山梨医科大学病院の病理検査システムと
病理情報の入力・検索方法
小 宮 山 明,中 沢 匡 男
1),近 藤 哲 男
1),
加 藤 良 平
1),三 俣 昌 子
2),川 生 明
1) 山梨医科大学附属病院検査部,1)同病理学第 2 教室,2)同病理学第 1 教室 キーワード 病理検査報告,コンピューター,ローカルエリアネットワーク(LAN) 近年,病理検査の結果をコンピューター上で 報告,保存する試みが多くの施設において行わ れている。当院では,平成 10 年度にローカル エリアネットワーク(LAN)内に構築された 総合医療情報システム(ACCEL,住友電工) が更新され,病理検査システムも ACCEL 上で 作動することとなったが,これに際し,病理検 査システムへの情報入力・検索方法を工夫した ので紹介する。なお,病理検査システム開発を おこなう住友電工システムズ㈱担当者および当 院の医療情報室と定期的に会合を開き,共同で 作業を行った。 Ⅰ.更新前の病理検査システム 病院病理室では,1988 年 4 月より 3 枚綴りの 報告書を発行したのち,医療情報室と病院病理 室が専用線で接続されたコンピューターシステ ム LAMDA(富士通)に患者の基本情報(氏名, 年 齢 , 性 別 , 臨 床 科 , 医 師 名 , 等 ) お よ び SNOMED1)による部位コード(Topography code, T code), 形 態 コ ー ド ( Morphological code,M code)を入力し,これらを用いて, T,M code 等による症例検索,新規組織診時の 既 往 の 病 理 報 告 書 へ の 打 ち だ し を 行 っ て き た2)。組織診報告書は,手書きもしくは個人の コンピュータ,ワープロ等で作成されていたが, 所見,診断等の文章情報はシステムには保存さ れていなかった(図 1a)。 Ⅱ.更新後の病理検査システムと入力の工夫 今回の更新で,病理検査システムも ACCEL 上に移行することとなったが,オーダリングシ ステムとしてではなく,これまでと同様に病理 室内での業務用に単独で運用されることとなっ た。これは,病理組織・細胞診の依頼には詳細 な臨床情報や図を必要とすること,また,依頼 医以外が報告を見る可能性があること,さらに 一旦報告されたものを病理医がコンピュータ上 で変更すると混乱を招く等の理由からである。 そこで,正式な報告は紙上によるものとし,主 に検索,保存のために診断および所見を含めた 電子情報を ACCEL 上のデータベースに残すこ とを計画した。 入力方法を考案する際,特に問題となったの は入力する病理医をとりまくコンピュータ環境 の多様性であった。各病理医が個人の所有する OS(Windows,Macintosh 等)の異なるコンピ ューターで入力を希望した。また,検鏡時には 顕微鏡の近傍での入力が必要で,ポータブル型 山梨医大誌 14(3),99 ∼ 102,1999 〒 409-3898 山梨県中巨摩郡玉穂町下河東 1110 受付: 1999 年 4 月 22 日 受理: 1999 年 9 月 2 日資 料
のコンピューターを使用するため,ネットワー クへの接続がないものが多かった。さらに,コ ンピュータによる入力を好まず,報告書を手書 きで作成する希望があった.以上を考慮し,図 1b のような入力方法を考案した。すなわち, 病理医は,従来どおりに発行された報告書用紙 を使用し,コンピュータを使用もしくは手書き により 3 枚綴りの紙上報告書を作成し,これを 正式のものとして臨床科に報告する。コンピュ ーターを使用する者のためには,Windows お よび Macintosh 上で共通のファイルを扱うこと が出来るファイルメーカー Pro にてテンプレー トを用意した。テンプレートに所見,診断, T,M code 等の項目を入力し,報告書をプリン トアウトした後,当日分のファイルを MS-DOS の定型テキストファイルに書き出し,これをフ ロッピーディスク(FD)を介して病理室の端 末より ACCEL に取り込ませる。報告書の手書 きを希望する者のためには,ACCEL 端末上か ら,これまでと同様に 1 症例ごとに T,M code, 病理医コード,コメントコード(重要例,典型 例等)を入力することを可能とした。48 時間 後までは入力したファイルを上書きする事によ り,あるいは,T,M code を手入力することに より変更可能としたが,それ以降は,内容変更 のためには管理者の password を必要とするこ ととした。また,これまでの T,M code による 検索の他,入力データを定期的に端末上のファ イルメーカー Pro のファイル(入力テンプレー トと同じもの)にバックアップすることにより, 小 宮 山 明,他 100 DOStext file変換 定期的にdataをファイル メーカー Proにback up 詳細な検索 LAMDAへの基本情報入力 受付 報告書用紙発行 鏡検 手書き報告書 臨床科へ報告 T,M code検索、 訂正 T,McodeをLAMDAに手入力 標本ラベル発行 ファイルメーカーPro, ワ ープロ等にて報告書作成
a
b
ACCELへの基本情報入力 受付 報告書用紙発行 鏡検 手書き報告書 臨床科へ報告 T,M code検 索,訂正 T,Mcodeを ACCELに手入力 標本ラベル発行 ファイルメーカーProのテ ンプレートにて報告書作成 (FD) 当日分をACCELに 一括登録 図 1. 病理検査報告のフローチャート a)システム更新前,b)システム更新後。 b)の下線部は新しく加わった作業を示す。診断,所見中の単語や文章によって自由度の高 い検索が出来るよう工夫した。細胞診に関して は,文章入力を行わず,従来のクラス分類を手 入力する方法を踏襲した。 入力テンプレート(図 2)では誤入力の防止, 操作性に注意を払った。誤入力防止のためには, 101 病理検査システムと入力・検索方法 図 2. 入力テンプレート(入力画面)と参照データベース 入力テンプレートには入力画面,一覧画面,印刷画面がある。入力画面では病 理番号,患者番号,枝番(迅速報告,本報告,追加報告等)の入力が必須であ り,これによって ACCEL 側で入力ファイルを認識する。また,一覧,検索,ス ペルチェック等のボタンを配し,操作性の向上を目指した。さらに,腫瘍取り 扱い規約,T,M code はボタンを押すと参照データベースが開き,ここからのペ ーストを可能にした。
入力レコードを病理番号と患者番号で区別し, どちらかが異なる場合には ACCEL 側で入力を 拒否することとした。また,患者番号は当院で 用いられている関数計算を行い,テンプレート に誤った数字を入力した場合にはエラーメッセ ージが出るようにした。さらに,一つの検体に つき複数の報告書(迅速診断報告書,追加報告 書等)が作成される場合があるため,これらを 枝番管理し,全ての報告書が上書きされずに入 力されるようにした。また,報告書が 2 頁にわ たる長文となる場合には,枝番にて 1 頁毎に作 成し,ACCEL 側で連続して保存する事とした。 操作性のためには,作成日の自動入力機能,ス ペルチェック機能,当日分の検索機能等のボタ ンを用意した。また,各臓器の臨床病理腫瘍取 り扱い規約と T,M code のリレーショナルデー タベースを作成し,これを参照できるようにし た。 Ⅲ.運用状況と今後の展望 データベース化された病理検査システムは市 販されているものもあるが,ファイルメーカー Pro と ACCEL を組み合わせることにより,コ ストをかけずに,当院の実情にあったシステム を構築することが出来た。病理検査システムは 平成 10 年 12 月より運用を開始し,病理,臨床 双方の診断,研究のための検索が行われている。 平成 11 年 9 月の時点で大きなトラブルはなく, 入力に際しての病理医の負担の増加も軽度であ る。 現在,病理検査システムは ACCEL 上に存在 するものの,前記の理由から,病理室のみで運 用される閉鎖的なものである。病理報告書の参 照をどの範囲まで許可するかは難しい問題であ るが,依頼医のみに症例の参照を許可するよう に設定するか,あるいは,依頼医以外や他科医 師でも参照を許可するという合意ができれば, LAN を介して病棟及び外来での参照,検索に 供することも可能となろう。 文 献
1) College of American Pathologists: SNOMED, sys-tematized nomenclature of medicine 2nd ed.. College of American Pathologists, Illinois, 1979. 2) 石井義雄,中沢久実子,弓名持 勉,細萱茂 美:当院病理検査室におけるコンピュータシス テムの構築.山梨県臨床衛生検査技師会誌: 50–54, 1988. 小 宮 山 明,他 102