基礎造形教育に関する考察
16
0
0
全文
(2) . 基礎造形教育に関する考察. 福. 田. 隆. 真. 1。 は じ め に. 造形教育において, 基礎と専門という関係を明確に したのは, ヴフテマスとバウハウスであると 考えられる. ヴフテ マスと バウハウスがほぼ同時代に造形教育を実践しており, しかも両者ともに , 必然的に, 基礎部門, あるいは予備課程, 基礎課程という, 専門教育に対する基礎教育の部門を設 置したの である。 本稿では基礎造形教育について, ヴフテマスと バウハウスを例に, 専門教育との 関連性について考察を試みるものである.. 2. ヴフテマスの基礎部門 ヴフテマスの教育 プロ グラム (表-1) を考えてみると, 基礎造形教育は, 造形全般の基礎とい うよりも, 個々のジャ ンルの造形芸術に対応する基本に近いも のが取り扱われている 基礎部門に . は 4 つ の 部 門 (フ ォ ー カ ス) が並 列 して お り, グラ フ ィ ッ ク, 平 面 - - 色 彩, そ して ヴ ォ リ ュ ー ム. -- 空間のなかにヴォ リュ ームの構成と空間の構成 が置かれていた. 各々の基礎部門がその後の専 門に直接的に関連していたことは, 表-1からも明らか である. 基礎部門と専門部門の関係が直接 的であればある程, 基礎部門の内容は普遍性よりも具体 生に重点が置かれてくる . )は 版 画 印 刷 に 4 つ の 基 礎 部 門 は そ れ ぞれ の 専 門 に つ な が っ て い た グラ フ ィ ッ ク・フ ォ ー カ ス1 。 ,. つながり, 造形要素としての線の構成な どが基礎部門の授業内容として取り扱われていたが, そう した基礎的な要素の追求だけ でなく, 版画・印刷につながるタイ ポグラフィ ーのように具体的に グ. ラフィ ックの内容をとり入れた授業をも基礎部門 で取り扱われていた. 同様に絵画, 染織の 基礎部 門である平面 - 色彩・フォ ーカスにおいても, 絵画の本質を形成する諸々 のカテ ゴリーを対象とし 絵画, 染織の分野での工房制をとり, 絵画空間, 光による形態の表出, マッスと空間の構成, 構成 の工房においての基礎部門の教育がなされた。 ここでは, それらの工房と絵画, 染織との関連性が グラ フ ィ ッ クoフ ォ ー カ ス ほ どの 明 確 さ は な い に し て も 「あ る 特 定 の 色 彩 表 現 コ ン ポ ジ シ ョ ン , , ,. の形式 が各々 その表面に即 応している以上, 平らな表面, ヴォ リュームのある表面, 動く表面の 2 )という基本方針のもとに行な われており 前述の工房の教育内容がほと 探究が必須の課題となる」 , んど絵画のために行なわれていたとも考 えられる. 絵画と染織が並列的に扱われているのは, 絵画 の精神性や染織の実用性という問題以前の表現形式上の分類からみられる色彩と平面の問題に焦点 を絞っ ていたと考えられる。 ヴォ リューム -- 空間・フォ ーカスの基礎部門においては, 彫刻の初 歩的な教育の他に, 空間的な形態のコンポジショ ンの特性と原理を探る教育がなされていた。 この 281.
(3) . 福. 田. 隆. 真. 基礎部門は, 彫刻, 陶芸, 木工, 金工, 建築の基礎に 当たるもの で, 学生は建築的 思考の教育をほ どこされることに なっ ていた. 基礎部門は, こう して, バウハウスの予備課程とはやや相異してお り, バウハウスのように, 建築を頂点とする授業内容というよりも, 絵画, 彫刻, 工芸, グラフィッ ク等の各造形分野に即応した 基礎部門を置いたと考えられる. こうした 基礎部門を設置する意図としては, 革命以前のイ ーゼル中心のアカデミーの教育による. 階級の否定であり, 全学生に均等な教育の機会を与えることであっ た. また, 革命以前の芸術に対 する狭小なジャンルにこ だわることなく, 生産的芸術的交流, 相互浸透により芸術の統合をはかろ うとする意図があっ た. ヴフテマスの理念を形成したと考えられるカ ンディ ンスキーは, 1920年に 次のように述べている.「最近のこと であるが, ふたつの 注目すべき事態が出現した. ひとつは, 芸 術の各分 野をよく 比較考量し, その本質と価値を解明するのみならず, 各々に固有のカテ ゴリーを 分析しようとする傾向である. いまひとつは, 諸芸術統一への動き である. 各芸術が個々に抱える 諸問題を深く堀り下げることのなか で, 同 じような問題を解く鍵となる方法論を学びとるために, 3 ) 相接する分野に 眼をこらすという動きがいまや自 然の趨勢となっ ている.」 こう したカンディ ンス. キーの意 向は, 芸術教育において, 狭小な分野での専 門教育を刷新し, 芸術の統合をはかるととも に, 芸術教育の方 法として, 造形の普遍的原理の認識と表現媒体の分析を提示した. これらの実践 は ラ ドフ ス キ ー ドクチ ャ エ フ ク リ ン ス キ 一 等 に よ っ て 行 な わ れ, 精 神分 析的方法と称され, ,. ,. ,. 「創作活動の主体は知覚するものの解釈 であり, 心理学的分析の必要性が個 人レベ ルの技術を取得 4 )と その重要性を述べている 知覚するものの解釈の 方法としては, 数 する意味でも必要である」 . , 学的な方法, あるいは, 数量的な構 造, 組み合わせの理論が導 入された. それらは特に 空間の知覚 について であり, 基礎部門のなか でも, ヴオ リュ ーム -- 空間・フォ ーカスで行なわれた. この フォ ーカスは, 彫刻, 陶芸, 木工, 金工, 建築の分野の基礎部門であり, これらの共通項となるべ き要素としては, 空間の知覚の教育以外には無いのである. 基礎部門は4つのフォ ーカスに分かれていたが,もっ とも重要な役割 を果たしたのは,ヴォ リュー ム -- 空間・フォ ーカスであっ た. それは, 他のフォ ーカスが, 後の専門と直接 的に結びつく内容 が多かっ たのに対して, ヴォ リュ ーム -- 空間のフォ ーカスでは, 後の専門領域が広く, 基礎教育 の方法と しては,共通項であるところの造形要素に絞 らざるを得ないところがあっ たと考えられる. こうした 基礎部門の評価として, ルナ チャ ルスキーは 次のように述べている.「まず最初に積極的に ずのすべての要素に - 線, 色彩, 評価 したいのは基礎部門の 発展ぶりである. 実際, 学生が視覚芸術 空間, マ ッス等を個別的に習得することに よって - 通じるためのこの 入門的学習こそは, 革命直後 にわれわれの要求したものが残した不朽の遺産 である. 誰の手にもこの遺産 を譲り渡すわけにはい 5 )これは バウハウス設立にあたり, グロピウスが計画して いた基礎造形教育と酷似してお かない.」 , り, 造形要素と造形方 法の習得という点で専門教育に多大な影響を与えたと考えられる.. 3. バウハウスの予備課程の設立 バウハウスの造形教育を考察する場合, 表現主義から機能主義へと変化した 全体の教育理念の変 遷はデザイ ン教育にとって重要な意味をもたらすが, 更に重要なことは, それらの変遷の中で基礎 教育を扱っ た予備課程, 基礎課程の役割 である. バウハウスの教育の骨子になっている考えは, グ ロピウスが綱領において明 らかにしている. グロ ピウスは造形教育の中でも特に 工作, 工芸の重要 性を次のように述べている.「建築家, 彫刻家, 画家すべてわれわれは工作技術に 向わなければなら 282.
(4) . . 基礎造形教育に関する考察 表-1 ヴフテマスの内部組織 馨 部 門 疋. 三 同 心 円 つ の「 各 部 」 { N キ 一 分 析鈍 ー フ ス ー 心 理 り 1 9 蟹 坪秋 以 後 の「 .ラド 方 法 が 基 礎部 ム 大 鵬 年 門 カ リキ ラ と し 2 次 ら 5 年 次 課 程 の の か の ュ 採 用 て され た ) , 年 2 次 まて 課程1 9 郷 羊 2 5 年 の - 1 年 次 2 6 3 年 課 程i 9 一 0 の. グ ク 円講 ラ フ 同 心 師 - 1 の フ ー フ モ ィ ッ イ ,エ V キ ール ス ー ァヴ オ .フ V リ セ フ ヨー .キ P ミ ト ー リ チ ゥ , R リ ーノ フ ,バヴ . 版画 印 と 刷. 各 科. 各 部 師 講 の. 第 1 料 -グ ラ ク 芸術 フ , ィ ン. L ル ー ニ .ブ P リ チ ト ウ ー ,ミ D オ ー ル .モ ー ン キー ー ス ィ ,ニヴ P ヴ リ ー ノ フ ,バ N リ ス カ ー フ ヨ ,ビ. N ジ 他 ル エフ ェヴ ェ ャー .シ. ン A レ ーヴ ィ .ド キ V ヴ ー ル ス ー オ ア .フ S ラ サ シ モ フ .ゲ R リ ク フ ,ア K ト ー ミ ン ,イス D レ ド ー キ ー 7 ス .が P キ コ ン チ ロ ー ー フ ス ャ , ズ ネ P ツ フ ォ ,ク パ N ス ト ル ー ク フ , ベ ズ ズ M … ツ .ベ D ン ル イ .グ ブ A ク リ ン ー . L ヤ コ カ ヤ フ ス .マ G カ ロ フ .マ A グ リ ン ャ .シ. 1 シ コ フ .マ A ミ キン ス ール ョ .オ A チ コ ン ェブ ェ .シ ウ B ィ ー 他 ツ .. 簿細則 技 技 術 と 法 の. 平 面 -色 彩 円 講 同心 師 - の L ー 彩 ボ ワ 構成 の ,ボ ,色 成 A ニ ン ス 彩 の 構 ェ ,ヴ ,色 A オ ミ ー キ 形 態 表 ス ン に よ る の ル ョ . ,光 ード ロ 表現 フ ワ の ョ ,光 プ ズ 1 ク リ シ 7 ー ン レ テ ム , ュ ,ュ { A レ 主義 ー偽ン ,ド ,共時 N リ 空 構 成 ッ ー ワ と 間 の オ ッス ,ウグ ,マ ヴ A V 7 ー エ ク マ リズ ム ル ス テ ル . ス ォ 7 ノ , , , の キ 想に 抽象 ス ー 構 よ る 一 目 然 か ら へ 転 位 の の 演 習 1 9 2 2 2 奔 ‐. 」. 第 1 画 架陰 キ 斗 - 画 教 科 育学. l . 第 2 科 - 記 念 碑 的 画 絵 壁 画 ・フ レ コ ス. 飾絵 弟” ÷ - 装 画 1 舞 隣 装置陰 加 祝 台 画 大 衆参 典 ト デ ザ の の セ た め イン , の の ン , . 獅一 様 物. 1. 第 2 キ ←プ リ ン と 染 色 ト ヴ リ ー ム ー ヴ リ 成 ヴ 円 彫 ー ム 構 リュ ー ム 同 心 刻 の の オ ュ ォ ュ ォ 空 間 同 心 円 講 師 - 1 9 ぁ ‐ 3 僻 の A キ -ン ス - て .ラヴ 空 間 構成 の 師 講 - N ク チ エ フ ャー .ド V リ キ ー ンス ー ,ク N キ - 7ス ー ,ラド. S キ ラ コ フ ー ス .ブ 1 イ 〕 - フ ャ ,チ 1 フ ー モ フ イ .エ A キ ナ ル ーブ .ゴ S ネ ン ー コ フ .コ B ナ = ザ ー ヒ ム コ ー ワ他 ,ム. ヰ 彫 教 斗 - 刻の 育 彫 刻の縦 零 養 成 の 第 1 料 陶 - 磁 器. . . キ 第 3 斗 - 粘土. 空 間の 同 心 円 1 餐 9 ‐癖 1 9 把- 2 8 年. N ポ レ フ ,ソ P ト ロ 他 フ ィク ,ヴ 聞 ホ ミ ー D フ .チ. ィ き. 素 材 面 上 げ ,表 ,仕. 「 却キ 斗 - ク ・グ ア カデ ミ , ル ープ 」 ン - ト キ ーフ ス ー ヨル ,ジ 1 9 2 2 年 - ? 1 □ ソ フ リ ニ コ フ .ゴ ,K .メ. 模 範 実 験 工 房. V リー ン キ ス ー .ク エ ー フ ラく - フ スー. 三. 1 イ コ ー フ ャ ,チ 1 フ ー モ フ イ .エ ー タ キ イゴ □ ト ス ー ,キ A リ ” ン .クブ ネ P ツ フ ォ ,クズ D ン ベ ク 他 テ レ ル .シ G ッ 9 2 碑‐ ? 彩 研 究 ル ス f ,ク ,1 ,色 リシ キ 9 エル ・ ッ ー 岩 坪一 ? 具の デ ザ イン ,1 ,家 1 ト ? ? 瀞 ム ス フ - オ 室 維 の ,ラ , , A リ シ キ 9 7 ス ー 窓 坪… ? 勺 な こ と ェ ご ,マ ,1 ,技師 主 任 - 親 一 手 A ト チ ン コ 2 0 - 9 ェ ,ロ , ,1 デ ザ イン 属 を霜 オ す 成 と る 構 ,金. 建 築 研 究 室 N ク チ ー エ フ ャ , .ド 1 2 7 0 年 9 ‐ 3 A フ モ フ : イー .エ N ド キ A リ キ ラ ー ス ー … エ ン , フ , : M ズブ ン ク ル ,ギ - □ ソ : フ ,ゴ V コ コ ー リ ン : , , ”. ” , . ”. ”. ・V リ キ 暢 ン ス m ,ク A ズ ネ ツ フ オ .ク く N キ 1 - ス ー 7 ,ラ コ K リ ニ フ ,メ R ム ラ ー ト フ . E ヴ ル ト ル ェ ,ノ V ミ ノ フ ヨー .セ A チ ー セ フ ュ ,シ S ロ ボ フ .ト 任 A ス ニ ン 主 ェ .ヴ L ン ス ニ A ー リ フ フ ェ ャデ .ヴ .ル 内川 キ 1 一 フ ス ー 他 ・ リ キ r イ ス ー . .ル 実 験 研 究 所 1 9 2 6 年 0 - 2 N ラ ト ス キ ー フ . ー. デ ザ イン と. : , ””. ”・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 283.
(5) . 福. 田. 隆. 真. ないのだ/なぜならば芸術家は 一職業″ ではない. 芸術家と工芸家とに本質的な相違はなんらない. 芸術家とは高め られた工芸家のことであるの だ. 霊感がそそぐ稀なとき, 自分の意志の意識を超え た状態にあ って天の恩寵が工芸家の作品を芸術へと開花させるのである. 技に堪能なことは, どの. 芸術家にも欠かせぬこ とであり, そこに創作力の主によるべきところがある. これに際してわれわ れは新たな工芸家の組合を設立し, そこでは工芸家と芸術家の 間に解きがたい障壁を組んだ階級差 ′われわれはともに未来の新 しい建造物を願望し, 構想し, かつ創ろう. そ 別はないことにしよう.. れは建築と彫刻と絵画 を総合のうちにおさめ, またいっの日か数知れぬ大勢の工芸家の手から新し 6 )このように 造形教育を工芸 い信仰が結ぶ象徴の ごとく して天上へと高まっ ていく ものであろう.」 を中心と した枠で捉えなお して, 絵画, 彫刻をもその中に含めることによって, 単に工芸家を養成. するだけではなく, 新しい造形芸術家としての 工芸家を養成する意向であっ た. 実際に当初の教科 内容を見ても, 工芸実習に重点が置かれ, 絵画はその構成要素に分解され, 要素の学習という段階 に組み込ま れている. グロピウスの言う工芸は手作業というよりも芸術制作 の教育としての手段と ) して 捉 え て お り, 以 下 の も の を 提 示 して い る. 7. a) 彫刻, 石彫, 漆喰塗, 木彫, 陶器製作, 石膏取り b) 鍛治, 錠づくり, 鋳物, 旋盤技術 c) 指物細工 d) 装飾画, ステン ドグラス, モザイ ク, 七宝細工 e) 銅版, 木版, 石版, 美術印刷, 彫金 f) 織物. こう した工芸教育に入る前に 各科に共通する創造力の育成の必要性という理由から, イ ッテンによ る予備教育が設立された. この時期の グロピウスの工芸に対する考え方は鋼領 からも解るが, 表現 主義的な傾向にあり, グロピウスは予備課程での手作業を芸術制作の手段と捉えており, 一方, 担 当したイ ッ テンは, 手作業や手仕事自体を芸術作品と見なしていた. そこに グロピウスとイ ッテン. の見解の相異が生じてくるの であるが, 芸術教育にとっ て基礎造形教育の必要性という点では重要 な役割を果したと 考えられる.. ) 4. ヨ ハ ネ ス o イ ッ テ ンの 予 備 課 程8. イ ッテンの予備課程 での教育 内容は, 表現主義的であっ たり, 精神主義的であ ったと言われるが, それは,初期 バウハウスの手工芸教育の理念に合致していた し,手仕事を精神の仕事と統合するイ ッ テンの意図があっ たと考えられる. そのことは彼の教育 内容が, 材料, 素材の体験から出発 してい ながら, 知識や表現形式の習得よりも, 直観力の育 成に重点が置かれていたことからも判断できる. ) イ ッテンは予備 課程の教育目標を 3 つ 設 定 し て い る. 9 1. 学生たちの創造力を自 由に解放し, 彼らの芸術的天賦の才能 を伸ばすこと. 2. 学生たちの専攻種 目の選択を容易にすること. そのためには実材料を用いての練習と, 材質感 についての実習が有効な助けとなる. 3. 将来芸術家としての 天賦を全うさせるために, 学生たちに造形美術家に 必要な物をつくる技術 284.
(6) . 基礎造形教育に関する考察. と, その根本原理を伝達すること. これらを目標に, 形態研究と色彩研究 が授業内容の中心となっ たが 形態研究は 対比 分析 材 , , , , 料, テクスチュ ア-, 構成が方法としてとられた 形態研究は 特に絵画表現の基礎 とか グラフィ ッ .. クであるとかという 特定の造形ジャンルを意図したものではなく 直観力の育成 であり 創造力の , , 解放 であった. 対比(コントラスト)による造形学習は 具体的には 大 - 小 長 - 短 広 - 狭 , , , , , 厚 一 薄, 黒 一 白, 多 - 少, 直 一 曲, 鋭 - 鈍, 水平 ‐ 垂直 斜線 一 円曲線 高 - 低 面 一 線 , , , ,. 面 - 立体(塊) , 線 - 立体(塊) , 滑 - 粗, 硬 - 軟, 静 - 動, 軽 - 重, 透明 - 不透明, 連続 -. 断絶, 流動 - 凝固, 甘 - 酸, 強 - 弱, 高声 - 低声 (騒-- 静) およ び7色の色彩 のコントラス , 0 ) イ ッテンの授業内容の中心をなすものであ た それらは語桑からの感覚的な捉 トをあげており1 っ . , え方であり造形効果に普遍的に影響する概念であり 審美的感覚的経験 知覚的客観的理解 総合 , , , 的造形表現の3つの観点と方法を示してい た 対比を方法とした授業内容には 絵画に通じる表現 , 形式が多く, 明暗による描写, 絵画の分析, グラデー ショ ンとコントラスト 精密描写 叙情的内 , , 容の表現, 陰影によ るデッサン等であっ た。 しかし表現形式は 絵画であっても 対比による授業内 , 容の本質はイ ッテンにとっ て初等教育の本質的構成要素であった 絵画の構造分 析について次のよ 。 うに述べられている。 「この研究は, 線の構成, 立体感のあ る彫刻的関係 明暗の配合度(絵の中の , 明るい部分と暗い部分との割合) などを認識す ることと 表現する ことに関係があったのであ る , . この一連の分析的研究は, 一般的な原理を示すことに加えて さらに 見 る こ と″ と創造的視覚作 ,. 1 1 用に関してのそれぞれ個人的な状況と歴史的な状況とを明らかにしたの である 」 ) 。 対比による感覚学習が視覚訓 練を意図していたのに対して 主として触覚訓練に属する授業内容 , として, 材料とテクスチュ ア一の学習があっ た 材料体験は予備課程修了後 各工房に属 するため , に重要な役割を果していたと考えられる 材料とテクスチュア一の学習の導入として 木材 ガラ 。 , , ス, 繊維, 樹皮類, 獣皮類, 金属, 石材等の材料目録をつくることから始められた が ここにおい , ても, 対比の概念が導入されており, 「滑らか - ざら ざら 硬 - 軟 軽 - 重といっ たようなコン , , トラストは, ただ単に視覚に訴えるだけでなく, 直接その材料に触っ てみなければならない 私は . あらゆる事 象について, つねに機会あるごとにすべ ての材料のもっ ている独自の材質 感や触覚的特 1 2 ) 質を審美的感覚に訴えて, それを体験してみることを怠らなかった 」 。 と述べている。 こうした材 料体験は, 材料に対する合理的使用の効果よりもむしろ 触感覚の開発であり 材料体験の後に記 , , 憶に基づいて描写させ ることにより, 触感覚の視覚化への試みでもあっ た 「このような自然研究 。 , 物の性 質を利用しての造形的研究は, 観察力と経験によって得た感覚に対する記憶を増進し 発達 , させるものであっ て, それは模倣的な練習ではなく, 観察や触覚によっ て得たものを 造形的に翻 , 訳する能力の啓発に役立つ訓練である この造形基礎 練習は 学生たちにと ってはまさに言葉にい 。 , い現わすことの できないほ ど, その効果に対して絶対的に心服するに 至るほ どの結果 をもたらし 3 )とイ ッ テ ン 自 身 が こ の 学 習効 果 に つ い て 述 べ て いる た.」1 , 。. 形体の研究として構成による学習をイ ッテンは行っ ている ここで言う構成とは 単純に画面構 。 , 成, 立体構成という意味あ いであるが, 抽象形体の認識 体得とコ ントラストの応用による方法が , なされている。「抽象形体の 構成に関する諸研究は 造形の基礎学習 を前進させ 深めることに役立 , , つと同時に, 新しい造形表現の手段を発達させ, 基礎造形に関する研究に成果 をもたらす重要な科 1 4 )とし 四角形 三角形 円形の基礎形体と身体運動の関連性から 形体の空間的な認 目であ る。」 , , , , 識と体得を行っている。 一方, コントラストの考え方から 線 面 立体などの要素について 比 , , , , 例関係, 比例数値を用いた平面構成, 立体構成 の授業内容を展開させた この2つの方法は 造形 。 , 285.
(7) . 福. 田. 隆. 真. に対して, 身体をも含めた感覚的認識と, バウハウスがその後に展 開する要素主義的な造形への認 識の両者を包括した特徴のある内容であっ たと考えられる. 色彩学の内容につ いても, イ ッテンは感覚的認識の方法によっ て, コントラストの考え方で進め ている。 イ ッテンの創案した12色環は, 黄, 赤, 青の三原色をもとに, 中間の色相をとり, 橋, 紫, 緑となり, 更に中間をとって第3次色の黄橋, 赤燈, 赤紫, 青紫, 青緑, 黄緑とし合計12色相をつ 3年に創案されたオストワ ルドシステム と同様, 黄から始ま って黄緑で くり出す。 この色環は, 192 終わる右回りの色相環であり, マンセルの 色相環とは左右が逆になっている.12色環の習得の後に, コ ン ト ラ ス ト を 利 用 して, 色 彩 そ れ 自 身 の コ ン ト ラ ス ト, 明 ・ 暗の コ ン ト ラ ス ト, 寒 色 ・ 暖 色 の コ ン ト ラ ス ト, 補 色 相 互 の コ ン ト ラ ス ト, 同 時 性 的 コ ン ト ラ ス ト, 色 質 の コ ン ト ラ ス ト, 色 量 の コ ン ト ラ ス ト の 7 つ の コ ン ト ラ ス ト の 授 業 内 容 を 行 っ て い る。 こ の コ ン トラ ス ト は, 色 彩 の 錯 覚 に よ る. 同時対比ということ でも包括している が, むしろもっ と広義の意味での 感覚的な色彩のもつ対照作 用 で あ っ た。. こう したイ ッテンの形体と色彩に関する予備課程は, 初期の バウハウスにおいては, 工房の準備 もまだ不完全であっ たために, 中心的な役割を果たすことに なっ た. イ ッテンの授業内容の特徴は, 実験 . 理解 - 技能 (造形) の原則をとり, それぞれの課題に対 して直観によ っ ていきいきとした 感情を湧き起こさせ, 更に知的分析へと導く 方法であっ た. 感覚的な認識の後に客観的理解という 方法は, その後の美術教育に多大な影響をおよぼしたが, イ ッテンの教育の背後に あるものは, 彼 自身の芸術観 であ った。 表現形式としては造形要素と 造形方法を導入しているが, グロピウスの目 差した建築教育のための基礎造形教育 ではなく, 芸術家養成のための予備段階としての創造性や直 観力の育成に, その目標があっ たと考えられる.. 5。 モホリ=ナギとアルベルスの基礎課程 イ ッテンが1923年に バウハウスを去り, 新たに基礎課程をモホリ=ナ ギとア ルベ ルスが担当し た。 モホリ=ナギはイ ッテンの退職と 前後して招曙され, 金属工房を担当する形態親方 であっ たが, イ ッテンの退職後は予備課程の担当の長として,新しい時代に即 した造形教育を展開したのである. 1925年の予備課程のための学習計画 では, 予備課程の内容は細分 化され, イ ッ テンの時代のよう な無目的な造形活動による創造性の育成という特徴から, 具体的なデザイ ンのための造形活動とい 1 5 う内容に限定された 観がある。 教育内容も具体的であり, 次の3つを明記している. ) 1. 基礎的な実習教育: 材料と道具の種々の型に なじむ;基礎課程のための特別工房で実用品 を考案し, 作り上げる. 独自のデザインを案出し, 材料の選択, 経済, 技術の面 でそれらが正しいことを証明する.. デザインを自 主的に作品化する. 完成品を, その機能, 表現性の面 で, また形態 (規模, 材料, 色彩) , 経 , 材料 (分量, 価格) 済 (支出, 収益) および技術 (構成, 制作) の面 で相 互に批評しあう. 材料見本を集め, 系統だてて表にする. 工房と工場を案内者つき で見学する. 投影図と製図が, 一般課程の専門的グラフィ ッ ク・アートへの 手引きとなる.. 1 基礎的な形態教育: 1 286.
(8) . 基礎造形教育に関する考察. 理論と実習: 形態の諸要素の分析 (配置方向’ 表示, 術語) 有機的, 機能的諸関係 (原理, 構成, 構造). 抽象の原理 (外観, 本質, 基本的図式) デザイ ンの, 本来的かつ二次的, 基本的かつ複合的な適用。 デザイ ンの練習:作図, 画法, 組立て。. 1 1 科学諸科目 1. デザイ ンの方法のために, 数学, 物理学, 力学, 化学の基本的法則を, 実際的に応用 し, かつ 数と測定, 物体と形態, 力と運動, 均衡とリズムの意味の論理的な理解との関連において学ぶ . この内容が示すように, この時期において基礎課程は, デザイ ンのための基礎教育という設定であ り, 実習教育においては, 工房との関連性を深めるとともに, 形態教育においては, 要素分析と原. 理の確立という特 質を打ち出している。 実習教育が工房と関連をもつのは, 初期 バウハウスの手工 教育重視の残り であり, 要素分析と原理の確立は, モホリ=ナギの構成主義的思考の影 響であった と 考 え ら れ る し, 同 時 に, ドゥ ー ス ブ ルフ, リ ー トフ エ ル ト 等 の デ・ ス ティ ルの エ レ メ ン タ リ ズ ム. の影響がバウハウスをより合理主義的なデザイ ン思考へと方向を変えさせ, 初期の表現主義的思考 が後退したと考えられる. 要素分析の方法は バウハウスの遺産 であるといっ ても過言ではないくらいに, 盛んに行なわれて いる. 特にそれは基礎教育の方法として導入されている場合が多い. モホリ=ナギは一般的要素論 6 ) と し て 次 の よ う に 分 類 して い る. 1. 1. 既知の形体 数学的・幾何学的形体. 生技術的形体. 1 1 . 新しく作りだされた形体 自由形体 「新しい」 形体は次のような根拠にもとづいて制作さ れる. 1. 測定関係 (黄金分割, および他のプロポーション) 位置 (測定可能な角度) 運動 (速力, 方向, 推進, 交又, 伸縮, 連結, 浸透, 相互浸透) 2. 異なっ た様相の素材 構造 テ クス チュア. 表面処理 マッシン グ. 3。 光 (色彩 視覚的イリュージョ ン 形体の関係がもつ効果としては. 反射. 反映). 1. コ ン トラ ス ト ゞ 2 . ゆ力 み. ヨ. 3. ヴ ァ リ エ ー シ ョ ン a. 変 移, 転 移. b. 連続的反覆 c. 回 転. および, これらの組み合せ. 287.
(9) . 福. d. 反映. 田. 隆. 真. i. この要素論はそのままの 形 で基礎教育の 内容としてもたらされた. 要素分 析と 空間認識のために 様々 な材料を用いて, 空間構成の課題を提示している. もっ とも代表的なものとしては, 木材, 金. 属, ガラス等の素材による動力学 的な均衡状態にある空間構成 であ っ た. これらは, 材料体験の意 図も含まれているが, 主眼は構造や運動 感の要素の追求であり, 同時に, バランスと空間の視覚的 概念と思考法の発達ということにあっ た. 本質的には, 構成 主義的な造形原理に基づく 教育 であり, 7 ) 空間認識の基礎教育は, 建築を理解するための 一方法であったともいえる. 1 アルベ ルスはモホリ=ナギと同時期に基礎課程を担当し, 構成主義的な造形教育をより明確に提 示した. よく知られている造形における経済性という観点からの立体構成もそのひとつであるが, 8 ) それ以前に, 工房での基礎教育として次のように 提示している. 1 題目:. 工房での実験の基本となるもの. 下記の諸点に関連した材料の使い方. a) 延長 (量, 空間, 面, 線, 点). b) 運動 (静力学 - 動力学) c) マ ッス (均整 - リ ズム, 付加-- 削減). d) エネ ルギー (正 一 能動, 負 - 受動) e) 表現 (色彩, 明るさ - 暗さ, マティ エール). これは, 選択した実習, あるいは課せられた実習のいずれの場合に も同 じである. 材料を集めることと, 材料を組織的に表に分類すること. 各種の工房や工場を見学すること. 範囲: マティ エール実習およ び材料実習 (繰り返し交互に行なわれる) 1. マティ エール:外観と材料の関係, 材料の構造, 製法, およ び感触を利用する. 2. 材料:出来上りを検討し, 活用する目的で構成する. 目的: 自発的に発見し創案すること. その際, 節約と責任が強調される. 自己訓練と批判能力 正確さと明確さ 職業選択のために:各自に 適した仕事の分野と材料の種類を知ること. アノレミノレスの教育法は, 上記のように材料による実習から出発し, 自 己自身の経験から独創的な 方法を修得することを目的としている. その過程の特徴のひとつとして 「経済」 ということをとり あげており, 「この場合, 経済とは, 労力と材料を節約すること, および望ましい成果を得るために 1 9 )と述べられている この経済 ある 労力と材料をできるだけ有効に使うということを意 味する.」 , .. いは節約という考え方は, 材料使用のみならず, 道具使用に関しても実行され, 造形過程における 合理的な計画を立てるための教育手段 であっ たと考えられる. 材料や道具に対してアルベ ルスの授 業内容は, 自己発見の態度を育成することが重視されており, 材料の広範な使用, 応用, 道具使用 の工夫がなされた.イ ッ テンの材料へのア プロー チでは制作者の感覚が先行し,材料の主観化によっ て習得されるのに対して, アルベ ルスの場合には, 材料の可能性を客観化する方法がと られた。 し かもそこには技術と経済性が美学的配慮よりも重視されていた. こう した基礎課程での構成的な思 考法は, グロピウスの構想した工房 での教育理 念と合致する部分が認められ, 実習を通しての造形 思考は, 工房教育の基礎にもなり, イ ッテンの行っ た予備教育の予備の段階から進み, バウハウス 288.
(10) . 基礎造形教育に関する考察. の造形教育の基礎課程となっ たのである. 6。 基礎課程での科目の拡大 一般にバウハウスの教育を考察する場合, その歴史的区分を 4 つ に 分 け て 行 う こ と が 多 い. そ の. 4つ は, 表 - 2に見られるような区分であり. それぞれの時期の教育目標は次のようにまとめられ 0 ) る. 2. 第1期 (工芸学校) 芸術的な才能をもった手工芸家 第2期 (デザイ ン大学) 工業に関する造形の問題すべてを処理する力をもっ た幅広いデザイナー. 第3期 (社会主義的な労働大学). 生活現象全体を社会的・技術的り経済的 o 心理的に組織づける専門技術者. 第4期 (建築工科大学) 建築り室内装備・広告り写真・織物の各専門デザイナー この4つの時代において, 基礎課程を担当したのは前述の3人が中心となっていて, 第1期がイ ッ テン, 第2期がアルベ ルスとモホリ=ナギであり, 第3期以降はアルベ ルスが中心となるが, 担当 者は多人数になり, 科目の増大がなされた. 具体的には, カンディ ンスキーによる 「分 析的描写」 「色彩演習」シュ レンマーの「人間の研究」「人体描写」クレーの「素描」「構成」 , シュ ミッ トの「レ タリン グ」「形態論」等である。 これらの基礎教育は第3期以降, アルベ ルスの基礎課程に補足的に 行なわれていたものであるが, 各科共通の基礎という内容から離れ, 各科に対応する基礎科目の増. 設がなされたといえる。. カ ン ディ ン ス キ ー の 授 業 内 容 は 次 の よ う に な っ て い る.. 1. 1 ) 抽象的形態の諸要素2. a。 導入部 19世紀における分析, 総合の残余, 始まり b。 色彩学. 終り, 総合の新しい基礎. 孤立した色彩, 色彩組織法, 相互関連, 緊張の法則, 関係, 作用, 合目的性. c。 形態学 孤立した形態, 形態組織法, 相互関連, 緊張, 作用, 合目的性。 d。 色彩ならびに形態学 色彩と形態の関係, 緊張と作用における両者のずれ. e。 基礎平面 緊張. 授業の方法 講義, 与えられたテーマおよび自己設定のテーマに基づく学生の練習, 共同討義および精密な 分析の練習。 289.
(11) . 福. 田. 隆. 真. 1 1 分 析的素描. b. 初歩 学生によ っ て設定された静物の正確な素描, 諸平面の限定, 大きな形態, 単純な相互関連. b. 構成的な網の構築. 主要課題. 個々の 複合形態の精密な関係 と, 個々の形態の大きな形態に対する精密な関係. c. 転移 対象の構成的緊張, 主な要素の強張, 力学, 焦点への転移. d. 利用 課題cの組織的強化のための色彩の利用.. これらの授業を通してのカンディ ンスキーの目的は, 分析的方法と総合的方法の2つの方法によっ て, 考える能力を培うこと であっ た. それは19世紀までの遺産 である専門化と, その結果としての 分裂から来る影響が, 美術教育の問題をも細分 化, 専門化してきたことへの危1具でもあり, 総合へ の転換であっ た. カンディ ンスキーは分析=分 裂の方法を総合的な観点から補足することによって 芸術の分野だけ でなく他分野に関しても有機的なつながりを感じ取ることのできる能力の開発を目. 差していたのである. 同様のことは基礎課程のみならず, 自由画課程においても, その目的が, 構 造, 技術, 法則などにあり, 分 析的方法によ って, 「 あれか - これか″的考え方の硬直状態から脱 2 2 )への転換を目的とした教育を行ったのである こ し, 一もまた″という柔軟で生き生きした考え方」 . う した分析的方法の教育 で判断の基準となるものは基礎課程,自由画課程の別なく,主観 であったこ ・ とをニーナ・カンディ ンスキーは次のように述懐している. 「分析理論を実際の表現に移すたびに, わたしたちがいつも確認したのは, そう した理論の基準があくまでも主観的なものだったというこ とだっ た. カンディ ンスキーの場合, 青といえば直ちに寒色であっ た. かれは, 青を寒色として感 3 ) じな け れ ば い け な い, と 教 え た.」2. マイヤーが学長として在任していたバウハウスの4期に, 基礎課程はクレー, シュレンマー, ンュ ミ ッ ト等も補足していた. この時期には, 全体の目標が各専門デザイナーの育成ということにあり, 基礎課程もより 多岐に渡り, 専門に直結した分野での狭い分野での教育がなされていたと考えるこ とができる. クレーの課程を見ると形態の法則性をデザインに結びつける内容が行なわれていた. 以下その内容である. 4 ) 平面の基本的なデザイ ン理論2 1。 概論. 1. デザイ ン理論の説明 2. 基本的組織 3. 特殊な組織. 4. 構成 1 1 . 平面幾何学的デザイ ン A. 法 則. 5. 形態の把握, 緊張関係の生起, および規準 6. 基 本 的 形 態 7. 形 状 と 大 き さ と い う 点での形態. 8. 中間的構成 290.
(12) . 基礎造形教育に関する考察. 9。 形態の輪郭 10 。 混成的形態. B. 法則からの逸脱 1 1 。 通常の規準からの逸脱 12 . 不規則な位置 13 . 不規則な形態の輪郭 14 。 分散. 1 5 。 自由な不規則性 1 6 。 曲線の不規則性. 1 7 . 中心点の移動 18 。 進行. これらの内容から考えられることは, イ ッ テンの内容のように, あるひとつの形式を方法論として, 全体目標に創造性の育成といっ た幅広い内容というよりも, より専門化した造形の-分野の基礎と して取り扱われていた. 例えば, カンディ ンスキーの基礎課程と自由画課程とは直接的なつながり をも っ て い た し, 同 様 の こ と は, シ ュ ミ ッ ト の レ タ リ ン グに も み ら れ る こ と で, 商 業 美 術 部 門 へ 入. るための準備段階として扱われていた。 シュ レンマーの裸体画にしても, 総合的な教材ではあるけ れども, 彫塑と舞踊のための基礎であり, その目的を次のように述べている。 「その目的は, 人間の. 存在全体と親しく なることであり, これは, 二つの観点から見ることができる。 ひとつは, 可視的 現象とその表現, すなわち, 尺度と均衡(デューラー, レオナルド , 黄金分割の均衡論)によるもっ とも単純な線に遷元される線的輪郭と彫塑的裸体描写である。 もうひとつは, 自由空間(自然空間) 2 5 )こう と限定空間 (芸術) におけるメカニ ズムと運動の表現, その限界運動の図表と振付け図法。」 した第3期以降の基礎造形教育は, アノしくルスが中心となりながらも, 専門技術者, デザイナーの 養成という立場から, 基礎科目の拡大がなされ, 工房課程との直結に近い科目の設定がなされた。. 7。 基礎課程の意義 前項までに, ヴフテマスと バウハウスを例として基礎課程について見てきたが, 造形教育の基礎 としてのとらえ方は, 大別して2つの種類がある。 ひとつは, 芸術教育の基礎あるいはその前段階 ととらえるものと, もうひとつは, 造形の基本要素からくるデザイ ン教育の基礎 である。 この2つ. を明確に区別することはできないし, デザイ ン教育も広義の意味において芸術教育に含まれるもの であるから, 一線を画すこと自体矛盾してくるのであるが, 基礎造形の捉え方の観点の問題として,. 広く芸術全般の 基礎能力の育成にあるものと, 造形素材, 材料の習得と基本要素との関連性に 観点 を置く ものとでは, たとえ表現形式に共通点が見出せたとしても, 本質的には専門との関り合いは. 異なるものである。 基礎造形教育を広く芸術教育の基礎, あるいは, その予備段階として捉えた例として, イ ッテン の予備課程が考えられる。 イ ッテンの予備課程での目的は学生の創 造力の解放と直観力の育成であ り, それに付随する効果として芸術的表現のための造形の基本法則を教授することにあっ た。 そこ. には, グロピウスの言う手工作あるいは手工芸の教育ということは, 手段として入っているだけで あり, 目的は, あくまでも芸術家の養成としての創造力と直観力であっ た。 具体的な授業内容の絵 291.
(13) . 福. 田. 隆. 真. 画分 析, コントラストによる表現, 色彩などは, イ ッテン個 人の芸術観に基づく芸術表現のための 基礎造形教育 であ った. グロピウスの手工作の教育は形式的には導入されていたものの建築をはじ めとするデザイナー養成という意味からは離れていたと考えられる. 手工作教育が形式的に予備課 程に導入され, 専門教育との関連性を示す作品の例として, 図-1, 2, 3, があげられる。 図- 1では対比効果のための材料の学習であり, 様々 な材料を収集することによ って表面効果の習得を し, 更 に 図 - 2に見られるように単一素材において, 表面の造形効果を試みている こうした予備 .. 課程での手工作教育の内容は, 図-3において, 直接的な効果を示している. 図-4においては, 基本的な立体を使っ て立体感覚を育成するための課題 で, 建築模型のため ではなく, 基本的な要素 の分析とその総合による無目的な造形練習である. これは, イ ッテンがバウハウスを去った後にも. 図-5に見られるように, 要素から総合するという課題を提示している. いずれにしてもイ ッテン の授業内容は グロピウスの考えていた建築教育の 基礎 ではなく, 各科に共通する性格をもっていた の であ る.. これに対して, ヴフテマスの基礎部門や, バウハウス でのモホリ=ナギ, アルベ ルスの基礎課程 では, 図-6にみられるような素材の制限, 方法の限定などによる造形方法の教育 であったといえ. る. より狭義な言い方をすると, 素材と方法の構造化, 部分と全体の関係づけによるデザイン教育 であ っ たといえる. モホリ=ナギの立体構成, アルベ ルスの紙による立体構成の内容もその目標は,. イ ッテンのそれのように, 創造力の開発, 自己表現ということが第一義にあるの でなく, 限定条件 のなか での造形方法や構造化であったと考えられる. イ ッテンの基礎造形教育 が, 個人の潜在能力 の存在を前提として, それを引き出すための芸術教育の基礎 であったのに対し, ヴフテマスの基礎 部門, モホリ=ナギ, ア ルベ ルスの基礎造形教育は, 専門あるいは, それを受け入れる社会が要求 する一定の理想へと近づけるための基礎 であっ たといえる. 表-2 「バウハウスの教育システム」 第1期 1 9 1 9年開校時 範 1手工芸による訓練 , 2 .線画・着色画によ 囲 る教育 3 ,科学的理論的教育. 履修課程 1 ,徒弟課程 2 ,職人課程 3 ,親方見習課程 1 ,建 築 .絵 画 工2 3 ,彫 刻 4 工芸全体 房 ,. 292. 1 9 2 1年 1 .手工芸による. 教育. 2 ,造形教育 3 ,補足教育. 第2期 1 2 9 3年 1 .工作教育 2 ,造形教育 3 ,建築教育. 1 ,徒弟課程 2 ,職人課程 3 ,親方見習課程. 1 ,予備課程, 半年 2 ,工房課程, 3年 3 ,建築課程. 1 ,建 2 ,絵 3 ,彫 4 ,工. 1 ,予備課程の工房 2 ,工房課程の各工 房 3 ,建築課程の工房. 築 画 刻 芸. 1 9 2 5年 1 ,基礎教育 2 ,工芸教育 3 ,建築教育. 1 ,基礎教育工房 2 ,工芸教育の各 工房 3 ,建築教育の工 房. 第3期 1 9 2 6年冬. 1 ,造形教育 2 ,工作教育. 3 ,建築教育. 1 9 3 0年. 1. 1. 第4 期 1 3 2年 9. 1 ー. 1 ,基礎課程1年 2 ,本課程 3年 3 ,建築課程 1年半. 1 ,基礎課程1学期 2 ,工房課程 6~7学期 3 ,建築課程9学期. 1 ,1学年(1学期) 2 ,2学年(2学期) 3 ,3学年(3学期). 1 .基礎課程工房 2 .本課程. 1 ,基礎課程 2 ,工房課程 Q ) 建 設 ( ) 広 告 2 { )装 備 3 柳テキスタイル ( 5絵画教室. 2・3学年 Q )建 築 { 2 )広 告 ◎写 真 綿織 物 ( )造形美術 5. n腔 築. ( ) 広 告 2 ( 3 )演 劇 = ( )自由美術 4.
(14) . 基礎造形教育に関する考察. 図2 図1. 図3. 「様々 な 材料の 対比効果」 ワイ マー ル 1920年. 「なしの 木の長持」 ワイ マー ル 1923年. 図4. 「木彫によるテクスチェ ア」 ワイ マー ル 1922年. 「立体構成」 ワイ マール 1921年. = .. ‐…. 図5. 「牛の写真のモンタージュ」1934年. 図6. 隣 り 己 ヒの折断による作品」1928年. 293.
(15) . 福. 田. 隆. 真. )王. 1. ス テ フ ァ ニ ー・バロ ン, モ ーリ ス・タ ッ ク マ ン 編, 五 十 殿利 治 訳. 「ロ シ ア・ア ヴァ ン ギャ ル ド」 1982 年, リ. ブロポート, によれば「同心円」という言葉が使われているが, 本稿では原書 TheAVANT‐GAI口)Ein RUSSIA で使用 さ れ て いる 「フ ォ ーカ ス」 を用 いた,. 2. 前 掲 書 l. p .206. 3. 前掲書l p .204. i i butoa l las i IVchutemas l la4351978年 Apr i lp tor 4. Lar r sa Zadova a de .50 ,Uncont ,Casabe 2 6 5. 前 掲 書 l p 0 .. 6. バウハウス翻訳委員会 7. 前 掲 書 6 P .45. 「BAUHAUS別冊日本語版」1 9 6 9年 造型社 p 4~p .4 .45. 8.予備課程と基礎課程の名称について明確な区別はなされていないが, 本稿では宮島久雄の考えにより区別した. 「私はイ ッテンの課程を 《予備》 課程とよび, アルベルスやモホリ=ナギのそれを 《基礎》 課程とよんで区別し て いる. バ ウハ ウ ス の 人々 が, 必ず しもこう いう 区別 を して い た わけ では ない が, しか し そ れ でもイ ッ テ ン の時. 期には, 《基礎課程》というよび方はされなかったようであるし, イッテンの去ったあとでは, 習慣的に《予備課 程》とよ ば れ は した が, 《基礎 課 程 Grundkursま た は Grundlehre》の ほう もよ く 使 われ て いた よう であ る.」 (「バ ウハウス・デザイン教育の系譜」 大阪芸術大学芸術研究所編, 大学紀要 芸 術″ 1971年 p.47) 9. ヨハネス.イ ッテン 手塚又四郎訳 「造形芸術の基礎」1 970年 美術出版社 p .12. 10 . 前掲書9 11 . 前掲 書 6. p .18 p .253. 14 . 前掲 書 9 15 . 前掲 書 6. p .93 p .118. 12 . 前掲 書 9 13 . 前掲 書 9. p .56 P .58. 「ザ ニ ュ ー ヴィ ジョ ン」 1967 年 ダ ヴィ ッ ド社 p 16 .モ ホリ = ナ ギ 大森忠 行 訳 .119 .L H BAYER W GRO P I 1 GRO P 工 BAUHAUSI US US 9 1 8一1 9 2 8 T h M fM 「 17 」 tl979年 p e u e um o s ode rn Ar . , . ,. . . 122 18 . 前掲 書6 19 . 前掲 書 6. p .153 p .151. 20 96 2年4月, 美術出版社, p 5 .5 . 宮島久雄 「変貌した教育目標と基礎課程の意義」 デザイン, 1 2 1 980年 みすず書房 p . . ニーナ・カンディ ンスキー 土肥美夫 田部淑子訳 「カンディ ンスキーとわたし」 1 193. 22 .156 . 前掲 書 6 p 23 .192 . 前掲 書 21 p 24 .154 . 前掲 書 6 p. 25 . オスカ ー・シ ュ レ ン マ ー. 日 記 1928 年 11月 3 日, 「バウハウス」. 他訳 1 97 1年 講談社 p .56. ルードヴィ ヒ・グローテ他編 宮島久雄. 図表出典 表-1. ス テフ ァ ニ ー・ バロ ン, モ ー リ ス・タ ッ クマ ン編, 五 ト殿利 治 訳 年. リ ブロ ポー ト p .210~p .211. 表-2 宮島久雄. した も の.. 「生産工房・そのデザイン活動の意義」. 「ロ シア・ア ヴ ァ ン ギャ ル ド」. 1982. デザイン1 9 62年5月号 美術出版社 p .41 を基に. ’Thame ignand Form’ sand Hudson 図- I Johannes工tten”Des .36 ,London l963 年 p 図-3 前掲図 - I P.41 図-3. ‘Bauhaus Ra i ik” DuMont l982 年 ner Wi ck‘ ‐Padagog. p .106. 図-4 前掲図- l p.84 図-5 前掲図- I P.56 iv Museum fur Ges l log Gebr l ta tung” Samml l in l981年 ‐Arch 図-6 “Bauhaus ungsKata r ag .Mann Ve ,Ber 294.
(16) . 基礎造形教育に関する考察 P .57. 参考文献 ler“BAUHAUS“ The MIT Pres sl969 年 1. Hans . M,Wing ‘The Avant i i 【 i i spect ves” The ‐Gardei n Russ a 2. St aur ce Tuchman‘ e Bar ron ephan ,1910一1930 New Per ,M MIT Pressl980 年 3 宮島久雄 「新連載=近代デザイン教育の先駆バウハウス:理想と現実 - 1~ 7” デ ザイ ン 1962 年 2月号. ,. ~ 8月号. 美術出版社 (本学講師・函館分校). 295.
(17)
関連したドキュメント
私たちの行動には 5W1H
「教育とは,発達しつつある個人のなかに 主観的な文化を展開させようとする文化活動
C.
「海洋の管理」を主たる目的として、海洋に関する人間の活動を律する原則へ転換したと
英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき
哲学(philosophy の原意は「愛知」)は知が到 達するすべてに関心を持つ総合学であり、総合政
● 生徒のキリスト教に関する理解の向上を目的とした活動を今年度も引き続き
・