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-第2学年
道徳学習指導案
1 主題名 国境を越えた人類愛(人類の幸福への貢献) 中学校4−(10) 2 主題設定の理由 ○ 本学級の生徒たちは、温かい隣人愛の精神のもと、他者に思いやりの心を持って生きることの大 切さや素晴らしさをとらえている。しかし、それは「学校内」や「日本」といった限られた範囲に 向けられたものであり 、「国際社会」すなわち「人類全体」へ向けられたものではない。これは、 これまでの経験の中で国際社会に直接触れる機会が少なかったことから 、「国際人」であることの 自覚が浅いことに起因していると考える。そこで、教科等の学習とも相まって、これまで以上に世 界の様々な国々に対しての興味・関心が高まってくるこの時期に本主題を設定する。そして、自ら の命も危ぶまれる戦乱の中、限界まで国外退去を引き延ばし、その直前までナチスに追われるユダ ヤ人のためにできる限りの「通過ビザ」を書き続けた「杉原氏(当時リトアニア領事代理 )」に出 会わせ、人類の幸福に貢献しようとする意欲を高めたい。このことは、どの国の人々も同じ人間と して尊重し合い、差別や偏見を持たず公正、公平に接するという真の「国際人」としての感覚を形 成する上でも意義深い。 ○ 「幸福」とは、欲求が満たされ、不安や不足を感じず、安心している心理状態である。従って、 「幸福」は、「平和」の上に存在する。このように考えると、世界全体が「平和」であることが、 全人類が「幸福」であるための最大の条件であると言える。そのためには、「出会いくる他者をい ずれも等しく代置不可能な『汝(なんじ )』として愛する(宇都宮芳明著『人間の間と倫理』によ る)」、つまり「国境を越えた人類愛の精神」のもと「国際人」として生きることが「人類の幸福に 貢献」する礎となる。しかし、人類は自国の利益や優位性を追求し、幾たびも戦いを繰り返してき た。現在も世界のいたるところで、戦乱は起こっている。その中で 、「国際人」として望ましい認 識を深め、人類の幸福に貢献したいという意欲を高めたい。 「人類の幸福への貢献 」については 、第1学年で、「NPO 」などの具体的な活動の様子から 、「今 の自分にできること」を考えてきた。本時は、その根底にある「国境を越えた人類愛の精神」の素 晴らしさを感得させ 、「国際人」としての自覚を深めさせたい。 ○ 本資料は、元リトアニア領事代理杉原千畝氏の妻幸子氏の手記である。ナチスから他国に逃れよ うと「通過ビザ」を求め、日本領事館に集まったユダヤ人。ドイツとの協力関係を深めるため、ビ ザの発行を認めない外務省。その狭間で苦悩の末、ビザを発行し続ける杉原氏。そして、後ろ髪を 引かれる思いでの出国。これらのことが詳細に記されている。 本主題の指導にあたっては、杉原氏の「極限の状況の中、できる限りのビザを書いた。」という 行為に焦点をあて、その行為の「意図」や「結果」を話し合う「行為の分析活動」を行わせる。そ の中で、杉原氏の行為に内在する「国境を越えた人類愛の精神」を明らかにさせ、その素晴らしさ をとらえさせていく。 そのために、まず「出会う段階」では、「人類の幸福への貢献」に方向づけるために、「調査結果 (『人類の幸福への貢献』に関する意識調査)」を提示する。 次に、「ひたる段階 」では、杉原氏の「国境を越えた人類愛の精神」をとらえさせていく 。まず、 杉原氏の「意図」を追求させる。「状況図」を提示し 、「できる限りのビザを書く」という行為に至 るまでの状況を十分にとらえさせた上で 、「どのような思いでビザを書き続けたのか」という発問 をもとに、その行為の「意図」を「吹き出し」に表現させていく。さらに、ビザを書き続けたこと でもたらされる「結果」をもとに「意図」を再追求させる。ここでは特に「予測カード」を活用し て、「杉原氏がビザを書いたこと」が「杉原氏自身 」「日本」「ユダヤ人」それぞれにもたらす影響 (「結果」)をとらえさせた上で、「国境を越えた人類愛」の素晴らしさを表現・把握させていく。 最後に 、「あたためる段階」では、「人類が幸福になるために、どのような考えや行動が大切なの か。」というテーマに対する思いや考えを文章で表現させ、これまでの活動を通して、自らの中に 高まった「人類の幸福への貢献(『国際人』としての私)」に対する見方・考え方・感じ方を自覚さ せる。さらに、宮沢賢治の言葉(世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない 。) を提示し、人類の幸福に対し 、「自分にもできることが必ずある。日常の生活一つひとつが世界に 繋がっている 。」といった意欲を確認させる。 3 本時の目標 (1) 「国境を越えた人類愛」の精神を深く自覚し、国際的視野に立って人類の幸福に貢献しようとする 意欲を高める。 (2) 杉原氏が、極限の状況の中「できる限りのビザを書いた」という行為を「意図」と「結果」とい った二つの視点から探っていくことによって、「国境を越えた人類愛(人類の幸福への貢献)」の素 晴らしさを感じとることができる。 4 準備 ・資料「六千人の命のビザ 」(中学道徳2明日をひらく〔福岡県版〕東京書籍) ・学習プリント、「予測カード」 ・状況図、写真(杉原氏、イスラエルの石碑、杉原氏に授与された勲章)2 -5 学習指導過程 段階 学習活動と内容 教師の支援 配時 1 自らがかかわる集団で大切にしたい見方・考え方・ 5分 感じ方を表現する。 出 ○本時のねらいとする価値(「人類の幸福への貢献」) ○「人類の幸福への貢献」の大切さを意識してい 会 に興味を持つ。 る自分に気付かせていくために、「調査結果(「人 う bめあて 類の幸福への貢献」に関する意識調査)」を提 ・「国際人(私も国際社会のひとり)」 示する。 としての自覚を深めよう。 2 「杉原氏がビザを書き続けた」という行為の「意図」 35 や「結果」について話し合う。 (15) (1)杉原氏の「意図」を追求し、行為における道徳的 価値を明らかにする。 ○「意図」の追求 ①状況の把握 ○下記に留意した「状況図」を提示する。 取 ・時代の流れとその背景 ・ユダヤ人のおかれた状況 り ・領事の立場や仕事の内容 出 す ②価値観の表出 ○学習プリントの「吹き出し」に表現させる。 ★「吹き出し」 活 ・ビザを書いている杉原さんのイラスト ひ の中に杉原さんの立場で表現させる。 動 ③価値観の類型 ○下記のように分類・整理しながら板書する。 ・ひとりでも多くのユダヤ人を助けたい(ユダヤ人の命) た ・殺されるのがわかっている人たちを見捨てること はできない(自らの正義) ・領事である自分しかいない(自らの役割) る ・ユダヤ人を差別する外務省への怒り(人類の平等) ・お互いの幸せのため自分にできることをする (相互尊重) ︵ (2)対象ごとの「結果」をもとに、「意図」を再追求し、 (20) 行 「ビザを書き続けた杉原氏」の思いの強さについて 話し合う。 為 ○「結果」の吟味 の 分 ①「結果」の予測 ○行為の対象への意識を広げさせながら 、「予測 析 カード」に表現させていく。 と 活 ②対象による「結果」の違いの理解 ○行為の対象を意識させ、下記の順で 、「予測カ ら ア ユダヤ人 イ 日本(外務省) ード」の内容を交流させる。 動 ・幸福(+) ・ナチスと敵対(−) アユダヤ人 イ日本(外務省) ウ杉原氏自身(家族) え ・杉原氏への感謝(+) ・日本の不利益(−) ○分類・整理した板書をもとに、「ユダヤ人」に ︶ 直 ウ 杉原氏(家族) 「幸せ」をもたらすが、「日本(外務省)」の ・危険(−) ・後悔しない(+) 不利益となり、「杉原氏」には「危険」や「罰」 す ・外務省からの罰(−) ・達成感(+) がもたらされることを対照的にとらえさせる。 活 ○「意図」の再追求 動 ③新たな価値観の表現・把握 ・領事代理の立場を捨てて、自分の信念で行動した ○新たな見方・考え方・感じ方を発表させ、杉原 ・見捨てられないのが、杉原氏 氏の言葉「私のしたことは外交官としては間違 ・目の前に困っている人がいたら、助けずにおれな っていたかもしれないが、人間としては当然の かった(杉原氏の心に国境はない) こと。私には彼らを見殺しにすることはできな かった 。」、及び後の杉原氏への世界の評価を 紹介する。 あ 3 「人類の幸福に貢献すること」への新たな思いや考 10 えを表現する。 た ○新たな価値観の整理 ○学習前の自らの見方・考え方・感じ方と比較さ せ、「人類が幸福になるために、どのような考 た えや行動が大切なのか」を文章で表現させる。 め ○実践への意欲の確認 ○自分も人類の幸福に貢献するひとりであるといった心情を深めさせるために、「世界が全体幸 る 福にならないうちは個人の幸福はあり得ない。(宮沢賢治)」を示す。 複 数 回 答 ○相互尊重 ○ 自 ら の 役 割 ○ 自 ら の 正 義 ○ユダヤ人の命 ○ 人 類 の 平 等 ◎発問1「杉原氏は、どのような思いからビザを書き続けていたのだろうか。」 ◎発問2「杉原氏がビザを書くことは、誰にどのような影響をもたらすだろうか。」 ◎発問3「このような望ましくない影響も予測される中、なぜ杉原氏は ビザを書き続けていたのか。改めて考えてみよう。」
3 -6 行為の分析活動とは 「ひたる」段階において、まず、焦点化された主人公の行為の「意図」を追求することで、行為 に内在する道徳的価値を取り出す。次に、その行為の「結果」がもたらす対象ごとの影響の違いを もとに、「意図」を再追求することで、取り出した道徳的価値をとらえ直す活動である。 7「予測カード」とは ・自らの見方・考え方・感じ方を学級全体に提示するための「マグネット付き色画用紙(14×7cm程度)」 ・発問に対する応答の「要点」や「キーワード」をサインペンなどで記述し、自らの見方・考え方・感 じ方にあてはまる黒板上の「座標」に貼付 ・拡散的思考を促すため、原則として2枚に記述 ( 対 象 )に (1) 「予測カード」への「表現」のしくみ 発問・主人公の行為は、それぞれの対象にどのような影響をもたらすのか。 ①「主人公自身」「相手」「周囲」といった行為の対象の提示 (資料によっては提示しない) ②黒板の「座標(縦軸、横軸の意味)」の説明 (例)縦軸:「影響」の望ましさ 横軸:「対象」 ③学習プリントなどに自らの見方・考え方・感じ方を表出(下書き) ④提示したいものを選択 ⑤選択したものをサインペンなどで記述(清書) ( 氏 名 ) ⑥その「座標」に貼付する根拠の確認 ⑦あてはまる黒板上の「座標」に貼付 (2) 「予測カード」を用いた「交流」のしくみ ①貼付した「予測カード」の「座標」の違いの確認:見方・考え方・感じ方の全体の傾向を把握 ②「位置」の違いに着目した根拠の取り出し:「どのような思いから、その位置に貼ったのか。」 ・自他の見方・考え方・感じ方の相違点の取り出し:「違う位置に貼っているが、その違いは何か。」 「同じ位置に貼っているが、違いはないか。」 ・自他の見方・考え方・感じ方の類似点の取り出し:「同じ位置に貼っているが、共通する思いは何か。」 「違う位置に貼っているが、共通する思いはないか。」 ○ 本時における「予測カード」の規定 ・発 問:杉原さんがビザを書くことは、誰にどのような影響をもたらすだろうか。 ・縦 軸:「影響」の望ましさ ・横 軸:規定しない(はじめは規定せず、「交流」直前に分類・整理していく。) ・命が助かる ・後悔しない 望ましい影響 ・幸福 ・達成感 ・杉原氏への感謝 ユダヤ人 日本 杉原氏自身 外務省 家族 ・ナチスとの関係悪化 ・外務省からの責任追及 ・日本の不利益 ・危険(ナチスから命 をねらわれる) 望ましくない影響 ★交流の順序 ①「ユダヤ人」にもたらされる望ましい影響 ②「日本」や「外務省」にもたらされる望ましくない影響 ③「杉原氏自身」や「家族」にもたらされる望ましくない影響 ④「杉原氏」にもたらされる望ましい影響(杉原氏の信念ともいえる強い思い) ︿ 分 類 ・ 整 理 し た 板 書 ﹀ *要点 (キーワード ︶ 「行為の分析活動」のしくみ 活動 目 的 内 容 方 法 手だて ア ○ 行 為 の 内 側 に あ A「意図」の追求 ①状況について話し合う。 ①焦点化した主人公の行為を中心に、登場 取 り 出 る 道 徳 的 価 値 を ①状況の把握 ②「主人公はどのような思いからその行 人物やそれぞれの思いなどを図表化した す 活 動 明らかにする。 ②価値観の表出 為に至ったのか」といった発問をもと 「状況図」などを提示する。 ③価値観の類型 に、主人公の行為の「意図」に対する ②主人公の立場で「吹き出し(主人公のイ 自らの見方・考え方・感じ方を書き表す。 ラスト付き )」に書かせていく。 ③「意図」に対する見方・考え方・感じ ③「意図」に対する見方・考え方・感じ方 方について話し合う。 を分類・整理して、板書する。 イ ○ 行 為 に 込 め ら れ B「結果」の吟味 ①「行為の対象それぞれにどのような影 ①行為の対象ごとに要点やキーワードで「予 と ら え た 主 人 公 の 思 い ①「結果」の予測 響をもたらすのか」といった発問をも 測カード」に書かせていく。 直 す 活 の 強 さ を 感 じ 取 ②対象による「結果」 とに 、予測される「結果 」を書き表す 。 ②行為の対象を意識させ 、各対象ごとに「予 動 り 、 道 徳 的 価 値 の違いの理解 ②行為の対象ごとに論理を「交流」する。 測カード」の内容を説明させていく。そ をとらえる。 C「意図」の再追求 ③「このような『結果 』が予測される中 、 の際、予測の根拠を求めていく。 ③新たな価値観の なぜ 、主人公はこの行為に至ったのか 」 ③新たな見方・考え方・感じ方を発表させ 表現・把握 といった発問をもとに「意図」を再度 ていく。 話し合う。