要旨 「把」構文は中国語特有の構造のひとつである。数多くの研究の成果として「把」構文 の教授法は、その難易度に応じ何段階かに分けたほうが効果的であることが証明されてい る。現在本学が使用している教材、中国国内外の第二言語習得の中国語教育現場で広く使 用されている『新実用漢語課本』(1)(北京言語大学出版社)では「把」構文を 5 段階(5 回目はまとめ)に分け、導入している。複雑な文法項目を段階的に導入し、学習者は前の 段階で習った内容を復習しながら新しい内容を身につけていくことが人間の認知過程にも 一致しているので提唱すべき教授法だが、導入の順序は他の文法項目や語彙、そして学習 者が置かれている学習環境を考慮した上で決められなければならない。『新実用漢語課本』 では「把」構文を段階別に導入することで学習者の習得度が高まるが、その導入順序の決 め方をはじめ、「把」構文の構造式だけを習得できれば良いという構造シラバス中心の教 授法に疑問を感じている。現行のままでは「把」構文のもっとも理解しやすいパターンは なかなか導入できないうえに、学習者は「把」構文の構造式を覚えても、どのような場面 で「把」構文を使用するのかを理解することができない。本文はまず「把」構文の新しい 分類法を提案し、その分類法を応用し、初・中級中国語教育における各パターンの「把」 構文の導入順序を再考する。また、どのような場面で「把」構文を使うべきか、どのよう に使うか、そして「把」構文のベースにある主語の能動性を際立たせる特性に注目し、よ り効果的な教授法を探りたい。 【キーワード】 「把」構文 新分類 影響式 主語の能動性 導入順序 はじめに 中国語の「把」構文は中国語特有の構造のため、外国人学習者にとって最も習得しにく い文法項目の一つであるということは、中国語教育の世界ではすでに周知のことである。 そのため、「把」構文についての研究は数多くなされてきた。しかしながら、「把」構文の 用法は多岐にわたっているため、その全貌を解明しきれていないのも事実である。また、 外国人学習者にいかに効果的に教えられるかという難題も依然として残っている。「把」 構文は中国語学習者にとって習得するのが難しい一方、中国語の日常会話内においては使 用率が高く、初・中級中国語の勉強においても避けて通れない学習内容である。本文では、 「把」構文を初・中級中国語学習者にいかに効率的に指導できるかを考えてみたい。
についての一提案
—「把」構文の再分類及び導入順序を中心に —
羅 華
1 1立命館アジア太平洋大学(APU)嘱託講師 e-mail:[email protected]1. 「把」 構文の構造 中国語の基本の語順は、「SVO」であるが、前置詞「把」の使用によって「S把OV+α」 の構造になる。つまり、通常、動詞の後に来る目的語は「把」の使用によって動詞の前に 移動する。その場合、動詞の後に何らかの成分が必要であるため、構造式に「α」を用い て表す。たとえば: (1) 哥哥吃了我的冰淇淋。(SVO) 「お兄さんは、わたしのアイスクリームを食べた。」 (2) 哥哥把我的冰淇淋吃了。(S把OV+α) 「お兄さんは、わたしのアイスクリームを食べた。」 上記の例を見て分かるように、「把」の有無によって中国語では二つの文になるが、日 本語にすると二文とも同じ訳となる。英語に訳す場合も、二文とも“My brother ate my ice cream.” となる。したがって、構造だけ教えるなら学習者はどちらの構造も同じ意味を表 すものと理解し、習得しやすい「SVO」だけ使おうとすることになる。 2. 「把」 構文の再分類の試み 「把」構文の全貌をまとめる分類については今でも定論がない。胡韧奮(2015)は「把」 構文を「基本処置式」(基本处置式)、「移動式」(位移式)、「判断式」(判断式)と「引き 起こし式」(致使式)の四種類に分類し、さらに新HSK(2)に出題された「把」構文をこの 分類法でまとめた。その結果は表1のとおりである。 表 1 胡による 「把」 構文の分類 基本処置式 49.04% 移動式 40.98% 判断式 9.13% 引き起こし式 0.85% 表1が表しているように、新HSKに出題された「把」構文の大半は「基本処置式」の 文と「移動式」の文である。また、胡によれば、全体の9.13%しか占めていない「判断式」 の文は5級と6級の問題だけに出題され、全体の0.85%しか占めていない「引き起こし式」 の文は3級と5級にそれぞれ2文ずつしか出題されていない。 「把」構文の「基本処置式」と「移動式」は初・中級中国語の学習内容であり、「判断式」 と「引き起こし式」と比べ理解しやすい内容でもあるが、「処置式」という名付けは中国 語学習歴が短い学習者にとって受け付けにくい表現である。学習者が理解しやすいよう に、本文では胡による「基本処置式」を「移動式」のグループに統合し、「影響式」と名 付けたい(表2)。 本文で言う「影響式」とは、主語のある動作が目的語の人か物に何らかの影響を与える
「把」構文の一種類である。ここでの何らかの影響とは目的語の位置の移動、状態の変化 もしくは主語の努力による状態維持を指す。また、目的語の位置の移動は物理的移動及び 抽象的移動を含み、状態の変化は形状や色、大きさの変化以外に、状態の生成や消滅など を含む。なお、ここで言う「状態の維持」とは主語の働きかけによって目的語の予想され る変化が食い止められることを指し、このことから主語が目的語に影響を与えているとい うことが分かる。 表 2 「把」 構文の再分類 基本処置式 影響式 移動式 判断式 判断式 引き起こし式 引き起こし式 (本文の三分類) (胡の四分類) 中国の現代小説『お嬢ちゃん、おはよう』(3)(《小姐你早》)にある「把」構文を抽出し て表2に示されている本文の三分類を検証してみた。『お嬢ちゃん、おはよう』は約12万 字の作品で、その中に、「把」構文は140文あり、字数にすると約7000字である。図1が 示しているように、89%の文が「把」構文の影響式を使用していることが分かる。また、 影響式の内訳は図2のようになっている。表3が示しているように、本文が提案した分類 法で小説を用いて集計した結果は、胡の分類でHSK問題集を用いて集計した結果とほぼ 一致していることが分かる。 図 1 「把」 構文の分類 図 2 影響式文の内訳 表 3 胡の分類と本文の分類の比較 本文の三分類 胡の四分類 影響式 89% 基本処置式 49.04% 判断式 7% 移動式 40.98% 引き起こし式 4% 判断式 9.13% 引き起こし式 0.85%
次に『お嬢ちゃん、おはよう』の中の「把」構文を例にし、影響式文の詳細を説明する。 A. 移動式文 A-1 物理的位置移動式文 : (3) 她把手里的梳子一把掷向镜子。(くしは彼女の手から鏡のほうへ移動した) 「彼女は、手元にあるくしを思い切って鏡に投げつけた。」 (4) 李开玲把门打开了。(ドアの扉は閉めた時の位置から開いた時の位置に移動した) 「李開玲はドアを開けた。」 A-2 抽象的位置移動文 : (5) 戚润物还是想把自己的心里话说完。(心の中で思っていることが外に移動する) 「戚潤物はやはり心の中で思っていることをすべて打ち明けたいと思っていた。」 (6) 她把出差的计划一推再推。(出張計画の時間軸における移動) 「彼女は出張計画を何度も先伸ばした。」 B. 状態変化式文 状態変化式文はさらに主語の能動性を際立たせる文と責任の所在を追及する文に細分化 することができる。『お嬢ちゃん、おはよう』から収集できた状態変化式文である「把」 構文は41文あり、そのうち36文は主語の能動性を表す文であり、残りの 5文は責任の所 在を追及する文であった(図3)。 図 3 「把」 構文の影響式文における状態変化式文 B-1 主語の能動性を際立たせる文 (7) 我一定要把我们变成富翁,要把王自力变成穷光蛋。(状態の変化) 「わたしたちは必ず金持ちになり、王自力をすかんぴんにしてやる。」 (8) 她们十分严密和科学地把她们的构想绘成了蓝图。(抽象的な変化) 「彼女たちはとても綿密、かつ科学的に彼女たちの構想をビジョンに描いた。」 (9) 她一口气把水果吃完了。(消滅) 「彼女は果物を一気に食べきった。」 (10)你是很有社会经验,但是把一个假想变成现实,你就不如我有经验了。(生成) 「君には豊富な社会的経験があるが、仮想を現実化させることに関しては、君よりわ
たしのほうが経験豊富だ。」 (7)から(10)までの文は、いずれも主語の能動性と意欲性を生き生きと描写しているの で、読者はそういう文を読むと、主人公の「やってやろう」という積極的な表情、もしく は態度を自然に想像できる。 B-2. 責任の所在を追及する文 (11) 同学老张的这顿晚餐,把戚润物和李开玲忙碌得不可开交。 「同級生の張さんからの誘いによる今回の夕食会は、戚潤物と李開玲をてんてこまい の忙しさに追い込んだ。」 (12) 她垮着一张脸,眼睛冰凉。把鬼子先生纳闷得一塌糊涂。 「彼女は不機嫌な顔をして目つきもいたって冷たい。それは鬼子さんを苛立たせてし かたがない。」 (11)と(12)は状態の変化を表す文ではあるが、主語の能動性を際立たせる文でない。(11) の主語は「夕飯」であり、そもそも能動性がない。この場合、戚潤物と李開玲は忙しくて しょうがない状態にさせたのは、同級生張からの誘いだというニュアンスが読者に伝わ る。(12) の前の文の主語は「彼女」だが、「把」構文の主語は明言されなかったものの、 コンテクストで「彼女のそのような表情」であることが分かる。また、責任の所在を追求 する文には、モノが主語になっている文が多いが、人が主語になっている文もある。人が 主語になる場合、主語の能動性を際立たせているか、それとも良くない結果にさせてし まった責任の所在を表すかがコンテクストで判断される。『お嬢ちゃん、おはよう』の中 はその用例がないので、『わたしたちの単純で小さな幸せへ』(《致我们单纯的小美好》)(4) からの例を挙げる。 (13) 他的手抖成那样,我多么怕他把我戳瞎啊。 「彼の手があんなに震えているので、わたしは彼がわたしの目を潰してしまうのでは ないかととても恐かった。」 この文は「彼」が「わたし」の彼氏で、「わたし」は椅子から落ちてひどく頭をぶつけ たので、医者である「彼」が心配すぎて「わたし」のまぶたを開けて診察するときの様子 を描写している。この場合、目を潰してしまったことがあったとしても、彼が能動的にこ のことをやったわけがないことが分かる。よって万が一、目が潰されたらこの悪い結果を 招いた責任者は下線部の「把」構文の主語である彼だと表せる。 C. 主語の努力による状態維持式文 (14) 我一直把她留在公司。 「わたしはずっと彼女を会社にとどまらせている。」 (15) 他将如何把今天的大好形式维持并且发展下去。
「彼は今日の良い局面を如何に維持させ、かつ発展させるのだろうか?」 主語の働きかけによる状態維持式文は数が多くない。『お嬢ちゃん、おはよう』から収 集した影響式文のわずか3%を占めている(図1参照)。状態維持式文は主語の能動性を強 調している。つまり、主語の働きかけがなければ維持したい状況が維持できなくなる。(14) は「彼女」が転職しないよう、「私」が努力していること(たとえば給料をアップしたり、 やりがいがある仕事を与えたり)が分かる。(15)はその良い局面を維持するのに、主語の 「彼」がどういった努力をしなければならないかと表している。 3. 三分類法を中国語教育現場への応用した 「把」 構文の使用場面 上記の三分類の図表から、影響式の「把」構文が「把」構文の全体の約9割占めている ことが分かる。したがって、初・中級中国語教育では、「把」構文を取り上げるときに影 響式文を中心に指導すべきである。現在、本学が使用している中国語教材も影響式文を中 心に指導するように作られているが、「把」構文の構造を覚えていても、いつ使うか、ま たなぜ「把」構文を使うかを理解するのに苦労する学習者が多いので、本文が提案した三 分類法を応用して「把」構文の使用場面をまとめた。 3-1 明らかに物の移動が認められるときに 「把」 構文を優先的に使用。 位置移動式文は影響式文の大半を占めている(『お嬢ちゃん、おはよう』の場合、65% を占めている)。学習者に対しては特定された物の位置が明らかに移動する場合、通常の 「SVO」構造で表現できるとしても(実際のところ「SVO」構造で自然に言い換えられる 場合が少なくないが、様態補語「得」を使用したり、動詞を繰り返したり、受身文に変換 したりするといった必要がある場合も多い。また、言い換えられた文の伝わるニュアンス が「把」構文のとだいぶ違うようになる)、主語の能動性、もしくは主語が責任の所在で あることが強調されるので、「把」構文が優先的に使用されることを説明する。特に物理 的位置移動式文は、ボディーランゲージによって再現可能なので、学習者は理解しやすい。 また、「把」構文における目的語は通常、特定されたものに限定されるということについ ては学習者の注意を喚起する必要がある。特定されたものとは、前のコンテクストに出た もの、もしくは話者及び聴者両方とも目的語が具体的にどれ(どの人)かが分かるものを 指す。『おはよう、お嬢ちゃん』は夫に浮気された40代の女性の復讐記であるのに対して、 『わたしたちの単純で小さな幸せへ』は高校生及び二十代の若者の恋物語を描いたコメ ディ小説であるため、表現はより口語的だ。次に後者から収集した例を使って説明したい。 (16) 就在江辰把我拖入转角的时候,身后传来了啪的一个巴掌声。 「江辰が私を曲がり角まで引っ張って連れて行った時、後ろからぱちんと平手打ちの 音が聞こえてきた。」 SVO構造で言う場合:就在江辰拖我拖入转角的时候…… 受身文で言う場合:就在我被江辰拖入转角的时候……
「把」構文の使用によって主語の能動性及び目的語が受けた影響力の大きさの両方がい きいきと描写され、主語の「江辰」は目的語の「わたし」をその現場から連れて帰りたい 気持ち、そして目的語の「わたし」は後ろから聞こえてきた平手打ちの音の発生源(だれ がだれを打ったか)を見たくても、自分の位置が移動させられたせいで見られないじれっ たい気持ちが文面から読者に伝わる。それにたいして、SVO構造の場合は、主語の「江辰」 が何をしたかに重点を置き、受身文の場合は、主語の「わたし」が何をされたかが情報伝 達の重点になっている。 要するに、「把」構文は、主語の能動性にも目的語の受けた影響にも同時にスポットラ イトを当てるが、SVO構造などの他構文は、どちらかにしか重点を置くことができない。 もう一つの例を見よう。 (17) 我把家里的钥匙给你。 「(わたしは)家の鍵をあなたにあげる。」 SVO構造の場合:我给你家里的钥匙。 無標識の受身文の場合:家里的钥匙我给你。 「把」構文は主語のわたしが鍵をあなたにあげたい気持ち及び鍵をあげるという動作の 影響を受けて鍵の位置が移動したことを表している。いわば主語の能動性もものを表す目 的語が受けた影響も強調しているが、SVO構造は説明の重点はものを表す目的語の鍵の ことしか指していない。一方、無標識受身文(または意味上の受身文)では、説明の重点 は主語になった「鍵」のみである。 学習者が物理的位置移動式文を理解できたら、次は抽象的位置移動式文の説明に進む。 (18) 他把对话上升到专业的角度时,我的素质就够不上了。 「彼が会話を専門レベルに高めた途端、わたしは話についていけなくなった。」 SVO構造の場合:他上升对话到专业的角度时…… ?? 受身文の場合:对话被他上升到专业的角度时…… (19) 我把这个感觉告诉过江辰。 「わたしはこの感覚を江辰に教えたことがある。」 SVO構造の場合:我告诉过江辰这个感觉。 無標識の受身文の場合:这个感觉我告诉过江辰。 (18)での二人の会話は世間話のレベルから専門知識を要するレベルに高められ、(19)は、 この感覚という情報は自分の頭の中から相手の頭に伝えられたという抽象的移動を表して いる。(18)はSVO構造で言い難い。受身文で言い換えることができるが、わたしが二人の 会話についていけなくなった原因は彼の故意的な行為にあるというニュアンスが表せなく なる。また、(19)はSVO構造で言うと、わたしはこういう経験があるという客観的な事実
を述べるニュアンスになり、無標識受身文の場合は、主語の「この感覚」が「わたし」に よって話されたということだけを強調する。どちらにしても、主語が積極的に自分の感覚 をシェアする能動性及び目的語の位置移動によって二人が同じ感覚を共有できることを同 時に表現する時は「把」構文しか使用できない。 明らかな物の移動には、ふたつの状況が考えられる。一つは、人が物を移動したい意志 があり、物は人の行為によって位置が移動させられるという状況である。この場合、「把」 構文の使用により人の能動性も物が受けた影響も強調することができる。もう一つは、物 は主語(人でない場合もある)のせいで移動させられるが、主語の意志が見られない場合 の時である。この場合、「把」構文を使うと、物が移動させられた責任が主語にあるとい うニュアンスが伝わる。 つまり、「把」構文を使うと、主語の能動性もしくは予期せぬ結果の責任の所在が主語 にあることも目的語の受けた影響も同時に伝わることができるが、他の構造式では意味が 通じる文を作ることは可能ではあるが、主語のしたこと、もしくは物が受けた影響のどち らかの一方にしか焦点をあてることができないので、「把」構文の使用は優先的に考える べきである。 このように、「把」構文の半分ぐらい(『お嬢ちゃん、おはよう』では、58%を占めてい る)を占める移動式文をいつ使用するべきかを学習者に示すことができる。 3-2 主語が能動的、 または意欲的に行動を起こす様子がはっきりと分かる場合、 「把」 構文を使 用。 (20) 姐姐把头发剪了。 「姉は髪を切った。」 (21) 要不然,把这边的工作辞了,到那边应聘就是了。(『おはよう、お嬢ちゃん』より) 「それならここの仕事をやめて、あちらへ面接を受けに行けばいい。」 (22) 她把办公室的门插得紧紧的。(『おはよう、お嬢ちゃん』より) 「彼女はオフィスのドアをしっかりと閉めた。」 上記の例は、いずれも主語の能動性を強調しているので、「SVO」構造文や受身文にな んとか変換した場合、客観的に事実を述べることになったり、焦点は受動者だけになった り、(20)の姉は長い髪を惜しむにもかかわらず思い切って髪を切った様子、(21)の離れて いる恋人のところに行くために今の仕事をやめる決心、(22)の彼女は誰かがオフィスに入 ることを恐れている様子を表すことができなくなる(5)。つまり、「把」構文は少ない字数 で、多くの情報を聞き手に伝えられる便利な構文でもある。 3-3 歓迎されない結果を引き起こした責任の所在を表したいとき 「把」 構文を使用。 「把」構文のうち、主語の能動性を際立たせる文がほとんどであるが、数が少ないなが らも、主語の能動性が認められない文もある。こういう文は通常、良くない結果が引き起 こされたことを表す。『お嬢ちゃん、おはよう』から収集した 141 文の「把」構文の中、
主語の能動性が見られなく、同時に歓迎されない結果が引き起こされたことを表す文が 10文あり、全体の約7%しか占めていない。 主語の能動性がベースにある「把」構文は大多数なため、歓迎されない結果が引き起こ された場合、原因究明のためでも責任の所在を通常問うため、主語の能動性を際立たせる 「把」構文が自然と話者に選択されると考える。つまり、主語の行為が非能動的だと分か るにもかかわらず、あたかも主語が能動的に行動していたように語り、良くない結果を引 き起こした責任が主語にあることを表している。いわゆる主語の能動性を際立たせる「把」 構文の最も代表的な特徴の汎用だと言える。 責任の所在を表す「把」構文の主語は、物や事が多いが人の場合もある。人の場合は、 能動性があるかどうかがコンテクストによって分かる。話者自身が主語になる場合、話者 の悪い事をしてしまったという後ろめたい気持ちが伝わる。 (23) 弟弟把我的电脑用坏了。 「弟はわたしのパソコンを壊してしまった。」 (24) 肉吃多了,是可以把人撑死的。(『四十一砲』(6)から) 「肉を食べすぎたら、死んでしまうこともあるのよ。」 (25) 凛冽的寒风把他的脸和手刮出道道血口子。(CCLコーパス(7)から) 「身を切られるような冷たい風が吹いて彼の顔と手にひび割れが数カ所も現れた。」 (26) 我一着急就把桌上的砂锅和碗都扫地上去了。 「わたしは焦って机の上にある土鍋と茶碗を床に落としてしまった。」 (『わたしたちの単純で小さな幸せへ』から) 上記の4例はいずれも歓迎されない結果を引き起こした責任が主語にあるニュアンスが 伝わる。(23)はわたしのパソコンがこわれた、(24)は人が食べすぎて死んでしまう、そし て(25)は冷たい風のせいで彼の手にひび割れができたという歓迎されない結果は主語(弟、 肉、風)によって引き起こされたのだという話し手の悔しさや不満などの気持ちを表し、 (26)は自分のせいで食器などが割れてしまったという後ろめたさを表している。 4. 「SVO」 構文より 「把」 構文が選択される理由 「把」構文をはじめて導入するときによくある教授法の一つは、「SVO」構文を「把」構 文になおし、その構造を比べさせる方法である。 (一) (27) 妈妈卖了弟弟的游戏机。(SVO構文 ) 「お母さんは弟のゲーム機を売った。」 (28) 妈妈把弟弟的游戏机卖了。(「把」構文) 「お母さんは弟のゲーム機を売った。」 (二) (29) 姐姐剪头发了。(SVO構文) 「お姉さんは髪を切った。」
(30)姐姐把头发剪了。(「把」構文) 「お姉さんは髪を切った。」 上記例文は構造は違うが、どちらも正しい文でありまた日本語訳も同じであるため、学 習者に対し文の構造は違うが、同じ意味を表すのだからどちらを使っても同じだという誤 解を与えがちである。実際に「SVO」構文で言いたいことが表せるのにどうして難しい 「把」構文を使わないと不自然になるかと理解に苦しむ学習者が多い。 「把」構文は分類法によって、いくつかの種類に分けることができるが、どの種類の「把」 構文もベースにあるのは、主語の能動性を際立たせることである。本文が提案した分類法 の影響式は、細分化すると位置移動式と状態変化式に分けられ、3-2で状態変化式文にお ける主語の能動性を説明したが、位置移動式文の共通点の一つも主語の能動性である。主 語の能動性がなければ物の移動も考えられないためである。また、判断式と引き起こし式 は上級中国語の習得内容だが、そのベースにあるのもまた主語の能動性である。ただし、 3-3で説明したように、数が少ないながらも、文中の行動は主語が意図的に起こしたもの でない場合もある。その場合、ほかでもなく、主語が歓迎されない結果を起こしたのだと いう話し手による責任の所在追及の気持ちを表している。 「SVO」構文は客観的に事実を述べる働きをするのに対して、「把」構文は主語の能動性 を強調する。その強調は会話がなされるシチュエーションに合わせ、聞き手に字面に含ま れていない情報を伝えることを可能にする。 4 節の(一)の二つの例文を見よう。「SVO」構造の「妈妈卖了弟弟的游戏机」は、お 母さんは弟のゲーム機を売ったという事実を客観的に聞き手に伝えたのに対して、「把」 構文の「妈妈把弟弟的游戏机卖了」は、お母さんの「売ってしまおう」、もしくは「売っ てやろう」という意欲を生き生きと描写している。聞き手は、その文を聞くだけで弟は勉 強もせずゲームばかり遊んでいただろうかとか、とうとうお母さんを怒らせてゲーム機を 売られてしまったのであろうかといった状況、さらにはそのお母さんの怒った顔も想像で きる。 4節の(二)の例も同じく、「姐姐剪头发了」は客観的に事実を伝え、「姐姐把头发剪了」 はお姉さんが決心をして思い切り髪を切った画面を描写している。これについては次のよ うなシチュエーションが考えられる。大学生になった姉妹は親元を離れて下宿生活をして いる。ある日、妹は母親に電話をかけて「姐姐剪头发了」と言ったと仮定しよう。それを 聞いた母親は、きっと「そう?似合うかしら?」という反応だろうが、もし妹が言ったの が「姐姐把头发剪了」であれば、「なんで?お姉ちゃんに何かあった?どうして髪を切っ たの?」と心配するかもしれない。特にそのお姉さんが時間をかけて髪を伸ばしいつも髪 のことを大事にしているなら、母親はきっと何かのショッキングな出来事があったのでそ の反動で思い切って髪をバッサリと切ったのではないかといっそう心配だろう。 つまり、「SVO」構文も「把」構文も文法的に正しい場合、事実だけを伝えたいときに 「SVO」構文を、その行為を実施した人(主語)の意欲性またその行為が起こされた背景 までほのめかしたいときに「把」構文を使うと言えよう。
5. 「把」 構文の導入順序 5-1 現実の言語活動に多い 「把」 構文 3 節及び 4 節でどんなときに「把」構文を使用するべきか、また「SVO」構文も「把」 構文も文法的に正しい場合どちらを使用すべきかを考察した。この節では、どのように段 階的に「把」構文を教えたら良いかを考察したい。「把」構文の構造は1節にも説明した ように「S+把+O+V+α」の式でまとめることができるが、式の最後の「α」部分は、 多種多様な形態を呈している。李昱菲(2016)は「α」部分を分析し、「把」構文は17種 類の構造を有すると定義した。無論、学者によって「α」部分の分類法はまだ統一されて いないが、すくなくとも「結果補語」、「方向補語」(「単純方向補語」と「複合方向補語」 を含む)及び「様態補語」の三つは研究者たちに認められていると言えよう。『お嬢ちゃん、 おはよう』から収集した 140文の「把」構文の「α」部分を分析したところ、図4の結果 が得られた。 図 4 「α」 部分の内訳 「把」構文の「α」部分にもっとも多いのは、結果補語であり、複合方向補語がその後 に続いている。 これまで文学作品を利用して「把」構文を見てきたが、学習の対象者を大学生に限定し、 授業、勉強、友人に料理を教えてもらうなどの場面における「把」構文を独自に考えてみ た。 (31) 请大家把课本拿出来。(複合方向補語) 「みなさん、テキストを取り出してください。」 (32) 请把课本和资料都收起来。(複合方向補語) 「教科書と資料をすべてしまってください。」 (33) 你把作业带来了没有?(単純方向補語) 「宿題を持ってきましたか。」 (34) 把这句话翻译成英语。(結果補語) 「この文を英語に訳してください。」 (35) 我把手机忘在公共汽车上了。(結果補語)
「わたしは携帯をバスに忘れた。」 (36) 今晚我一定要把汉语作业写完。(結果補語) 「今夜、わたしは必ず中国語の宿題を終わらせる。」 (37) 先把西红柿切成小块。(結果補語) 「先にトマトを一口サイズに切る。」 (38) 再把鸡蛋打散。(結果補語) 「そして卵を溶く。」 (39) 我把房间打扫干净了。(結果補語) 「わたしは部屋をきれいに掃除した。」 (40) 我想把夏天的衣服寄回家去。(複合方向補語) 「わたしは夏服を家に送りたい。」 上記の文の中に「SVO」構造を用いて言える文もあるが、「把」構文のほうが、相手の 能動性を引き出すように話しかけたり、自分自身の強い意欲性を示したりすることができ る。たとえば、(31)は「SVO」構造を用いて「请大家拿出课本(来)。」と言っても正しいが、 そう言っても教科書をまだ出していない生徒がいるなら、そういう生徒の能動性を喚起す るのに「把」構文が使用される。(36)は「SVO」構造を用いて「今晚我一定要写完汉语作 业。」と言っても正しく、主語の一定の意欲性も見られるが、「把」構文のほうが主語の強 い能動性が伝わり、聞き手または読み手は主語のやる気満々の表情まで想像できる。 数量的にも限定的な文例ではあるが、このように学生の日常生活を想定して作った「把」 構文の「α」部分は、『お嬢ちゃん、おはよう』のと同じく、結果補語が一番多く、次は 複合方向補語、単純方向補語の順に続いていることを表している。 一方、日本国内で発行された「把」構文を取り入れた中国語教科書(初級6冊及び準中 級 6 冊)から「把」構文の例文を 44 文収集でき、それらの例文の「α 部分」を調べてそ の結果を図5にまとめた。 図 5日本国内の初級 ・ 準中級中国語教科書の 「把」 構文における 「α」 部分の内訳
図5から、日本国内の初級及び準中級の中国語教材が挙げている「把」構文の「α」部 分の構成素は大学生の日常生活を想定した「把」構文と同じように、最も多いのが結果補 語である。違うのは、方向補語に関して単純方向補語の例しかなく例文の数も少ないこと である。そのかわりに二重目的語の例が二位になっている。それは複合方向補語自体が難 しく、「把」構文と組み合わせると初級の学習者にとってさらに難易度が高くなるという 判断がなされたからかと考える。調査対象の12冊の教材の中に単純方向補語だけを取り 入れたものが2冊ある。また、これらの教材では一冊だけ除き、残りの11冊は「把」構文 の導入時において、結果補語と方向補語はすでに学習を終えている。 5-2 『新実用漢語課本』 における 「把」 構文の導入順序 ルールを完璧に覚えていても、実際に応用できないのであれば習った内容は身につけら れない。「把」構文のような複雑な項目は更に応用することが難しくなる。よって、「把」 構文は、学生の日常生活に応用できる形から教授したほうがより効果的であると考えられ る。 しかし、本学で使用されている『新実用漢語課本』の「把」構文は以下の順番で(表4) 導入されている。第16課と第18課は『新実用漢語課本』の第二冊(Lesson15 ~ Lesson26) の内容で、第27課と第29課は第三冊(Lesson27 ~ Lesson38)の内容である。表4が表し ているように、『新実用漢語課本』は段階的に分けて「把」構文を導入しているが、導入 された順番は現実の言語活動に一致していない。また、「把课本拿出来(テキストを取り 出してください)」、「把手机收起来(スマートフォンをしまってください)」といった授業 用語によく使われる複合方向補語は、学期後半の第23課の学習内容になる。現実の言語 活動とかけ離れた学習内容は学習者にとって理解しにくいうえに、実践練習の機会も少な いので難しくて理解できない、または理解できたつもりでもいざ使おうとすると自分の生 活に使えないといった印象を学習者に植え付けてしまい、「把」構文の使用を意識的に回 避することになりがちである。由玥(2016)は、留学生の「把」構文に関する125文の誤 用例を分析したところ、回避による誤用例は全体の48.8%を占めていることを指摘した。 表 4『新実用漢語課本』 に取り上げられた 「把」 構文 構造式&例文 「α」部分の分類 訳 文 第16課 S+把+ O + V+了。 (41) 我们先把借书证办了。 α=了 (アクペクト助詞) 私たちは先に図書カードを作ろう。 第18課 S+把+ O(物) +给+O(人) (42)你把包裹通知单给我。 α=名詞 (二重目的語におけ る人を表す目的語) 小包通知書をわたしにください。 S+把+ O +V+来/去 (43)把您的 照带去。 α=単純方向補語 あなたのパスポートを持って行って ください。 第27課 S+把+ O +V+到、在、成……(44)我把你们带到这儿。 (45)你把这个词翻译成英文。 α=結果補語 あなたたちをここに連れてきた。 この言葉を英語に訳してください。 第29課 S+把+ O +V+動詞の重ね型 (46)请把那些水果洗一洗。 α=動詞の重ね型 それらの果物をちょっと洗って。
5-3 「把」 構文の導入順序の提案 5-1から現実の言語活動に多く使われている「把」構文の「α」部分の内容は、結果補語、 複合方向補語及び単純方向補語の順に続いていることが分かった。また、結果補語の例は 単純方向補語と複合方向補語の例より多いが、学習者の生活で出現頻度が高く、かつジェ スチャーなどの非言語的な指導方法によって表現できるのが単純方向補語と複合方向補語 のケースである。よって、「把」構文を導入する前に、先に単純方向補語及び複合方向補 語を教えるべきだと考える。そうすると、教員は授業中の練習の設計がしやすくなり、一 方、学生は習った内容をすぐに自分の生活に応用できるので自信も生まれやすく、「把」 構文の次のステップの勉強に進みやすい。次は、「把」構文の次のステップに進む前に「把」 構文によく使われる結果補語を先に教授すべきである。「α」部分が結果補語である「把」 構文はボディーランゲージによって表現できない場合が多いが、例文34 ~ 39のように、 学習者の日常生活に関連深い表現は結果補語の助けがないとなかなか語ることができな い。本文は表5のとおり、「把」構文の段階的な導入の順序を提案したい。 表 5 「把」 構文の導入順序についての提案 導入順序 導入内容 例文 訳文 導入準備 単純方向補語 複合方向補語 (47) 我上楼去。 (48) 老 走进来了。 わたしは上の階に上がっていく。 先生は(歩いて)入ってきた。 1 「把」構文(1)S+把+ O +V 1+(V2)+来/去 (49) 我把他叫来了。 (50) 请把课本拿出来。 わたしは彼を呼んできた。 テキストを取り出してください。 導入準備「把」構文によく使われる結果補語好 、完、成、在、到、给 (51) 我做完作业了。 (52) 妈妈洗好衣服了。 わたしは宿題をやり終えた。 お母さんは洋服を洗い終わった。 2 「把」構文(2)S+把+ O +V+結果補語 (53) 请把学生证放在桌上。(54) 把这句话翻译成汉语。学生証を机の上に置いてください。この文を中国語に訳してください。 3 その他初・中級段階の「把」構文(3) S+把+ O +V+二重目的語の受取者 S+把+ O +V+了 S+把+ O +V+動詞の重ね型など (55) 别把这件事儿告诉他。 (56) 我得把这本书还了。 (57) 你把衣服洗洗。 このことを彼に教えないで。 この本を返さなければならない。 洋服を洗ってね。 「把」構文は客観的に事実を伝えるための文型でない。4節で説明したように「把」構 文は、主語の能動的な行為によって目的語になんらかの影響を与えたことに重点を置き、 何が起こるか(起こったか)を説明するよりどんな結果になるか(なったか)を説明する。 それと同時に主語の能動性を際立たせる働きもする。したがって、「どんな結果」、「その 結果が起こった背景」、また「だれがそういう結果を起こしたか」などの情報を豊富に含 んでいる「把」構文を導入する前に、下準備として物事の結果を表す表現を先に教えてお くことが大切である。つまり、「把」構文の難しさはほとんどその不可欠な「α」部分か
ら由来していると言っても過言でない。本文が提案した導入順序では、単独で学習すると きにも難易度が高い方向補語と結果補語を学習者が習得しているのであれば、「把」構文 の導入がスムーズに行えると考える。表5に示されている導入順序で「把」構文の指導は1、 2を経て3に進んだとき、「α」部分の内容を事前に学習者に教えるより学習者自身が考え て導き出すように誘導するほうが良い。なぜなら、この段階では「α」部分に使われる二 重目的語や、動態助詞、動詞の重ね型などはすでに既習項目であるため(8)、学習者が自力 で「把」構文を構築することが可能だからである。例えば次のような授業設計が考えられ る。 教 員: 姐姐知道你的这次考试考得不好。你不想让她告诉妈妈这件事儿。你怎么说?请用 “把”来说。 学習者:不要把这件事儿告诉…… 教 員:告诉谁? 学習者:告诉妈妈。 教 員:很好。请用句子再说一遍。 学習者:不要把这件事儿告诉妈妈。 学習者のレベルに応じて次のように学習者の第一言語で誘導しても良い。 教 員: お姉さんはあなたのテストがよくできなかったことを知っている。あなたはお姉 さんにこのことをお母さんに話して欲しくない。お姉さんにどう話すか?「把」 を使って。 学習者:不要把这件事儿告诉…… 教 員:だれに教えないでほしいの? 学習者:告诉妈妈。 教 員:そう!文の形でもう一度言ってください。 学習者:不要把这件事儿告诉妈妈。 このように学習者に自ら考えさせ、既習の知識を応用しながら新しい内容を引き出させ るやり方は、学習者に自分の力で正解を導き出すことができる喜びをあじわい、「把」構 文に対する親近感を持たせることもできよう。また、このステップに来たら、「把」構文 の「α」部分は多種多様ですべて覚える必要がなく、「把」構文における主語の能動性及 び目的語の受けた影響を同時に強調する意味合いを理解するうえで、「把」構文で話した い時に自分の表したいことに応じて「α」部分を補えば良いということを教えるべきだ。 こうすると、学習者が今まで「把」構文に対して抱いている難しいという感覚も、実はそ れほどではないという感覚に変わり、「把」構文の回避現象も改善できると思料する。
終わりに 本文は、「把」構文の意味合いから再分類を試み、その新しい分類法による初・中級中 国語教育現場への応用を考察した。また、「把」構文の構造上の「α」部分に焦点を当て、 効果ある導入順序を再考し提案した。その提案は中国語教材の開発に少しでも役に立てば と思料する。一方、新しい教材の開発は短い時間にできるものではない。より効果的に学 習できる教材ができるまでは、既存の教材に沿って授業を進めるしかないのも現状であ る。その際、「把」構文全体に対する理解を深めるため、導入当初から「把」構文は主語 の能動性も目的語の受けた影響も同時に強調することをシチュエーションの中で学習者に 説明することが大事であろう。 謝辞 本論文の作成にあたり、大分県立芸術文化短期大学の許挺傑先生に有用な調査材料の提 供を頂き、心から感謝申し上げる。 注 (1) 『新実用漢語課本』は北京言語大学出版社で出版された外国人学習者向けの中国語教材 であり、世界各地の中国語学習者に広く使われている。全部で 6冊があり、第一冊は 入門レベル、第二冊から第四冊は初級~中級前レベルである。 (2) 中国国家中国語国際推進指導弁公室、通称中国国家漢弁(Hanban)が 2010 年に、旧 HSK(1990年~)をリニューアルして新HSKを誕生させた。HSKは母語が中国語でな い人を対象にする中国語能力試験の略称である。新HSKは筆記試験と口頭試験に分け られ、学習者の中国語によるコミュニケーション能力をはかることに重点を置いてい る。筆記試験は1級から6級まであり、6級は最高級である。CEFRの基準に照らし合 わせて言えば4級は中級レベル、5級は上級レベル、そして6級は熟練レベルに相当する。 (3) 《小姐你早》(お嬢ちゃん、おはよう)は、1999年に出版された中国の作家、池莉の作 品である。当該作品は、金持ちになった夫に不倫された主人公が簡単に夫の離婚要請 に応じず、最終的に不倫した夫に名誉と金銭を失わせたことを描写した物語である。 (4) 《致我们单纯的小美好》(わたしたちの単純で小さな幸せへ)は、2015年に出版された 中国の作家、趙乾乾の作品であり、主人公の若いカップルの高校時代から始まった恋 物語をユーモラスに描写している。 (5) ここで設定した状況はあくまでも一例である。聞き手はコンテクストによって適切な 情報を感じ取る。 (6) 『四十一砲』は2003年に出版された中国の作家、莫言の作品で、肉が大好きだが食べ られなかった少年が肉食いの名人になった伝奇的な物語である。 (7) 北京大学中国言語学研究センター CCL コーパス。本文が引用した文は、『人民日報』 (1994年.第三クォータリー)による。
(8) これらの学習内容は、本学が採用している『新実用漢語課本』及び本稿の作成にあたっ て調査した12冊の日本国内で出版された初級・準中級の教材においては「把」構文を 導入する前の学習内容である。 なお、本文に挙げた中国語の例文のうち出典が示されていないものは筆者による自作の文 である。 参考文献 (1) 胡韧奮(2015)《面向二語教学的把字句分类研究》《曲靖 范学院学报》 Vol.34 No.2:84-90 (2) 劉珣(2010)《新実用漢語課本》(第2版)第2冊•第3冊 北京:北京言語大学出版社 (3) 李昱菲(2016)《从对外汉语教学的角度看“把”字句的使用情况》《大众文化》7:218-220 (4) 由玥(2016)《留学生“把”字句偏误之回避现象》《現代語文》(教学研究版)2:60-61 (5) 八木章好・鄺麗媚(2014)『おぼえチャイナ2』東京:朝日出版社 (6) 児野道子・鄭高詠(2006)『デビュー中国語』東京:金星堂 (7) 劉穎(2002)『2年生のコミュニケーション中国語(教授用)』東京:朝日出版社 (8) 劉穎・喜多山幸子・松田かの子(2008)『1冊目の中国語《購読クラス》』東京:白水社 (9) 奈良行博・佟岩・韓軍・大沼尚子 (2011)『体感中国-初級からのステップアップ』東京: 白水社 (10) 南勇(2014)『チャレンジ!一年生の中国語』東京:朝日出版社 (11) 南勇(2017)『チャレンジ!二年生の中国語 簡明会話版』東京:朝日出版社 (12) 日下恒夫・史彤嵐(2001)『ちょっとまじめに中国語』東京:同学社 (13) 石田友美・桑野弘美・島田亜実・鈴木ひろみ(2016)『しっかり初級中国語』東京:白 水社 (14) 楊暁安(2012)『ポイントマスター・初級中国語』東京:同学社 (15) 尹景春・竹島毅(2002)『《新版》中国語さらなる一歩(教授用)』東京:白水社 (16) 尹景春・竹島毅(2010)『中国語 つぎへの一歩(教授用)』東京:白水社