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小学校6年生を対象とした喫煙防止教育と飲酒防止教育をともに行った場合の効果の検証: 沖縄地域学リポジトリ

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(1)

Author(s)

山代, 寛; 柴田, 忠佳

Citation

沖縄大学人文学部紀要(21): 35-47

Issue Date

2018-03

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/22347

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〈論文〉

小学校6年生を対象とした喫煙防止教育と

飲酒防止教育をともに行った場合の効果の検証

 

山代 寛

1 *

柴田 忠佳

2 * 要 約  喫煙防止教育の先行研究において、その単独での効果の検証は行われているが、 飲酒防止教育とともに行った場合の効果の検証は行われていない。そのため,本研 究では、小学校 6 年生を対象として、喫煙防止教育と飲酒防止教育を同一講義内で ともに行うことで効果が上がるかどうか,また,両者に相関(関連)があるのかを 検証することとした。  喫煙防止教育の効果の判定には、KTSND 小学校高学年標準版を使用し、飲酒防 止教育の効果の判定には、新規に OSACS 小学校高学年標準版を作成し使用した。  今回の調査では、「喫煙防止教育のみ行った場合」と「喫煙防止教育と飲酒防止教 育をともに行った場合」を比較した結果、有意な教育効果の差は認められなかった が、両教育に相関はあると考えられることから、講義内容の組み合わせを工夫する ことで教育効果の向上が期待される。 キーワード:喫煙防止教育,飲酒防止教育,KTSND,OSACS,依存症予防教育 はじめに  喫煙防止教育について,遠藤・加濃ら (2007) に代表される先行研究では,その単独での効果 の検証は行われているが,飲酒防止教育とともに行った場合の効果の検証は行われていない。  そのため,本研究では、喫煙防止教育と飲酒防止教育を同一講義内でともに行うことで効果が 上がるかどうか,また,両者に相関(関連)があるのかを検証することとした。  筆者らは長らく喫煙防止教育に関わってきたが、沖縄県民の早世に影響しているのはタバコだ けでなくアルコールや食など様々な依存症であるという認識のもと、5 年前に本学に依存症の援 助職の交流と、支援の幹の部分を学ぶことを目的として ANDOG ネットワークを立ち上げて活 動している。その活動の一環として沖縄県から委託された次世代の健康教育の副読本づくりに携 わる中で(次世代の健康教育検討委員会 生活習慣班 班長山代寛ほか 2015)、教育の現場や家庭

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にタバコをはじめとする依存症の真実が十分伝わっていないことを認識し、タバコ、アルコール を別のものとして教育するのではなく、依存症に共通する幹の部分での教育が必要であると考え ている。小学校現場からも薬物乱用防止教育としてタバコとアルコールを同時に授業してほしい という要望が届くようになり、出前講座などで上記副読本などを用いて両教育を同時に行う機会 も増えていることから、今回は喫煙防止教育の効果の指標として使われることの多い加濃式社会 的ニコチン依存度調査票(KTSND)(小学校高学年標準版)と筆者らが作成に関与した沖協版 社会的アルコール認識度調査票 (OSACS)(小学校高学年標準版)を組み合わせて検証することで、 小学生に対する依存症予防教育のあり方について考察した。  尚、本研究は、筆者らが検討してきた学校における喫煙防止教育等を含む健康教育の多数の実 践から、喫煙防止教育と飲酒防止教育の事例を取り上げるものである。 1.喫煙防止教育と飲酒防止教育の先行研究  喫煙防止教育は、小学校、中学校、高校、大学と学校の各段階において数多くの先行研究が存 在する。最近の知見の一例としては、赤田(2016)は、小学生を対象として喫煙防止に関する 授業の教育効果とその家庭への波及効果について検証している。今野ら(2012)は、KTSND-youth を使用し小学校 6 年生に行った喫煙防止教育の効果について報告している。後藤ら(2015) は、中学校 1 年生を対象として喫煙に対する意識と喫煙防止授業の評価を報告している。奥田 ら(2012)は、喫煙防止教育前後における高校生の喫煙に対する態度と意識の変化について、 また、大塚ら(2012)は、高校生の将来喫煙のリスクに対応した喫煙防止教育の効果を検討し ている。山口ら(2017)は、大学生を対象とした意識調査を行い KTSND の質問項目に着目し 喫煙防止教育のあり方について考察している。森本ら(2015)も大学生を対象とした意識調査 を行い、喫煙防止教育の有効な教育内容を考察している。松浪ら(2016)は、看護学生を対象 とした喫煙防止教育の研究について報告している。また、仲野ら(2011)は、喫煙防止教育に おける教材研究について報告している。  これに対し、飲酒防止教育あるいはその意識調査については、喫煙防止教育に比べ先行研究の 数は少ない。小学生を対象とした飲酒防止教育については、赤田ら(2012)が飲酒防止の授業 開発の試みについて報告している。さらに赤田(2015)は、アルコール飲料のテレビ CM の特 徴と未成年者飲酒防止の注意表示に対する未成年者の判読率に関する調査についても報告して いる。また、江藤ら(2013)は、中学生において親子で学ぶ飲酒防止学習プログラムを実施し、 その実施後に生徒と保護者へのアンケートにより、プログラムの必要性を検討した。さらに、江 藤ら(2011)は、ICT を活用した薬物乱用防止教育プログラムについて報告している。北田(2011) は、愛知県内の 4 年生大学の学友会に所属する学生 88 名を対象に飲酒行動と態度に関する研究 を行った。上村ら(2012)は、若年女性の飲酒の問題とその対策を考える基礎資料を得ること を目的に、愛知県内にある女子大学3校、共学大学4校における人文科学系の学生を対象として、 飲酒行動と意識に関する調査を行った。長島ら(2000)は、初飲時期の低年齢化と学校におけ るアルコール教育について考察している。 2.喫煙防止教育と飲酒防止教育の小学校における重要性  喫煙防止教育については、西岡(2005)、辻ら(2008)の先行研究においてその開始時期に ついて早い方が良いと指摘がされていることから、小学校での重要性が最も高いと思われる。

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 また、飲酒防止教育については、沖縄では、2017 年 2 月小学校 6 年生の男子生徒が 3 人乗り でバイクを飲酒運転し、転倒、うち 1 人が死亡した事例があり、小学生の飲酒が大きな社会問 題となっていることや平成 22 年少年非行等の概況によると沖縄県の飲酒で補導された少年は、 少年人口 1000 人あたり 7.0 人で全国ワースト1位となっていることから(沖縄県福祉保健部健 康増進課 2013)、沖縄における小学校における飲酒防止教育の必要性は非常に高まっている。  未成年者のアルコールの影響として、脳の神経細胞をより破壊しやすくなることや記憶機能の 低下をもたらすこと、危険な行動に走りやすくなること、アルコール依存を起こしやすくなる等 が医学的に明らかになって、これらを防ぐ意味でも特に小学校での教育が重要になると思われる。  先行研究においては、喫煙防止と飲酒防止の両教育をともに行い、その効果を評価した研究は ほとんど行われていないことから、本稿では小学生を対象として同一講義内で両教育をともに 行った場合の効果を検証することとした。 3.加濃式社会的ニコチン依存度調査票 (KTSND) と沖協版社会的アルコール認識度調査票 (OSACS)  社会的ニコチン依存 (Social nicotine dependence) とは、2003 年に加濃正人が禁煙指導メー リングリストで提唱した新しい概念である。「喫煙を美化、正当化、合理化し、またその害を否 定することにより、文化性を持つ嗜好として社会に根付いた行為と認知する心理状態」と定義し ている(吉井・加濃ら 2004 2007)。喫煙の害を過小評価し、タバコの効用を錯覚する社会や集 団の認知の歪みを意味し、非喫煙者のタバコを容認する態度も含む概念である(吉井・加濃ら 2007)。

  加 濃 式 社 会 的 ニ コ チ ン 依 存 度 調 査 票 (The Kano Test for Social Nicotine Dependence: KTSND) は、喫煙者・非喫煙者の社会的ニコチン依存を評価するための簡易質問票である。 2004 年 に KTSND Version 1 が 発 表 さ れ た が( 吉 井・ 加 濃 ら 2004)、 そ の 後 2006 年 に Version 2 が作成された(Yoshii, et al 2006)。この調査票を使用した結果、点数が高いほど喫 煙を美化、合理化し、害を否定する意識が強いとされている。禁煙の成功率予測、心理療法(例: リセット禁煙)の適用判定、禁煙達成者の再喫煙可能性の予測、喫煙者における認知の歪みの実 証の他に、禁煙指導や禁煙講演 ( 喫煙防止教育 ) の効果判定に用いられている。30 点満点であり、 禁煙指導・教育等での目標点は合計 9 点以下とされている(加濃式社会的ニコチン依存度調査 票(KTSND)2007)。 その一方で、アルコール依存症回復支援領域では、アルコール依存症やハイリスク飲酒者をス クリーニングするテスト・尺度は多数開発されているが、アルコールに対する社会的認知を計る 尺度は開発されていなかった。そのため、ANDOG メンバーである小松ら(2014)は、アルコー ル依存症版の KTSND に相当する尺度として、沖協版社会的アルコール認識度調査票 (OSACS) ( 表2参照 ) を新たに開発した。

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表1 加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND) 設問 1:そう思う (0), ややそう思う (1), あまりそう思わない (2), そう思わない (3) 設問 2-10:そう思う (3), ややそう思う (2), あまりそう思わない (1), そう思わない (0) 表2 沖協版社会的アルコール認識度調査票(OSACS) 設問 1:そう思う (0), ややそう思う (1), あまりそう思わない (2), そう思わない (3) 設問 2-10:そう思う (3), ややそう思う (2), あまりそう思わない (1), そう思わない (0) 4.沖協版社会的アルコール認識度調査票 (OSACS) の小学校高学年標準版の作成  KTSND は、さらにいくつかのバージョンが作成されたが、小学生を対象とした喫煙防止教育 の効果判定には、調査票の文言を平易にした小学生用のバージョンが使用されている(調査票1 参照)(遠藤・加濃 2007)。筆者らは小松らとともに OSACS の小学校高学年標準版(調査票2

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参照)を作成し、小学校における飲酒防止教育の効果の判定に活用することとした。  これまで、喫煙防止教育の効果を判定した先行研究は多数ある。しかし、飲酒防止教育の効果 を判定する研究の進捗は、それに比べ遅れている状況にあった。そこで、 OSACS(小学校高学 年標準版)を導入して、小学校における飲酒防止教育の効果の判定を行うとともに、喫煙防止教 育と飲酒防止教育を同時に行った場合の効果を検証する新規調査を行うこととした。 調査票1 加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND)(小学校高学年標準版) 設問 1:そう思う (0), 少しそう思う (1), 少し違う (2), 違う (3) 設問 2-10:そう思う (3), 少しそう思う (2), 少し違う (1), 違う (0) 調査票2 沖協版社会的アルコール認識度調査票 (OSACS)(小学校高学年標準版) 設問 1:そう思う (0), 少しそう思う (1), 少し違う (2), 違う (3) 設問 2-10:そう思う (3), 少しそう思う (2), 少し違う (1), 違う (0)

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5. 対象と方法  はじめに、2016 年 12 月、沖縄県 A 小学校 6 年生 93 名を対象に喫煙防止教育のみを行い、 その前後に KTSND 小学校高学年標準版を含むアンケート調査(調査票1及び3)を行った。 KTSND の配点は問 1 のみ左から 0、1、2、3 点、問 2 から問 10 までが左から 3、2、1、0 点、 合計 30 点満点である。喫煙防止教育前に、問 1 から 10 までの質問に対して自分が最も近いと 思う番号を〇で囲むように指示した。問 11 により本人の喫煙状況を、問 12 により家族の喫煙 状況を、問 13 により本人の電子タバコの喫煙状況を、問 14 により家族の電子タバコの喫煙状 況を調査した。  翌年、上記 93 名が卒業後、2017 年 6 月、同 A 小学校新 6 年生 88 名を対象に喫煙防止教育 と飲酒防止教育を同一講義内でともに行い、講義の前後に KTSND( 小学校高学年版 ) を含むア ンケート(調査表 1)及び OSACS( 沖縄版社会的アルコール認識度調査票小学校高学年版 ) を含 むアンケート調査(調査表 2)及び(調査表 4 及び 5)を実施した。OSACS の配点は KTSND と同様に問 1 のみ左から 0、1、2、3 点、問 2 から問 10 までが左から 3、2、1、0 点、合計 30 点満点である。喫煙については前年同様に、問 1 から 10 までの質問に対して自分が最も近いと 思う番号を〇で囲むように指示した。問 11 により本人の喫煙状況を、問 12 により家族の喫煙 状況を、問 13 により本人の新型タバコまたは電子タバコの喫煙状況を、問 14 により家族の新 型タバコまたは電子タバコの喫煙状況を調査した。飲酒については問 1 から 10 までの質問に対 して自分が最も近いと思う番号を〇で囲むように指示した。問 11 により本人の飲酒状況を、問 12 により家族の飲酒状況を調査した。また、講義後に問 11 により、将来タバコを吸っている と思うか、将来アルコールを飲んでいると思うかを調査した。最後に問 12 により今回の授業の 総合的な満足度を調査した。  以上、2つの講義の結果を比較することで、喫煙防止教育と飲酒防止教育を同じ時間帯にとも に行った場合の効果の検証することとした。尚、2 つの講義は、年度が違うため、喫煙防止教育 の授業内容は同じだが、対象は異なる児童である。2017 年には飲酒防止教育の授業が加えられ ている。  教育前後の KTSND 及び OSACS の合計値の比較は、対応のあるt検定を実施した。教育前 後の KTSND 及び OSACS の 10 個の質問の平均値の比較は、Wilcoxon の符号順位検定を実施 した。KTSND 及び OSACS の合計値の低下に対する各設問項目の寄与度を計算した。寄与度と は、合計値の平均値の変化率に対して、各質問項目がどれほど寄与しているか(貢献度)を示す 統計量である。「喫煙防止教育のみ行った場合」と「喫煙防止教育と飲酒防止をともに行った場合」 の教育後の KTSND の合計値の比較は、対応のないt検定を実施した。  また、スピアマンの順位相関係数を求め、タバコとアルコールの選好の相関、喫煙防止教育 と飲酒防止教育の教育後の KTSND 及び OSACS の合計値の相関を検証した。データ解析は、 BellCurve for Excel (Ver.2.14) を使用した。

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調査票3(喫煙防止教育のみを行った時に使用)

尚、筆者のその後の調査票については、「電子タバコ」に関する質問は、調査票4のように 「新型タバコまたは電子タバコ」という表現を使い調査を行っている。

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調査票5(喫煙防止教育と飲酒防止教育をともに行った時に使用) 6.結果 結果1 ( 喫煙防止教育のみ行った場合 ) (1) KTSND 合計値の平均値 5.871 ± 4.228 → 4.204 ± 3.889 (2) KTSND の寄与度(寄与度各質問項目の合計)は、-0.284 (3) 各質問項目の KTSND 平均値、寄与度と検定結果 結果2 ( 喫煙防止教育と飲酒防止教育をともに行った場合の喫煙防止教育の結果 ) (1) KTSND 合計値の平均値 6.125 ± 4.347 → 4.557 ± 4.446 (2) KTSND の寄与度(寄与度各質問項目の合計)は、-0.256 (3) 各質問項目の KTSND 平均値、寄与度と検定結果

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結果3 ( 喫煙防止教育と飲酒防止教育をともに行った場合の飲酒防止教育の結果 ) (1) OSACS 合計値の平均値 7.875 ± 4.0195 → 4.977 ± 4.253 (2) OSACS の寄与度(寄与度各質問項目の合計)は、-0.368 (3) 各質問項目の OSACS 平均値、寄与度と検定結果 結果4   「喫煙防止教育のみ行った場合」と「喫煙防止教育と飲酒防止教育をともに行った場合」の教 育後の喫煙防止教育の効果 (KTSND 合計値 ) の効果を比較するため、両者の KTSND 合計値に ついて、対応のないt検定を行った結果、有意な差は認められなかった。 結果5 教育後のスピアマンの順位相関分析の結果  教育後に行ったタバコについてのアンケート「自分は将来タバコを吸っていると思う」と、教 育後に行ったアルコールについてのアンケート「自分は将来アルコールを飲んでいると思う」に ついて、スピアマンの順位相関係数ρを求めたところ、0.427 となった。また、順位相関係数の 検定を行った結果、タバコとアルコールの選好に有意な相関があった。(P < 0.01) 結果6 喫煙防止教育と飲酒防止教育の教育後の合計値の順位相関分析の結果  喫煙防止教育後の KTSND 合計値と飲酒防止教育後の OSACS 合計値について、スピアマン の順位相関係数ρを求めたところ、0.704 と相関が認められた。また、母相関係数の無相関の検 定を行った結果、喫煙防止教育と飲酒防止教育に有意な相関があった。(P < 0.01) 結果7 調査票3, 4, 5に関する結果の概要 (1) 喫煙防止教育のみ実施の場合 (2016 年 12 月 ) 有効な回答をした 93 名中 ①タバコを時々吸う者2名、吸ったことがある者4名 ②電子タバコを時々吸う者1名、吸ったことがある者7名 ③家族にタバコを吸う者がいる者 51% ④家族に電子タバコを吸う者がいる者 10% (2) 喫煙防止教育と飲酒防止教育両方を実施の場合 (2017 年 6 月 ) 有効な回答をした 88 名中 ①タバコを吸ったことがある者3名

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③家族にタバコを吸う者がいる者 65%  ④家族に新型または電子タバコを吸う者がいる者 18% ⑤自分は将来タバコを吸っていると思う者4名 ⑥アルコールを飲んだことがある者 20 名 ⑦家族にアルコールを飲む者がいる者 89% ⑧自分は将来アルコールを飲んでいると思う者 16 名 ⑨授業に対する満足度(満足とやや満足)91% 7.考察  小学校 6 年生を対象として、「喫煙防止教育のみを行った場合」と「喫煙防止教育と飲酒防止 教育をともに行った場合」の教育効果を検証した。いずれの場合も KTSND 小学校高学年標準 版及び OSACS 小学校高学年標準版の合計値の平均値については有意な教育効果が認められた。  しかし、各設問については、「喫煙防止教育のみを行った場合」には 5 項目、「喫煙防止教育 と飲酒防止教育をともに行った場合」の喫煙防止教育には 7 項目、飲酒防止教育には 3 項目に、 教育効果が有意でないものが認めれた。このうち、KTSND 小学校高学年標準版質問 1「タバコ をすう人は、タバコをやめたくてもやめられません」と質問 5「タバコをすうと楽しいことが増 えることもあります」、OSACS 小学校高学年標準版質問 1「お酒の飲みすぎで体を壊して入院 を繰り返す人は、お酒をやめたくてもなかなかやめられないアルコール依存症という病気かもし れません」と質問 5「眠れない時は、ねむり薬よりもお酒を飲む方が安全で健康に良いです」は、 いずれのケースにおいても有意な結果は得られなかった。  質問 1 については、北田ら(2014)が大学生を対象にした研究ではあるが、KTSND の質問 1 について、喫煙行動選択リスクとして高値を示したことを報告している。 また、北田ら(2014) は KTSND の質問 7 についても高値を示したことを報告し、質問 1 に否定的(タバコの害の否定) で、質問 7 に肯定的(効用の過大評価)な意識を持つ者は「喫煙予備群」である可能性が高い と述べている。本研究においては、喫煙防止教育と飲酒防止教育をともに行った場合の喫煙防止 教育の質問 7 が有意な教育効果がなかったことから、質問 1 の結果と合わせて、対象の児童達は、 「喫煙予備群」の可能性を否定できないと考えられた。  「喫煙防止教育のみ行った場合」と「喫煙防止教育と飲酒防止教育をともに行った場合」の教 育後の喫煙防止教育の効果 (KTSND 合計値 ) の効果を比較検定したが、有意な差は認められな かった。喫煙防止と飲酒防止をともに行った際、喫煙防止の効果が単独の場合より上がるという 結果は今回は得られなかった。これは授業時間はいずれも 45 分と限られており、喫煙防止教育 に要する時間が、両教育をともに行った場合には単独の場合と比較し半分になってしまうためと 思われた。ただし、両者とも KTSND の教育等での目標値9点以下については大きく下回るこ とができたという点では、半分の時間で効果を発揮できているとすれば、効率的な授業ができた とも解釈できる。また、寄与度について見ると、「喫煙防止教育と飲酒防止教育をともに行った 場合」の飲酒防止教育が -0.368 と最も優れた値を示していることから、喫煙防止教育の方が飲 酒防止教育に対し効果を上げさせた可能性がある。そのため、今後は飲酒防止教育のみと両方を 行った場合の比較についても検討したい。  また、タバコとアルコールについて将来を問う質問と、喫煙防止教育と飲酒防止教育の教育後

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の合計値のいずれでも相関が認められたことは、両教育のあり方を研究する上で、貴重な貢献と なり得ると思われる。今後より効果を上げるため、両教育をともに行う際の内容の組み合わせに ついても検討する必要がある。  また、今回は新規に作成された OSACS 小学校高学年版を使用して飲酒防止教育の効果を検証 したが、喫煙防止教育の効果の判定に十分な実績がある KTSND と教育前後でほぼ同様な数値 の変化をしていることから、十分使用可能と思われた。今後、OSACS による調査事例を増やす ことでデータの蓄積がなされれば、有効な飲酒防止教育のあり方を研究する上で、非常に貴重な 手段となっていくと思われる。 8.おわりに  今回は、喫煙防止教育と飲酒防止教育を同時に行った場合を検討したが、今後は喫煙防止教育 と「薬物乱用防止教育」、喫煙防止教育と「薬の正しい使い方の教育」、喫煙防止教育と「アンチドー ピングの教育」等、関連する分野との融合で単独の講義よりも効果を上げることができるかを検 討したい。これらの教育は、学校保健においては非常に重要であり、将来、保健・体育・養護の 教員になる者のみならず、関連する指導者になる者は、是非とも大学にて学ぶべき事項であるの で、大学における喫煙防止教育や、依存症予防教育のあり方の検討を同時に進める必要がある。 9.謝辞  本研究を進めるにあたり、統計学や行動経済学の立場から貴重なご指導ご助言を賜りました沖 縄大学法経学部法経学科教授の村上敬進先生、教育学の立場から貴重なご指導ご助言を賜りまし た沖縄大学人文学部こども文化学科教授の梶村光郎先生に心より感謝申し上げます。また、アン ケートの実施等に関しまして多大なご協力をいただきました A 小学校の皆様に深く感謝申し上 げます。  尚、本論文の要旨は、日本学校保健学会 第 64 回学術大会(2017 年 11 月 仙台)において柴 田忠佳が発表した。 ◎日本語文献 赤田信一(2016)「小学生を対象とした喫煙防止に関する授業の教育の効果と家庭への普及効果」『静岡大学 教育実践総合センター紀要』第 25 巻 ,pp.83-92. 赤田信一・赤田陽子(2012)「小学校体育科:飲酒防止についての授業開発の試み」『静岡大学教育実践総合 センター紀要』第 20 巻 ,pp.65-74. 赤田信一(2015)「アルコール飲料のテレビ CM の特徴と未成年者飲酒防止の注意表示に対する未成年者の 判読率に関する調査 -2002 年〜 2005 年に放映されたビール類のテレビ CM を対象として -」『静岡大学教 育実践総合センター紀要』第 24 巻 ,pp.69-76.

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『日本公衛誌』第 59 巻第 1 号 ,pp.31-38. 江藤和子・橋本雄幸(2013)「中学生の親子で学ぶ飲酒防止学習プログラムの必要性 - 受講後のアンケート 結果から -」『小児保健研究』第 72 巻第 1 号 ,pp.104-109. 江藤和子・田中健次(2011)「ICT を活用した薬物乱用防止教育プログラム - 親子で学ぶ飲酒防止教育の試み -」 『教育システム情報学会誌』第 28 巻第 1 号 ,pp.71-79. 遠藤明・加濃正人・吉井千春・相沢政明・磯村毅・国友史雄(2007)「小学校高学年生の喫煙に対する認識 と禁煙教育の効果」『日本禁煙学会誌』第 2 巻第 1 号 ,pp.2-5. 沖縄県福祉保健部健康増進課(2013)『健康おきなわ 21 計画後期の取り組み』 大塚敏子・荒木田美香子・三上洋(2012)「高校生の将来喫煙のリスクに対応した喫煙防止教育の効果の検討」 『日本地域看護学会誌』第 14 巻第 2 号 ,pp.72-81. 奥田紀久子・中瀬勝則・近藤和和・谷洋江・岩佐幸恵・谷岡哲也(2012)「喫煙防止教育前後における高校 生の喫煙に対する態度と意識の変化」『四国医学雑誌』第 68 巻 5,6 号 ,pp239-244. 加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND)(2007)  < http://tobaccobyo.life.coocan.jp/KTSND.html > 2018 年 3 月 5 日アクセス 北田雅子・天貝賢二・大浦麻絵・谷口治子・加濃正人(2014)「喫煙未経験者の加濃式社会的ニコチン依存 度 (KTSND) ならびに喫煙規制に対する意識が将来の喫煙行動に与える影響  - 大学生を対象とした追跡調査より -」『日本禁煙学会誌』第 6 巻 6 号 ,pp.98-107.        北田豊治 (2011)「大学生における飲酒行動と態度に関する研究」『愛知学院大学教養部紀要』 第 59 巻第 1 号 , pp.81-90. 後藤美和・高野義久・高濱寛・橋本洋一郎・長谷川由佳・波多江崇(2015)「中学校 1 年生を対象とした喫 煙に対する意識と喫煙防止授業の評価」『社会薬学』第 34 巻第 1 号 ,pp.34-41. 小松知己・清水隆裕・吉本尚・猪野亜朗 (2014) 「沖協版社会的アルコール認識度調査票の作成とその有用性」 『日本精神神経学会総会プログラム・抄録集』第 110 巻 ,pp.S.404. 今野美紀・浅利剛史・蝦名美智子・田畑久江・谷口治子(2012)「小学 6 年生に行った喫煙防 止教育の効果 ; 加濃式社会的ニコチン依存 度調査票 ( 小学校高学年市原版 )KTSND-youth       を用いた質問紙調査より」『札幌保健科学雑誌 』 第 1 号 ,pp.97-104. 次世代の健康教育検討委員会副読本作成班 生活習慣班 班長山代寛・玉城清酬・小松知己・又吉哲太郎・山 城麗子・西本裕輝・長浜朝子・赤嶺さおり・又吉美奈子(2015)『生活習慣学習教材小学 4 ~ 6 年生 ちゃ ~がんじゅう』  < http://kenko-okinawa21.jp/fukudokuhon/lifestyle/ > 2018 年 3 月 5 日アクセス 辻雅善・角田正史・鈴木礼子・鈴木恵子・上野文彌・相澤好治(2008)「小・中学生の喫煙に関する意識と行動: 地域における喫煙防止活動のために」『目白大学短期大学部研究紀要』第 44 巻,pp85-96. 長島和子・荒波早苗(2000)「若者のアルコール摂取教育に関する一考察 : 高校生・大学生を対象としたア ンケート調査をもとに」『千葉大学教育学部研究紀要 . I, 教育科学編』第 48 巻 ,pp.123-130. 仲野綾・野崎とも子(2011)「喫煙防止教育における教材研究〜タバコ副流煙が植物の成長に及ぼす影響を 利用して〜」『千葉大学教育学部研究紀要』第 59 巻 ,pp.61-66. 西岡伸紀(2005)「未成年者への喫煙防止教育プログラム:教育内容と学習方法,および評価」『保健医療科 学』第 54 巻 5 号,pp319-325. 樋口進(2012)『新・アルコールの害』(少年写真新聞社) 松浪容子・山口美友紀・古瀬みどり・熱海裕之(2016)「喫煙防止教育と敷地内禁煙が看護学生の受動喫煙 の実態と認識に与える影響」『日本禁煙学会雑誌』 第 11 巻 第 3 号 , pp.72-78. 森本泰子・山口孝子・宮川明宏・井上和紀・山﨑裕康(2015)「大学生への意識調査を通じた喫煙防止教育 のあり方に関する一考察」『教育開発センタージャーナル』第 6 号 ,pp.37-50. 山口孝子・森本泰子・松本有可・平松優子・山﨑裕康(2017)「加濃式社会的ニコチン依存度(KTSND) 調査から喫煙防止教育のあり方を探る」『教育開発センタージャーナル』第 8 号 ,pp.17-29. 吉井千春・加濃正人・相沢政明・原田久・原田正平・薗(石川)はじめ・川波由紀子・大南諭史・城戸優光(2004) 「加濃式社会的ニコチン依存度調査票の試用 ( 製薬会社編 )」『日本禁煙医師連盟通信』第 13 巻 4 号 ,pp.6-11. 吉井千春・加濃正人・稲垣幸司・北田雅子・天貝賢二・大谷哲也・栗岡成人・金誠圭・川波由紀子・城戸優 光(2007)「加濃式社会的ニコチン依存度調査票を用いた病院職員(福岡県内3病院)における社会的ニ コチン依存の評価」『日本禁煙学会誌』第 2 巻第 1 号 ,pp.6-9.

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A Study on Effects of Smoking Prevention Education and Drinking Prevention

Education

-In Case of Carrying out Two Education Together for Upper Grades Students of

Elementary School

-Hiroshi YAMASHIRO

Tadayoshi SHIBATA

Abstract

Previous studies of smoking prevention education have been conducted to verify the effects of smoking prevention education itself, but they have not been conducted to verify the effects of drinking prevention education.

Therefore, this study aimed to examine whether smoking prevention education and alcohol prevention education are effective for sixth grade elementary school students when combined in the same class, and whether there is a correlation between the two.

To determine the effects of anti-smoking education, a standardized version of the KTSND for upper elementary school was used, and a standardized version of the OSACS elementary school was newly prepared and used for assessing the effects of alcohol education.

In the present survey, a comparison of smoking prevention only education and the combined smoking and alcohol prevention education revealed no significant differences in educational benefits. However, it is believed that there is a correlation between the two education classes. Therefore, it is expected that the skillful combination of the class contents will improve the educational effectiveness.

参照

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