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社会的排除が状態自尊感情および将来予測に及ぼす影響

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問 題 人は,他者の助けがなければ生き残れないし,子 孫を残すこともできない。生存の為には必然的に様々 な他者と関わり,集団に所属する。安定的固定的群 生活をする霊長類のヒトにとって,対人関係は,身 体的健康だけでなく,精神的健康にも非常に重要な 役割を果たしている。つまり,自分が所属する集団 に自分が受け入れられていると感じることは,日々 の日常生活を満足に過ごすことにもつながる。また, この先出会うであろう他者や集団に対しても,自分 は受容されるとポジティブに捉えることもできると 考えうる。 このように,他者や集団との関わりは,他者や集 団から受容されると,当人にとって大きな心の支え となる。これに対し,他者や集団からの拒否は,当 人にとって多大な心理的苦痛をもたらす。拒否によ り心理的苦痛を与えられた人の自己評価や自尊感情 は,低下すると考えられる。これにより,自分を拒 否した他者や集団は自分を再び仲間に入れないだろ うと考えるかもしれない。さらに,将来出会うであ ろう未知の他者や集団に関しても自分は受容されな いのではないかと悲観的に考えてしまうと考えられ る。本研究は,他者からの拒否が状態自尊感情や将 来における受容可能性知覚に負の影響を与えている かどうかを検討する。 社会的排除

Baumeister& Leary(1995)によると,人は皆, 他者や集団から受容され,集団の良い一員であり続 けたいと願う所属欲求(theneedtobelong)を有し

学苑人間社会学部紀要 No.832 16~26(20102)

Thepresentstudyinvestigatestheeffectofambiguousrejection(e.g.,peopleareignored by others) and obvious rejection(e.g.,people are negatively evaluated by others) on predictionsoffuturerejection.Onehundredandthirty-sevenmaleandfemaleundergraduates wereasked toimaginesituationsin which they wereeitheraccepted,rejected implicitly,or rejectedexplicitly,andtocompleteaquestionnaire.Theresultssuggestthatsocialrejection loweredparticipants・stateself-esteem andboostedtheperceivedlikelihoodoffuturerejection by the rejecter.However,socialrejection did notboostthe perceived likelihood offuture rejection by people they didn・t already know.Although there was no difference between ambiguousrejection and obviousrejection generally,maleswerelesslikely than femalesto lowertheirstateself-esteem incasesofobviousrejection.Theresultsarediscussedfrom the perspectiveofsociometertheory.

Keywords:socialrejection(社会的排除),self-esteem(自尊感情),perceivedlikelihoodoffuture rejection(排除可能性知覚)

社会的排除が状態自尊感情および

将来予測に及ぼす影響

清水三千香藤島喜嗣

EffectsofSocialRejectiononStateSelf-esteem and PerceivedLikelihoodofFutureRejection

MichikaSHIMIZU andYoshitsuguFUJISHIMA

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ている。この所属欲求は,人間の進化に根ざしてい るため,文化や時代を超えて普遍的かつ基本的なも のである(岡田中山,2008)。また,Baumeister& Leary(1995)は,所属欲求の充足が感情や認知, 適応,達成行動など様々な側面と関連すると仮定し ている。この仮定は多くの理論や研究知見でも支持 されている(Buhrmester,1996;Deci& Ryan,2000; Hazan & Shaver, 1994; M ikulincer, Florian, & Hirschberger,2004;Sheldon,Elliot,Kim,& Kasser, 2001)。Baumeister& Leary(1995)によると,所 属は快感情を生み出すのに対して,実際の別離や別 離を想像するだけでも私たちは不快感情を経験する といわれている。そして,人は,現存する人間関係 をもはや維持する理由がないときでも,その社会的 絆を失うことに抵抗する。 社 会 的 絆 に つ い て の 類 似 概 念 と し て 愛 着 (attachment)が存在するが,所属欲求と愛着には 異なる箇所がある(Baumeister& Leary,1995)。第 一は,所属欲求が向けられる先は特定の人である必 要はなく,基本的に誰でもよいが,愛着の場合は主 に母親など世話をした人となるということである。 第二は,愛着はひとりの他者との間に得られていれ ば十分であり,人数が増えてもその影響力は小さく なる一方だということである。第三は,ある相手と の関係を喪失したときに別の人で埋めることが可能 であるかの違いである。所属欲求は,集団に所属す ることが生存のために不可欠であるため,あるひと りとの関係を喪失しても別の集団に所属することさ え出来れば,所属欲求を満たすことが可能である。 一方で愛着の場合は,ある特定の他者という限定さ れた他者でないと愛着を有することができない。そ のため,母親などの愛着の対象であった他者を喪失 した場合,愛着の対象外である他者や集団には喪失 の穴を埋めることは不可能である。

その一方で,Baumeister& Leary(1995)は, 他者との関係や所属感が欠如し,所属欲求が満たさ れない状態を社会的排除と呼んだ。Baumeister& Tice(1990)は,排斥の条件として次の三点を指摘 している。第一は,集団の存続や福祉に貢献できな いことである。何らかの目的を持って活動が行われ る集団組織に,個々人はその目的達成に役立つ人材 としてその場に参加している。したがって,個々人 に期待された役割を果たさず,目標達成の障害とな る人物は,役に立たない人物と評価され,解雇とい う名の排除を受けることになる。第二は,協調性や 道徳性の欠如である。自己の利益や衝動のために周 囲に迷惑をかける人物が横行すれば組織や集団は破 綻してしまう。それゆえ,ほとんどの社会では一定 の規範や法律が設けられており,逸脱者には禁固や 懲役,死刑といった排斥のペナルティーが科せられ る。そして第三が魅力の欠如である。相手が感じる 魅力度が低かったり,期待した魅力を維持できなか ったりした場合,失恋や離縁といった名の排除が予 想される。また,一般に,相手から無視されたり, 自分の申し出を断られたり,あるいはグループから 仲間はずれにされたりする状況を指す対人的拒絶 (interpersonalrejection)がある(岡田中山,2008)。

Leary(2001)は,拒絶(rejection),排斥(exclusion), 追放(ostracism), 放棄(abandonment), 片思い (unrequited love)などの対人的拒絶に関する概念 に共通する要素として,関係評価の低さがあるとし ている。関係評価(relationalevaluation)とは,相 手との関係に価値があり,その関係を重要で親密な ものとみなしている程度のことである(岡田中山, 2008)。対人的拒絶を関係評価の観点から捉えるこ との利点の一つは,拒絶に関する現象に程度という 幅を持たせることだと岡田中山(2008)は述べて いる。状況によって相手との程度にばらつきがある と考えられることから,「拒絶されたか否か」では なく,「どの程度拒絶されたか」という議論が可能 になるのである。Leary(2001)は,最大限の拒絶 (排斥)から最大限の受容(包含)までの段階を設定 し,この段階を関係評価の程度として捉えている。 たとえば,Leary,Haupt,Strausser,& Chokel (1998)は,大学での指導教官や初対面の異性から 評価される場面を想定させ,その評価の程度を否定 的なものから肯定的なものまで連続的に変化させる ことで拒絶の程度を操作している。 以上の議論より,社会的排除は,友人からある日 突然無視されたといった曖昧な場面での排除や,実

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験場面での被験者や他者や集団から排除されるとい った明確な排除など,拒絶の程度に幅を持たせて考 えることが可能である。友人からの無視は,Leary (2001)の拒絶と受容の連続体で捉えると,消極的 な拒絶程度にあたる。一方で,実験場面での被験者 や他者や集団から排除は,最大限の拒絶の程度にあ たる。このことから,排除の度合により差異が生じ るのではないかと予測できる。 さらに,社会的排除が反社会的行動に関係する様々 な要因に直接的な影響を及ぼすことが明らかになっ ている。先行研究として,社会的排除を受けた人は, 自分自身の身体的情緒的苦痛の低下,共感性の低 下が起こるとした研究が挙げられる(DeWall& Baumeister,2006)。参加者は,「結婚は長続きせず 人生の後半にはひとりで孤独に過ごすでしょう」と いう将来孤独条件,「長期的で安定した結婚生活や 友人関係を続け,一生にわたって友人たちと楽しく 過ごすでしょう」という将来所属条件,「人生の後 半は事故にばかりあうでしょう」という将来不幸条 件の 3種類のフィードバックのいずれかを受ける前 後に,皮膚に圧力をかける機械を用いてどの程度痛 みに耐えられるかを測定した。この結果,孤独条件 の参加者は他の条件の参加者よりも強い痛みを受け て初めて,痛いと感じることが示された(第 1実験)。 さらに,共感性については,失恋した人(第 4実験) や骨折した人(第 5実験)が書いたとされるエッセ ーを読み,その人に対する感情を評定した。その結 果,孤独条件の参加者は,エッセーを書いた人への 共感性,同情,あたたかさ,優しさなどの感情が有 意に低くなっていることが示された。これに関連し て,非行少年に一般少年よりも共感性が乏しい者の 割合が多い(法務総合研究所,2003)ことからも,共 感性の低下が反社会的行動を増大させることがわか る。

また, Twenge,Baumeister,Tice,& Stucke (2001)は,社会的排除が攻撃行動を引き起こすか の実験を行った。実験の結果,将来が孤独になると 考えただけで,人は自分を批判した他者に対して厳 しく,攻撃的に対応することが明らかになった。さ らに,社会的排除により身体的精神的健康に影響 を及ぼすとした研究もある。遠藤(2006)は,社会 的排除と拒絶への反応に対する自尊感情の影響につ いての実験を行った。遠藤(2006)によると,人は 他者から向けられた肯定的な関係的評価よりも,否 定的な関係的評価に対して極めて強く敏感に反応す ることが示されている(Leary,Tambor,Terdel,& Downs,1995;Williams& Zadro,2005)。

他者からの否定的関係評価は,気付かずに放置し ておくと相手から自分に対する排斥(exclusion)や 拒絶(rejection)などに結び付き,己にとって損失 を招く事態につながりかねない。そこで,このよう な危機的状況に対して確実かつ迅速に対応すべく, 他者からの排除拒絶のサインを危険信号として速 やかに検出し,かつ強い反応が生じるという結果が 近年様々な領域において報告されている(Eisenberger & Liberman,2005;Williams,2001)。Eisenberger& Liberman(2005)の実験は,他者から暗黙裏に排 除されるよりも実験の参加を希望したのに拒絶され てしまうことに対して学生は,より強く反応するこ とを示している。つまり,特性としての自尊感情は 将来に向けての予測反応を調整することが示唆され たのである(遠藤, 2006)。 Baumeister& Leary (1995)で述べられているように,所属欲求が人間 の基本的欲求として存在するならば,所属欲求が阻 害される状況では欲求を充足しようとする傾向が強 まると考えられる。そのため,対人関係を構築維 持するために必要な認知システムは,排斥を経験す ることによって活性化すると考えられる(岩切, 2005)。これらのことから,人が他者や集団から拒 否され,所属欲求が満たされない状態に陥ると,身 体的精神的健康に多大なる影響を与えるというこ と,さらに自尊感情の低下にもつながるということ が考えられる。 ソシオメータ理論 自尊感情(self-esteem)とは,自己に対する評価 感情で自分自身を基本的に価値あるものとする感覚 である。従来,自尊感情は,自分が自分自身に対し て抱く自己完結的な評価感情だと理解されてきた。 これに対し,自尊感情の対人的側面を強調した理 論がソシオメータ理論である(Leary,2004)。ソシ

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オメータ理論は,自己の社会的側面を自尊感情とい う観点から,よりシステマティックに捉えようとし た理論である。進化心理学からの影響が色濃くみら れるこの理論は,社会的動物としてのヒトにとって 最も重要な関心事は,所属集団のなかでの自己の位 置を安全で確かなものとすることだ,という前提か らスタートする。周囲の他者や集団,もしくは自分 との関係に価値や魅力を見出さないとき,自分はそ の関係から排除される危険性が高い。もし,他者か ら低い評価を与えられていることに気付かなければ, 追放排除が決定的になってしまう危険性があるだ ろう。社会からの拒絶は進化の早い段階では死を意 味していたと考えられるため,自尊感情が低下する ような状況では,それを回復するような行動を動機 づけられる(伊藤,1998)。そこで,現下の状況にお いて,自分は他者や集団からどのように評価されて いるかをモニターし,とくに評価の低下やその懸念 がありそうな場合に,それをいち早く敏感に感じ取 るような仕組みが私たちには備わっている。その仕 組みこそが自尊感情である。 それゆえ,ソシオメータ理論からみると,自尊感 情維持動機という言い方は不適切である。ソシオメ ータ理論の考え方では,自尊感情そのものは追求す べき目的ではなく,あくまで所属の程度によって生 じる心理状態であることになる。この捉え方は,自 尊感情そのものに対する欲求を仮定する理論的立場 (Case& Williams,2004;Maslow,1968;Tesser,1988)

とは大きく異なっており,ソシオメータ理論の独自 な点であるといえる(岡田中山,2008)。 これらのことを踏まえると,自尊感情を低める出 来事は,人から嫌われるようなことをしてしまった り,他者からの受容を低めたりする出来事となる。 反対に自尊感情を高める出来事は,他者からの受容 感を高める出来事といえる(Leary etal.,1995)。 他者や集団からの拒否という社会的排除経験が状態 自尊感情を低下させ,排除された本人は自分自身に 価値を見出せないという全般的な自己価値の低下に より,将来予測など多方面に負の影響を与えると考 えられる(Sommer& Rubin,2005)。また,自尊感 情には個人差があるが,ソシオメータ理論からすれ ば,他者や集団からの受容感における個人差という ことを意味する。さらに,人にとっての心理的幸福 感の直接の原因は,他者からの受容感であり,自尊 感情が高い人は,自分が他者や集団から受容される 人物であり,他者や集団が自分と関係を持つことに 価値をおいていないのだと考えやすいといえる (Learyetal.,1995)。 将来の予測への影響 人は,将来を予測するとき,過去の経験を元にし て考える。過去に起きた出来事と類似した出来事に 今現在自分が遭遇しそうな場合,人はその出来事に 上手く対処して精神的にも身体的にも安定した日常 生活を送れるように行動する。特に過去に辛い経験 をしているのならば,その経験に再び遭遇しないよ うに対処し,さらに予測する。 また,他者や集団からの受容という出来事が心理 的幸福感であるならば,他者や集団からの排除とい う出来事は,人が生きていく上で最も忌むべき出来 事である。この社会的排除経験に関して,将来の対 人関係について焦点を当てて考えてみると,高い自 尊感情を持つ人は,他者や集団に排除されず,受容 され続けるということである。高い自尊感情は,全 般的な自己価値に良い影響を与えるだけではなく, 将来出会うであろう他者や集団に対して「自分は, この先も他者や集団に受け入れられる」と肯定的に 捉えさせると予測できる。しかし,自尊感情が低い 人は,「自分を排除した他者や集団に再び受け入れ られないだろう」と考えてしまう傾向にあると予測 できる。さらには,将来出会うであろう他者や他集 団に関しても,「自分は将来誰にも受け入れられな いだろう」と同様に考えてしまう傾向にあるのでは ないだろうかと予測できる。 以上のことから,社会的排除経験は,全般的な自 己価値を低下させ,自分を排除した他者や集団に対 しても,将来これから出会うであろう他者に対して も否定的に捉えさせてしまうだろうと考えられる。 本研究はこの点について検討することとした。 仮説 以上のことから,本研究では,二つの仮説を検討 する。第一に,状態自尊感情は,他者から受容され

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る場合より,排除される場合に低下するだろう。第 二に,他者や集団からの排除可能性知覚は,受容さ れる条件よりも排除される条件で高まるだろう。こ の傾向は,新奇他者においてもみられるだろう。 方 法 実験参加者 全学共通科目「心理学ⅠA」受講者である上智大 学生 1~4年の男性 60名,女性 76名,性別未記入 1名の計 137名が実験に参加した。参加者全体の平 均年齢は 18.88歳(SD=.97)であった。 手続き 場面想定法を用いた質問紙調査を実施した。質問 紙は 3パターンあり,曖昧な社会的排除条件,明確 な社会的排除条件,受容条件の 3条件のシナリオを 用意した。この 3条件の質問紙を,講義時間中にそ れぞれ無作為に配布,回答をしてもらい,回収した。 質問紙の構成 シナリオ 曖昧な社会的排除条件,明確な社会的 排除条件,受容条件のシナリオは,調査対象が大学 生ということで,大学生に起こりうる身近な排除場 面を設定した。まず,曖昧な社会的排除条件のシナ リオは,次のように設定した。 あなたは,大学の授業も,昼食も,下校も常に一緒 のとても仲の良い友人が 2人います。 ある日,あな たが朝『おはよう』と挨拶しても 2人の友人は, 挨 拶を返さず,昼食もあなたと一緒に食べず,2人の 友人だけで 昼食を食べていました。また,話しかけ ても 2人の友人は, あなたの話を全く聞かず,授業 が終わると,あなたを無視して 2人で帰ってしまい ました。 今回,本研究の調査対象者が大学生であったため, 友人からの無視という社会的排除は,男女問わず大 学生にとっては,苦痛である出来事であろうと考え, このシナリオを作成した。 次に,明確な社会的排除条件のシナリオは,次の ように設定した。 あなたは,今日初めて会う 2人の人と一緒に実験の 協力をすることになりました。実験は『3人で討論 会を 2回やってもらい,2回やって討論会の邪魔に なると思う人を 1人外してほしい』という内容でし た。 あなたと他の 2人は,3人で討論会を 2回行い ました。 しかしその結果,外されたのは,あなたで した。 友人場面での無視という間接的な排除場面だけでは なく,直接的な排除場面も考えられるので,本研究 の調査対象者に合わせてこのシナリオを作成した。 明確な社会的排除条件は,他者から否定的な評価を 受けた結果として排除された形となっている。これ に対し先述の曖昧な社会的排除条件は,無視される という場面であり,否定的な評価を受けているかど うかが不明瞭である。この点の相違が影響を及ぼす かもしれないと考えた。 最後に,受容条件のシナリオは次のように設定し た。 あなたは,大学の授業も,昼食も,下校も常に一緒 のとても 仲の良い友人が 2人います。ある日,あな たが朝『おはよう』と挨拶すると,2人の友人は, 挨拶を返し,昼食もあなたと一緒に 3人で楽しく食 べました。また,話しかけると 2人の友人は, あな たの話を楽しそうに聞き,授業が終わると,あなた と一緒に 3人で仲良く帰りました。 統制条件である受容条件は,2人の仲の良い友人や 初対面の 2人の他者からの排除と違い,2人の仲の 良い友人から受容されるという対比的な場面に設定 した。一方で,明確な排除条件は,実験場面で出会 う初対面の 2人の人である。友人だけではなく,初 対面の他者からの排除という異なる場面においても 否定的感情は喚起すると考え,設定した。 質問項目 最初にシナリオを読んでもらった。設 定された場面に遭遇した時の状態自尊感情の程度を 測定するために,「自分の日頃のふるまいは適切だ と思う」,「他の人よりも劣っていると思う」,「自分 は何も悪くないと思う」などをたずねた否定的感情 10項目を「5.あてはまる」~「1.あてはまらない」 の 5件法で回答させた。この質問項目は,舘宇野 (2000)を参照し,排除場面に見合った質問項目と なるよう独自に作成したものである(付録 1)。 次に,「2人は,私を無視し続けると思う」,「2人 は,私を受け入れてくれると思う」,「私は 2人にと

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って邪魔な存在だと思う」などの排除当事者からの 受容可能性の程度 8項目を「5.あてはまる」~「1. あてはまらない」の 5件法で回答させた。この質問 項目も,舘宇野(2000)を参照し,排除場面に見 合った質問項目となるよう独自に作成したものであ る(付録 2)。 さらに,「他の人は,私を無視し続けると思う」, 「他の人たちは私を受け入れてくれると思う」,「他 の人は自分と一緒にいてくれないと思う」などの新 奇他者からの受容可能性の程度 8項目をたずねた。 これらの項目も舘宇野(2000)を参照し,排除場 面に見合った質問項目となるよう独自に作成し,「5. あてはまる」~「1.あてはまらない」の 5件法で回 答させた(付録 3)。 そして,今現在の自分についてどのように感じて いるかを測定するために,「皆は自分を頼りにして いると思う」,「私は人から頼りにされていると思う」, 「私は存在感があると思う」などの項目からなる塩 田(2003)の状態自尊感情尺度の一部を使用した。 この 8項目に「5.あてはまる」~「1.あてはまら ない」の 5件法で回答させた。塩田(2003)の状態 自尊感情尺度は,「自意識過剰因子」,「日常生活因 子」,「満足因子」,「他者志向因子」で構成されてい るが,今回の調査では,「周りの人が皆優秀にみえ る」,「今の私は,他の人よりも学問的能力がないと 思う」など学業面を中心にたずねている満足因子の 質問項目 5項目は,本研究には関係ないと判断し, 使用しなかった。ただし,この満足因子の 1項目で ある「この教室の他の人に比べ,自分は価値のある 人間だと思う」という項目は使用した。本研究の調 査が,授業を受講している学生であったため,自分 の周りにいる受講している他の学生に比べてどのよ うに感じるかをたずねていると解釈しうると判断し た。しかし,この状態自尊感情尺度は,本研究では 分析対象としなかった。 結 果 信頼性分析 各尺度に対して信頼性分析を行った。設定した場 面に遭遇した時の否定的感情 10項目に対し信頼性 分析を行った結果,クロンバックのα係数はα= .73であった。「他の人よりも劣っていると思う」 の IT相関の値が低かったため,この項目を除い た 9項目で再度,信頼性分析を行った。この結果, クロンバックのα係数はα=.83と高い数値を示し た。このことから設定した場面に遭遇した時の否定 的感情は,十分な信頼性を有していると判断した。 設定した場面に遭遇した時の排除当事者からの排 除可能性知覚 8項目に対して信頼性分析を行った。 この結果,クロンバックのα係数はα=.92と高い 数値を示した。このことから設定した場面に遭遇し た時の排除当事者からの排除可能性知覚は,十分な 信頼性を有していると判断した。さらに,新奇他者 からの排除可能性知覚 8項目に対し,信頼性分析を 行った結果,クロンバックのα係数はα=.87であ った。このことから,新奇他者からの排除可能性知 覚も十分な信頼性を有していると判断した。 信頼性分析後,設定した場面に遭遇した時の否定 的感情 10項目を合計した。この 10項目を合計した 得点を,否定的感情と名付けた。また,設定した場 面に遭遇した時の排除当事者からの排除可能性知覚 8項目を合計して得点を算出し,この 8項目を合計 した得点を,当事者評価と名付けた。さらに,新奇 他者からの排除可能性知覚 8項目を合計して得点を 算出し,この 8項目を合計した得点を,将来評価と 名付けた。それぞれの項目ごとの合計を算出し終え た後に,否定的感情,当事者評価,将来評価の平均 値,標準偏差を算出した。その結果,否定的感情の 平均値は 30.48,標準偏差は 6.75であった。当事者 評価の平均値は 23.17,標準偏差は 7.61であった。 また,将来評価の平均値は 19.25,標準偏差は 5.51 であった。 性別ごとにみた排除の影響(表 1) 2(性別:男女)×3(シナリオ:曖昧な社会的排除 明確な社会的排除受容)の被験者間 2要因の分散分 析を行った。その結果を図 1に示す。 否定的感情に及ぼす影響に関して,有意に近い性 別の主効果が認められた(F(1,125)=3.64,p=.06)。 男性(M=29.35)よりも,女性(M=31.54)で否定 的感情が喚起しやすい傾向がみられた。また,シナ

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リ オ の 主 効 果 も 認 め ら れ た(F(2,125)=12.26,p <.001)。Bonferroni法による多重比較の結果,曖 昧な排除条件(M=32.69)や明確な排除条件(M =32.23)といった排除条件のほうが,受容条件(M =26.93)と比較して否定的感情を喚起しやすい傾向 がみられた。しかし,曖昧な排除条件(M=32.69) と明確な排除条件(M=32.23)との間には有意差は みられなかった。このことから,仮説 1は支持され た。さらに,性別×シナリオの交互作用効果がみら れた(F(2,125)=5.74,p<.05)。 Bonferroni法によ る多重比較の結果,曖昧な排除条件では,男性(M =32.88)と女性(M=32.56)との間に違いはみられ なかった。明確な排除条件では,女性(M=35.57) は,男性(M=28.57)よりも否定的感情が喚起しや すかった。受容条件では,男性(M=27.29)と女性 (M=26.63)との間に明確な違いはみられなかった。 見方をかえると,男性では,曖昧な排除条件(M =32.88)が明確な排除条件(M=28.57)や受容条件 (M= 27.29)よりも否定的感情が喚起しやすかった。 また,女性では,明確な排除条件(M=35.57)や曖 昧な排除条件(M= 32.56)は受容条件(M=26.63) よりも否定的感情が喚起しやすかった。 排除当事者からの排除可能性知覚に関して,条件 の主効果が認められた(F(2,127)=47.92,p<.05)。 この結果を図 2に示す。 Bonferroni法による多重比較の結果,曖昧な排 除条件(M=27.32)と受容条件(M=16.19)との間 には 5% 水準で有意差が認められた。また,明確な 排除条件(M=26.07)と受容条件(M=16.19)との 間に有意差が認められた。 曖昧な排除条件(M =27.32)と明確な排除条件(M=26.07)の間には差 がみられなかった。性別の主効果は認められなかっ た(F(2,127)=.02,ns)。また,性別×シナリオの交 互作用効果もみられなかった(F(2,127)=.92,ns)。 新奇他者からの排除可能性知覚に関して,有意に 近い性別の主効果が認められた(F(1,123)=3.83,p =.06)。男性(M=20.30)の方が,女性(M=18.41) よりも排除可能性を高く知覚していた。条件の主効 果は認められなかった(F(2,123)=1.15,ns)。交互 作用効果もみられなかった(F(2,123)=.99,ns)。 表 1 性別と排除条件別にみた平均値と標準偏差 男 性 女 性 曖昧な排除条件 明確な排除条件 受容条件 曖昧な排除条件 明確な排除条件 受容条件 否定的感情 当事者からの排除可能性知覚 新奇他者からの排除可能性知覚 32.88(5.79) 26.94(6.35) 20.38(4.79) 28.57(6.27) 25.52(5.38) 20.37(5.56) 27.29(6.17) 17.24(7.01) 20.19(6.25) 32.56(4.94) 27.56(5.25) 17.70(4.21) 35.57(6.01) 26.52(5.85) 20.38(6.88) 26.63(6.50) 15.18(4.50) 17.14(4.53) 註) カッコの中は標準偏差 図 1 性別と排除想定が否定的感情に及ぼす影響 図 2 性別と排除想定が排除当事者からの 排除可能性知覚に及ぼす影響 表 2 全体の相関係数 感情得点 友人評価 将来評価 否定的感情 当事者からの排除可能性知覚 新奇他者からの排除可能性知覚 1.00 .41** 1.00 .37** .22* 1.00 註) **は 1% 水準で有意 *は 5% 水準で有意 図 3 性別と排除想定が新奇他者からの 排除可能性知覚に及ぼす影響

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よって,仮説 2は支持されなかった。この結果を図 3に示す。 否定的感情と排除当事者からの排除可能性知覚,新 奇他者からの排除可能性知覚との相関 状態自尊感情として測定した否定的感情が将来の 排除可能性知覚にどのような影響を及ぼしているか 検討するために,否定的感情と排除当事者からの排 除可能性知覚,新奇他者からの排除可能性知覚との 相関係数を算出した(表 2)。その結果,否定的感情 と排除当事者からの排除可能性知覚との間には,有 意な正の相関がみられた(r=.41,p<.001)。このこ とから,否定的感情が強いほど排除当事者からの排 除可能性知覚は高まる傾向にあった。否定的感情と 新奇他者からの排除可能性知覚との間にも,有意な 正の相関がみられた(r=.37,p<.001)。否定的感情 が強いほど新奇他者からの排除可能性知覚は高くな る傾向にあった。排除当事者からの排除可能性知覚 と新奇他者からの排除可能性知覚との間には有意な 正の相関がみられた(r=.22,p<.05)。このことか ら,排除当事者からの排除可能性知覚が高いほど新 奇他者からの排除可能性知覚は高かった。 考 察 本研究の結果は,仮説 1を支持していた。社会的 排除によって自尊感情の低下が生じる可能性が示さ れた。これは,ソシオメータ理論を支持するものと いえる。排除を受けた被験者は,排除を受けた直後 に否定的感情を喚起させている。前述したようにソ シオメータ理論より,自尊感情を低める出来事は, 人から嫌われるようなことをしてしまったり,他者 からの受容を低めたりする出来事となる。曖昧な排 除条件や明確な排除条件では,自分が所属集団から 排除されたということを察知したために,否定的感 情が喚起され,自尊感情の低下につながったのでは ないかと考えられる。 また,社会的排除に関して,2人の友人から無視 されるといった排除と,選ばれなかったという直接 的な排除には違いはみられなかった。このことから, 社会的排除の程度に関係なく他者や集団から自分が 排除されたと感じたならば,否定的感情が喚起され るのだろうと考えられる。その一方で,Molden, Lucas,Gardner,Dean,& Knowles(2009)は,排 除者の動機づけと否定的評価が明確で能動的な排除 (e.g.,ある人が排除された時)と比較して,排除者の 動機づけと否定的評価が潜在的で受動的な間接的な 排除(e.g.,ある人が無視された時)では,その後の 影響が異なることを示している。明確に排除される と,社会的な喪失感覚と予防焦点(preventionfocus) 的な反応を生み出し,社会的接触の回避,自分が取 るべきでない行動に関する思考,焦り感情を増大さ せる。反対に,無視されると,社会的獲得の失敗感 覚と促進焦点(promotionfocus)的な反応を生み出 し,社会的接触を再び生じさせ,自分の取るべき行 動について考え,落胆を増大させるのである。本研 究では,2人から排除という直接的な排除も 2人の 友人からの無視,どちらの排除も程度の差異はなか ったが,焦りや落胆といった否定的感情の質的相違 が存在すると考えられる。将来的には,社会的排除 の質と程度をより具体的に弁別し,どのように影響 が異なるかを検討すべきである。 本研究の結果より,明確な排除条件では,男性が 女性より否定的感情を感じなかった。これは,見ず 知らずの人の目は,女性よりも男性のほうが気にし づらいからではないかと考えられる。また,対人関 係への関心は一般的に女性よりも男性の方が低い。 本田(2007)は,ソーシャルサポートの研究では, 男性よりも女性の方がネガティブな出来事が生じた 時に周りからのサポートを受けやすいことが知られ ていると述べている。また,福岡橋本(1997)は, 心理的苦痛(抑うつ)に対するサポートは男性より も女性が多く見出しているという(本田,2007)。女 性は,自分が他者や集団から排除されることを男性 よりも,敏感に感じ取りやすいことがいえる。よっ て,明確な排除条件で男性は否定的感情が高まらな かったのではないかと推測できる。性別に関係なく 自分を排除した排除当事者に対しては,自分はもう その集団に必要ないと思うため再受容を推測せず, 新奇他者や集団からの受容を推測するのではないか と考えられる。 本研究では仮説 2は支持されなかった。これは,

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被験者が,質問紙で呈示した将来について見解が異 なっていたからではないかと考えられる。被験者に よっては,将来を数ヶ月あるいは数年と捉えて回答 していたのではないだろうかと思われる。 自尊感情について,前述した Leary(2004)の自 尊感情は,特性自尊感情と状態自尊感情からなるこ とにより,特性自尊感情も影響を及ぼしていると考 えられる。特性自尊感情が高い者は,ポジティブな 期待を抱くので,排除を受けてもそのインパクトを 緩衝できる。一方,特性自尊感情が低い者は,排除 を受けるとネガティブな期待を抱くので,そのイン パクトを緩衝できない。本研究では,社会的排除と いう場面により自尊感情が変化するという状態自尊 感情のみを測定したが,特性自尊感情は測定されて いない。この個人差を考慮した再検討を行うことが 今後の課題といえるだろう。 遠藤(2005;遠藤,2006で引用)は,まだ生起して いない状況で自分がどのようにふるまうかを予測す る際に,特性としての自尊感情が影響することを検 討した。まず,LANでつながれた PC上でのボー ルゲームに匿名の仲間数名とともに参加した人が, 自分のところにボールがほとんど来ないことを経験 する排除条件と,仲間と同じ程度にボールが来るこ とを経験する受容条件を設定した。これらの 2条件 に,自尊感情の高い者(自尊感情高群)と低い者(自 尊感情低群)が約半々となるように,参加者を割り 当てた。その結果,自尊感情高群では自己の関係的 評価の高さを信じる傾向は 1回きりの排除や受容経 験の影響を受けなかったが,自尊感情低群は排除経 験による影響を受け,1度でも脅威経験をすると第 三者からの受容まで疑いを持ち,積極的相互作用を 控える傾向を示した。つまり,眼前の他者から排除 されるという脅威状況に遭遇すると,相対的に否定 的な関係性評価の表象が活性化する。その結果,自 分はたいていの場合高い関係性評価を得られる人間 だということに確信が持てなくなるために,受容さ れると予測できなくなったと考えられる(遠藤, 2006)。このことから,自尊感情が低い人は,1度で も他者や集団に排除されると,将来を予測する際に, 自分を排除した他者や集団からの社会的排除経験を 思い起こし,将来に対して否定的な感情を抱く傾向 があると推測できる。 一度の社会的排除経験により,自尊感情のみだけ ではなく,対人関係の維持に支障をきたすことが遠 藤(2005)からうかがえる。このことから,社会的 排除経験により,うつ病などの発症や薬物乱用,非 行や犯罪率の増加といった社会問題につながる危険 性があると考えられる。知的生産的活動,あるい は養育教育活動を行う全ての集団にとって,社会 的排除の状態を作り出し維持することは,集団の結 束,志気や生産性の向上,メンバーの人間形成など あらゆる側面において致命的な結果をまねくであろ う。そのため,社会的排除の被害を最小限に留める にはどのようにすればよいかを今後は検討すべきで ある。 引用文献

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