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グローバル経済の陰画「治安の悪化」に向き合う (巻頭エッセイ)

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Academic year: 2021

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グローバル経済の陰画「治安の悪化」に向き合う (

巻頭エッセイ)

著者

白戸 圭一

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

261

ページ

1-1

発行年

2017-06

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00049204

(2)

日本の新聞社は長年、原則として新人記者に事 件取材を担当させてきた。いわゆる「サツ(警察) 回り」である。22年前、大学院の修士課程を終え て新聞社入りした私を待っていたのは、昼夜の別 なく殺人、強盗、薬物犯罪などを追いかける日々 だった。 こうした警察偏重ともいえる記者教育には多く の批判があり、その批判には首肯するところも多 いが、それでも新聞社が若い記者に「サツ回り」 を担当させてきた理由の一つは、「事件は時代を 映す鏡」であることを実感させるためだった。 同じ環境下でもすべての人が犯罪者になるわけ ではないことを思えば、犯罪は究極的には個人の 性格や資質に起因する問題といえるかもしれない。 しかし、同時に犯罪には、犯罪者の個人的事情を 超えた社会的要因が作用している場合もあるだろ う。それは時に貧困かもしれないし、戦争が人々 に残した心の傷かもしれない。あるいは物質的繁 栄の陰で深まる都市住民の孤独かもしれないが、 多くの場合、その正体は判然としない。だからこ そ、一つの事件を入り口に、犯罪を生み出す時代 背景に迫り、その社会が直面する問題を炙り出す 努力を払うべきではないか。事件取材は、そうし た問題意識に支えられてきた。 本号の特集テーマ「新興途上国地域における治 安問題―日常的な治安に関する研究の可能性 ―」に通底する問題意識は、こうしたジャーナ リズムの世界で共有されてきた問題意識と多分に 重なるところがあるように思う。 プロフィール しらと けいいち/三井物産戦略研究所主席研究員 毎日新聞ヨハネスブルク特派員、ワシントン特派員等を経て現職。主な著作に『ルポ資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄』(東洋経済新報社、2009年)、 『日本人のためのアフリカ入門』(ちくま新書、2011年)など。 1990年代以降、ヒト、モノ、カネ、サービス、 情報が国境を越えて強く結合する「グローバル経 済」が成立したことにより、物質的繁栄は世界に 拡大した。携帯電話の通話網は世界を覆い、ニュー ヨークのアパート住民とアフリカ大陸内陸部の村 人が、インターネットで同じコンテンツを視聴で きる時代となった。 だが、こうした「グローバル経済」の拡大とと もに、新たに顕在化してきた負の問題もある。そ の一つが、新興国における治安の悪化である。個 人的な体験に即していえば、2004年から4年間駐 在していた南アフリカでは、殺人認知件数が日本 の20倍近い年間2万件近くに達し、治安の悪化で 昼でも歩くのが困難な地域が都市部に存在する。 アフリカ経済の盟主としてBRICSの一翼を担う国 となった南アフリカで、何故このような「治安の 崩壊」が起きたのか。南アフリカの現実は、経済 発展と治安の関係に関する議論の必要性を示唆し ている。 周知のとおり、精神医学や心理学の観点からの 個人の犯罪動機の解明に取り組む研究は、既に膨 大な件数が存在する。これに対し、新興国の治安 情勢に社会科学的な視点から斬り込んだ先行研究 は国際的にも決して多くない。だが、今こそ、そ うした研究が必要とされているのではないか。東 西冷戦終結後ほぼ四半世紀にわたってグローバル 化の道を突き進んできた私たちは、次の四半世紀 に進む前に、グローバル経済の陰画に正面から向 き合うべきだと思う。 アジ研ワールド・トレンド 2017 7

エッセイ

巻頭

グローバル経済の陰画

「治安の悪化」に向き合う

白戸圭一

1

アジ研ワールド・トレンド No.261(2017. 7)

参照

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