Kobe Shoin Women’s University Repository
Title
中世勢語注釈書研究ノオトより ―冷泉家草子目録所引伊勢 物語関係書をめぐって―
Note on the Commentaries of "Isemonogatari" in the Kamakura-Muromachi Periods
Author(s) 片桐 洋一(Yoichi Katagiri)
Citation 研究紀要(SHOIN REVIEW),第 8 号:142-165
Issue Date 1966
Resource Type Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
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Right
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一 一 ﹁ 常 観 二 念 古 歌 之 景 気 一 可 レ 染 レ 心 。 殊 可 二 見 習 一者 、 古 今 ・ 伊 勢 物 語 ・ 後 撰 ・ 拾 遣 。 三 十 六 人 集 之 内 殊 上 手 歌 可 レ 懸 レ 心 凶 と は 、 ﹁ 詠 歌 大 概 ﹂ に お け る 藤 原 定 家 の 言 葉 で あ る が 、 実 際 、 伊 勢 物 語 ほ ど 、 早 く か ら 歌 よ み た ち に 尊 重 さ れ て い た 物 語 は な い 。 当 時 、 わ が 芸 術 の 中 心 を な す も の は 、 言 う 迄 も な く 和 歌 を お い て 他 に は な く 、 従 っ て 、 和 歌 の 道 に お い て 、 か く も 尚 ば れ た と い う こ と は 、 こ の 物 語 が 真 の 意 味 で の ﹁ 古 典 芸 術 ﹂ と し て 尊 重 さ れ 、 か つ 、 常 に 文 学 乃 至 は 芸 術 の 規 範 ・ 典 型 と し て 扱 わ れ て き た と い う こ と を 意 昧 す る の で あ る 。 こ の よ う に 尊 重 さ れ て 来 た 伊 勢 物 語 で あ っ て 見 れ ば 、 研 究 書 ・ 注 釈 書 の 類 い が 早 く か ら 、 多 数 生 ま れ た で あ ろ う こ と は 想 像 に 難 く な い 。 し か し 、 業 平 の 二 男 在 原 滋 春 の 作 に な る と い う ﹁ 伊 勢 物 語 髄 拶 ﹂ や 後 拾 遺 集 時 代 の 有 力 歌 人 源 経 信 の 著 と 伝 え る ﹁ 和 歌 知 顯 集 ﹂ な ど は 勿 論 、 現 存 は せ ぬ が 種 々 の 文 献 に 引 用 さ れ て い る 拾 遺 集 歌 人 藤 原 長 能 の ﹁ 長 能 私 記 ﹂ ま で を 含 め て 、 そ の い ず れ も が 鎌 倉 時 代 の 偽 書 ・ 仮 託 書 と 見 な さ れ 、 平 安 時 代 に お け る 伊 勢 物 語 の 亭 受 ・ 研 究 の 姿 は 、 清 輔 の ﹁ 奥 義 抄 ﹂ に お け る 和 歌 の 注 釈 な ど に 散 見 出 来 て も 、 一 部 の 書 と し て 伝 存 す る も の は 全 く な い ば か り か 、 そ の 実 体 す らも 、 畜 と し て つ か み ど こ ろ が な い の で あ る 。 平 安 時 代 の 、 こ の 状 況 に 比 ぺ れ ば ㌔ 鎌 倉 雌 代 の 様 相 に つ い て は 、 か な り は ゆ き ウ と 把 握 出 来 そ う で あ る 。 た と え ば 、 既
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1 3 5 7 丘5宮3呂11217151311 日 伊 勢 物 語 注 伊 勢 物 語 尺 同 抄 同 口 傳 同 系 図 同 深 義 同 開 書 同 深 秘 問 答 集 同 頭 轡 同 顕 勅 同 不 合 義 同 口 決 二 字 義 丑 4 6 宮6 呈42呂201日1〔i1{匹1宮108 知 顕 集 同 注 尺 同 穂 抄 同 要 抄 同 雑 事 同 秘 記 同 秘 昌 同 宇 義 水 鐙 文 同 尺 同 裏 需 同 六 門 口 決 口 同 潔 秘 口 伝 集 吏 会 義以 上 、 5351哩9を ア454,34139373533呂1量9言7 口 中 深 存 義 阿 古 根 浦 口 何 昼 宮 口 傳 音 義 大 明 紳 義 長 能 私 記 血 脈 相 承 湛 頂 私 記 薬 平 塗 込 取 口 大 明 帥 段 三 河 段 卑 獲 段 千 金 夷 傅 修 行 門 合 計 五 十 三 種 の 、 55≡502日46444£ 40且 臼 き63些 呂2註o認 阿 古 根 浦 冊 阿 古 根 湘 秘 決 仁 融 中 暫 秘 義 墨 石 抄 入 誠 記 内 遣 鏑 汀 極 理 血 脈 揮 粟 平 磯 臼 三 学 重 齋 宮 段 千 葉 破 段 西 院 段 唐 衣 鵜 巳 上 伊 勢 物 語 ﹁ 以 文 保 之 比 筆 跡 、 写 留 了 ﹂ と 奥 書 に 記 し て い 為 よ う に 、 の 薩 ・掛 目 録 だ と 思 わ 41 る が 、 伊 勢 胸 語 閏 係 帯 が 存 し た こ と が 知 ら れ ゐ の で あ る . こ の ﹁ 冷 泉 憲 草 子 日 録 ﹂ は 、 冷 泉 為 久 が 文 保 の 頃 の 冷 ・嬢 嫁 の 主 に あ た る 藤 標 為 相 ( = = ハ 三 -一 三 二 八 ) 既 に ー し の 頃 、 か よ う に 多 数 の 伊 鎚 物 語 闘 係 借 が 存 在 し て い た と い う こ と は ㌔ 全 く 驚 く 他 は な
い の で あ る 。 と こ ろ で 、 こ の 五 十 七 種 の う ち 、 現 在 残 っ て い る も の は 皆 無 に 等 し い の で あ る 。 冷 泉 家 の 蔵 書 で あ る か ぎ り 、 ﹁ 伊 勢 物 語 注 ﹂ ﹁ 伊 勢 物 語 抄 ﹂ な ど は 、 大 津 有 薄 士 所 蔵 ﹁ 冷 豪 流 伊 勢 物 語 註 ﹂ ( 同 博 士 著 ﹁ 伊 勢 物 語 古 注 釈 の 研 究 ﹂ 一 四 七 頁 ) や 、 同 じ く 冷 泉 家 流 の 注 釈 で あ る 宮 内 庁 書 陵 部 蔵 ﹁ 伊 勢 物 語 抄 ﹂ 、 慶 応 大 学 図 書 館 蔵 ﹁ 定 家 流 伊 勢 物 語 註 ﹂ な ど に 近 い も の で あ ろ う が 、 ﹁ 注 ﹂ に し ろ ﹁ 尺 ﹂ に し ろ ﹁ 注 尺 ﹂ に し ろ 、 あ る い は ﹁ 抄 ﹂ に し ろ 、 い ず れ も 普 通 名 詞 的 な 書 名 で あ っ て 現 存 す る も の と の 関 係 を 明 ら か に す る こ と は 不 可 能 で あ る 。 ま た ﹁ 伊 勢 物 語 口 傳 ﹂ ﹁ 伊 勢 物 語 要 抄 ﹂ 以 下 ﹁ 伊 勢 物 語 深 秘 口 傳 集 ﹂ ま で は 、 い ず れ 奥 義 の 集 成 で あ ろ う が 、 現 存 資 料 と の 関 係 は 全 く 不 明 で あ る 。 た と え ば 、 23 ﹁ 伊 勢 物 語 口 決 ﹂ と い う 書 は 、 彰 考 館 文 庫 に も 伝 存 し て い る が 、 こ の 目 録 に 言 う ﹁ 口 決 ﹂ と 同 一 物 だ と い う 保 証 は な く 、 24 ﹁ 伊 勢 物 語 深 秘 口 傳 集 ﹂ も 、 現 存 の ﹁ 伊 勢 物 語 髄 脳 ﹂ が ﹁ 深 秘 第 一 ⋮ ⋮ 第 七 ﹂ と し て い る の と 、 あ る い は 関 係 が あ る か に も 思 わ れ ろ が 根 拠 な く 、 51 ﹁ 千 金 莫 傳 ﹂ が 広 島 大 学 国 峯 研 究 室 に あ る 是 家 流 千 金 莫 傳 L と 同 書 と も 思 え る が 、 成 立 年 代 の 面 か ら 若 干 疑 問 が あ る ( 別 に 改 め て 詳 述 し た い 。 ) と い う よ う に 、 結 局 、 2 ﹁ 知 簗 ﹂ が 宮 内 庁 書 陵 部 本 系 ・ 群 書 類 従 本 系 ・ あ る い は 松 田 武 夫 博 士 が 紹 介 さ れ た ( 稲 轟 崩 關 舞 醐 辱 ) 保 阪 潤 治 柴 系 の い ず れ で あ る に せ よ 、 現 存 の そ れ と 関 係 が あ ろ う ≦ . う こ と の 他 は 、 空 を つ か む が ご と く 、 実 体 を 把 え る す べ も な い の で あ る 。 二 ﹁ 冷 泉 家 草 子 目 録 ﹂ に よ っ て 知 ら れ る 鎌 倉 時 代 の 伊 勢 物 語 注 釈 書 の 書 名 が 、 か よ う に 普 通 名 詞 的 で あ り 、 か つ そ の ゆ え に 内 容 ・ 特 質 を 把 握 出 来 な い と い う こ と の 理 由 は ど こ に あ る の だ ろ う か 。 そ の 解 答 は 、 一 口 で 言 え ば 、 現 在 の 我 々 の よ う
に 、 図 書 館 で 閲 覧 票 に 書 名 を 書 き 入 れ て 図 書 を 借 り た り 、 書 店 の 書 棚 か ら 図 書 を 選 ん で 買 っ た り 、 甚 だ し く は 新 聞 や 雑 誌 の 広 告 や 紹 介 を 見 て 電 話 で 書 店 に 注 文 す る よ う な 形 で 、 こ れ ら の 注 釈 書 ・ 研 究 書 を 読 む こ と が 全 く な か っ た か ら に 他 な ら な い 。 お よ そ 、 学 問 は 特 定 の 師 か ら 特 別 に 学 ぶ こ と に よ っ て の み み ず か ら の も の と な っ た 時 代 で あ る 。 現 存 す る 鎌 倉 時 代 の 伊 勢 物 語 の 注 釈 が 、 お お む ね 、 こ の 師 匠 の 講 義 用 ノ オ ト か 、 弟 子 の 講 義 筆 記 ノ オ ト で あ り 、 そ の 講 義 を 受 け な い 部 外 者 に は ﹁ 秘 す べ し く 。 慎 む べ し く ﹂ と か 、 ﹁ 秘 す べ し く 。 惜 し む べ し / ㍉ ﹂ と 言 う よ う な 語 句 が 必 ず と 言 っ て よ い ほ ど 頻 出 す る こ と か ら も 、 こ の 間 の 事 情 は 察 し 得 る の で あ る 。 鎌 倉 時 代 の 伊 勢 物 語 の 注 釈 ・ 研 究 は 、 こ の よ う に 、 師 承 相 伝 の 形 で 伝 え ら れ て い た の で あ る が 、 師 の 講 鑓 に 加 わ り さ え す れ ば 、 誰 も が 同 列 に そ の 奥 義 を 我 が 物 に な し 得 る わ け で は 勿 論 な か っ た 。 そ の 道 に 加 わ っ て 、 い か ほ ど の 年 月 を 経 た か 、 ま た い か ほ ど の 精 進 を し た か に よ っ て 、 各 々 そ の 与 え ら れ 授 け ら れ る と こ ろ は 異 な っ て い た の で あ る 。 室 町 時 代 に な っ て か ら も 鎌 倉 時 代 の 古 注 が か な り 勢 力 を 持 っ て い た 証 拠 と し て よ く 引 用 さ れ る 、 東 常 縁 ハ サ シ タ ル 人 ・= 三 ナ キ 者 ニ ハ 以 一イ 古 鳶 よ む 。 よ き 門 弟 ニ ハ 本 式 二 よ む ト 云 々 。 ( 迫 談 蕪 ) 二 條 家 に も 、 も と は 古 注 を も て よ み て 聞 す る 事 あ り 。 道 に 執 心 ふ か き 人 に は 、 其 上 に て 古 注 を 捨 て 、 た 望 今 よ む 當 流 の 趣 を 讃 傳 た る と な り 。 ( 閾 疑 抄 ) な ど の 記 述 も 、 以 上 の よ う な 線 上 に お い て 把 握 す べ き で あ っ て 、 ﹁ 古 注 ﹂ が よ ま れ て い た と い う 事 実 よ り も ﹁ 本 式 ニ ヨ ム ﹂ ﹁ 当 流 の 趣 ﹂ が 、 初 学 者 に 対 し て は 秘 す べ き も の と さ れ て い た こ と の 方 が む し ろ 重 大 な の で あ る 。 こ の よ う に 、 注 釈 ・ 講 釈 そ の も の が 、 当 時 に お い て は 秘 伝 で あ っ た わ け で あ る が 、 そ の 講 釈 の 中 で 、 特 に 秘 す べ き 部 分 は 、 口 伝 の 奥 義 と し て 、 一 般 的 学 習 を 優 秀 な 成 績 で 終 え た 者 だ け に ひ そ か に 授 け ら れ た の で あ る 。 前 田 家 所 蔵 の い わ ゆ る
清 菓 古 今 集 や 、 加 納 諸 平 旧 蔵 の 片 假 名 本 後 撰 集 、 あ ゑ は か ぞ 禁 紹 介 し た こ と の あ る 傳 兼 好 筆 伊 勢 物 語 (㌔ 顯 羅 9 ) な ど に 見 ら れ る ﹁ 別 紙 ﹂ ﹁ 別 紙 考 ﹂ な る 清 輔 の 書 入 注 記 を 持 つ 和 歌 が 、 ﹁ 奥 義 抄 ﹂ に 詳 細 に 注 せ ら れ て い る 妻 は 、 そ の 間 の 事 情 を 物 語 る も の で あ る 。 現 代 の 我 々 は 、 歌 学 大 系 本 な ど で ﹁ 奥 義 抄 ﹂ を 簡 単 に 検 し 得 る が 、 当 時 に お い て は 、 そ の 名 の ご と く 、 六 条 家 の 奥 義 で あ っ て 、 他 の 者 に は 容 易 に 見 ら れ な か っ た に 違 い な い か ら で あ る 。 伊 勢 物 語 の 場 合 も 、 こ の よ う な 現 象 は い く ら で も 見 出 し 得 る 。 千 歳 文 庫 所 蔵 、 正 徹 奥 亨 蜷 川 智 墾 伊 勢 物 語 (雛 証瀞 錬 蜷 鷲 蝶 鍛 薩 雛 誠 譜 照 )は 、 為 相 自 筆 本 の 忠 実 な 写 本 で あ 緊 行 間 に は 、 い わ ゆ る 冷 泉 家 の 古 注 融 繭 醜 物 編 嬬 媛 臨 和 )が 朱 で 記 入 さ れ て い る が 、 そ れ に 交 . て 、 百 傳 L と い う 注 記 が 所 々 に 見 ら れ る 。 た と え ば 、 九 段 の ﹁ し ろ き と り の は し と あ し と あ か き 、 し ぎ の 大 き さ な る ﹂ の ﹁ し ぎ ﹂ の 傍 ら に ﹁ 司 宜 、 口 傳 ﹂ と 注 し 、 二 三 段 の ﹁ つ ・ ゐ つ の ゐ づ ・ に か け し ﹂ の ﹁ つ ・ ゐ つ の ﹂ の 傍 ら に ﹁ 調 五 、 口 傳 ﹂ 、 五 〇 段 の ﹁ と り の こ を と を つ つ ﹂ の 傍 ら に ﹁ 本 文 等 有 別 紙 ﹂ 、 同 段 の ﹁ ゆ く 水 に か ず か く ﹂ の 傍 ら に ﹁ 本 説 有 別 紙 ﹂ と 注 し 、 五 九 段 の ﹁ わ が う へ に つ ゆ ぞ 置 く な る ﹂ の 傍 ら に ﹁ 秘 々 、 口 傳 ﹂ 、 六 〇 段 の ﹁ さ つ き ま つ 花 た ち ば な ﹂ 、 六 三 段 の ﹁ も も と せ に ひ と と せ た ら ぬ ﹂ の 傍 ら に ﹁ 本 文 有 別 紙 ﹂ な ど と 注 し て い る の で あ る 。 今 、 こ れ ら の す べ て に つ い て 、 そ の 秘 伝 の 内 容 を 述 べ る 余 裕 は な い が 、 為 相 か ら 正 徹 へ い た る 学 派 の 書 入 で あ る だ け に 、 冷 泉 家 の 注 釈 で あ る 広 島 大 学 蔵 ﹁ 千 金 莫 傳 ﹂ 、 宮 内 庁 書 陵 部 蔵 ﹁ 冷 泉 流 伊 勢 物 語 抄 ﹂ ・ ﹁ 伊 勢 物 語 塗 籠 抄 ﹂ な ど に よ っ て 、 そ の 秘 伝 ・ 口 伝 の お お む ね は 見 当 が つ く の で あ る 。 た と え ば 、 ﹁ し ぎ ﹂ の 傍 ら の ﹁ 司 宜 ﹂ は 、 鳥 の 名 で な く 、 大 唐 の 司 宜 と い う 人 物 の こ と だ と 言 い 、 ﹁ つ ・ ゐ つ の ﹂ の 傍 ら の ﹁ 調 五 ﹂ は 、 五 才 に な っ て 結 婚 の 準 ト ト ノ 備 ﹁ 調 ﹂ い た り と い う 意 だ と す る が ご と く 、 実 は 甚 だ 荒 唐 無 稽 な 説 が 中 心 に な っ て い る の で あ る が 、 い ず れ に し て も 、 か よ う な 秘 伝 ・ 口 伝 の 類 い を 大 上 段 に ふ り か ざ し て い た こ と が 知 ら れ る の で あ る 。
三 秘 伝 の 口 伝 は 、 そ の 性 質 上 、 一 度 に す べ て の 秘 伝 を 許 す こ と は あ る ま い か ら 、 部 分 部 分 に 分 か れ て 数 多 く の 口 伝 が 存 在 す る よ う に な る の で あ る 。 ﹁ 冷 泉 家 草 子 目 録 ﹂ に も 、 か よ う な 、 独 立 し た 項 目 の 名 を 持 っ た 口 伝 が 数 多 く 記 載 さ れ て い る の で あ る が 、 こ れ ら の 中 の 数 種 が 、 実 は 現 存 し て い た の で あ る 。 す な わ ち 、 27 ﹁ 口 中 深 存 疑 ﹂ 25 コ 一字 義 ﹂ 38 ﹁ 内 道 論 ﹂ な ど を 含 ん だ 秘 伝 書 の 断 片 が 、 京 都 大 学 付 属 図 書 館 の 平 松 家 旧 蔵 本 の 中 に 存 在 す ろ の で あ る 。 図 書 目 録 に よ れ ば 、 全 体 の 書 名 は ﹁ 伊 勢 物 語 演 義 ﹂ と あ る が 、 図 書 館 で 命 名 し た も の か 。 内 題 も 外 題 も な い 。 体 裁 は 縦 一 八 ・ 七 セ ン チ 、 横 一 七 ・ ニ セ ン チ の 小 形 本 。 鳥 の 子 紙 四 枚 を 重 ね て 二 つ に 折 り 、 八 丁 、 十 六 頁 と し た も の で あ っ て 、 表 紙 も な い 。 大 和 綴 列 帖 装 の 一 括 り の み が 他 と 離 れ て 伝 存 し た も の で あ ろ う 。 第 一 丁 表 の 一 行 目 に は 、 口 口 也 。 是 ハ 天 r 元 年 七 月 十 一 日 ノ 事 也 。 と あ り 、 前 丁 か ら 続 く 文 の 最 後 の 行 が 記 さ れ 、 続 い て ﹁ 口 中 深 義 ﹂ と い う 、 口 伝 の 見 出 し が 出 る 。 ﹁ 冷 泉 家 草 子 目 録 ﹂ に は ﹁ 口 中 深 存 義 ﹂ と あ っ た が 、 お そ ら く 同 じ も の で あ ろ う 。 末 尾 は 、 第 八 丁 表 の 最 初 二 行 で 終 り 、 第 八 丁 の 裏 に は 何 の 記 述 も な い と こ ろ か ら 見 る と 、 こ こ で 全 体 が 終 っ て い た の で は あ る ま い か 。 つ ま り 、 一 冊 の 本 の 最 後 の 部 分 が 残 っ た 零 本 な の で あ る 。 さ て 、 内 容 は 、 ﹁ 冷 泉 家 草 子 目 録 ﹂ に 言 う 、 ﹁ 口 中 深 存 義 ﹂ ・ ﹁ 内 道 論 ﹂ ・ ﹁ 二 字 義 ﹂ の 他 、 ﹁ 七 月 七 日 絶 入 事 ﹂ ・ ﹁ 非 月 哉 ﹂ ・ ﹁ 三 河 義 ﹂ ・ ﹁ 會 合 女 隠 名 事 ﹂ の 七 箇 の 秘 伝 が 記 さ れ て い る 他 、 ﹁ 齋 宮 段 有 別 帖 ﹂ ・ ﹁ 龍 田 河 有 別 帖 ﹂ と 注 さ れ て い る よ う に 、 46 ﹁ 齋 宮 段 ﹂ に も 関 係 が あ っ た こ と が 知 ら れ 、 そ の 成 立 が 鎌 倉 時 代 の も の で あ る こ と は 、 お お む ね 確 実 と さ え 言 い 得 る の で あ る 。
短 少 な も の で あ る の で 、 ま ず 本 文 の 全 体 を 紹 介 し て お こ う (な お 濁 点 、 句 読 点 を 付 し た ) 。 ∴ ロ 中 深 義 滋 春 オ モ フ コ ト イ ハ デ ゾ タ マ ニ ヤ ミ ヌ ベ キ ワ レ ト ヒ ト シ キ 人 シ ナ ケ レ バ 抑 、 業 平 の 本 意 ・ 存 念 ・ 名 字 事 本 意 ・ 存 念 卜 者 、 今 此 伊 勢 物 語 ヲ 作 事 非 云 二 、 男 女 交 會 之 道 、 業 平 自 十 四 歳 、 僧 正 真 雅 ノ 弟 子 ト 成 テ 、 十 六 ヨ リ ニ 十 八 二 至 テ 、 眞 言 一 大 宗 ノ 奥 義 ヲ 極 タ リ 。 眞 言 ノ 惣 血 脈 二 好 賢 ト 云 ハ 此 人 ノ 法 名 也 。 於 俗 法 名 ヲ ッ ク ナ リ 。 サ レ バ 、 思 事 ヲ イ ハ デ ト 云 ハ 、 真 言 ノ 深 義 ヲ 人 ニ シ ラ セ デ ヤ ミ ヌ ト 云 也 。 僧 正 、 コ ト ニ 愛 念 フ カ ・ リ ケ レ バ 、 一 宗 ノ 深 義 ヲ ノ コ サ ズ 業 平 ニ ツ タ へ タ ル ナ リ 。 抑 、 伊 勢 物 語 ト 者 、 雨 部 ヲ 伊 勢 ノ ニ 字 ニ ッ ク リ テ 、 眞 言 ノ 胎 金 ノ 義 ヲ 男 女 ノ 道 ニ ッ ク リ ナ ス ナ リ 。 伊 ト 者 、 胎 蔵 界 也 。 伊 ト 者 可 法 ヲ 納 テ 諸 法 ヲ 一 如 ト 知 者 也 。 サ レ バ 胎 蔵 界 ニ ハ 七 百 余 尊 ヲ コ メ テ ] 法 ト ス 。 サ レ バ 、 伊 ト 者 、 オ サ ム ル ト ヨ メ リ 。 勢 ト 者 、 金 剛 界 也 。 勢 卜 云 ハ 、 タ ネ ヲ マ ク ト 云 ヨ ミ ァ リ 。 金 剛 界 者 種 子 、 三 耶 形 也 。 サ レ バ 、 金 剛 界 ニ ハ ラ マ ズ ナ リ 。 以 此 義 、 眞 言 ↓ 大 宗 ノ 雨 部 ヲ 伊 勢 ノ ニ 字 ニ ッ ク ル ナ リ 。 物 語 ト 者 、 實 相 ヨ リ 迷 路 マ デ ヲ 作 ラ ム ガ タ メ ニ 物 語 ト 云 也 。 昔 男 ト 者 、 我 身 ヲ 云 。 是 ハ 住 吉 ノ 化 身 也 。 本 地 観 音 也 。 本 地 ヲ 云 バ 、 無 始 常 住 ノ 佛 ナ ル ガ 故 二 昔 卜 云 。 男 卜 者 、 金 剛 界 ノ 尊 ノ 義 也 。 サ レ バ 、 男 卜 云 也 。 女 ト ハ 有 常 ガ 娘 ナ リ 。 コ レ ハ 胎 蔵 界 ノ 本 尊 也 。 サ レ バ 、 女 ア リ ト 云 也 。 ウ イ カ ブ リ ト ハ 八 叢 最 初 ノ 冠 也 。 ナ ラ ノ 京 二 行 ト ハ 、 一 切 衆 生 ヲ 化 セ ム ト テ 、 凡 夫 地 二 趣 テ 、 利 生 方 便 ヲ 起 ホ ド コ サ ム タ メ ニ 娑 婆 二 來 テ ・
テ ラ シ 人 二 縁 ヲ 結 ヲ 云 也 。 観 音 、 日 ノ 光 ノ 衆 生 ヲ 光 ニ ユ ケ バ 、 春 日 ト 云 也 。 春 日 ト 者 、 恵 義 也 。 春 日 ハ 霞 ニ サ ヘ ラ レ テ ク モ ル 也 。 滞 明 日 ノ 衆 生 ノ 門 二 入 ハ 、 ク モ ル 心 也 。 大 方 、 物 語 ノ 大 心 ヲ 眞 言 深 義 二 事 ヨ セ シ テ 造 レ リ 。 ∴ 内 道 論 定 家 問 、 抑 、 伊 勢 物 語 ハ 諸 法 根 本 。 無 始 無 終 之 理 躰 ト 云 事 、 如 何 。 答 、 伊 勢 二 字 ハ 陰 陽 也 。 陰 陽 ハ 万 法 ノ 本 源 也 。 サ レ バ 、 何 物 力 二 字 ノ 性 徳 ニ モ レ タ ル ヤ 。 然 則 、 森 羅 万 像 ハ 伊 勢 ノ ニ 字 也 。 問 、 森 羅 万 法 、 草 木 塵 砂 ニ イ タ ル マ デ 皆 佛 躰 也 。 一 物 ト テ 他 ノ 物 ニ ア ラ ズ 。 何 佛 法 ノ 深 義 ヲ カ リ テ 伊 勢 ノ ニ 字 ト 云 哉 。 答 云 、 必 シ モ 佛 法 二 云 所 ヲ カ ル ニ ハ ア ラ ズ 。 口 來 ノ 陰 陽 ハ 万 物 ニ ヲ イ テ 、 色 、 心 ト モ ニ ハ ナ レ ズ 。 然 則 、 万 法 一 如 ノ ニ 字 ト 云 也 。 イ マ サ ラ ニ ツ ク リ イ ダ ス 陰 陽 ナ ラ バ コ ソ 佛 法 ノ 義 ヲ カ ル ト ハ 申 侍 ベ ラ メ 。 只 、 カ ナ タ コ ナ タ ヨ リ イ ハ ル 、 深 義 也 。 問 、 佛 法 ニ ハ 法 界 ↓ 心 ト 観 テ 成 佛 之 道 ヲ 知 。 此 物 語 ニ ハ 、 義 円 融 ハ ア リ ト シ 、 成 佛 義 ア ラ ム ヤ 。 答 、 法 界 一 如 ノ 陰 陽 卜 観 テ 、 万 物 ヲ 五 行 ニ ミ ヘ ツ ル 即 佛 也 。 サ レ バ 、 佛 法 ト 云 。 物 語 ト 云 ハ 、 シ バ ラ ク 名 字 ヲ カ ヘ タ レ ド モ 、 實 義 一 同 セ ザ レ バ 、 業 平 権 化 ノ 人 ニ テ 、 シ バ ラ ク 真 言 ノ 秘 密 ヲ 戯 語 ノ 物 語 ニ ツ ク リ ナ シ テ 、 人 二 深 義 ヲ サ ト ラ シ メ ム タ メ ナ リ 。 サ レ バ 、 世 卜 云 、 法 ト 云 ハ 、 シ バ ラ ク ノ 義 也 。 此 物 語 則 真 言 ノ 深 義 也 。 能 々 可 習 之 。 齋 宮 段 有 別 帖
龍 凹 河 有 別 帖 ∴ 二 字 義 今 、 業 平 者 、 入 丸 ノ 化 身 也 。 故 、 伊 勢 物 語 ト 者 、 人 丸 、 業 平 ト 生 テ 造 事 也 . 一一 ﹁ 寸 7 一↓ H ﹁ 、 τ 罫 乎 丸
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人 生 一 、 韓 卜 潤 . ぬ ザ レ , サ レ バ 、 伊 勢 ト カ キ テ ハ 、 人 丸 、 生 テ 乎 ニ カ ア リ ト ヨ ム ナ リ 。 ツ ト メ テ ト 云 、 今 ノ 和 冴 道 ヲ ヒ ・ ム ル 事 ヲ 云 也 。 此 二 字 ノ コ ト 、 ヤ ウ く ニ イ ヘ ド モ 、 實 競 ニ ハ 、 人 丸 ノ 業 平 ト 生 デ 斑 道 ヲ ヒ ロ メ 、 陰 陽 ノ 深 義 ト シ テ 生 類 ヲ ミ チ ビ ク 事 ヲ 寛 魂 ト セ ル 也 。 ∴ 七 月 七 日 絶 入 事 先 ノ 日 ノ 成 時 ヨ リ 、 次 ロ ノ 入 合 マ デ ト ミ ヘ タ リ 。 是 ハ 、 責 二 死 タ ル ニ ア ラ ズ 。 此 時 、 住 吉 二 錦 テ 政 務 ヲ バ カ リ タ 叩 ハ ム ガ タ メ ニ 住 青 ヘ カ ヘ リ タ マ ヘ ト 云 也 。 只 、 大 明 神 化 現 シ テ 業 平 ト 成 り 、 サ レ バ 、 シ バ ラ ク 住 吉 ニ カ ヘ ラ ム ト デ 、 其 間 死 タ ル 也 。 是 人 ( 二 歳 バ カ リ 一= ヅ 、 阿 保 親 王 ノ ピ ザ ノ 上 二 由 然 冒一 出 奈 シ タ ル 人 ト 云 也 。 サ レ ド モ 、 伊 豆 内 -親 王 ノ 子 卜 煮 、 實 義 鍬 。 サ レ バ 、 明 軸 旧ノ 、 カ リ ニ 内 親 王 ノ ハ ラ 一一 ヤ ド リ 給 ヘ ル ナ ル ベ シ 。∴ 非 月 哉 月 ヤ ア ラ ヌ ハ ル ヤ ム カ シ ノ ハ ル ナ ラ ヌ ワ ガ 身 ヒ ト ツ ハ モ ト ノ 身 二 弘 テ 月 ヤ ア ラ ヌ ト 貢 ハ 、 我 ハ 怯 身 ノ 如 来 ノ 奥 化 也 脅 衆 虫 化 度 ノ タ メ ニ 此 国 二 来 り 、 難 化 ノ 衆 生 ノ 多 キ ハ 昔 ン 本 型 ノ 月 ニ ハ ア ラ 還 ヵ 、 ト ヨ メ リ 、 春 ヤ 昔 ノ 春 ナ ラ ス ト ハ 、 本 概 ノ 春 ノ 穿 光 、 浄 土 ヲ 出 テ 、 カ シ コ へ 蹄 ム ト ス ル 道 ヲ ワ ス レ テ 、 本 肥 ノ 巻 ヲ ワ ス レ タ ル カ ト 云 也 輩 我 身 ニ ハ モ ト ノ 身 三 シ テ ト 云 ハ 、 只 、 我 身 ノ ミ 本 麓 ノ 催 腫 也 ト ヨ メ ル ナ リ 。 ア バ ラ ナ ル イ タ ジ キ ト 澱 ( 娑 婆 世 界 荒 悪 ノ 土 ヲ 云 也 q 月 ノ カ タ ブ ク マ デ ト 云 ハ 、 本 覚 ノ 月 ノ カ タ ブ キ テ 、 利 生 ノ ス ヱ ニ ナ ル ベ キ 心 ヲ 舐 也 。 コ ヒ テ ト 云 ( 昔 ノ 本 覚 ノ 位 ヲ 懲 義 也 、 ∴ 三 河 義 三 河 者 三 密 ヲ カ タ ド ル コ ト 也 。 三 河 ノ 告 上 耳 ハ 、 三 密 ノ 深 義 ヲ 以 テ 迷 類 ヲ ス ク ハ ム ト ズ レ バ 難 化 ナ ル 間 、 ク ル シ キ ト 云 事 也 。 八 橋 ト 者 八 栄 也 。 八 宗 ハ 人 ヲ 済 度 ス ル 教 ナ レ バ 橋 卜 云 也 。 三 構 八 宗 ヲ サ ス コ ト バ 也 、 カ ラ 衣 キ ツ ・ ナ レ ニ シ ト 者 、 法 身 理 瑞 ノ 衣 ヲ キ シ 寧 ヲ 云 ナ リ 、 ハ ル ぐ キ メ ル 旅 ト ハ 迷 路 米 テ 衆 生 ヲ 度 ス ル 事 ヲ 云 也 。 ∴ 會 合 女 照 名 事 初 紅 集 女 初 草 女 着 紫 女 二 條 后 中 將 妹 有 常 娘 ア キ カ ゼ ト モ 云 也 。
ム サ シ ア ブ ミ 女 ワ ス レ 草 女 白 雲 女 欺 冬 女 浮 雲 女 唐 衣 チ グ サ 女 此 外 異 名 無 之 云 々 四 條 后 染 殿 后 染 殿 内 侍 定 文 妹 當 純 妹 伊 勢 小 町 四 京 都 大 学 図 書 館 所 蔵 の ﹁ 伊 勢 物 語 演 義 ﹂ (仮 題 ) の 本 文 の す べ て を 示 し た の で あ る が 、 こ れ を 見 る 時 、 ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ な る 歌 学 書 と 深 い か か わ り が あ る こ と に 気 づ か ざ る を 得 な い の で あ る 。 ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ は ﹁ 玉 傳 秘 抄 ﹂ と い う 名 で も 伝 え ら れ て い る が 、 内 容 は 和 歌 の 神 と し て の 住 吉 大 明 神 が 天 安 元 年 正 月 二 十 闘 八 日 に 在 中 将 業 平 に 和 歌 の 秘 伝 た る ﹁ 玉 傳 ﹂ を 伝 え た こ と に 始 ま り 、 伊 勢 物 語 ・ 古 今 集 を 中 心 と す る 和 歌 の 秘 伝 、 さ ら に は 親 句 疎 句 事 ・ 対 言 歌 ・ 問 答 歌 ・ 題 歌 ・ 題 歌 書 様 ・ 和 歌 九 品 ・ 道 済 十 体 な ど の 歌 論 を ま と め た も の で あ る 。 こ れ を 仔 細 に 検 討 す る と 、 こ こ に 示 し た 京 大 本 ﹁ 伊 勢 物 語 演 義 ﹂ と 共 通 す る も の が 甚 だ 多 い の で あ る 。 今 、 こ れ と 対 応 さ せ な が ら 、 前 掲 の 口 伝 に つ い て 簡 単 な 説 明 を 加 え て ゆ き た い 。 な お 、 ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ は 神 宮 文 庫 蔵 村 井 敬 義 奉 納 本 を 使 用 す る 。
﹁ ロ 中 深 義 ﹂ 1 ﹁ 冷 泉 家 草 子 目 録 ﹂ に ば ﹁ 口 中 深 存 義 ﹂ と あ り 、 ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ に は ﹁ 中 深 存 義 ﹂ と あ る が 同 じ も の で あ ろ う 。 京 大 本 ﹁ 演 義 ﹂ と ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ の 本 文 は ほ と ん ど 一 致 し 、 は っ き り と 相 違 す る と こ ろ は ご く 僅 か で あ る 。 さ て 、 内 容 は 一 二 四 段 の ﹁ 思 ふ こ と い は で ぞ た 窄 に や み ぬ べ き 我 と ひ と し き 人 し な け れ ば ﹂ に 関 連 し て 、 伊 勢 物 語 の 本 旨 を 真 言 の 深 義 を 表 わ す も の と し て 説 い て い ろ と こ ろ に 特 徴 が あ る 。 伊 勢 の 伊 と は 、 真 言 で 言 う 胎 蔵 界 、 勢 と は 同 じ く 金 剛 界 で あ る と 、 ま ず 説 く の で あ る 。 真 言 密 教 で は 、 宇 宙 の す べ て が 大 日 如 来 の あ ら わ れ で あ る と し 、 そ の 智 徳 を あ ら わ す 面 を 金 剛 界 、 理 性 を あ ら わ す 面 を 胎 蔵 界 と す る 。 す な わ ち 智 慧 が 堅 く て す べ て の 煩 悩 を う ち く だ く の を 金 剛 に 喩 え て 、 智 . 果 . 始 覚 . 自 証 な ど の 意 を あ ら わ す の が 金 剛 界 で あ り 、 理 性 が す べ て の も の に 内 在 し て 大 悲 に よ っ て ま も り 育 て ら れ て い る の を 、 胎 児 が 母 胎 内 に あ り 、 蓮 華 の 種 子 が 華 の 中 に 包 ま て い る の に 喩 え て 、 理 ・ 因 ・ 本 覚 ・ 化 他 な ど の 意 を あ ら わ す の が 胎 蔵 界 で あ る か ら 、 ﹁ 勢 ﹂ す な わ ち ﹁ 男 ﹂ を 金 剛 界 に 、 ﹁ 伊 ﹂ す な わ ち ﹁ 女 ﹂ を 胎 蔵 界 に あ て る の も 故 な し と は し な い 。 な お 、 こ れ に 関 連 し て 注 意 す べ き は 、 同 じ く 滋 春 に 仮 託 し た ﹁ 伊 勢 物 語 髄 拶 ﹂ と の 関 係 で あ る 。 ﹁ 髄 拶 ﹂ の 付 加 部 分 に 、 伊 は 女 、 勢 は 男 。 伊 は ち や う 、 勢 は ゑ な り 。 伊 は 理 、 勢 は 知 な り 。 伊 は 胎 蔵 界 、 勢 は 金 剛 界 な り 。 と あ る の に 一 致 す る と い う 事 実 で あ る 。 而 し て 、 こ れ が ﹁ 髄 膝 ﹂ の 本 文 で は な く 付 加 部 分 で あ る こ と を 思 え ば 、 本 口 伝 の 方 が あ る い は ﹁ 髄 拶 ﹂ の 記 述 に 先 行 す る の で は な い か と 考 え ら れ る の で あ る 。 今 、 ﹁ 伊 勢 物 語 髄 拶 ﹂ と の 関 係 を 説 い た が 、 こ の よ う に 鎌 倉 時 代 の 他 の 勢 語 注 釈 書 と の 関 係 を 考 え る こ と は 、 同 時 に こ の 口 伝 の 位 置 を 明 ら か に す ろ こ と に な っ て 甚 だ 有 益 で あ る 。 た と え ば 、 本 口 伝 の 言 う ﹁ 業 平 自 十 四 歳 、 侶 正 真 雅 ノ 弟 子 卜
成 テ 、 十 六 ヨ リ ニ 十 八 二 到 テ 真 言 一 大 宗 ノ 奥 義 ヲ 極 タ リ ﹂ と 言 う こ と が 、 伊 勢 物 語 が 真 言 の 深 義 を 説 く た め の も の と 言 う 本 口 伝 の 前 提 に な っ て い る の で あ る が 、 こ れ は 、 宮 内 庁 書 陵 部 蔵 ﹁ 冷 泉 流 伊 勢 物 語 抄 ﹂ に 、 初 冠 と は 元 服 の 始 な り 。 是 は 業 平 十 一 よ り 東 寺 の 真 が 僧 正 の 弟 子 に て 有 け る を 、 十 六 の 年 、 承 和 十 四 年 三 月 二 日 に 仁 明 天 皇 の 内 裏 に て 元 服 す る 也 。 わ ら は 名 、 曼 茶 羅 也 。 と あ る の と 勿 論 関 係 が あ ろ う 。 こ れ は 書 陵 部 蔵 ﹁ 塗 籠 抄 ﹂ 、 慶 応 大 学 蔵 ﹁ 伊 勢 物 語 註 ﹂ 、 広 島 大 学 蔵 ﹁ 千 金 莫 傳 ﹂ な ど 、 冷 泉 家 流 の 注 釈 の す べ て に 共 通 す る 記 述 で あ り 、 本 口 伝 も 、 や は り そ の 系 統 か ら 離 れ る も の で な い こ と を 示 す も の と 考 え ら れ る の で あ る 。 ﹁ 内 道 論 ﹂ -﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ に も や は り 含 ま れ て い て 、 ﹁ 定 家 ﹂ と い う 作 者 名 が な い 点 を 除 い て は お お む ね 一 致 す る 。 冷 泉 家 流 の 注 釈 で あ る 慶 応 大 学 蔵 ﹁ 伊 勢 物 語 註 ﹂ は 内 題 に ﹁ 伊 勢 物 語 定 家 流 ﹂ と 記 し 、 広 島 大 学 蔵 ﹁ 千 金 莫 傳 ﹂ は 外 題 に ﹁ 定 家 流 千 金 莫 傳 ﹂ と 記 し て 、 い ず れ も 冷 泉 ・ 二 条 両 家 対 立 の 頃 の 産 物 で あ る こ と を 示 し て い る が 、 本 口 伝 が 作 者 を 定 家 に 仮 託 す る の も 同 様 の 成 立 事 情 を 思 わ せ る も の で あ る 。 内 容 は 、 伊 勢 物 語 を 陰 陽 を 表 わ す も の と し て 把 え 、 か つ 真 言 の 深 義 に よ っ て こ れ を 説 明 し て い る 。 隠 陽 五 行 的 付 会 は 、 既 に ﹁ 伊 勢 物 語 髄 麟 ﹂ に 見 ら れ る と こ ろ で あ る が 、 こ れ も 同 様 な 雰 囲 気 の 中 で 成 立 し た と 見 て よ い で あ ろ う 。 ヒ ト ウ マ ル ル ハ マ サ ニ マ ル ガ チ カ ラ ナ リ コ 一 字 義 ﹂ i 宮 内 庁 書 陵 部 蔵 ﹁ 伊 勢 物 語 塗 籠 抄 ﹂ の 頭 注 に ﹁ 伊 ﹂ ﹁ 勢 ﹂ の 二 字 を 、 ﹁ 人 生 罪 丸 力 也 ﹂ と よ み 、 従 っ て 男 女 の 物 語 の 意 だ と 解 く 説 が 見 え る が 、 こ れ も 同 じ く ﹁ 伊 ﹂ ﹁ 勢 ﹂ の 二 字 を 分 解 し て ﹁ 人 丸 生 マ レ テ 、 マ サ ニ ツ ト メ ア リ ﹂ と よ み 、 ﹁ 人 丸 が 業 平 に 生 れ か わ っ て 歌 道 を ひ ろ め 、 生 類 を 導 く べ く つ と め る ﹂ と 解 す る の で あ る 。 な お 、 ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ で は 、 前 掲 の ﹁ 口 中 深 義 ﹂ や ﹁ 内 道 論 ﹂ ほ ど に こ れ と 一 致 し た 文 章 に は な っ て い な い 。 念 の た め に
記 す と 、 一 、 伊 勢 の 二 字 、 伊 と い ふ 字 に よ み あ ま た あ り 。 一 に ば 、 お さ む 、 人 と な る と よ む 。 女 と も よ め り 。 せ の 字 は い き お ひ と よ め り 。 し よ せ ん ゐ ん や う ・ な ん に よ の 儀 を あ ら は さ ん が た め に な り 。 ゐ ん や う は て ん ち ば ん も つ な り 。 し か れ ば 、 一 さ い の も ? い き お ひ を お さ む る も の な り 。 し ん ら ま ん ざ う ぜ ん じ ん こ と ぐ く そ の は う を お さ む る 儀 な り 。 こ の ゆ へ に い せ も の が た り と は 、 ま ん ば う 一 に よ に お さ む る 儀 な り 。 吏 記 に い わ く 、 人 の こ ・ ろ の い き お ひ 、 そ の 道 ひ さ し と い へ り 。 し か れ ば 、 い さ ぎ よ き を お さ む と よ め り 。 い さ ぎ よ き と い ふ ば 、 一 さ い よ き 事 を ま ど か に お さ め て い せ と い へ り 。 又 い わ く 、 人 ま る む ま れ て 、 ま さ に つ と め あ り と よ め り 。 み ゆ き ま さ に ま う に つ と め あ り 。 さ れ ぼ 伊 ヒ ト ム マ レ テ ツ ト メ ア リ 勢 の 二 字 如 此 。 一 イ 生 ﹂ 欠 暁 カ 一四 力 上 讃 在 。 ツ ト メ と は 、 い ま の わ か の み ち を ひ ろ む る こ と を い へ り 。 ﹁ 七 月 七 日 絶 入 事 ﹂ 1 伊 勢 物 語 四 〇 段 に 関 す る 口 伝 で あ る 。 ﹁ 若 き 男 ﹂ が ﹁ け し う は あ ら ぬ 女 ﹂ と の 仲 を ﹁ さ か し ら す る 親 ﹂ に さ か れ 、 ﹁ 出 で て い な ば 誰 か わ か れ の か た か ら む ﹂ の 歌 を よ ん で ﹁ 絶 入 ﹂ っ た こ と に 対 し て 秘 伝 を 述 べ て い る の で あ る 。 こ れ に つ い て は 、 正 徹 奥 書 ・ 蜷 川 知 薙 筆 伊 勢 物 語 の 書 入 朱 注 に も 、 ﹁ 貞 観 十 ↓ 年 七 月 十 八 日 絶 入 一 日 一 夜 。 中 將 冥 途 ノ 記 ノ 中 有 。 黄 魔 宮 ナ ド ノ 記 ア リ 云 々 ﹂ と 記 さ れ て い る よ う に 、 種 々 様 々 の 秘 伝 が あ っ た よ う で あ る 。 絶 え 入 っ た の を 七 月 七 日 の こ と と し て い る の は 、 五 九 段 の ﹁ ひ ん が し 山 に す ま ん と 思 ひ 入 ﹂ っ た 男 が ﹁ 住 み わ び ぬ 今 は か ぎ り と ﹂ の 歌 を よ ん で ﹁ も の い た く 病 み て 死 に 入 ﹂ っ た の で 、 ﹁ お も て に 水 そ そ ぎ な ど ﹂ す る と 蘇 生 し て ﹁ わ が 上 に 露 ぞ お く な る 天 の 川 と わ た る 舟 の 罹 の し つ く か ﹂ と よ ん だ と い う 話 と 関 連 づ け て の こ と で あ ろ う 。 と こ ろ で 、 こ の 口 伝 の 骨 子 は 、 そ の 時 に 死 ん だ の は 、 本 当 に 死 ん だ の で は な く 、 業 平 は 住 吉 明 神 の 化 身 で あ る ゆ え に 、
政 務 を 見 る た め に 一 度 住 吉 へ 帰 っ た と 説 く の で あ る 。 業 平 を 住 吉 明 神 の 化 身 と す る こ と は 既 に 前 述 の ﹁ 口 中 深 義 ﹂ に あ っ た 。 ﹁ 非 月 哉 ﹂ ー ﹁ 口 中 深 義 ﹂ や ﹁ 七 月 七 日 絶 入 事 ﹂ で は 、 業 平 は 住 吉 明 神 の 化 身 で あ り 、 本 地 は 観 音 で あ っ た が 、 こ こ で は 如 来 の 変 化 で あ る と 説 か れ て い る 。 本 来 は 別 々 に 存 在 し た 口 伝 の 集 成 で あ る か ら 矛 盾 と す べ き で は な か ろ う 。 さ て 、 ﹁ 法 身 の 如 来 ﹂ と は 言 う ま で も な く 大 日 如 来 で あ ろ う 。 業 平 を 大 日 如 来 の 化 身 と す る 説 は 、 や は り 鎌 倉 末 期 の 秘 伝 書 で あ る 宮 内 庁 書 陵 部 蔵 ﹁ 伊 勢 物 語 難 義 注 ﹂ に も 見 え る 。 な お 、 こ れ も ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ に ほ と ん ど 一 致 し て 存 し 、 ﹁ 謡 曲 拾 葉 抄 ﹂ の ﹁ 杜 若 ﹂ の 註 に も ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ の 引 用 と し て 記 述 さ れ て い る 。 コ ニ 河 義 ﹂ 1 三 河 が 三 密 を あ ら わ し 、 八 橋 が 八 宗 を 表 わ す と い う の で あ る 。 密 教 に お け る 三 密 と は 、 体 ・ 相 ・ 用 の 三 つ の 真 如 の は た ら き で あ り 、 衆 生 の 三 業 と 相 応 じ て こ れ を 救 わ ん と す る も の 。 八 宗 と は 、 律 ・ 倶 舎 ・ 成 實 ・ 法 相 ・ 三 論 ・ 華 嚴 ・ 天 台 ・ 真 言 の 八 つ の 宗 要 で あ る 。 ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ に は ﹁ 三 河 深 義 ﹂ と し て 収 め ら れ て い る が 内 容 と 文 章 は ほ と ん ど 変 ら な い 。 ﹁ 會 合 女 隠 名 事 ﹂ 1 こ れ も ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ に ﹁ な り ひ ら 交 會 付 隠 名 ﹂ と し て 収 め ら れ 、 掲 出 の 順 序 を 含 め て 一 致 し て い る 。 一 体 、 物 語 の 登 場 人 物 に 実 在 の 人 名 を あ て る こ と は 、 鎌 倉 時 代 古 注 の 一 般 的 特 徴 と 称 す べ き で あ る が 、 そ の 学 派 に よ っ て 人 名 の あ て 方 が 雑 多 で あ り 、 そ の 整 理 も か な り 困 難 を 極 わ め る の で あ る 。 ま ず 、 初 紅 葉 女 を 二 条 后 と し 、 ﹁ ア キ カ ゼ ト モ 云 也 ﹂ と す る の は 、 九 六 段 の ﹁ さ れ ば 、 こ の 女 、 か へ で の 初 紅 葉 を ⋮ ⋮ ﹂
か ら 来 た 呼 称 で あ る 。 ﹁ ア キ カ ゼ ﹂ も 、 同 じ 段 の ﹁ す こ し 秋 風 吹 き 立 ち な ん 時 、 か な ら ず あ は ん ⋮ ⋮ ﹂ に 由 来 す る 。 こ の 女 に 二 条 后 を あ て る こ と は 、 書 陵 部 本 系 知 顯 集 ・ 群 書 類 從 本 系 知 顯 集 ・ 和 語 知 顯 集 ・ 神 風 知 顯 正 義 集 ・ 架 蔵 本 伊 勢 物 語 和 歌 秘 注 抄 ・ 守 山 八 幡 宮 本 伊 勢 物 語 古 妙 な ど 知 顯 集 の 系 統 、 宮 内 庁 書 陵 部 蔵 冷 泉 流 伊 勢 物 語 抄 ・ 慶 応 大 学 本 定 家 流 伊 勢 物 語 註 ・ 神 宮 文 庫 蔵 伊 勢 物 語 注 本 ・ 蜷 川 智 慈 筆 伊 勢 物 語 の 書 入 れ ・ 架 蔵 本 懐 中 抄 な ど 冷 泉 家 古 注 の 系 統 が 、 す べ て 二 条 后 を あ て て ︼ 致 す る 。 管 見 の 及 ぶ と こ ろ 、 こ れ と 異 な る の は 有 常 二 女 を あ て る 二 条 家 末 流 の 注 釈 で あ る 彰 考 館 文 庫 蔵 伊 勢 物 語 抄 の み で あ る 。 第 二 の 初 草 女 は 、 言 う 迄 も な く 四 九 段 の ﹁ 初 草 の な ど め づ ら し き ﹂ と よ ん だ ﹁ 妹 の い と を か し げ な る ﹂ 女 性 で あ る 。 本 文 に 従 っ て 業 平 妹 と す る こ と は 前 掲 の 諸 注 の す べ て が 一 致 し て い る 。 若 紫 女 は 、 初 段 の ﹁ 春 日 野 の 若 紫 の す り 衣 ﹂ と よ ま れ た 女 で あ る 。 有 常 娘 を あ て る こ と 前 掲 の 諸 注 す べ て が 一 致 し て い る 。 第 四 の ム サ シ ア ブ ミ 女 は 、 = 二 段 の ﹁ 武 蔵 鐙 さ す が に か け て た の む に は ﹂ と よ ん だ 女 の こ と で あ る 。 こ れ に 行 平 娘 の 四 条 后 を あ て る の は 書 陵 部 本 抄 ・ 同 塗 籠 抄 ・ 慶 応 本 註 ・ 神 宮 交 庫 本 注 本 な ど 冷 泉 家 流 の 古 注 に 限 ら れ 、 書 陵 部 本 系 知 顯 集 ・ 神 風 知 顯 正 義 集 ・ 守 山 八 幡 宮 本 古 妙 ・ 架 蔵 本 和 歌 秘 注 抄 な ど 知 顯 集 系 統 は 二 条 后 を あ て て い る 。 第 五 の ワ ス レ 草 女 は 、 一 〇 〇 段 の ﹁ あ る や ん ご と な き 人 の 御 局 よ り 忘 れ 草 を 忍 ぶ 草 と や い ふ と て い だ さ せ 給 へ り け れ ば 、 た ま は り て 、 忘 れ 草 生 ふ る の べ と は ⋮ ⋮ ﹂ と 記 述 さ れ た 女 性 で あ る 。 こ れ を 染 殿 后 と す る の は 、 書 陵 部 本 抄 ・ 慶 応 本 註 ・ 神 宮 文 庫 本 注 本 な ど 冷 泉 流 の 古 注 に 属 す る も の ば か り で 、 知 顕 集 系 統 の 諸 注 や 彰 考 館 本 抄 ・ 書 陵 部 本 難 義 注 な ど は 二 条 后 と し て 、 こ れ に 一 致 し な い 。 以 上 の 五 人 は 、 何 故 に か く 呼 称 さ れ る の か が 物 語 本 文 か ら 説 明 が つ い た が 、 以 下 の 五 人 ば こ の 点 全 く 不 明 で あ る 。 白 雲 女 に し て も 、 物 語 中 に 白 雲 な る 語 が 存 在 し な い の だ か ら 困 ま る 。 し か し 、 業 平 を め ぐ る 女 性 に 染 殿 内 侍 な る 女 性 を あ て る の は 、 ﹁ 伊 勢 物 語 髄 脳 ﹂ の 他 、 冷 泉 家 流 古 注 に の み 見 ら れ る 現 象 で あ る か ら 、 前 の 五 例 と 同 様 冷 泉 家 流 古 注 と の 関 係 は 否
定 出 来 な い 。 第 七 の 欺 冬 女 も 同 様 で あ る 。 山 吹 は 伊 勢 物 語 に 全 く 現 わ れ な い 植 物 で 、 呼 称 の 由 来 は 推 定 し 得 べ く も な い が 、 六 一 段 の 染 川 の 女 に 定 文 妹 を あ て る の は 、 や は り 冷 泉 家 流 古 注 の み に 見 ら れ る 現 象 で あ る 。 第 八 の 浮 雲 女 も わ か ら な い 。 當 純 妹 は 、 管 見 の 及 ぷ と こ ろ で は 、 宮 内 庁 書 陵 部 蔵 冷 泉 流 伊 勢 物 語 注 に 、 八 橋 と は 八 人 を い つ れ も 捨 て が た く て 思 ひ わ び た る 心 也 。 八 人 と ば 三 條 町 濡 妖 繕 卦 有 常 娘 、 離 、 伊 勢 、 小 町 、 マ マ ヘ ヘ へ 定 文 娘 、 初 草 女 、 當 純 妹 、 齋 宮 、 此 八 人 也 。 と あ り 、 類 書 の 広 島 大 学 蔵 ﹁ 千 金 莫 傳 ﹂ に 、 ﹁ 八 橋 と 云 は 、 八 人 を 何 思 捨 ず て 思 渡 ろ な り 。 八 人 と は 、 三 條 町 、 有 常 女 、 伊 ヘ ヘ へ 勢 、 小 町 、 定 文 娘 、 初 草 女 、 當 純 娘 、 齋 宮 、 此 八 人 な り ﹂ と あ る 記 述 の み で あ る が 、 い ず れ も 冷 泉 家 の 注 釈 に 関 係 す る も の で あ る こ と は 既 述 の 場 合 と 同 じ で あ る 。 第 九 の 鹿 衣 の 女 も そ の 名 の 由 来 が わ か ら ぬ こ と は 同 じ で あ ろ が 、 伊 勢 の 御 を 物 語 中 の 女 性 に あ て る の も 、 や は り 冷 泉 家 流 の 古 注 に 限 ら れ た こ と で は あ る 。 最 後 の チ グ サ 女 に あ て ら れ た 小 野 小 町 は 、 鎌 倉 時 代 の 古 注 の す べ て が 物 語 中 の 人 物 に あ て て い る の で あ る が 、 チ グ サ 女 と よ ば れ た 理 由 を 物 語 本 文 か ら 見 出 す こ と は 同 様 に 不 可 能 な の で あ ろ 。 こ の よ う に 、 ﹁ 會 合 女 隠 名 事 ﹂ に 記 さ れ た 十 人 の 女 性 の 把 え 方 は 冷 泉 家 流 の 古 注 の そ れ と か な り の 関 係 が あ る こ と が 知 ら れ た の で あ る が 、 同 時 に 後 半 の 五 人 の 異 称 、 す な わ ち ﹁ 白 雲 女 ﹂ ﹁ 欺 冬 女 ﹂ ﹁ 浮 雲 母 ﹂ ﹁ 唐 衣 女 ﹂ ﹁ チ グ サ 女 ﹂ な ど の 呼 称 は 冷 泉 家 流 伊 勢 物 語 抄 を 始 め 他 に 全 く 類 例 を 見 な い と こ ろ に 、 こ の 口 伝 の 本 質 を 把 え な け れ ば な ら な い の で あ る 。 参 考 の た め 私 見 を 申 せ ば 、 こ の 五 人 の 異 称 の 中 、 ﹁ 唐 衣 女 ﹂ を 除 い た 四 人 が ﹁ 白 雲 ﹂ ﹁ 欺 冬 ﹂ ﹁ 浮 雲 ﹂ ﹁ チ グ サ ﹂ と い う よ う に 、 浮 い た 定 め な い も の 、 移 ろ い や す く 定 め な い も の に 喩 え ら れ て い る の に 注 意 し な け れ ば な ら ぬ 。 お そ ら く は 前 の 五 人 が 物 語 中 の 用 語 か ら 命 名 さ れ て い る の と 異 な っ て 、 そ の 人 物 の 状 態 や 性 格 か ら 喩 え た も の で あ ろ う 。
五 ﹁ 冷 泉 家 草 子 日 録 ﹂ に 記 載 の あ る 幾 つ か の 伊 勢 物 語 口 伝 が 京 都 大 学 図 書 館 所 蔵 の ﹁ 伊 勢 物 語 演 義 ﹂ ( 仮 題 ) に 伝 存 し 、 そ の ま た 大 半 が ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ の 中 に 収 め ら れ て い る こ と を 明 ら か に し た の で あ る が 、 ﹁ 冷 泉 家 草 子 目 録 ﹂ 46 に 名 が 見 え 、 ﹁ 伊 勢 物 語 演 義 ﹂ に ﹁ 有 別 帖 ﹂ と し て 名 前 だ け が 記 さ れ て い る ﹁ 齋 宮 段 ﹂ と 、 同 じ く ﹁ 有 別 帖 ﹂ と し て ﹁ 伊 勢 物 語 演 義 ﹂ に 名 を と ど め て い る ﹁ 龍 田 河 ﹂ の 事 を 始 め 、 ﹁ 冷 泉 家 草 子 目 録 ﹂ 31 ﹁ 星 宮 口 傳 ﹂ 、 32 ﹁ 仁 和 中 將 秘 義 ﹂ 、 36 ﹁ 入 滅 記 ﹂ な ど が ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ の 中 に 含 ま れ て い る こ と を 次 に 注 意 し な け れ ば な ら な い 。 閏 、 斎 宮 段 五 月 五 日 の 月 の ひ か り の お ぼ ろ な る と い ふ は 、 ま こ と に つ き に あ ら ず 。 月 よ み の み や う じ ん と て 大 じ ん 宮 の か ど を ま ぶ る か み な り 。 な り ひ ら 齋 宮 を お か し た て ま つ る 事 は 、 り や く 方 べ ん を も つ て し た ま ふ 事 な れ ば 、 月 よ み の み や う じ ん も 、 ひ か り お ぼ ろ に て こ れ を み と が め た ま は ず と い ふ な り 。 し か れ ば 、 な り ひ ら 齋 宮 に あ ひ た て ま つ れ ば 、 し ん め い め ぐ み の か ぜ 御 む ね に 吹 ゆ く 。 月 よ み の み や う じ ん も 口 煩 の す 壁 し く な せ よ 、 か げ お ぼ ろ に て は っ せ ず と い ふ ご ・ う な り 。 こ れ を 月 の お ぼ ろ な る と い へ り 。 か み の い が き も こ ゑ ぬ べ し と い ふ は 、 な り ひ ら に あ ひ た ま ふ と き 、 か み の ち か ひ を も や ぶ り ぬ べ し と な り 。 し か る に り や く は う べ ん の ゆ へ な れ ば 、 神 も 制 た ま ふ べ か ら ず と い ふ こ ・ う な り 。
一 、 た つ た が は の 事 ち は や ぶ る か み よ も き か ず た つ た 川 か ら く れ な ゐ に み つ く ・ る と は 此 み や う じ ん は 、 こ れ 、 す み よ し の み ゃ う じ ん 也 。 か う と く て ん わ う の 御 勅 請 な り 。 し か れ ば 、 す み よ し . た つ た は お な じ か み な り 。 そ の ゆ へ を し ら ぬ 人 は べ ち と お も へ り 。 な り ひ ら 、 す み よ し の け げ ん た る に よ つ て 、 た つ た さ ん け い の と き 、 ほ う で ん に い り て 、 み や う じ ん と 、 も の が た り し つ 、 、 又 も 見 え た ま ば ざ り け れ ば 、 御 子 そ く た ち の と も せ ら れ た り け る が 、 た つ ね た て ま つ り け る に 、 ほ う で ん の う ち よ り い で ら れ け り 。 そ の と き 、 よ く こ の 人 ぼ ん ぶ に あ ら ず と い ふ 事 を し れ り 。 し か れ ば 、 こ の う た は こ き ん に は な り ひ ら の う た と い れ り 。 み や う じ ん 、 な り ひ ら 、 不 二 同 躰 寄 。 一 、 星 宮 ロ 傳 伊 勢 小 野 小 町 、 大 江 惟 章 が つ ま に な り て 筑 紫 に す み け る に 、 中 將 ち よ く し に く だ り し に 、 か の こ ま ち に あ ひ た ま へ り 。 こ の と き に あ ま に な り て や ま に い る と い ふ 事 ふ し ん な り 。 げ に あ ま に な り た ら ん に は 、 な ん ぞ の ち に す み よ し に て な り ひ ら に あ ふ べ き 。 い か ん 。 こ た へ て い わ く 、 こ の あ ま に な る と は 、 か み を そ る に は あ ら ず 。 神 を お ろ す に な ぞ ら へ て い ふ な り 。 こ れ は ち く ぜ ん の く に お ほ し ま と い ふ と こ ろ に 、 ほ し の み や と い ふ て あ り 。 川 を へ だ て ・ 、 き た な る を ぱ ひ ご ぽ し の み や 、 み な み な る を ば 七 夕 の み や と い ふ 。 を と こ を 申 者 ひ こ ぼ し の み や に こ も る 。 女 を 申 者 は 七 夕 の み や に こ も れ る 。 七 月 一 日 よ り 七 日 ま で こ も り て 、 か は な か に 三 ぢ う た な を か き て ほ し の ま つ り を し て 、 三 の 手 洗 に み つ を い れ て ほ し の か げ を み る に 、 い つ れ ま で も 、 我 が お も は し き 入 の 名 を か き て 、 手 洗 の ほ し の か げ う つ り て み ゆ る は そ の 人 に あ ふ べ し と し る な
り 。 さ れ ば 、 こ ま ち 、 こ の ま つ り を せ ん た め に か み を お ろ す こ と を あ ま に な る と い ふ な り 。 入 を い ふ な り 。 病 ひ を や ま と い ふ 事 つ ね な り 。 山 に 入 と は 、 こ ひ の や ま い に 口 、 仁 和 中 じ や う と い ふ は 、 藺 中 な ご ん よ し か た と い ふ 實 儀 を 蜜 が た め な り 。 た y 、 な り ひ ら な り 。 こ れ は 、 な ん に よ 二 人 の な か を や は ら げ 、 か う し よ く の み ち に ち や う ず る ゆ へ に 仁 和 と い ふ 。 し か れ ば 、 な ん に よ の み ち に つ け て い へ る な な り 。 中 じ や う と は ち う じ や う と 。 こ れ は 中 だ う の 義 な り 。 又 い わ く 、 す み よ し の み や う じ ん 、 は じ め は 人 ま る に け し て 、 の ち に は な り ひ ら と け す 。 さ れ ば 、 中 は ま さ し き か み な り 。 こ の ゆ へ に 中 じ や う と か け り 。 仁 和 の 中 將 と い ふ は 、 一 さ い い ん や う さ う そ く の み ち よ り 和 し て 、 じ ゃ う じ げ だ つ の じ つ さ う を さ と る を い ふ な り 。 さ れ ば 、 仁 和 は 、 二 人 の な か を 和 る こ ・ う な り 。 又 、 な り ひ ら と は 、 ご つ ほ う つ た な き し ゆ じ や う を あ わ れ み て 、 か の こ う を た い ら ぐ る と い へ り 。 又 い わ く 、 仁 和 と い ふ は 、 み や う じ ん 人 ま る と な り ひ ら と ふ た り に 御 身 を 和 げ て 、 二 た び 人 を ど し た ま へ る ゆ へ に と も い へ り 。 入 滅 記 げ ん け い 四 年 五 月 九 日 、 は じ め て 氣 を は つ し 、 お な じ く 廿 八 日 の 子 の と き に 入 滅 。 ゆ い げ ん 、 我 を ば 、 ひ が し 山 の ふ も と に お く る べ し と 云 々 。 し か れ ば 、 ひ が し や ま よ し だ の お く に つ か を す と 云 々 。 初 吉 に や う ぜ い ゐ ん 御 む さ う に あ り 。 中 じ や う 、 ひ た ・ れ か ん む り を ち や く し て こ く う に た ち て い わ く 、 し る ら め や わ れ に あ ひ み し 世 の 人 の や み ち に ゆ か ぬ た よ り あ り と は 往 昔 遍 照 常 法 身 不 生 阿 字 作 嵜 讃 。 同 寄 云 、
六 の み ち に ま よ ば じ も の を わ れ に あ ふ た よ り を た の め よ も の も ろ 人 元 慶 四 年 九 月 十 三 日 、 宇 治 く わ ん ぱ く の ま つ そ ん 、 う ち 中 納 言 ふ ち わ ら の あ さ た ㌢ き や う 、 く ま の さ ん け い の と き 、 い つ み の 國 大 鳥 の 郡 に て な り ひ ら に ゆ き あ ひ て け り 。 あ さ た ㌢ 蹄 洛 し て 此 よ し を そ う も ん し け れ ば 、 ゆ き ひ ら 中 納 言 に 仰 て す み よ し に た つ ね あ り 。 そ の 夜 、 ゆ め に 、 な り ひ ら 、 じ や う 口 、 た て ゑ ぼ し に て う ち わ ら ひ て う た を よ む 。 お も ひ い で か み よ の こ と も わ す れ じ な む か し な が ら の わ が 身 な り と も な り ひ ら 、 ゆ め さ め て ふ し ぎ の お も ひ を な し き ら く す 。 そ れ よ り い よ く み や う じ ん と な り ひ ら 一 た い 無 二 と 云 々 。 又 、 七 條 の 中 宮 の 御 ゆ め に 、 な り ひ ら 、 す み よ し の 玉 手 の う ら に 住 侍 也 。 し か る に い つ み の く に ぎ や う ぎ ぼ さ つ こ ん り う の 地 に 、 我 か ば ね を お く り た ま へ と 云 々 。 し か る に 、 か の ほ ね を い つ み の く に に お く る べ し と い へ る に 、 又 ゆ め あ り 。 我 ほ ね を お さ む べ き と こ ろ に は 榊 を ふ き な り 。 こ れ を し る し と す べ し と 云 々 。 然 る に 、 國 中 を み け る に 、 大 鳥 の 大 み や う じ ん 乾 に 當 て ぎ や う き ぼ さ つ こ ん り う の 地 あ り 。 こ ・ に さ か 木 生 け る あ ひ だ 、 ほ ね を お さ め 、 つ か を つ き 、 此 て ら 出 泉 寺 と い へ り 。 今 、 濱 寺 と も い ふ な り 。 あ り わ ら 寺 と も い へ り 。 又 、 な ら の 不 退 寺 は 中 じ や う ・ 阿 保 し ん わ う の ぼ だ い ど こ ろ な り 。 し か る に 、 延 喜 御 宇 に 在 原 寺 の は し ら に 、 虫 喰 の 寄 に 云 。 あ り わ ら や 中 な る さ と の み ち と め て い わ ひ か し づ け や ど は し ら せ ん 時 に 左 大 辮 き よ わ ら の 光 任 に お ほ せ て 中 將 の 霊 を 神 と あ が む 。 今 、 や ま と 大 み や う じ ん こ れ な り 。 又 い け だ の や し ろ と
も い へ り 。 む ら か み て ん わ う 御 宇 ( 天 暦 元 年 ) 七 月 十 一 日 の 事 な り 。 以 上 は 神 宮 文 庫 本 ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ を 、 他 の 諸 本 に よ っ て 明 ら か な 誤 り の み を 訂 し て 掲 げ た の で あ る が 、 ﹁ 冷 泉 家 草 子 目 録 ﹂ に よ っ て 鎌 倉 時 代 の も の と 確 認 し 得 る 伊 勢 物 語 の 口 傳 が こ れ ほ ど ま で に 伝 存 し て い る こ と は ま こ と に 驚 く べ き こ と で あ っ た 。 と こ ろ で 、 ﹁ 伊 勢 物 語 演 義 ﹂ に 見 え る 七 つ の 口 傳 と 、 ﹁ 有 別 帖 ﹂ と し て そ の 名 を 伝 え て い る 二 つ の 口 傳 の 大 半 が ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ に 含 ま れ て い る こ と は 偶 然 の 一 致 と は 思 え ぬ も の で あ る が 、 ﹁ 伊 勢 物 語 演 義 ﹂ の 冒 頭 に 存 す る ﹁ 也 。 是 ハ 天 暦 元 年 七 月 十 一 日 ノ 事 也 ﹂ の 一 行 は 、 最 後 に 引 用 し た ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ の ﹁ 入 滅 記 ﹂ の 最 後 の 行 で あ ろ う こ と な ど を 考 え れ ば 、 ま さ に 両 者 が 絶 対 不 離 の 関 係 に あ る こ と は 、 否 定 出 来 ま い 。 そ し て ﹁ 玉 傳 深 秘 ﹂ の 成 立 に は 、 爲 顯 が 深 く か か わ っ て い る こ と 、 三 輪 正 胤 氏 の 説 か れ る ご と く で あ ろ う か ら (雛 鞭 陥 彌 甥 蝿 解 鞠 園 )、 ﹁ 伊 勢 物 語 嚢 ﹂ も 、 そ の 前 後 関 係 は 不 明 な が ら 、 同 様 の 世 界 を 基 盤 に し て 成 立 し た も の と 考 え ら れ る の で あ る 。 爲 顯 で あ れ ば 、 関 東 に 下 向 し 爲 相 と も か な り 深 い 交 渉 が あ っ た か ら 、 爲 相 の 蔵 書 目 録 に そ の 書 名 が あ っ た と し て も 不 思 議 で は な い の で あ る 。 詳 細 は 改 め て 述 べ ね ば な ら ぬ が 、 鎌 倉 時 代 の 伊 勢 物 語 注 釈 の 中 心 は や は り 冷 泉 流 の 古 注 で あ る と 思 う 。 知 顯 集 は 別 と し て 、 そ れ 以 外 の 注 釈 や 秘 伝 は 多 か れ 少 な か れ 冷 泉 流 の 注 釈 を 意 識 し 、 そ れ を 土 台 に し て み ず か ら の 考 え を 述 べ た り 、 そ れ に 反 挽 し て 異 な っ た 主 張 を し て い る と 言 っ て よ か ろ う 。 こ の 時 代 の 諸 流 の 伊 勢 物 語 の 秘 伝 、 加 え て 毘 沙 門 堂 本 古 今 集 註 の ご と き 二 條 家 末 流 の 注 釈 に ま で 、 冷 泉 流 伊 勢 物 語 古 注 の 影 響 が 甚 だ し い と い う よ う な 現 象 は 、 か よ う に 考 え る こ と に よ っ
て の み 鞘 得 出 来 る も の な の で あ 乃 。 爲 顯 の か か わ る ﹁ 伊 ・勢 物 語 慣 義 ﹂ ﹁ 玉 侮 深 秘 ﹂ に 収 め ら れ て い る 口 侍 卦 、 ﹁ 口 中 深 存 義 ﹂ ﹁ 七 月 七 日 絶 入 事 ﹂ 、 あ る い は ﹁ 星 宮 口 僻 ﹂ ( 六 〇 段 の 女 を 、 大 江 櫃 章 と 鞘 嬬 し て 酉 囮 へ 下 叩 た 小 野 小 町 と す る の は 晦 京 流 古 曲 と 同 じ で あ る ) 、 そ し て 、 特 に ﹁ 魯 合 女 隠 名 事 ﹂ に お い て 最 も 顕 著 に 児 ら れ 此 よ う に 、 冷 泉 流 の 古 注 を 土 台 に し っ っ 、 其 言 秘 密 的 付 会 や 住 宙 明 神 の 本 地 に ま つ わ る 解 釈 を L て い る の も 、 い わ ば 、 か よ う な 傾 向 の 中 の 一 つ の 現 象 で あ お ≧ 百 う こ と に な る の で あ 着 廿