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図画工作科授業における児童へのアプローチ―工作題材授業の参与観察から―

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図画工作科授業における児童へのアプローチ

―工作題材授業の参与観察から―

貞 永   瞳・齋 江 貴 志

群馬大学教育実践研究 別刷

第38号 113~126頁 2021

群馬大学共同教育学部 附属教育実践センター

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図画工作科授業における児童へのアプローチ

―工作題材授業の参与観察から―

貞 永   瞳

1)

・齋 江 貴 志

2) 1)群馬大学大学院教育学研究科 2)群馬大学共同教育学部美術教育講座 図画工作科授業における児童へのアプローチ 貞永 瞳・齋江貴志

Approach to children in the Arts and Crafts Classes

―Participant observation of Craft material classes―

Hitomi SADANAGA

1)

, Takashi SAIE

2) 1)Graduate School of Education, Gunma University

2)Department of Art, Cooperative Faculty of Education, Gunma University キーワード:美術科教育,図画工作,参与観察

Keywords : Art education, Arts and crafts, Participant observation (2020年10月30日受理) 1 はじめに 1.1 研究の背景  本論文は,貞永・齋江(2020)の継続研究である1)  平成29年に告示された小学校,中学校の新学習指導 要領は,周知・徹底と移行期間を経て小学校において は令和2年度から全面実施へと移った。今回の学習指 導要領は旧来からの知識教授という学習活動以上に, 「主体的な学び」を教育目標の中心に据えた。それ は,高度情報技術の進展やグローバル化とともに,一 方で日本においては少子高齢化社会や環境問題への懸 念などといった,ますます予測が困難となる社会の将 来を見据えたものといえる。改訂において図画工作科 は,他の教科との擦り合わせが行われて再構築された ものの,前の学習指導要領から内容自体が大きく変わ ることはなかった。ただ,改めて教科目標の全てにお いて,造形にまつわる創造が教科を貫く学びの中心で あることが確認されて明記されたこと2)は,当然だ が特筆すべきことといえよう。  創造という言葉は目新しいものではないが,一方 で,「このようにすれば,このように新しいことを生 み出せる」という明確な過程と結果が保証できるもの でもない。むしろ,同じ題材に取り組んでも,題材の 見方や考え方,過程,結果が人によって異なり,そし てそれらの違いや広さ,深さに気づけることが創造の 醍醐味ともいえる。学校教育においては,自分にとっ て新しいものやことを生み出す経験を重ね,その経験 が喜びへと結びつき,創造を求める人間形成が求めら れている。ただ,創造活動は過程と結果の関係が曖昧 なため,達成した時の喜びは大きいが,途中の段階で は「目指すものが思いつかない」あるいは「良さとは どういったものだろう」,「何をすれば実現化でき解決 できるのだろう」など不明瞭で,不安ともいえる「つ まずき」を伴うのが常である。一方,技能面でのつま ずきは発想・構想でのつまずきに比べ顕在化しやす く,指導の道筋も見出しやすいといえる。そしてま た,児童・生徒もまた技能的なつまずきはその具体性 や解決時の印象が強く記憶に残ることから,表現活動

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の技能習得こそが教科の目的であると捉えられがちな のではないだろうか。  いずれにせよ,子どもたちが表現題材の中で作品を 作り出していく中で,どのような「つまずき」を感じ どのように対処しているのか,一方の教師は,一連の 過程のなかで,子どもの「つまずき」を適切に意識し たり支援したりできているのかが重要であろう。つま り教科における「つまずき」を認識し,対処方法を促 し計画することで教科授業を充実させることが,創造 への意識を高めるという目的に向かわせることにつな がるものと考える。 1.2 前年度の研究と今回の目的  昨年度はまず,小学校2・4・6年生へのアンケー トを実施し,児童の図画工作科における「つまずき」 を明らかにした。そしてアンケート結果から,図画工 作科の製作活動において,児童があらゆる場面で「つ まずき」を感じながらも,自分・モノ・他者との関わ りの中で解決法を見出していることがわかった3)  アンケート対象のいずれの学年にも共通して,発 想・構想の段階における「つまずき」に対しては,多 くの場合,誰かしらの解答である「作品」を参考にす る傾向が見られた。これは自らの経験の無さが引き起 こす「つまずき」であり,選択肢をイメージできない ことからアイデアが思いつかないという困り感につな がったと推測できた。そして,技能面における「つま ずき」に対しては,道具の扱い方や表現技法に不安を 感じる場合,先生や友達との対話,友達の様子や参考 作品を見るなどしながら解決方法を見出していく回答 が多かった。自らの思考と技術とのギャップに不安 を感じる「つまずき」では,思い通りにできないもど かしさを他者と共有するよりも,とにかく自分自身で 取り組んで解決しようという様子が回答から見えた。 またどの場面においても共通して「解決するために頼 るもの」が,低学年では「自分自身」が最多であった が,学年・発達段階が上がるごとに「他者」へと変化 していくことが読み取れた。  「つまずき」を感じる場面として2年生では立体・ 工作題材に関して「(つくり方はわかるけれど)自分 の思い通りにつくれないかもしれないと不安」という 技能面を挙げたが,6年生では「何をつくるかアイデ アが思いつかなくて困る」という発想・構想の場面が 多く挙げられた。これは発達段階が進むにつれて,創 造活動の芯にあたる主題設定の場面で「つまずき」を 感じるようになっていることがわかる。また低学年に おける発想・構想の場面に関する自信と技能面の「つ まずき」,高学年における技能面の自信と発想・構想 の段階に関する「つまずき」が,発達段階に応じて逆 行していることが興味深い。  そして「つまずき」を感じた題材と印象に残ってい る題材のアンケート結果では,「つまずき」が少ない ことで,自分自身の力を発揮できた題材だから印象に 残っている,と回答した児童がいる一方,満足してい ないからこそ印象に残っているという児童も見られ た。「つまずき」,「楽しかった題材」の双方に題材の 難易度,児童自身の思いや経験,製作の必然性,手指 の巧緻性,他者からの評価などが関連しているが,そ れらを加味して児童は「図画工作科は困ることもある けれど楽しい教科」という認識を持っていることが 確認できた。以上のことから,「つまずき」を取り除 くという発想ではなく,年齢や題材に応じた「つまず き」を指導で計画し,利用していくという授業の在り 方が考えられる。そのため今回は,同学校の同題材で 異なる学級・教師の授業を参与観察し,児童の「つま ずき」に対する教師の意識や支援の方法などを記録・ 観察していく。そして,教師のアプローチによって 「つまずき」が活動に与える影響や創造活動にどのよ うな価値をもたらすかについて考察をしていく。 2 観察授業について 2.1 対象の設定  今回観察する題材は1年生の全4回の工作題材であ る。工作題材を選んだのは,発想・構想と製作,鑑賞 といった授業での場面が比較的ひとまとめになってい るためである。各場面で教師が児童へどのように課題 設定を行っているか,課題を解決するために児童がど んな見方・考え方を活用して活動を行なっているか, どこに困難を感じるか,児童の「つまずき」に対し, 教師がどのような支援を行なっているかを記録し検証 していく。観察の対象となるのは同じ小学校の1年生 の2学級である。対象学校の1年生は3学級あるが, 比較していく上で2学級に絞った。なお,学年教員団 は同題材を行うにあたり,共同で題材研究と授業計画

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を行い,授業に臨んでいる。 2.2 授業の概要 題材名:「コロコロ ゆらりん」 実施日:2020年1月21日~1月29日     (各学級 全4時間) 対 象:A小学校1年生     A組 21人(男子10人,女子11人)     B組 22人(男子10人,女子12人) 指導者:各学級担任     A組 16年目・国語科免許所持        授業の間,常に机間支援を行い,児童 への声かけを行っている。     B組 10年目・家庭科免許所持        ほとんど動かず,黒板の前に立ってい るか椅子に座って全体の様子を見てい る(支援が必要な児童は前列に配置) 記録方法:・ビデオカメラによる動画撮影      ・デジタルカメラによる静止画撮影      ・児童・教師の発話を聞きとるメモ 活動の概要:・1時間目:導入と製作(紙コップと紙 皿を貼り合わせるしくみ作り)       ・2時間目:飾り付け(しくみを生かし た飾り)       ・3時間目:飾り付け       ・4時間目:飾り付け,鑑賞(転がした 友達の作品をみる) 場 所:教室,自席     材料コーナーは教室の一角に設置し,自由に 行き来が可能。 2.3 題材の価値  「コロコロゆらりん」はA小学校で使用している図 画工作科の教科書(1・2年上)に掲載4)されてい る工作題材である。この題材は紙コップ2つをつな げ,両端に紙皿を接着することでできる転がる仕組み を生かし,転がり方や揺れ方の面白さを味わうことが 魅力である。題材の説明には「かみざらの かたちを  もとに ころがったり ゆれたり する ものを  つくる」とあることから,動きを中心に装飾を考えて いくことがわかる。そのため製作を行いつつ試しに転 がしてみるという活動が不可欠になる題材である。 この題材において,「コロコロ」転がるパーツである ベースの製作をどこまで重視するか,動かした時に 「ゆらゆら」するよう飾りも意識して製作するかとい う点に,題材の価値や教師の考える「児童に身に付け させたい資質・能力」が表れると考えられる。 3 参与観察の分析と考察 3.1 授業の展開に関する分析  まず2学級の授業について,授業展開を比較してい く。 表1 授業(1/4)の展開 A組 B組 ①題材名にある言葉のイメー ジを共有(ころころ=転が る,転がるから丸い形) ②参考作品提示 ③教科書でめあてを確認,課 題設定 ④教科書にある作品のモチー フに注目させる ⑤作り方の説明 ⑥紙コップ・紙皿配布 ⑦ベースの接着・固定,転が り方の確認 ⑧飾りつけの材料説明 ⑨飾りつけ,試し ⑩見てみようタイム ①題材名にある言葉のイメー ジを広げる(ころころ=ま わ る, ヘ リ コ プ タ ー, こ ま……,ゆらりん=波,ゆ れる,シーソー……) ②教科書でめあてを確認,課 題設定 ③作り方の説明 ④紙コップ・紙皿配布 ⑤好きな位置に仮接着し,転 がり方を確認 ⑥ベースの接着・固定,転が り方の確認 ⑦飾りつけの材料説明 ⑧参考作品提示 ⑨ゆらゆらする飾りをつける ことを指示  1/4時間目は表1のとおりである。題材名からイ メージを膨らませ,課題設定を行い製作に進むという 点は共通しているが,内容や時間設定に関しては差異 が見られた。内容については後に述べるとして,時間 設定において,A組はベースづくりを15分程度に押さ え,授業中盤から飾りつけを行っている。一方,B組 はベースづくりに時間をかけ,紙コップの接着に約7 分間,紙皿の接着に約17分の時間を割いている。A組 が教師の示した方法で,全員が同一のベースづくりを 行ったのに対し,B組では紙コップの接着,紙皿の接 着も個人に委ね,仮接着の段階で実際に転がす体験を 行い,納得のいくベースになった時点で固定をしたた めである。B組はベースの製作に対しA組より約1.7 倍の時間をかけており,その結果1/4時間目には飾 りつけの時間が取れずに終了した。

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表2 授業(2/4)の展開 A組 B組 ①飾りつけ,試し ②片付け,机の移動 ③見てみようタイム ④見てみようタイムの感想 ⑤次回やりたいこと,まとめ ①飾りつけ,試し ②試し ③飾りつけ,試し ④片付け ⑤見てみようタイム ⑥まとめ  2/4時間目は共通して飾りつけの活動を主とし, 最後に互いの作品を見合う時間が設定されていた(表 2)。A組では20分間とまとまった製作時間の後,互 いの作品の転がり方を見て感想やよさを共有,その上 で次回の授業時間に自分自身がやりたいことを考える 時間があった。B組は飾りつけの途中で自分の作品を 転がす時間が意図的に設けられ,実際に転がして見た 様子や友達の作品から発想を広げ,さらに飾りつけを 行う時間が設定されていた上,最後に全員で作品を見 合う時間も確保されていた。始めの飾りつけが約21 分,試しの時間の約15分を経て,再度10分程度の製作 を行う。このように試しの時間を意図的に設定するこ とで,まだ製作を続けたいと考えていた児童も手を止 めて転がす体験をしなければならず,その児童の意欲 や思考を中断させてしまう可能性も考えられる。  またA組のように友達の作品を見た後,意見を全体 で共有した方が新たな発想を広げやすいのか,B組の ように共有せずに,自分自身が感じたことをすぐ製作 に生かしていく方が新たな発想へと広がるのかは,興 味深い点である。 表3 授業(3/4)の展開 A組 B組 ①前回の振り返り,課題確認 ②手順確認 ③飾りつけの材料説明 ④飾りつけ,試し ①前回の振り返り,課題確認 ②題材名にある言葉のイメー ジを広げる(ゆらりん=波, ゆれる,シーソー……) ③自分の作品が課題に合うか 確認 ④飾りつけの材料説明 ⑤作品準備 ⑥飾りつけ,試し ⑦試し ⑧飾りつけ,試し  3/4時間目は表3の概要とおり,前時の振り返り で設定課題や材料の扱いなどの確認から始まり,その 後の時間は飾りつけと試しの活動に充てられた。A組 は前時の振り返りを概要のみに絞ることで約3分30秒 に押さえ,その後の飾りつけの時間を約40分と充実さ せた。このようにある程度まとまった時間を確保する ことで,児童の思考や活動が途切れることなく,没頭 して打ち込めるのではないかと考えられた。実際に児 童の活動も活発で,前時には見られなかった新たな飾 りがこの時間に数多く取り付けられていたことから, 完成作品に見られる飾りつけの大体がこの時間に進め られたと言える。  一方B組は,題材名のイメージなども含めて具体的 かつ丁寧に振り返りを行った。教師の発話や課題設定 については後に述べることとするが,「ゆらゆらする ものを飾りつけしていくこと」を強調するとともに, 使える材料をどのように加工すると「ゆらゆら」しそ うかを具体的に考えさせ提示していた。さらに,自分 自身の作品を見て設定課題に対し不足していることや 必要なことを考え,全体で意見交換する時間を設けて いた。このように,限られた時間で製作するにあた り,内容を全体で共有することで,発表していない児 童も含め児童それぞれがどのような飾りつけを行って いくかを改めて考える機会となったと考えられる。 表4 授業(4/4)の展開 A組 B組 ①飾りつけ,試し ②片付け,机の移動 ③見てみようタイム ④見てみようタイムの感想 ⑤ワークシートで振り返り ①飾りつけ,試し ②片付け,机の移動 ③見てみようタイム ④ワークシートで振り返り  4/4時間目は作品の仕上げ,鑑賞,振り返りを 行った(表4)。  A組は鑑賞の後,感想を全体で共有してからワーク シートでの振り返りを行った。満足度を尋ねる項目 に,意見交流の場面で友達に言われた良さを記入する 児童も見られたが,自分自身でも自覚していたよさ や工夫なのか,無自覚だった点に着目してもらえた結 果なのかは確認できない。B組は鑑賞の後,個人で振 り返る時間を10分確保し,じっくりと自分自身の活動 や作品について考えて書いていた。振り返りのワーク シートに記入された主な内容についても後述する。  授業の展開に着目すると,同学年,ほぼ同人数,同 環境,同一の題材,題材の合計時間は同一の4時間で あっても,各活動に要する時間や活動の細かい流れに

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は差があった。本題材については,学年職員団で教材 研究を行い,流れや参考作品等を検討・共有していた が,教師個人の題材観や児童観によって実際の展開が 異なった。 3.2 課題設定に関する分析  次に2人の教師による題材の課題設定について比較 していく。教科書にある題材の作例としては「かみざ ら コロコロ」というカテゴリーと「かみざら ゆら りん」というものがあり,「コロコロ」と「ゆらりん」 を明確に分けているように見える。教科書と対応させ るとA組は「かみざら コロコロ」に意識した題材に なっている一方,B組は「コロコロ」と「ゆらりん」 を融合した題材のように思われ,題材そのものの解釈 にも差があったようである。  表5に示す通り,A組は動きから飾りを考えること を伝えつつも,「形は決まっているので,決まった形 のベースにどんな飾りを付けていくかを考える」とい うことを課題として提示している。そのため教科書の 作例に触れる際,作品一つひとつを見てどのような具 体的なモチーフの飾りを付けているかに着目させてお り,動くとどうなるかという点には触れずに説明をし ている。 表5 課題設定場面における教師と児童の発話(A組) 教師の行動・発話 児童の行動・発話 これを作るんだけれども,これ さー,普通の今までの工作と違っ てさぁ動くよね。 うん だから動きをね,今日のめあてを これから書くんだけれど,動きの 面白さがあるよね。だから動きか ら作りたいことを考えて,楽しく 作ってほしいと思います。【動き からつくりたいことをかんがえよ う。】(板書)はい,じゃあ,めあて を読んでください。どうぞ。 動きからつくりたいこと をかんがえよう 形はみんな決まってるんだけど, 作りたいことって飾り付けの仕方 だね。だからぜひね,途中でも転 がるかなぁとか試してみる,試し てみてほしいと思います。うしろ いっぱいスペース空いてるよね。 だからこの形ってどういう風に見 えるのかなあって思ったら,途中 でもいいからコロコロって転がし てみてください。あいているとこ ろでね。そうすると動き方がわか ると思います。 楽しく作ろう じゃあね,今日のね,教科書の所 の緑のところあるよね。こんなと ころをめあてに似ているんだけ ど,意識して作ろうって言う所, みんなでよみたいと思います。1 番目ね,どうぞ。 もうすでに楽しいよね。その気持 ちでやりましょう。はいじゃあ2 つめどうぞ。 動きから作りたいものを 考えよう 今なんかどっかにあったね。これ どこに書いてあった? あれ(黒板を指差す) そうそうそうそう,このめあてで す。2つ目は特に今日は星印で ね,動き,まわるよって言うとこ ろを意識して作ってほしいと思い ます。はいじゃ3つめ手のマーク 読みましょう。どうぞ。 動き方や飾りを工夫しよ う そうだね。動き方っていうのは ちょっと他にゆらゆらするってい うのもあるんだけど,みんなは ね,飾りを工夫してほしいと思い ます。はいじゃあ最後ハートマー クどうぞ。 動きや飾りの面白さを遊 びながら感じよう 遊びながらっていうのがあったよ ね。だからね,途中でお試しをし たり,後ちょっと今日の予定書い たんですけど,最後ね,多分今日 2時間で飾り付け終わらないと思 うんだけれども,今日のところで ね,いちど片付け終わった後,転 がしてみようって言うんでね,今 日の時点のものを転がして,ね, 最後みたいなと思います。だから 遊んで,見てみてね,あーこんな お友達のいいなとか,ここもう ちょっとこうしたいなぁとかね, そういうのもぜひ感じてみてね, それを形に表してね,楽しく作れ たらいいなと思います。はいじゃ あね,えーと教科書の作品ちょっ と見てみると,花うさぎコロコロ 車っていうの指差してみて。何が これ花うさぎなんだと思う? うさぎの うさぎの?お顔があるね。お顔の 周りにどんなものがある? お花折り紙の花 うん,花。先生もね,ここにいっ ぱいね,切ってみて貼ってみたり とか,後こっちはねーこう水玉模 様みたいに,あとはこう切り絵で ね,真ん中にのりをに塗ってやっ たんだけど,やっぱその模様があ るときれいに見えるかなぁと思っ て,先生も作ってみました。だ からそういうのもオススメです。 じゃぁその下はさぁ,ちょっと形 は違うんだけど何に見える? 車 車みたい?なんか細長いね,真ん中 にあるのがね,四角い箱があるけど 模様 模様かね?模様があるね。じゃあ お花いっぱいっていうの指差して みて。お花いっぱい。これは何が くっついてる? 折り紙

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折り紙で折った何がある? 花 うん。お花もあるし,あとは? 動物 あ,動物あるね。折り紙得意な人 はさあ,そういうの折ってもいい よね。 あと太陽 あ,太陽もあるね。 あと人 人もいる?ああ,じゃあ自分が 乗ってもおもしろそうだね。後は さぁ,ハートとかもあるんじゃな い?なんでもオッケーだね。何か 自分でテーマとか決めると あ,紙ヒコーキもある お話みたいになってね,紙ヒコー キもあった?みんなが得意なもの を貼り付けてもいいよね。  一方,表6で見られるとおり,B組は「ころころし て,ゆらりんするものになるように考える」という抽 象的なことを課題に設定している。形については,紙 コップと紙皿をつなげて車輪のようにするという基本 的な点に触れているが,オリジナルのコロコロゆらり んを作ってほしいと述べ,全員が同じ形である必要は ないということを示している。そのため教科書に載っ ている作例には触れず,書かれている題材のめあてを 確認するだけに留まった。また3/4時間目に再び教 科書を確認し,作例を一つひとつ見ていくが,その際 の視点は「どんなモチーフの飾りつけがされている か」ではなく,「転がしたときにどこがゆらりんする か」ということであった。 表6 課題設定場面における教師と児童の発話(B組) 教師の行動・発話 児童の行動・発話 じゃあ読んでみます,42ページ。 コロコロゆらりん コロコロゆらりん コロコロゆらゆら楽しく作ろう コロコロゆらゆら楽しく 作ろう どんな飾りをつけようかな どんな飾りをつけようか な 今日はこれを作ります。皆さんに まだ配らないけど,一人に紙皿2 枚を配ります。これがさっきFく んが言ってくれたけど,くるくる, タイヤみたいな部分になるので 紙コップでこういうふう に こ の 紙 皿 だ け だ と 回 ら な い の で,紙皿と紙皿の間に紙コップを (くっつけて示す) 車だったら機械を付けて る タイヤとタイヤをつなげる部分を 作ります。 そして大事なことは,これでコロ コロはできるんだけど,大事なの はこのゆらりんです。 コロコロ転がって,ゆらりんにす るような飾りを,今日,みんなに 楽しく作ろう 考えて作ってもらいたいと思いま す。 緑のところ見てください。めあて が4つあります。楽しくつくろう。 せーの。 はい図工好きな人? (手を挙げる) 図工算数好き はい,そうだね。じゃあみんなこ のめあては大丈夫だね。はい次。 二つ目,「動きから作りたいもの を考えよう」せーの。 動きから作りたいものを 考えよう 動きってどんな動き?今回は? コロコロ ゆらりん コロコロとゆらりんのゆらゆらの 部分。どんなのかなって頭の中で イメージしてね。手のマーク。「動 き方や飾りを工夫しよう」せーの。 動き方や飾りを工夫しよ う ここ教科書載ってるけど,あーお もしろいな,真似しよう,じゃな くって,自分だけのオリジナルの ころころゆらりんを作ってもらい たいと思います。みんなが頭の中 でどんどんイメージして自分だけ のものを作りましょう。 ハートマーク「動きや飾りの面白 さを遊びながら感じよう」せーの。 動きや飾りの面白さを遊 びながら感じよう 実際に今日も途中でも転がしてみ ます。こまもみんな色塗りしたよ ね。回してない時と回した時への 見え方が違うのに気づいた人? 数名手をあげる こまも動かしてないで見るのとく るくるくるって回してみるので絵 が違うのに気づいた人? 半分ぐらい手をあげる 転がすと違う風に見えるでしょ。 だから今日も,こうやって飾るも のじゃなくて,転がしてどんな風 に見えるのかなっていうのが今日 の一番大事な部分。 こうやって置いとくものじゃなく て,転がして綺麗だねとか面白い ねってものなので,今日は皆にそ こをよく考えてもらいたいと思い ます。 うなずきながら話を聞く  このように,設定課題や課題の着目点に対する教師の 言動によって児童の思考や活動の方向性が変わり,児童 のつまずきの内容に影響をあたえる可能性が高いと感じ た。題材自体が持つ価値や課題は何か,児童に意識させ る課題が何なのか,十分な教材研究を行うことや,題材 の価値まで教員が検討しておく必要があると考える。 3.3 参考作品に関する分析  各学級で提示した参考作品(図1)はA組とB組の 教員が製作したものであり,視覚的な情報としては同 一である。しかし提示する目的によって出すタイミ

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ングや説明の内容,着眼点などが各学級で異なった。 その差異が児童の活動や意欲にどれほど影響している か,学級ごとに明確に比較することは困難である。  A組は,しくみや動きのある工作が初めてという児 童の実態に合わせ,実際に転がす様子を提示すること で,児童が完成作品に求められるものをイメージしや すくするよう意図し,児童の意欲を高めるために授業 の導入段階で提示した。表7に示す通り参考作品を見 た後,児童は製作活動に入る前から「うわあ」「なん か楽しい」という,好奇心に満ち溢れた肯定的な発言 や表情を見せており,効果的に働いたと考えられる。 しかし作品を見せながら行った教師の説明には,どう いったモチーフを貼り付けたか,それはどのようにつ くるか,という内容に踏み込んだものが多く,児童か らも設定課題である「動きによるおもしろさ」に着目 した発話がみられなかった点から,転がることで生ま れる魅力を創造する作品としてではなく,作品を転が していいことや転がる作品をつくれることへの魅力を 味わっていたように考えられる。 表7 参考作品提示場面の教師と児童の発話(A組) 教師の行動・発話 児童の行動・発話 先生も使って作ってみました。 じゃんじゃじゃーん。(作品を提 示) えー おー わー すごい ね,これね。 かっこいい かわいい 最強にかっこいい ぜひね,このさぁ,お友達もどう してる?自分が作ったのをどうい うふうにしてる? 転がしてる 転がしてるよね。だからみんな作っ たものをぜひね,転がして遊ぶこ とをしたいなーと思ってます。 いえーい ちょっとさぁ,どんな風に転がる かさー,ちょっとうしろで試した いんだけど,みんなちょっとここ ら辺に集まってくれる?しゃがん で。いくよ。 どうですかね うわあ,すごい そっちにいくからね。 じゃあレースして,レー ス よういどーん。(まわす) うわあ 止まってるのとさぁ転がしてみる とどう?形が,動きが? 違う 形がくるくると(まわす) うおお ね,こんな風に飾り付けすると, これね,真っ白のね,最初は紙コッ プと,これ紙コップね,あとこれ わかる?お皿 紙皿 紙のお皿,切ってみたりしてね, まわるとどうなるんだろう(まわ す) うわー きれい きれい ね,きれいに見えるね。くるくるー (まわす) あー こんなふうに飾るの作って,形は 教科書にいろんな形があるんだけ ど,みんなはこの形で,飾るもの をみんな工夫して作ってもらいた いんですけど。 はーい うわあ 何か楽しい  一方のB組は教科書の写真情報のみでベースの製作 を行い,参考作品は飾りつけに入る直前に短時間で提 示した。ベースをつくる前に提示すると,飾りつけで 加えられた色や形の魅力によってベース自体の動きの おもしろさに着目させられなくなってしまうという教 師の思いがあったからであろう。提示するタイミング を児童の活動に合わせたことにより,自分自身が試行 錯誤して組み立てたベースに,これからどのような飾 りつけをしていくか考えるきっかけとなっていた。児 童も作品を見て折り紙で作れる「ばら」や「かぶと」 のように具体的なモチーフに注目し,どんなものをつ くるか・つくれそうかを思考していた。しかし,今回 は参考作品自体が動きに注目したおもしろいものとい うより置いておいて美しいものという意識でつくられ たものであると教師自身が感じたため,表8で見られ るように,児童の思考を変えるために設定課題を念押 しして示していた。 表8 参考作品提示場面の教師と児童の発話(B組) 教師の行動・発話 児童の行動・発話 こんな風に(作品を提示しながら) 紙コップを,紙コップじゃないや, 紙皿を切っちゃってもね いい? それだれがやったん? C組のD先生がつくった。 すごい これまわすとこうなります。(ま わす) すごいおお 見えなかった 一瞬早くなった 図1 提示した参考作品

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これはこんな風にここに折り紙 くっつけたり それは誰がつくったの? これはE先生かな?こういう風に お花紙を貼ったりとか ばらとかつくれそう そういえばカブトつくれ る つるなら作れる いいですか,大事なことはここね。 コロコロみんな今作りました。転 がした時にゆらりゆらゆらできる ようなものを考えて作ってくださ い。 はい もうすぐチャイムがなっちゃうの で,2時間目から飾り付けをした いと思います。どんなものがいい のかみんなよく考えて,油性ペン みんな持ってると思うので,マ ジックで描いてもいいです。自分 だけのコロコロゆらりんを作りま しょう。 はーい 3.4 教師の発話に関する分析  大西忠治によると,教師の発話(動作)は,発問, 指示,説明,そして助言(確認,促し,励ましなど) の4つに分類される5)。今回は各学級4時間分の発話 を4つに分類し,大枠の展開のどの段階においてこれ らを使い分けているかについて分類し,時系列でまと めた(紙面の関係から注記後に図4~図7として掲載 する)。そして分類をもとに,児童の思考に大きな影 響を与える発話,児童の「つまずく」場面やその支援 になる発話について分析するとともに,各学級におけ る発話のタイミング,回数や内容による児童の思考や 活動の差異について比較していく。  児童の思考に大きな影響を与える発話について代表 的な部分は,先に述べた3.2課題設定,3.3参考 作品に説明部分の発話も大きく影響を与えているだ ろう。さらに3.1で述べた展開における1/4時間目 の「題材名にある言葉のイメージを全員で共有(広 げる)」について教師の言動と児童の言動を追って見 ていくと,A組担任の教師の発話では,ベースの作成 を短時間で理解させ,飾りつけに時間をかけたいとい う,教師の題材観や児童の「つまずき」の予測が表れ ている(表9)。そのため,児童自身が形自体から創 造していく余地が狭くなり,飾りつけの作業になる可 能性があると感じられた。  一方,B組は題材名をもとに具体的なモチーフから 抽象的な動きや言葉まで,さまざまなイメージを思い 浮かべ,のびのびと想像を広げていた(表10)。この ように,イメージを拡散的に広げた後,作品に表す場 面ではそのイメージから自分自身が取り入れるものを 選択し,アイデアを収束させて表現していくことが, 図画工作科での活動において重要なこと6)であり, 制限などで狭められた範囲の中で行う製作よりも,自 由に広げた中からまとめていく方が,児童の意欲や思 考は高まるのではないかと考えられる。 表9 「コロコロゆらりん」のイメージ(A組) 教師の行動・発話 児童の行動・発話 教科書42ページ,今日やるのをよ んでみよう。 ころころゆらりん ちっちゃい字も読んでみよう。 ころころゆらゆらたのし くつくろう。どんなかざ りをつけようかな。 教科書にゆらゆらする,ね,どう してころころっていう名前がつい てると思う? ころがるものだから。 ころがるんね,そうだよね,転が るってことはさぁ,形はどういう 形してる? 丸い 丸いよね。 あの何か形が薄い 先生も使って作ってみました。 じゃんじゃじゃーん。(作品を提 示) えー おー わー すごい 表10 「コロコロゆらりん」のイメージ(B組) 教師の行動・発話 児童の行動・発話 ころころってどういう感じ? (まわるしぐさをしなが ら)こういう感じ コロコロ 転がる でんぐり返し だるまさんがころんだ それ,まわってる?あとはこう, くるくるくるーって 回る ヘリコプター ヘリコプター? 上のところがくるくるっ て ブーメラン こま こまね!いまみんながんばってる もんね。 (まわるものをさがして 机の上でころがす。音が なっている) はい,手悪さ禁止。じゃあ今度ゆ らりんのイメージ。 波 波 ゆらゆら揺れる ゆれる 地震 たしかに こうやってゆらゆらする

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じゃあみんな動きで表してみて。 ゆらりーんって (手を伸ばしてゆらゆらする様子) 頭ぐらぐらする こんな感じ,シーソーみ たいな シーソーみたいな感じ 赤ちゃんが乗ってるこう いう揺れるやつ ブランコ はい,ありがとう。  また製作段階(飾りつけ・試し)における教師の発 話に着目していくと,その内容も各学級で大きく異 なっている。A組では表11で示す通り,机間支援によ り児童一人ひとりへ助言を行い,作品のよさや工夫 に触れるとともに,「もっとこうしたらいいのでは?」 という教師の感覚による明確なアドバイスを行う様子 が見られる。一方B組では机間支援を行わず,児童か ら話しかけられたことに対してのみ反応を返すような 様子である(表12)。 表11 製作段階における教師と児童の発話(A組) 教師の行動・発話 児童の行動・発話 (机間支援)ピンクになったね。上 手上手。 (会話をするというよりも教師の発言を聞きなが ら制作を進める様子) いいじゃんGくん。 すごいね,きれいになったね。裏 側もやってるんだ。さすがHちゃ ん,細かいところまで。 Iちゃんは?お花がいっぱい。毛 糸も売り切れちゃうかね。 ここ面白いね,(紙皿と紙皿を毛 糸でつなぎ,鼓のような見た目) 楽器になりそうだね。 そうだね。この前作ってたね。か わいいじゃん。あ,お洋服だ。す ごい,こういう風に作ったんだ。 よく考えたね。こっち足?しっ ぽ?しっぽを描いたらどうかね そうだね。 ねえいいよね。 糸かな?それとも描くと か? 糸もいいかもね。 動くしね。 そうだね。糸だと動くね。 じ ゃ あ レ イ ン ボ ー に し ちゃおう レインボーのあるかな,まだ。 ( 材 料 コ ー ナ ー へ 行 く ) あった! ここ切っちゃっても大丈夫。いい ね,うまくいきそうだね。 先生見て!○○描いた! おーいいじゃん。いいねいいね。 色つけてほしいな。バックになっ てるんだっけ?これ回るとどうな るんかな。 先 生 こ ん な 感 じ か な? (しっぽをつけようとし ている女子が毛糸を見せ にくる) いいんじゃない (毛糸を見せながら何かを 話しているが聞き取れな い)どこにつけようかな Jちゃん色んな色のリボンだ。リ ボンがいっぱい。 すごいね,どんどんカラフルに なっていくね。 (毛糸をみせに行く) あ,いいじゃん。肉球も描いたら。 猫だから。肉球。絵で描いたらい いじゃん? (肉球を理解していない 様子)じゃあこれ(毛糸) つけよう Kくんどう?音した? (材料コーナーで紙飛行機 を持って考えている男子) Lくんもさあ,Kくんもそうなん だけど,基地を作って(作品を見 せながら) ああ先生,下見て(教師 が作品を持ち上げた時に 固定していない下側の紙 皿がベロンとなった) (紙ヒコーキを)入れる場所作った ら?せっかくかっこいいからさ。 (話を聞いて席に戻る) 表12 製作段階における教師と児童の発話(B組) 教師の行動・発話 児童の行動・発話 セロハンテープもつかっていいか らね。 (2色の花紙を重ねてリボン状にしている男子)先 生,裏から見るのとちが う色。これをどうするか。 (前に座ったまま様子を見る) 先生みて,かみ切りやさ ん (前に座ったまま様子を見る) (大きな声で教師に話し かけたので周囲の児童も 様子を見る) はさみとのりもどんどん使って お花紙も折り紙も切っていいんだ よ。自分のやりたいように。 折ってもいいん? 折ってもいいし切ってもいいよ。 (それぞれしゃべりなが ら製作している) 先生紙テープが(始まり がわからず教師のもとへ 持っていく) (テープの始まりを出して返す) (何かききに教師のもと へいく女子。聞き取れな い→ボンドを持って教師 のもとへ。ふたがあかな い?) (蓋をあけて返す) 先生,見て,青と緑混ざっ た色(ベースに貼った花 紙を見せながら) 本当だー 先生,もう1こお花紙く ださい (うなずく) え,ペン使っていいん? (周囲の児童が使ってい るのを見て使い出す) (ときどき時計を見ながら見守る)(それぞれしゃべりなが ら製作)  表11にあるA組の発話は約4分のもの(いくつかの 発話は省略して抜粋)であり,教師がいかに細かく助

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言を行なっているかがわかる。また教師の助言をもと に製作に取り組む児童の様子が見られるが,児童自身 は教師の助言を「正解」として捉えてしまっているの ではないかと考える。教師からの選択肢を自分なりに 解釈し,納得解として取り入れているようにも見える が,言われたから取り入れているのであれば児童自身 は思考しているということはできず,教師が児童の思 考の活動を奪ってしまっていると言っても過言ではな いだろう。  表12にあるB組の発話は7分程度で,全体への指示 以外は児童が教師に話しかけなければ生まれないやり とりである。教師からの発話が少ない分,児童は自ら 思考し発想を広げていくことが可能である一方,自分 の活動に自信が持てず友達の様子を何度も確認しなが ら製作を進める児童の姿も見られた。「自分のやりた いようにやっていい」と言っても,助言が全くないと いうのは児童の意欲や肯定感低下に繋がる可能性が考 えられる。 3.5 児童のつまずきに関する分析  児童のつまずく場面やその支援になる発話について 見ていくと,どちらの学級においても手が止まってし まうほどの大きな「つまずき」は見られなかったが, 小さな「つまずき」はいくつか見られた。具体的には 表13に示す通りである。 表13 授業から読み取れる児童のつまずき場面 A組 B組 発想の つまずき ①なんで回らないん? ②紙皿の向きが逆 ③どこがまんなか? ④洋服,何で作ろうか な ⑤何をつけようかな? ⑥強くなげるとカーブ しちゃう ①どうしよっかな ②おもしろいやつ,つ くっちゃお ③カーブするよ ④(貼る位置)このへん かな,まちがえた 技能の つまずき ❶お花どうやってつく るの? ❷どうやって貼るの? ❸セロテープがきれな い,かたい ❶だれか押さえてて ❷今日で終わらない ❸ボンドのふたがあか ない ❹テープの始まりがわ からない  A組における発想段階のつまずき①②③に関して は,教師の与えた指示や助言などの理想に沿った製作 ができていないことへのジレンマが原因だと考える。 これらは自分自身のアイデアや課題解決への道筋へつ ながるつまずきではないため,本来感じなくても良い つまずきである。④は技能のつまずきとも捉えられる が,おそらく「洋服をつくることは決められたが材料 が決定できない,誰かの後ろ盾があると安心して製作 が進められる」という発想のつまずきとも捉えられ る。結果としてたくさんの材料を試しながら自分の納 得のいくものを仕上げられていたため,誰かの思考に 頼りきりで製作を進めることなく,自分自身で課題解 決を行うことができていたため,必要な「つまずき」 であったと考える。B組の発想段階における「つまず き」①②③④は,カーブすることも肯定的に捉え,ど んなおもしろい動きの作品に仕上げようか思考してい るものである。これは自分自身のアイデアや課題解決 への道筋へつながる「つまずき」であるため,この題 材に取り組む際に感じるべき,必要不可欠な「つまず き」であると考える。④は文面では教師の指示通り にならないジレンマのつまずきに思われるが,この 発話の際の児童の様子から「とりあえず貼って転が してみたけれど,この位置よりも少し変えた方が良 さそう」という様子が感じ取れたため,自己決定の 一種であると捉えた。  そしてそれらの支援としては,A組では一つひとつ のつまずきに対し助言を行い,一緒に解決策を見つけ ていた。児童は自分の困っていたことが解決できて嬉 しそうな表情を見せていたが,解決策を見つけるため に思考し,試行錯誤していたのは児童よりも教師側で ある印象を受けた。また教師の助言も選択肢を与える のではなく一つに絞って提示されるため,児童はその 方法が最善策だと感じて作品に取り入れているのでは ないかと疑問を持った。児童の「つまずき」を解消す るための働きかけは児童の自己実現へ導く有効な手立 てであるが,働きかけの質や量によっては,児童の思 考を止めてしまう可能性を孕んでいる。ひっかかりに なるようなヒントを助言として与え,児童自身が解決 策を見つけ出していけるようにすることが望まれる。 このように児童が発想の段階で「つまずき」を感じる 場面は,教師が与えた課題の本質によって変化するの ではないだろうか。  また技能におけるつまずきは,A組で❶のような具 体的なモチーフの作り方に関するものがあった以外

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は,両クラス共に接着の方法,セロハンテープの切り 方のコツなど,経験のなさや手指の巧緻性などの発達 段階に起因するものがほとんどであった。これらのつ まずきに対し,教師は,一緒に製作しながら説明をし たり,ものを預かって代わりに切る・開けるという支 援をしたりしていた。これも本来なら感じることのな いつまずきだが,6~7歳の児童にとって大きな壁で あることに違いはないだろう。 3.6 教師の発話についての分析  最後に各学級における発話のタイミング,回数や内 容による児童の思考や活動の差異について述べてい く。  A組とB組における教師の発話を比較した際,各学 級に共通しているのは,導入段階での発話の流れであ る。どちらの教師も発問→説明→指示という流れで児 童の思考を引き出しながら授業を展開している。しか しその他の点では,タイミング,回数や内容の全てが 異なる。  A組の教師は題材全体を一つの大きな流れとして捉 え,1/4時間目の前半に発問→説明→指示の流れで 課題設定や材料の説明等を行うと,その後は机間支援 での個別の発話(助言)で児童の活動に働きかけてい る。B組は導入の段階で発問→説明→指示の小さな流 れを繰り返し,スモールステップで一つずつ自己解決 しながら授業が進んでいく。1/4時間目では,課題 設定,ベース①(紙コップの接着),ベース②(紙皿 の接着),飾りつけの4つの場面で発問→説明→指示 の小さな流れを設定している。大きな流れを掴み見通 しを持って活動を行うことも重要だが,小さい流れの 中で自己解決していく力も必要であると考える。  また教師の発話に関して大きく異なる点は,製作中 の教師の発話である。A組は導入段階で製作における 指示を出してからは,全体への発話が減少し,一人ひ とりに助言をしながらの机間支援を行っていた。全体 への発話は活動の切り替えに関わる指示が多く,個別 での助言は先に述べたように教師の思考を児童へ直接 伝える手立てとなり,活動に大きく影響を与えるもの であった。  B組は製作における指示を出してから発話や動作が 大幅に減り,ほとんどの時間を黒板の前で椅子に座り ながら全体を見守る様子であった。4時間の題材の 間,机間支援のために席を立った回数は0回,製作中 の児童個人に対し自発的に声をかけたのも3回程度で あり,全ておしゃべりが多い児童の名前を呼ぶという 注意のための発話であった。児童からの質問や新たな 発見・作品の進度の報告に対しては反応をするが,う なずくことで児童の思いを受け入れたことや,「自分 でやりたいようにやっていい」という基本姿勢が児童 に伝わると,再び発話も動作もなくなるため,児童は 自分自身で解決するか友達に相談して決めていた。具 体的な内容については前述の通りであり,また製作中 の全体への発話はA組同様,活動の切り替えに関わる 指示や道具の使い方の指示が主であった。 3.7 成果物に関する分析  以上の授業を行った結果,形として表れた成果物に ついても分析していく。今回の授業における成果物 は,作品と児童が振り返りを行ったワークシートの2 点である。どちらについても各学級内で多く見られた 傾向のものをいくつか取り挙げる。  A組は,折り紙や花紙でつくった花,ねこ,北風小 僧,バレリーナ,リボンなど具体的なモチーフが貼り 付けられているものが多い(図2上段)。転がした時 に意識されるのはモチーフの色や形で,教師や児童の 感想では「かわいい」,「きれい」,「カラフル」などの 言葉が目立った(図3上段)。  B組は,抽象的なものが多く,細長く切った花紙や 紙テープを多くの児童が使っている(図2下段)。転 がした時に意識されるのは,貼り付けられたものの動 きで,ワークシートで「ふわふわ」,「ひらひら」,「ゆ らゆら」など擬音語が多く使われている(図3下段)。  ワークシートによる振り返りにおいて満足度の理由 として挙げたのは,互いの作品を見合う時間と同様 で,A組は具体的なモチーフが「かわいい」,「きれ い」,「カラフル」,「上手に,できた・作れたから」と いう文章を書いている児童がほとんどであった。B組 は「ふわふわ」,「ひらひら」,「ゆらゆら」など擬音語 や,その動きから連想したモチーフである「おそうじ ロボット」,「くらげ」などを挙げ,「それらを実現す る過程をがんばったから」という文章でまとめる児童 が多かった。成果物は,児童が捉えた課題や意識が何 に向いていたかを顕著に映し出した。

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4 考察及び結論  今回の参与観察では,同題材においてA組・B組を 比較すると,どのような差が見えてくるかを検証し た。このことによって教師の発話が児童に与える影 響の大きさを読み取ることができた。児童に考える きっかけを与える発問,授業の大枠の流れを形成する 指示,課題の内容や手順等を伝える説明,一人ひとり の表現に寄り添い認めるための助言など,発話といっ てもさまざまな種類に分類することができる。教師は それら4種類の発話を発問→説明→指示というように 児童の思考に沿って使い分けながら授業を展開してお り,大きな流れを児童に捉えさせて見通しを持たせる ことも重要だが,その中にスモールステップで自己解 決を繰り返しながら活動を進めさせることも重要であ ると考える。題材との出会い,課題設定,作例紹介, そして製作中における教師の発話は,児童の思考や 活動に直結していることも読み取れた。中でも製作段 階(飾りつけ・試し)における発話は,教師自身の理 想や思考を児童へストレートに伝える手立てとなる ため,児童のつまずきの内容に大きく影響を与えてい る。「教師から助言・指摘されたから取り入れた」と いう工夫は,児童が主体的に思考していること,つま り自ら課題を立て(つまずき),解決策を模索する機 会を奪いかねない。  また活動中にはあらゆる場面で児童の「つまずき」 が見受けられる。児童が「つまずき」を感じる場面 は,教師が与えた課題の本質によって変化すると考え るが,感じるべき「つまずき」と,感じなくても良い つまずきがあり,授業を行う際には,自分自身のアイ デアや課題解決への道筋へつながる,感じるべき「つ まずき」を児童に持たせたいと考える。このように活 動中に見られる児童の「つまずき」に対し,解消する ための発話や支援などのアプローチを行うことは児童 の自己実現へ導く有効な手立てであるが,その質や量 によっては児童の思考を止めてしまう可能性も大いに ある。よって教師には,児童の実態に応じてひっかか りになるようなヒントを助言として与え,児童自身が 解決策を見つけ出していけるようにする嗅覚や知識が 必要とされる。逆に,製作中は教師から児童を誘導す る発話はせず,児童が自分の思うままに活動したり, 友達に相談しながら進めたりすることができる環境を 作ることで授業を進めていく方法もあろう。しかし, 発話も動作もなくなるため,児童が不安を感じたり, 意欲や肯定感を低下させてしまったりすることも考え られる。このことは図画工作科の授業時間だけでな く,日頃の他教科の学習指導や学級運営,子どもとの 人間関係構築なども含め,指導の在り方に関わってく る事柄であろう。 5 終わりに  今回の参与観察により,教師の発話の量に驚愕する とともに,それらによって授業を形成していることを 改めて実感した。そしてなにより教師は自身の発話の 先に子どもの視点や思考があることを再確認していか なければならないと感じた。  今回は教師の発話によって児童の活動や行動にどの ような変化が現れたか,発話の種類や方法によってど のような差が生まれたのかを分析した。A組では題材 図3 ワークシート(上段A組,下段B組) 図2 児童作品(上段A組,下段B組)

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との出会い,課題設定,作例紹介,製作中の4場面に おいて教師の発話が大きく影響を与えていることが読 み取れた。一方B組は,題材との出会い,課題設定, 作例紹介についてはA組同様,教師の発話が児童に影 響を与えているが,製作中については「発話しない」 というアプローチだったため,児童の思考の変化は児 童同士のやりとりから生まれるのではないかと考えら れる。そこで今後は児童同士の会話や自発的な鑑賞場 面に着目していく必要がある。また今回は学級全体を 見ての分析であったが,児童の思考がどのように変化 したのかを具体的に見取ることで新たな見解が生まれ ると考えるため,対象児を設定した上での参与観察に よる調査分析を視野に入れ,今後の研究へとつなげた い。 注および参考文献等 1)貞永瞳,齋江貴志,2020,「図画工作科における児童の「つ まずき」について ―児童へのアンケート調査から―」, 群馬大学教育実践研究,第37号,群馬大学教育学部附属教 育臨床総合センター,PP.121-130 2)文部科学省,2017,『小学校学習指導要領(平成29年告示) 解説 図画工作科編』,日本文教出版株式会社,P.7 3)前掲書1),PP.125-169 4)日本児童美術研究会 水島尚喜ほか,2014,『ずがこうさ く1・2上 たのしいな おもしろいな』,日本文教出版 株式会社 5) 大 西 忠 治,1993,『 発 問 上 達 法  ― 授 業 つ く り 上 達 法 PART2―』,シリーズ教育技術セミナー2,民衆社 6)茂木一司「創造性の基本」,2010,『美術科教育の基礎基 本』,建帛社,P.183 (さだなが ひとみ・さいえ たかし)

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図7 授業(4/4)における教師と児童の発話 図6 授業(3/4)における教師と児童の発話

図5 授業(2/4)における教師と児童の発話 図4 授業(1/4)における教師と児童の発話

参照

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