中等教育改革史における現代テクノロジー教育概念の諸相
Various Phases of Modern Technology Education Concept in the History of Secondary Education Reform 林 丈 晴*
上 里 正 男**
東 英 道*** HAYASHI Takeharu UESATO Masao AZUMA Hidemichi
要約:中等教育における現代テクノロジー教育概念には、テクノロジーの新たな現代 的概念と将来的な科学技術教育とをどのように関連させるかという問題がある。この ため本研究では、①現代テクノロジー教育に関係する経済政策による背景、②教育政 策による背景、③高校の専門教育としての理数科、④工業教育、⑤中学校技術科、⑥ STEAM教育のそれぞれにおいて、中等教育における現代テクノロジーの諸相の問題構 造を明らかにした。 キーワード:テクノロジー教育、中等教育、科学技術教育、STEAM教育
1. はじめに
現在、日本で模索されている中等教育における現代テクノロジー教育概念には、テクノロジーの 新たな現代的概念と将来的な科学技術教育とをどのように関連させるかという問題があると考えら れる。本研究では、この問題が、現代テクノロジー教育に関係する経済政策による背景、教育政策 による背景、高校の専門教育としての理数科、工業教育、中学校技術科およびSTEAM教育のそれぞ れの諸相において、どのように構造化されているかを明らかにする。 具体的に、経済政策による背景としては日本政府によるSociety5.0(未来投資戦略)があり、教育 政策による背景としてはSociety5.0に基づく日本政府による「教育再生実行会議」の提言がある。2. 「教育再生実行会議」における「技術の進展に応じた教育の革新、
新時代に対応した高等学校改革(第十一次提言)
(令和元年5月
17 日)
」
(1)の背景とその教育内容
2. 1 背景 本提言(以後、単に「第十一次提言」と記す。)には、次の背景があった。 ① 「未来投資戦略 2017―Society5.0の実現に向けた改革―平成 29 年6月9日閣議決定 第1ポイン ト」の抜粋(2) ここでは、日本の成長戦略として、近年急激に起きている第4次産業革命(IoT、ビッグデータ、 人工知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミー等)のイノベーションを、あらゆる産業や社会 *科学文化教育講座 **山梨大学名誉教授 ***東京都立多摩科学技術高等学校 この長期停滞を打破し、中長期的な成長を実現していく鍵は、近年急激に起きている第4次産業革命(IoT、ビッグデータ、人工 知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミー等)のイノベーションを、あらゆる産業や社会生活に取り入れることにより、様々 な社会課題を解決する「Society5.0(①狩猟社会、②農耕社会、③工業社会、④情報社会に続く、人類史上5番目の新しい社会。新 しい価値やサービスが次々と創出され、社会の主体たる人々に豊かさをもたらしていく。)」を実現することにある。生活に取り入れることにより、様々な社会課題を解決する「Society5.0」の実現を挙げている。「科学 技術イノベーション会議」においても、成長戦略の具体化として、AI(人工知能)やIoT(ネットワー ク技術)、ビッグデータ解析技術などに基づくSociety5.0が前面に打ち出されている(3) 。 ② 「未来投資戦略 2018―「Society5.0」「データ駆動型社会」への変革―平成30年6月15日閣議決定 第1基本的視座と重点施策 2.第4次産業革命技術がもたらす変化/新たな展開:「Society5.0」」 の抜粋(4) ここでは、技術革新によって経済社会のあらゆる場面で大きな可能性とチャンスが生まれること が述べられている。科学技術を駆使した新しい価値創造による「社会変革」を起こせる活力ある産 業力基盤の強化(5) を重視しているといえる。 ③ 「科学技術イノベーション総合戦略 2017―平成 29 年6月2日 第2章未来の産業創造と社会変 革に向けた新たな価値創出の取組 (2)新たな経済社会としての「Society5.0」を実現するプラッ トフォーム」の抜粋(6) (傍線筆者) ここでは、Society5.0の実現のために必要な基盤技術を牽引する人材の育成・確保が不可欠である としている。また、こうした業務に関する能力開発の手法や初等中等教育段階からの人材育成の在 り方等について検討を行うことが重要であるとした。さらにそのために初等中等教育段階からの人 材育成(キャリア教育・職業指導)の重要性が指摘された。 2. 2 教育内容 高校普通科の専門性を高める改革に関係する資料として「第十一次提言 1. 技術の進展に応じた 教育の革新」の抜粋(pp.2-30)を以下に示す(傍線筆者)。 第4次産業革命の新たな技術革新は、人間の能力を飛躍的に拡張する技術(頭脳としてのAI、筋肉としてのロボット、神経とし てのIoT)。豊富なリアルデータを活用して、従来の大量生産・大量消費型のモノ・サービスの提供ではない、個別化された製品や サービスの提供により、様々な社会課題を解決でき、大きな付加価値を生むもの。これにより、これまでは実現困難で遠い将来の 夢と思われていたことが視野に入り、手に届きそうなところまで来ており、経済社会のあらゆる場面で、大きな可能性とチャンス を生む新たな展開、「Society5.0」の実現が期待される。 1. 技術の進展に応じた教育の革新 (中略) (1)Society5.0で求められる力と教育の在り方 (中略) [A]基本的認識 (中略) ⑤ 能力開発・人材育成の推進 他国に先駆けSociety5.0を実現していくには、そのために必要な基盤技術を牽引する人材の育成・確保が不可欠である。特に、必 要な基盤技術を支える横断的な科学技術である数理科学や計算科学技術、データサイエンスの振興や人材育成が重要である。また、 高度化する脅威に対するサイバーセキュリティの確保に資する人材育成も不可欠である。IoTやロボット、AI等の活用により、現在 は人が行っている業務が機械等に置き換わる可能性があることから、人はより付加価値の高い業務や新たに生まれる業務に移行し ていく必要がある。技術の進展が急速であり、現役の社会人も各自の能力や専門性に応じた学び直しも必要となる。 (中略) [B]重きを置くべき課題 (中略) ⑤ 能力開発・人材育成の推進 (中略) また、IoTやAI等の科学技術イノベーションの進展により、産業構造・就業構造や経済社会システムの大きな変化が予想される。 このため、コンセプトづくりや事業プロデュース、クリエイティビティの発揮など、AI等が進展する社会においても人にしかでき ない業務はどのようなものか認識を深めるとともに、こうした業務に関する能力開発の手法や初等中等教育段階からの人材育成の 在り方等について検討を行うことが重要である。さらに、従来の人材育成に留まらず、IoT等を通じた新ビジネスの創出やプロジェ クトマネジメント等を担う人材の育成について、大学・大学院等との連携に関する企業の自発的・積極的対応が期待される。
○Society5.0を迎える中、国及び地方公共団体は、基礎的読解力や数学的思考力などの基盤的学力や、あらゆる学びの基盤となる情 報活用能力の育成を目指す。また、新たな社会を牽引する人材、地域を支える人材の育成を推進する。特に、新学習指導要領にお いて充実されたプログラミングやデータサイエンスに関する教育、統計教育については、全ての児童生徒に基盤的学力を習得させ る、高度専門人材を育成する、との2つの観点から、その着実な実施を図る。その際、データサイエンスやAIを理解する上で必要 となる確率・統計、線形代数等の基盤となる「行列」等の概念や考え方を高等学校段階で確実に学ぶことができるよう、効果的な 指導方法等について検討を進める。 (中略) ○全ての児童生徒に基礎的読解力や数学的思考力などの基盤的学力を育成することが重要であることから、国及び地方公共団体は、 指導方法の改善や教材、ICT環境の整備などの学習支援の充実を図ることにより、語彙の理解、文章の構造的な把握、読解力、計算 力や数学的思考力など基盤的学力の定着を重視した新学習指導要領の確実な習得を図る。 (中略) ○ 国は、幅広い分野で新しい価値を提供できる人材を養成することができるよう、初等中等教育段階においては、STEAM 教育 (Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics 等の各教科での学習を実社会での問題発見・解決にいかしていくための教科 横断的な教育)を推進するため、「総合的な学習の時間」や「総合的な探究の時間」、「理数探究」等における問題発見・解決的な学 習活動の充実を図る。その際、各発達段階において、レポートや論文等の形式で課題を分析し、論理立てて主張をまとめることも 有効である。そのため、国は、カリキュラム・マネジメントの視点を踏まえ、人材活用も含め産学連携や地域連携によるSTEAM教 育の事例の構築や収集、モデルプランの提示や全国展開を行う。また、グローバルな社会課題を題材にした、産学連携STEAM教育 コンテンツのオンライン・ライブラリーを構築する。 (中略) ○ 社会で求められる力や教育における技術利用が急速に変化していくことを見据え、こうした変化に柔軟かつ迅速に対応できるよ う、国は、学習指導要領や学習指導要領解説の一部改訂の実施など、教育課程の不断の見直しを進めていく。また、国は、教科書 の一部訂正制度の積極的な活用等を推進するとともに、中長期的な観点から、情報や工業・商業などの技術革新の進捗が早い分野 の教科・科目に係る高等学校教科書については、上記のような教育課程の不断の見直しに対応した教科書の弾力的見直しなどにつ いて検討する。 (中略) 2.新時代に対応した高等学校改革 (中略) (1)学科の在り方 高等学校の学科は、普通科、専門学科及び総合学科の3つの区分が設けられており、在籍する生徒の数は、それぞれ、239 万人、 71 万人、18 万人(平成 29 年度)となっています。学校視察やヒアリング等を通じ、普通科においては、生徒の能力や興味・関心等 を踏まえた学びの提供という観点で課題がある場合があり、一斉的・画一的な学びは生徒の学習意欲にも悪影響を及ぼすこと、専 門学科においては、社会や産業界の変化に応じた最新の教育を実現するための教育環境に課題があること、総合学科においては、 普通科・専門学科の多様化が進展する中、総合学科としての特色の発揮という観点で課題があること等が明らかになりました。こ うした課題を踏まえ、Society5.0に向けて共通的に求められる力を育み、社会を牽引する人材を育成する観点から、改革を進めるこ とが必要です。 (中略) ○ 現在、生徒の約7割が在籍する普通科について、生徒の意欲と関心を喚起し、能力を最大限引き出すことができるよう、校長の リーダーシップの下、一丸となって教育改革を推進することが重要である。その一つの方策として、国は、普通科の各学校が、教 育理念に基づき選択可能な学習の方向性に基づいた類型の枠組みを示すこととする。また、国は、類型の選択状況や実施状況等の 把握に努めることとする。これらの類型については、Society5.0における人材需要や多様化が進展する高等学校の実情を踏まえ、以 下のようなものが考えられるが、その種類や当該類型に係る必履修科目を含めた履修や指導体制、環境整備等の在り方については、 中央教育審議会等において専門的・実務的に検討する。なお、検討に当たっては、それぞれの建学の精神の下で教育活動を実施し ている私立学校や、中山間地域等において多様な進路希望を有する生徒を受け入れている学校等に係る実態を踏まえた適切な配慮 が必要である。
< 類型の例 > ①予測不可能な社会を生き抜くため自らのキャリアをデザインする力の育成を重視するもの ②グローバルに活躍するリーダーや国内外の課題の解決に向け対応できるリーダーとしての素養の育成を重視するもの ③サイエンスやテクノロジーの分野等において飛躍知を発見するイノベーター等としての素養の育成を重視するもの ④地域課題の解決等を通じて体験と実践を伴った探究的な学びを重視するもの (中略) (6)中高・高大の接続 (中略) 特に、高大接続改革については、これまでも提言してきたように、大学入学者選抜が、高等学校の教育に大きな影響を与えてい るとの指摘もあり、こうした観点も踏まえ、中高・高大の接続の在り方について、改革を進めることが必要です。 ○ 一部の私立大学の文系学部の入学者選抜において、これまで必須とされていなかった数学を必須とする取組も見られる中、大学 は、AIやビッグデータの発達により、様々な分野においてデータサイエンスの重要性が高まっており、文理両方を学ぶ人材の育成 が急務となっていることを踏まえ、学部・学科の特性を踏まえつつ、文系・理系に偏った試験からの脱却を目指し、入学者選抜の 在り方を見直す。国は、入学者選抜改革やアドミッションポリシーを踏まえたカリキュラム改善等、教育の質向上に取り組む大学 の支援の充実を図る。 以上より、Society5.0の実現のために、「基礎的読解力や数学的思考力」、「データサイエンス等も含 めた基盤的な学力や情報活用能力の育成」と「STEAM教育の推進」を目標とし、その「教育の在り 方」としての「普通科を4つの類型に分けることを提言」し、そのうちの一つに「サイエンスやテ クノロジーの分野等において飛躍知を発見するイノベーター等としての素養の育成を重視する」こ とを目標としている。さらに、高等学校の教育に影響を及ぼす大学入試選抜の見直しの検討も視野 に入れている。また、STEAM 教育を Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics 等の各教 科での学習を実社会での問題発見・解決にいかしていくための教科横断的な教育と位置づけている。 STEAM 教育を推進する方策として、「総合的な学習の時間や総合的な探究の時間、理数探究等にお ける問題発見・解決的な学習活動の充実を図る。」と記されている。 2. 3 「教育実行再生会議」における提言のまとめ 経済再生と並ぶ日本国の最重要課題として、教育政策が日本政府によって構想された。それに は、「技術の進展に応じた教育の革新」として、「教育再生実行会議」の提言がある。具体的には、 Society5.0のための「基礎的読解力や数学的思考力」、「データサイエンス等も含めた基盤的な学力や 情報活用能力の育成」と「STEAM教育の推進」を目標とし、その「教育の在り方」としての「普通 科を4つの類型に分けることを提言」し、その中にはテクノロジー教育に関して、「予測不可能な社 会を生き抜くため自らのキャリアをデザインする力の育成を重視する」ことや「サイエンスやテク ノロジーの分野等において飛躍知を発見するイノベーター等としての素養の育成を重視する」こと を目標としている。なお、STEAM 教育を Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics 等の 各教科での学習を実社会での問題発見・解決にいかしていくための教科横断的な教育と位置づけて いる。さらに、これらを踏まえ学習指導要領を改定するとし、高等学校の教育に影響を及ぼす大学 入試選抜の見直しの検討も視野に入れている。
3. 高等学校工業科、高等学校理数科、高等学校科学技術科における
教育目標の比較
高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)(7) の工業科と理数科における「目標」、「指導計画の作成と 内容の取扱い」を示し、「テクノロジー」と「科学技術」の語句の意味付けを明らかにする。そして、 これらの学校の現行のカリキュラム例として小金井工業高校(現多摩科学技術高校)機械科、理数 科の教育課程例として新潟高校理数科のカリキュラムを示す。また、多摩科学技術高等学校「令和 元年度(2019 年度)学校要覧」(8) を参照し、その教育目標、教育課程およびその特色を示す。なお、東京都立学校では、専門高校「工業」は、工業に関する学科(機械系、電気系、化学系、建設系、 工芸系、総合系)、工業に関する学科(デュアルシステム)および科学技術科に分けられている。即 ち、科学技術科は、「工業科」に分類されている。 3. 1 高等学校工業科 3. 1. 1 目標 高等学校学習指導要領「第3章主として専門学科において開設される各教科 第2節工業 第1 款目標」の抜粋(p.326)を以下に示す。 以上より、「職業人としての資質能力を育てる」と記してあり、「完成教育」(9) であることがわかる。 3. 1. 2 高等学校学習指導要領の工業科における指導計画の作成と内容の取扱い 高等学校学習指導要領「第3章主として専門学科において開設される各教科 第2節工業 第3 款各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い」の抜粋(p.416)を以下に示す(傍線筆者)。 以上より、指導計画の特徴として、原則として「工業技術基礎」及び「課題研究」を全ての生徒 に履修させるとなっている点、また、原則として工業科に属する科目に配当する総授業時数の 10 分 の5以上を実験・実習に配当することとなっており実習を重視している点があげられる。 3. 1. 3 高等学校学習指導要領工業科における「科学技術」と「テクノロジー」 高等学校学習指導要領工業科の中で「科学技術」と「テクノロジー」が出てくる箇所を以下に示 す。 ①「第3章主として専門学科において開設される各教科 第2款各科目 第4工業化学 2内容」 の抜粋(pp.387-388)(傍線筆者) 工業の見方・考え方を働かせ、実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通して、ものづくりを通じ、地域や社会の健全で持 続的な発展を担う職業人として必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 (1) 工業の各分野について体系的・系統的に理解するとともに、関連する技術を身に付けるようにする。 (2) 工業に関する課題を発見し、職業人に求められる倫理観を踏まえ合理的かつ創造的に解決する力を養う。 (3) 職業人として必要な豊かな人間性を育み、よりよい社会の構築を目指して自ら学び、工業の発展に主体的かつ協働的に取り組む 態度を養う。 1指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。 (中略) (2) 工業に関する各学科においては、「工業技術基礎」及び「課題研究」を原則として全ての生徒に履修させること。 (3) 工業に関する各学科においては、原則として工業科に属する科目に配当する総授業時数の 10 分の5以上を実験・実習に配当す ること。 (中略) (5) 地域や産業界等との連携・交流を通じた実践的な学習活動や就業体験活動を積極的に取り入れるとともに、社会人講師を積極的 に活用するなどの工夫に努めること。 (中略) 2内容の取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。 (中略) (3) 工業に関する課題の解決に当たっては、職業人に求められる倫理観を踏まえるよう留意して指導すること。 1に示す資質・能力を身に付けることができるよう、次の〔指導項目〕を指導する。 〔指導項目〕(1) 物質と化学ア物質と元素イ物質の変化と量 (2) 気体と水の化学ア気体の性質イ溶液の性質ウ空気を利用した化学工 業エ海水を利用した化学工業 (3) 元素の性質と化学結合ア元素と周期性イ化学結合ウ元素の性質 (4) 物質の変化とエネルギーア酸と 塩基イ酸化と還元ウ化学反応と熱エ反応速度と化学平衡オ原子核エネルギー (5) 石油と化学ア有機化合物イ石油の精製と化学工業 (6) 材料と化学ア工業材料イ機能性材料 (7) 生活と化学工業製品ア食品と生活の化学イバイオテクノロジーの化学ウ物質の安全な取 扱い
ここでは、「テクノロジー」は「バイオテクノロジー」として取り上げている。 ②「第3章主として専門学科において開設される各教科 第2款各科目 第 50 セラミック工業 2 内容」の抜粋(p.401)(傍線筆者) ここでは、「科学技術」は「材料と科学技術」として取り上げている。ここからは、科学技術とは 何を示しているのか明確ではない。 3. 1. 4 小金井工業高校機械科の教育課程 小金井工業高校機械科教育課程表(10) を表1に示す。 表1によると、工業の専門科目が 31 単位と高等学校学習指導要領が求めている最低単位数(25 単 位)を超えている。工業技術基礎や機械実習では、旋盤、フライス盤といった汎用の切削機を用い た加工、溶接や鋳造等を行う。情報技術基礎では、論理回路回路など情報機器のハード的な事項を 中心に学習する。機械工作では、機械材料の主である鉄鋼を中心とした金属のメカニズムとその加 工性、強度との関係を学習する。生産システム技術では、機械を動かすための電気的な知識を中心 に習得する。機械設計では、構造物をモデル化し、その応力・ひずみを求め構造物が壊れるか壊れ 1に示す資質・能力を身に付けることができるよう、次の〔指導項目〕を指導する。 〔指導項目〕(1) セラミック工業の概要 (2) 機能性セラミックスア材料と科学技術イ機械的機能ウ電気的機能エ光学的機能 (3) 陶磁 器ア陶磁器の歴史イ原料と製造工程ウ陶器と磁器 (4) ガラスとほうろうアガラス工業の歴史イ原料と製造工程ウガラスエほうろう (5) 耐火物ア産業と耐火物イ原料と製造工程ウ各種の耐火物 (6) セメントア原料と製造工程イセメントの性質と用途 表1 小金井工業高校機械科教育課程表 教科 科目 単位 学年配当 1 2 3 国語 国 語 総 合 6 3 3 国 語 表 現 Ⅰ 2 2 地理歴史 地 理 A 2 2 世 界 史 A 2 2 公民 現 代 社 会 2 2 政 治 ・ 経 済 2 2 数学 数 学 Ⅰ 3 3 数 学 Ⅱ 3 3 数 学 B 2 2 理科 理 科 総 合 A 2 2 物 理 Ⅰ 3 3 保健体育 体 育 7 2 2 3 保 健 2 1 1 芸術 美 術 Ⅰ 2 2 外国語 オーラル・コミュニケーションⅠ 3 3 英 語 Ⅰ 4 2 2 家庭 家 庭 総 合 4 2 2 奉仕 奉 仕 1 1 機械科 工 業 技 術 基 礎 4 4 情 報 技 術 基 礎 2 2 総 合 的 な 学 習 の 時 間 ( 課 題 研 究 ) 3 3 機 械 実 習 8 4 4 機 械 製 図 7 2 2 3 生 産 シ ス テ ム 技 術 2 2 機 械 工 作 2 2 機 械 設 計 6 3 3 原 動 機 2 2 普通教科計 52 19 18 15 専門教科計 36 11 11 14 ホーム・ルーム 3 1 1 1 計 91 31 30 30 ※平成19年度入学生
ないかを評価し設計する方法を習得する。機械製図では、図面を見て加工する能力、逆に設計した ものを図面化する能力を養う。原動機では、主に機械の動力源である熱機関の原理や効率を学習す る。課題研究では、NCを使った作品製作などの発展的な活動をする。これらによって、機械要素関 連の工場、自動車工場などで、設計者や作業者として即戦力となるよう能力が育成される。この傾 向は、工業科全般に言える。 ここで後に工業高校で学習する機械設計と大学工学部等で学習する材料力学を比較する関係から、 機械設計の学習内容について詳しく述べる。まずは、高等学校学習指導要領の関連する箇所として 「第3章主として専門学科において開設される各教科 第2節工業 第2款各科目 11 機械設計」の 抜粋(pp.340-341)を以下に示す(傍線筆者)。 上に示す通り機械設計の指導項目は多岐にわたるが、ここでは、「(3)材料の強さ」について述べ る。この指導項目は、機械設計をするために非常に重要な内容であることから、多くの工業高校で 重点的に指導が行われる個所である。 機械設計「(3)材料の強さ」では、板や棒の長さ方向に対して引張負荷を与える場合を例に応力 とひずみの概念を学習する。次に、せん断応力とせん断ひずみ、許容応力の考え方、熱応力が負荷 する場合を学習する。これらでは、応力は負荷される荷重を仮想断面積で割ることにより求める ことができ、ひずみは伸びをもとの長さで割れば求めることができる。次いで、はりの学習をす る。はりは棒や板の長さ方向に対して、垂直に荷重を負荷するモデルを指す。このはりに生じる曲 げモーメントとせん断力図を求める。ここで対象とする負荷荷重は比較的単純なものであり、積分 を用いずに数式化できるものを扱う。曲げ応力については、曲げモーメントと断面2次モーメント から求める公式の導出あるが、基本的にはその公式を使用するのみである。なお、断面2次モーメ ントは公式として扱う。たわみは学習するが、たわみを導くことはなく、最大たわみの結果のみが 示されておりこれを公式的に用いる。また、座屈については、その公式が導かれることなく示され るのみで、計算式の活用を中心に扱うこととなっている。このことは高等学校学習指導要領でも明 確に述べられている。この結果、はりの曲げと座屈が本質的に同じ現象であることが理解しにくい。 機械設計は実用的であるが、導出された式や結果が公式として扱われるため、応用範囲が狭く系統 的であるといい難い。このことは他の工業科の専門科目でも同様なことが言える。 3. 1. 5 工業科のまとめ 高等学校学習指導要領に「職業人としての資質能力を育てる」と記してあり、「完成教育」が行わ れることがわかる。その指導計画の作成と内容の取扱いの特徴として、「工業技術基礎」及び「課題 研究」を原則として全ての生徒に履修させるとなっている点、また、原則として工業科に属する科 2内容1に示す資質・能力を身に付けることができるよう、次の〔指導項目〕を指導する。〔指導項目〕 (1) 生産における設計の役割 (2) 機械に働く力ア機械に働く力と運動イエネルギーと仕事及び動力との関係 (3) 材料の強さア機械部分に生じる応力とひずみとの関係イ機械部分の形状 (4) 機械要素と装置ア締結要素イ軸要素ウ伝達装置エ緩衝装置オ管路、構造物、圧力容器 (5) 器具と機械の設計ア器具の設計イ機械の設計 3内容の取扱い (1) 内容を取り扱う際には、次の事項に配慮するものとする。 (中略) (2) 内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。 (中略) ウ〔指導項目〕の (3) のアについては、機械部分に生じる応力とひずみを扱うとともに、機械部分の形状と大きさを決める方法と計 算方法についても扱うこと。また、座屈については、計算式の活用を中心に扱うこと。イについては、はりの断面の形状と寸法の 計算方法を扱うこと。
目に配当する総授業時数の 10 分の5以上を実験・実習に配当することとなっており実習を重視して いる点があげられる。高等学校学習指導要領上では、科学技術は「材料と科学技術」で出てくるの みである。ここからは、「科学技術」とは何を示しているのか明確ではない。「テクノロジー」とい う語句は出てこなかった。 小金井工業高校機械科では、専門科目が 31 単位と高等学校学習指導要領が求めている単位数(25 単位)を超えている。また、カリキュラムから工場などで即戦力となる能力を育成しようとしてい ることが示され、ここからも「完成教育」が行われることがわかる。また工業科の専門科目におい ては、導出された式や結果が公式として扱われるため応用範囲が狭く系統的であるといい難い。 全体を通じてテクノロジー教育との関連はほとんどないと考えられる。 3. 2 高等学校理数科 高等学校学習指導要領において、教科「理数科」は「各学科に共通する各教科」と「主として専 門学科において開設される各教科」のそれぞれに置かれている。「各学科に共通する各教科」には、 「理数探究」および「基礎理数探究」があり、「主として専門学科において開設される各教科」には、 「理数数学特論」、「理数物理」、「理数化学」、「理数生物」および「理数地学」がある。 3. 2. 1 目標 ここでは、「各学科に共通する各教科」における理数科について述べる。高等学校学習指導要領 「第3章主として専門学科において開設される各教科 第 11 節理数 第1款目標」の抜粋(p.264) を以下に示す。 次に、「主として専門学科において開設される各教科」における理数科について述べる。高等学校 学習指導要領「第3章主として専門学科において開設される各教科 第9節理数 第1款目標」の 抜粋(p.585)を以下に示す。 以上より、理数科は数学及び理科における基本的な概念や探究するために必要な資質・能力を身 に着けることを目標としているのが特徴である。なお、ここでは「完成教育」か「進学準備教育」 かは明確ではない。 3. 2. 2 高等学校学習指導要領の理数科における指導計画の作成と内容の取扱い 「第2章各学科に共通する各教科 第 11 節理数 第3款各科目にわたる指導計画の作成と内容の取 扱い」の抜粋(pp.266-268.)を以下に示す(傍線筆者)。 様々な事象に関わり、数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方を組み合わせるなどして働かせ、探究の過程を通して、課題 を解決するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 (1) 対象とする事象について探究するために必要な知識及び技能を身に付けるようにする。 (2) 多角的、複合的に事象を捉え、数学や理科などに関する課題を設定して探究し、課題を解決する力を養うとともに創造的な力を 高める。 (3) 様々な事象や課題に向き合い、粘り強く考え行動し、課題の解決や新たな価値の創造に向けて積極的に挑戦しようとする態度、 探究の過程を振り返って評価・改善しようとする態度及び倫理的な態度を養う。 様々な事象に関わり、数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方などを働かせ、数学的活動や観察、実験などを通して、探究 するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 (1) 数学及び理科における基本的な概念、原理・法則などについての系統的な理解を深め、探究するために必要な知識や技能を身に 付けるようにする。 (2) 多角的、複合的に事象を捉え、数学的、科学的に考察し表現する力などを養うとともに創造的な力を高める。 (3) 数学や理科などに関する事象や課題に向き合い、課題の解決や新たな価値の創造に向けて積極的に挑戦しようとする態度を養 う。
以上より、理数科では、観察・実験とその過程での思考が重視されている。また、「理数探求」と 「理数探究基礎」に関する記述が多い。特に「理数探求」は必修となっており、この科目は重要な科 目であると考えられる。【理数編】高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説(11) では、「理数探究」 及び「理数探究基礎」は、現行の数学科における「数学活用」、 理科における「理科課題研究」及び 専門教科「理数」における「課題研究」の内容を踏まえ、発展的に新設されるものであることが記 されている。これらの科目では、様々な事象を数式などを用いて分析する数学的モデルをつくり探 究することや観察、実験などの結果の分析の解釈をして自らの答えを導くことを重視していること が示されている。 次に「第3章主として専門学科において開設される各教科 第2節理数 第3款各科目にわたる 指導計画の作成と内容の取扱い」の抜粋(pp.593-594)を以下に示す(傍線筆者)。 以上より、理数科では数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方を働かせ、数学や理科などに 関する事象や課題に向き合い、探究する学習活動の充実を図ることを重視している。また、「当該科 目やこの章に示す理数科に属する他の科目の履修内容を踏まえ、相互の連携を一層充実させる。」と なっており、第十一次提言が示すSTEAM教育を示唆している。 3. 2. 3 高等学校学習指導要領における「科学技術」と「テクノロジー」 高等学校学習指導要領理数科における「科学技術」と「テクノロジー」の意味づけを明らかにす る。以下は、「第3章主として専門学科において開設される各教科 第2節理数 第3款各科目にわ たる指導計画の作成と内容の取扱い」の抜粋(p.594)である(傍線筆者)。 以上より、「テクノロジー」という語句は出てこない。「科学技術」という語句は出てきているが、 高等学校学習指導要領では、「環境問題や科学技術の進歩」「科学技術が日常生活や社会を豊かにし ている」として出てくるのみである。ここでは、科学技術の意味づけは明確ではない。 1指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。 (中略) (5) 理数に関する学科においては、原則として「理数探究」を全ての生徒に履修させるものとすること。 2内容の取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。 (1) 探究の過程における観察、実験などの内容やその中で生じた疑問、それに対する自らの思考の過程などを記録させること。 (2)「理数探究基礎」の内容のイの ( イ ) 及び「理数探究」の内容のイの ( イ ) の「数学的な手法」を用いる探究の過程に関して、生徒 の学習状況に応じ、様々な事象を数式などを用いて分析する数学的モデルをつくり探究することも行われるよう配慮すること。 (中略) (9) 理数に関する学科においては、「理数探究基礎」及び「理数探究」の指導に当たり、観察、実験などの結果を分析し解釈して自 らの考えを導き出し、それらを表現するなどの学習活動を充実すること。特に、「理数探究」の指導に当たっては、課題の設定や振 り返りの機会を工夫するなどして一層の探究の質の向上を図ること。 1指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。 (1) 単元など内容や時間のまとまりを見通して、その中で育む資質・能力の育成に向けて、生徒の主体的・対話的で深い学びの実現 を図るようにすること。その際、数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方を働かせ、数学や理科などに関する事象や課題に向 き合い、探究する学習活動の充実を図ること。 (中略) (5) 各科目を履修させるに当たっては、当該科目やこの章に示す理数科に属する他の科目の履修内容を踏まえ、相互の連携を一層充 実させるとともに、他教科等の目標や学習の内容の関連に留意し、連携を図ること。 (3) 生命を尊重し、自然環境の保全に寄与する態度の育成を図ること。また、環境問題や科学技術の進歩と人間生活に関わる内容等 については、持続可能な社会をつくることの重要性も踏まえながら、科学的な見地から取り扱うこと。 (7) 科学技術が日常生活や社会を豊かにしていることや安全性の向上に役立っていることなどに触れること。また、数学・理科で学 習することが様々な職業などと関連していることにも触れること。
3. 2. 4 新潟高校理数科 新潟高校理数科教育課程表(平成 31 年度)(12) を表2に示す。 以上より、新学習指導要領における「理数探求」はまだ実施されていない。 3. 2. 5 理数科のまとめ 高等学校学習指導要領では、理数科は数学及び理科における基本的な概念や探究するために必要 な資質・能力を身に着けることを目標としているのが特徴である。また、数学的な見方・考え方や 理科の見方・考え方を働かせ、数学や理科などに関する事象や課題に向き合い、探究する学習活動 の充実を重視している。なお、ここでは「完成教育」が行われるか「進学準備教育」が行われるか は、読み取れない。理数科において重要視される「理数探究」は、数学科における「数学活用」、理 科における「理科課題研究」及び専門教科「理数」における「課題研究」の内容を踏まえ、「理数探 究基礎」と共に発展的に新設された科目である。当科目では、様々な事象を数式などを用いて分析 表2 新潟高校理数科教育課程表 教科 科目 標準単位 学年配当 1 2 3 国語 国 語 総 合 4 5 現 代 文 B 4 2 2 古 典 B 4 3 2 地理歴史 世 界 史 B 4 3 ※ 世 界 史 探 求 B 2 日 本 史 B 4 3 ※ 日 本 史 探 求 B 2 地 理 B 4 3 ※ 地 理 探 求 B 2 公民 現 代 社 会 2 2 保健体育 体 育 7 ~ 8 2 3 3 保 健 2 1 1 芸術 音 楽 Ⅰ 2 2 美 術 Ⅰ 2 2 書 道 Ⅰ 2 2 外国語 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 英 語 Ⅰ 3 4 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 英 語 Ⅱ 4 4 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 英 語 Ⅲ 4 4 英 語 表 現 Ⅰ 2 2 英 語 表 現 Ⅱ 4 2 2 家庭 家 庭 基 礎 2 2 情報 社 会 と 情 報 2 1 1 理数 理 数 数 学 Ⅰ 4 ~ 7 5 理 数 数 学 Ⅱ 8 ~ 15 2 4 4 理 数 数 学 特 論 2 ~ 7 2 3 理 数 物 理 3 ~ 10 2 1 理 数 物 理 探 求 1 5 理 数 化 学 3 ~ 10 3 理 数 化 学 探 求 6 理 数 生 物 3 ~ 10 2 1 理 数 生 物 探 求 1 5 課 題 研 究 1 ~ 6 1 ※ 理 数 特 講 1 総合的な学習(進路探求) 3 1 1 1 ホームルーム活動 3 1 1 1 合計 36 36 35 に囲まれているのは選択科目 科目名に※があるものは学校設定科目 3年地歴科の選択は、世界史探求Bまたは2年次に選択した「B」科目と同じ科目の「探求B」を選択する。 2年と3年の理科の選択は、理数物理探究と理数生物探究のどちらか1科目を選択し、継続履修する。
する数学的モデルをつくり探究することや観察、実験などの結果の分析の解釈をして自らの答えを 導くことを重視している。 なお、高等学校学習指導要領では、「テクノロジー」という語句は出てこない。「科学技術」とい う語句は出てきているが、「科学技術」とは何を示しているのか明確ではない。 3. 3 高等学校科学技術科 3. 3. 1 多摩科学技術高校科学技術科の目標 「令和元年度(2019 年度)学校要覧 ⅴ多摩科学技術高校の教育 2. 科学技術科設置の背景」に 教育目標が記載されている。この部分の抜粋(p.23)を以下に示す。 以上より、「技術者として生涯にわたり専門性を高めていくために必要な意欲、態度や知識を身に 付け技術革新に主体的に対応できる人材を育成するため、大学等に進学し、」と明確に「進学準備教 育」が行われることを明らかにしている。 3. 3. 2 多摩科学技術高校の教育課程 3. 3. 2. 1 専門領域 多摩科学技術高校では、先端技術4領域から、生徒に科学技術への関心を育成しながら、科学技 術者や研究者に必要な基礎知識と態度を身に着けさせる。なお、4つの領域に分かれるのは2年次 以降である。以下に、多摩科学技術高校HP(13) (学校案内 > 科学技術科)より抜粋した4領域の学習 内容を表3示す。 以上より、4つの領域名すべてに「テクノロジー」という語句が入っている。しかし、「テクノロ ジー」が何を指すのか明確ではない。 3. 3. 2. 2 教育課程表 令和元年度(2019 年度)学校要覧に多摩科学技術高校の教育課程表が掲載されている。この部分 の抜粋(pp.27-28)を表4に示す(傍線筆者)。 技術者として生涯にわたり専門性を高めていくために必要な意欲、態度や知識を身に付け技術革新に主体的に対応できる人材を 育成するため、大学等に進学し、継続して学習する事を前提とした新しいタイプの専門高校である。そこでは、①生涯にわたり学 び続けるために必要な意欲・態度を育てるとともに、科学技術に関する知識・技術の基礎・基本を身に付けさせる、②自ら主体的 に問題を解決する能力・態度を育てるとともに、コミュニケーションの能力を高め、国際社会で主体的に生きる力を育成する、③ 人間としての在り方生き方の教育を充実させ、望ましい人間関係を築く協調の意識や、自己の進路に向けての意欲を育てる、教育 の展開を図るものとしている。学科としては「科学技術科」を設置し、機械、電気、化学、情報、環境などの科学技術の各分野に 関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、それにかかわる諸問題を合理的に解決し、技術革新に主体的に対応できる能力と 実践的な態度を育てることを目標としている。 表3 4領域の学習内容 バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー (BT)領域 バイオテクノロジーは、食糧問題や環境問題、ゴミ減量問題など多くの問題解決方法として注目を浴 びている。その知識と技能を習得し、生命科学分野で応用する能力と態度を身につける。 エコテクノロジー(ET) 領域 環境保全に関する基礎的な知識と技術を学び、実際に活用する能力と態度を身につける。 インフォメーションテ クノロジー(IT)領域 社会における情報化の進展と情報の意義や役割を理解するとともに、情報技術に関する基礎的な知識 と技術を習得し、情報及び情報手段を活用する能力と態度を身につける。 ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー (NT)領域 物質の構造や内部に生じる力を学習し、微細加工に活用する。基礎的知識や技術を生かし、工学や理 学系の分野で応用する能力や態度を身につける。
表4 多摩科学技術高校の教育課程表 教科 科目 標準 単位 数 学年配当 1 2 3 必履修 学校 必履修 必履修 学校 必履修 必履修 学校 必履修 自由選択 国語 国 語 総 合 4 4 1 3〇 国 語 表 現 Ⅰ 3 現 代 文 A 2 現 代 文 B 4 2 2 古 典 A 2 古 典 B 4 2▽ 地理歴史 世 界 史 A 2 2 2▽ 世 界 史 B 4 5〇 日 本 史 A 2 日 本 史 B 4 地 理 A 2 2 2▽ 地 理 B 4 3〇 公民 現 代 社 会 2 2 倫 理 2 政 治 ・ 経 済 2 2〇 2▽ 数学 数 学 Ⅰ 3 3 2〇 数 学 Ⅱ 4 4 3〇 2▽ 数 学 Ⅲ 5 5〇 数 学 A 2 2 数 学 B 2 2 数 学 活 用 2 理科 科 学 と 人 間 生 活 2 物 理 基 礎 2 2 物 理 4 4□ 4▽ 化 学 基 礎 2 2 化 学 4 4□ 4▽ 生 物 基 礎 2 2 生 物 4 4□ 4▽ 地 学 基 礎 2 2▽ 地 学 4 理 科 課 題 研 究 1 保健体育 体 育 7 ~ 8 2 2 3 保 健 2 1 1 芸術 音 楽 Ⅰ 2 2▲ 音 楽 Ⅱ 2 音 楽 Ⅲ 2 美 術 Ⅰ 2 2▲ 美 術 Ⅱ 2 美 術 Ⅲ 2 工 芸 Ⅰ 2 工 芸 Ⅱ 2 工 芸 Ⅲ 2 書 道 Ⅰ 2 2▲ 書 道 Ⅱ 2 書 道 Ⅲ 2 外国語 コミュニケーション英語基礎 2 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 英 語 Ⅰ 3 3 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 英 語 Ⅱ 4 3 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 英 語 Ⅲ 4 3 英 語 表 現 Ⅰ 2 2 2▽ 英 語 表 現 Ⅱ 4 2 2 英 語 会 話 2 家庭 家 庭 基 礎 2 2 家 庭 総 合 4 生 活 デ ザ イ ン 4 情報 社 会 と 情 報 2 情 報 の 科 学 2 地理歴史 江 戸 か ら 東 京 へ 1 ~ 2 1 人間と社会 人 間 と 社 会 1 1
理科 物 理 演 習 2 2▽ 化 学 演 習 2 2▽ 生 物 演 習 2 2▽ 工業 工 業 技 術 基 礎 3 3 情 報 技 術 基 礎 2 2 課 題 研 究 4 3 家庭 フ ー ド デ ザ イ ン 2 2▽ 子 供 の 発 達 と 保 育 2 2▽ フ ァ ッ シ ョ ン 造 形 基 礎 2 2▽ 体育 ス ポ ー ツ Ⅰ 2 ス ポ ー ツ Ⅱ 2 2 2▽ 科学技術 科 学 技 術 と 人 間 2 2 科 学 技 術 実 習 3 3 B T 概 論 2 1● 2● E T 概 論 2 1● 2● N T 概 論 2 1● 2● I T 概 論 2 1● 2● 卒 業 研 究 3 3 先 端 技 術 と 社 会 1 1 科 学 技 術 概 論 Ⅰ 2 2〇 科 学 技 術 概 論 Ⅱ 2 2〇 科 学 技 術 概 論 Ⅲ 2 2〇 科 学 技 術 概 論 Ⅳ 2 2〇 ホームルーム活動 1 1 1 合計 34 33 27 ~ 32 【備考】 自由選択科目は0 ~ 6単位を選択することができる。 ▲:芸術1科目選択/〇:5単位分選択する(必修選択)/ □:理科選択1科目選択(必修選択) ●:概論は各学年で1科目選択/▽:6単位分を選択できる(自由選択) ・人間と社会:1年生の枠外の授業として、体験が2学期に座学は学学期末に組む(1単位) ・総合的な学習の時間(3単位)は、2年課題研究(3単位)により代替する。 ・情報の科学(2単位)は、1年情報技術基礎(2単位)により代替する。 ・専門科目の工業数理基礎(3単位)は数学Ⅰ(3単位)に、工業技術英語(2単位)は英語表現Ⅰ(2単位)により代替する。 ・1単位時間50分 ・江戸から東京へ、物理演習、化学演習、生物演習及び科学技術科の各科目と人間と社会は学校設定科目である。 以上より、専門科目の工業数理基礎(3単位)は数学Ⅰ(3単位)に、工業技術英語(2単位) は英語表現Ⅰ(2単位)により代替されている。ここからも「進学準備教育」が行われることを示 唆される。専門科目は、工業科の科目に代替された科目の履修単位数5単位、代替科目を除いた工 業科の科目が履修単位数8単位、科学技術科の最低履修単位数12単位の合計で最低25単位履修する。 従って、専門科目単位数の約 1/3 程度が代替科目を除いた工業科の科目である。 3. 3. 2. 3 教育課程表からみる高等学校学習指導要領上の位置づけ ここでは、科学技術科の高等学校学習指導要領上の位置づけを示す重要な箇所を抜粋する。 ①「第 1 章総則 第 2 款教育課程の編成 3教育課程の編成における共通的事項 (1) 各教科・科目 及び単位数等 オ学校設定教科」の抜粋(p.9) 以上より、教科「科学技術科」は学校設定教科である。 ②「第1章総則 第2款教育課程の編成 3教育課程の編成における共通的事項 (2) 各教科・科目 の履修等 イ専門学科における各教科・科目の履修」の抜粋(p.11)(傍線筆者) (ア) 学校においては、生徒や学校、地域の実態及び学科の特色等に応じ、特色ある教育課程の編成に資するよう、イ及びウの表 に掲げる教科以外の教科(以下「学校設定教科」という。)及び当該教科に関する科目を設けることができる。この場合において、 学校設定教科及び当該教科に関する科目の名称、目標、内容、単位数等については、高等学校教育の目標に基づき、高等学校教育 としての水準の確保に十分配慮し、各学校の定めるところによるものとする。
以上より、多摩科学技術高校科学技術科では、専門科目を合計 25 単位取得するため、本教育課程 は専門学科としての履修要件を満たしている。しかし、先述した通り、専門科目5単位を代替して いる上に、最低単位数 25 単位の要件をぎりぎり満たしていて、小金井工業高校機械科と比べると専 門が軽視されている。 ③高等学校学習指導要領「第3章主として専門学科において開設される各教科 第2節工業 第3 款各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い」の抜粋(p.416) 以上より、本教育課程は専門科目 25 単位のうち 14 単位が実習科目であり、この要件も満たして いる。これより科学技術科は、工業科の枠組みに入ることを意図していることが推察される。な お、このように総授業時数の 10 分の5以上を実験・実習に配当することとしている専門学科は、 工業のほかに、農業、水産、家庭、看護、情報および福祉がある。 3. 3. 3 科学技術科におけるNT領域の専門科目の学習内容 多摩科学技術高校HP(13) (学校生活 > 年間授業計画)を参照して、科学技術と人間(1年)、科学技 術実習NT(2年)、2年概論NT(2年)、3年概論NT(3年)の学習内容をまとめ、表5に示す。 以上より、概論NTは2年と3年で内容が全く異なる。先述した通り、専門科目単位数の1/3程度 が工業科である上に、教科「科学技術科」の科目においても、Solidworks/ レーザー加工など工業科 で学習する内容と同じものがみられる。 専門学科における各教科・科目の履修については、アのほか次のとおりとする。(ア) 専門学科においては、専門教科・科目((1) のウの表に掲げる各教科・科目、同表に掲げる教科に属する学校設定科目及び専門教育に関する学校設定教科に関する科目をいう。 以下同じ。)について、全ての生徒に履修させる単位数は、25 単位を下らないこと。ただし、商業に関する学科においては、上記の 単位数の中に外国語に属する科目の単位を5単位まで含めることができること。また、商業に関する学科以外の専門学科において は、各学科の目標を達成する上で、専門教科・科目以外の各教科・科目の履修により、専門教科・科目の履修と同様の成果が期待 できる場合においては、その専門教科・科目以外の各教科・科目の単位を5単位まで上記の単位数の中に含めることができること。 「1指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。 (中略) (3) 工業に関する各学科においては、原則として工業科に属する科目に配当する総授業時数の 10 分の5以上を実験・実習に配当す ること。」 表5 科学技術関連科目の学習内容 科学技術と人間(1年) 情報社会と人間/環境とエネルギー /人の暮らしと生物利用/超微細加工が生み出す新素材 科学技術実習NT(2年) Solidworks/レーザー加工/顕微鏡/専門実習(白色干渉計、磁場と電場実験、光の実験、電磁波の測定、走査型顕微鏡など) NT概論(2年) ナノテクノロジーの基礎(ナノテクノロジーとは、単位、ナノテクノロジーの歴史) ナノテクノロジーの基礎【化学】(物質と化学結合、物質の変化、有機化学、カーボンナノチューブ、 分析・分離) ナノテクノロジーの基礎【生物】(バイオテクノロジー、テーラーメイド医療、遺伝子) ナノテクノロジーの基礎【地学】(宇宙の構造、宇宙の始まり、素粒子) ナノテクノロジーの応用(ナノテクノロジーの将来) NT概論(3年) 力学/ 材料 / フックの法則 / 許容応力と安全率/ 軸力の計算 / 応力の計算 / 伸びの計算 / 熱応力 / 梁の種類 /支店反力と固定モーメントの計算/せん断力と曲げモーメントの計算/せん断力図と曲げモーメント 図/梁の曲げ応力/断面二次モーメント/梁のたわみ/梁の強度計算/柱の座屈/柱の断面二次半径/細長 比/柱の実験公式/骨組み構造/トラスの解法/ひずみエネルギー /傾斜面に生じる力/モールの応力円
概論NT(3年)の内容は、大学工学部などの「材料力学」の内容に似ている。大学工学部機械工 学科などでは基礎的な学問として、「材料力学」、「流体力学」、「熱力学」、「機械力学」がある。材料 力学はそのうちの一つであり、工学部機械工学科などで、1、2年次に学習する。具体的には、物 体が外力を受けるとき、その物体内部の各位置における、応力やひずみなどの力学的な状態を検討 する。これは、構造物が壊れるか壊れないかを評価し、その設計をするために非常に重要で、工業 高校の「機械設計」と比較できる。材料力学の内容を述べると、まずは、板や棒の長さ方向に対 して引張負荷を与える場合を例に応力とひずみの概念を学習する。次に、せん断応力とせん断ひず み、許容応力の考え方、熱応力が負荷する場合を学習する。ここまでは、「機械設計」の内容とほぼ 同じである。次にはりに生じる曲げモーメントとせん断力図を求める方法の学習があるが、ここで は、複雑な分布荷重の数式化のために積分が用いられる。次いで、ある仮想断面におけるモーメン トの釣り合いの式から、断面2次モーメントが定義され、曲げ応力を求める式が導出される。この ような公式の導出を経た上で、その公式を使用する。またこの断面2次モーメントは、その定義式 から積分の計算を経て求められる。さらにはりの曲げモーメント、断面2次モーメントを利用して、 たわみ、たわみ角を得るための微分方程式の立て方を学習する。さらに、はりのたわみを応用して、 座屈荷重を示すオイラーの座屈荷重の式の導出も行う。また、ねじりを受ける軸に生じるせん断応 力とせん断ひずみの学習も行う。その後はカリキュラム等の内容によって異なるが、弾性論、有限 要素法への導入として、行列を使った応力・ひずみ解析がある。材料力学は、物理・数学を駆使し た、設計へのための力学であるといえ、「ものづくりの数学的・物理的・化学的基礎」といった欧米 型のテクノロジー認識(14) からみると、テクノロジー教育になりうる。また、材料力学は、実用性に 重きを置いた工業高校の「機械設計」の延長にあるわけではないといえる。このように工業教育と 工学教育は本質的に異なる。科学技術科におけるNT概論(3年)が大学工学部の材料力学の内容と 同じと仮定すれば、これは工学教育であるが、その他の専門科目では、工業科のものと重なる部分 がある。従って、工業教育と工学教育を併せたような教育課程、すなわち異なる性格を有する科目 が混在しているカリキュラムになっている可能性がある。 3. 3. 4 科学技術科のまとめ 多摩科学技術高校の学校要覧に「技術者として生涯にわたり専門性を高めていくために必要な意 欲、態度や知識を身に付け技術革新に主体的に対応できる人材を育成するため、大学等に進学し、」 と明確に「進学準備教育」を行うことを述べている。このことは専門科目を代替していることから も示唆される。科学技術科の教育課程は専門学科としての履修要件を満たしていると考える。しか し、専門科目 5 単位を代替している上に、最低単位数 25 単位の要件をぎりぎり満たしていて、小金 井工業高校機械科と比べると専門が軽視されている。また、専門科目 25 単位のうち 14 単位が実習科 目であり、総授業時数の 10 分の5以上を実験・実習に配当することとしているため、科学技術科は 工業科の枠組みに入ることを意図していることが推察される。「完成教育」である工業科の枠組みの 中で、「進学準備教育」である科学技術科を設立した背景については、平成9年1月「都立高校長期 構想懇談会」答申などを参考に今後明らかにする必要がある。 工業と工学は、本質的に異なる。科学技術科は工業教育と工学教育を併せたような教育課程、す なわち異なる性格を有する科目が混在しているカリキュラムになっている可能性がある。また、多 摩科学技術高校では、先端技術4領域分かれて学習する。4つの領域名すべてにテクノロジーが 入っていて、教科名や科目名に科学技術という語句は多くあるが、テクノロジーと科学技術の区別 は不明である。科学技術やテクノロジーの内容はカリキュラムからは見て取れない。
4. 中学校技術科
高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)「第8節技術・家庭 _ 第2各分野の目標及び内容 _〔技術 分野〕」の抜粋(15) を以下に示す(傍線筆者)。 技術の見方・考え方を働かせ、ものづくりなどの技術に関する実践的・体験的な活動を通して、技術によってよりよい生活や持 続可能な社会を構築する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 (1)生活や社会で利用されている材料、加工、生物育成、エネルギー変換及び情報の技術についての基礎的な理解を図るとともに、 それらに係る技能を身に付け、技術と生活や社会、環境との関わりについて理解を深める。 (2)生活や社会の中から技術に関わる問題を見いだして課題を設定し、解決策を構想し、製作図等に表現し、試作等を通じて具体 化し、実践を評価・改善するなど、課題を解決する力を養う。 (3)よりよい生活の実現や持続可能な社会の構築に向けて、適切かつ誠実に技術を工夫し創造しようとする実践的な態度を養う。 2内容 A材料と加工の技術 (1)生活や社会を支える材料と加工の技術について調べる活動などを通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア材料や加工の特性等の原理・法則と、材料の製造・加工方法等の基礎的な技術の仕組みについて理解すること。 (中略) (2)生活や社会における問題を、材料と加工の技術によって解決する活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導 する。 (中略) (3)これからの社会の発展と材料と加工の技術の在り方を考える活動などを通して、次の事項を身に付けることができるよう指導 する。 (中略) B生物育成の技術 (1)生活や社会を支える生物育成の技術について調べる活動などを通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。ア 育成する生物の成長、生態の特性等の原理・法則と、育成環境の調節方法等の基礎的な技術の仕組みについて理解すること。(中略) (2)生活や社会における問題を、生物育成の技術によって解決する活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導す る。 (中略) (3)これからの社会の発展と生物育成の技術の在り方を考える活動などを通して、次の事項を身に付けることができるよう指導す る。 (中略) Cエネルギー変換の技術 (1)生活や社会を支えるエネルギー変換の技術について調べる活動などを通して、次の事項を身に付けることができるよう指導す る。 ア電気、運動、熱の特性等の原理・法則と、エネルギーの変換や伝達等に関わる基礎的な技術の仕組み及び保守点検の必要性につ いて理解すること。 (中略) (2)生活や社会における問題を、エネルギー変換の技術によって解決する活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう 指導する。 (中略) イ問題を見いだして課題を設定し、電気回路又は力学的な機構等を構想して設計を具体化するとともに、製作の過程や結果の評価、 改善及び修正について考えること。 (中略) (3)これからの社会の発展とエネルギー変換の技術の在り方を考える活動などを通して、次の事項を身に付けることができるよう 指導する。 (中略) D情報の技術 (1)生活や社会を支える情報の技術について調べる活動などを通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。ア情報 の表現、記録、計算、通信の特性等の原理・法則と、情報のデジタル化や処理の自動化、システム化、情報セキュリティ等に関わ る基礎的な技術の仕組み及び情報モラルの必要性について理解すること。 (中略) (3)生活や社会における問題を、計測・制御のプログラミングによって解決する活動を通して、次の事項を身に付けることができ るよう指導する。 (中略)以上より、中学校技術科は、材料、加工、生物育成、エネルギー変換及び情報の技術を領域とし ており、理科教育と密接に関わる。特に、エネルギー変換の技術では、電気回路又は力学的な機構 等を構想することとなっておいる。情報の技術では情報の表現、記録、計算、通信の特性等の原理・ 法則と、情報のデジタル化や処理の自動化、システム化することともなっている。またこれら各領 域において、原理・原則と仕組みの理解と各教科との連携を求めている。また、「工具・機器や材料 等については、図画工作科等の学習経験を踏まえる・・」となっており図画工作との関連も述べて いる。 「生活や社会の中から技術に関わる問題を見いだして課題を設定し、解決策を構想し、製作図等に 表現し、試作等を通じて具体化し、実践を評価・改善するなど、課題を解決する力を養う。」ことを 目標としたうえで、すべての領域で、生活や社会における問題を解決する活動とこれからの社会の 発展の技術の在り方を考える活動が含まれている。 なお、中学校学習指導要領技術科では「科学技術」と「テクノロジー」の語句は出現しない。
5. STEAM教育
5. 1 中学校 今日、日本の中学校における理科教育と技術教育との関連は、前中学校学習指導要領の理科にお ける科学の原理・法則を応用した「ものづくり」の創設と「科学技術」の内容の導入にみられる。 しかし、現代的なテクノロジー教育は実践されているのかは明確ではない。また、先述した通り、 技術科の学習指導要領では、その内容を構成する領域は理科教育に密接に関わる。これら各領域に おいて、原理・原則と仕組みの理解と各教科との連携を求めていて、さらに、生活や社会における 問題を解決する活動とこれからの社会の発展の技術の在り方を考える活動をすることになっている。 第十一次提言ではSTEAM 教育を Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics 等の各教科で の学習を実社会での問題発見・解決に活かしていくための教科横断的な教育と位置づけており、こ れら学習指導要領の意図と第十一次提言のSTEAM 教育の意図は同様であると考えられる。しかし、 先述した通り、中学校学習指導要領技術科では「科学技術」と「テクノロジー」の語句は出現しな い。 5. 2 高等学校 今日、日本の高校における理科教育と技術教育との関連は、前高等学校学習指導要領の理科にお ける「科学技術」の内容の導入にみられる。しかし、ここで現代的なテクノロジー教育は実践され ているのかは明確ではない。 ここで、「第十一次提言 1. 技術の進展に応じた教育の革新 (1)Society5.0で求められる力と教 (4)これからの社会の発展と情報の技術の在り方を考える活動などを通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア生活や社会、環境との関わりを踏まえて、技術の概念を理解すること。 3内容の取扱い (中略) (1)各内容における(1)については、次のとおり取り扱うものとする。 アアで取り上げる原理や法則に関しては、関係する教科との連携を図ること。 (中略) (6)各内容における(2)及び内容の「D情報の技術」の(3)については、次のとおり取り扱うものとする。 (中略) エ製作・制作・育成場面で使用する工具・機器や材料等については、図画工作科等の学習経験を踏まえるとともに、安全や健康に 十分に配慮して選択すること。育の在り方」のうちSTEAM教育に関連する箇所(p.6)を以下に再掲する(傍線筆者)。 このようにSTEAM 教育の推進策の中に、「各学科に共通する各教科」の「理数探究」が対象とし て挙げられている。3. 2. 2節で示したように、高等学校理数科において重視されている「理数探 究」がSTEAM教育の推進策の中に含まれていて、そこでの問題発見・解決的な学習活動を重視して いる。さらに、この「理数探究」では「数学的な手法」を用いる探究の過程があり、そこで、様々 な事象を数式などを用いて分析する数学的モデルをつくり探究することも行われるよう配慮しなけ ればいけないことも注目できる。さらに、【理数編】高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説(16) では、「各学科に共通する教科として、数学と理科にわたる探究的科目を新設し、数学的な見方・考 え方や理科の見方・考え方を組み合わせるなどして働かせ、探究の過程を通して、課題を解決する 力などを育成することとした。この教科の考え方は、現在米国などで推進されている STEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育の考え方と同じ方向を向いているとも考えられる。」 として、「理数探究基礎」と「理数探求」を明確にSTEM教育と関連付けている。しかし、テクノロ ジー(T)や工学(E)との関連は明確ではない。また、「テクノロジー」概念は「ものづくりの数 学的・物理的・化学的基礎」といった欧米型のテクノロジー認識からみると、この「理数探究基礎」 と「理数探求」はテクノロジー教育と関連がある。 なお、高等学校学習指導要領上、工業科においては、「課題研究」を原則として全ての生徒に履修 させるとなっている点と理数科において「理数探究」を原則として全ての生徒に履修させる点で等 価と考えるが、工業科の「課題研究」はSTEAM教育の推進策の中の対象科目に挙げられていない。