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語の意味の生成過程における「対称性」の役割(<特集>認知科学と記号創発ロボティクス: 実世界情報に基づく知覚的シンボルシステムの構成論的理解に向けて)

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1.記号の意味システム

人はコミュニケーションの道具として記号を使ってい る.ただし,記号そのものというより,記号の意味を使 い,また,一つの記号だけではなく,いくつもの記号の 意味を関係付けて用いることでコミュニケーションを実 現している [Anzai 79, 安西 84].すなわち,人は,たく さんの記号の意味が関係付けられた「記号の意味システ ム」(system of symbol meanings)を使ってコミュニケー ションをしているといえる [Anzai 13, 安西 14, Nilsson 07].記号の意味システムとして一番身近なのは言語で あろう.我々の話す日本語や英語のような日常言語のほ かに,手話言語やコンピュータのプログラム言語も記号 の意味システムとして捉えることができる.本稿では記 号としての言語に関して,その意味の獲得過程において 大きな役割を果たしているであろう対称性を通して「記 号の意味システム」を考えたい. 子供はことばを学び,また同時にその概念を学ぶ.す なわち記号の意味と「記号の意味システム」を同時に獲 得していると考えられる [Devany 86].一般に子供のこ とばの獲得過程はバイアスに制約された学習であるとい われ,ことばの意味の推論に用いるバイアスは複数ある が,それらは論理的制約ではなく,ヒューリスティク スとしての制約であると指摘されている [Imai 94, 今井 97a, Imai 97b, 今井 07, 今井 08, 青木 08].例えば,こと ばが指示するのが対象の全体なのか,色などの属性なの か,部分なのか,素材なのかを一意に決定することはで きない.しかし,子供達は未知の対象にことばが付与さ れると,とりあえずそのことばは対象全体の名前なのだ と想定する.これを事物全体バイアスという [Markman 84].さらに,子供は新しい名前はすでに名前を知って いる事物ではなく,まだ名前を知らない,つまり名前が ついていない事物に対応付けるバイアスをもつ.これは 一つの事物に一つの名称というバイアスに起因している と考えられており,一事物一名称バイアスあるいは相互

排他性バイアス [Haryu 99, Haryu 02, Markman 88] と 呼ばれる. 人は,概念を生成し,使用することができる.特に, 自らのもつ概念を多くの事例に連合させることによっ て,概念と事例の関係として概念の意味を生成すること ができる [Johnson-Laiard 00]. その一方で,多くの事例 を(何らかの意味で)分類することによって概念を生成 するとともに,事例との関係としてその概念の意味を生 成することができる . また,概念の表現方法として言語, 特に語がよく使われる.このため,概念の意味と語の意 味とは同一視されることも多い [Anzai 13, Cartmill 14]. 例えば , 小さな子供でも,少数の事例それぞれに対して 概念のカテゴリーを表す記号を連合できれば,逆にカテ ゴリーを表す記号から事例をイメージすることが容易に できる [Dairoku 95].すなわち,実世界に存在する種々 なバナナの視覚的パターンに対して「バナナ」という言 語記号を連合させると,同時に意識することなしに逆の 連合,つまり「バナナ」という言語記号を与えることで, いろいろなバナナの視覚的パターンをイメージすること ができる.このような,概念のカテゴリー化における記 号とその意味の「対称性バイアス」が,言葉の学習の最 初期から現れることは,人の言語における大きな特徴で あり,この対称性を説明することは,言語の意味システ ムの生成過程を明らかにするための重要なステップにな ると考える.本論文では,語の意味の生成過程において, 対称性が重要な役割を果たしていることを議論するとと もに,対称性が人の知的活動,中でも「記号の意味シス テム」として重要な役割を果たしているであろうことを 指摘する.

2.語の意味の生成

子供が語の意味を学ぶ場面を考えてみる.Quine が 指摘したように語の意味を限られた事例から帰納的に推 論することは論理的に不可能な問題である [Harrad 90, Quine 60, Quine 62].しかし,一方でそのような困難

語の意味の生成過程における「対称性」の役割

Symmetry Reasoning Bias Accelerates Acquisition of the Meaning of

the Word

岡田 浩之

玉川大学

Hiroyuki Okada Tamagawa University.

[email protected], http://okadanet.org/

Keywords:

symmetry reasoning, word leaning, heuristic, connectionist model, iterative inversion.

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な事態に困惑している子供は見たことがない.子供達 はごく少数の事例から語の意味を適切に推論し,学ん でいくことは誰もが認めることである [Beasty 85].こ の Quine のパラドックスを解消するために,子供のこ とばの学習はバイアスに制約された学習であるという 理論が提唱され,広く受け入れられてきた.語意学習の 制約説によると人は初めて出会った語の意味としてあ らゆる可能性をすべて探索・検討するのではなく,語 の意味として適切な概念に関する信念をもち,その信 念によって探索すべき仮説空間を制約し,効率良く語 の意味を獲得しているが知られている [Carey 09].こ のような信念ともいうべき制約には,「語は部分ではな く事物全体を指す」という事物全体原理(whole object principle)[Markman 84] や「一つの事物には一つの カテゴリー名しか許されない」という相互排他性原理 (mutual exclusivity principle)[Haryu 99, Gelman 86,

Markman 88]などが知られている.これらの原理は何 れも論理的な誤りを含むが,人はあえてこのようなメタ 知識を利用し効率的に言語を獲得していると考えられて いる [Elman 98, Gigerenzer 00]. 著者は Sidman が指摘した刺激等価性 [Sidman 82] も このようなバイアスの一種だと考え,これまで検討を 行ってきた.刺激等価性は見本合せ課題などの条件性弁 別課題において訓練事例になかったような刺激間の派生 的な関係が成立する現象であり,図 1 において矢印で示 す六つの関係のうち,実線で表す二つの関係(バナナの 画を見せて文字列「バナナ」,文字列「バナナ」を見せ て,バ・ナ・ナと発話)だけを学習することで,線で示 す残りの四つの関係が学習することなしに成立すること である . 刺激等価性は刺激間の対称性(図 1 において文 字列「バナナ」を見せてバナナの画を推論.バ・ナ・ナ と聞かせると文字列「バナナ」を推論),推移性(バナ ナの画を見せてバナナと発話),等価性(バナナと聞か せるとバナナの画を推論)の三つの性質が同時に成立す ることと定式化されている.刺激等価性がすべての人に おいてほぼ成立するのに対して,刺激等価性の構成要素 のなかで特に対称性が人以外の動物において成立するの が困難であることが知られている [服部 08, 今井 08, 的場 08,村山 08, 中野 08, Oaksford 08, 友永 90, Tomonaga 08, 山崎 02, 山崎 08]. 刺激等価性を子供の語の意味の生成過程で考えてみ ると,小さな子供でも,少数の事例それぞれに対して概 念のカテゴリーを表す記号を連合できれば,逆にカテゴ リーを表す記号から事例をイメージすることが容易にで きる,ということである.さまざまなバナナの視覚的パ ターンに対して「バナナ」という言語記号を連合させる と,ほとんど意識下で逆の連合,つまり「バナナ」とい う言語記号を与えればいろいろなバナナの視覚的パター ンをイメージすることができる.このような,カテゴ リー化における記号とその意味の「対称性バイアス」が, 言語の学習の最初期から現れることは,人の言語におけ る大きな特徴であり,この対称性を理解することが,言 語の意味システムの生成過程を探究するための重要なス テップになると考えられる.

3.対称性推論のコネクショニストモデル

本章では,不良設定の逆問題である対称性を多層コネ クショニストモデルに最急降下法に基づく反復アルゴリ ズムである Iterative Inversion 法を適用し,対称性推 論の獲得過程を再現したモデルを紹介する [長田 94, 岡 田 03a].Iterative Inversion 法は多層コネクショニスト モデルに系の逆モデルではなく,系の順モデルを学習に よって獲得させておき,この多層コネクショニストモデ ルに誤差逆伝搬などの最急降下法に基づく反復アルゴリ ズムを適用することによって,不良設定の逆問題を解く というものである.バックプロパゲーションネットワー ク(back-propagation network)と呼ばれる標準的なコ ネクショニストモデルに,入力に対する出力結果と理想 出力の誤差信号をモデルの入力部分にフィードバックす る iterative inversion のアルゴリズムを導入したうえで, いろいろな角度から見たバナナの視覚的パターンを複数 それぞれすべて「バナナ」という言語記号が出力される ようにモデルを学習させた.すると,その後でモデルに 「バナナ」という言語記号を入力すると,バナナの視覚 的パターンが出力された.つまり,視覚的パターンを入 力とし言語記号を出力とする入出力関係の学習を行うだ けで,逆に言語記号を入力とし視覚的パターンを出力と する入出力関係が学習されたことになる.このモデルは, これまでに述べた記号と意味の対称性バイアスの現象を シミュレーションによって再現していると考えることが できる.提案するモデルは連想記憶モデルによるアブダ クション研究の成果やセンサフュージョン研究における 認識,運動指令の生成などの知見をもとに,高い非線形 学習能力を実現可能なモデルであり,その学習モデルが 不良設定の逆問題を解決する過程を観察することで,脳 における理解(順モデルの学習)と表出(逆モデルによ る想起)という双方向の処理過程のメカニズムとして対 称性を捉える可能性を示唆する. 図 1 刺激等価性

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提案するモデルは以下のように動く. Step1 入力層から出力層への前向き処理である系の順 モデルを誤差逆伝搬学習法(BP 法)により学習する. 図 2(1)順方向学習フェーズにおいては,バナナの 画を見せて,文字列「バナナ」を出力するように学習 することに相当する. Step2 以下,Step2 から Step5 までの繰返しは,後ろ 向き推論,すなわち本論文の主題である対称性推論を 行うことに相当する.対称性推論(図 2(2)対称性 推論フェーズにおいては,文字列「バナナ」を提示し て,バナナの画を推論することに相当する)では始め に適当な仮説に基づき,入力画像(図 2 ではバナナの 画)の初期値 s を決め,ニューラルネットワークの入 力層に与える. Step3 ここで,順方向の推論を行い,ネットワークの 最終段からの出力値 f(s)と教師データ d(図 2 では 文字列「バナナ」)の二乗誤差 U(s, d)を求める. U (s, d) = j {fj(s)− dj} (1) Step4 U(s, d)がある定数εより大きいとき,それを 小さくするように次式に従い,最急降下法により入力 データ s を修正する. si(t ∆+ t) = si(t)− K ∂U (s, d) ∂si (2) ただし,K は定数とする.  ここで,右辺第 2 項は次式のように展開できる. ∂U (s, d) ∂si = 2 j {fj(s)− dj} ∂fj(s) ∂si (3) ここで,右辺の偏微分は siが変化したときに出力デー タ f(s)がどの程度変化するのか,すなわり,ネットワーj クの入力層の一つのユニットの値の変化が,出力層の一 つのユニットの出力値にどの程度の影響を及ぼすかとい う感度を表現していると考えられる.この偏微分は以下 のように計算することができる. ● 入力層ユニット i への入力値を Si入力層ユニット i と中間層ユニット k との間の結合 の重みを Wki中間層ユニット k への入力値を Hki WkiSi中間層ユニット k からの出力値を hk=σ(Hk)(σは ユニットの出力関数) ● 中間層ユニット k と出力層ユニット j との間の結合 の重みを Vjk出力層ユニット j への入力値を FjkVjkhk出力層ユニット j からの出力値を fj=σ(Hj)と定義 すると,次式が得られる. ∂fj(s) ∂si = dfj dFj ∂Fj ∂si = σ (Fj) k Vjk ∂hk ∂Si = σ (Fj) k Vjkσ (Hk) ∂Hk ∂Si = σ (Fj) k vjkσ (Hk)wki (4) したがって,以下の式を得る. ∂U (s, d) ∂Si = 2 j {fj− dj}σ (Fj) k vjkσ (Hk)wki (5) Step5 更新した s を初期値として,Step3 に戻る. 上記の処理を繰り返すことにより,バナナの画を見せ て,文字列「バナナ」を学習(順方向の学習)した後に, 特別に逆方向の学習を行うことなく,文字列「バナナ」 を見せられるとバナナの画像を推論することが可能にな る.すなわち,対称性推論の能力を有する学習モデルを 実現できる.

4.実   験

計算機シミュレーションを行い,提案したモデルが対 称性の推論能力を有することを確認した.ここでは,い くつかのバナナの画を見せて,文字列「バナナ」を学習 することにより,その対称性である,文字列「バナナ」 を与えると,バナナの画を推論することが実現できるこ とを示す. 順方向の学習フェーズではさまざまなバナナの画(シ ミュレーションでは基本となるバナナの画像を 15 度ず つ回転させた 24 種類のバナナの画像をそれぞれ 0.9 倍, 等倍,1.1 倍に縮小,拡大した合計で 72 枚の画像を学習 図 2 対称性推論のコネクショニストモデル

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データとした)を入力層の提示し,すべての画像に対し て出力層に文字列バナナが出力されるように学習した. 学習フェーズでの出力と教師データの誤差が十分に減少 したら順方向の学習フェーズを終了し,対称推論の実験 を行った.この実験では,学習フェーズにおいて 10 000 epochsの繰返し学習を行った. 対称性推論フェーズでは,入力層に与える画像の初期 値として図 3 の(a)初期値を使い,Iterative Inversion 法により文字列バナナからバナナの画像が推論できるか を確認した. 図 3 の(b),(c),(d)に計算機シミュレーションの 結果を示す.図 3 の(a)を初期値として与えたところ, 100回の繰返し試行で(b),500 回の繰返し試行で(c), 1 000回の繰返し試行で(d)の画像を推論することができ, 提案するモデルが対称性推論を行えることが示された.

5.対称性が知識をネットワーク化する

本論文では,語の意味の生成過程における対称性の 役割を考えてきた.対称性は相互排他性バイアスや事物 全体バイアスなどの語意学習バイアスの一種であると捉 え,語の意味の獲得の過程で重要な役割を果たしている 可能性を指摘した.ここでは,対称性バイアスが言語領 域に限らず人の認知活動一般に見られる非論理的なバイ アスであるという立場に立ち,思考や推論といった高次 認知機能においても対称性が重要な役割を果たしている であろうことを議論する.特に,このような非論理的な バイアスである対称性を人だけが身に付けているとう事 実は,人に特有の柔軟で非論理的な推論の基盤であるこ とをうかがわせ興味深い. 人の推論能力がこれほど優れ柔軟性に富んでいるかに ついては,言葉の役割が大きいと著者は考えているが, そのうえで,対称的に物事を考える傾向というのはどう いう意味をもつのだろう.一般に,人以外の動物の脳内 では時系列データの処理に適した遷移ルールの記憶に基 づいた一方向の推論を行っていると考えられている.こ のような遷移ルールの記憶に基づく推論に加え,人の推 論では既知のルールに対して「対称性」を適用すること で,その反対方向のルールを自動的に利用することがで き,このような能力は人以外の動物では極めて貧弱であ ると考えられている.ここで,ルールの集合を知識と考 えたときに,人以外の動物のように一方向的な遷移ルー ルだけを用いると,知識は全体として疎な構造(階層 的な構造など)にしかならない [Goldfalb 13, Karmilof-Smith 95, Kirby 02].一方で,知識間の対称性を導入す ることにより知識は密結合の双方向ネットワークとな り,知識の再利用性が格段に向上する.これは,近年の インターネットの爆発的な普及になぞって語ることがで き,つまり,推論過程への対称性の導入は,知識と知識 の間にハイパーリンクを導入したようなものであり,知 識間の双方向のネットワーク構造と対称性推論によっ て,人と動物を区別し特徴付ける爆発的な知識の獲得が 可能になったことが説明できる.

6.ま  と  め

本稿では刺激等価性の計算モデルの議論のみならず人 の認知過程を語るうえで双方向認知という考えが重要に なってくるであろうことを指摘し,対称性を逆モデルが 1対多の関係にあり解が一意に決まらない不良設定問題 と捉え,理解(順モデルの学習)と表出(逆モデルによ る想起)という双方向の処理過程として考えることを提 案した.脳における双方向情報処理に関しては,乾らは 視覚領野間には双方向の結合が存在し,光学と逆光学の 計算が行われることにより逆問題を解いているのではな いかと述べている.同様な議論は随意運動制御の問題で もなされており,川人は小脳の運動学習の計算モデルと してフィードバック誤差学習法を提案し,不良設定な逆 ダイナミクスや逆キネマティクスが解決できることを示 した.また,近年話題になっているミラーニューロンに 関する議論でも運動の観察(理解)と運動の生成(表出) が一つの処理過程で行われている可能性が指摘されてお り,理解と表出の双方向認知過程の存在をうかがわせる. このように人の理解,すなわち脳の理解において双方向 の情報処理過程の重要性が従来から指摘され [Marr 82], 数多くの成果が得られているが,刺激等価性の議論も脳 における双方向認知過程として捉え,視覚や運動系の研 究成果と併せて考えることで言語獲得のみならず,人の 認知過程の解明に貢献できるものと考える. 岩橋 [岩橋 03, 岩橋 11, 岩橋 12] は日常生活での共有 経験を反映するコミュニケーションは,対話者による環 境の理解と,対話者間の相互理解を基盤として成立する 仮定し,相互信念の共有に基づくコミュニケーションの 重要性を指摘した.対話者はお互いに,音韻,単語,文法, 物体のカテゴリー,動作,タスクに関する知識,語用論 的知識など,コミュニケーション能力を構成する要素(信 念)をインクリメンタルに獲得し,それらを一つの信念 図 3 計算機シミュレーションの結果

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システムとして統合していく.さらに,対話者は,この 信念システムに基づいた発話の生成と理解のプロセスを 通して,相手の信念システムの状態を推測し,自らの信 念システムを修正する.対話者間で,互いにこのような 調整を続けることにより,状況に応じて適切に発話を生 成・理解し,行動できるようになることをロボットを用 いたシミュレーション実験で示した.岩橋はシミュレー ション実験で明らかにした,実世界における人間とのイ ンタラクションを通して学習によりコミュニケーション 能力を獲得する枠組みにおいても,本稿で繰り返し述べ ている対称性が重要な役割を果たすと考えられる. 終わりに,対称性は生まれつき先天的に備わっている のか,それとも発達の段階で学習により獲得されるのか は明らかではないが,このような対称性の獲得は,おそ らく言語獲得の過程において重要な役割を果たしている であろう.複数のモダリティー間の直接の情報統合は, 双方向のリンクであるために対称性が成立しない.これ に対して,言語を介在としたモダリティー間の情報統合 は,言語をサーバとして各モダリティーをクライアント としたような構造になるために,必然的に対称性が発生 する.こう考えると,人が対称性を獲得したことは,過 去のある時点で人と動物を決定的に区別するものとなっ た可能性が大であろう.刺激等価性の創発的成立は語意 獲得の場面のみならず,カテゴリー形成など人の発達段 階において広く観察される事実であるにもかかわらずそ の発達における成立の過程や刺激等価性が人の語意獲得 や推論に果たす役割は明らかにされていない.今後は心 理および脳科学実験の結果とモデル研究を併せてその解 明を目指したい. 謝 辞 本研究の一部は JSPS 科研費 25330176 の助成を受け た.また,国立研究開発法人科学技術振興機構(JST), CRESTの支援によって行われた.

◇ 参 考 文 献 ◇

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Record, Vol. 45, pp. 3-21(1995) 2015年 11 月 9 日 受理

著 者 紹 介

岡田 浩之(正会員) 1986年(株)富士通研究所入社.脳型アーキテクチャ を応用した知能ロボット開発に従事.1990 ~ 2000 年新情報処理開発機構(RWCP)プロジェクトに おいて,「柔らかな知能処理」に関する研究に従事. 2002年東海大学理学部助教授.2006 年玉川大学工 学部教授,現在に至る.赤ちゃんの発達とロボット を融合させた研究に興味をもつ.ロボットを通じて, 人間を知ることが目標.2008 年,2010 年ロボカップ世界大会 @ ホームリー グ優勝.博士(工学).

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