入論説
V
公的扶助行政の法的統制の理論
1 1ドイツ社会扶助法を手がかりとして
1
l
(
二
)
19一一『奈良法学会雑誌』第7巻1号 (1994年6月〉 目 次 はじめに 第一章扶助基準設定過程の法的統制 第一節司法審査の範囲 第二節扶助基準の設定と、扶助基準算定方法 第三節扶助基準の設定に関する法的問題ハ以上第六巻二号) 第二掌最低生活需要の認定 第一節﹁必要な生計﹂需要の拡張 第二節需要の程度の認定 第三節必要即応原則の解釈への示唆(以上本号) 第三章基準額算定方法の改革 第四章学説および裁判例の新たな傾向 むすびにかえて 目リ田
雅
子
第7巻 1号一←20
第二章
最低生活需要の認定
第一節 ﹁必要な生計﹂需要の拡張 扶助基準により算定されない一時給付についても、 一定範閤で受給権が認められるとする考え方が、BSHG
施行 前の学説・裁判例で支配的であった。たとえば一時給付の対象となる被服需要については、不可欠な被服を求める要 扶助者の請求権が認められおベルリン上級行政裁判所一九五五年二一月一一六日の判決では、最低限必要な被服を求 める請求権が認められている。BSHG
施行後は、上述のように、同法四条、及び一一条で生活扶助を求める請求権が法律上明記されるとともに、 に よ り 、 及び一時給付をつうじてこれを支給することができるよと規定されたこと ( 4 ﹀ 一時給付を求める権利が、法律上明文化されることとなった。 二一条一一項で﹁生活扶助は、経常給付、 一時給付は州の設定する扶助基準により算定されないため、郡独立市や郡すなわち社会扶助主体が、当該給付にか かる﹁必要な生計 L 需要を認定する権限をもっ。そこでまず、社会扶助主体に、需要認定に関して裁量が認められる か否かが問題となる。言うまでもなく需要の認定は、受給要件の認定にかかわる。要件裁量を否定する伝統的な立場 を、扶助基準の設定に関して堅持した前掲連邦行政裁判所一九六六年一一月ゴδ
日判断げ見解が、一時給付について も妥当すると考えるならば、これにかかる需要の認定についても裁量が否定されることになる。従来、扶助実務で一時給付の対象として念頭におかれてきたのは、主に被服・靴、及び暖房用燃料の調達、ならび に家財道具の調達、及び大規模な補修にかかわる需要であった。これら各々の需要類型について、社会扶助主体は内 部規則を設定し、これに依拠して需要を認定し給付決定を行ってきた。それゆえ右の問題は、実務で認められていな い需要類型、あるいは認められていてもその程度を超える需要について、
BSHG
一一一条にいう﹁必要な生計﹂に該 当するか否か、また一時給付を求める権利が認められるか否かについて、裁判所がそのコントロールをどこまで及ぼ すことができるかが問題となる場面であらわれる。 この問題に関する先例として位置づけられているのは、連邦行政裁判所一九七O
年 四 月 一 一 一 一 日 の 判 決 で あ お 山 本 判 決で同裁判所は、 ﹁必要な生計﹂に含まれる需要であれば、これを充足するための扶助請求権が存在することを肯定 し た う え で 、 ﹁必要な生計﹂需要の認定について全面的に司法審査が及ぶという基本的な立場を表明した。すなわち、 ﹁必要な生計の範囲内で、被告︹社会扶助主体︺は、需要︹本件では冬季暖房需要︺ の充足を確保しなければならな 21一一公的扶助行政の法的統制の理論伺 ぃ。このことは、扶助の程度を個別事例ごとにそのつど確定することはほとんど不可能であり、画一化せざるを得な い場合が多いという事情によっても変えられない。このような困難さはあくまで事実上のものである。:::この事実 上の困難さによって、必要な生計を確保するという義務から免れることはできない。右のように解するのでなければ、 社会扶助主体に要件裁量を与えることになり、何が必要な生計にあたるのかについて、社会扶助主体が最終的に判断 することになってしまう。このような見解は、法律の一義的な文言と一致しない : : : O i -実務での暖房需要の確定 に伴う困難は、司法審査が不可能であることを意味するものでは決してな⋮日 そ れ で は 、 ﹁必要な生計﹂という不確定法概念について、 いかなる解釈基準を立てることが可能であろうか。この 点につき同裁判所は、 つぎのように判示する。すなわち、 ﹁法律は、必要な生計という概念を、人聞の尊厳に値する第7巻1号一一22 生活の維持
(
B
S
H
G
一条)に必要な手段を意味するものと考えている。人聞の尊厳に値する生活という概念の解釈 においては、:::当時において支配的な生活習慣や経験が考慮される。﹂ ﹁人間の尊厳に値する生活の保障﹂という社会扶助の目的に鑑み﹁支配的な生活習慣や経験﹂を考慮して解釈する という右の立場は、以下に述べるように、その後の裁判例で展開され、 ﹁必要な生計﹂需要の拡張的認定につながる こ と に な る 。 一 九 八0
年代に入って、住民の生活習慣の変化・消費水準の著しい向上が認められる一方で、緊要の課題であった マーケットバスケット改訂が実現をみず、基準額の水準が賃金水準等に比して相対的に低下するという事情を背景に、 とりわけ下級審裁判例で一時給付の対象として認められる需要が従来より著しく拡大することとなった。 一時給付を受け皿として﹁必要な生計﹂に該当することが認められた代表的な需要類型を挙げると、①クリスマス 祝祭期の特別の需要(飲食物、飾り付け、供応、贈物等)を充足するための手当、②家電製品(とくに電気冷蔵庫、 電気洗濯機、テレビ等)の購入費用、③家庭内の冠婚葬祭・宗教的行事に伴う(式礼服の調達、供応等の)費用、④ 子どもに特有の需要(玩却で小学校入学の祝い品等の購一句修学旅行[吉田師団g
p
E
]
への参加費腕 r 守 ) 、 及 び ⑤ 生 別した子に面会するための交通費がある。以下では、とくに右の①、②、@の需要に関する裁判例をそれぞれみなが ら、そこで形成された﹁必要な生計﹂需要に関する司法審査の基準を検討する。 ① ま ず 、 クリスマス手当については、旧扶助法以来、多くの社会扶助主体が、内部規則に基づく法定外の任意給 付として、扶助受給者、及びその他の低所得者に対してこれを支給してきた。この点で、わが国において生活保護を 補完する法外援護として地方自治体の支給する﹁夏期・歳未慰問金﹂ないし﹁見舞金﹂に類似する。BSHG
施行前 は、クリスマス手当に対する需要は、ライヒ扶助規則第六条にいう﹁必要な生活﹂需要に含まれず、当該手当は旧扶助法に基づかない任意給付と解され、それゆえその請求権が否定される点で、裁判例は一致していた。施行後もなお、 ( g u 右の裁判例の立場は堅持された。 門 脇 ﹀ これに対して、はじめて正面から当該手当について請求権を承認したのは、一九八二年一二月一一一一一日のへ V セ γ 上 級行政裁判所の決定である。へ y セ γ 州では、クリスマス手当支給のため社会扶助主体が支出した経費の六割が、州 財政より充当されることになっていたが、それが州の財政事情の悪化を理由に中止された結果、一九八一年には、扶 助受給者に対する手当額は従来の半分以下に減額されることとなった(それ以外の低所得者に対しては手当は完全に 廃 止 さ れ た ) 。 クリスマス手当は
BSHG
に基づかない任意給付にすぎないという従来の 削減の論拠となったのは、 ( 悶 ) 実務見解であった。同裁判所の右の決定では、連邦行政裁判所が一九七O
年一一月一一日に、障害者による乗用車の 購入費用が特別扶助として認められるか否かという争点に関して示した﹁扶助受給者が、非受給者の住む地域におい ハ 却 V て、これらと同じように生活することを可能にするのが、社会扶助の任務である﹂という見解を、生活扶助にも妥当 23一一公的扶助行政の法的統制の理論。 するものとして引用して、 つぎのように判示した。すなわち、クリスマスの時期には飲食物等の需要のほか、贈物の 交換、パーティーへの招待など、親戚知人との交流の確保という点での需要の増加も認められる。右の見解に従うな らば、これらの需要は﹁必要な生計﹂需要に該当する、と。なお、請求権の法的根拠は、BSHG
二 一 条 、 ハ 明 品 ﹀ 項、及び一二条一項に求められている。二
条
その後、連邦行政裁判所もまた一九八四年四月二一日の判決において、請求権を認める立場を明確にした。ある郡 独立市において一九七七年にクリスマス手当に関する要綱が制定されて以来、当該手当が経常的生活扶助に上のせさ れて受給者に支給されていた。その財源の一定部分の負担を市が州に対し求めた訴訟のなかで、同裁判所は、クリス マス期の特別の需要がBSHG
にいう﹁必要な生計﹂に該当するか否かという争点についての判断を迫られることと第7巻1号一一24 ﹁必要な生計概念の解釈においては、人間の尊厳に値する生活を可能にするという社会扶助の 目的
(
B
S
H
G
一条二項一文)が国酌されなければならず、それとともに、当時の支配的な生活習慣や経験もまた考 なった o 同 裁 判 所 は 、 慮に入れなければならない﹂と判示した上述の一九七O
年四月二二日判決を引用した。そのうえで、ドイツではクリ スマスの祝祭が、定期的に行われる他の祝祭に比べて、信仰の程度にかかわらず住民一般にとって特別の意味をもっ クリスマス祝祭期間の飲食物等の生計費の増加、及び人間関係を維持するための贈物等のための出費は、 こ ︾ ﹂ 、 般る
2
i
iこ 。〉広 ま ぜ コ て し、 る 生 活 様 式 で あ る と し て クリスマス祝祭に伴う需要は、 ﹁必要な生計﹂に含まれることを認めてい ② ( お ) つぎに、家電製品の調達に対する需要、そのうち⑦電気冷蔵庫、及び④テレビの調達に対する需要を取り上げる。 ⑦電気冷蔵庫の調達・保有は、これに代わる冷蔵設備が今日の建築様式の住居にはいまやほとんど存在しないこと を考慮するならば、﹁必要な生計﹂に原則として含まれるという見解をとる上級行政裁判所の判決がすでに一九七二 ( 弘 ) 年の時点でみられたが、これを除くと、電気冷蔵庫に対する需要は原則として﹁必要な生計﹂に該当しないが、B
S
H
G
一ニ条の個別化原則に鑑み、個別事例において電気冷蔵庫を必要とする特殊事情を考慮することによって例外的に 肯定するという立場が、裁判例・学説で有力であった。 たとえば、バイエルン上級行政裁判所は一九七八年一月二O
日の判決で、電気冷蔵庫の調達は原則として﹁必要な 生計﹂に含まれないと判示する一方、この時点での社会通念や生活状況を考慮に入れつつ、電気冷蔵庫調達を正当化 する特別の事情が個別事例で認められる場合にのみ、例外的に﹁必要な生計﹂に含まれることを認めた。本判決で個 別事例における特殊事情として挙げられているのは、受給者の年齢、健康状態、買い物にかかる身体的負担、家族数、 及び冷蔵庫の利用による家計の効率的な運営の可能性である。また、ベルリン上級行政裁判所は一九八五年九月一一一日の判決で、電気冷蔵庫の普及率がほぼ一
O
O
M
に達しているという、住民の生活習慣の変化を統計上裏づけるベル リンでの調査結果を前提にしながらも、当該事実は﹁必要な生計﹂概念の解釈にとって決定的ではなく、 ﹁ 必 要 な 生 計﹂に該当する栄養需要を確保するために、電気冷蔵庫が必要であるか否かについての判断こそ決定的であると判示 し た 。 つまり、原告は飲食物等の買い物に毎日出かけることが可能であると認められるほか、基準額のうちの飲食費 は、平均価格を基礎に算定されており、それゆえ遠方にあるスーパーマーケットで価格の割安な食品をまとめ買いし て冷蔵することがもっぱら念頭におかれているのではなく、付近にある個人商庖で割高な食品を毎日購入することも また考慮されているとして、電気冷蔵庫を調達するための生活扶助が否定されてい一明 その後ー右のような原則否定・例外肯定説に対して、原則肯定説に立つ裁判例が上級行政裁判所レベルで有力とな ( 訂 ﹀ っ て い る 。 ヘッセン上級行政裁判所は、 一九八七年二月五日の決定で、従来の否定的見解を変更して、肯定説をとる こ と を 表 明 し た 。 つまり、連邦労働社会省による労働社会統計によれば、 一九八一二年二一月時点で、年金または社会 25一一公的扶助行政の法的統制の理論位 扶助の受給者である低所得層の二人世帯における(冷凍庫付きのものも含めた)冷蔵庫保有率が九八・六万に達した という事情を同裁判所は重視して、冷蔵庫は例外的のみならずむしろ原則として﹁必要な生計﹂に含まれる家財道具 ︹ 沼 ) に該当すると判示して、電気冷蔵庫を調達するための扶助に対する請求権を承認したのである。リュ 1 ネブルグ上級 行政裁判所もまた、 一 九 八 六 年 一O
月二二日の決定で、右の見解を支持した。同裁判所は、 ﹁必要な生計﹂に含まれ るか否かを判断する基準として上述の連邦行政裁判所一九七O
年四月二二日判決で示された﹁住民の聞で支配的な生 活習慣、及び経験﹂を、家電製品を含む家財道具にかかわる需要についてつぎのように具体化している。すなわち、 家財道具の普及率百E
H
Z
]
は 、 [ H E W ] とみなされる。もっとも、平均的な生活水準を充たすためのすべての需要を、生活扶助によって充足するこ 住民の生活習慣・経験、 及びその必要性に係る住民一般の考え方についての徴窓第7巻 1号一一26 とが社会扶助法により要請されるわけではなく、快適さ ( 却 ) 計﹂にあたらない、と。 [ ﹀ s m F 5 日目円 r r Z ] を意味するにすぎないものは﹁必要な生 ③テレピに関する判断においては、
BSHG
二一条一項二文で﹁必要な生計﹂として例示された﹁日常生活におけ る個人的需要﹂に含まれる﹁周囲との関係、及び文化的生活への参加﹂を、技術革新に伴う住民の生活習慣の変化、 及び個別事例の事情を酪酌しつつ、どのように解するかが問題となる。連邦行政裁判所は一貫して、テレピは﹁必要 な生計﹂に含まれないと判示している。 一九七五年五月二二日の連邦行政裁判所判決は、結核に擢患し生活扶助を受給している六三歳の原告が、九0
マ ル クの中古テレピ購入のための一時給付を申請したが、社会扶助主体は、 一般的な社会通念によれば日常的に生計を営 むためにテレピの調達・保有は必要ではなく、他の手段を用いることで周囲との関係や文化的生活への参加を維持す ることができるという理由で拒否したという事案である。 一審、及び原審は、テレピの調達によってはじめて、周囲 との関係を保ち文化的な生活に参加することが可能となるとして、テレピは﹁必要な生計﹂に含まれると判示してい た。これに対して、連邦行政裁判所は以下のように述べている。一九六八年時点で、年金、及び社会扶助受給者世帯 のテレピ保有率が六OM
であったという統計結果をみても、テレピなしで人間の尊厳に値する生活を営むことができ ないということにはならない。周囲との関係の維持や文化的生活への参加という日常生活における個人的需要は、今 日もなお一般的には、日刊紙の講読、ラジオ聴取、図書館の利用、及び映画館等への訪問により充足することが可能 (叩剖﹀ である。テレビの調達は、人間の尊厳に基づき必要なものではなく、快適さを意味するにすぎない、と。 右の判決が出されて後一O
年以上が経過し、テレビ普及率が著しく上昇した時点でもなお、連邦行政裁判所は一九 八八年一一月三日の判決で、その見解につき変更すべき点がないことを明らかにした。 一審は、今日ではほとんどすべての低所得世帯においてテレピが存在するという状況の変化に鑑みるならば、扶助受給者の生活を非受給者の生活 にできる限り近づけることを要請する
BSHG
一条二項一文の目的規定に基づき、社会扶助主体には中古の白黒テレ ピの購入に対して生活扶助を支給する義務があることを認めていた。控訴審であるリュ l ネプルグ上級行政裁判所も また、連邦行政裁判所が右の一九七五年五月一一一一日判決で示した見解は、とくに七0
年代半ば以降テレピの世帯普及 率が著しく上昇したことから看取される一般的な生活様式の変化によってもはや根拠が失われたとして、一審判決を 支持した。これら二つの判決に対して連邦行政裁判所は、一九七五年判決の上述部分をそのまま肯定的に引用したう えで、普及率が﹁必要な生計﹂の解釈にとって決定的な基準となるわけではないと判示した。 この判決に関しては、同裁判所の先例││すなわち﹁必要な生計﹂概念は、社会扶助の目的規定に照らしつつ、住 民の聞で支配的な生活習慣・経験により解釈されなければならないという一九七O
年 四 月 一 一 一 一 日 判 決 、 さ ら に 、 グ リ スマス祝祭期間の経費の増加が支配的な生活習慣であることを認めて、当該需要は﹁必要な生計﹂に含まれるとした 27一一公的扶助行政の法的統制の理論。 一九八四年四月一二日判決﹄│ーと理論的に整合しているか否かが問題として提起される。 ﹁必要な生計﹂概念の解釈 において住民(とくに低所得者層)の生活習慣を考慮しなければならないことを前提とする以上、家財道具の調達に かかわる需要については、その普及率を重要な考慮事項とせざるを得ないためであ一明さらに、本判決が、普及率の 上昇にもかかわらず﹁必要な生計﹂概念の解釈に影響を与える生活習慣の変化が生じていないという判断の論拠とし て 、BSHG
の注釈書における従来の裁判例の引用部分を言及するにとどまる点について、なんら説得的な論拠が示 ハ お υ されていないという批判が学説上存在する。 そのため下級審において、同裁判所の見解に従わないことを表明する判決がみられる。 へ y セン上級行政裁判所一 九九二年九月九日決定では、普及率が生活習慣の変化の手がかりとして重視され、テレピが原則として﹁必要な生第7巻1号一一28 計﹂に含まれることが認められている。さらに、今日ほぼすべての世帯がテレビを保有することによって情報の収集 能力が高められ、また政治的意思形成過程への参加が促進されるという面で、テレビの機能が著しく高まっており、 この点で代用手段として挙げられたラジオなど他のコミュニケ I ション手段とは圧倒的な差が存在しているという認 (引占) 識が、論拠に加えられている。 冠婚葬祭、及び宗教的行事については、これに伴い必要となる式礼服の現物支給あるいは購入費の支給が、裁 判例で認められるようになったことに加えて、さらに、儀式の後に催される宴の費用ないし供応費の支給が、 ③ 一 時 給 付をつうじて認められるにいたった。 結婚式、洗礼式、堅信礼、及び聖体拝領等の特別の行副げ終了後、立会人や親戚知人等をもてなすことが、 ﹁ 住 民 の聞で支配的な生活習慣﹂に合致することが認められたノルトライン・ヴェストファ l レン上級行政裁判所一九九一 年七月八日の判決では、今日の支配的な生活習慣に鑑みるならば、通常、祝事そのほか人の一生において特別の意味 をもっ行事を催すことに配慮することが要請されており、さらに、当該生活習慣に関する統計資料に依拠した判断に 加えて、要扶助者を社会的弧立化から守るために扶助が不可欠であるか否か、という観点での考察が要求されている。 つ ま り 、 ﹁周囲との関係、文化的な生活への参加﹂を扶助により可能にするという
BSHG
一 一 一 条 一 項 ニ 文 の 趣 旨 に 照らして、受給者とその周囲の人々との社会的な結びつきを、当該行事が確保ないし維持するものであれば、それに ( 訂 ) 伴う需要を充足する必要性が高まるとされる。 以上の考え方は、連邦行政裁判所の採用するところとなった。 一九九三年二月一八日判決で、結婚式、及び洗礼に 伴い宴を催し親戚や知人をもてなす費用が、 一時給付をつうじて支給されることが認められたのである。ここでは、 とくに低所得層(具体的には、二二条三項に基づく扶助基準額の上限となる収入階層)に属する人々の生活習慣が劃一回きりの行事と宴を催すために受給者が基準額から費用を捻出することは、扶助基準の目的 に反すると判示されている。 酌されている。また、 以上みたように、裁判例では当初、従来扶助実務で認められていなかった需要について一時給付が与えられるか否 かの判断においては、個別事例の特殊事情の考慮に比重がおかれ、個別化原則に基づき例外的に給付義務が認められ た。そこでは、需要の類型に応じて、個別事例の事情を考慮に入れたきめ細かい判断が行われていた。たとえば、電 気冷蔵庫の調達に関する考慮事項はすでに述べたとおりであり、また電気洗濯機については、家族数・構成(とくに 手洗いによる洗濯が可能な構造の住居であるか、 どが、考慮事項として挙げられている。 付近にコインランドリーがあるかな 子どもや幼児が何人いるか﹀、 2ト一公的扶助行政の法的統制の理論同 その後八
0
年代半ば以降、社会経済状況に応じた生活習慣の変化によって大部分の要扶助者に生じていることが認 められるようになった需要類型で、扶助実務では従来一時給付の対象として念頭におかれていなかったものについて、 ま た 、 クリスマス手当のように概ね普遍的に認められる需要でありながら多くの社会扶助主体が法定外給付として実 施してきたものについて、これらを一時給付の対象とする見解が裁判例で一般的なものとなった。 これらが﹁必要な生計﹂に該当するか否かの判断においては、人間の尊厳に値する生活を可能にするという社会扶 助の目的(
B
S
H
G
一条二項一文)を割酌しつつ、 ﹁住民の闘で支配的な生活習慣や経験﹂を考慮に入れなければな らない、という連邦行政裁判所一九七O
年四月二二日判決の見解が前提とされたうえで、各々の需要類型に応じて判 断基準が具体化されている。たとえば、家財道具、とくに家電製品については、統計資料に示された世帯普及率の高 さ(とりわけ低所得世帯におけるそれ﹀が考慮事項として重視されている。もっとも、これが﹁必要な生計﹂に該当第7巻1号一一30 するための十分条件でないことは、テレビの普及率が高いにもかかわらず、テレピ調達のための一時給付を一貫して 認めない連邦裁判所の判決からも明らかである。ここでは、利用可能な代替手段の存在が﹁必要性﹂を否定する要件 として指摘されている。他方、既に述べたように、情報化社会の到来に伴いテレビの果たす役割を重視して、この消 極要件を否定する見解がある。さらに、冠婚葬祭、及び宗教的行事を行うことに伴う費用、つまり式礼服の調達や供 応 費 に つ い て は 、 ﹁必要な生計﹂に、周囲との交流・人間関係を維持し、文化的な生活に参加するための需要が含ま れると規定する
BSHG
一 一 一 条 一 項 二 文 が 重 視 さ れ て い る 。 裁 判 例 で は 、 ハ 却 ) 受給者と同様に生活することを可能にするものであるか﹂、﹁消極的な意味で対外的に目立つか否か、 としての社会的地位、が明白になることを防ぐものであるか﹂、 ﹁受給者が、自己の住む地域において、非 つまり、受給者 及 び ﹁住民の生活習慣についての統計に依拠した認定 に加えて、要扶助者を社会的孤立から守るため当該需要の充足が必要であるか﹂という基準が立てられ、これらに依 拠して低所得層の生活習慣をも考慮に入れつつ請求権の有無に関する判断が行われている。 な お 、 ﹁必要な生計﹂需要の認定において、財政事情の考慮が認められるか否かについてもまた議論の余地があろ ぅ。上述の連邦行政裁判所一九八四年四月一一一日判決では、当時の財政の窮迫が被告側の抗弁として主張されていた。 この点について同裁判所は、財政緊縮の要請に基づくクリスマス手当の削減や廃止は、 クリスマス祝祭期の一般的な 生活様式が、財政事情または経済状況の影響を受けて変化・消滅した場合にはじめて可能であると述べる。 一 時 給 付 にかかわるその他の裁判例をみても、ある特定の需要類型が﹁必要な生計﹂の需要に該当するか否かについての判断 のレベルで、財政事情や予算配分の事情が考慮され、これが請求権の否定に結びついたケ l スはほとんどみられた時。 このような事情が考慮に入れられているのは、需要の程度にかかわる判断においてである。これに関する裁判例につ いては、次節で検討する。一時給付の﹁受け血﹂機 以上から明らかなように、裁判例における﹁必要な生計﹂概念の拡張を可能にしたのが、 能であっ鳩この点に関連して当然に生ずる問題が、経常給付と一時給付の区別の基準、換言すればある需要が扶助 基準の対象となるか、あるいは一時給付により充足されるかを決定するメルクマールの解明である。扶助基準の対象 となる需要類型は扶助基準命令の一条一項に例示されているものの、これと一時給付との境界を画する基準について は法令上詳細な規定が存在しないため、個々の需要類型について学説・裁判例で見解の対立が存在する場合がある。 学説上は、旧扶助法以来の実務慣行に沿った基準を説く者が多い。すなわち、その性質上、大部分の要扶助者に同 じ よ う に 、 かつ規則的に繰り返し生じる需要は扶助基準の対象とされる一方、 一時給付は、右のような性質をもたな い需要につき原則として一図的に支給されるものであるというように、需要発生の頻度・規則性をメルクマールとす い 何 w しかし、これは必ずしも明確であるとはいえない。たとえば、冬季にのみ生ずる暖房需要は一時給付に分類され ているが、冬季は大部分の要扶助者に同じように、かつ規則的に繰り返し生じるということができ、また毎月定期的 31一一公的扶助行政の法的統制の理論白 に支給することが可能であるため、これを経常給付に分類することも不可能ではない。さらに同じく一時給付に分類 されている被服をとってみても、その需要発生の頻度・規則性は時間枠により相対的である。 ﹁必要な生計﹂に含まれるある特定の需要をいずれで充足するかにつき、二一条一項が社会扶 助主体に裁量を付与しているのか否かという問題がある。肯定説のなかには、規則性・継続性などの需要の性質にか ハ 日 明 ﹀ かわらず、扶助基準命令の規定の枠内で、社会扶助主体にかなり広い裁量を認めるものがある。しかし裁判例では、 こ の 点 に 関 連 し て 、 この裁量が認められず区別について積極的な審査が行われている。はじめてクリスマス祝祭期の需要を﹁必要な生 計﹂にあたると判示した前掲連邦行政裁判所一九八四年四月一一一日判決では、当該需要のなかに飲食物費が含まれる ことに鑑みればこれを経常給付に分類して基準額に算入済みであるという考えも成り立つにもかかわらず、上述のよ
第7巻 1号ーー32 うにこれを一時給付に分類した。本判決は、経常給付には、毎月ほぼ同額で生ずる需要を対象とするものであるとい う定義を与える一方、 一時給付については、個別事例で例外的かつ一時的に生ずる需要を対象とする給付であるとい うようにこれを狭く解してはならず、時の経過とともにより大きな時間間隔で規則的に生ずるような需要もまた一時 給付をつうじて充足されるとして、これをより広く解した。扶助基準命令一条一項からは、クリスマス需要分の費用 が経常給付に含まれていないことは明らかであることから、この費用の基準額からの捻出を受給者に期待するのは、 ハ C V 通常一般的に生ずる﹁必要な生計﹂需要を保障するという扶助基準の目的にも反するとする。ここで注目すべき点は、 クリスマス需要が﹁必要な生計﹂に含まれるにもかかわらず、扶助基準の中身を酪酌すればその対象外であることが 明 ら か で あ る か ら 、 一時給付の概念を従来より広く解することによって、これによる充足を認めている点である。こ のような理解に影響を受けて、 一時給付をめぐる裁判例が上述のような展開を見せたのであった。 さ ら に 、 一時給付についての詳細な概念定義は意味をもたないとして、これを経常給付の補充概念として理解する 考え方がある。これによれば、経常給付と一時給付の区別は、扶助基準による需要算定上の合理性の観点から行われ るにすぎないものであって、より重要であるのは﹁必要な生計﹂に該当するか否かである。これに該当し、かつ扶助 基準によって充足されない需要であれば、その発生頻度を問わず、一時給付をつうじて充足しなければならな
J W
つ 一時給付については、扶助基準その他で充足されない﹁必要な生計﹂需要の存在がその限界を画するので払問。 ま り 、 もっとも、扶助基準は包括的であるため、 一時扶助にかかる需要が扶助基準で充足されているとみなされる可能性 がある。それゆえ、このような擬制のもとでは、基準額により賄うことが金銭的に困難であるにもかかわらず、一時 給付で充足されない司といういわば﹁谷間﹂に残される需要が生じるという問題が残る。したがって、扶助基準の対象 であるか否かを明確にすることが必要となる。この問題をめぐっては、需要算定方法の改革、さらに、扶助基準の法的性格をどのように解するかという問題ともかかわって、学説・裁判例で近年見解の対立がある。これについては第 四 章 で 検 討 す る 。 わが国の保護実務においては、最低生活費について、経常的最低生活費と臨時的最低生活費(一時扶助費)との区 別が前提とされている。前者は、衣食等月々の経常的な最低生活需要のすべてを満たすための費用であり、 一 般 基 準 により算定される。後者は、限定された範囲内でのみ認められる費用、すなわち、出生、入退院、長期療養、及び新 たに保護を開始する際などに最低生活の基盤となる物資を欠いているなどの事由が存在するときに、しかも緊急やむ を得ない場合に限って臨時的に認定される費用である。このような見解、及び実務での一時扶助費の限定的運用の実 態をみれば、基準額、換言すれば経常的最低生活費として支給される保護費の中から充足せざるを得ない需要の範囲 は、事実上かなり広いものととならざるを得ない。耐久消費財等の調達費用は基準額には含まれないにもかかわらず、 33一一公的扶助行政の法的統制の理論同 月々の経常的最低生活費をやりくりしてこれを捻出することを前提としている運用に鑑みれば、 最低生活需要をめぐる状況は、ドイツに比べより深刻であるといえよう。 ﹁谷間﹂に落ち込む 以上みたように、裁判例において、ある需要類型が﹁必要な生計﹂に該当するか否かに関する判断基準が形成され、 これに基づき一時給付をつうじて充足される需要が拡大することとなった。それでは、ある需要類型につき、どの程 度まで﹁必要な生計﹂に該当するとして、 一時給付により充足すべきことが認められるのであろうか。より具体的に いうと、たとえば被服需要であれば、いかなる種類の衣料品について、それぞれ何着ないし何枚分の調達または購入
ヵ
:
一時給付により確保されなければならないのであろうか。次節では、この点について検討することにしたい。 ( 1 ﹀ 扶 助 実 務 や 裁 判 例 で は し ば し ば 、 法 律 用 語 で あ る ﹁ 一 時 給 付 ﹂ の 代 わ り に 、 旧 扶 助 法 下 の 実 務 慣 行 に 従 い ﹁ 一 時 手 当 ﹂第7巻1号一一34 [ o Z B 由民間開∞包庄は叩]という語が使われる(なお、一九五三年の扶助法改正により挿入されたライヒ扶助規則一一条 a の 中 では、従来の用語法に従いこの語が用いられていた)。 ( 2 ) ﹄ m S F ヨ 町 田 O 品 開 門 司 n z -N -K 戸 口 出 ・ ( H 8 3 ・ ω -Z 同・扶助請求権を、扶助基準に基づく扶助を受ける権利であるとする判決 に つ い て は 、 本 稿 第 一 章 一 節 註 ( お ) 参 照 。 ( 3 ) E w a ︿ ω N -ω O N -u g ・それゆえ請求権の認められる範囲・程度を超える給付は、社会扶助主体の裁量に委ねられると解さ れ て い た 。 ︿ 包 ・ 。 ︿ の 戸 口 出 冊 目 ) 匡 円 回 一 喝 切 ・ 4 ・ N h F - m v ・ 呂 町 N W H り 明 ︿ ω 印 w ω ω ・ ω 品 同 ・ ( 4 ) さらに同条二項一文でご時給付は、扶助を求める者が、経常給付を必要としないが、自己の能力や収入・資産から生計 を十分に賄うことができない場合にも支給される。﹂と規定され、一時給付のみを単独で受給する権利が正面から肯定され る こ と と な っ た 。 ( 5 ) 切 ︿
R
唱 の 開 N F ω ミ・本稿第一章一節参照。 ( 6 ) 切 ︿ め ﹃ 唱 の H W U 印 柏 戸 叶 ∞ ・ こ こ で は 、 冬 季 暖 房 一 用 の 燃 料 手 当 の 増 額 請 求 権 の 有 無 が 争 わ れ た 。 ( 7 ﹀ 切 ︿ 開 門 司 の 開 ω 印、見。円なお、すでに本判決より前に、ベルリン上級行政裁判所一九六七年二一月一一一日判決で﹁必要な 生計﹂の概念は不確定法概念であり、裁判所の全面的な審査に服するという判断が行われていた。ここでは、肌着、シャツ、 及び夜着を週に複数回交換することを可能にするため、それぞれ三着分の扶助費を受給する権利が肯定された(司一回︿ω
E
W
N N 少 N N ∞ 戸 ﹀ 。 ( 8 ) 切 ︿ 四 円 唱 の 肘 ω 日 -H ∞ C 同 ・ ( 9 ) とくに八0
年代半ば以降、一時給付をめぐる訴訟が飛躍的に増大し、この現象は﹁訴訟の洪水﹂とも称せられた。そのな かで注目されるのが、行政裁判所法一二三条に基づく仮命令の申立件数が著しく増加し(例を挙げると、一九八六年には、 ミュンヘンで九コ一件、ハンブルクで四五O
件であった)、しかも認容件数も増加していることである守・2 E
m
-¥
者 品B
ア 同 ロ 門 出 i a z m E 2 F 色 目Z
ロ 岡 田 5 5 σ E E U F Z ι 2 ω C N S H E -r -Z H ) ︿ 忌 ∞ m yコ
・
H S。
(川山)比較的高価な玩具の購入費用が一時給付により充足されるか否かについて、入0
年代後半になって下級審裁判例でこれを 肯定する判決が有力となった ( C ︿ の F E m E 品 -d ・ 4 ・ 5 ・ 坦 ・ 5 8 ・ N H 4 H u g -N 日 N 一 。 ︿ の 出 血 B σ R m ぐ ・ ロ -M N ・ 5 ∞ 吋 -E 円 ︿ ω S -N ∞ N -M ∞ 由 一 。 ︿ の H L g m E H F C ・ ︿ ・ 5 ・ H -s s ・ -D F 回 目 g z s ・ロ∞など﹀。が、のちに連邦行政裁判所はこれを否定するにいたった。この問題をめぐる学説・裁判例の議論の状況については、第四章で取り上げる。 (日)子どもに小学校入学に際して与える学習用具や祝い用の菓子筒
[ ω
n E
- 5
5 ]
の 費 用 に つ い て 、 O ︿ の 戸 昨 日 吉 岡 阿 -d ・ 4 ・ N 吋 ・ 己 -S u r -口 同 O 丘 団 。 H U 由 N W 同 ω 品 一 切 ︿ 叩 君 。 ・ d ・ 4 ・ N H ・ H -H S ω ・ り む ︿58
・ 叶 ∞ 。 日 山 口 同 白 血 -g H U U ω w 叶 印 な ど が あ る 。 (ロ)(義務教育過程の最終学年次に一週間から二週間くらいの期間で実施される)修学旅行への参加費用は、当初は﹁必要な 生計﹂にあたらないとして、これに対する一時給付は否定されていた(たとえば、。︿の宮町55
♂ d ・ 4 ・ N ∞ ・ ∞- g
s w
E
W
︿ ω N ∞ -N N U など)。その後、教育上の必要性や児童の福祉という観点、及び﹁児童、及び少年の必要な生計には、とり わけその成長にとって必要な需要が含まれる﹂と規定する BSHG 一 一 一 条 二 項 を 重 視 し て 、 従 来 の 見 解 を 明 示 的 に 変 更 し 、 一時給付の請求権を認める判決がつぎつぎとあらわれたハ。︿の切開ユs
・ d ・ 4 ・5
・ ∞ ・ 思 ∞ N ・2 w a
︿ ωωNWN 叶 N U C ︿ の 冨 口55
ア ロ ・ 4 ・ H 吋 ・5
.
5
8
.
司 肘 ︿ ωωAYNU 介 。 ︿ の 富 田 口 町 53c ・ J1 ・ u ・ h F ・ H U ∞ 叶 w 相 , 肘 ︿ ω ω ♂ H N N T C ︿ の ド ロ ロ 伺 σ ロ 円 m -c ・ J ﹁ ・ ∞ -U 1 ・z m W 0
・ 明 開 ︿ ω h F N ・ 一 可 む な ど ﹀ 。 ( 日 ﹀ 切 ︿ 由 H 1 4 君 。 ・ 匂 ・ 4 ・ H ∞ -N -H U ∞ ω -Z H ) ︿ H m E U ω ・ ω 串 由 ・ ( U H ) そのほか論議を呼んだものに、政治活動に参加するための費用に対して、一時給付を支給する義務があるか否かという問 題がある。具体的には、社会扶助の要否判定に際して児童手当を収入認定する取扱いに反対するという趣旨で一九七九年一O
月 二O
日に行われた労働組合等主催のデモに、五人の子どもと参加するための交通費等の費用について一時給付が申請さ れ、これに対して拒否処分が行われたため、その取消、及び義務づけを求めて訴えが提起された事例がある。第一審である カッセル行政裁判所は一九八O
年八月一二日の判決で、右のデモが原告のおかれている状況と密接な関連性をもつことに着 目し、これに参加することは BSHG 一一一条一項二文にいう﹁周囲との関係﹂の維持に必要であり、しかも﹁相当な範囲﹂ を超えていないことから、参加費用は、同条同項一文にいう﹁必要な生計﹂のうちの﹁日常生活の個人の必要﹂に該当する と判示して、原告の請求を認容した ( Z U ︿ 邑 毘 噌 ω 吋∞同・ドイツ公私扶助連盟が財政への影響等の観点からこの判決を批判 して一九八一年一月一六日に表明した意見の内容については、 ZU ︿52
・己吋同・を参照)。控訴審であるヘッセン上級行 政裁判所は一九八一二年二月一一一一日判決で、一審判決を支持して、被告である社会扶助主体の控訴を棄却した。同裁判所は一 審判決で示された理由に加えて、基本法五条、及び八条に従い基本権として保護された活動をすることは、 BSHG 一 条 二 項一文にいう人間の尊厳に値する生活を営むことに含まれることを根拠に、このような活動に関連して生ずる費用に対して 35一一公的扶助行政の法的統制の理論同第7巻1号一一36 は社会扶助が支給されなければならないと判示した。さらに、二一条一項二文の﹁相当な範囲﹂という要件の認定において、 当時の諸事情に鑑み、右のデモにおいて自己の要求を表明する利益が原告の生存の確保という意味で重要なものであったこ とを認める一方、社会扶助主体の財政能力を割酌する必要を認めている。もっとも本件では、当時の財政事情の悪化が著し いことの証明を被告は行っておらず、また右のような意味をもっデモが実施される数、及び被告の管轄地域においてこのよ うなデモに参加する要扶助者の数は少ないと考えられるとして、財政への影響は小さいとしている ( Z U ︿ 呂 毘 ・ ω司ご。 このような一審・二審の判断に対して、連邦行政裁判所は一九八五年九月一一二日判決で、当該請求につき一一一条一項二文の ﹁相当な範囲﹂という要件の認定において、個人が給付請求しうる範囲・程度は財源の調達可能性によって決定されるとし て、財政事情に多大な配慮を示して原告の請求を斥けた(∞︿
R
君 。 開 討 -ロ ω ・ ロ 印 民 ・ ﹀ 。 ハ日)法外援護に関する法的問題については、高田敏編著﹃福祉行政・公有財産条例﹄(一九八一年)七六頁以下︹寺田友子執 筆︺、及び大橋﹃行政規則の法理と実態﹄二七八頁以下参照。 ( 日 山 ) た と え ば 、 。 ︿ の F C H M m ぴ ロ 円 相 川 ・ 回 ・ 4 ・ N ・ ∞ ・ 5 E W 司 開 ︿ ωY20 一 。 ︿ の F D ロ 巾 σ ロ 円 m H ・ C ・ 4 ・ N ・Z
・ 5 2 ・ 司 肘 ︿ ω N W M 山 町 一 Eg 由 ・ ︿ の ロ 4 ・ N ∞ ・ 5 ・ 5 印 ∞ -︼ 吋 開 ︿ ∞ 印 ・ 5YO ︿ の 戸 田 口 町 四 百 円 hpd ・ ぐ -H 叶 ・ ∞ ・ 5 8 ・ 旬 開 ︿ ∞ ∞ ・ 日 出 町 な ど 。 (げ)学説上も当初は否定説が有力であった(たとえば、 ω n E m -F O B ¥ ﹄ 町 田 凹 岳 ¥ ω 色 沼 ? 問 。 B B m 口 仲 田 吋 N g g ∞ ω 問 。 ・ 5 ・ ﹀ 口 町 四 ・c s
c
-2 N
岡 山 門 同 ロ 円 ・ 出 参 照 ) 。 な お 、 平 等 原 則 に 基 づ き 受 給 権 が 認 め ら れ る 場 合 も 存 在 し た 。 バ l デン・ヴュルテンベルク 上級行政裁判所一九八三年三月九日決定では、住所不定者一般を受給対象者から除外する実務での取扱いは、クリスマス手 当が法定外給付であってこれにつき受給権が存在しないとしても、基本法三条一項に基づく平等取扱いの要請に違反すると 判示している ( Z︿ 当 N H u g -A F N 3 。 ( 刊 日 ) 。 ︿ の 切 巾 吋 E P N N ・ 印 ・ 5 2 ・ 2 凶 ︿ ω B ・ 5 ・ H 斗戸では、傍論で肯定されている。 ( m m ) ︿ 包- c .
関 E F B 巾 ア ロ 2 H N 2 宮 田 円 ﹃ 白 E E R ι 2 4 ﹃2 E 白 血 円 宮 島 2 F H ︼ 片 目 白 血 円 宮 島 巾 H H 阿 国 ロ ロ 仏 巾 田 由 G N U -E 再 開 問 巾 田 町 昨 N ・ 20 ︿ 包 ∞ N W H N m ・ ( 山 山 ) 切 ︿ 2 ・ 4司 の 開 ωPN 印 由 ・ 日 間 ∞ ・ ( 幻 ﹀ ︼ 円 切 ︿ ω ω N -H ω 同 州 ・ ( n ) ∞ ︿ 巾 (お﹀そのほか一 J時 時 扶 助 が 認 め ら れ る に い た つ た 例 と し て 、 電 気 洗 濯 機 ( 。 ︿ の 同 戸 ピh L 円 位 同 吉 同 白 E 凶 話 叩σ =
円 偶 . d . ﹂ 司 ﹃ . N 担 印 . M . H 巴 申 ∞ 包 H ゲ 句 一 匂 司 2 同 何 悶 凶 円 ﹄ ︿ ︿ ∞ ω 臼H ゲ . H = 品 白 少•
37一一公的扶助行政の法的統制の理論臼
Z
∞ 時 ・ 一 。 ︿ のE
S
E
品 切 回 -J 可 ・ 由 ・ ∞ ・58
・ 何 回 ︿ ω S ・5
0
戸電気手動掃除機(。︿の戸E
与 三 間 w 切 ・ 4 ・z
・ 申 ・5
∞ F E W ︿ ω ω U J 品Nω 同 ・ ) 、 ミ シ ン ( 。 ︿ の 出 回 円 H Mぴ ロ ﹃ 閃 ︿ ・ ロ ・ 尽 -H U ∞ 戸 間 肘 ︿ ∞ 印 吋 i N ∞N -N ∞AF 同 む な ど 。 ( 出 ) ︿ の 出 回 ・ 者- - c
・ 4 ・5
・ H N ・5
叶N W M り 開 ︿ ω N N -H P E -( お ) 国 内 ︿ ωN ∞-A H S ・ 同 旨 、 。 ︿ の 宮 口 EZ ア 切 ・ 4 ・ N ∞-H 0・ 呂 田 -E w a︿ ω ω 印 ・ ∞ 0 ・2
・ ∞ 円 宮 何 回 目 F C E ¥ ﹄ 山 町 田 白 島 ¥ ω 巾 仲 間 ぷ ど 白 ・ 目 ・ 。 -w 由 -K 戸 口 出 ・ ( H S 3 ・ O H N 岡 山 ︽ H R -N N もまた、買い物の困難な老人世帯ゃ、子どもの多い世帯などで認められる余地があるとす る 。 ( M m ) 田 町 ︿ ω 8 ・ ω ω 由 、 ω 含同・なおこの判決では、例外的に扶助が認められる事由として、地域的条件、健康上の制約、及び家 族数が非常に多い世帯などを挙げており、比較的これを厳格にとらえている。 ( 幻 ﹀ ω 門 司 岡 市 - - F C ﹃ ロ ¥ 出 H ・ 白 m w o r ¥ ∞ 冊 目 毘 ︼ ・ 白 ・ 同 ・ 0 ・ ・ H A H -﹀ c p ( 円 申 出 ω Y 一 一 回 N H 州 円 宮 門 -U N ・ ( 叩 臼 ) ︼ 刊 同 町 ︿ ω ω 少 ω g -U叶 HHZ ﹄ 者 呂 ∞ F N 品 目 ∞ ・ そ の ほ か 、 。 ︿ の 冨z
g
Z
♂ d ・ 4 ・5
・ H N ・52
・ m , 一 円 ︿ ω 8 ・ ω 缶 、 が あ る 。 ( m m ﹀ 匂 一 円 ︿ ∞ ω 叶 ・ H 8 ・ H E ・さらに、ハンブルク上級行政裁判所もまた一九八七年五月二五日の判決で、肯定説をとるにいたっ た。その論拠として、普及率のほか、主に栄養需要の算定方法の変更を重視している。すなわち、一九八五年七月一日以降、 従来のマーケットバスケットに代えて﹁代替的マーケットバスケット﹂が需要算定に用いられることとなったが︿その詳細 については第三章で後述する)、この方式による栄養需要の算定においては、飲食物の腐敗等の滅失分や、少人数世帯に必 然的に伴う不経済な購入分の計上額が、従来より大幅に減らされ、しかも栄養需要を充足する飲食物の価格計算において連 邦平均価格を一一二%下回る価格が基礎とされることとなった。それゆえ、扶助受給者、とくに単身者の場合、従来以上に食 品の腐敗防止に注意せざるを得ず、また少量の食品の価格は割高となるため、割安の食品を大量に購入して貯蔵しておくと いう経済的な購入が必要となる 0 ・以上の理由により、単身者についても原則として冷蔵庫の調達のための一時給付を求める 請求権が認められた(宮内︿ ω ω 一 己 目 0 ・ 日 N ご 。 ( m 山 ) 切 ︿ 開 門 唱 の 回 出 品 ∞ -N ω F N ω ∞戸もっとも本判決では、特別扶助の枠内であれば、年齢・健康・障害などの個別事情を劃酌し て給付が認められる余地のあることが示唆されている。 ( 川 副 ) 明 阿 W J h ω ω ∞ ・ ∞ タ 由 ( ) 民 ・ ( 但 ) ﹀ H N Z ア ロ 目 白 河 巾 円 宮 田 宮 - m n F 出 口 問 色 町 門 ︿ m H 耳 目 日 同 ロ ロ 閃 血 肉 巾 円 山 門 v g N g H H 回 口 三 唱 開 ロ 仏 首 相 ロ 門 司 σ 2 5 Z E R F 同 日 F N 片 岡 ﹃H u s
-日 目 ・第7巻I号ー←38 ( お ) 戸 司 同 内 ¥ 回 ∞ 回 。 ・ ゆ H M m N -m N ・ ( 川 品 ) 山 口 問 。 白 2 0 5 8 ・ E -戸本判決ではそのほか、低所得者世帯の消費支出に依拠した﹁統計モデル﹂が一九九
O
年以降採用 されているという事情(これについては第三章で後述する)、また、人間の尊厳に値する最低限度の生活を保障するという 趣旨からテレビを差押免除の対象とする民事訴訟法八一一条に、 BSHG の解釈を一致させるべきであるという考え方が、 理由として挙げられている。 ω n F 巳 5 0 5 ¥ ﹄ 町 田 8 r ¥ F -3 ・ 同 -田 ・ 。 ・ ・ ゆ H N 同岳民・企は、テレピが原則として﹁必要な生計﹂ に該当することを否定しているが、特別の事由のある場合(たとえば、特別扶助である介護扶助の受給要件を充足しないが、 社会参加が困難な老人について)には生活扶助の枠内でも例外的に認められるとする。 (お)ヘッセン上級行政裁判所一九七九年八月二八日決定では、子どもが堅信礼の際に着用する中古の礼服の購入費用を一時給 付により支給することが認められている(司悶︿ ω N ∞ 姐 S -ω 同 同 ・ ﹀ 。 ま た 、 リ ュ l ネブルク一九八三年四月一九日決定では、 近親者の死を悼む気持ちを一定期間喪服を着用することによって対外的に表したいという要望は尊重されなければならず、 また一般的価値観念と一致するという理由で、喪服の調達費用を認めている ( E W ︿ ω ω ω ・ N 2 円 ) 。 同 旨 、 同 町 田 由 ・ ぐ の 戸 d ・ 4 ・ ∞ -N ・ 同 由 山 W 0 ・ Z U J 刊 H 3 0 ・ 品 ω 。 ・ ( お ) 洗 礼 式 後 の 供 応 費 用 に つ き 、 国 巾 凹 由 ・ ︿ の 戸 ∞ ・ 4 ・ M M ・ - M ・ 5 ∞ FEW ︿ ω ω N N さ同・堅信礼後の供応費につき、。︿の 戸 出 口 巾 σ ロ H m w 切 ・ 4 ・ ] ミ - h H ・ 同 山 w m w 少 司 開 ︿ ω ω 少 品 H H 同 ・ ( 幻 ) 山 口 問 。 即 日 8 5 8 ・ ω 九 日 ・ 8 同 ・ ( m品 ﹀ ∞ ︿ 叩 吋 君 。 -d ・ 4 ・ H ∞ -M ・ 5 8 日 。 M M ・ 由 同 l ・ 0 0 ︿ 5 8 ・叶三円リロ︿盟 -E8 ・ 叶 8 ・ 3 a ・結婚の祝宴の費用につき、 国 ︿ 2 1 4 司 の " d ・ 4 ・ H ∞ -M -H 也 市 民 凶 ! 日 。 A H 0 ・ 由 H I -) 口 ﹂ ︿ 回 申 由 一 凶 ・ 叶 ∞ c ・ ( 叩 却 ﹀ ︿ m -。 J刊 の 戸 口 口 巾 } ) ロ H -m w d ・ 4 ・ N 印 -M -H 由 ∞ ゲ 明 開 ︿ ω ∞ Y H h F A F H A F m w 同 ・ ( 川 叩 ) 回 ︿ 2 ・ 君 。 -d ・ 4 ・ 戸 ・ 口 ・ 5 叶 ( } w 開 ∞ PM 印 A Y M 印 ∞ -( 打 倒 ) た と え ば 、 国 巾g
・ ︿ の 出 切 回 ・ 4 ・ M m -∞ ・ 5 一 - m y 明 回 出 ぐ ω 日 ∞ 一 切 M m y 臼 ︼ 一 。 ぐ の 切 吋 m B 巾 p d ・ 4 ・ 戸 ・ 白 ・ 5 u y z ロ ︿ 52 ・ ω m w A H W ω 申 印 、 が あ る 。 (必)たとえば、。︿の Z 当 J d ・ 4 ・ ∞ ・ 叶 -Z 2 ・ ZF 白 -8 5 8 ・ 2 ・ 8 が あ る 。 (必)ある費用が﹁必要な生計﹂に該当するならば、これにつき扶助請求権が認められるのであって、社会扶助主体の財政上の3ト一公的扶助行政の法的統治lの理論り 負担の考慮は、この結論を左右するものではないと明示する判決に、。︿の Z -者 -w d ・ 4 ・ ∞ ・ 叶 ・
52
・22
白-S
S
E
-2
・ ω 叶がある。なお、註 ( M ) 参 照 。 (必﹀一時給付の扶助基準補完機能が高められるに伴って、扶助基準の対象とされる需要について経常給付の枠内で補充性を担 保するため、扶助基準から離れて需要を(上のせして)算定することを認める BSHG 一 一 一 一 条 一 項 二 文 が 活 用 さ れ る 余 地 が 、 事実上狭められる結果となった。たとえば、離婚等により生別した親が月に一度子どもに面会するための交通費を﹁必要な 生計﹂にあたることを認めた連邦行政裁判所一九九三年二月一八日判決が、その一例として挙げられる(切︿2
当F
d
・ 4 ・ g -M -3 8 ・ ZU ︿ H u s -E P 8 3 0 ここでは、当該需要が、要扶助者一般にではなく子どもと生別した親にのみ生ずると いう特殊性から、扶助基準の対象とはならないと述べたうえで、毎月定期的に繰り返し生ずる需要であるにもかかわらず、 一時給付によって充足されうると判示されている。なお、要件である﹁個別事例の特殊性﹂の存在を証明するのが困難であ ることもまたその一因とされる(戸宮内¥切 ω 出戸申 N N M N N -N 3 0 ( 必 ) の C 2 回n v k r ¥ の 向 。 田 P 口 同 回 目 ロ ロ 己 巾 町 田 C N U -E 民 叩 間 巾 田 町 同 N -∞ ・ ﹀ 口 出 ・ ( 忌 ∞ ω ) ・ 明 日 目 河 口 ・ ∞ -( 必 ) ω 円 Z 5 0 5 ¥ ﹄ 同 町 田 田 町 宵 ¥ ω 包 旬 開 Y 国 ・ 目 ・ 0 ・ ・ 2HH 窓口円・日・これに対して同条同項は生活扶助に二種類の給付があることを定め ているにすぎないと解するものに、。 0 2 白 門 広 円 宵 ¥ E S F 印 ・ 同 ・ 。 ・ ・ ゅ N H H C M -N 0 ・ ω n z n F -E ロ 日 由 民 間 町 ロ EECF ロ 骨 戸 市 山 田 仲 ロ ロ 肉 巾 ロσ
巾 即 応 。 門 出 口 同 町 N C B 円 、 巾σ
巾 ロ 凹 ロ ロ 芯 H 1 月 岡 田 -F N片 山 凶 同 ¥ ∞ の 回 忌 ∞ 少 A H m w 一 白 ・ ( 円 引 ) 切 ︿ 巾 司 君 。 開 ∞ P H 印 ω 同 ・ ( 川 崎 ) ω 円 v o n v w N 同 ω一 回 ¥ ω の ∞ 忌 ∞ p h H 甲 山 山 一 宮 門 O N 可 ロ 印 E -∞ 巾 円 四 阻 止 田 仏 巾 円 -g D m p H 円 円 F F z r ロ 岳 山 口 口 仏 企 D B 包 括 。 戸 包 印 Z H M m 2 M 己 巾 門 ∞ 0 8 N 山 田 同 町 出 向 mwwN 片 山 凶 ] 戸 由 ∞ 叶 ・ N 由 N ・ (的制 ) F H M 同 ¥ 切 ω 図 。 ・ 一 昨 N H 同 N -∞ ・ (印)﹃生活保護手帳(一九九三年版)﹄一二三頁参照。第7巻 1号一一40 第二節 需要の程度の認定 一時給付については、扶助基準の対象外におかれていることからもわかるように、個別事例の事情に即応した需要 の認定をつうじて給付内容(程度・形式﹀を決定するという個別化原則に基づく要請が、より強くはたらくことが認 め ら れ て い る 。 この点につきまず注意すべきであるのは、需要の程度の認定と、給付内容の決定とが、密接に関連することである。 第一章でみたように、請求権の基底的な承認守山口﹀
5
匂E
n
v
骨ヨのE
E
m
E
n
F
︺ と、給付の程度・形式の面での裁 量の肯定という扶助請求権に関する二分論、 つまり、公的扶助を求める権利が裁判例で肯定される一方、給付の程 度・形式の決定は、個別性原則に従い社会扶助主体の裁量に委ねられるという旧扶助法下に確立した考え方が、BS
H
G
四条に明文化されている。 すると判示した裁判例に反映されている。そこでは、電気冷蔵庫調達のための一時給付を行う社会扶助主体の義務が この考え方は、たとえば、電気冷蔵庫の調達にかかる需要が、 ﹁必要な生計﹂に該当 認められる一方で、具体的にどのように扶助を行うかは、同条二項に従い社会扶助主体の裁量に委ねられるとされ、 中古口問の購入代金の支給、あるいは現物支給もまた、裁量の範囲内であると判示されていむ w もっとも、需要の程度を裁判例が詳細に認定することによって、給付の程度に関する裁量の範囲が狭められる場合 のあることが、留意されなければならない。 まず、結婚式に伴う供応費を﹁必要な生計﹂にあたると判示した前掲連邦行政裁判所一九九三年二月一八日判決をみるならば、ここでは需要の程度がかなり詳細に認定されることによって、給付額の決定に関する裁量に対して比較 的密度の大きい統制が及ぼされる結果になっていることがわかる。つまり、需要の程度の認定に際して、当該行事に かかわる低所得層の生活習慣、及び負担能力を考慮することが、社会扶助法の要請するところであるという同裁判所 の 見 解 に よ れ ば 、 一時給付の額は、近親者やごく親しい友人等の小規模な範囲で、しかも簡素な形で祝う費用に相当 するものとされる。より具体的には、結婚式については、新郎新婦、その近親者、及び結婚立会人がそろって飲食す る費用がこれにあたると判示されている。 及び寝具類の調達にかかる需要については、新品の購入が﹁必要な生計﹂に該当す るがゆえにその購入費用の支給が義務づけられているか、あるいは中古品の現物支給もまた裁量の範囲内にあるとし て許容されるかを判断する場面において右の留意点が見出される。たとえば、リュ I ネプルク上級行政裁判所一九八 つ ぎ に 、 被 服 ( と く に 平 服 ﹀ 、 41一一公的扶助行政の法的統制lの 理 論 白 六年四月一五日決定では、新品の被服、及びシ I ツ ・ カ バ 1 類の購入が、低所得層住民の生活習慣に合致することか ら、民間福祉事業団体の衣料庫からの中古品の供与により需要を充足させることは原則として期待可能でないとして、 需要の程度の認定に関して具体的かつ詳細な審査が行われてい一列。もっともこれに対して、連邦行政裁判所は一九九 一年三月一四日判決のなかで、要扶助者は原則として新品のマットレスを購入するための扶助請求権を有するとした 原審の判断は、社会扶助主体の裁量的判断を自己の判断に代置するもので、
BSHG
四条二項に反すると判示してい る。つまり、同裁判所は、給付の程度・形式に関する社会扶助主体の裁量を広く認めて、寝具の調達にかかる需要を 中古品の現物支給で充足するか否かについての判断は裁量の範囲内であると解しているのである。なお、本判決では、 当該裁量の臆越濫用を判断するための実体的基準、すなわち、このような形式で給付を受けることが、受給者の地位 の低下をもたらし、被差別感を抱かせる結果となるか否か、という基準も示されていれ w第7巻1号 42 扶助実務ですでに給付義務の認められてきた需要類型については、社会扶助主体のほとんどが行政運営の便宜のた め、需要類型ないし費目ごとに内部規則を定立し、そこで当該需要の標準的な程度、及び費用ないし給付形式を画一 的に設定している。それゆえつぎに、これに依拠した取扱いが、
BSHG
三一条にいう個別化原則に抵触しないか否か が問題となる。この点について、連邦行政裁判所の二つの判決を取り上げて検討することにしたい。 前掲連邦行政裁判所一九七O
年四月二二日判決では、社会扶助主体が、冬季暖房需要の程度を画一的に認定し、燃 料費用として一定額をすべての要扶助者に一律に支給するという取扱いの適否が争われた。原審は、需要の認定につ いて社会扶助主体に裁量を認めたうえで、その行使において個別事例の事情が十分に考慮されていない点に暇庇があ ると判示した。これに対して、連邦行政裁判所は、個別化原則に従い、当該認定において個別事情の考慮が要請され ることを認めつつ、それが社会扶助主体の裁量に委ねられるとする原審の見解を批判し、需要の程度の認定について も完全な司法審査を肯定した。つまり、同裁判所は、考慮が要請される個別事情を割酌したうえで、これを自ら認定 しなければならないと判示したのである。 もっとも、その判断が事実上困難であることについて、 一九六六年一一月三O
日判決のなかで同裁判所が扶助基準 の設定に関して示した見解を引用し、 つぎのように述べる。すなわち、需要の程度を決める諸要因のすべてを明確化 -具体化することが不可能であることに鑑み、社会扶助主体による暖房需要の程度の認定についても、扶助基準の設 の存在を前提にしなければならない。それゆえ、その限りにおいて、ふさ わしい注意を払って手続が行われたか否かが審査されるにすぎない、崎山この見解に従い、社会扶助主体が、需要の 定 と 同 様 に 、 一定の許容範囲[吋D
-R B
N ]
程度ないし給付額について基本額3
2
Z
5
2
5
m
]
を内部規則のなかで設定し、これに依拠して給付決定を行う場合、 一定の条件のもとで、司法審査の範囲が限定されることを認めている。その条件として示されているのは、まず、その基本額の設定にあたって、当該需要に関する十分な経験的評価が前 提とされていること、 つぎに、内部規則の定立、及び個別の需要認定において、個別化原則に基づく要請を充たして いることである。いかなるかたちで個別事情を考慮すべきであるかについてはつぎのような言及がある。すなわち、 第 一 に 、 一般的に暖房需要に影響を及ぼす種々の要因、たとえば世帯の規模、住居の大きさ、及び扶助要求者の健康 状態・年齢を考慮に入れなければならない。第二に、個別事例の注意深い観察をつうじて明らかとなるその他の特殊 公同﹀ 事情に配慮しなければならない。 右の一九七
O
年判決で連邦行政裁判所が示した見解は、BSHG
に基づきクリスマス手当を求める権利を同裁判所 がはじめて肯定した前掲一九八四年四月一一一日判決でも踏襲されている。この事案で社会扶助主体は、受給資格者の タイプに応じた段階的な基本額を設定する内部規則を定立していた。同裁判所は右の一九七O
年判決を引用したうえ で、行政運営の合理性・効率性という観点からも、個別事例ごとに需要の程度を決める諸要因をすべて挙げることは 必一一公的扶助行政の法的統制の理論。 およそ期待できないがゆえに、需要の程度を認定して給付額を決定するに際して、基本額に依拠することを許容する。 さらに、これが許容される条件のひとつとして、一九七O
年判決と同様に内部規則の定立において十分な経験的評価 が前提とされていることが挙げられているが、本判決ではこれに加えて、その評価は、クリスマス期における特別の 需要の程度を決める個々の要因に即して、受給資格者の各類型(世帯主、単身者、施設入所者など)ごとの調査を踏 まえなければならないことが、要求されている。他方、個別化原則に基づく個別事情への配慮というもうひとつの条 件については、受給者の類型や個別事例の特殊性に応じて、基本額に上のせ給付を行う可能性を聞いていた本件規則 の規定は、右の要請に合致するものと判断されている。 以上みたように、連邦行政裁判所は要件裁量を否定する立場を一時給付に係る需要の程度の認定についても堅持し第7巻1号-44 ている。しかし個別事例につき需要の程度を具体的に認定するのは事実上困難であるという理由に基づき、 一 定 の 条 件のもとで、内部規則に示された行政判断が尊重され、司法審査の範囲が限定されている。他の行政分野にみられる ﹁判断余地﹂のような法解釈論上の根拠づけが、ここでは全く示されていない。とはいえ、個別化原則等の社会扶助 法の基本原理から、内部規則、及びそれに基づく決定に対する司法審査のための枠組みないし基準が導き出されてい る点は注目に値する。 なお、個別事例に即応した需要認定という個別化原則に基づく考え方は、内部規則における需要認定に関する規律 の詳細さ・精散さにかかわらず妥当する。たとえば、 一時給付のなかで比較的大きな比重を占める被服需要について は、ドイツ公私扶助連盟が、要扶助者の性別・年齢層に応じた被服の種類・数・耐用期間について詳細なリストを作 成しており、たいていの社会扶助主体はこれを基礎資料として、標準的な需要の程度ないし費用を定める内部規則を 定立している。が、それにもかかわらず、個別事情を劃酌した上のせ需要の認定が義務づけられる場合がある。パー デン・ヴュルテンベルク上級行政裁判所一九九二年一月三一日判決では、内部規則で定められた標準額を上回る被服費 を求める請求権が認められるか否かが争われた。同裁判所は、当該規則は、需要の程度の認定の拠り所にすぎず、実 務で従来被服費が一律の金額で支給されてきたとしても、このような取扱いが、個別に被服需要を認定して給付決定 を行う可能性を否定するものではないとして、施設に入所している問、被服の損耗の度合いが大きかったという個別 事情は、需要の程度の認定にあたって前提としなければならず、標準額では不十分な場合、これを上回る給付を行わ ( U ) なければならないと判示している。ブレ l メン上級行政裁判所もまた、 一九九一年六月一一日判決で、同様の判示を 行っている。すなわち、被服費につき、実務で一律支給という取扱いがなされている場合であっても、個別の需要に 応じて給付を行うという一時給付の特性を失わない。 つまり、個別化原則に基づき、個別事例において付加的な需要
が算定される場合には、標準額を超える扶助につき請求権が認められるのである。 ﹁必要な生計﹂という要件にかかわる不確定法概念の解釈について、社会扶助主体に裁量が認められていないこと か ら 、 ﹁必要な生計﹂需要の認定に関する内部規則は解釈基準と解することができる。しかし、そこに示されている 行政判断の優越性を裁判所が承認していることから、当該規則は一定限度において対外的効力が認められている。も っ と も 、 一時給付に関しては個別化の要請がより強いことから、個別事例における特殊性に応じた﹁必要な生計﹂需 要が存在する場合には、内部規則から離れて需要認定を行う義務が社会扶助主体に生ずるわけである。他方、わが国 生活保護においても、後述するように、最低生活費の認定に関して一般基準以外に多くの内部通知が出されているが、 平等取扱いの要請が強くはたらく場面では、保護実施機関の裁量権の行使がこれらにより拘束される余地が認められ る。しかしその反面で、生活保護法九条にいう必要即応の原則に基づき、個別事情の配慮との調整、つまり個別事情 に応じた上のせ需要の認定もまた要請されるところであり、 一時給付をめぐるドイツ裁判例は、この点で参考になる 45-一公的扶助行政の法的統制の理論同 も の と 思 わ れ る 。 需要の程度の認定と関連してあらわれるのが、要否判定にかかわる問題である。最後にこれについて付言しておき R -、 。 φ h H B W ご時給付は、扶助要求者が経常給付を必要としないが、自己の能力、及び資金から生計を十分に確保することが できない場合にも支給される。﹂と規定する