクリートの約22倍,空気量6% のAEコンクリートは2.5倍の平均値を示した.次に, 振動締固めた気泡度数の関係は,締固め無かった無振動 の場合と類似していて,空気量4%のAEコンクリート では,通常コンクリートの約2.1倍,空気量6%のAE コンクリートは,約2.3倍の平均値を示した. しかし,振動締固めると振動機の中心からの距離に影 響があって,空気量4%のAEコンクリートでは中心か ら80cmの位置付近まで減少している(図一2).それ に比較して,空気量6%のAEコンクリートでは中心か ら60cm付近まで減少しているが,この関係は,液状 化作用の領域が拡大されても振動締固めによってコンク リート中の気泡が抜けきらないためであると考えられる が,その十1な原因は,AE剤の混入量による空気の連行 性が多いことによるものであると考える.また,この現 象は,一般に言われている振動機付近で混入空気量が減 少するとの報告に一致している. 一方,修正気泡間隔係数は,前述した新提案1)による 解析方法によって算出しものである.修正気泡間隔係数 は,コンクリートの性質にも影響があって,AEコンク リートに比べて,通常コンクリートの場合に気泡度数に 反比例して,結果の平均f直は,約138倍から1.45の値 に大きくなっている.その値は,振動締固めた状態でも, 振動締固めない無振動の場合にも通常コンクリートでは,
平均514μmの値を示した.空気量4%のAEコンク
リートでは,平均372μm値を示し,空気量6%の修 正気泡間隔係数は,平均359μm値を示す実験結果が 得られた. また,振動締固め時間および振動機の中心からの距離 に対しても変化が少ない値を示した. この様に,コンクリートの混入空気量に関係があって, 気泡相の気泡度数が少ないほど修正気泡間隔係数は大き くなる傾向にある.この場合でも,通常コンクリートの 場合に,気泡度数と修正気泡間隔係数の関係は,AEコ ンクリートに比較して一段と差異が大きくなる結果が得 られた. 修正気泡間隔係数(気泡間隔係数)は,コンクリート 中の空気量が多く,気泡度数が多いほど小さくなる結果 が報告されている.5) 5.修正気泡間隔係数と気泡間隔係数との関係 前述した気泡間隔係数の解析方法には,硬化コンクリ ートの表面を研磨処理した供試体を100×土10倍の 顕微鏡に取り付け打設時の上面に平行な一連の走査線に 沿ってスキャンして,走査線が横切る気泡の数および 個々の気泡の走査線に横切られる弦長を記録して求める 方法の式一1を用いて気泡間隔係数を求め,更に,新し く提案された式一2を用いて修正気泡間隔係数を求めた. また,実験に使用した気泡度数他の解析システムを写真 一2に示した. その実験結果の関連性を示したのが図一3である. りば 虐烈域H拳]
︵∈篭︶韻ぴ庄芭娯脈 0 0 0 0 刀﹁ 3 図一3 修正気泡間隔係数と気泡間隔係数との関係 一般に凍結融解作用を受ける硬化コンクリートの耐久 性は,空気泡の量だけでなく,その大きさ,気泡相の分 布組織気泡間セメントペースト厚さおよび気泡間隔係 数にも密接な関係があることは知られているが,一般に200μm∼250μmの範囲が耐凍害性に適切である
とされている. 通常解析されている気泡間隔係数および新提案された 修正気泡間隔係数ともにコンクリートの性質と解析方法 の相違に関係があって,通常コンクリートの気泡間隔係 数は,平均427μmであるのに対して前記した修正気 泡間隔係数との関係は,約1.2倍の差が生じることが確 認された.それに対して,AEコンクリートにも影響が あって,AEコンクリートの空気量が4%から6%に変 化しても修正気泡間隔係数は,気泡間隔係数の1.26倍か ら1.30倍の範囲にあることが解った. 通常コンクリートの気泡間隔係数は,AEコンクリー トの1.41倍から1.51倍になり,修正気泡間隔係数では, 1.35倍から1.40倍になって,通常コンクリートとAE コンクリートの関係は,気泡間隔係数の方が修正気泡間 隔係数よりやや差が生じる結果となった.更に,実験結 果の範囲から,通常コンクリートでは,約87μm,AEコンクリートでは,約78μm∼83μmの範囲で気
泡間隔係数より修正気泡間隔係数の値が大きくなる結果一48一
東洋大学工業技術研究所報告となった. 6.締固め条件が圧縮強度と気泡度数に及ぼす影響 通常的に硬化コンクリートの品質の評価判定には圧縮 強度が重要な評価方法の一つとして使用されている.そ の圧縮強度が振動締固めた硬化コンクリートの締固め条 件が変わった場合にどの様な影響を見出すのか,気泡度 数,振動条件および圧縮強度の関係について示したのが 図一4である. ・12・0\ ■ 鰻動条件 ■鴎強度20cm圏圧縮強度4tCm■圧磁度Sbem,圧舷度SDcm□圧鐘強度|〔Ocm囲圧縮強度120cm ・★気泡度敵20cm 気泡度数40cm +気泡度数6bem +気泡度数80cm 気泡度数IDOcm 気泡度数120cm 図一4 圧縮強度に及ぼす気泡度数の影響 その内容は,通常コンクリートおよび空気量4%∼
6%のAEコンクリートを振動数200Hzで,20秒
間締固めた場合と無振動の硬化コンクリートの床版から 採取した材齢28日のコア供試体による平均圧縮強度と 気泡度数の関連性を示した. 気泡相の気泡度数と圧縮強度の影響は,通常コンク リートでは,振動締固めた時(7.3個/cm 2)と締固めない 無振動との場合(7.2個/cm 2)に差がなく,平均圧縮強度 もほぼ等しい値を示した.しかし,気泡相の気泡度数は, 振動数200 Hz,振動時間20秒で締固めた空気量4% のAEコンクリートでは,コンクリートの性質や振動締 固めによる影響があって,圧縮強度が小さい位置で少な くなっていて,空気量4%のAEコンクリートは,振動 締固めない場合に圧縮強度とともに気泡相の気泡度数の 値も多くなり,振動締固めが進行するに従って小さくな る傾向を示している.この性状過程は,強度の低い空気 量6%のAEコンクリートの場合にも同様の結果を図一 4に示した,空気量4%のAEコンクリートで振動数200Hz,
振動時間20秒間締固めたAEコンクリートと無振動の AEコンクリートにっいての強度を比較すると振動締固 めた硬化コンクリートの床版の平均コア圧縮強度は,無 振動のAEコンクリートの約88%に値した. しかし,川砂利を用いた過去の実験では,内部振動機 による締固めの効果が有効に働き強度の増加においても 期待されている.6)また,再生骨材コンクリートを使用 して振動締固めた実験結果から振動数200Hzで締固 めたコンクリートの強度が著しく低下することが報告さ れている.7) 本実験では,微視的な観察は実施していないが,これ らの結果は,砕石骨材や再生骨材の様に骨材表面(界面) が粗い粗骨材の場合には,セメントペーストとの界面が 不規則になり,振動による液状化作用によるブリーディ ングよって,骨材界面とセメントペースト間に水膜(薄 膜)の生成物によって強度の低下が発生するものと考え られる. 過去の微視的な実験研究は,粗骨材界面とセメントペ ーストなどの被着物の界面は,直接結合しているのでは なく結品性の水和物の薄膜を介して結合している.es )と 論じている.更に,セメントトペーストと粗骨材その他 の被着物との接着強度は,これらの界面に生成する付着 膜と被着物との結合力によって大きく支配されると報告 されている,9) 空気量6%のAEコンクリートでは,振動締固めたコ ンクリートと締固めなかったコンクリートにやや差が生 じているが,無振動の場合には,空気量の影響が作用し て強度の低下が生じ,振動締固めた場合には,振動締固 めによる液状化作用と連行空気量の双方の影響から圧縮 強度の低下(約18%)が生じたものと考える.気泡度 数は,強度の低下とともに減少する傾向にあった. 7.まとめ 新たな解析手法を用いて得られた実験結果は以下の通 りである. 1.気泡相の気泡度数と修正気泡間隔係数との関係は通 常コンクリートの状態では,締固めても締固めない場 合でも気泡度数は,7.2(個/cm 2)∼7.3(個/cm 2)と 変化が少ない.修正気泡間隔係数の値は,最も大きく507μm∼520μmであった.
2.気泡度数と修正気泡間隔係数の関係は,コンクリー トの性質に関係があって,通常コンクリートの気泡度 数は,締固めない空気量4%のAEコンクリートの気泡 度数の約45%で,空気量に対する影響が大きいこと が解る. 3.気泡間隔係数および修正気泡間隔係数ともに通常コ ンクリートの場合に最大になっていて,通常コンクリ ートに対して,空気量4%∼6%のAEコンクリートの 気泡間隔係数は,平均65%∼69%で,修正気泡間 隔係数は,平均72%∼72%に減少して,空気量に よる影響が大きく関係することが理解される.この関 係は,空気連行によって気泡度数が多くなり,気泡間 隔係数が減少する一般的な傾向であると考える. 4.通常コンクリートの気泡間隔係数と修止気泡間隔砕石骨材を用いて振動締固めた硬化コンクリート中の気泡相の特性に関する研究 係数との関係は,平均修止気泡間隔係数の値が,5 14μmで,平均修正気泡間隔係数は,平均気泡間隔 係数の約1.2倍であった. 空気量4%∼6%のAEコンクリートの平均修止気