• 検索結果がありません。

エゾシカの樹皮剥ぎによる枯死木の発生が樹木の成長に及ぼす影響 ― 北海道中央部洞爺湖中島の例 ―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "エゾシカの樹皮剥ぎによる枯死木の発生が樹木の成長に及ぼす影響 ― 北海道中央部洞爺湖中島の例 ―"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Title. エゾシカの樹皮剥ぎによる枯死木の発生が樹木の成長に及ぼす影響 ― 北海道中央部洞爺湖中島の例 ―. Author(s). 並川, 寛司; 草嶋, 乃美; 宮木, 雅美; 石川, 幸男. Citation. 北海道教育大学紀要. 自然科学編, 69(1): 37-47. Issue Date. 2018-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9872. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(自然科学編)第69巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Natural Sciences)Vol. 69, No.1. 平 成 30 年 8 月 August, 2018. エゾシカの樹皮剥ぎによる枯死木の発生が樹木の成長に及ぼす影響 ― 北海道中央部洞爺湖中島の例 ―. 並川 寛司・草嶋 乃美・宮木 雅美*・石川 幸男** 北海道教育大学札幌校生物学教室 *. 酪農学園大学環境共生学類. **. 弘前大学農学生命科学部附属白神自然環境研究センター. Effect of Dieback Due to Bark Stripping by Sika Deer on Stem Growth of Trees in the Nakanoshima Island of Toya Lake, Central Hokkaido, Northern Japan NAMIKAWA Kanji, KUSAJIMA Nami, MIYAKI Masami* and ISHIKAWA Yukio** Biological Laboratory, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education, Sapporo, 002-8502 *. Department of Environmental and Symbiotic Science, Rakuno Gakuen University, Ebetsu, 069-8501. **. The Shirakami Reserch Center for Environmental Science, Faculty of Agriculture and Life Science, Hirosaki  Uiversity, Hirosaki, 036-8561. ABSTRACT The relationship between dieback caused by bark stripping by sika deer (Cerves nippon yesoensis Heude) and the stem growth of trees was investigated by examining disks sampled from trees felled by the 18-th typhoon of 2004 on Nakanoshima Island of Toya Lake, central Hokkaido, in northern Japan. Three deer were introduced on Nakanoshima Island in 1960’s, and the deer population reached a peak of 299 deer in 1983 and decreased to 137 deer in 1984 because of mass mortality and removal by humans (i.e., population crash). Sixty-five disks were sampled from fallen trees at breast height. Annual ring width was measured at 0.01 mm level and at least two perpendicular directions. The difference between two decades of annual ring width before population crash and that after population crash was statistically tested. When limited disks without signs of bark stripping, annual ring width after population crash was larger than that before population crash in 21 trees (disks), while inverse inclination was found in 14 trees. Moreover, 18 trees showed no difference in annual ring width between before and after population crash. The stem volume of each tree was calculated from the diameter measured by annual rings at 5 calendar years (i.e., 1963, 1973, 1983, 1993 and 2003). The relative growth rate of stem volume for fallen. 37.

(3) 並川 寛司・草嶋 乃美・宮木 雅美・石川 幸男. trees in each of the four decades reached maxima in the decade just after population crash. This trend was remarkable for trees 10 cm in diameter at breast height in 1984. These results suggest that stem exclusion by bark stripping was responsible for growth release.. はじめに. (2003)は示した。 しかし,エゾシカの樹皮剥ぎによる樹木個体の. シカ個体群の増加が森林生態系に与える影響. 枯死が生残木の成長に与えた影響をより正確に評. は,世界中の様々な地域で問題となっており,地. 価するためには,エゾシカの樹皮剥ぎによる枯死. 域によっては,植生,無脊椎動物,脊椎動物,土. 個体が多数発生した期間の終わりであるエゾシカ. 壌に直接的あるいは間接的に重要な影響を与える. 個体群の崩壊年(1984年)を境として,その前後. キーストーン種となっている(Rooney & Waller,. の生残木の成長量を比較することが必要である。. 2003) 。 シカが森林植生に与える影響として,採食,. 本研究は,2004年の台風18号通過の際に生じた風. 樹皮剥ぎ,角研ぎを挙げることができる(Gill,. 倒木から採取した材の円板を用い,エゾシカ個体. 1992) 。 北 海 道 で も1980年 代 後 半 か ら エ ゾ シ カ. 群の崩壊前後の直径成長量を比較し,エゾシカの. Cerves nippon yesoensis Heudeが増加し,東部の. 樹皮剥ぎが樹木の成長に与えた影響を明らかにす. 天然林ではササや高木種の稚樹など林床に生育す. ることを目的に行った。. る植物が採食によって減少し,シカの好まないハ ンゴンソウの侵入・増加が生じた。また,シカの 樹皮剥ぎがオヒョウやハルニレなどのニレ属の樹. 調査地と調査方法. 木や小径木に集中したことで,これらの種の激減. 中島が浮かぶ洞爺湖は直径約12kmのカルデラ. が報告されている(梶,1998)。. 湖で,中央に中島,弁天・観音島,饅頭島の3つ. 北海道中央部,胆振地方に位置する洞爺湖中島. の島が存在する(図1)。中島の面積は496.8haで,. に,1957年から1965年にかけてエゾシカが3頭持. シナノキ,イタヤカエデを主体とした落葉広葉樹. ち込まれた。島では狩猟が行われなかったため,. 林であるが,トドマツ,イチイなどの針葉樹もみ. 個体数は増加し1983年には299頭に達した。しか. られ,合わせて60種の木本植物が生育している。. し,冬季の餌不足による自然死や人為的な間引き. 林床では,エゾシカの嗜好性の強いササ類が消滅. に よ っ て1984年 に は137頭 ま で 減 少 し た( 梶,.  し,不嗜好植物であるハンゴンソウ,フッキソウ,. 1993) (この急激な個体数の減少を,ここでは「個. フタリシズカなどが優占している。また,希少種. 体群の崩壊」と呼ぶこととする) 。エゾシカの個. に指定されているヒロハハナヤスリ,ヤマシャク. 体数が102頭を越えた1980年から個体群が崩壊し. ヤク,ヤマネコノメソウ,絶滅危惧種ユウシュン. た1984年までの5年間,多数の樹木個体が樹皮剥. ラン,絶滅危機種サカネランなど90種の草本植物. ぎを受け,幹の全周にわたって樹皮を剥がされ枯. が生育している(助野・宮木,2007)[希少種,. 死した樹木個体の数もピークに達した(Kaji et. 絶滅危惧種などの区分は北海道レッドデータブッ. al., 1991) 。その結果,樹木間の個体間競争が緩和. クによる(http://rdb.Hokkaido-ies.go.jp/,2018.3. され,林分単位でみた場合,生残木は人為的に個. 参照)]。. 体数を調整した林分(間伐林分)と類似の成長過. 樹木の成長量を測定するために,東西約300m,. 程を示し,エゾシカの樹皮剥ぎによる枯死木の発. 南北約200mの範囲を中心に,2004年秋の台風18. 生が間伐と同様の効果を持つことを,エゾシカ個. 号によって生じた倒木から円板の採取を2005年に. 体群の崩壊後の樹木のモニタリングから宮木・梶. 行った(図1)。調査地である中島における風倒. 38.

(4) エゾシカの樹皮剥ぎによる枯死木の発生と樹木の成長. ●円板を採取した倒木 〇円板を採取できなかった倒木 図1 調査地と倒木の位置. 木の分布は,島全体の踏査の結果,林分全体にラ. 採取した円板サンプルは,年輪幅を読みやすく. ンダムに分布するのではなく,風の通り道となっ. するためにカンナをかけ,必要に応じ彫刻刀で表. た部分に偏って分布していた。調査対象とした範. 面を削る,やすりをかけるなどの処理を行った。. 囲は鞍部付近に位置し(図1),風の通り道となっ. 処理後,実体顕微鏡下で年輪幅を0.01mm単位で. た場所の一つであった。円板の採取にはチェーン. 測定した。年輪幅は方向によって一様ではなく偏. ソーを用い,採取可能な倒木の全てから採取し. りがあったため,直交する2方向について測定し,. た。採取不能だった個体は,倒木が重なり人の力. 解析には平均値を用いた。ただし,円板の状態. では移動が困難な個体,広葉樹で地上から2m以. (一部腐朽など)によって直交する2方向での測. 上の高さで幹折れし根元から萌芽幹の発生してい. 定ができなかった場合,可能な限り直交する角度. る生残個体であった。円板の採取は可能な限り胸. に近い角度で測定を行った。. 高(地上から1.3m)に近い部分で,2005年の5. 採取した円板から過去の胸高直径を測定し,そ. 月および6月に行い,合計66個体の倒木から円板. の値から倒木個体の幹の体積(材積)の変化を推. を採取した(採取できなかった個体は10個体) 。. 定した。材積の算出は,広葉樹については菊沢. 採取時に樹種を記録し,胸高直径,円板の採取高. (1983),針葉樹については中島(1930)の材積. を測定した。また,円板を採取した範囲の樹種構. 表から以下の回帰曲線を求め推定した:. 成を示すために,円板を採取した倒木から半径. 広葉樹,w=0.0001D 2.5097. 5m範囲内に生育する樹高2m以上の立木の種を. 針葉樹,w=0.0001D 2.5619. 記録し,胸高直径を測定した。. ただし,w,材積;D,胸高直径。. 39.

(5) 並川 寛司・草嶋 乃美・宮木 雅美・石川 幸男. 次いでホオノキ,トドマツ,エゾイタヤと続いた。. 結 果. 相対胸高断面積からみた場合,カツラが最も大き. 林分構成. く(19.5%),次いでエゾイタヤ,シナノキ,ト. 円板を採取した倒木の根元を中心とする半径. ドマツと続いた。相対優占度からみた場合イタヤ. 5mの円形調査区(66個,0.52ha)での毎木調査. カエデが最も大きく(11.1%),次いでカツラ,. と,円板を採取した範囲に隣接する既設の固定調. シウリザクラ,トドマツ,ホオノキ,シナノキと. 査区(0.2ha,後志森林管理署設置;後志森林管. 続き,これら6種で全体の約6割を占めていた。. 理署・日本林業協会,2005)での毎木調査(2004 年実施)の結果から,調査範囲の樹種構成を表1. 円板採取個体の種構成. に示す。合計26種254個体が記録され,相対個体. 採取した66個体の円板には,材が腐朽して年輪.  数からみた場合シウリザクラが最も多く (16.5%) ,. 幅を測定できなかった円板が1枚含まれていた。. 表1 円板を採取した林分の樹種構成 相対個体数 (%) (B). 相対胸高断面積 (%) (A). 相対優占度 (%) 〔(A+B)÷2〕. Taxus cuspidata(イチイ). 2.8. 5.9. 4.3. Abies sachalinensis(トドマツ). 10.2. 9.7. 10.0. Juglans ailanthifolia var. sachalinensis(オニグルミ). 0.8. 1.0. 0.9. Carpinus cordata(サワシバ). 0.8. 0.1. 0.5. Ostrya japonica(アサダ). 5.5. 2.4. 4.0. Betula maximowicziana(ウダイカンバ). 1.2. 1.5. 1.4. Betula platyphylla var. japonica(シラカンバ). 3.5. 2.7. 3.1. Alnus hirsuta var. hirsuta(ケヤマハンノキ). 0.8. 0.4. 0.6. Quercus crispula(ミズナラ). 5.1. 4.1. 4.6. Castanea crenata(クリ). 0.4. 0.2. 0.3. Morus asustralis(ヤマグワ). 0.4. 0.1. 0.3. Cercidiphyllum japonicum(カツラ). 2.4. 19.5. 10.9. Magnolia obovate(ホオノキ). 10.6. 8.8. 9.7. Cerasus sargentii(オオヤマザクラ). 2.4. 1.6. 2.0. Prunus ssiori(シウリザクラ). 16.5. 3.7. 10.1. Zanthoxylum piperitum(サンショウ). 0.8. +. *. 0.4. Phellodendron amurense(キハダ). 3.5. 2.5. 3.0. Picrasma quassioides(ニガキ). 2.4. 0.5. 1.4. Acer japonicum(ハウチワカエデ). 2.4. 0.2. 1.3. Acer palmatum. var. matumurae(ヤマモミジ). 2.4. 0.6. 1.5. Acer pictum subsp. mono(エゾイタヤ). 8.3. 13.9. 11.1. Acer pictum subsp. mayrii(アカイタヤ). 3.1. 5.7. 4.4. Tilia japonica(シナノキ). 7.9. 10.9. 9.4. Kalopanax septemlobus(ハリギリ). 5.5. 3.6. 4.6. Cornus controversa(ミズキ). 0.4. 0.3. 0.3. 学 名 (和 名). *. 0.1%以下.. 40.

(6) エゾシカの樹皮剥ぎによる枯死木の発生と樹木の成長. 材の中心が腐朽していたが,途中から年輪幅が測. 信頼区間は1.07m<M<1.41mであった。採取し. 定可能であった円板は4枚,全て測定できた円板. た円板の年輪数をみると(図2),40年から50年. は61枚であった。また,採取した個体の胸高直径. の階級にモードが見られた。また,胸高直径階別. は,最小8.0cm,最大51.0cmの範囲であった。. 本数分布をみると,20から30cmの階級にモード. 調査地における2004年の台風18号以前の樹木構. がみられた。円板の年輪数と胸高直径との間に一. 成と倒木の樹木構成を比較した(表2)。台風以. 定の関係はみられなかった。. 前の樹木構成は,倒木と上に示した林分構成の資 料から胸高直径8cm以上の個体を併せた個体数. エゾシカ個体群の崩壊前後における年輪幅の比較. で示した(胸高直径8cmは円板を採取した個体. 採取した円板の年輪数は36から202までと幅が. の最小値) 。. 大きかったため,エゾシカ個体群の崩壊後の10年. 倒木の状態をみると,全体で36本が幹折れ,30.  間(1984年から1993年まで)の年輪幅(n=10)と,. 本が根返りであった。個体数が比較的多かったイ. 崩壊前10年間(1974年から1983年まで)の年輪幅. チイ,トドマツ,シウリザクラ,キハダをみると,. (n=10)の差をそれぞれの円板について検定し. イチイとキハダでは根返りが多く,トドマツとシ. た(マン・ホイットニーのU 検定,表3)。全個. ウリザクラでは幹折れが多かった。. 体のうち12個体(円板)に樹皮剥ぎの痕跡が見ら れ,キハダ(5個体)とイチイ(5個体)に偏っ. 円板の年輪数と胸高直径. ていた。これら樹皮剥ぎの痕跡が見られた個体を. 円板の採取高は平均(M)1.24mで,その95%. 除くと,エゾシカ個体群の崩壊前後で年輪幅に有. 図2 円板を採取した個体の胸高直径分布(上)および胸高直径と年輪数の関係. 41.

(7) 並川 寛司・草嶋 乃美・宮木 雅美・石川 幸男. 表2 2004年の台風18号以前における立木の樹種構成と倒木数の比較 学 名(和 名). 台風以前の立木 (DBH≧8cm). 倒木数 サンプル数 (全倒木数). 幹折れ. 根返り. Taxus cuspidate(イチイ). 14. 7( 7). 3. 4. Abies sachalinensis(トドマツ). 29. 3(10). 8. 2. Salix caprea(バッコヤナギ). 3. 3( 3). 1. 2. Juglans ailanthifolia var. sachalinensis(オニグルミ). 3. 1( 1). 0. 1. Carpinus cordata(サワシバ). 1. 0( 0). 0. 0. Ostrya japonica(アサダ). 14. 0( 0). 0. 0. Betula maximowicziana(ウダイカンバ). 5. 2( 2). 0. 2. Betula platyphylla var. japonica(シラカンバ). 8. 0( 0). 0. 0. Alnus hirsute var. hirsute(ケヤマハンノキ). 5. 3( 3). 1. 2. Quercus crispula(ミズナラ). 13. 1( 1). 0. 1. Castanea crenata(クリ). 1. 0( 0). 0. 0. Morus australis(ヤマグワ). 2. 1( 1). 1. 0. Cercidiphyllum japonicum(カツラ). 7. 1( 1). 1. 0. Magnolia obovata(ホオノキ). 30. 3( 3). 1. 2. Cerasus sargentii(オオヤマザクラ). 5. 0( 0). 0. 0. Prunus ssiori(シウリザクラ). 47. 15(15). 13. 2. Sorbus commixta(ナナカマド). 0. 1( 1). 0. 1. Maackia amurensis(イヌエンジュ). 1. 1( 1). 0. 1. Phellodendron amurense(キハダ). 19. 10(10). 3. 7. Picrasma quassioides(ニガキ). 5. 1( 1). 1. 0. Acer japonicum(ハウチワカエデ). 3. 1( 1). . 1. 0. Acer amoenum var. matsumurae(ヤマモミジ). 4. 0( 0). 0. 0. Acer pictum subsp. mono(エゾイタヤ). 20. 1( 3). 4. 0. Acer pictum subsp. mayrii(アカイタヤ). 8. 0( 0). 0. 0. Tilia japonica(シナノキ). 24. 4( 5). 4. 0. Kalopanax septemlobus(ハリギリ). 18. 4( 4). 2. 2. Cornus controversa(ミズキ). 1. 0( 0). 0. 0. Fraxinus mandshurica(ヤチダモ). 1. 1( 1). 0. 1. Fraxinus lanuginose f. serrata(アオダモ). 2. 2( 2). 2. 0. 293. 66(76). 36. 30. 合 計. 意差があった個体は35個体,そのうち崩壊前の年. 限ると,崩壊前の年輪幅が崩壊後の年輪幅より大. 輪幅が崩壊後の年輪幅に比べて大きい個体は14個. きい個体が多かったのはシナノキ,ケヤマハンノ. 体,崩壊後の年輪幅が崩壊前の年輪幅に比べて大. キ,バッコヤナギの3種であった。一方,崩壊後. きい個体,すなわち崩壊後の方が成長の良い個体. の成長が,崩壊前に比べて大きい個体が多かった. は21個体で,崩壊後の成長が崩壊前の成長に比べ. 種は,シウリザクラ,キハダの2種であった。. て良い個体の割合が高かった。. 樹皮剥ぎの痕跡の見られた個体についてみる. 樹皮剥ぎの痕跡がない個体の数が3以上の種に. と,崩壊前後で有意差の無かった個体は4個体,. 42.

(8) 2 1 1 15 10 7 1 1 1 4 3 3 2 1 1 1 1. Betula maximowicziana(ウダイカンバ). Acer japonicum(ハウチワカエデ). Quercus crispula(ミズナラ). Prunus ssiori(シウリザクラ). Phellodendron amurense(キハダ). Taxus cuspidata(イチイ). Cercidiphyllum japonicum(カツラ). Picrasma quassioides(ニガキ). Maackia amurensis(イヌエンジュ). Kalopanax septemlobus(ハリギリ). Magnolia obovata(ホオノキ). Abies sachalinensis(トドマツ). Fraxinus lanuginose f. serrata(アオダモ). Juglans ailanthifolia(オニグルミ). Fraxinus mandshurica(ヤチダモ). Acer pictum subsp. mono(エゾイタヤ). Morus australis(ヤマグワ). 14(4). 0. 0. 0. 0. 0. 1. 1. 1. 0. 0. 0. 0(0, 3, 0). 0(1, 0, 0). 3. 1. 1. 1. 2. 1. 2. 崩壊前>崩壊後. 21(4). 0. 0. 0. 0. 0. 1. 1. 1(0, 1, 0). 1. 1. 1. 2. 4(0, 2, 0). 7(0, 0, 1). 0. 0. 0. 1. 0. 1. 崩壊前<崩壊後. 有意差の有った円板数*. 18(4). 1. 1. 1. 1. 2. 1. 1. 1. 0. 0. 0. 0(1, 0, 1). 1(1, 1, 0). 4. 0. 0. 1. 0. 2. 1. 有意差の無かった 円板数*. 12. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 1. 0. 0. 0. 5. 5. 1. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 樹皮剥ぎが 見られた円板数. Mann-WhitneyのU検定(それぞれn=20,P<0.05) 括弧内の数字は樹皮剥ぎが見られた円板で,最初の数字は崩壊前,次の数字は崩壊後,最後の数字は崩壊前後にそれぞれ樹皮剥ぎが見られた円板の数(外数) .. *. 3. Salix caprea(バッコヤナギ). 65. 3. Alnus hirsuta var. hirsuta(ケヤマハンノキ). 合 計. 4. 円板数. Tilia japonica(シナノキ). 学 名(和 名). 表3 エゾシカ個体群の崩壊前・後10年間の年輪幅の比較. エゾシカの樹皮剥ぎによる枯死木の発生と樹木の成長. 43.

(9) 並川 寛司・草嶋 乃美・宮木 雅美・石川 幸男. 図3 年輪より測定した直径から算出した10年毎の期首材積に対する相対材積成長量の50年間の変化. 有意差のあった個体は4個体であった。樹皮剥ぎ. ら2003年までの10年間では5.0%/年と崩壊前よ. の痕跡を持つ個体の崩壊前後の成長を比較する. りも低下した。胸高直径10cm以上の個体につい. と,イチイでは崩壊前の年輪幅が崩壊後の年輪幅. ては,全体とほぼ同様の傾向が見られた。一方,. に比べて大きい個体が3個体みられ,これらは何. 胸高直径10cm未満の個体では,崩壊前の20年間. れも崩壊後に樹皮剥ぎを受けた個体で(表3)あっ. に37.8%/年から11.6%/年へと大きく低下した。. たのに対し,キハダでは一定の関係は認められな. 崩壊後は再び19.7%/年まで増大したが,その後. かった。. は全体および胸高直径10cm以上の個体と同様, 崩壊前の水準まで低下した。. 相対材積成長量 円板から過去の胸高直径を推定し,1984年を基 点として10年間の初めの材積(期首材積)に対す. 考 察. る相対材積成長量を求めた(図3)。全体でみた. 樹皮剥ぎによる枯死が成長に与える影響. 場合,1954年から1983年までの30年間,6.0%/. 採取した円板の年輪数は50前後に集中していた. 年前後で変動し,エゾシカ個体群が崩壊した1984. (図2)。円板を採取した高さは個体によって異. 年から1993年までの10年間は6.9%/年と過去40. なるが,多くの個体で胸高,すなわち地上1.3m. 年間で最も大きな値を示した。しかし,1994年か. 前後であった。採取対象となった樹種が地上1.3m. 44.

(10) エゾシカの樹皮剥ぎによる枯死木の発生と樹木の成長. に達するのに要する年数については不明である. る。対象とした倒木集団でみた場合,エゾシカ個. が,樹齢と樹高との間の関係が示されている最寄. 体群の崩壊後に成長が好転した個体の占める割合. り の 調 査 地( 洞 爺 湖 の 北 東 約70km) で の 結 果. が比較的高く(表3),エゾシカの樹皮剥ぎによっ. (Ishikawa & Ito,1989;野幌自然休養林)によ. て枯死木が増加したことにより個体間競争が緩和. れば,広葉樹の樹高と樹齢との間には次の回帰式. され,間伐後と同様,比較的多くの個体で成長の. が成り立つ;. 好転が認められた。また,相対材積成長率は少な. 樹齢 (年) =15.0865 log[樹高(cm)]−3.2509. くとも崩壊後の10年間は崩壊前と比べ高い値を示. (n=642,P<0.001). し(図3),特に胸高直径10cm以下の個体で成長. この式から胸高(130cm)に達する年数を求め. の好転が著しかった。これらの事実は,エゾシカ. ると,約9年であった(対象はミズナラ,ハリギ. の樹皮剥ぎによって枯死木が増加したことで,短. リ,エゾイタヤ,シナノキなど)。この値を用い. 期間ではあるが残存木の個体間競争が緩和され,. ると,円板を採取した倒木個体は1955年前後に集. 宮木・梶(2003)が示した間伐と同様の効果が対. 中的に更新したと推定される。また,倒木の樹種. 象とした倒木集団で生じていたことを示唆してい. 構成をみると,シウリザクラ,キハダ,ホオノキ. る。. など,遷移初期に現われたり,ギャップ内で更新. しかし,エゾシカ個体群の崩壊前後の成長量の. したりする相対的に耐陰性の低い樹種であった. 違いを種別に見ると,種間および種内でもその変. (小池,1988;小池・中静,2004)。このことか. 化傾向は様々であった。戸田ほか(1996)によれ. ら,円板を採取した個体の多くは1954年の洞爺丸. ば,間伐に対する反応の樹種間の差は光に対する. 台風の後に一斉に更新した可能性が高い。. 性質の違いと関係し,比較的陽性が強い樹種では. サイズの小さな個体だけを間伐するのであれ. 間伐効果が表れやすく,比較的耐陰性が高い樹種. ば,その効果はほとんど期待できない。間伐効果. では表れにくい。崩壊後の方が崩壊前に比べて成. をあげるには,サイズの小さな樹木だけでなく,. 長が良い個体の多かったシウリザクラとキハダ. 大 き い 樹 木 も 伐 る 必 要 が あ る( 菊 沢,1983)。. は,稚樹では陰性的な反応を示し,林冠に達する. Kaji et al.(1991)によれば,エゾシカ個体群が. サイズになると陽性的な性質を持つギャップ依存. 崩壊する前の1980年から1982年にかけて,樹皮剥. 種であった(小池,1988;小池・中静,2004)。. ぎによる樹木個体の枯死がピークに達し,そのサ. しかし,シウリザクラやキハダと同様,ギャップ. イズは胸高直径10cm以下に偏っていた。その後,. 依存種あるいは先駆性の樹種であるケヤマハンノ. 1983年から1984年にかけ,樹皮剥ぎを受けた胸高. キとバッコヤナギでは,崩壊前の方が崩壊後に比. 直径10cmから50cmの比較的大径の個体の枯死が.  べて年輪幅が大きい個体が多く,戸田ほか(1996). 続いた。したがって,エゾシカ個体群の崩壊と樹. の結果と矛盾する場合もみられた。また,イチイ. 皮剥ぎによる枯死のピークの時期はほぼ一致して. では樹皮剥ぎの痕跡がみられる崩壊後の年輪幅の. おり,枯死は小径木に限らず大径木にも及んだこ. 方が崩壊前に比べて小さく,樹皮剥ぎによって成. とから,エゾシカの樹皮剥ぎによる枯死の状況は. 長が低下している個体が,少数ではあるが見られ. 徐伐ではなく間伐に近い状態だったと考えられて. た。これらの事実は,間伐に対する反応は,種の. いる(宮木・梶,2003)。. 光に対する反応の違いだけでは決定されないこと. 間伐は個体レベルでは個体間競争を緩和し. を示唆している。. (Harper, 1977),光合成産物の葉,枝,幹に対 する配分率を変化させるなど,個体に形態の変化. 樹皮剥ぎによる枯死が競争の方向に与える影響. を引き起こす(Messier & Puttonen, 1995)。そ. 間伐の効果と競争の方向の経時的な変化につい. の結果,死亡率を低下させ,個体の成長を促進す. て,梅木(1998)はヨーロッパトウヒの間伐試験. 45.

(11) 並川 寛司・草嶋 乃美・宮木 雅美・石川 幸男. 地で長期のモニタリングをおこなった。その結果,. 下部の資源だけが増大する。一般に,光をめぐる. 間伐強度に関わらず5年以降では個体間の成長の. 競争は一方向的になりやすく,地下部の資源をめ. 差が小さくなり,その効果は比較的短期間で終了. ぐる競争は対称的になりやすいといわれている. することを示した。また,間伐強度に関係なく間. (Weiner, 1990)。したがって,樹皮剥ぎによる. 伐直後の4年間の個体間の競争は対称的であった. 枯死個体が多数発生した直後の林分では,一方向. のに対し,その後は一方向的な競争へと変化する. 的な競争だけでなく対称的な競争も生じていたこ. ことも示した。これらの結果は,間伐効果の持続. とが予想される。また,時間の経過と共に林冠を. 時間および競争の方向の変化が少なくとも間伐の. 形成していた個体の枯死によって生じたギャップ. 強度に影響されないことを示している。本調査地. は修復され,地下部の資源も消費されるため,競. では,相対材積成長率を見ると,崩壊前の20年間. 争は専ら一方向的に働くように変化していくこと. は6.0%/年から6.5%/年の値を示していたが,. が予想される。事実,梅木(1998)は間伐の強度. 崩壊後の10年間は崩壊前に比べて高い値を示し. に関係なく間伐直後の4年間の個体間の競争は対. た。また,この傾向は小径木で特に著しかった。. 称であったのに対し,その後の10年間では一方向. しかし,その後の10年間の相対材積成長率は,程. へと競争の方向が変化することを示した。この場. 度に差があるがサイズに関わらず崩壊前と比べて. 合伐採個体は林分の外へと持ち去られたにも関わ. 低い値を示していた。この時期に胸高直径10cm. らず,間伐密度に関係なく競争の方向が対称から. 以下の個体の相対材積成長率が低くなるのは,樹. 一方向へと変化したことは,間伐による地下部の. 皮剥ぎを受けた個体のうち林冠を形成していた個. 資源の増大が競争の方向を決定づけていることを. 体の枯死によって生じたギャップがこの期間に修. 示している。したがって,枯死個体が持ち出され. 復され,光を巡る一方向的な競争が生残木,特に. ることのなかった本調査地では,競争の方向は崩. サイズの小さな個体に再び強く働いた結果である. 壊直後では対称的であるのに対し,その後は時間. と考えられる。しかし,相対的にサイズが大きく. の経過と共に一方向に変化することが予想され. 光による制限を受けにくい胸高直径10cm以上の. る。しかし,一方向的な競争が強く働くことが予. 個体でも,崩壊前と比べてより低いレベルまで相. 想される崩壊後10年から20年の間の相対材積成長. 対材積成長率が低下し,全体として間伐の効果は. 率は,競争において優位な胸高直径10cm以上の. 小さくなっていた。間伐の効果が一定の期間に限. 個体でも崩壊前以下に小さくなっていた。このこ. られることについて,滝谷ほか(1997)も同様の. とは,地下部の資源をめぐる対称的な競争が依然. 結果を示している。すなわち,広葉樹二次林(ウ. として働いている可能性を示している。. ダイカンバ林)での個体の直径成長量は,間伐の 程度に関係なく間伐前後に比べ間伐後9年から11 年の方が低くなることを示した。これらの結果は, 林分を構成する樹種によって間伐効果の持続期間 が変化する可能性があるが,持続期間が限られる という点では一致しており,同様の傾向が本調査 地でも得られたと結論することが可能である。 前述したように,エゾシカの樹皮剥ぎによる枯 死の状況は間伐に近い状態であった(宮木・梶, 2003) 。林冠を形成していた個体が枯死した場合, 光および地下部の資源量が増大するのに対し,相 対的に小さなサイズの個体が枯死した場合には地. 46. 引用文献 Gill, R. M. A. (1992) A review of damage by mammals in north temperate forests: 1. Deer. Forestry 65: 145-169. Harper, J. H. (1977) Population Biology of Plants. 892pp. Academic Press, London. Ishikawa, Y. & Ito, K. (1989) DBH, height, and crown radius growth of some component species of Nopporo National Forest, central Hokkaido, Japan. Environ. Sci., Hokkaido University 12: 117-138. 梶 光 一(1993) 第 Ⅴ 部 北 海 道 の 動 物 生 態 第 2 章 シカが植生をかえる-洞爺湖中島の例.(生態学からみ た北海道.東正剛・阿部永・辻井達一編著,北海道大.

(12) エゾシカの樹皮剥ぎによる枯死木の発生と樹木の成長. 学図書刊行会,札幌).242-249. 梶 光一(1998)国内最大の激害地を抱えて.林業技術 680:11-14. Kaji, K., Yajima, T. & Igarashi, T. (1991) Forage selection by introduced Sika deer on Nakanoshima Island., and its effect on the forest vegetation. “Proceedings of Int. Symp. Wildl. Conserv., INTECOL 1990”, 52-55. Japan Wildlife Research Center, Tokyo. 菊沢喜八郎(1983)北海道の広葉樹林.152pp,北海道造 林振興協会,札幌. 小池孝良(1988)落葉広葉樹の生存に必要な明るさとそ の成長に伴う変化.林木の育種148:19-23. 小池孝良・中静 透(2004)3.4 攪乱.(樹木生理生態学. 小池孝良編,朝倉書店,東京).32-33. Messier, C. & Puttonen, P. (1995) Growth, allocation, and morphological responses of Betula pubescens and Betula pendula to shade in developing Scots pine stand. Can. Jour. of For. Res. 25: 629-637. 宮木雅美・梶 光一(2003)エゾシカの樹皮食いを受け た森林はどのように変化したか-洞爺湖中島における 16年間の森林の変化-.森林保護292:25-28. 中島廣吉(1930)森林材積表.40pp,柴田書房,東京. Rooney, T. P. & Waller, D. M. (2003) Direct and indirect effects of white-tailed deer in forest ecosystems. For. Ecol. Manage. 181:165-176. 後志森林管理署・日本林業技術協会(2005)平成16年度 洞爺湖・中島森林植生回復事業調査報告書.71pp,後 志森林管理署・日本林業技術協会,倶知安. 助野実樹郎・宮木雅美(2007)エゾシカの増加が洞爺湖 中島の維管束植物相に与えた影響.野生生物保護11: 43-66. 滝谷美香・寺澤和彦・梅木 清(1997)ウダイカンバの 個体の成長・形態におよぼす間伐の影響.日林北支論 45:67-70. 戸田清佐・富田守泰・高田秀樹(1996)落葉広葉樹混生 林を構成する数樹種の間伐による肥大成長と材質への 影響.森林立地38:28-34. 梅木 清(1998)ヨーロッパトウヒの成長・形態に対す る間伐の効果.日林北支論46:43-45. Weiner, J. (1990) Asymmetric competition in plant populations. TREE 5: 360-364.. (並川 寛司 札幌校教授) (草嶋 乃美 支笏湖自然保護官事務所自然保護 官) (宮木 雅美 酪農学園大学環境共生学類教授) (石川 幸男 弘前大学農学生命科学部附属白神 自然環境研究センター教授). 47.

(13)

(14)

参照

関連したドキュメント

中空 ★発生時期:夏〜秋 ★発生場所:広葉樹林、マツ混生林の地上に発生する ★毒成分:不明 ★症状:胃腸障害...

船舶の航行に伴う生物の越境移動による海洋環境への影響を抑制するための国際的規則に関して

選定した理由

Photo Library キャンパスの夏 ひと 人 ひと 私たちの先生 文学部  米山直樹ゼミ SKY SEMINAR 文学部総合心理科学科教授・博士(心理学). 中島定彦

り、高さ3m以上の高木 1 本、高さ1m以上の中木2 本、低木 15

最近一年間の幹の半径の生長ヰま、枝葉の生長量

格納容器圧力は、 RCIC の排気蒸気が S/C に流入するのに伴い上昇するが、仮 定したトーラス室に浸水した海水による除熱の影響で、計測値と同様に地震発

敷地と火山の 距離から,溶 岩流が発電所 に影響を及ぼ す可能性はな