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射出成形ガラス繊維強化ポリアミド66 複合材料の力学特性に関する研究

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Academic year: 2021

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論 文 審 査 報 告 書

みず もと かず や 氏 名 水 本 和 也 学 位 の 種 類 博士(工学) 学 位 記 番 号 博機第 39 号 学 位 授 与 日 平成 29 年3月 18 日 論 文 題 目 射出成形ガラス繊維強化ポリアミド 66 複合材料の 力学特性に関する研究 論 文 審査 委員 (主査)富山県立大学 教 授 川 越 誠 教 授 森 孝 男 教 授 坂 村 芳 孝 准教授 真 田 和 昭 金沢大学 教 授 山 岸 忠 明 内 容 の 要 旨

繊維強化高分子(Fiber Reinforced Polymers; FRP)は、比弾性率(縦弾性率 / 密度)および比強度 (引張強度 / 密度)をともに大きくすることができるため、様々な分野での用途展開が期待されている。 FRP のうち、熱可塑性高分子を母材とし、非連続の短繊維で強化された繊維強化熱可塑性高分子(Fiber Reinforced Thermoplastic Polymers; FRTP)は射出成形が可能であるため、生産性が高く、低コストで 製品を製造できるというメリットを有する。しかしながら、このような射出成形により非連続繊維をラ ンダム分散した FRTP では、成形の前加工や成形方法によって、繊維配向や繊維の長さが大きく変化する ため、その力学特性の予測が非常に困難である。そのことが問題となる実例の一つとして、日常的に使 用しているファスナーが挙げられる。中でもスライダーと呼ばれる持ち手のついた開閉部品には、一定 以上の強度保持と、高弾性率化が求められる。そのため、ガラス繊維を高い割合で充填することが必要 となり、経験的には 60wt% (41vol%) 程度の添加が要求される。しかし、この高繊維体積分率(本論文 では 41vol%以上をいう)を有する射出成形 FRTP の基本力学特性については未だ不明な点が多いのが現 状である。力学特性把握と機構解明は、その予測を可能とすることにつながるため、上述した問題の解 決にとって有意義と考えられる。 以上に鑑み、本研究では射出成形ガラス繊維強化ポリアミド 66 の基本力学特性の把握と機構解明を主 たる目的とし、繊維の配向状態が異なる2種類の複合材料試験片を比較することにより、繊維体積分率 や繊維配向が力学特性に及ぼす影響について実験と解析の両面から検討している。本論文は全5章から 構成されている。

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第1章では、本研究の主題である FRTP を用いた射出成形品の力学特性に関するこれまでの研究を概観 し、特に高繊維体積分率を有する射出成形 FRTP の力学特性の課題について指摘している。それらに基づ いて本研究の目的および意義、研究の概要について述べている。 第2章では、FRTP 射出成形体の基礎的力学特性として、引張特性に及ぼす繊維配向と繊維体積分率の 影響について、ヤング率(縦弾性率)と引張強度を対象に検討している。実際の製品に典型的にみられ る繊維配向を有する試験片として、繊維が流動方向と平行に配向したスキン層と垂直に配向したコア層 の層構造を有する C 試験片と、比較のために、繊維が流動方向にのみ配向したダンベル形状の M 試験片 を作製している。また、C 試験片のスキン層とコア層を分離して作製した各々の試験片について、それ らの動的粘弾性試験を実施して、その貯蔵弾性率と損失弾性率の挙動から、繊維と母材(マトリックス) の界面が力学特性へ及ぼす影響について考察している。 M 試験片のヤング率に関しては、従来から知られる Lewis-Nielsen 式によく合致し、高繊維体積分率 (41vol%)の場合は若干の差異がみられたものの、繊維配向の影響を考慮するとヤング率を予測できる 可能性を示唆している。一方、C 試験片では繊維体積分率増大に伴って、コア層が増大するため、その ヤング率の予測は Lewis-Nielsen 式では難しく、ヤング率予測のためには繊維配向の定量的理解が必要 であることを指摘している。 引張強度に関しては、高繊維体積分率の場合に大きく低下する傾向を示すことを見出し、特にスキン 層とコア層を持つ C 試験片に関しては、繊維体積分率が 27vol%から 41vol%に増大すると、引張強度が大 きく低下するという特異的傾向を明らかにしている。この引張強度低下に対して、本章では動的粘弾性 特性に基づき界面の影響から考察している。高繊維体積分率の場合は、繊維配向によらず損失弾性率が 急激に増大する傾向を示すことから、界面層にある不均質構造(小さな空隙などの欠陥)の増大による エネルギー散逸が起きることを述べている。また、引張強度はヤング率に比べ、大きな変形を伴う力学 特性であり、このことによって高繊維体積分率の場合に特に繊維と樹脂の界面状態が大きく影響すると 推論している。 第3章では、高繊維体積分率を有する FRTP 射出成形体の破壊(き裂進展)に係る強度評価として、第 2章と同様の C 試験片と M 試験片から切り出した、片側切欠き曲げ試験片 (Single Edge Notched Bend; SENB) を用いて3点曲げ試験を行い、破壊特性に及ぼす繊維配向と繊維体積分率の影響について検討し ている。ここでは、ASTM E1820-01 に準拠して、最大荷重時のひずみエネルギーを弾性成分と塑性成分 に分けて考察している。また、試験片内部のき裂進展挙動と微視構造の関連性について、一定変位に到 達したときの試験片を染色法により処理し、光学顕微鏡観察および走査型電子顕微鏡(SEM)による破面 観察を行うことにより検討している。 荷重―荷重線変位曲線において、C 試験片の場合、繊維体積分率の増大に伴いコア層が増大すると、 ガラス繊維を含まない PA66 単体の影響が現れるようになる傾向を明らかにしている。この PA66 単体の 荷重―荷重線変位曲線では、負荷速度(クロスヘッド速度)が増大すると、初期の傾きが増大し、最大 荷重はほぼ同じ値を示すが、最大荷重時の変位は大きく減少するという結果を得ている。一方、コア層 を持たない M 試験片においては、PA66 単体の影響はほぼなく、繊維体積分率が異なっても同じ荷重線変 位で破壊する結果を得ている。これは従来の研究結果と大きく異なるものであることを示している。

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き裂進展挙動に関しては、C 試験片、M 試験片ともに負荷速度が増大するとき裂の進展領域が増大する 傾向があることを示している。試験片染色法による母材(マトリックス)樹脂の破壊挙動より、両試験 片タイプともに破壊は負荷速度に依存することを明らかにしている。 さらに、最大荷重時のひずみエネルギーを弾性成分と塑性成分に分けると、C 試験片の弾性成分は負 荷速度(クロスヘッド速度)に依存したにも関わらず、M 試験片ではそのような依存性が見られないこ とを示している。これは、C 試験片に PA66 単体の影響が強く出ることは前述のとおりであり、一方で M 試験片の破壊はガラス繊維の特性が支配的に作用したためと推測している。さらに、M 試験片の 41vol% においてはその塑性成分が他の繊維体積分率に比べて増大する傾向にあることを示している。これにつ いて、第2章の動的粘弾性試験結果において、高い繊維体積分率の試料で繊維と母材(マトリックス) の界面層に小さな空隙などの不均質な欠陥の存在が示唆されたことと符合するものと推定している。 第4章では、高繊維体積分率を有する射出成形 FRTP を対象に、高繊維体積分率を有する FRP のモデル 化手法、内部応力状態に及ぼす繊維体積分率や繊維配向等の微視構造の影響について有限要素解析(FEA) により検討し、引張特性の発現メカニズムについて考察している。 微視構造モデルは Digimat FE(MSC ソフトウェア製)で作成し、全ての方向に周期対称性を有する代 表体積要素(Representative Volume Element : RVE)モデルとしている。特に繊維体積分率 41vol%の 場合、実測値を参考にして与えた繊維の直径、長さと繊維間距離を考慮すると RVE モデルが生成できな かったため、サイズリダクションにより繊維長さが分布を有するモデルとしている。 先の第2章では繊維体積分率が 41vol%になると引張強度の低下やヤング率の増大傾向の鈍化の原因 として、繊維体積分率の増大に伴い、コア層の比率が増大することを述べており、本章ではコア層比率 を考慮した FEA による C 試験片と、比較として M 試験片のヤング率予測を試みている。M 試験片のヤン グ率予測には、繊維が1軸配向した横等方性材料を考慮した RVE モデルを用い、C 試験片のヤング率予 測には、1軸繊維配向 RVE モデルで得られた材料特性を用いて表現したスキン層、コア層から成る RVE モデルを用いている。 内部応力状態の評価として、繊維体積分率ごとにガラス繊維とマトリックス樹脂にわけて von Mises の相当応力

eqの頻度分布を計算し、最も頻度が高い応力値

eq* 、平均応力

eqaveについて考察している。 ガラス繊維の

eq* 、

eqaveは共に繊維体積分率の増大とともに増大し、特に繊維体積分率 27vol%から 41vol%の増大の際に、

eqaveは増大傾向が強まる結果となることを示している。また、母材(マトリック ス)樹脂の

eq* は繊維体積分率に依存せず、ほぼ一定を示したが、

eqaveは繊維体積分率の増大に伴って 微増傾向となることを明らかにしている。主応力

1の頻度分布についても

eqと同様の結果であること を示している。これは繊維体積分率が増大すると、繊維に大きな応力が印加されることになり、内部で 繊維破断などが起こる可能性を示唆しており、これにより繊維体積分率 41vol%の内部応力状態の特異性 を説明している。 また、M 試験片のヤング率予測において、RVE モデルは繊維と樹脂の界面が完全接着とした一方向繊維 配向モデルとしたが、繊維体積分率 17、27vol%の場合には実験結果とよく一致することを示している。 これは Lewis-Nielsen 式の結果も同様であったが、従来から研究されている低繊維体積分率の場合にお いては、繊維配向だけ明確に規定できれば、繊維と樹脂の界面状態を考慮せずともヤング率の予測は正

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確にできることを主張している。一方、繊維体積分率 41vol%の M 試験片のヤング率は、実験結果に比べ て、FEA の結果、Lewis-Nielsen 式の結果とも高くなる傾向となることを示している。これより高繊維体 積分率の場合においては、繊維配向の詳細な特定が必要であることに加え、繊維と樹脂の界面状態にも 着目する必要性があることを指摘している。また、C 試験片のヤング率の予測結果は M 試験片の場合と 異なり、低繊維体積分率においても実験結果と比べて若干高めの結果となることを示している。C 試験 片の場合は M 試験片の場合と同様に繊維と樹脂の界面の接着強度や不均質さを考慮していない点に加え、 スキン層とコア層の割合が測定位置によって変化して定量化が難しいこと、C 試験片の繊維配向は M 試 験片のように揃った繊維配向でなかった点を原因として推測している。しかしながら、繊維体積分率に 対するヤング率の依存傾向は確かに捉えており、FEA によるヤング率予測精度向上の有効性を明らかに している。 第5章では、本研究の目的に鑑みて、明らかとなった主要な成果をまとめ、論述している。すなわち、 本研究の目的は、射出成形によるガラス繊維強化ポリアミド 66 複合材料を対象に、基本力学特性である 引張および破壊特性を実験的に評価し、有限要素解析により内部応力と微視構造との関連を明らかにし て基本力学特性の機構解明と数値予測を検討することにあることを述べている。得られた成果として、 主に C 試験片についてまとめると、引張におけるヤング率(縦弾性率)は繊維体積分率とともに増大す るが、強度には単純な増大傾向はなく、むしろ高繊維体積分率(41vol%)で大きく低下するという特異 な傾向を見出している。射出成形体の層構造に着目して表面スキン層と内部コア層を分離して動的粘弾 性評価を行った結果、いずれの繊維体積分率でも高繊維体積分率では両層の損失弾性率は大きく増大す るという新たな知見を得ている。これらより上記の引張強度の特異的傾向に材料学的な解釈を与えてい る。片側切欠試験片の3点曲げ試験で得られた荷重-荷重線変位曲線から、負荷速度および繊維体積分 率の増大とともに初期傾きと最大荷重は増大することを見出している。また、最大荷重時のひずみエネ ルギーは、負荷速度の増大とともに弾性成分は増大するが、塑性成分は減少すること、負荷速度 2.0mm/min の場合には繊維体積分率が増大すると全体のひずみエネルギーは増大することを見出してい る。これらは一定変位におけるき裂面(破面)の進展状況と対応があることを示している。多数の一軸 配向短繊維から成る微視構造モデルを対象に有限要素解析を行い、繊維に生ずる応力が繊維体積分率と ともに急激に増大する傾向を明らかにし、これが上記の引張強度特性と関連することを示している。さ らに、同じく上記の実験的に求めたヤング率の繊維体積分率依存性を良好に予測可能なことを示し、実 製品への適用性を展望している。

(5)

審 査 の 結 果 の 要 旨

本論文は、射出成形したガラス繊維強化ポリアミド 66(PA66)複合材料を対象に、基本的な力学特性 である引張および破壊特性を実験的に評価するとともに、有限要素解析により内部応力と微視構造との 関連を明らかにすることで、基本力学特性の機構解明と数値予測を検討したものであり、5章から構成 されている。

第1章では、繊維強化熱可塑性高分子(Fiber Reinforced Thermoplastic Polymers; FRTP)を用いた

射出成形材の力学特性に関する従来の研究を概観し、特に高繊維体積分率を有する射出成形 FRTP におけ る問題を指摘している。それに基づいて、本研究の目的および意義、研究の概要について述べている。 すなわち、熱可塑性高分子を母材として非連続の短繊維で強化した FRTP は、射出成形が可能な複合材料 であり、それを生かした実例の一つとしてファスナーの開閉部品(スライダー)を挙げている。この場 合、高弾性率化と強度保持の要求からガラス繊維を 60wt% (41vol%) 程度の高い割合で充填することが 必要とされるが、従来の研究では、このような高繊維体積分率(本論文では 41vol%以上をいう)を有す る射出成形 FRTP の引張や破壊の基本力学特性については知見がほとんどないために実製品への適用に おいて合理的な指針が示されていない現状を指摘し、問題解決の意義を述べている。これらに鑑み、本 研究では、射出成形 FRTP の実用モデル材料として、射出成形したガラス繊維強化ポリアミド 66 試験片 に対して基本力学特性を把握し、繊維体積分率および繊維配向で示される微視構造との関連を明らかに し、その結果に基づいて上記の力学特性の解釈ならびに定量予測を示すことを主要な目的とすることを 述べている。 第2章では、FRTP 射出成形体の引張特性に及ぼす繊維配向と繊維体積分率の影響について、ヤング率 (縦弾性率)と引張強度を対象に検討している。実製品に対応した試験片として、繊維が流動方向と平 行に配向しているスキン層と垂直に配向したコア層の層構造を有する C 試験片と、比較のために、繊維 を流動方向のみに配向させたダンベル形状の M 試験片を作製している。C 試験片のスキン層とコア層を 分離して作製した各試験片について動的粘弾性試験を実施し、繊維と母材の界面が力学特性へ及ぼす影 響を考察している。M 試験片のヤング率に関しては、既知の Lewis-Nielsen 式によく合致するが、C 試 験片ではこの式によるヤング率の予測は難しく、そのためには繊維配向の定量的理解が必要であること を指摘している。引張強度に関しては、C 試験片において繊維体積分率が 27vol%から 41vol%に増大する と引張強度が大きく低下するという特異的傾向を見出している。この引張強度の低下傾向について動的 粘弾性特性に基づき考察し、高繊維体積分率の場合には繊維配向によらず損失弾性率(エネルギー散逸) が急激に増大することから、界面層の不均質(微小空隙などの欠陥)によることを推定している。 第3章では、FRTP 射出成形体の破壊(き裂進展)に係る強度評価として、第2章と同様の C 試験片と M 試験片から切り出した片側切欠き曲げ試験片 (Single Edge Notched Bend; SENB) を用いて3点曲げ 試験を行い、破壊特性に及ぼす繊維配向と繊維体積分率および負荷速度の影響を検討している。荷重― 荷重線変位曲線において、C 試験片では母材 PA66 の特性を反映して、荷重―荷重線変位曲線は負荷速度 が増大すると初期傾きと最大荷重は増大するが、最大荷重時の変位は大きく減少するという結果を得て いる。一方、M 試験片では、そのような傾向は見られないという結果を得ている。き裂進展挙動につい ては一定変位に到達したときの試験片を染色法により処理し、光学顕微鏡観察および走査型電子顕微鏡

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(SEM)による破面観察により検討している。その結果、C 試験片ではスキン層、M 試験片では表面付近 で負荷速度が増大するとき裂の進展領域が増大することを明らかにしている。最大荷重時のひずみエネ ルギーを ASTM E1820-01 に準拠して弾性成分と塑性成分に分けて検討し、負荷速度が増大すると C 試験 片の弾性成分と塑性成分は各々増大と減少を示すが、M 試験片ではそのような依存性が見られないこと を見出している。また、繊維体積分率が増大すると、C 試験片、M 試験片ともにひずみエネルギーは全体 的に一定もしくは増大することを明らかにし、これらは母材の PA66 やガラス繊維の特性等から理解でき ることを示している。 第4章では、高繊維体積分率を有する FRP のモデル化手法、内部応力状態に及ぼす繊維体積分率、繊 維配向などの微視構造の影響について有限要素解析(FEA)を用いて検討し、引張特性の発現メカニズム について考察している。内部応力状態を繊維体積分率ごとにガラス繊維と母材に対して主に von Mises の相当応力

eqにより、最も頻度が高い応力値

eq* 、平均応力

eqaveについて検討している。ガラス繊維

eq* 、

eqaveは共に繊維体積分率の増大とともに増大し、特に繊維体積分率 27vol%から 41vol%の増大

の際に、

eqaveは増大傾向が強まる結果を得ている。母材の

eq* は繊維体積分率に依存せず、ほぼ一定値 を示すが、

eqaveは繊維体積分率の増大に伴って微増傾向となることを明らかにしている。これらより第 2章で示した繊維体積分率 41vol%における引張特性の特異性を説明している。ヤング率予測では、M 試 験片において繊維体積分率 17、27vol%の場合に実験結果とよく一致し、予測はかなり正確にできること を主張している。ただし、高繊維体積分率の場合には、繊維配向および繊維と樹脂の界面状態の情報が 必要性となることを指摘している。C 試験片のヤング率の予測では、低繊維体積分率においても実験結 果と比べて若干高めの結果となり、これは M 試験片の場合と同様に繊維と母材の界面の接着強度や不均 質さを考慮していない点に加え、スキン層とコア層の割合が測定位置によって変化して定量化が難しい こと、C 試験片の繊維配向は M 試験片のように揃ったものでなかった点を原因として推測している。し かしながら、繊維体積分率に対するヤング率の傾向は確かに捉えており、FEA によるヤング率予測精度 向上の有効性を明らかにしている。 第5章では、本研究で明らかとなった結果をまとめ、研究の目的に対応した内容を示している。 以上より本論文は、射出成形ガラス繊維強化ポリアミド 66(PA66)複合材料を対象に、研究の背景と して、研究課題となる問題点を当該分野および周辺分野に関する十分な全般的知識に基づいて指摘し、 それに係る従来の研究を詳細に調査して、その知見の不足を明らかにした上で研究目的を設定している。 目的達成のため適切な方法論とそれに沿った手法を採用し、その結果に対して妥当な解釈を与え、的確 な文章で表現している。本研究の内容は、学術上のみならず実用上も重要でありながらこれまで知見が 著しく不足であった課題に応えるものであり、得られた成果は新規性に富み、かつ射出成形 FRTP 全般に 適用可能な一般性の高い知見となっている。これより、機械工学、特に機械材料学分野における工学的 価値ならびに工業的価値は大きいものと認められる。研究成果の一部は、既に申請者が筆頭著者の2件 の学術論文として学術論文誌に掲載されている。 審査委員会は、平成29年1月18日に富山県立大学学位規定第6条および第7条に則り、博士論文 の審査および最終試験を実施した。その結果、本論文は本学が学修の指針に定める評価項目を満たし、 申請者は学術研究にふさわしい討論ができ、独立して研究を遂行できる能力を有するものと判断された。 よって、本論文は、博士(工学)の学位論文として合格であると認められた。

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