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顎矯正手術患者の看護における顎間固定の説明型オリエンテーションと体験型オリエンテーションとの比較

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Academic year: 2021

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(1)(1):1︲5, April, 2021 日顎変形誌 Jpn. J. Jaw Deform. 31. 原 著. 顎矯正手術患者の看護における顎間固定の説明型オリエンテーションと 体験型オリエンテーションとの比較 加 藤 久 美 子 1) 風 岡 亜 樹 子 1) 天 野 誠 子 1) 古 川 真 代 1) 加  藤  宏 2) 吉 田 秀 児 2) 渡  邊  章 2) 髙 野 正 行 2) 片  倉  朗 3). Comparison of Explanatory Orientation and Experience Orientation for Intermaxillary Fixation in Nursing of Orthognathic Surgery Patients KUMIKO KATO 1), AKIKO KAZEOKA1), TOMOKO AMANO 1), MASAYO FURUKAWA1), HIROSHI KATO 2), SHUJI YOSHIDA2), AKIRA WATANABE 2), MASAYUKI TAKANO 2)and AKIRA KATAKURA3) many who replied that the surgery was the same as the Abstract. image they had imagined before the surgery. In contrast, among the simulated-experience group, there were. In the field of nursing, we have been performing a pre-. some who replied that the surgery was more stressful. surgical verbal orientation using an explanation sheet for. than expected. This was because the simulated experi-. patients. However, many patients complained after sur-. ence using intermaxillary elastics, which could allow. gery, “It was more stressful than I expected” and “It was. mouth opening, might have provided an incorrect im-. hard to breathe.” These complaints indicate that patients. age that intermaxillary wire fixation was not so stress-. suffered considerable stress by intermaxillary wire fixa-. ful. Patients in the simulated-experience group felt that. tion. We thought that a presurgical orientation including. intermaxillary wire fixation was much more stressful. a simulated experience would help them understand the. than they had expected, and the orientation did not help. postsurgical condition and relieve the postsurgical stress.. relieve their stress. However, there were some who said. Thus, we decided to perform a presurgical verbal ori-. the simulated experience was worthwhile and effective. entation using either an explanation sheet(explanation. for orthognathic surgery. The present study highlighted. group)or a simulated experience of using intermaxillary. the problems in performing our simulated experience,. elastics(simulated-experience group)randomly assigned. and enabled us to improve the method for pain relief.. to patients, and compared the effect of the two methods.. Key words : orthognathic surgery(顎矯正手術) , inter-. The results showed that both methods could provide. maxillary fixation(顎間固定) , preoperative orientation(術前. enough information on intermaxillary wire fixation be-. オリエンテーション). fore surgery. Among the explanation group, there were. [Received Jul. 10, 2020]. 東京歯科大学水道橋病院看護部(主任:古川真代師長) 東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座(主任:髙野正行教授) 3) 東京歯科大学口腔病態外科学講座(主任:片倉 朗口腔外科部長) 1) Facuˡty of ɴursinɡ︐ Tokyo Dentaˡ coˡˡeɡe Suidobasʰi ʜospitaˡ(Chief : Masayo FURUKAWA) 2) Departⅿent of Oraˡ & Maxiˡˡofaciaˡ Surɡery︐ Tokyo Dentaˡ Coˡˡeɡe (Chief : Prof. Masayuki TAKANO) 3) Departⅿent of Oraˡ Patʰobioˡoɡicaˡ Science and Surɡery︐ Tokyo Dentaˡ Coˡˡeɡe (Chief : Dr. Akira KATAKURA) 1) 2).

(2) 2. 加藤久美子,他. 日顎変形誌 2021 年. は含めなかった。対象となったすべての患者に基礎疾患は 緒  言. なく精神疾患の既往も認めなかった。 オリエンテーションの方法と内容は予め口腔外科医とと. 顎矯正手術後は術後の咬合と骨片の安定,創の安静のた. もに検討し,術後の顎間固定を想定した模擬体験方法を決. め顎間固定が必要である1)。当科での顎間固定は手術翌日. 定した。オリエンテーションを行うすべての看護師が同様. に呼吸状態に問題がないこと,嘔気がないことを確認し,. の説明を行えるようマニュアルを作成し,説明会を行っ. 直径 0.3mm のステンレスワイヤーを用いて行い,7 日後. た。両群とも入院時にクリニカルパスを使用し入院から退. に顎間ゴム牽引へ変更している。最近では,咬合偏位がな. 院までの経過を説明した。さらに手術前日に,回復室での. く咬合誘導もスムーズな症例に対しては,顎間ゴム牽引の. 様子と疼痛,腫脹,知覚鈍麻など起こりうる症状を説明. みとする場合も増えてきている 。当科も,そのような対. し,実際に吸い飲みを用いての含嗽指導と吸引チューブの. 応を行っている症例もあるが,多くは術後の安定性を優先. 使用方法を説明した。体験型オリエンテーション群はこれ. し,ステンレスワイヤーによる顎間固定を行っている。. らのオリエンテーションの説明に加え,口腔外科の担当医. これまでわれわれは入院時に看護師より患者に対し,手. により上下顎の中切歯間と上下顎左右の犬歯の 3 箇所に顎. 術までの流れ,術後に起こりうる症状,含嗽方法を,説明. 間固定を想定して Elastics 3/16(直径 4.6mm 大)による. 用紙を用いて口頭でオリエンテーションを行っていた。し. ゴム牽引を行った。その後,受け持ち看護師により圧迫バ. かし患者から顎間固定後に「思っていたより辛い」 「どの. ンドの装着,吸い飲みを用いての飲水と含嗽練習を行い,. ように食事したら良いか分からない」「息苦しい」と訴え. 1 時間後にゴム牽引を解除した。調査は,術後に患者の状. が多数あり,顎間固定による肉体的,精神的ストレスが強. 態が落ち着き冷静に判断できる術後 4 日目にアンケート用. いことが考えられた。開胸術,開腹術の術前オリエンテー. 紙を配布し,退院時に回収箱にて回収した。. ションにドレーン装着体験を取り入れ,術後のイメージを. なお本研究は,東京歯科大学倫理審査委員会 No 933 の. 深めることができたとの報告があり3),顎矯正手術にも同. 承認を得ている。. 様の体験型オリエンテーションが適応できるのではと考え. アンケート内容は Fig. 1 に示す。. 2). た。そこで顎間固定について術前からイメージを深め,術 後のストレス軽減を目的としたオリエンテーションを実施 できるよう,現状のオリエンテーションの改善を計画し た。今回,従前からの術前の説明用紙を用いた口頭による オリエンテーション(説明型オリエンテーション)と新た に顎間固定を模擬体験してもらう術前オリエンテーション (体験型オリエンテーション)を無作為に選別した別患者 に対して行い,術後のストレスをアンケートにより比較検 討することで術前オリエンテーション法について再考した ので,その結果を報告する。 対象および方法 対象は 2019 年 5 月から 2019 年 9 月までに顎変形症のた め下顎枝矢状分割術を行った 18 歳から 40 歳の患者のうち 本研究について同意を得た計 30 名で,本研究とは関係の ない看護師が無作為に説明型オリエンテーション 15 名と 体験型オリエンテーション 15 名の二群に分けた。手術内 容は下顎枝矢状分割術の単独手術を行った 30 名でそのう ち 7 名に合わせて抜歯術,2 名に顎間固定用スクリュー埋 入を行った患者が含まれていた。抜歯術,顎間固定用スク リュー埋入を同時に行った症例も含めて全症例で術後管理 方法に違いはなく,すべての症例で術後 1 日目の午前中に 0.3mm ステンレスワイヤーによる顎間固定を 7 日間施行 していた。また術前矯正において顎間ゴムを使用した患者. Fig. 1 Questionnaire sheet.

(3) 31 巻 1 号. 顎矯正手術患者の術前体験型オリエンテーション. 3. Fig. 2 Distribution of patient age and sex. 3.術前オリエンテーションについて 結  果. 「術前オリエンテーションを受けて良かったと思いま すか?」に対し,説明型では「思う」73%,「少し思う」. アンケート用紙は説明型 15 名,体験型 15 名に配布し,. 27% で あ っ た。 体 験 型 で は「 思 う 」73%,「 少 し 思 う 」. それぞれの回収率は説明型 100%,体験型 100%であった。. 14%,「あまり思わない」13%であった。結果,どちらの. 平均年齢は説明型 33.4 歳,体験型 31.2 歳であった。性. 群も「思う」 「少し思う」が 80%を超えておりオリエンテー. 別は説明型 男性 7 名女性 8 名,体験型 男性 7 名女性 8 名. ションを受けてよかったという回答であった(Fig. 3c)。. でどちらの群も男女比の差はなかった(Fig. 2)。 回答は無記名としたため,下顎枝矢状分割術の単独か,. 4.自由記載の回答. 抜歯術や顎間固定用スクリュー埋入の同時施行か判別はで. 回答の自由記載欄には,説明型では「事前にイメージで. きないが,すべての症例でワイヤーによる顎間固定を施行. きて心の準備ができた」「イメージはできたけど現実はイ. している。. メージの数十倍辛かった」「全体の見通しがついて精神的 に安心した状態で手術に望めた」「看護師が丁寧に説明し. 1.顎間固定のイメージについて. てくれた」という意見があった。体験型では「事前に体験. 「術前オリエンテーションを受けて顎間固定のイメージ. したことで不安なく対応できたためやってよかった」「ゴ. ができましたか?」に対して説明型では,「できた」40%,. ムとワイヤーでは辛さが異なるものだった。ワイヤーは全. 「ややできた」40%,「あまりできなかった」20%であっ. く動かないので辛かった」「退院後はゴムと聞いたので退. た。体験型では「できた」53%,「ややできた」40%,「あ. 院後のイメージはついた」「術後は顔が腫れたり口が荒れ. まりできなかった」 7%であった。結果,体験型のほうが. たり状況が違うことがイメージできていなかった」「体験. イメージできたという回答が多かった(Fig. 3a)。. は 1 時間だったが実際はずっと続くので辛い」 「薬の飲み 方も教えてほしかった」「顎間固定という固有名詞が身近. 2.顎間固定とその術前のイメージとの比較 「顎間固定は手術前にイメージしていたものと比較して どうでしたか?」に対しては説明型では「楽だった」 7%,. に感じられた」「術後どんな処置が待ち受けているのだろ う?という不安がオリエンテーションにより払拭された」 「体験していなければうがいの方法が雑になっていたかも. 「イメージ通りだった」46%,「やや辛かった」27%,「辛. しれない」 「百聞は一見にしかずということがポイントだと. かった」20%であった。体験型では「楽だった」 7%,「や. 思う」 「固定されてからは聞きたい事が思うように伝わらず. や楽だった」13%,「イメージ通りだった」13%,「やや辛. 悲しかった。意志の伝え方も一緒に考えてほしかった」 「術. かった」40%,「辛かった」27%であった。結果,体験型. 後は顎間固定の他にも色々なことが普段と違って戸惑うた. のほうが「楽だった」「やや楽だった」という回答もあっ. め,事前に体験して少しでも慣れておくことは有意義だと. たが,「辛かった」「やや辛かった」という回答も多く説. 思う」 「丁寧に教えてもらえた」という意見があった。. 明型の方が「イメージ通りだった」との回答が多かった。 (Fig. 3b)。.

(4) 4. 加藤久美子,他. 日顎変形誌 2021 年. a 0% 20%. 0%. 7% 40%. 40%. 53%. 40%. b 7% 20%. 0%. 7%. 27%. 13%. 46%. 27%. 13%. 40%. c 0% 27%. 0%. 13% 14% 73%. 73%. Fig. 3 Questionnaire results a:「Did the presurgical orientation provide enough information of the intermaxillary fixation?」 b:「How do you feel your intermaxillary fixation compared with what you imagined before surgery?」 c:「Do you think the preoperative orientation was worthwhile?」. . ると報告している4)。われわれも現状のオリエンテーショ 考  察. ンに顎間固定の模擬体験を加えることでイメージが深まり 苦痛の軽減につながるのではないかと考え本調査を行っ. 雄西らは,術前から術後にわたる周手術期の経過をイ. た。今回,両群とも術前オリエンテーションを行うことで. メージすることによって,先の見通しを持って,手術を. 顎間固定のイメージができたと回答しており,説明型オリ. 乗り切るための自分なりの心構えを獲得することができ. エンテーションと体験型オリエンテーションのどちらも顎.

(5) 31 巻 1 号. 顎矯正手術患者の術前体験型オリエンテーション. 5. 間固定の状態がイメージできるという点では違いはなかっ. う看護師にとっても,オリエンテーション方法の一つとし. た。しかし,体験型オリエンテーション群の方が,術前の. て体験型オリエンテーションは有用であったと考えられ. イメージと比較して実際の顎間固定は辛かったとの回答が. る。アンケート自由記載で患者から「丁寧に説明してもら. 多かった。アンケートの自由記載でも「ゴムとワイヤーで. えた」という回答があり,次回のアンケートでは看護師の. 辛さが異なるものだった」「顔が腫れたり口が荒れたり状. 説明は理解しやすかったか,オリエンテーションの時間は. 況が違って辛かった」という,イメージと比較して辛いと. 適切であったかなどを問いかけ,患者からの意見を得てオ. いう回答が説明型オリエンテーション群より多かった。そ. リエンテーション内容を充実させることが必要であると考. の理由として,実際の顎間固定では金属ワイヤーで強固に. える。「薬の飲み方も教えてほしかった」「固定されてから. 固定を行うが,模擬体験では顎間ゴムによる開口制限に留. は聞きたい事が思うように伝わらず悲しかった」 「意志の. まったため,顎間固定の体感の差が顕著に感じられたので. 伝え方も一緒に考えてほしかった」という記載もあり,こ. はないかと考えられた。またゴム牽引による模擬体験を行. れらの意見は今後のオリエンテーション内容に加えていき. うことで,かえって「顎間固定はこの程度の固定」という. たい。. 誤った認識を与えた可能性も否定できない。秋間らによる. 体験型は「体験してみてよかった」という回答があり,. と顎変形症の術後患者は,主に挿管チューブの苦痛,喀痰. オリエンテーション方法の一つとしては有用であったと考. 喀出困難,圧迫帯,呼吸困難,顔面腫脹,咽頭痛を特に苦. える。今後はさらに効果的なオリエンテーションを行うた. 痛と感じていたと報告しており ,顎矯正手術後は様々な. めに,方法を改善し症例を積み重ねていきたい。. 5). 苦痛が混在している。そのため,顎間固定の模擬体験を取 り入れたオリエンテーションを行ったことで術後のイメー. 結  語. ジはできたが,顎間固定中に付随する様々な行動環境など の要因が大きく影響していることも考えられ,単純には苦. 体験型,説明型の両群共に顎間固定に対するイメージが. 痛の軽減につながらなかったと考える。. 得られ,説明型の方がイメージ通りとの回答が多かった. 今回は,模擬体験として初めての試みであったため,不. が,体験型は方策を改変すれば術後のイメージを深める方. 安やストレスを増強させないよう簡便な顎間ゴムによる開. 法の一つとして有用と思われる。今後は体験型オリエン. 口制限を行った。しかし今後,体験型オリエンテーション. テーションをより効果的に行うためにその内容を検討して. をより効果的に実施するには,ゴム牽引を施行する際に,. いきたい。. 実際はワイヤーで固定されるので様々なストレスが負荷さ れることを説明して行うか,ワイヤー固定での模擬体験を 検討する必要があると思われた。 顎変形症の術前シミュレーションに関して,東らは術後. 本研究は第 15 回歯科口腔外科看護研究会で発表した。 本論文に関して,開示すべき利益相反状態はない。. の呼吸困難感を想定した術前シミュレーションで,鼻を軽 くつまみ歯をくいしばった状態で呼吸する訓練を実施して 効果があったと報告しており ,呼吸困難感の模擬体験が 6). でき,呼吸法を考える一助になる方策と思われた。また今 後,顎間ゴムをしたままブラッシング指導,流動食の食事 摂取,嘔吐時の対応などを模擬体験に加えることで患者が より先の見通しを持って手術を乗り切るための心構えを獲 得できるのではないか。さらに,これらに加えて写真や DVD など視聴覚資料を使用することも,イメージと体感 の乖離を縮めることができると考えられた。 体験型オリエンテーションを行った看護師からは「体験 型オリエンテーションは説明型に比べてオリエンテーショ ンの時間が長くなる」「口頭で説明して行うよりも実際に 行ってもらったほうが説明しやすい」「オリエンテーショ ンの時間が長くなるため患者とコミュニケーションを取る 時間が増えた」という意見がありオリエンテーションを行. 文. 献. 1)高橋庄二郎,他:顎矯正外科手術.三村 保:顎変形 症治療アトラス,第 1 版.医歯薬出版,東京,2001, p124,p143. 2)小林正治:顎矯正手術の周術期管理(解説) .日本口 腔外科学会雑誌,62:554︲560,2016. 3)杉浦直美,他:術前オリエンテーションにドレーン装 着模擬体験を取り入れた効果.日本看護学会論文集急 性期看護,45:3︲6,2015. 4)雄西智恵美,他:周手術期過程に応じた看護.花出正 美:周手術期看護論,第 3 版.ヌーヴェルヒロカワ, 東京,2014,p86. 5)秋間織野,他:顎変形症患者の苦痛と不安の要因とそ の推移.日本看護学会論文集成人看護Ⅰ,34:158︲ 160,2004. 6)東 麻美,他:顎変形症患者への術前シミュレーショ ン導入の効果.日本看護学会論文集成人看護Ⅰ,44: 54︲56,2014..

(6)

Fig. 2 Distribution of patient age and sex

参照

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