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中世プロヴァンス語における二つの条件法について

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(1)

中世プロヴァンス語における二つの条件法について

著者

和田 愛子

雑誌名

年報・フランス研究

9

ページ

29-63

発行年

1975-12-25

URL

http://hdl.handle.net/10236/9082

(2)

中世 プ ロヴ ァンス語 にお け る

二 つ の条 件法 につ いて

中 世 プ ロヴァンス語 には二 つの違 った形 の条件法が存在 した。一つは通常,

動詞 の不定詞 と動詞 《aver》

(avOir)の

語幹

av_を

取 り去 った半過去形 を結 合 して形作 られ る。 これ をいま条件法 Iと 名付 けよ う。 もう一 つは ラテ ン語 の 直説法大過去形 に由来す る ものであ る。 これ を条件法 Ⅱとしよ う。 ラテ ン語 の 直説法大過去形 は

,北

部 の フランス語 では最古 のテキス トの中にその跡 を幾 つ か留 めてい るだけで早 く消滅 した。南部の プロヴァンス語 で も直説法大過去の 意味 で存在 したのは

,《

Girard de ROussillon》 の よ うな幾 つかの古 いテキス トを除 けば, ご く初期 の間 だけだ った。 しか しなが ら

,プ

ロヴァンス語 では形 自体 は フランス語 の よ うに消 えて しま うことはなか った。す なわ ち

,直

説法大 過去 と してではな く条件法 Ⅱとして残 ったのであ る。従 って

,中

世 プ ロヴァン ス語 では

,条

件法 Iと Ⅱの二種類 の条件法が

,

Ⅱは条件法現在 の意味以外 に さ らに条件法過去の意味 を持 っていたが

,共

存 していたのであ る。 そ して

,中

世 の末期頃か らIが Ⅱに取 って代わ る傾 向が あ り

,現

在 に至 っては Ⅱは完全 に消 滅 し, フランス語の場合 と同 じくIだけが用 い られてい る。

J.Anglade:Gralrlmaire de l'Ancien Provencal,p.261,p.276.

Edouard BOurciez: :E16ments de linguistique romane, p。 344。 H. Lafont: Grarrlinaire Occitane pe 246.

子 愛

(3)

中世 プロヴァンス語における二つの条件法について

条件法 を含 む型 の仮定体系 については

,主

要 な二 つの型 が あ る。す なわ ち,

si+直

説法半過去形 …条件法I」 と「

Si+接

続法半過去形 …条件法 Ⅱ」 であ

る。前者の条件法Iの型 は他所 か ら移入 され た ものではな く

,

フランス南部地 方 で独 自に生 まれ た もの と考 え られ てい る。 とい うのは固定化 した文型 の状態 で1100年 頃 にすでに プ ロヴァンス語 に存在 していたか らであ る。条件法 Ⅱの後 者 の型 は ラテ ン語 の 《si habuissem dederam》 に由来す る もので

,最

初過去 に関す る仮定文 に用 い られ ていたが

,発

展 して文献 以前の時期 にすでに現在及 び未来 に関す る仮定文 に も用 い られ るよ うにな っていた。 そ して この型元来 の 過去 に関す る仮定 を表現す る用法 は中世 プロヴ ァンス語 での この型 の主要 な存 在理 由 とな ってい るが

,そ

れ は当時現在や未来 に関す る仮定 を表現す る型 には 恵 まれ ていたが

,過

去 に関す る ものは数少なか ったか らであ る。 ところで

,

中世 プ ロヴァンス語 において これ ら 二 つの条件法 Iと Πが 共存 し, と もに用 い られ てい るが, この 1と Ⅱの間には用法上 の相違 があ ったのだ ろ うか。現在 までの ところ

,

この問題 に対 し明確 な解答 を出 した学者 は一人 も いない。 た とえ│ゴ

Jo Anglade,E.Bourciez,Lafontな

どの著書 を見て もこ の問題 にはほ とん ど触れ られていない。本稿 の 目的 は フラメンカのテキス トを 検討 す ることに よって この用法上の相違 を探 ることにあ る。 フラメンカは

G.Millardetに

よ ると密度が濃 くよ く響 く純粋 の プロヴァン ス語 で書かれた中世南部の代表的物語詩 であ る。 さ らに, A.―Jo Henrichsen に よれ ば,こ の作品は八音綴詩句の韻文 であ るが

,技

巧 に走 り過 ぎることな く,

(3) A.―J. Henrichsen: Les phrases hypoth6tiques en ancien occitan, p.100, p.150.

(4) ibid。 , pp. 149-52。

(5) ibid., p. 104,《Jusqu'a ce jOur, les linguistes n'ont pas tir6 au clair la dif‐ f6rence d'emploi entre les deux conditionnels de l'ancien occitan.》

H.Lafont:Grammaire occitane,p.243:《 Il a 6t6 senti comme un v6ritable

conditionne1 6quivalent pur et silnPle de vendria.》

(4)

中 世プ ロヴァンス語 におけ る二つの条件法 について

31

丁寧 な散文 とそれ ほ ど違 わない性格 の韻文 であ り

,ま

た対話箇所 は多少 と も高 尚な文体 の話 し言葉 を表 わ してい るに ちがいない とい う評価 が されてい る。従 って

,

フラメンカは我 々の研究対象 としての必要条件 を備 えた作品であると考 え られ る。 この写本 は 8095行 の詩句か らな り最初 と 最後 の部分が欠 けてい る ので

,

題 名

,

結 末

,

作者

,制

作年 が判 らない。

Alfred JeanrOyに

よると,

Rouergueの

地 で1240∼ 50年 頃博学 で文学 に秀 でた修道僧 に よって書かれ たよ うであ る。 資料抽 出法 は テキ ス トに見 られ る 条件法形動詞 を 全部抜 き出す とい う方法 を

,分

類法 は次 の三部分

,す

なわ ち対話部分

,地

の文 の部分

,登

場人物 の独 自 ・考察部分 に分 け るとい う方法 を取 ることに した。対話部分 には愛の女神や神 と登場 人物 との対話 や夢 の中での対話 な ど も含 まれ る。 そ して地 の文の部分 に ついては

,視

点 の違 いに よって さ らに二 つの部分 に分 け ることに した。 た とえ ば,

l Daus l'autm part al[s]servent[z]signa

Aporton aiga pcr lavar,

(6)物語の粗筋は次のようである。

Bourbonの領主であるアルシャンボーは, Gui de NemourS伯爵の娘 フラメンカ を妻に迎える。Bourbonで開かれた結婚披露宴にはフランス国王 も女王を伴なってや って来 る。女王はフラメンカの比類なき美 しさに夫である国王が フラメンカを本心で 愛 しているのではないか と疑 う。彼女はアルシャンボーに嫉妬心を焚 きつけ

,彼

は嫉 妬に苛まれ ることになる。フラメンカは二人の少女 とともに塔に閉 じ込められて しま う。やがで

,一

人の若 く美 しい騎士 Guillaume de Neversが 彼女の噂を耳に し

,恋

に陥 る。そ して彼女に仕 えようとBourbOnまでやって来 るが

,教

会で彼女を覗 き見 るだけで

,夫

の監視がきび しく彼女に近づけない。そこで

,ギ

ヨームは手段 として修 道僧にな り

,彼

女が詩篇集に接吻す る間に

,二

語囁 きかけることに成功す る。何回か の後に, 彼はや っと秘かに作 らせた地下道を案内 して

,彼

女が侍女 とともにやって来 る風呂場か ら彼女を自分の部屋に導 くことができる。彼 らはこのようにして密会を重 ね る。やがてアルシャンボーが嫉妬か ら解放 されて正常に戻 ると,フラメンカはギヨ ームにBourbonを去 って

,立

派な騎士になるように勧める。 再会を約束 して

,二

人 の恋人達は涙なが らに別れ る。その後

,ギ

ヨームは騎士達の中で も一番強 く立派な騎 士 となってアルシャンボーが開催 した騎馬試合に現われ る。恋人達はそこで再会す る。

(5)

32 中世 プロヴァンス語 におけ る二つの条件法 について

Car el si v01ria disnar,

(v.1056-8)(現

代語 訳 :Mais de l'autre,il fait signe aux ser宙 ¨ teurs d'apporter l'cau pour se laver les mains, car il voudrait

diner.)

2 Guillems ha ben vist e notat

S'om pOgr'aver un mot parlat,

(v。

3197-8)(現

代語 訳

:Guillaume a bien regard6 et not6 dans

son esprit, si on aurait le temps de dire un mot,)

に お い て

,例

1の条 件 法 I形動 詞 《volria》 は作 者 の不確 定 な気 持 ちを表 現 し, そ こに登 場 人物 の主観 を見 出す こ とは で きな い。 いわ ば

,

これ は作者 の視 点 で 事 態 を眺 め て い るわ け で あ る。例

2で

は条 件 法 Ⅱ形 動 詞 《pOgr'》 を含 む siに 導 か れ た節 は

,作

者 で は な くギ ヨー ムの考 えが描 写 され て い るわ けで あ る。 I テキス トに見 られ る条件法形動詞例 全てについて

,ま

ず二 つの条件法が どこ に現 われてい るか を調べ

,次

にその現 われ方 の特徴 をよ く捉 え るために分類表 を作成 しよ う。

1)条

件法 Iと Ⅱが現 われ る文型 これ は仮定体系 の主節 と条件節 のない文中の二つに分類す ることがで きる。 仮定体系 の主節 については

,た

とえば, 例

1「

si+直

説法半過去形 …条件法 I」

E cel que non sap molt volria Ancar apenre si podia.

(v。

4831-2)(対

話 部 分)

(6)

中世 プロヴァンス語における二つの条件法について

33

s'il pouvait。)

2「

si十直 説 法 現 在 形 … 条 件 法 I」

Si nom posc guardar una domna,

Mal levaria la c01onna

Qu'es de 10nc San Peire de Roma,

(v。

1095-7)(登

場 人 物 の独 自0考察 部 分)

(i訴l:Si je ne puis garder une dame,je soulё verais mal la colOnne

qui est(cOuch6e)auprё s de Saint―Pierre de Rome;)

3「

si+接

続:法半過 去 形 …条 件 法 Ⅱ」

Ja negun tems il non amera

Si Amors,per sOn jausimen,

Nomil o mOstres privadamen,

(v.1410-2)(作

者 の視 点 に よ る地 の文 の部分)

(訳

:JamaiS elle n'aurait aim6 si Amour,pOur la r6jouir,ne le

lui avait enseign6 en secret.)

4「

qui+直

説 法 現 在 形 … 条 件 法 I」

Quar ferre freg deuria fendre Dousor de preg, qui_l vOl entendrc.

(v。

2901-2)(対

話 部 分)

(計ミ

:Douceur qui supplie devrait fendre meme le fer froid, si

l'on veut l'entendre.)

5「

接 続 法 半 過 去 形 …条 件 法 Ⅱ」

Be‐In fOra melz esclava fos, Ab iErminis o ab GrifOs,

(7)

34

中世プロヴァンス語における二つの条件法について

(v.4169-71)(登

場 人 物 の 独 自・ 考 察 部 分)

(訳 :ⅣIieux vaudrait pour mOi etre esclave

Ou les Grecs, en Corse ou en Sardaigne,)

6「

si+直説 法 現 在 形

+直

説 法 半 過 去 形 … 条 件 法

■/1ais si de cor ben non l'a mas

E nostrc COnseill segulas

parΠli les Arm6niens

I」

No‐us estaria ges trop ben.

(v.525針

61)(対

話 部 分)

(:訴t:Si, ne l'ailnant pas d'un coeur sincё re, vous suiviez notre

conseil, ce ne serait pas trop bien de votrc part.)

において

,例

(1,2,3)は

si+動

詞 …条件法」 とい う型 の仮定体系 に属 して い るの例

4の

場合

,条

件 は関係 代名詞「qui」 に続 く関係節が示 してい る。例

5で

,条

件は「si」 を挿入す ることな しに節 をただ並べ るだけで

,

つ ま り並 列で表 わ されてい る。 これ らの場合 は「si」 に導かれ る仮定体系 と非常 に密接 な関係 にあ るので

,実

6例

しか ないのであ るが

,便

f亡上 同一 とみな して分類 して よいであろ う。 例

6に

おいては

,条

件節 を構成 す る二つの動詞 が時制上異 な ってい る。 す な ゎ ち

v.5259の

動詞 《a mas》 は直説法現在形 で

,

もう一方 の 《seguias》 は直 説法半過去形 であ る。 しか し

,

ここの二つの動詞 の時制 の相違 は

,意

味 の差違 を表現す るためではな く

,単

に韻 を踏 むためだ と考 え られ る。従 って

,

この例 を「

si+直

説法現在形 …条件法I」 よ りは 頻度数 の多い 「

si+直

説法半過去形

…条件法I」 に分類 した。 なお以上のほかに単純形 の動詞 と複合形 の動詞 とを

同時 に含 んだ二 つの例 が あ る。 ここでの複合形 の役割 は単純形 の行動 よ りも先

(8)

中世 プ ロヴァンス語 にお け る二 つの条件法 について に起 こった ことを示 す先行性 の表現 と思われ る。 さらに一つ特殊 な例があ る。 それ は「si」 に導かれ た条件節が二 つ存在 し

,

二 つの条件節 の動詞が法上異 な ってい る例 であ る。文脈か ら

,最

初 の条件節 を話者 が よ り興6重な気持 ちを表現 す るために

,言

い直 してい ると考 え られ る。以上の よ うに

,押

韻上 の理 由や, 行為 の先行性 を表 わす ためや

,ま

た敬語的表現 な どの理 由か ら時制や法 の異 な る二 つ以上の動詞 で構成 されてい る条件節 を持つ例 は

,全

体 か ら見れ ば ご く少 数 なので

,統

計上数 が多い型 にそれ ぞれ分類 して も問題 はないであろ う。 ただ し

,図

Aと

Bの

分類表 では この よ うな変種型 は全体数 の中にそれが 占め る数 を

( )内

に示 してあ る。 次 に

,条

件節 のない文中については

,た

とえば, 例

7(条

件法 1)

Anas vos en, ques eu o vueil,

Car ges aissi con far o sueil

Sal a vos venlr nom polrla;

(v. 6781-3) (対話 部 分)

(訳 :Allez‐ vOus‐en, ie l'exige. Je ne pOurrais plus, en effet, venir

ici comme d'habitude:)

8(条

件 法 Ⅱ)

Ni l'autra carn ja mens non valgra.

(v。

400)(作

者 の視 点 に よ る地 の文 の部分)

(訂ミ:Le reste de la viande ne saurait etre

qualit6。)

9(条

件 法 1)

Car qui non fes can far poiria Ja nOn far2 quan far volria.

(9)

36

中世 プロヴァンス語における二つの条件法について (v. 5239-40) (対 言舌書部ジ))

(:訴[:car qui n'a pas fait quand il pourrait, ne fera pas quand il

voudrait.) 例

10(条

件 法 Ⅱ)

Car non fora quan [il]Πli vira ⅣIorir d'angoissa davan se,

Que nOn n'agues calque merce.

(v.2746-8)(対

話 部 分)

(訂ミ:Car il ne serait pas possible, quand elle me verrait mourir

d'angoisse devant elle, qu'elle n'eCt pas quelque pitiё de moi。)

に お い て

,例

(7,8)は

主 文 の 中 に位 置 して い る条 件法 Iと Ⅱの例 で

,例

(9,

10)は

従 節 の 中 に位 置 して い る例 で あ る。 この よ うに

,二

つ の条 件 法 は両 方 と 図

A:条

件法 Iの 頻度数 ― ―

1■

1対

卜皆

等塞

│ 地 別 計 型 文 合

吸視

登 の の 占 ︹ 者 作 視 物 点 2 1 Si十接続法半過 去形 …条 件法

I I

蛛 は

I11 1 1

形 去 過 半 法

Si十 直 説¨

Si+直説法大過去形…条件法

1 1

11

現初 ・

4は

I Iズ

DI

2 1 5(1)

:玖

I12①

1 21

5 1 32(1) 条件法I 23 104(2) (総計) 8 1 7 1 9 1 (複合形) 部分別頻度数の合計 64。4フイ 13。

5%

22.1フイ 100%

(10)

中陛プロヴァンス語における二つの条件法について

37

も主文 に も従節 に も現 われ るのであ るの

2)統

計 表 図

A(条

件法

I)と

B(条

件法 Ⅱ

)は

資料 を対話 と登場 人物 の独 自0考察 と地 の文 の区分 と文型別 に分類 した表 であ る。 図

B:条

件法 Ⅱの頻度数 ― `ヽ _ の 察 物 考 人 ・ 場 白 登 独 地 の 文 一物 文 型 点 話 作者の 視 点

吸視

登 の 新 ・・・

Aは

l b①

7(2) 41(3) 63(6)

?翻

簾 判 却 ・・・

A件

1丁

堅 す接続法大過去形・・・

A件

法 Ⅱ

I鑢

)

癬 謝 畑ル 探件

(複合形)

法Π

Si+直説法半過去形 …条件法 Π 条件法 Π 条件法 Ⅱ(複合形) 7(1) 部分別頻度数の合計

3)図

Aと

Bの

比較検討 条件法 Iの頻度数 は104で

,条

件法 Πのは174であ り

,条

件法 Ⅱは条件法 I を量的 に圧倒 してい る。 さ らに

,条

件法 Iの場合

,全

体 に対 す る部分が 占め る 割合 は

,対

話部分64。

4%,地

の文の部分22。

1%で

あ るが

,条

件法 Ⅱではそれぞ れ28。

8%,58。

6%で

あ り

,対

話部分 と地 の文の部分 の対比が条件法 Iと Ⅱで逆 転 してい る。 これ は一般的 に条件法 の新 しい形 であ るIが主 と して話 し言葉 に 用 い られ

,古

い形 の Ⅱの方 は書 き言葉 に属 していた ことを示 す ものであろ う。 次 に

, Iと

Πを含 めた条件法全体 の頻度数 は対話部分

117,地

の文 の部分125

(11)

38

中世プロヴァンス語における二つの条件法について でほぼ同数 であ る。 さて

,

ド記の図

Cは

条件法全体 に対 して Iと Ⅱが 占め る害J 合 を対話 と地 の文 の部分別 に示 した ものであ る。 図

C:部

分別条件法1, Ⅱの占める割合 地 の文 を書 き言葉 の文体

,対

話文 を話 し言葉 の文体 とほぼ考 え ることが で き るので

,図

Cか

ら書 き言葉 には条件法 Iは 非常 にまれに しか現 われないのに, 話 し言葉 では条件法Iが

6,

Ⅱが

4の

割合 であ ることが判 るの従 って

,書

き言 葉 では条件法 Ⅱが一般 的 に用 い られ

,話

し言葉 では条件法 IがⅡよ り少 し多 い とい う状態 で両者が共存 してい ると考 え られ る。 さ らに

,条

件法 の古 い形

,

Ⅱ が現在 の プロヴァンス語 では消滅 してい る点 を考慮すれ ば

,新

しい形 のIが書 き言葉 よ り流動的で改新的な話 し言葉 のなかにす でに広が りつつあ った ことを 示 してい ると考 え ることが で きる。 さて

,

ここで二 つの条件法 の価値 について考 えねばな らない。両者 の間に価 値 の違 いが 存在 したのか。 つま り

,

価値 の違 いに よって 使 い分 けがな されて いたのだろ うかの上記図

Aと

Bか

ら「si+直説法半過去形 …条件法 I」 の型,

si+接

続法半過 去形 …条件法 Ⅱ」 の型

,

並 びに条件節 のない文 中に現 われ る 単純形 の 条件法 Iと Ⅱの三つの型が 圧倒的 に 頻度数 が多 い ことが 明 らか であ る。 それ故

,こ

れ らの例 を検討 し

,二

つの条件法 の特徴 を探 ることに しよ う。

Ⅲ 二 つ の主 要 な仮 定 体 系 の用 法

(12)

中世 プロヴァンス語における二つの条件法について を

b型

と名づ け るの図

Dは

それ ぞれの型 の総頻度数 を

100%に

して各 部分が 占 め る割合 を示 してい る。 図

D

地 の 文

鯖硼司雰鍮惣

話 対 の 察 物 考 人 ・ 場 白 登 独 \

&1%1馬

%

75′τ

6.2%

18.8%

b

型世 1 23.8フイ │ “ ■

%│

0%

11。

1%

65.1% 図

Dか

ら対話部分 と地の文の部分 の割合の相互関係が

a型

b型

で逆転 して い ることが判 る。 この逆転 は非常 に顕著であ るので

,

この二 つの部分 に絞 って 検討 しよ う。

まず

,Brunotの

La pens6e et la langueを 参考 に して仮定 の実現 の可能 性 の程度 に よ り,〈irr6elle〉 (非現実

)と

〈pOssible〉 (可能性 を有す る

)と

い う 互 いに対立す る三種類 の仮定 に仮定文 を分類 しよ う。 〈irr6elle〉 な仮定 とはあ る行動 または出来事が あ りえない

,非

現実 だ と判断 され る条件 の もとに置かれ てい る ものを,〈possible〉 な仮定 とはあ る行動 または出来事が あ りうる

,可

能 であ ると判断 され る条件の もとに置かれてい る もの をい う。 なお当然 の ことな が らこの分類 の中には

,条

件節 あ るいは主節 の動詞 に関す る行為実現 の「 時」 (過去

,現

,未

,超

時 間

)の

問題 も同時 に考慮 されね ばな らない。 〈irr6elle〉 な仮定 については, た とえば, ○条件法 の動詞が過去 に関係す る例 過去

/過

去 (従節 の動詞 の時

/主

節 の動詞 の時)

(13)

40 :│:llヒ

プロヴァンス語における二つの条件法について

1(b型

)Si fos valls Dieu aisi convers

Con vas AInor e vas si dons,

De paradis fora totz dons.

(v。

4366-8)(対

話 部 分)

(訳::S'il avait eu l'esprit tournё vers I)ieu autant qu'envers

AInour et envers sa Dame, il eGt

ё

t6 tout a fait maitre du

paradis.)

現 在

/過

2 (b型

)Car si res i pogues valer Phebus o degra ben saber, Que fOn meges meravi1los E totz le prumers ques anc fos;

(9)

(v.3045-8)(地

の文 の部分)

(訂ミ: S'il y avait quelque remё de efficace, Ph6bus aurait bien

dO le savoir, lui qui fut un rrlerveilleux m6decin et le prenlier qui

(9)例文の分類の基礎は文脈か ら意味を把握す ることである。夕J挙した例の中で判 りに く い ものに簡単な説明を付け足す と, 例

2:作

者は, 愛は どんな薬 も効かないほ どの激 しくつ らい痛みだと思 っている。 例

3:作

者は 安閑 と暮す者は愛の感染を避け難いとい うことわざをギヨームに当て はめている。 例

6:ギ

ヨームはフラメンカが詩篇集に接吻す る時, 意中の婦人である彼女に一言 《h61as》 と囁 くことができ

,喜

びに満たされ る。 しか し,この例の仮定は v.3987 が仮定の非実現を明示 しているので,〈irr6elle〉 とみなされ る。 例

8:ギ

ヨームが意中の婦人を教会の聖歌隊席か ら人に気づかれないようにJヽさな 穴を通 して眺めようとして努力す るのを作者が推測す るが, v。 2603の 《e ben

l'estet》 (et il le fut en effet)はその仮定が現実 されたことを明示 している。 例

9:作

者は招かれた客たちが アルシャンボーが開いた祝宴の食卓に座 って食べ る よりもフラメンカと話を したいであろ うことを言 って, 彼女の美 しさや魅力が ど んな程度かを説明す る。 v。 535《 MOut s'en levon boca dejuna.》 (Beaucoup

(14)

中性プロヴァンス語における二つの条件法について

ait exist6。)

○条 件 法 の動 詞 が現 在 に関係 す る例 過 去

/現

3(b型

)Si fos en un tOrnei armatz

On agues

Πlil colps pres e datz

Ja, fe que‐us dei, tant no‐il sovengra

E)'amor ni al cor non la tengra,

(v。

1812-5)(地

の 文 の 部 分)

(i訴l:car s'il avait 6t6 en armes dans un tournoi, oふ il eat lrlille

coups a donner et a recevoir, je vous assure, foi que je vous

dois, qu'il ne penserait pas autant a l'amour et qu'il ne le retien‐ drait pas ainsi dans sOn coeur.)

現 在

/現

4(〔

t型 )Qui aucir ancui rni volia E‐1 ■lieus amix dous si podia Far aucire per rrli guerir,

Avans v01ria el mOrir

Ques eu suffris anta ni dan.

(v。

6299-303)(対

話 部 分)

(:訴l:Si pr6sentement on voulait me faire mourir, et si mon doux

aΠli pouvait se faire tuer pour me sauver, il pr6f6rerait mourir

que de me voir souffrir honte ou dorrlinage.)

5 (b型

)Quan la nug adOrmir si cuja

S'agues los uils totz Plens de suia

(15)

中世 プロヴァンス語 にお け る二つの条件法 について

(v。

4369-71)(地

の 文 の 部 分)

(訳::La nuit,quand il pense s'endorinir, ses yeux ne rcfuseraient

pas plus ёnergiquement de se ferrrler, s'il les avait tout pleins de suie:)

○条件法の動詞が未来に関係す る例 現在

/未

6(b型

)Gran joiそ しgra si‐l dures gaire,

Ⅳ質ais aqui eis si desconorta,

(ve 3986-7)(地の 文 の 部 分)

(訴l:Son bOnheur serait grand, s'il pouvait etre durableo l■/1ais

tout de suite le voila qui se d6sespё re。 )

○ 条 件 法 の 動 詞 が 超 時 間 に 関 係 す る例

超 時 間

/超

時 間

7(b型

)E si fos Amors dreituriera Tut cor foran d'una maniera,

Mas so es d'Arrlor sa dreitura

Quじ ja nOn gart dreit ni mesur〔 t。

(v。

3193-6)(地

の文の部分)

(訴

t:Si Amour

ёtait 6quitable, tous les coeurs seraient faits d'une

meme maniё

re。 卜Iais l'6quitё

d'Amour, c'est de n'observer ni

justice ni mesure.)

〈possible〉 な仮定 については

,た

とえば,

○条件法の動詞が過去 に関係す る例 過 去

/過

(16)

中世 プロヴァンス語における二つの条件法について

43

Si que‐l pertus gares l'us oilz E l'autre gares sai los foils Ben l'estera e ben l'estet。

(v。

2600-3)(地

の文 の部分)

(計ミ:Et s'il pouvait s6parer ses regards de fa9on que d'un oeil il

regardat le pertuis, et de l'autre, ici, les feuillets du livre, il en serait bien heureux, et il le fut en effet.)

○条 件 法 の動 詞 が現 在 に関 係 す る例 現 在

/現

9 (b型

1)Mai[s], si pogues traire a cap

Que S01 un mot ab lei parles

No‐il calgra si pois dejunes.

(v.532-5)(地

の文の部分)

(:訴l:et n6anmoins, s'il pouvait arriver a lui dire seulement un

mot,il lui importerait peu de ieOner ensuite。 )

○条件法 の動詞が未来 に関係す る例 現在

/未

Fl110(a型

)一 《Bell'amigueta,si‐ us plasia,

Sol g%'θ

%夕

%θ SEθ]P li demandaria,

(v。

5027-8)(対

話部分)

(訳 :一Belle amie, s'il vous se]mblait bon, je lui demanderais

seulement:《Qu'en puis‐je P》)

未来

/未

11 (a型

)Plout i faria gran ergueil S'ieu d'alzo dizla de no.

(17)

中性プロヴァンス語における二つの条件法について

(v。

12-3)(対

話部分)

(訳 :Je me mOntrerais,certes,bien orgueilleux,si je lui

non.)

○条件法の動詞が超時間に関係す る例 超時間

/超

時 間

12(a型

)E cel que non sap molt volria

r6pondals

Ancar

そしpenre si podia.

(v。

4831-2)(地

の文 の部分)

(計(:Celui qui ne sait pas grand'chOse voudrait apprendre cncore. s'il pouvait.)

1)a型

b型

の 比 較

仮 定 を 〈irr6elle〉 と 〈pOssible〉 な もの に分 け る こ とに よ って

, a型

b型

が どの よ うに現 われ て い るか を見 よ う。 図

El,E2は

対 話 部 分 に

,図

Fl,F2は

地 の文 の部 分 に関 す る分 類表 で あ るの 地 の文の部分 について

,図

Flは b型

が どんな「 時」 に関係す る仮定表現 に も用 い られ ることを示 してい る。従 って

, b型

は非常 に広範囲な「 時」 を表現 しうることが判 る。 tt F2に よると

, b型

例 において くirrёelle〉 な仮定が 占め る害J合は

78%に

な ってお り

, b型

は全体的印象 としては非現実的色彩 を濃 く持 ってい ると思われ る。時制の一致 に従 って過去未来 を表 わす

a型

例 は

,厳

密 に 言 えば

a型

に属 さない と思われ るので

,そ

れ らを除 くと

, a型

例 は

3例

とい う 極 めてまれ な出現数 であ る。従 って

, a型

は話 し言葉 の仮定体系 の型 であ り, 書 き言葉 には例外的 に用 い られ るだけの よ うであ る。 次 に対話部分の例 に移 ることにす る。

a型

の24例 に対 し

, b型

は15frllで

, a

型が

b型

よ り多いが両方の型が共存 してい ると言 え るだろ うの さらに, a,型 例 と1)型例 が現 われ る領域 が しば しば重 な り合 ってい るの つま り

, b型

例の15の

(18)

中 世 プ ロヴァンス語 における二つの条件法 について 45 ○対 話 部分 図

El:a, b型

の例における条件法形動詞 の頻度数 動 詞 仮 定 a型

l b型

条 件法 図E2:二種類の仮定が占める 割合 仮 定 a型 b型 53。

3%

一脚

の 一 従 91。

7%

irr6elle 1 5 未 来 現 在 現 在 │

614(1)

未 来 possible 超時間 超時間

11

_頻

度 数

IZI馬

① ○地 の文 の部分 図Fl:ら 顔農製の例における条件法形動詞 possible

8.3%

46.7% 図

F2:b型

例において二種類 の仮定が占める割合 仮 定

lb型

p∬

el"Ю

%

・“

db

いЮ

%

(())記

号 は登場人物 の視点 に よ る地の文の頻度数 を示す。 この数 は この記号のない数に含 まれてい る。時制の一致 に従 って過去未来 を表 わす例 は この表 には含 まれて いない。 現 在 現 在 │ 1 2

514

19(1) 3((2)) 41(3) POSSible ((1)) 総 頻 度 数

(19)

中世 プロヴァンス語 にお け る二つの条件法 について

うち10が

a型

例 と同 じ枠 内に分類 されてい る。 tt E2に よれ ば

,a型

例 の くpos‐ sible〉 な 仮定の 占め る割合 は91。

7%に

達す る。 従 って

, a型

は 全体 と して 〈possible〉 な印象 を 与 え る 傾 向が 強 い と思 われ る。 一方

, b型

は この場合 〈possible〉 な仮定 の例が53。

3%,〈

irr6elle〉 な仮定 の例が46。

7%に

な るので,

b型

a型

よ りも非現実的印象 を強 く与 えるのであろ う。 しか し

,地

の文 の部 分 の

b型

の場合 と対話 の部分 の

b型

とを比べ る時,〈irr6elle〉 な仮定の 占め る 割合 はそれ ぞれ78。

0%と

46。

7%で

あ り

,か

な りのずれが感 じられ る。

2)地

の文の部分では

a型

の出現が稀 であ る原 因 作者 の視点 に よ る地 の文 の部分 の

b型

例41の 全 てが三人称形 であ る。三人称 形 であ ることか ら

,

この41例 の条件法形動詞が表 わす行動 自体 に作者の主観 は 存在 しない。 作者 の視点 に よ る 地 の文 の 部分 の

a型

例 は

1例

しか見 出 され な い。 そ こで一般 に

b型

は客観的で 〈irr6elle〉 な性格 を

, a型

は主観的で 〈pOS¨ sible〉 な性格 を持 ってい るとい うことがで きる。

ナことえ│ゴ,

1(b型

)Car s'il ames e non agues Ab que s'amor paisser pogues,

Icu cug ben que pieitz l'en estera.

(v。

1407-9)(作

者 の視 点 に よ る地 の文 の部 分)

(謝ヽ:Car ailnant et n'ayant rien Pour nourrir son amour, elle eG十 ,

je pense, bien plus soufferte)

2(b型

)Qui agues tδ

ut PariS e Rems

Adoncs al rei e l'O disses, Non cuh dc la da′

nza mOgues

Ni feira semblan fos iratz.

(20)

中 世プ ロヴァンス語 におけ る二 つの条件法 について

47

(:沢 :Si l'on avait pris au roi Paris et Reilns et qu'on fat venu

le lui dire, il n'aurait point, je crois, quitt6 1a danse ni fait la

mine d'un homme afflig6。)

3(a型

)Qui d'aicest cujar no=In cresia Eu non creiria lui fort ben, Si nl'en plevia neis sa fe.

(v。

3904-6)(作

者の視点による地の文の部分)

(訳 :Et qui ne me croirait pas sur ce point, a rrlon tour je lui

refuserais toute cr6ance, meme s'il nl'engageait sa foi.)

4(a型

)E,si‐l plazia ques anes

Dreg per Nemurs, et amenes

Flamencha, bon grat l'en sabri生 ,

(v。

371-3)(登

場 人 物 の 視 点 に よ る地 の 文 の 部 分)

(訳 :E〕t s'il lui plaisait de passer droit par Nemours et de lui

amener Flamenca,il lui en saurait le meilleur gr6,)

f/ril1 5 (az聾)Ara vejas doncs que faria

S'entra mos brasses la tenia Que la sentis et la baises

Et a ma guisa la menes!

(v。 4707-10) (対言舌培部ジ})

(訳 :Voyez donc ce que je ferais si je la tenais entre mes bras.

si je la touchais, 1'embrassais, si je la traitais selon mon d6sir!)

3利

6(a型

)E si‐ us podias neis pensar

Qu'ie‐us pogues far majors honors

(21)

48 中世 プ ロヴァンス語 にお け る二 つの条件法 について

E volontiera o faria;

(v.6856-9)(対

話 部 分)

(訂ミ:Et si vous pouviez seulement supposer qu'il rrle fOt possible

de vous faire plus d'honneurs encore, ce me serait une grande

douceur, et je le ferais bien volontiers。 )

7(a型

)一

Amiga,per que‐ i pessar[i]am

Si de vos[Oj・

]bon mot a宙

am。

(v。

4569-70)(対

話部分)

(計t:Pourquoi y r6f16chirions¨ nous, chё re anlie, si vous nous en

donnez un bon?》)

例1は 《ieu cug》 (v。 1409) (je pense), 例

2は

《non cuh》 (v. 746) (je

ne crois Pas)を それ ぞれの構文の中に挿入 してお り

,作

者 が登場人物 の こと について想像 してい ることを表 わ してい ると思 われ る。 例

3は

作者 の視点 に よる地 の文 の部分 の

a型

の唯一 の例 であ る。例

4は

アル シ ャンボーか ら国王 に送 られた伝言の内容 を間接的に説明 した ものであ る。 こ の例

4は

登場 人物 の視点 による

a型

2例

中の

1例

,こ

れ ら

a型

例 は両方 と も例 3と 同 じニ ュア ンスを持 ってい る。 つま り例

4の

動詞 《sabria》 は三人称 単数形 であ るが

,

これ は間接話法 で書かれてい るか らで

,直

接話法 では一人称 とな る ものであ る。実質上の主語

,《

sabria》 の行為す る主体 は伝言の書 き手 であ るアル シ ャンボーであ る。動詞が一人称 の主語 を持つ時

,多

少 と も話者 あ るいは書 き手の意志,主 観が動詞 の行為実現 に含 まれ ると思 われ る。従 って,例

4の

a型

の場合

,話

し手の意志 を幾 らか含んでい るといえる。例

3の

《creiria》

(ve 3905)も

,

このテキス トの作者 であ る 《eu》 に結 びついた条件法I形一人

称単数動詞 なので

,主

語 の意志 を多少 と も含 ん でい る。相対 的傾 向を問題 に し て

,主

観的

,客

観的

,意

志的

,推

測的 とい う見地 で見れば

,例

3は

三人称形 の

(22)

中世 プロヴァンス語における二つの条件法について

49

b型

の41例 とは少 し異 な ってい ると思われ る。

a型

は主 に話 し言葉 に使われ るので

, a型

を知 るためには対話部分 の例 を検 討 す る必要が あ るだろ う。例

(5,6,7)は

対話部分 の

a型

例 であ る。例

5は

ギ ヨームが愛の女神 に懇願す る場合で

,一

人称単数形動詞 《faria》

(v.4707)は

主語 であ り話 し手 であ るギ ヨームの意志や願望の色彩 を幾 らか帯 びてい る。例

6は

,フ

ラメンカが ギ ヨームに語 ってい る場合で

,一

人称単数形動詞 《faria》 (v。

6859)は

例 5と 同様 に主語 であ り話 し手 であ るフラメンカの意志や願望の 気持 ちを多少 と も含 んでい る。例

7は

話 し手 の憤慨 の気持 ちが含 まれてい る唯 一 の例 だ と思 われ る。

a型

の頻度数

32(図

A)の

うち

,動

詞 の主語が実質的 に 一人称 で作者 または話 し手のいろいろな意志的 ニ ュア ンスを幾 らか含んでい る ものは15あ る。以上 の ことか ら

, a型

の全体的 印象は 〈pOSsible〉 であ る上 に 意志的主観的な もので

, b型

の それ は 〈irr6elle〉 であ る上 に 客観的で推測的 な ものであ ることが判 るだろ う。従 って

,作

者 の視点 に よ る地 の文の部分 に a 型が例外的にた った

1例

見 られ るのは

,理

由が ない ことではな く

, a型

b型

の全体的印象の違 いに原因があ ると思われ る。

3)対

話部分におけ る

b型

の用法

b型

例 において くirrёelle〉 な仮定が 占め る割合が 地 の文 の部分 の 場合 と対 話部分 の場合 ではかな りの開 きが あ ることをす でに指摘 した。 さらに

,条

件法 Ⅱ形動詞 の人称 について も問題があ るの地 の文の部分 では41例 全てが三人称形 であ るが

,対

話部分 では一人称形 が10FIJ,三 人称形が

5例

であ る。 そ こで

,対

話部分 におけ る

b型

の用法 を さらに詳 しく検討 してみ よ う。

まず

,図

Elの

「 〈irr6elle〉

,現

/現

在」 の分類枠 には

, a型

2例 , b型

2例

見 られ る。 この

a型

の例 はす でに13ペ ージの例

4に

挙 げた。

b型

の例 を

1つ

挙 げ ると,

(23)

50 中 陛プ ロヴァンス語 にお け る二つの条件法について

Et eu trobes aital arrlic, Ben cujera Jupiter fOs O alcus dels dieus amorose

(v。 522卜

8)(対

話 部 分)

(i訴l:que si nOus 6tions aux temps antiques, et si je trouvais un

P〔trCil〔

Ini, jc croirais〔lvoir aff〔lirc a Jllpiter ou

quelqu' un

dcs dicux an■()ureux.)

これ は

,侍

女 の一人が フラメンカ と もう一人 の侍女 にギ ヨームについて 自分 の意 見を述べ るとい う箇所 であ る。 この

a型

b型

例 は どち ら も現在 に関す る 〈irr6elle〉 な仮定 と解釈 で き, 両者 の間に ニ ュア ンスの相違 は見 出 されないの この ことは

, a型

b型

の勢 力 分野 の一部 であ る現在 に関す る くirrёelle〉 な仮定表現 にまで進 出 してい ると考 えて よいであろ う。 なぜ な ら

, a型

はその生成期 であ る11世 紀頃 には未来 に関 す る仮定 を表現 しうるが

,現

在 に関す る仮定 については12世 紀 中頃 にな らなけ れ ば見 出 されないか らであ るの

Elの 3番

目の分類枠「 〈POssible〉

,未

/現

在」 には

a型

6例

, b型

4例

見 られ るの た とえば

'

1(a型

)E per so bainnar mi volria,

Seiner, dirnercres, Si‐us plazia;

(v。

5681-2)(対

話 部分)

(ittl: Je voudrais donc me baigner mercredi, s'il vous plaisait, seigneur;)

l10 A.―J. Henrichsen: Les phrases hypoth6tiques en ancien occitan, pp。 98-9.

0り 例 1か ら4ま での前後関係は次のようである。

(24)

中世 プロヴァンス語における二つの条件法について

51

12 (b塑

聾) E volgra ben, s'a vos plagues,

Cascus de vostr'aEzaut]saupes;

(v。 6421-2) (対 話 部分)

(i訴t:Je vOudrais bien, s'il vous plaisait, qu'il leur fOt donn6 de

connantre votre charme。)

3(a型

)一

《Bcll'a′migueta,si‐us pl〔 Lsia,

Sol qu'en puesEc]P li demandaria,

(v。 5027--8)(対話部分)

(訳 :―《Belle amie, s'il vous se]mblait bon, je lui de]manderais

seulernent:《 Qu'en puis‐je?》)

FIJ 4 (bZ聾

)

《:Domna, si tan faire volses Que VOStre cor nos mostrasses, DIeilz vos en saupraΠ l consseillar;

(v。

4989-91)(対

話部分)

(:訴t:《:Dame, si vous vouliez tant faire que de nous ouvrir votre

coeur, nous vous en saurions Πlieux conseiller。 )

について

,例

1と 例

2,例

3と 例 4と い う具合 に組 み合 わせて検討す ると

,最

初 の組 み合 わせ には

a型

b型

の違 いは明瞭 に出ていない。 しか し

,後

者 の組 み合わせ には話者 と聞 き手の身分関係の相違 が明確 に表 われてい る。

a型

は, 例

3に

見 られ るよ うに女主人か ら侍女 に話すのに用 い られ る。 つま り

,身

分 の 上 の者が下の者 に対 して使 ってい るわけであ る。

b型

については9113と 同 じよ うな例 がない。従 って

, b型

a型

よ りもよ り敬語的 であ ると言 えよ う。 図El つ。 例

2:ギ

ヨームは フラメンカに二人のい とこに会 って くれ るよ うに頼む。 例

3:フ

ラメ ンカは侍女に答 える。 例

4:侍

女 は フラメ ンカに助言す ることを望んでい る。

(25)

52

中陛プロヴァンス語における二つの条件法について の分類 では

,今

取 り扱 った

a型 , b型

例 は同 じ枠 内に属 してい るが

,話

し手の 意識 内では区別 され てい るの つ ま り,例 2と 例

4の

話 し手 は

,b型

が 〈irr6elle〉 な全体的印象 を もってい ることか ら

,

条件節 の 事項 が 聞 き手 に よって 実現 さ れ ないだろ うとい う意味合 を出 し

,

一段 と 鄭重 さを 増 してい る もの と 思 われ る。

Elの 2番

目の「 〈irrёelle〉

,未

/現

在」の枠 内には

,b型

5例

あ る。 た とえば,

(b型

) Feira que savis e nembratz

Si penses de mi desliurar Ans que plus mi laisses forsar;

(v。

2778-80)(対

話部分)

(訂ミ: Je n'agirais qu'en hornlne sage et prudent si j'envisageais

de me lib6rer avant de rn'etre laiss6 forcer davantage.)

これ は

,愛

に苦 しんだギ ヨームが愛 の女神 に話 しか けてい る場面 であ る。 もし この例 に

b型

ではな く

a型

が 用 い られていたな ら

,

その仮定 は 〈poS‐ sible〉 な印象 を 与 えるであろ うの つま り

,ギ

ヨームは 自由にな ることを考 え ることはあ りえない ことを強調す るために,〈irrёelle〉 な印象 を与 える傾 向が 強 い

b型

を 使 った もの と思われ る。 実際

,

その次の行を見 ると

,

この仮定が 〈irrёelle〉 であ ることが明確 にな るの

Mais tart mi sui reconogutz,

Quar abans que sai fos vengutz

ⅣI'o degr'aver eu ben penssat; (v. 2781-3)

(訳 :Mais ie me rends compte trop tard de mon ёtato C'est avant

(26)

中―世士プロヴァンス語における二つの条件法について

テキ ス トに は 条 件節 が現 在 に関係 し

,

主 節 が 未 来 に関 係 す る 〈irr6elle〉 な 仮 定 を表 現 して い る

a型

の例 は

1つ

もな い。 従 って

, a型

は この仮 定 を表 現 す

るの に は使 われ ず

,そ

の役 割 は

b型

が受 け持 って い た と言 え るで あ ろ う。 図

Elの

4番

目の「 〈possible〉

,未

/未

来 」 の枠 内 に は

, a型

が 15例

, b型

4例

見 られ る。 た とえば,

A (b型

) E]mδ

utas ves volrai que rn'oina

Lains al foc privadamens,

Que nOn feira se i agues gense

(v。

3544-6)(対

話 部 分)

(訴[:1l rrl'arrivera sOuvent de rn'oindre, ici dedans, tout seul au

coin du feu, ce quc je ne pourrais faire s'il y avait du mOnde.)

B(a型

)Es'arrlbedui eron ab ellas

Aurlon ab cui si deportesson,

(v.6434-5)(対

話部分)

(計ミ:Auprё s d'elles s'ils 6taient tous deux, ils auraient avec qui

se distraire。) において

, b型

a型

も客観的 には同 じ 〈pOssible〉 な 仮定 を表現 してい るの であ るが

,文

脈 か ら判断 して

b型

の場合 には話 し手が仮定の非実現 を予期 して い ると思 われ る。実際例

Aで

はギ ョームは一人 にな ることを是が非 で もな し遂 げな くてはな らない立場 に置 かれてい るので

, b型

を使 って仮定 の非実現 を予 期 してい るニ ュア ンスを出 してい ると考 え られ る。tt Aと 同様 に残 りの

b型

例 0の 例AとBの前後関係 は次の よ うであ る。 例

A:ギ

ヨームは地下道 を作 らせ るために しば ら 分一人 だけにな ることを望んでい る。 例

B:ギ

ヨームは フラメンカに 自分のい とこ達を う。 くの間宿の主人夫妻が引越 して自 彼女の 侍女達に 紹介 したいと言

(27)

54

3つ

に つ い て の 場 合 に は, は 思 わ れ な い

Henrlchsen

中世プロヴァンス語における二つの条件法について も多かれ少 なかれ そ うい う意味合 を持 ってい るよ うであ る。

a型

Bに

見 られ るよ うに

,

仮定 の実現 も非実現 も強調 してい ると 。 この をし型 と

b型

の ニ ュア ンスの 違 いについてはすでに A.― J. が述べてい るの Ⅲ 条 件 節 の な い 文 中 に現 わ れ る条 件 法

I及

び Ⅱの用 法 図

Gは

対話 と登場人物の独自・考察 と地の文の区分別に例が占める割合を示 した ものである。 図

G:部

分別例が 占め る割 合 図か ら見 て明 らか な よ うに

,

ここで もまた対話部分 と地 の文の部分の例が 占 め る割合が 1と Ⅱとでは全 く逆転 してい るの まず条件法 の様 々な用法 を具体例 で確か め

,地

の文

,対

話 の部分 の それ ぞれ について用法別分類表 を作成 し

,

これ らの部分 で条件法 Iと Πが どの よ うに使 われ てい るか を検討 しよ うの

l10 A.―J. Henrichsen, :Les phrases hypoth6tiques en ancien occitan, pp。 179-180。

《Lorsqu'on se sert d'un conditionnel I,on ne lnet l'accent ni sur la r6alisation

ni sur la non‐ r6alisation de l'hypothё se; lorsqu'on choisit un systё me avec un

conditionnel II, on a en vue la non‐r6alisation de l'hypothё se。》

(28)

中性Lプロヴァンス語における二つの条件法について

た とえば,

fdil1 1 (条イ牛法1) Ja diSes ques hui ttbriatz

55

Del mot qu'ieu dis si l'e[n]tendet Cel que l'autrier ab vos parlet.》

(v。

4890-2)(対

話 部 分)

(訂ミ:Ne disiez‐vous pas qu'aujourd'hui vous sauriez s'il a entendu

la r6ponse que ic vOus a′ i sugg6rё e, celui qui, 1'autrc jour, vo tls

a par16。》)

2(条

件法 Π

)Per son v。

l ganre l[i]costera Que cil PostZ fOS ad una part, Que sos oils de sa dona part,

(v。

3150-2)(作

者 の 視 点 に よ る地 の 文 の 部 分)

(i訴l:Il aurait l)ien vo10ntiers sacrifiё beaucoup d'argent pour que

la cloison qui sё parait la dame de son regard fOt d6plac6e,)

3 (条

件 法 1) Aqui"s pessa que la faria.

(v.3470)(登

場人物 の視点 に よる地 の文 の部分) l141 例 1∼11の前後関係は次のようである。 例

1:侍

女が フラメンカに話す。 例

2:作

者はギ ヨームが教会でフラメンカを眺めようと努力す るのを想像す る。 例

3:ギ

ヨームは地下道を作 るために適当な場所を探す。 例

4:ア

ルシャンボーは, 国王がフラメンカを本当に愛 しているのではないかと疑 っている女王に答える。 例

5:作

者はギヨームの下着について考える。 例

6:ギ

ヨームは愛の女神に願 う。 例

7:侍

女のア リスがフラメンカに話す。 例

8:ア

ルシャンボーは彼を非難す る一人の友人に言 う。 例

9:作

者はギヨームが フラメンカを愛す るために, 偽 って修道僧になることにつ いて愛の女神に憤慨す る。 例10:ギヨームは神にフラメンカのことで祈 る。

11:夢

の中でギヨームはフラメンカに彼女自身に会う方法を教えられる。

(29)

56 中世プロヴァンス語における二つの条件法について

(:訳::c'est lれ qu'il dёcida d'ouvrir le chernin.)

4(条

件法

1)一

《No‐

i movas,domna ge10sia,

Que ia per ren non o seria.》

(v.879-80)(対

話部分)

(訳 :一《Ne melez pOint la ia10usie a tout cela,madame,ce serait

vraiment sans motif.》)

例5 (条:件法 Π

) Caussas de saia non caussem

Si ben horrl tant non la tirera. (v. 2202-3)

(ittt:1l n'aurait pas chauss6 des chausses en 6toffe de laine bien qu'elles n'eussent pas 6t6 si longues a mettre.)

6(条

件 法 Π

)Be_m degraz sol u mot sonar

Que‐In feses alcun bon conort。

(v.2059-60)(対

話 部 分)

(訳

:Vous devriez bien me dire un mot,au moins,qui m'appor‐

terait quelque r6confort。)

7(条

件 法

1)E cascuna de nos volria

Avan esser justisiada

Que VOS fOSSes de ren blasmada.

(v. 5386-8) (対話 部 分)

(訂甦: Et chacune de nous pr6f6rerait se laisser iuStiCier que de

vous attirer quelque blame.)

8 (条

件 法

I) E que diria de vergonhaP

(v。

1203)(対

話部分)

(30)

中世 プロヴァンス語における二つの条件法について

57

9(条

件 法 Ⅱ

)Al!Amors,Amors!quant saps!

E qui‐s pessera que‐s tondes

Guillems per tal que dompneiesP

(v.3810-2)(対

話 部 分)

(訳

:Ah! Amour, Arnour, que de choses tu sais faire! Qui eat

pens6 que Guillaume se fOt fait tonsurer pour faire la cour a sa

dame?)

例10(条 件法 Ⅱ

)Bel sener Dieus:si ja m'aura

Merce, ni ja s'o pensara,

Cil que‐In pogra del tot garir?

(v。

4611-3)(対

話 部 分)

(訳

:Beau seigneur Dieu! aura‐

t‐

elle jamais piti6 de moi, y

pensera‐t‐elle seulement, celle qui pourrait si bien me gu6rir7)

11(条

件 法

I)Per aqui mos amix vengues

E〕ls bains a lni, quan la‐ln sabria.

(v。

2940-1)(対

話 部 分)

(訳 :Par ce chemin mon ami viendrait a moi quand il me saurait

aux bains。) に つ い て

,以

下 の よ うに

Clか

らC6までの

6種

類 の用 法 に分 類 す る こ とが で き 051 る。 ECl]:「 時」 として

,過

去 におけ る未来 を示 すのに役立つ。 frl1 1の従属体系 の中の条件法I形動詞 《sabriatz》 は 未来形 の間接話法へ の

αO W.M[eyer‐ Lubke,Grammaire des langues romanes,t.III,Syntaxe,

pp.300-3, F. ]Brunot, La pens6e et la langue, 3e 6dit., pp。 504-5, 526, 537, 552, 564,

(31)

58

中世プロヴァンス語における二つの条件法について

置 き換 えであ り

,

主文の単純過去形動詞 《dises》 に時制の 一。致 を行な ってい るのであ るの

EC2]:「法」 と して

,

従属節 で表 わ されていない条件の下 に 置かれ た行動 を 示 すの時 として条件 は暗黙の うちに理解 され るにす ぎないの

2で

,条

件法 Ⅱ形動詞 《costera》 は 《per son v01》 とい う条件下 に置 かれ た過去 に関す る非現実 な仮定 を表現 してい るの例

3で

,条

件法 I形動詞 《faria》 は 暗黙 の条 件 《si je faisais》 の もとに置かれ た未来 に関す る潜在的 に実現可能 な仮定 を表 わ してい る。

EC3]:条

件下 に置かれ ていない不確定 な行動 を表現す る。 例

4で

,条

件法I形動詞 《seria》 は現在 に関す る出来事が不確定であ ると い う意味合 を出 してい る。例

5で

,条

件法 Π形動詞 《caussera》,《 tirera》 は 過去 の出来事 を作者が推測 あ るいは想像 してい ることを示 してい る。

EC4]:敬

,礼

儀正 しさを表現す る。 つま り

,条

件法が話者 の意志や願望 を 弱 めた り

,不

確定 さを表現 した りす ることに よるのであ る。 例

6で

,

条件法 Ⅱ形動詞 《degra》 が不確定 さを表現す ることで 命令表現 を弱 め

,

7で

,条

件法 I形動詞 《volria》 が願望の気持 ちを弱 めて表現す るこ とでそれ ぞれ敬意 を表 わ してい るの

EC5]:憤

慨 の感情 を表 わ し

,結

果的 に反語文 の よ うに否定 を省略文 で表現す るの 例

8で

,条

件法I形動詞 《diria》 は現在 に関す る憤慨 を表 わす。 この文 は 嫉lAFiに狂 ったアル シ ャンボーが 自分 の妻 を守 るためな ら不 名誉 さえ も問題 では ない とい う意味 であ る。 例

9で

,条

件法 Ⅱ形動詞 《pessera》 は過去の ことに関す る憤慨 を表 わ し, 作者 は結 局誰 も考 えなか っただろ うと言いたいのであ るの

EC6]:言

われ た ことを あ りそ う もない

,

本 当 らしく ない とみなすのに 役立

(32)

中世 プロヴァンス語における二つの条件法について つ。すなわ ち,《6ventualit6s》 に対 す る疑 いの気持 ちを表 わす。 例10で は

,

条件法 Ⅱ形動詞 《pogra》 は 《6ventualit6s》 に対 す る疑 いを表 わす。 つま り

,ギ

ヨームは フラメンカが彼 を直す ことがで きることを信 じてい るが, この実現 のために フラメンカに会 って話 をす る機会 を持 つ ことがで きる ことを疑 ってい るのであ る。 例11で は

,条

件法I形動詞 《sabria》 は不確定 さを示 してお り

,

彼女の恋人 が知 るであろ うことを意味 す るが

,そ

の実現 は少 し不確定 なのであ る。従 つて 不確定 さと 《6ventualit6s》 に対す る疑 いの用法 は異 な る。

1)地

の文の部分におけ る用法 この部分では

,

二 つの条件法が どの よ うに 用 い られてい るか 比較検討 しよ う。1)で 述べ た条件法 の用法別 に資料 を整理分類 した表 は次の よ うであ る。 条件法 Ⅱ 条件法I 非現実な仮定 現

在 可能性 のあ る仮定 不 確 定 不確定 さの表現による敬 総 頻 度 数 記号(())は登場人物の視点による地の文の例の頻度数を表わ す。記号のない ものは作者の視点による例の頻度数である。 条件法 I形動詞 の総頻度数 は13で

,全

て現在 あ るいは未来 に関す る ものであ るの さらに一 つ として非現実 な仮定 を表現す る ものはないの ((3)) 現在あるし

(33)

60

中性プロヴァンス語における二つの条件法について 一方条件法 Ⅱについては,総 頻度数55の うち,39例は過去に関す る もので

,25

例が非現実 な仮定

, 1例

が可能性 のあ る仮定

,28例

が不確定 を表現 してい る。 従 って

,条

件法 Ⅱは Iよ り非現実的 印象が強 い と思われ るの条件法 Iの

5例

は未来 に関す る潜在的可能性 のあ る仮定 を表現 してい るが

, Iの

同 じ例 は一 つ もない。頻度数 の少ない条件法 Iに 限 って この表現 に用 い られてい るとい うこ とは

, 1と

Ⅱが使 い分 け られていた証拠 だ と思 われ る。 そ して

,そ

の ことは新 しい形 のIがその元来 の特徴的用法 であ るこの表現 において

,す

でに古 い形 の Ⅱに取 って代わ ってい る状態 を示 してい るのではないだろ うか。次 に

,現

在 あ るいは未来 に関す る不確定表現 の枠 内には

,両

方の条件法の例 が見 られ る。 こ れ は

,新

しいIが古 い Ⅱの この領域 にまで進 出 して来 てい ることを示 してい る と思 わオtる

2)対

話部分におけ る用法 ここで も地 の文の部分 と同様 の表 を作成 しよ う。 条件法 条件法 Ⅱ 過去における未来 可能性 のあ る仮定 超 時 間 不 確 定 現在あるいは未来 《6ventualit6s》 に対す る疑い (現在 あ るいは未来) 志あるいは願望を めた表現 による 不確定表現 による 来 未 去 う邑 慨 1責 総 頻 度 数

(34)

中世 プロヴァンス語における二つの条件法について

61

上 記 の表 に お い て

,敬

語 的表 現 を除 け ば

,二

つ の条 件 法 が両方 と も同 じ分 類 枠 内 に現 われ る こ とは な い。 過 去 の時 を表 現 す る条 件 法 Iのいか な る例 も見 出 され な いが

,条

件 法 Iの 複 合形 の

2例

(1例

は対 話 部 分 で

,

もう

1例

は登 場 人 物 の独 自部 分 で あ るが

)は

過 去 の時 を表 わ して い る。 対 話 部 分 の

1例

を挙 げ る と,

Morta seria per mOn vol,

(v。

4180)(対

話 部 分) (訳 :je vOudrais etre morte,)

これはフラメンカが 自分の受けている苦 しみについて言 っているところであ る。 条件法 Iは 複合形 の

2例

を除 いては過去 を表現す るのには使 われない。 さ らに,《ёventualit6s》 に対 す る疑 いの表現 は行為 の非実現 を予期す る不確 定表現 と も言 え るので

,結

局 の ところ地 の文 の部分 で見 られ た条件法 Ⅱの非現 実的印象 に合致 してい ると思 われ る。従 って

,対

話部分 では勢 力の小 さい条件 法 Ⅱは

,過

去 と非現実的印象 につなが るニ ュア ンスを表現す るのに しか用 い ら れ ていない ことが判 る。 これ は

,条

件法 Iが進 出 して来 た結果

,

Ⅱはその特徴 あ る用法 のみに後退 して しま った もの と思 われ る。 さて

,条

件法が敬語 を表現 してい る場合 については

,条

件法 Iの 頻度数 は総 数38に 対 し10,Ⅱ は22に 対 し11で

,全

体 に対 す る比率 は Ⅱの方が大 きい。 また, 侍女 とフラメンカの対話 の場面 を調べ ると

, Iは

侍女 もフラメンカ も使 ってい るのに対 し

,

Ⅱは侍女か らフラメンカに対 してだけであ る。仮定体系 の主節 に 現 われ る場合 な ど も含 め全部 の Ⅱの例 を対 象 にすれ ば

,フ

ラメ ンカが侍女 に対 して Πを使 ってい る例 は

,

Ⅱだけが表現 で きる過去の表現 な どを除 けば見 出す ことはで きない。 これ らの ことか ら

,条

件法 Ⅱは敬語 としては 1よ りも一層鄭 重 な性格 を備 えてい ると考 え られ る。

(35)

中世 プロヴァンス語における二つの条件法について Ⅳ 以上Iではテキス トか ら抽 出 され た全資料 について

,

Ⅱでは主要 な

2つ

の仮 定体系 の型 について

,

Ⅲでは条件節 のない文 中に現 われ る条件法 について それ ぞれ比較検討 したが

,そ

の結果 を要約 す ると次の よ うにな る。 書 き言葉 には条件法 Ⅱのみが通常用 い られ

,話

し言葉 には 1と Ⅱが

6対

4の

割合 で共用 されてい る。 地 の文の部分 では

, b型

は仮定が関係す るいろいろな時 を幅広 く表現す る能 力 を持 ってお り

,ま

,全

体 として くiH6elle〉 で客観的印象 を与 える。 一方,

a型

は例外的に地 の文の部分 に現 われ るだけであ るが

,

しか しその場合の例 は

b型

と異 な り

,主

観的 で 〈pOSsible〉 な意味合 を表 わす。 対話部分 では

, b型

a型

よ り少数 で,〈irr6elle〉 な仮定 あ るいは

b型

の 〈irrёelle〉 な全体的印象

に負 う特殊 なニ ュア ンス

,敬

語的 ニ ュア ンスや仮定 の非実現 を予期 してい るニ ュア ンスを含ん だ仮定 を表現す る。

a型

は全体 と して 〈possil)le〉 な印象 を与 え るが,〈irr6elle〉 な仮定 を表現す る例 もわずかなが ら見 られ る。 地 の文 の部分 では

,

条件法 Ⅱはその半数 の例 が 〈irr6elle〉 な仮定 を表現 し てい るのに

,未

来 に関す る 〈possible〉 な仮定 を表現す る例 は見 出 され ない。 条件法 Iは この部分 では 非常 に少数 だが

,

その中の

3例

が それ を表現 してい る。対話部分 では

,

Ⅱは Iよ り少数 で

,過

去の時 を表現す る時 に 1に 代 わ って 用 い られ る。 さ らに

,

条件法 Ⅱの 〈irr6elle〉 な全体的印象に由来す ると思 わ れ る

,《

6ventualit6s》 に対す る疑 いや 条件法 Iよ りも鄭重 な 敬語 を表現す る のに用 い られ る。 結局

,本

稿 で行 な った時 と意味 に よ る分類方法 では

, 2つ

の条件法が同 じ分 類枠 内に重 な って現 われ ることは数少 ない ことが判 った。 そ して

,同

じ分類枠 内にあ る もので も

,敬

語 の鄭重 さの程 度 な どニ ュア ンスに相違 が あ ると思 われ

(36)

中世 プロヴァンス語 におけ る二 つの条 件法 について

63

る もの もあ った。従 って

, 2つ

の条件法 には価値 の違 いが存在 し

,あ

る程度選 択 して用 い られていた と考 え られ る。第一 の違 いは

,条

件法 Iは 話 し言葉 に専 ら用 い られ

,書

き言葉 には Ⅱが通常用 い られていた とい うことであ る。第二 は 条件法 Ⅱは全体 と して くirr6elle〉 で客観的 印象 を

, Iは

〈possible〉 で主観的 な印象 を 与 え るとい うことであ るの さ らに

,

Ⅱだけが 条件法過去の価値 を持 ち

,そ

して逆 に

Iだ

けが過去未来 を表現す るとい うことであ る。以上の よ うに して

,話

し言葉 と書 き言葉 のそれ ぞれの領域 内で

2つ

の条件法が区別 され て用 い られてい ると考 え られ る。 ところで

, 2つ

の条件法が時 と意味 に関 して同 じ価値 を持 ってい る例 は少数 なが ら存在 した。 これ は古 い形 の条件法 Ⅱの領域 に新 しい形 のIがす でに徐 々 に進 出 しつつあ る状態 を示 してい ると思 われ る。 テキス ト

Lavaud et Nelli:Les Troubadours(Desc16e de Brower,1960) Paul■Ieyer: Le Roman de IPlamenca, 1むre6dit. et 2e 6dite

参 考 書 目

J.Anglade:Grammaire de l'ancien provencal(Paris,1921),Histoire sommaire

de la litt6rature m6ridionale au moyen age(Genё ve, Slatkine Reprints 1973) Eo Bourciez:E161rrlents de linguistique rolnane,4e6dit。 (Paris,1956)

F.Brunot:La pens6e et la langue,3e6dit.(Paris,1953)

A.―J.Henrichsen: Les phrases hypoth6tiques en ancien occitan(Bergen,1955)

H. Lafont: Grarllinaire occitane.

Go Millardet:Le roman de Flamenca(Paris,1934)

ヽヽア.■71eyer‐Ltibke: Grarrlinaire des langues romanes, traduite par A.et

trepont, to III, Syntaxe(Paris, 1900)

Eo Brunot, G.Bruneau: Pr6cis de granHnaire historiquc dc la langue (Masson et cit6,1969)

Po Ⅳ16nard: Syntaxe de l'ancien fran9ais(Sobё di, Bordeaux 1973)

G.Moignet:Grammaire de l'ancien fran9aiS(Paris,1973)

G.Dou‐

参照

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