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改行と言う符号 ─ 「次第書き書式」分析試論稿 ─

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Academic year: 2021

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(1)Title. 改行と言う符号 ─ 「次第書き書式」分析試論稿 ─. Author(s). 石井, 行雄. Citation. 語学文学, 58: 1-8. Issue Date. 2019-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10928. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) ─「次 第書き書式」分析試論稿 ─ . 改行と言う符号. 1 『五箇条の御誓文』 『大 国立公文書館の常設展示スペースに、 日本帝国憲法』 『日本国憲法』のレプリカが並べられていた。 表記の面から、この三点を並べて見るのは、種々、興味の尽 きないところであった。 慶應、明治、昭和の根本法典の原本のレプリカから、各時代 の行政文書の、究極的に正式なと思われる書記法を見て取るこ. 石 井 行 雄. このように、符号代わりに使われる改行が正式な書記法にお いても利用されていたのである。. 2. ここで想起されるのは、次第書きを記した書式である。. 便宜、『群書類従』を見て、次の二点が目についた。. 『釈奠次第』(『群書類従』 京極中納言定家卿(藤原定家) 巻第八十九、公事部十一、『新校群書類従』第四巻六一二. (『群書類従』巻第百三、公事部廿 著者未詳『結政初参記』 五、『新校群書類従』第五巻二六七頁~). 頁~). いずれも鎌倉初期の成書とされるものである。. とができる。 『日本国憲法』には句読点が施され 補助符号の面から見る。 ている。しかし、 『五箇条の御誓文』 『大日本帝国憲法』には、. の細字双行部分は山括弧で示した。). まず『結政初参記』を例として、摘記する。(説明のため、 私にアラビア数字とアルファベットとを付した。また、史料中. 2(1). 句切りの点は施されていない。しかし、これら二法典の意味が 取りにくいわけではない。よく見ると、これら二典では、意味 の纏りに応じて、改行・文字の大小・字詰の工夫が施されてい るのである。 改行が意味の切れ目を示す符号代りに使われているようであ る。. -  - 1.

(3) レ. 二. 一. レ. 二. 一. 式日 不 結 廳申文 。. 廳申文 。 a〈式日先結 廳 申文 一 。 〉 一 二 1 左一史結 二 在 座結 之。無 與奪 。不 稱唯 。 レ レ 二 一 二 一. 2 乍 3 口傳。史不足者雖. かた. 本稿では1は「主文」と仮称し、 字下げをした2・3は「副文」 と仮称する。1「主文」では左一史が廳申文を「結ぬ」ること を示す。2「副文」は結ぬる際の左一史の所作を示す。3「副 文」は1「主文」に係わる口伝を示す。. この例では1「主文」に対し、2「副文」は旧例を示し、 3「副. 文」では雨儀の場合を示す。これに対し、2a「副文添文」で は旧例に係わる口伝を示す。. 2(2). 『釈奠次第』を例として、初行より見る。 次に、. 雨儀 一 。 〉官廳儀。 1 釋奠 a〈近例用 二. 二. 二. 。. 戸外東腋兀子 。 a〈北上西面。或南上。 〉 一. 一. a〈戸内南上〉 。. . 戸内西腋床子 。 a〈北上東面。〉 8 參議著 二 一 東廊東南西 著 之 上卿先著。參議後參時者。經 二 一 レ 。 上卿前床子置 式筥 。 二. 一説。上卿西掖。 . 9. . . . . 參議東掖。b〈戸外南上〉 東廊座 一 。 少納言弁外記史著 二 . -  - 2. 改行、字下げと並用することで、主文に対する追加注解を 副文で施すことができる。 1「主文」には細字双行部aが付され、結ねの順次につい て注す。本稿ではaの部分を「添文」と仮称する。. 6 經. 一. 2 公卿無文帶。蒔繪劍。 ─ 。 3 弁少納言丸鞆。 a〈各相 二 具靴 一〉 廟拜 一 。 4 重服人不參。輕服日數人參。不 二 北廊座 。 a 〈正廳東昇廊也〉 一 5 上卿參議著 二 待賢門官東門及廊北幕 一 〈隨身褰 レ 幕。 〉 經. 細字(字の大小に依る書記)と字間挿入により、注解を施 すこともできる。1a「主添文」では1「主文」中の「廳申. 座. 二. 廊戸前橋 。著 戸内外 一 二. 3「副文」は、実はこの「主添文」に対しての口伝である。. 7 上卿著. 文」に係わる故実を注する。 1aは「主添文」であるが、次の例文のように「副添文」も ある。. 二. 時申 一 。. 時移由 。 一 1 弁侍申 二 之。a〈口傳云。不 讀 丁 2 舊例或陰陽寮守辰丁申 レ レ 二  。或又乍 二 三字 一 讀 レ 之。 〉 字 一. 3 雨儀。弁侍不. 11. 10. 12.

(4) 少納言弁南面西上。外記北上西面。史北上東面。. 分割、条件に差のある場合の所作の差を、改行することによっ. 1a「主添文」で、雨儀で(省略式で)近代は行われること を示す。. 1~4、初めの四行は、主文の羅列である。 1「主文」は釈奠の行われる場所を示す。. であれば次のようになるであろう。. 6「副文」の「戸内外座」に対し、7「主文」8「主文」は 詳説する関係にあるのであり、もし字下げをもう一度施せるの. 又、5a、7a、8aの添文は、所在、座次の説明を付ける ために利用されている。. て明示しているのである。. 2「主文」で公卿の装束を示す。. 6 經. 一. 二. 二. 3「主文」で弁、少納言の装束を示す。 3a「主添文」で、特に靴の扱いを示す。. 經. 北廊座 。 a 〈正廳東昇廊也〉 一 5 上卿參議著 二 待賢門官東門及廊北幕 一 。 a〈随身褰 レ 幕。 〉 座. 。. 廊戸前橋 。著 戸内外 一 二. 4「主文」で忌服の際の参加方法を示す。 5「主文」からは以下、儀式の進行に則して記される。. 上卿 著 戸外東腋兀子 。 二 一 a〈 北 上 西 面。 或 南 上。〉. 戸内西腋床子 。 a〈北上東面。 〉 參議著 二 一 . 8. 7 . 上卿、 参議が北廊座に到着することを示す。 5「主文」では、 5a「主添文」で、「主文」の北廊座についての注記がされる。 6「副文」の主語は、5「主文」の主語と同様、上卿、参議 である。. しかし、次第書きの書式では、このような書き方はしていない。. 紙面の余白の問題であろうが、5からの二字下げはせずに、6. からの改行擡頭(字上げ)、つまり、5と同じ高さへ戻すこと. 6「副文」は、戸内、外座に到る経路を示す。 6a「副添文」は、廊北幕を経る際の、随身の所作を示す。 7・8「主文」では、上卿、参議の着座の場所を示す。7・ 8「主文」が改行されているのは、主語を異にしているため。. 主文相互の改行について見る。1~4では、内容ごとに箇条 書きにした形になっている。つまり、場所・公卿装束・弁少納. 言装束・忌服制の各条に応じて改行している。. で書き進めて行く。. 7a・8a「主添文」には、席次がそれぞれ示される。 9「副文」は6「副文」に対応したもので、上卿、参議の順 に参着した場合の経路を示す。 5~9一続きの内容であるが、経過の説明、主語の差による. -  - 3. 13.

(5) を施すことで、前文の注釈を後文で行う形になっている。. いる。つまり、改行字上げ(本来は、余白があれば、字下げ). 本古典文学大系本を使用した。(本来、補助符号を除いたプレー. 『源氏物語』 「せきや」を例に、仮名書き資料を、仮 試みに、 名書きのまま次第書き書式に替えてみる。テキストは便宜、日. も深い影響を与えていないだろうか。. 身辺のメモとして多用されていたとすれば、 折紙次第書きが、 次第書き書式型の事柄の捉え方は、仮名表記体の資料の成立に. だろう。又、時としては次第書きを記すこともあっただろう。. 添文の役割を見る。7a、8a、 a、 bは座次を注記し ている。6a、3aは所作の注記である。1aは主文の行事の. 主文・副文の関係について見る。5・6は主文の注釈を副文 で行っている。6と7・8では、副文の注釈が主文で行われて. 種類の注記である。5aは場所の注記である。総じて、注記を 添文で行っている。. このようになっている。 ). ンテキストで示せれば良いのであるが、技術的に困難なため、. 伊豫の介といひしは、. 故院かくれさせ給ひて又の年、 常陸になりてくだりしかば、かのはゝきゞも、. 須磨の御旅居も、はるかに聞きて、. いざなはれにけり。. 折にして綴じたものを含む)に記されたものには、追い込みで. かぎれる事もなかりし御旅居なれど、. にけり。. 筑波根の山を吹き越す風も、浮きたる 心地して、 いさゝかのつたへだになくて、年月かさなり. しかど、 つたへ聞ゆべきよすがだになくて、. 人知れずおもひやり聞えぬにしもあらざり. 以上は漢字表記のものであった。仮名表記のものでも、こう した事柄の捉え方は踏襲されないだろうか。. 3. が発生すると言えよう。. 記されたものが多い。清書の際に、内容の理解に対して、支障. 次第書き書式で記されるものは、折紙様式(折紙を縦半折に して綴じたものを含む)のものが多い。縦紙様式(縦紙を縦半. しかしながら、これを追い込みで記せば、内容理解に支障を 来すことになる。. 次第書きの書式は、紙面の制約の中で、改行・字下げ・細字 書きを巧みに駆使して、内容の理解を助けている。. 11. 多く女房であったと言えよう。 仮名表記体の資料の作成者は、 女房と言えども、漢字表記の次第書きを理解する必要はあった. -  - 4. 11.

(6) 給ひけり。. この殿、石山に、御願はたしに、まうで. 又の年の秋ぞ、常陸はのぼりける。 關入(る)日しも、. 京に歸り住み給ひて、. おぼし出でらる。 とのも、. 齋宮の御下りなどぞやうの折の物見車、. ゐ中びず由ありて、. 十ばかりぞ、 袖口・物の色あひなども、もりいでゝ見えたる。. 車、. かく、世に榮え出で給ふ珍しさに、 かずもなき御前ども、みな、目とゞめたり。. 京より、かの、 紀の守などいひし子ども、 むかへに來たる人人、. 紅葉の、色色こきまぜ、霜枯れの草、. 九月つごもりなれば、. 物ぞ」とて、. 「この殿、かく、まうで給ふべし」 と、つげければ、 「道の程、さわがしかりなむ まだあか月より、いそぎけるを、. 色色の襖のつきづきしき縫物・くゝり染めのさまも、 さる方にをかしう見ゆ。 御車は、簾垂おろし給ひて、かの、. むらむらをかしう見え渡るに、 關屋より、さと、くづれ出(で)たる旅姿どもの、. 女車多く、所狹うゆるぎ來るに、 日たけぬ。 打出の濱くるほどに、. 關山に皆おりゐて、こゝかしこの杉の下に、 車どもかきおろし、木隱れに居かしこまりて、 すぐしたてまつる。. 御心のうち、. 「今日の御關むかへは、え思ひすて給はじ」など のたまふ。. 昔の小君、今は衞門の佐なるを、 めし寄せて、. 車など、. いとあはれに思しいづる事多かれど、 おほざうにて、かひなし。女も、. 「とのは、粟田山越え給ひぬ」とて、 御前の人々、道もさりあへず來こみぬれば、. かたへは、後らかし、先に立てなどしたれど、なほ、 類ひろくみゆ。. -  - 5.

(7) 人知れず、昔の事わすれねば、 とりかへして、物あはれなり。 行くと來とせきとめがたき涙をや絶えぬ 清水と人は見るらん 「え知り給はじかし」と思ふに、いと、かひなし。 石山よりいで給ふ御迎へに、. 誰も思ひ知りて、. 「などて、少しも世にしたがふ心をつかひけむ」など、 おもひ出でける。 佐召し寄せて、御消息あり。 「いまは、. おぼし忘れぬべきことを、 心長くもおはするかな」と思ひゐたり。. 「一日は、ちぎりしられしを、さは思し知りけむや。. わくらはに行(き)あふみちをたのみしもなほ. 衞門の佐まゐりてぞ、 (一日)まかり過ぎしかしこまりなど申す。 むかし、. かひなしや潮ならぬ海. おなじやうなる御心の懷しさなむ、 いとゞありがたき。. 「猶、きこえ給へ。 「むかしには、少し思しのく事あらむ」と、思ひ給ふるに、. とて、賜へれば、かたじけなくて、もていきて、. たゞ今の心地するならひになむ。 すきずきしう、いとゞにくまれんや」. うひうひしくなりにけれど、 心には、いつとなく、. 「年頃のとだえも、. さも、うらやましく、目ざましかりしかな」 とあり。. 關守の、. わらはにて、いと、睦ましう、らうたき者に し給ひしかば、 かうぶりなど得しまで、この御徳に隱れたりしを、思えぬ世の さわぎありしころ、 ものゝ聞えにはゞかりて、常陸に下りしをぞ、 すこし心おきて、年ごろはおぼしけれど、色にも出し給はず。 昔のやうにこそあらねど、 なほ、親しき家人のうちには數へ給ひけり。 紀の守といひしも、 今は、河内の守にぞなりにける。 その弟の、 右近の丞とけて、御供にくだりしをぞ、 とりわきてなし出で給ひければ、 それにぞ、 . -  - 6.

(8) 女にては、. 用なきこと」と思へど、 えこそ、すくよかに聞えかへさね。. 「すさびごとぞ、. 「よろづの事、たゞ. この君の御事をのみ、 いひ置きて、. 子どもに、たゞ、. この御心にのみまかせて、ありつる世に 變らで、 つかうまつれ」. まけきこえ給へらむに、 罪許されぬべし」 などいふ。. とのみ、明け暮れ、言ひけり。. 「心憂き宿世ありて、 この人にさへおくれて、. 女君、. いまは、 まして、いと恥づかしう、 よろづのこと、 うひうひしき心地すれど、めづらしきにや、 え忍ばれざりけむ、. かぎりあるものなれば、 惜しみとゞむべき方もなし。. いかなるさまに、はふれ惑ふべきにかあらむ」と、 思ひ嘆き給ふを見るに、. 「逢坂の關やいかなる關なればしげきなげきの なかをわくらん 夢のやうになん」 ときこえたり。. いかでか、. 「命の、. 「あはれもつらさも、忘れぬふし」と、. この人の御ために、 殘し置くたましひもがな、 と、. うしろめたう、悲しきことに いひ思へど、. わが子どもの心も知らぬを」. 思し置かれたる人なれば、 をりをりは、猶、のたまひうごかしけり。 かゝる程に、この常陸の守、 老(い)のつもりにや、 惱ましくのみして、 物心細かりければ、 . -  - 7.

(9) 心にえとゞめぬ物にて、 亡せぬ。 しばしこそ、 「さ、のたまひしものを」など、 情づくれど、 うはべこそあれ、 つらき事多かり。 とあるも、かゝるも、 世のことわりなれば、 身一つの憂き事にて、 嘆き明かし暮らす。 たゞ、 この、河内の守ぞ、 昔よりすき心ありて、すこし情がりける。 「あはれに のたまひおきし。數ならずとも、 おぼしうとまで、のたまはせよ」 など、追從し寄りて、いと、 あさましき心の見えければ、 「憂き宿世ある身にて、 かく生きとまりて、 はてはては、めづらしき事どもを 聞きそふるかな」と、 . 人知れずおもひ知りて、. 「さなむ」とも知らせで、 人に、 尼になりにけり。 人々、. 「いふかひなし」と思ひなげく。 守も、いと、つらう、. 「おのれを厭ひ給ふほどに。 のこりの御齡は、. 多くものし給ふらん。 いかでか、すぐし給ふべき」 など、. 「あいなのさかしらや」 などぞ、 はべるめる。. あくまでも、私解に依る、一つの試みであるが、仮名表記体 資料の理解のために、参考にならないだろうか。. (付記:本稿のデーター入力は、北海道教育大学釧路校非常勤 講師の竹ヶ原康弘が行った). -  - 8.

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