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新エネルギーを利用した分散型電源の導入形態と監視制御技術

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Academic year: 2021

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1.はじめに 近年,電力自由化の進展や分散型電源の普及など,電力 システムを取り巻く環境は急速に変化している。特にRPS法 (電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置 法)の施行などにより,新エネルギーや自然エネルギーを利用 した分散型電源の導入が加速している(図1参照)。 新エネルギーの導入実績と2010年の導入目標を表1に示 す1) 。官民におけるコスト低減努力や導入促進のために最大 限の取り組みが行われることを前提に,実現が可能と見込ま れる目標量である。 新エネルギーの中でも今後進展していくと考えられるのは, 太陽光発電,風力発電といった自然エネルギーである。太陽 光発電は,住宅用を中心に発展し,近年では環境意識の高 まりとともに,自治体を中心とした大規模システムが導入され ている。太陽光発電の導入実績と見込みを図2に示す2) 風力発電は,電力会社,地方公共団体,国などが試験研 究用として設置したものが主であったが,1992年の電力会社 による余剰電力購入制度,および1993年の系統連系技術要 件ガイドラインの整備により,発電電力を電力会社に売電する ことが可能となったので,売買事業を目的として設置されたもの が増加している。風力発電の導入実績と見込みを図3に示す1) ここでは,新エネルギーを利用した分散型電源を系統に連 系する場合の課題と導入形態,および監視制御技術につい て述べる。 2.新エネルギー導入に伴う課題 新エネルギーの大量導入を迎えると,系統の問題は顕在 化し,適切な対策が必要となる。 太陽光や風力といった自然エネルギーは,自然環境や季 節,昼夜間などの影響を受けて出力変動を生じる。この出力

新エネルギーを利用した

分散型電源の導入形態と監視制御技術

Electrical Power Systems for Coexistence Distribution as New Energy and Control Systems

三村 英之

Hideyuki Mimura

大野 康則

Yasunori Ohno

渡辺 雅浩

Masahiro Watanabe

内山 倫行

Noriyuki Uchiyama

マイクログリッド監視制御システム 配電系統監視制御システム 住宅太陽光発電(集中設置) マイクログリッド監視制御システム 分散型電源 需要家 自営線 蓄電装置 需要家 自営線 蓄電装置 分散型電源 系統連系型マイクログリッド 独立型マイクログリッド 配電線 子局 子局 子局 子局 配電変電所 配電変電所 自然変動電源 (太陽光発電)の 集中設置 自然変動電源 (風力発電)の 集中設置 連系開閉器 センサ SVC SVR

注:略語説明 SVR(Step Voltage Regulator:線路用電圧調整器),SVC(Static Var Compensator:静止型無効電力補償装置)

図1 電力系統と分散型電源の電力供給システムの構成例 新エネルギーを活用した分散型電源の導入の形態としては,大出力自然変動電源系統と集中連系,系統連系型マイクログリッドおよび独立型マイクログリッドが想定 される。系統に連系する場合には,系統の電力品質を維持するために配電系統機器やマイクログリッドの監視制御システムが必要になる。 20 Vol.89 No.03 236-237 2007.03 地球温暖化対策に貢献する日立の環境ソリューション

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21 変動の大きい分散型電源を中心とした発電システムを大量に 導入する場合,系統の安定性への影響が懸念されている。 これら分散型電源を系統に連系する場合の検討すべき課題 を以下に示す。 2.1短絡容量増大 電源系統事故時に分散型電源が連系されていることに よって系統の短絡容量が増大し,規制値を超える恐れがあ る(図4参照)。 対策としては,分散型電源の設置者において短絡電流を 制限する装置(限流リアクトルなど)を設置する。これによって も対策できない場合には異なる配電用変電所バンク系統へ の連系などの対策を講じる必要がある。 2.2分散型電源の出力変動や逆潮流による電圧上昇 通常,電力の流れは変電所から需要地に向かって1方向 に流れる。需要家が変電所から離れるほど電圧は下がり,ま た重負荷であるほど電圧は下がる。分散型電源が系統に連 系していると,分散型電源に近い需要地では電圧が上がり, 電力の流れが複雑となる。需要家の負荷が軽負荷になった 際に,系統の電圧が上昇し,分散型電源に近い需要地では 適正電圧幅(101±6 V)を逸脱する恐れがある(図5参照)。 2.3分散型電源の出力変動や一斉解列による周波数変動 電気は貯蔵できないことから,供給量と消費量が常に同じ となるが,分散型電源の出力変動や一斉解列があると需要 と供給のバランスが崩れ,周波数が変動する。 周波数調整には系統側の調整能力を拡大するか,あるい は分散型電源側において,出力変動を抑制するために電力 貯蔵用電池などを設置する必要がある。 エネルギー供給の視点から,地球温暖化防止に貢献できる新エネルギーの導入は今後増えていくと見込まれる。 特に,エネルギー政策基本法(2002年6月施行)により,エネルギーセキュリティの確保や地球温暖化対策の観点から, 新エネルギーの導入がますます進められていく。 新エネルギーを利用したこれまでの分散型電源は,その絶対発電量が小さかったことから 配電系統に対する影響がほとんどなかった。しかし,設置数が増えて発電量が増加するのに伴い, 系統に連系する際の課題が想定されるため,新エネルギーを利用した分散型電源の導入形態とその監視技術が求められている。 Feature Article 配電用変電所 変電所からの 短絡電流 分散型電源からの 短絡電流 合計短絡電流 需要案内 構内短絡 G 注:略語説明 G(Generator) 図4 短絡容量の増大 変電所からの短絡電流のほかに,分散型電源からの短絡電流の供給があり, 故障点における短絡容量が増大する。 (年度) (万 kW 300 350 250 200 150 100 50 0 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 300 67.7 46.3 31.3 14.1 8.0 5.5 4 図3 風力発電の導入実績と見込み 風力発電は単機容量が1 MWを超える大容量機が実用化され,大型化に伴 い,設置・機器の低コスト化により,近年急速に導入が進んでいる。2010年度 の導入目標は300万kWと設定されている。 (年度) (万 kW 600 500 400 300 200 100 0 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 482 142.2 6.0 9.1 13.3 20.9 33.045.3 63.7 86.0 113.2 図2 太陽光発電の導入実績と見込み 太陽光発電は2002年3月に決定された地球温暖化対策推進大綱において 2010年度の導入目標が482万kWと設定されている2) 。 表1 新エネルギーの導入実績と2010年度の導入目標 地球環境問題から,新エネルギー発電システムの導入が進んでいる。その中 でも環境に配慮した自然エネルギーを利用する太陽光発電と風力発電が注目さ れている。 2002年度実績 (万kW) 2010年度目標 (万kW) 太陽光発電 63.7 482 風力発電 46.3 300 廃棄物・バイオマス発電 161.8 450 天然ガスコージェネレーション 215.0 498 燃料電池 1.2 220

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22 Vol.89 No.03 238-239 2007.03 地球温暖化対策に貢献する日立の環境ソリューション 2.4配電系統停止時の分散型電源単独運転 配電系統側の電源が喪失したときに,分散型電源の出力 と配電線内の負荷がほぼ釣り合っている状態であると,分散 型電源が系統から切り離されていないまま運転を継続し,局 所的に分散型電源から他の一般需要家に電力を供給してい る状態となる。これにより,感電や機器損傷の恐れがあるので, 安全の確保が必要となる(図6参照)。 そのため,転送遮断装置や単独運転検出装置を設置す るなどの対策が必要となる。 2.5高 調 波 分散型電源は系統連系のためにインバータを使用する場 合が多く,高調波を発生する。分散型電源側で高調波の抑 制を図り電力品質を確保する必要がある。 3.新エネルギーを利用した分散型電源の導入形態と その監視制御技術 太陽光発電や風力発電のように,出力が変動する電源の 導入量が増えると,系統上の種々の問題が生じる。現状では 各発電設備ごとに対応しているが,今後さらに導入を促進さ せるには,系統的な課題を考慮したシステムの採用が必要と なる。分散型電源の導入形態に応じて考えられている幾つか のシステムについて以下に述べる。 3.1大出力自然変動電源系統と集中連系 比較的大きな自然変動電源が個別に系統連系する場合 と,住宅用太陽光発電などが集中設置されて系統連系する 場合がある。どちらも分散型電源の出力変動などにより,電圧 変動が発生する恐れがあるが,前者の場合は,分散型電源 側で系統への影響を軽減する対策を実施するのが有効であ り,後者では,小規模な分散型電源の集合で個々での対策 では課題が多いことから,系統側での対応が有効である。 大出力自然変動電源の場合,蓄電池やSVC(Static Var Compensator:静止形無効電力補償装置)などを設置して,出 力変動が系統に影響を与えないようにする。一例としては,風 力発電設備に電力貯蔵用バッテリを設置するものがある。 集中連系の場合,系統の電力品質保持のために,SVR (Step Voltage Regulator:線路用電圧調整器)やSVCを系統に 設置して協調制御する。さらにループバランスコントローラで潮 流の制御と無効電力制御を行い,系統の電圧を維持する方 法がある。 3.2系統連系型マイクログリッド 複数の小さな電源,電力貯蔵システム,電力負荷設備の 集合体で需給制御機能を持った小さなネットワークを「マイクロ グリッド」と言う。 風力や太陽光といった制御困難な自然エネルギーの電源 と制御可能な電源や二次電池システムとを組み合わせた電 源構成をすることで,連系している電力系統に影響を与えな いシステムを構成することが可能となる。 系統連系型マイクログリッドは,変動する需要や自然変動 電源出力に対し,需給制御システムで制御して系統連系点 での潮流を一定あるいは所定範囲に制御する。この技術を 適用したシステムは,独立行政法人新エネルギー・産業技術 総合開発機構(NEDO技術開発機構)の実証研究プロジェ クトなどで試行されている。 2005年日本国際博覧会(愛知万博)では,燃料電池,太 陽光発電といった新エネルギーを利用して,博覧会会場に電 力,熱を供給し,NaS電池を用いて充放電を行い,商用系統 からの受電電力の制御を行った。ここでは,新エネルギー電 配電線遮断器開放 連系用遮断器投入状態 発電機設置需要家 他の需要家 に電力供給 一般の多数の 需要家の負荷 需要家内 発電機 需要家内 負荷 単独運転 図6 分散型電源の単独運転 配電線遮断器が開放されることにより,本来は電力が供給されるべきでない一 般の需要家に電力を供給している。 大規模送電系統 バンクごとに送り だし電圧を調整 電圧 電圧 変電所からの距離 変電所からの距離 電力の流れ 電力の流れ 配電用変電所 配電用変電所 配電線 高圧線 低圧線 高圧線 低圧線 適正電圧幅 電気事業法施行規制 第44条 適正電圧幅 101±6 V 202±20 V 逸脱 軽負荷時 軽負荷時 重負荷時 重負荷時 分散型 電源 逆潮流 出典:平成16年電気学会B部門大会 「分散型電源有効活用のための電力系統技術調査専門委員会座談会資料」 図5 出力変動や逆潮流による電圧上昇 分散型電源の出力変動や逆潮流により,分散型電源に近い需要地では電 圧が上昇し,変電所の電圧制御に限界が生じる恐れがある。

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23 源を組み合わせたエネルギー供給システムの開発と実証を目 的とし,系統連系点での潮流を一定に保った(図7参照)3.3独立型マイクログリッド 独立型マイクログリッドは,系統から切り離されて独立した マイクログリッドを指す。 変動する需要,自然変動電源やコージェネレーションなどの 分散型電源出力に対し,マイクログリッド内で需給バランスを とり,電力品質を維持する。自立運転の場合においても電圧 や周波数などの変動が少ない安定的な電力供給を行うことが 求められる。 独立型マイクログリッドは,災害対策として,あるいは離島 や無電化地域での需要がある。構成例を図8に示す。 分散型電源や電力貯蔵装置,一般負荷をループでつなぎ, ループ内に複数のセンサを設け,通信ネットワークによって監 視制御システムに送る。監視制御システムではデータ監視す るとともにSVRなどに対し遠隔指令を出し電力品質を維持する。 4.おわりに ここでは,新エネルギーを利用した分散型電源を系統に連 系する場合の課題と,その導入形態,および監視制御技術 について述べた。 日立製作所は,NEDO技術開発機構による実証研究プロ ジェクトで,株式会社NTTファシリティーズの依頼を請け,マ イクログリッドの計測・制御関連のシステムを製造・納入してい る。このうち,「新エネルギー等地域集中実証研究」の愛知万 博・中部臨空都市のプロジェクトでは,マイクログリッドにおけ る電力品質計測システムを,「品質別電力供給システム実証 研究」(仙台)では,複数種の高品質電力を同時供給可能と する電力変換装置へ電力を安定供給し,かつ電力品質の多 地点同時計測・評価が可能な監視計測制御システムを,それ ぞれ製造・納入した。 また,「電力ネットワーク技術実証研究」では,財団法人電 力中央研究所の依頼を請け,配電系統の監視制御システム を製造・納入している。 今後も,分散型電源側と系統側の両方の視点から,マイク ログリッドの運用・制御技術の開発に取り組んでいく考えである。 執筆者紹介 三村 英之 1990年日立製作所入社,電力グループ 電機システム事 業部 電機ソリューション本部 電源システム部 所属 現在,分散型電源システムのソリューションの企画に従事 Feature Article 渡辺 雅浩 1991年日立製作所入社,日立研究所 電力情報制御ユ ニット 所属 現在,配電系統の解析制御技術の研究に従事 電気学会会員,IEEE会員 大野 康則 1979年日立製作所入社,電力グループ 電力・電機開発 研究所 送変電プロジェクト 所属 現在,分散型電源の運用制御技術の研究に従事 電気学会会員 内山 倫行 1990年日立製作所入社,電力グループ 電力・電機開発 研究所 送変電プロジェクト 所属 現在,分散型電源の運用制御技術の研究に従事 電気学会会員 1)資源エネルギー庁,http://www.enecho.meti.go.jp 2)独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構, http://www.nedo.go.jp 3)内山,外:配電系統と分散型電源の共存を目指した電力供給システム,日 立評論,88,2,217∼220(2006.2) 参考文献など 分散型電源 電源貯蔵システム 監視制御システム 一般負荷 センサ センサ センサ ループ コントローラ SVC SVR 分散型電源 通信ネットワーク 図8 独立型マイクログリッドの構成例 各センサからの情報を基に,監視制御システムにより,電力の需給バランスの 調整,設備の運転計画の作成および電力品質確保の指令を行う。 NEDOパビリオン 高温ガス化設備 メタン発酵設備 SOFC PAFC Nas電池 MCFC(屋内) エネルギー制御 システム(屋内) 太陽光発電 注:略語説明 NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構) MCFC(Molten Carbonate Fuel Cell),SOFC(Solid Oxide Fuel Cell) PAFC(Phosphoric Acid Fuel Cell)

図7 愛知万博のNEDO「新エネルギー等地域集中実証研究」設備 エネルギー需給制御システムに電力品質計測・評価機能を適用した。

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